時刻は昼を過ぎた。
これから2回戦が始まろうとしている。次なる2回戦からはシードの4人も加わり、合計8人がしのぎを削り合う。
その第一試合は『赤羽司』と『九白小波』…………
バトスピ一族間ではトップクラスの実力を誇る彼ら。そんな2人が遂に激突し合うのだ。この対戦カードには非常に多くの人々が注目の的にしていたに違いない……
だが………
ー…
「………」
《九白小波は大会を辞退しました。よって、2回戦第一試合は赤羽司の不戦勝となります…………》
スタジアムの会場で小波を待ちぼうけていた司。そこから無機質なアナウンスからお知らせが届く。
九白小波は大会を辞退した。理由はただ一つ、面倒だから。それに1回戦はまだしも、これから先さらに強い相手と戦うとなると、『テリアモンを眺めるだけ』などできやしないし、必ずと言っていいほど破壊される。
そう考え、この大会を辞退したのだった。なんとも身勝手な理由だが、彼女にとってはバトルする理由もないのだ。
「さぁ!!私は英次の応援するぞ〜〜!!頑張れ〜〜!!」
会場の観客席でそう叫ぶ九白小波。バトルしないのであればやる事は英次の応援のみ。可愛い義弟のため、力一杯の声援を送った。
そう、次なる第二試合は九白英次のバトルなのだ。その相手はあの『芽座椎名』であって………
ー…
「お?…司じゃん」
「……」
スタジアムのバトル場に向かう最中、椎名は控え室に戻ろうとしていた司と鉢合わせた。
「めざしか……」
「めざしか、じゃないよ……アレなんだよ」
「アレ?」
「あのスピリット、ロード・バロンだ!!あんなのいつデッキに………」
「アレは持ってたんだ、初めからな。テメェに見せたくなかっただけだ……あのカードと共に、俺はお前と決着をつける!」
「って、あぁおい!!」
そう言いながら椎名の横を通り過ぎていく司。椎名がいくら話しかけても『決着をつける』の一点張りだ。本当に彼がこの大会が人類存亡を賭けた戦いであると自覚しているのだろうかと疑問を抱いてしまう。
だが、司なりに本気でバトルと向き合っているのは間違いようのない事だ。「司はまぁ、大丈夫か……」と独り言を零すと、椎名は再びスタジアムのバトル場へと歩みを進めた。
栄誉ある界放市中央スタジアムのバトル場。そこで椎名を待ち受けていたのは轟音のような歓声だけでなく、2回戦の対戦相手であり、尚且つ1つ下の後輩、九白英次も緊張した顔つきで待ち構えていて……
「よっ!!結構久しぶりだな英次!!」
「椎名さん、今日は本気でお願いしますよ………」
「何言ってんだ。私はいつも本気だ」
椎名の陽気で英次に話しかける。が、彼にはそんな余裕はないのか、緊張の糸を解す様子は一切見られず………
「今日この日、僕はあなたに勝つために界放リーグを勝ち残って来ました!!……僕の全力、受け止めてください!!」
「……英次とバトルするのも、久しぶりだよな………よし、受け止められるものなら受け止めて見ろ!!……行くぞ英次!!」
「はい!!」
「「ゲートオープン、界放!!」」
Bパッドが展開され、即座に2回戦の第二試合が開始される。
先行は九白英次だ。そのターンシークエンスを早々と行っていく……
[ターン01]英次
《スタートステップ》
《ドローステップ》手札4⇨5
「メインステップ!!…椎名さん、今日僕はあなたを研究し尽くしてきた!!対策は万全です!!」
「ほお?…じゃあ見せてもらおうかな」
英次はどうやら椎名を越えるための秘策がいくつかあるようだ。並み居る強豪が揃う界放リーグを勝ち残ったのだ、椎名は英次のバトルに対して油断も隙も見せるつもりは毛頭なくて………
「先ずはネクサスカード、永遠なる水道橋を配置!!」
手札5⇨4
リザーブ4⇨0
トラッシュ0⇨4
【永遠なる水道橋】LV1
「!!」
青属性のネクサスカードだ。英次の背後に見惚れるような美しい水道橋が浮かび上がってきた。
「この効果により、お互い『スピリットとブレイヴの召喚時効果』は発揮されない!!」
「なに!?」
水道橋からは常に青い波動が溢れ出ている。それは存在する限り全てのスピリットとブレイヴの召喚時効果を無効にする証のようなもの。この影響下では成長期スピリットお得意のサーチ効果は一切発揮されない。
