バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

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第110話「ロード・バロン……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

A事変で銃魔と激闘を繰り広げた赤羽司。

 

あの時……

 

彼は自分の身体を蝕んでいく『ジョーカー』の力に苦しみながらも己の気力と胆力のみでそれを克服、及び制御し、『バロン』のカードをこの世に蘇らせた。

 

ただ……

 

あの時の『ジョーカー』のカードがその後どうなったのかは………

 

未だ彼のみしか知らぬ事であって………

 

 

******

 

 

第10回界放リーグの1回戦もいよいよ大詰めだ。スタジアムのバトル場を囲む観客達が熱狂の声を上げる中、最後の対戦カードである2人が同時に歩み寄る。

 

1人はタイタス校の代表として勝ち上がってきた芽座椎名最大のライバル、朱雀こと『赤羽司』

 

そしてもう1人は………

 

 

「こんにちわ、赤羽先輩……僕はミカファール校1年の『木戸相葉(きどあいば)』と申します」

「木戸?」

 

 

対戦相手であるミカファール校の小柄で天然の癖毛が特徴的な男子生徒が司に声をかけてきた。礼儀正しいその声色は1年生にしてはどこか落ち着いていて、余裕だった。

 

司が気になったのは彼の『木戸』と言う苗字だ。

 

 

「はいそうです。僕の祖父は界放市市長で『Dr.A』だった『木戸相落』です」

「………」

 

 

相葉はニコッと笑い、柔らかい笑顔を見せながら司に返答した。

 

『木戸相落』と『Dr.A』

 

『Dr.A』の本名は『徳川暗利』だが、約18年前、『木戸相落』が死してからは彼が『木戸相落』となり、界放市の市長として表でも裏でも街を支配していた。その結果、『A事変』が彼の思惑通りにスムーズに進行していってしまった。

 

相葉はそんな『木戸相落』本人の実の孫であるのだ。

 

 

「いや〜〜びっくりしましたよ最初に聞いた時は、まさか生まれた時からずっと見ていた祖父が『Dr.A』という怪物だったなんてね〜〜」

「………」

「だけど、赤羽先輩と芽座先輩の活躍であいつは死んだ………ニッヒッヒ、そのお陰様で僕は『サクヤモン』を継承した!!」

 

 

1人で言葉をずらずらと並べていく相葉。その言い草は仮にも祖父だった男が死んだ後とは思えなくて………

 

『木戸』の名前を持つ者は代々、『サクヤモン』を受け継いでいた。『木戸相落』の次はあの相葉だったため、相落に扮していた『Dr.A』が亡くなった事により『サクヤモン』のカードが彼に渡ったのだ。

 

 

「僕には『神のカード』がある!!生まれた時から!!…こいつを扱うためには爺ちゃんの『サクヤモン』が必要不可欠だった!!感謝するよ、あんたと芽座先輩にはねぇぇ!!」

 

 

相葉は………

 

生まれた時から『神のカード』がオーバーエヴォリューションによって与えられていた。物心ついた時からずっと、彼は相落の持つ『サクヤモン』を欲していたのだ。

 

そして今、彼の手にはその『サクヤモン』がある。向かう所敵なしの気分でいるのだろう。

 

 

「言いたい事は言ったか?……じゃあ始めるぞ、『モブ野郎』」

「………は?」

 

 

相葉の話が一段落ついたと見た司は突然そう言いだした。2人は対戦相手として互いの眼前に聳え立っているため、その言葉は当たり前ではあるが………

 

相葉がカチンときたのは自分の事を『モブ野郎』と例えた事だ。

 

 

「モブ野郎?……ふふ、僕が聞き間違えたのかなぁ?……まさか『神のカード』を持つ僕がモブな訳ないよね〜〜」

「お前しかいないだろ?早くBパッドを出せ、『モブワカメ』と呼んでも良いんだぞ?」

「………」

 

 

相葉の髪型は確かにワカメのような縮れた癖毛だ。

 

赤羽司は基本的に『認めていない相手は名前で呼ばない』という傾向がある。芽座椎名のように認めてはいても渾名で呼ぶ例外もあるが、それ以外は基本的に見た目の特徴を捉えた名称で呼ぶ事がほとんどだ。

 

どこからどう聞いても自分に対する煽りにしか聞こえなかった相葉は腹を立てて………

 

 

「全く、開会式の時の優勝宣言といい、今といい、本当に僕を苛つかせる人だ……この『神』に選ばれた僕を『モブ』と呼んだ事、許すまじ………あなたの方が『モブ』だという事をはっきり分からせてあげるよ、このバトルでねぇ!!」

「ふっ、弱い犬ほどよく吠えるってな………」

 

 

2人はそう言いながら自身の懐からBパッドを取り出し、展開させ、デッキをその上にセット、準備を完了させる。

 

そして………

 

 

「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

第10回界放リーグ、その1回戦最後の試合が轟音のような歓声の中、幕を開ける。

 

先行は『神のカード』を持つ相葉だ。

 

 

[ターン01]相葉

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、僕はレナモンを召喚する!!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

【レナモン】LV1(1)BP3000

 

 

相葉が颯爽と呼び出したのは黄色い狐のような姿をした成長期スピリット。

 

 

「効果発揮!!カードを4枚オープンする!!」

オープンカード↓

【タオモン】◯

【孤葉楔】×

【牧野 留姫】◯

【フーリン】◯

 

 

デッキのカードがオープンされる。その効果は成功。彼は一気に2枚のカードを手札に加えた。

 

 

「………ニッヒッヒ……ターンエンド」

手札4⇨6

【レナモン】LV1(1)BP3000(回復)

 

バースト【無】

 

 

不気味な笑みを浮かべながらそのターンをエンドとする相葉。御満悦な理由はどうやら手札に加えたカードにあるようだ。

 

次は赤羽司のターン。ターンを進行していく。

 

 

[ターン02]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、俺は仮面ライダーバロンとイーズナを召喚する!」

手札5⇨3

リザーブ5⇨0

トラッシュ0⇨3

【仮面ライダーバロン バナナアームズ】LV3(1)BP7000

【イーズナ】LV1(1)BP1000

 

 

司の場の上空よりチャックが現れ、開いたかと思うと、そこに繋がる別の空間から赤い仮面スピリット、バロンが姿を見せた。同時にイタチ型のイーズナも現れる。

 

 

「アタックステップ、やれバロン、イーズナ!!……バロンのアタック時効果で1枚ドローし、BP5000以下のスピリット1体を破壊する!!砕け散れレナモン!!」

手札3⇨4

 

「!!」

 

 

走り出すバロンとイーズナ。

 

バロンは一瞬でレナモンとの距離を詰め、手に持つ大きな槍でレナモンの腹部を突き刺す。レナモンは力尽き破裂するように爆発した。

 

 

「成る程、それが仮面スピリット、バロンの力か………3コストのスピリットにはそぐわない力だ……」

「無駄口を叩くな、ライフで受けるのか?受けないのか?」

 

「っ……あんたも一々減らず口をほざくんじゃない!!ライフで受けてやるよっ!!」

ライフ5⇨4⇨3

 

 

バロンの槍による刺突と、イーズナの体当たりが相葉のライフを1つずつ壊していく。

 

 

「ターンエンドだ」

【仮面ライダーバロン バナナアームズ】LV3(1)BP7000(疲労)

【イーズナ】LV1(1)BP1000(疲労)

 

バースト【無】

 

 

僅か2ターン目で大きくアドバンテージを確保し、大きく相葉のライフを破壊した司。そのターンをエンドとする。

 

次は相葉のターン、彼は司のどこまでも上から目線の態度を癪に感じながらもターンを進行していく。

 

 

[ターン03]相葉

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札6⇨7

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨7

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ!!僕はネクサスカード、フレグランスリバーをLV2で配置!!」

手札7⇨6

リザーブ7⇨2

トラッシュ0⇨3

【No.37 フレグランスリバー】LV2(2s)

 

 

相葉の背後に水の代わりにうどんが流れる川が配置される。その光景は奇妙極まりない。

 

 

「そして、遂に降臨の時だ………僕は『神のカード』……創界神ネクサス、『牧野 留姫』を配置!!」

手札6⇨5

リザーブ2⇨1

トラッシュ3⇨4

【牧野 留姫】LV1

 

「!」

 

 

相葉はさらに『神のカード』を使う。世にも珍しい『神のカード』……

 