「手札は………」
椎名は自分の手札を確認する。その中にあったのは強力な召喚時効果を持つ『ブイモン』のカード。しかし、それも永遠なる水道橋がある限り単なる弱小スピリットと化してしまう。
もちろんこの効果は英次にもリスクがある。自分の召喚時効果も無効になるからだ。しかし、椎名の対策をしてきたと言い張っていた英次が自分のカードで自分の首を締めるとは椎名には到底思えない。
「ターンエンドです!!」
【永遠なる水道橋】LV1
バースト【無】
第1ターン目が終わる。次は椎名のターン。行動を大きく制限された中でどう動くのか………
[ターン02]椎名
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ4⇨5
《ドローステップ》手札4⇨5
「メインステップ!!(成長期スピリットの効果が使えなくても手札を増やす方法はある………)……ネクサスカード、ディーアークとデジヴァイスを配置!!」
手札5⇨3
リザーブ5⇨0
トラッシュ0⇨5
【ディーアーク】LV1
【デジヴァイス】LV1
椎名の腰に手のひらサイズの小さな機械が取り付けられる。いずれもデジタルスピリットをサポートする強力なカードだ。
(……よし)
英次は内心喜んでいた。デッキの足が速い椎名の初手を遅らせることに成功したからである。ネクサスカードがいくら強力と言っても、成長期スピリットと違ってアタックはできないし、このターンだけでは手札を増加させられない。
椎名は英次に完全に出鼻を挫かれたのだ。
「ターンエンド」
【ディーアーク】LV1
【デジヴァイス】LV1
バースト【無】
致し方なくそのターンを終える椎名。次は英次のターン。素早くターンシークエンスを行っていき…………
[ターン03]英次
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
《ドローステップ》手札4⇨5
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨5
トラッシュ4⇨0
「メインステップ、僕はさらなるネクサスカード、最後の優勝旗を配置!!その効果でコアを1つ増やします!!」
手札5⇨4
リザーブ5⇨1
トラッシュ0⇨4
【最後の優勝旗】(0⇨1)LV1⇨2
英次の背後に古びた優勝旗が現れる。その効果で使用できるコアの上限が増した。
「さらに僕はストロングドローを使い、手札を入れ替えます!!」
リザーブ1⇨0
トラッシュ4⇨5
次に英次が使用したのは青の鉄板マジックストロングドロー。その効果で手札の枚数は全く変わらず無駄なく質を向上させた。
(ここまでは上々……でも、ここで気をつけないといけないのは『グラウモン』……アタック時で永遠なる水道橋を破壊されてしまう。前のターンで召喚されなかったって事は初手にはなかったんだ。けど、椎名さんは次のターンで必ずそれをドローする………)
英次は心の中で予め決めていた作戦をもう一度考える。その中でもこの場面で最も警戒していたのは『グラウモン』だ。
まだ椎名の手札にそれが無いことを悟る英次。しかし、相手はあの芽座椎名。次のターン、間違いなくそれをドローするのが目に見えていて………
「バーストを伏せ、ターンエンドです」
手札4⇨3
【永遠なる水道橋】LV1
バースト【有】
思考を巡らせながらそのターンをエンドとした英次。次は再び椎名のターンだ。
[ターン04]椎名
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
《ドローステップ》手札3⇨4
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨6
トラッシュ5⇨0
「メインステップ、ズバモンとグラウモンを召喚!!」
手札4⇨2
リザーブ6⇨0
トラッシュ0⇨4
【グラウモン】LV1(1)BP4000
【ズバモン】LV1(1)BP3000
(っ……本当に引いた!!やっぱり椎名さんはすごい!!)