使われるべきカードであったカードが無かったこともあって使ったことがないそれが等々発動される。ネクサスカードであるようだが、背後には特に何が現れるわけでもなく、何かが変わったわけではない。

 

 

「に、ニッヒッヒ……ち、力が、力が湧き上がってくる!!……これが、これが『神のカード』!!……今日、今日この日から僕の伝説が始まるんだぁぁぁぁぁ!!」

 

 

しかし、その力は確かにあるのか、相葉は身体中から溢れんばかりの力を感じ取っていた。高揚からか、感情の起伏が激しくなっている。

 

 

ー『神のカード』

 

総称『創界神ネクサスカード』

 

この世界では『オーバーエヴォリューションで生まれたカード』よりも希少な存在であり、それを持つ者には神に選ばれたと口を揃えて言われる。

 

その実態は『別の世界の偉大な英雄や王や神が転生して生まれ変わった姿』だと言われているが、余りにも数が少ないため、その立証は未だ確立されていない。

 

 

「配置時、【神託】の効果によりデッキからカードを3枚トラッシュに置き、その中の対象カード1枚につきコア1つを神に追加する!!」

神託カード↓

【レナモン】◯

【タオモン】◯

【キュウビモン】◯

【牧野 留姫】(0⇨3)LV1⇨2

 

 

相葉のデッキのカードが3枚トラッシュに流れ、『神のカード』にコアが追加される。創界神ネクサスはそのコアを使い、効果を発揮する。

 

 

「さらにバーストを伏せ、エンドステップ、フレグランスリバーの効果によりトラッシュにあるレナモンを手札に戻し、ターンを終える!!」

【牧野 留姫】LV2(3)

【No.37 フレグランスリバー】LV2(2s)

 

バースト【有】

 

 

そのターンをエンドとする相葉。ようやく『神のカード』を呼び出すことができて御満悦な様子だ。

 

次は赤羽司のターン。

 

司は一生に一度見れるかもわからない『神のカード』を前にしても平然とした表情を浮かべている。いや、どうでもいいのだろう、彼はこの大会では『芽座椎名との決着にしか興味がない』

 

 

「直ぐに崩してみせますよその余裕のかる顔!!」

「ベラベラ喋るな。バトラーとしての価値が下がるぞ。いや、もう下がってるか」

「早くターンを進めろ!!あんたの減らず口も大概だろ!!」

 

 

『神のカード』を前にしても顔色も態度を1つ変えない司。その堂々とした気迫はどうしても相葉の気に触っている。

 

 

[ターン04]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨4

トラッシュ3⇨0

【仮面ライダーバロン バナナアームズ】(疲労⇨回復)

【イーズナ】(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ、バーストを伏せ、ホルスモンを召喚!!」

手札5⇨3

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

【ホルスモン】LV1(1)BP4000

 

 

司の場に鳥の顔と獣の身体を持つ赤のアーマー体スピリット、ホルスモンが現れる。その効果は赤らしくネクサスキラーと呼べる代物であって………

 

 

「召喚時効果、ネクサスカードを破壊する!!…『神のカード』とは言ってもネクサスカードには変わりはない、それを破壊する!!」

「!!」

 

 

ホルスモンは登場するなり相葉を鋭い眼光を向ける。普通のネクサスカードはそれに睨まれるだけでトラッシュへと沈んで行くのだが………

 

 

「!!」

「馬鹿め!!『神のカード』は『神のカード』以外の効果を受けない!!そんなちんけなスピリット効果など聞くわけないだろう?」

 

 

『神のカード』にはホルスモンの効果は効かない。それはホルスモンが普通のネクサスカードのみを対象にしているからである。

 

 

「そうか、なら俺はフレグランスリバーを破壊し、カードをドローする」

手札3⇨4

 

「!!」

 

 

即座に対象を変更するホルスモン。その目先は相葉の背後にあるフレグランスリバー。睨まれるなり地の底へと沈んで行った。

 

 

「アタックステップ、行ってこいホルスモン!!」

 

 

翼を広げ空へと飛び立つホルスモン。狙うは相葉の残り3つのライフ。このターン、司のフルアタックが成功すれば彼の勝利だが………

 

 

「ライフで受ける!!」

ライフ3⇨2

 

 

ホルスモンが相葉のライフに勢い良くぶつかっていく。そのライフはまた1つ砕け散った。

 