椎名の場に黄金の鎧纏うデジタルブレイヴ、ズバモンと、たった今ドローされた真紅の魔竜成熟期の姿、グラウモンが呼び出される。
「ディーアークの効果でドローし、バーストをセット!!……そして、グラウモンにズバモンを合体!!」
【グラウモン+ズバモン】LV2(2)BP9000
バーストが伏せられると同時に、ズバモンが黄金の鎧を残して消滅。その鎧はグラウモンに装着され、より強力なスピリットへと変貌した。
「アタックステップ!!グラウモンでアタック!!………その効果で永遠なる水道橋を破壊だ」
「!!」
グラウモンが走り出すと共に口内から炎を一直線に水道橋へと放出。水道橋はその水ごと焼却されてしまう。
「さぁ英次、このアタックはどう受ける?」
「っ……ライフです。ライフで受けます!!」
ライフ5⇨3
グラウモンの鋭い牙が英次のライフを襲い、それが一気に2つ砕かれた。永遠なる水道橋も破壊され、ここから一気に椎名のペースに持ち込まれる………
かと思われたが………
「その攻撃、僕は読んでましたよ、椎名さん!!」
「なに!?」
「ライフ減少によりバースト発動!!…鉄拳明王!!」
「!!」
椎名の行動を読みきっていた英次のバーストカードが勢いよく反転する。それは青のスピリットカードだ。
今、英次が椎名を圧倒する………
「その効果により、トラッシュにある3枚のネクサスカード、2枚目の『最後の優勝旗』『要塞都市ナウマンシティー』『永遠なる水道橋』をノーコスト配置!!」
【最後の優勝旗】(0⇨1)LV1⇨2
【要塞都市ナウマンシティー】LV1
【永遠なる水道橋】LV1
「っ……ネクサスがトラッシュから復活!?」
英次の背後に次々と現れるネクサス達。その中には破壊されたばかりの水道橋や、前のターンのストロングドローの効果で破棄されていたものも含まれる。
英次は最初からこれが狙いだったのだ。椎名のグラウモンもしっかりと行動パターンに仕込んだ上で………
「ナウマンシティーの配置時効果、来てください!!サイバードラモン!!……そしてバースト効果で鉄拳明王も召喚!!」
手札3⇨2
リザーブ2⇨0
【最後の優勝旗】(1⇨0)LV2⇨1
【最後の優勝旗】(1⇨0)LV2⇨1
【サイバードラモン】LV2(3)BP12000
【鉄拳明王】LV1(1)BP6000
長い効果処理の中、上空より黒くてスマートなボディを持つ完全体スピリット、サイバードラモンと、強靭な肉体を持つ明王、鉄拳明王が英次の場へと見参した。
「マジか……」
その光景にただ驚く事しか出来なかった椎名。
自分のターンであるはずなのに英次がこれ程までに強力なスピリットやネクサスを展開しているのだ。無理もないが………
見違えたのだ。あの弱気だった英次がここまでやれるようになっていたから………
「やるな英次……私はこれでターンエンドだ」
【グラウモン+ズバモン】LV2(2)BP9000(疲労)
【ディーアーク】LV1
【デジヴァイス】LV1
バースト【有】
そのターンをエンドとしようとする椎名だったが………
「待ってください!!そのエンドステップ時!!僕はサイバードラモンの第二の効果を発揮!!……サイバードラモンが相手のエンドステップで回復状態だった時、相手のライフ1つを破壊します!!」
「!!」
「お願いしますサイバードラモン……クライズブレイカー!!」
「っ……うわぁっ!!」
ライフ5⇨4
サイバードラモンが腹の底から空間が張り裂けるような咆哮を放つ。椎名のライフはその咆哮だけでライフが1つ砕け散ってしまう。
そして改めてエンドとなり、次は英次のターン。今現在、完全に彼の思惑がはまり、バトルが彼のペースで進んでいるのが会場中の誰もが伝わっていて………
[ターン05]英次
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
《ドローステップ》手札2⇨3
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨6
トラッシュ5⇨0
「メインステップ!!僕はスピリットのLVを上げ、異魔神ブレイヴ、幻魔神を召喚し、左にサイバードラモン、右に鉄拳明王を合体!!」
手札3⇨2
リザーブ6⇨2
トラッシュ0⇨2
【サイバードラモン+幻魔神】LV2(3)BP15000
【鉄拳明王+幻魔神】LV1⇨2(1⇨3)BP13000
「!!」
英次の場、サイバードラモンと鉄拳明王の背後に凍てつく異魔神ブレイヴ、幻魔神が現れ、その手から放たれる光線が2体とリンクし、合体状態となる。
2体には【重装甲】が与えられるが、特にサイバードラモンに赤の装甲が与えられたのはこの先厄介になる事は間違い無くて………
「そのままアタックステップです!!お願いします!!サイバードラモンッ!!」
英次の指示を聞く前から暴走するように走り出すサイバードラモン。その目指す先は椎名のライフであって………
「来たな……ライフで受ける!!」
ライフ4⇨2
サイバードラモンは空が張り裂けるような咆哮を上げながら、その鋭い爪で椎名のライフを一気に2つ引き裂く。これでさらに鉄拳明王の追撃も来て仕舞えば椎名は敗北するが………
「ライフ減少によりバースト発動、マリンエンジェモン!!」
「!!」
「効果によりこのターン、私のライフは合体コストを無視してコスト9以下のスピリットのアタックでは減らされない!!そしてその後召喚する!!現れろ!!」
手札2⇨3
リザーブ3⇨0
【マリンエンジェモン】LV3(3)BP9000
椎名のバーストカードが勢い良く反転すると共にピンク色の小さい究極体スピリット、マリンエンジェモンが飛び出してくる。その力でこのターン限定で椎名のライフは減らされない。
椎名はさらにディーアークの効果で手札を少しずつ回復していく。
「マリンエンジェモン………ですが、この程度はまだ許容範囲で、想定内です!!…ターンエンド!!」
【サイバードラモン+幻魔神】LV2(3)BP15000(疲労⇨回復)
【鉄拳明王+幻魔神】LV2(3)BP13000(回復)
【永遠なる水道橋】LV1
【最後の優勝旗】LV1
【最後の優勝旗】LV1
【要塞都市ナウマンシティー】LV1
バースト【無】
そのターンをエンドとした英次。サイバードラモンは自身の効果で回復する。
マリンエンジェモンでフィニッシュまで至らなかったものの、あの椎名をここまで追い詰めているのだ。十分過ぎるほどに戦えているといえて………
次は椎名のターンだ。『反撃に出る』……そう言わんばりに自身のターンを強気な姿勢で進行していき………
[ターン06]椎名
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
《ドローステップ》手札3⇨4
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨5
トラッシュ4⇨0
【グラウモン+ズバモン】(疲労⇨回復)
「メインステップ!!グラウモンと合体しているズバモンをマリンエンジェモンに移動!!」
リザーブ5⇨2
【マリンエンジェモン+ズバモン】LV3(6)BP12000
グラウモンからズバモンが飛び出してくると、ズバモンは頭の上にマリンエンジェモンを乗せ、新たな合体状態となった。
マリンエンジェモンはこれで全ての色を持つスピリットとして扱えるようになった。それを見越して椎名は手札のカードを1枚引き抜いて………
「【煌臨】発揮!!対象はマリンエンジェモン!!」
リザーブ2s⇨1
トラッシュ0⇨1s
「っ……来る!!」
マリンエンジェモンがズバモンと共に真っ赤な光に包まれていき、その中で大きく姿形を変えていく。
そんな様子を見て、英次は身震いした。来るのだ。間違いなく、あの芽座椎名の最強のスピリットが………
「来い、赤きロイヤルナイツ、デュークモンッッ!!」
手札4⇨3
【デュークモン+ズバモン】LV3(6)BP21000
その光を弾き飛ばしながら現れたのは白い鎧と赤いマントを持つ究極体のデジタルスピリット、デュークモン。ズバモンとの合体状態であるため、その姿はいつもよりも刺々しく、槍はビーム状となっていて………
「出た……今の椎名さんのエース。これを超えてこそ真の勝利だ………!!」
「ディーアークの効果でドローし、デュークモンに合体しているズバモンをグラウモンに移動させる!!」
手札3⇨4
【グラウモン+ズバモン】LV2(2)BP9000
強化されているはずのデュークモンの合体状態を解除し、再びグラウモンに黄金の鎧を纏わせる椎名。デュークモンは通常状態に戻った。
今からデュークモンで攻めるとなると、ズバモンとの合体により付与される『全色』が邪魔をする。幻魔神の与える【重装甲】に阻まれ、効果でスピリットを1体も破壊できないのだ。
英次も当然ながらそれを見越していて………
「行くぞ英次、ここからがバトルだ!!……アタックステップ、デュークモンでアタック!!」
気合いを入れ、アタックステップへと移行する椎名。デュークモンがその聖なる槍を構える。
「そのアタック時効果!!シンボル2つの鉄拳明王を破壊!!」
「!」
「聖槍の一撃……ロイヤルセーバーッッ!!」
デュークモンがその槍の先端にエネルギーを溜め、一点集中で鉄拳明王に向けて放つその一撃は鉄拳明王の屈強なる肉体に突き刺さり、貫いて爆発させた。
「どうだ英次!!このまま一気に……」
「甘いです椎名さん!!」
「!?」