が、それは同時に相葉の伏せているバーストの条件でもあり………

 

 

「ライフ減少によりバースト発動、イマジナリーゲート!!」

「!」

 

「その効果により、手札にあるタオモンを召喚!!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨1

【タオモン】LV3(3)BP10000

 

 

相葉のバーストが勢い良く反転すると同時に、上空より神々しいゲートが開き、そこを通って場に降り立つスピリットが1体。

 

それは陰陽道を極めた狐の姿をした完全体スピリット、タオモン。

 

 

「対象スピリットの登場により『神のカード』にコアを追加!!」

【牧野 留姫】(3⇨4)

 

 

『神のカード』である創界神ネクサスカードは対象内のスピリットが召喚される度に【神託】の効果でその上に置くコアが増えていく。タオモンの登場によりコアが追加された。

 

 

「ターンエンドだ」

【仮面ライダーバロン バナナアームズ】LV1(1)BP3000(回復)

【イーズナ】LV1(1)BP1000(回復)

【ホルスモン】LV1(1)BP4000(疲労)

 

バースト【有】

 

 

タオモンの登場により攻めきれないと見たか、司はそのターンをエンドとする。

 

 

「さぁ、これからが神の本領発揮だ!!伝説のターンの幕開けだ!!」

 

 

口数が最小限な司に対して「あぁだこうだ」と口が塞がらない相葉。彼にとってはこの日を待ち望んでいたのだろう。楽しみにしていたのだろう。この自分が伝説になる日を………

 

 

[ターン05]相葉

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨6

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップ!!レナモンを召喚!!効果によりカードをオープンする!!」

手札5⇨4

リザーブ6⇨4

トラッシュ0⇨1

【レナモン】LV1(1)BP3000

【牧野 留姫】(4⇨5)

オープンカード↓

【キュウビモン】◯

【イエローリカバー】×

【シンフォニックバースト】×

【イエローリカバー】×

 

 

前のターン、フレグランスリバーの効果によって手札に戻っていたレナモンが再び相葉の場に姿を見せる。そしてその効果も成功。相葉は新たにカードを加える。

 

 

「そして僕は加えたキュウビモンをLV2で召喚!!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨1

トラッシュ1⇨2

【キュウビモン】LV2(2)BP6000

【牧野 留姫】(5⇨6)

 

 

9本の尾を持つ狐型の成熟期スピリット、キュウビモンが相葉の場にレナモン、タオモンと共に並び立つ。

 

これで相葉の場には3体もの黄色い狐型のスピリット達が並んだ。

 

 

「アタックステップ!!…タオモンでアタック!!」

 

 

スピリットが並んだところでアタックを仕掛ける相葉。完全体のタオモンに指示を送る。

 

そしてこの時だ。この一瞬のフラッシュタイミングで相葉は手札のカードを切る。それはそのデッキのエースにして、『化身』のような存在であって……

 

 

「フラッシュ【煌臨】を発揮!!対象はタオモン!!」

リザーブ1s⇨0

トラッシュ2⇨3s

 

「!」

 

 

タオモンの姿がが突如吹き荒れる桜吹雪の中に隠れていき、その中で姿形を大きく変化させていく………

 

 

「神の代行者たる巫女、ここに煌臨……サクヤモン!!」

手札4⇨3

【サクヤモン】LV3(3)BP14000

【牧野 留姫】(6⇨7)

 

 

桜吹雪が飛び散っていくと、中から狐の面を被ったスマートで美しい巫女が姿を現した。それは『木戸相落』のエースだったスピリット、サクヤモン。

 

『神のカード』と合わせてその強い存在感がフィールドを支配していく………

 

 

「煌臨時効果!!スピリット4体をLV1にし、LV1スピリットのアタック、ブロックを封じる!!」

 

 

サクヤモンは登場するなり金色の神々しい輝きを放つと、光輪がホルスモン、イーズナ、バロンを捕獲し、身動きを封じる。

 

このサクヤモンの効果は木戸相落が使用していたこともあって世間では有名である。

 

が、次なるは相葉だけが所有する『神のカード』の効果が本領を発揮させる。

 

 

「『神のカード』の効果!!サクヤモンにコアを2つ移動させる事により、LV1スピリット1体をデッキ下に戻す!!……バロンを下に戻す!!」

【牧野 留姫】(7⇨5)

【サクヤモン】(3⇨5)

 

「!!」

 

 

Bパッド上にある『神のカード』の上に置かれるコアがサクヤモンに移動する。それと同時にバロンがデジタル粒子となって消滅した。

 

 

「これが神の力だ!!……あんたみたいなレトロなバトルしかできない奴とは格が違う!!」

「…………」

 

 

口数が減らない相葉に対して殆ど口を開かない司。しかし未だに余裕がある様子ではあって………

 

 

「ニッヒッヒ、驚いて言葉も出ないか!!」

 

「フラッシュマジック、双光気弾……場のホルスモンとイーズナから不足コストを確保し、消滅させる」

手札4⇨3

【ホルスモン】(1⇨0)消滅

【イーズナ】(1⇨0)消滅

トラッシュ3⇨5

 

「っ………空打ち!?」

 

 

司が唐突に手札のマジックを発揮させる。しかし、その効果は今使用しても無意味な効果を持つ双光気弾。それに使用コストにホルスモンとイーズナから使用した事により2体も消滅。

 

だが、司も無意味な行動をしているわけではない。司は相葉の持つ『神のカード』の効果で再びスピリットをデッキ下に戻されつつ、コアを増やされるのを防ぐために事前に自分のスピリットを消滅させたのだ。

 

 

「ニッヒ、勝つためには自分のスピリットでさえも踏み倒すか!!……愚かだな!!」

「…………」

 

 

司の一見非道な行いをそう評価する相葉。確かにバトルの場の状況を見れば司がそうせざるを得ない状況に追い込まれている様にしか見えないだろう。

 

相葉はそんな司にさらに追い討ちをかけるようにサクヤモンの効果を発揮させ………

 

 

「さらに僕はサクヤモンのLV3効果!!手札1枚を破棄する事で回復し、バトル中シンボルを2つにする!!」

手札3⇨2

【サクヤモン】(疲労⇨回復)

 

 

力を込め、詠唱を唱えるサクヤモン。このバトル中のみダブルシンボルにし、回復状態となる。

 

 

「煌臨スピリットは煌臨元となったスピリット全ての情報を引き継ぐ……故にアタックは継続!!」

 

 

「ライフだ」

ライフ5⇨3

 

 

空気に溶け込むような速さで司のライフまで近くサクヤモン。そして金色の杖の様な武器で司のライフを一気に2つ叩き壊した。

 

 

「ほらほら手詰まりかぁ!?……もう一撃ぃい!!」

 

「………」

ライフ3⇨2

 

 

サクヤモンが追撃を仕掛ける。またその杖が司のライフを1つ砕いた。

 

ライフ的に追い詰められた司。だが、やられっぱなしではない。防御用のバーストカードを勢い良く反転させる。

 

 

「バースト発動、絶甲氷盾。ライフ1つを回復させ、コストを支払いアタックステップを止める」

ライフ2⇨3

リザーブ4⇨0

トラッシュ5⇨9

 

「っ……絶甲氷盾か……めんどくさいバーストを」

 

 

司のライフが1つ回復すると、相葉の場に猛吹雪が発生する。これでは彼のスピリットは身動きが取れない………

 

 

「ターンエンドだ……だが次はない」

【サクヤモン】LV3(5)BP14000(疲労)

【レナモン】LV1(1)BP3000(回復)

【キュウビモン】LV2(2)BP6000(回復)

 

バースト【無】

 

 

致し方なくそのターンをエンドとする木戸相葉。次はなんとか凌いだように見える赤羽司のターン。

 

そのターンシークエンスをゆっくりと進行させていく………

 

 

[ターン06]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨10

トラッシュ9⇨0

 

 

「メインステップ…………ターンエンドだ」

バースト【無】

 

「なにっ!?……何もしないだと!?」

 

 

ターンが開始された直後、司はほぼ何も行わずにそのターンをエンドとしてしまう。

 

普通のバトルでは自殺行為とも取れるプレイングに驚く相葉。信じ難いのだろう、強力なバトラーであるのは間違いないはずであるのにここに来て手札事故は考えにくい………

 

 

「エンドと言ったんだ、聞こえなかったのか?」

「遊んでるのか!?」

「あぁ、遊んでるさ」

「!?」

「お前は『モブ』だ。俺と比べてLVが低い、少しくらい遊ばなければ対等にはなれないだろう?」

「また『モブ』と……僕は『神』に選ばれたんだぞ!!お前なんかとは違うんだぞ!?まだ僕との実力差を理解していないのか!?」

「理解していないのはテメェだろ、いいからさっさとターンを進めろ」

「っ………」

 

 

司は完全に相葉を舐めている。

 

相葉もそれを身を以て感じているからこそより怒りを爆発させていて………

 

彼にとって司の発言は屈辱で仕方なかった事だろう。下だと見下していた人物が何故か堂々と偉そうにしているのだから………

 

そんな苛立ちを覚えながらも相葉は自分のターンを進行させていく。全ては赤羽司の息の根を止めるためだ。

 

 

[ターン07]相葉

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札2⇨3

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨4

トラッシュ3⇨0

【サクヤモン】(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ……後悔させてやるよ、この僕を軽んじた事をね!!…レナモン、キュウビモンを召喚!!」

手札3⇨1

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨2

【サクヤモン】(4⇨3)

【レナモン】LV1(1)BP6000

【キュウビモン】LV2(2)BP6000

【牧野 留姫】(5⇨6⇨7)

 

 

相葉は司にとどめを刺すべくさらにスピリットを展開する。これで合計5体の狐のスピリットが並んだ。司の場のスピリットゼロ、ライフは3。サクヤモンの効果も考えるとややオーバーキル感は咎めないが、彼としても司をいたぶりたいのだろう。

 

 

「アタックステップ!!キュウビモン、あの見窄らしいゴミを焼き尽くせ!!」

 

 

手始めと言わんばかりにキュウビモン1体でアタックを仕掛ける相葉。キュウビモンは9本の尻尾を司に向けると、その先から青い炎を灯し、弾丸として発射する。

 

 

「……さっき受けてわかった。軽いんだよな、テメェの攻撃は……」

「はぁ?」

 

 

青い炎が司のライフ目掛けて飛び交う中、司が言った。相葉はその発言の意味が分からず疑問符を浮かべる。

 

 

「テメェはあいつと比べ物にならねぇ、だから『モブ』だ。あいつは、『銃魔』はもっと重たかった。あいつの攻撃に比べたらテメェの攻撃はカスみたいなもんだ」

「銃魔ぁ!?…誰だそれ」

 

 

『銃魔』

 

かつてDr.Aの配下につき従い、彼の野望のために暗躍していた人物。優しい人間だったが、最後まで彼はDr.Aのために動いた。

 

そんな彼と最後にバトルしたのが司だ。

 

銃魔の攻撃はもっと重たかった。確固たる信念と心情があったからだ。しかし、相葉は軽いし、生温い。それは彼が浮ついた理由でバトルをしているからである。

 

これは銃魔とあのバトルを経験した司だからこそわかるようになった不思議な感覚。到底相葉には理解し難いものであるだろう。

 

そしてその間に司はさらに手札のカードを引き抜く。

 

 

「フラッシュマジック、シンフォニックバースト、救世神撃破!!」

手札4⇨2

リザーブ10⇨3

トラッシュ0⇨7

 

「2枚のマジック!?」

 

 

司はマジックを連続発揮させる。

 

 

「救世神撃破の効果、カードをドローし、バーストをセット!!」

「っ……」

 

 

司はカードをドローし、直後にバーストカードを裏側でセットする。

 

 

「そのアタックはライフだ」

ライフ3⇨2

 

 

キュウビモンの青い炎が司を襲い、そのまま1つのライフを焼き尽くす。

 

 

「俺のライフは2になった。これでシンフォニックバーストの効果が発揮され、アタックステップが終わる」

「っ……」

 

 

辺りに黄色い波動が飛び散っていく、それは相葉のアタックステップの終わりを知らせるサイン。彼はこれ以上アタックできない。

 

……そしてここだ。

 

このタイミングで………

 

あのカードが『蘇る』

 

 

「テメェごときにコイツを使うのは気に食わんが、めざしに見せつけるには丁度いいタイミングだ……使ってやるよ」

「何言ってんだよ」

「光栄に思えよ……!!」

「っ!?」

 

 

突然司の言葉に重みが増したのを感じる相葉。それと同時に背筋が凍りつく。

 

何故か……

 

それは赤羽司が自身の持つ最強のスピリットを呼び出そうとしているからだ。まだ何もしていないのにスタジアム中の大気が悲鳴をあげるように震撼している………

 

 

「ライフ減少によりバースト発動………!!」

「!?」

 

 

司のバーストカードが重々しく鈍い音を立てながら反転する。そしてこの時、既にその効果は開花していて…………

 

 

「なにっ!?」

【サクヤモン】(3⇨2)LV3⇨2

【レナモン】(1⇨0)消滅

【レナモン】(1⇨0)消滅

【キュウビモン】(2⇨0)消滅

【キュウビモン】(2⇨0)消滅

トラッシュ2⇨9

 

 

赤黒い稲妻が迸る。それが相葉の場全体に行き渡り、スピリットたちを苦しめていく、サクヤモンは辛うじて耐えたものの、レナモンやキュウビモンたちは忽ち堪らず消滅していく………

 

 

「なんだ、なんなんだその効果は!?」

 

 

意味がわからなかった事だろう。その殺伐とした光景が信じられなかった事だろう。

 

だが、その効果を招いてしまったのは自分の持つ『神のカード』のせいだとは思いもしていなくて………

 

 

「そしてその後コイツを召喚する」

 

 

A事変で銃魔と激闘を繰り広げた赤羽司。

 

あの時……

 

彼は自分の身体を蝕んでいく『ジョーカー』の力に苦しみながらも己の気力と胆力のみでそれを克服、及び制御し、『バロン』のカードをこの世に蘇らせた。

 

ただ……

 

あの時の『ジョーカー』のカードがその後どうなったのかは………

 

未だ彼のみしか知らぬ事であって………

 

その答えがその『バーストカード』だ。『ジョーカー』は変化してしまったのだ。司の力によって無理矢理捻じ曲げられてしまった。

 

文字通りの『切札』へと………

 

 

「聞け!!魔王の轟く怒号を……そして慄き戦慄せよ!!………来い、ロード・バロン!!」

リザーブ3⇨0

【ロード・バロン】LV2(3)BP12000

 

「!?」

 

 

赤黒い稲妻が司の場へと落雷する。その衝撃が全て飛び散っていくと、そこから赤い肉体を持つ魔王が1人………

 

名をロード・バロン。右手に魔剣を携え見参した。

 

それは司が独自に進化させた。いや、させていたバロン。エニー・アゼムでさえも知らないカードが呼び出された。

 

その仮面スピリットらしからぬ異形な姿に会場中だけでなく、控えの選手たちの誰もが驚愕していた。もちろん椎名も、バークも………

 

 

「な、なんだこの………化け物は!?」

「名は名乗ったぞ、ロード・バロンだ」

 

 

そういうことではない。

 

明らかにサクヤモン以外のスピリットを葬ったのは間違いなくこのスピリット。その荒々しく禍々しい姿に自然と恐怖が刻まれているのだ。相葉の本能が訴えている………

 

ー『こいつはやばい』と

 

しかし、シンフォニックバーストの効果が発揮された今、彼はターンをエンドとせざるを得ない。サクヤモンだけを残し、そのターンをエンドとしてしまった。次はその異端で異形のスピリットを呼び出した司のターンだ。

 

 

[ターン08]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札2⇨3

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨8

トラッシュ7⇨0

 

 

「メインステップ、俺はロード・バロンのLVを3に上げ、バロンを召喚する!」

手札3⇨2

リザーブ8⇨4

トラッシュ0⇨1

【ロード・バロン】(3⇨5)LV2⇨3

【仮面ライダーバロン バナナアームズ】LV3(1)BP7000

 

 

ロード・バロンのLVが最大に上がり、2体目のバロンも召喚される。その効果により常時LVマックスである。

 

 

「アタックステップ!!」

「っ!?…運の悪い奴め、スピリットも並べられないか!!終わりのようだな!!」

 

 

このタイミングでアタックステップに移行する司を見て笑みを浮かべる相葉。

 

それもそのはずだ。何せ、自分のライフは残り1。ブロッカーはサクヤモン1体。最低でも3体並べる必要がある。それがどうした事だろうか、司の場には2体のスピリットしかいない。

 

彼がこのターンで勝負は決められないと踏んだ相葉。

 

ただ、司がそんな甘いプレイングなんてするわけないのだが………

 

 

「ロード・バロンでアタック、その効果で最もBPの高いスピリット1体を破壊する!!」

「な、なんだと!?」

「サクヤモンを切り避け!!」

 

 

ロード・バロンのアタック時効果が発揮される。魔剣に闇の力を込め、相葉のサクヤモンに向けて飛ぶ程に斬撃として放つ。サクヤモンは逃げる間も無く、それに切り裂かれ、静かに消滅していった………

 

それは相葉にとっては絶望に等しい光景であって………

 

 

「う、嘘だ……嘘だ。僕は『神のカード』に選ばれた存在なんだぞ!?」

「何度も言わせるな、お前は『モブ』だ。例え『神のカード』に選ばれていてもな」

「うるさい、うるさいうるさいぃい!!気に触るんだよ、そのあんたの言い方!!ムカつくんだよ、吐き気がするんだよぉぉ!!」

 

 

みっともなく嘆く相葉。その間にもロード・バロンが一瞬で彼との距離を縮めていて………

 

その魔剣を手に構え………

 

 

「あぁったく!!ライフだ、ライフで受けてやる!!」

ライフ2⇨1

 

 

ロード・バロンの魔剣の一撃が彼のライフ1つを紙切れのように引き裂いた。

 

 

「あばよ『モブワカメ』……バロンでアタック!!」

手札2⇨3

 

「!!」

 

 

最後のアタックだ。バナナアームズのバロンが槍を構え、地を駆ける。狙うは当然相葉のライフ。

 

 

「ぼ、僕の伝説は……こ、これから……これから始まるはずだったのにぃい!!」

ライフ1⇨0

 

 

強力な刺突がバロンの槍から繰り出され、相葉のライフは跡形もなく粉砕された。

 

このバトル、勝者は赤羽司だ。『神のカード』に臆する事なく戦い抜いた事、『ロード・バロン』という異形を呼び出した事もあり、会場は熱狂の渦に飲み込まれた。

 

 

「で、伝説に……僕は……伝説に……」

「テメェの小せえ物差しでバトルを計るな。後、バトルの腕だったら『めざし2号』の方がまだマシだ」

 

 

やや放心状態気味となってブツブツ願望を呟く相葉に、司が言った。『めざし2号』とは五町の事だ。

 

相葉は『神のカード』があるからと、なんの鍛錬もしてこなかった。ただ『サクヤモン』さえあれば強くなれると思い違いをしていた。

 

デッキがいくら強くとも、完成度が高くとも、己が、カードバトラーが強くなくては、『伝説には到底なれない』………

 

 

ー…

 

 

「あれがバロンだと!?………っざけるな、ふざけるなよ…赤羽司ぁぁあ!!」

 

 

一方、選手専用の個人控え室ではバーク・アゼムがモニターに映る『ロード・バロン』と司を見て憤怒していた。

 

エニー・アゼムがかつて操っていたはずのバロン。それがあんな歪められた姿になるのが耐え難い屈辱だったのだろう。

 

 

ー…

 

 

これにて第10回界放リーグの1回戦、全ての試合が終了した。シードを含め、2回戦に勝ち残ったのは……

 

『芽座椎名』

『九白英次』

『九白小波』

『赤羽司』

『岸田空牙』

『岬五町』

『バーク・アゼム』

『ノヴァ(エニー)・アゼム』

 

の8名。

 

この8名が2回戦で凌ぎを削ることとなる。

 

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉


司「本日のハイライトカードは『ロード・バロン』」

司「俺のエース『ロード・バロン』は俺の力と『ジョーカー』のカードが混ざって生まれたスピリット。その強さは神をも殺す」


******


〈次回予告〉


2回戦が始まり、椎名と英次がバトルする事に、『対策は万全です』と強気な発言をする英次。椎名は自身を対策してきた英次の壁を越えることができるのか………次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ「奇跡を超える力、クリムゾンモード!!」……今、パトスピが進化を超える!!


******


※次回のサブタイトル及び内容等は予告なく変更の可能性がありますので、予めご了承ください。


最後までお読みくださり、ありがとうございました!!


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