「僕はフラッシュアクセル……ジャスティモンの効果発揮!!」
リザーブ5⇨3
トラッシュ2⇨4
英次はまたしてもこの展開を読んでいたと言うように手札のカードを使用する。それは自身のオーバーエヴォリューションによって生み出された奇跡のカード。
白と青の自分だからこそ生まれてきてくれたカードだ。
「ジャスティモンの効果!!相手スピリット1体をデッキの下に!!……ジャスティキックッッ!!」
英次とサイバードラモンの背後から飛び出してきたのは赤いマフラーを靡かせるヒーローのような究極体スピリットジャスティモン。
ジャスティモンは高い跳躍力を活かして上空へと跳び上がり、滑空するようにデュークモンに向けてキックを放つ…………その一撃は確かにデュークモンを粉砕する力があったが………
「手札にあるグラニの効果!!」
「え!?」
「1コスト支払ってデュークモンに直接合体するように召喚!!さらにこのターン、デュークモンは手札デッキに戻らない!!」
手札4⇨3
リザーブ1⇨0
【デュークモン+グラニ】LV3(6)BP24000
真紅の飛行物体、グラニが現れ、ジャスティモンを弾き飛ばす。
「っ……その後1コスト支払ってジャスティモンを召喚します!」
リザーブ3⇨0
トラッシュ4⇨5
【ジャスティモン】LV2(2)BP10000
グラニに突撃され、弾き飛ばされたジャスティモンだったが、そのまま受け身を取り、華麗に英次の場、サイバードラモンの横へと着地した。
「詰めが甘かったな英次……デュークモンのアタックは続行!!そしてサイバードラモンはこのアタックを効果によりブロックしなければならない!!」
「!!」
当然デュークモンのアタックは継続される。グラニと共に英次の場へと駆ける。サイバードラモンもそれを視認するなり、主人を守らんとするように咆哮を上げ、迎撃にむかう。
激突するデュークモンとサイバードラモン。デュークモンの聖なる槍から繰り出される刺突を脇に挟み、抑え込むサイバードラモン。しかし、やはりデュークモンの方が力が強いか、その状態のままサイバードラモンをジリジリと押し続けていく………
だが………
「椎名さん。僕はあなたのグラニの効果も想定済みでした!!」
「!?」
「フラッシュマジック!!フルーツチェンジ!!」
手札1⇨0
【ジャスティモン】(2⇨1)LV2⇨1
【サイバードラモン+幻魔神】(3⇨1)LV2⇨1
トラッシュ5⇨8
「何!?黄色のカード!?」
英次使用したのは白でも、況してや青でもない黄色のカード。椎名とのバトルを考え、グラニカードをも想定内に入れたカードだ。
椎名もその効果をよく知っている。
「この効果により、サイバードラモンとデュークモンのBPを入れ替えます!!」
【サイバードラモン+幻魔神】BP10000⇨24000
「くっ……!!」
【デュークモン+グラニ】BP24000⇨10000
拮抗するデュークモンとサイバードラモンを黄色いオーラが包み込んで行く。不思議な事に、その中で2体の力の差は一寸の狂い無しに入れ替わって………
「いけぇ!サイバードラモンッッ!!」
英次の叫びと共に再び鋭い咆哮を上げるサイバードラモン。デュークモンの槍を力任せに砕き、固めた拳でそれを殴り飛ばした。デュークモンはあまりのダメージに力尽き、グラニを残して爆発四散してしまう。
「っ……デュークモン!!」
「倒した……サイバードラモンが……僕が……椎名さんのデュークモンを……!!」
歓喜の声を震わせる英次。今、この瞬間。彼は椎名のデュークモンを倒した事で自分の成長を確かに肌で感じ取ったのだろう。
「ターンエンドだ……やるな英次、まさかデュークモンが負けるなんて!」
【グラウモン+ズバモン】LV2(2)BP9000(回復)
【グラニ】LV1(1)BP6000(疲労)
【ディーアーク】LV1
【デジヴァイス】LV1
バースト【無】
「椎名さんのお陰です!!僕はあなたのお陰で強くなれたんです!!」
「へへ、嬉しいけど、バトルは終わってない。負けるつもりはないぞ!!」
「はい!!僕もこれからです!!」
グラウモンをブロッカーとして場に残し、そのターンをエンドとした椎名。アタックしてジャスティモンごとライフを破壊することもできたが、それでは英次に大きくコアを与えてしまうと考えたのだろう。
そして次はここまで見事にあの芽座椎名を完封している英次のターン。勝負を決めるべくターンを進行させていく。
[ターン07]英次
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
《ドローステップ》手札0⇨1
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨9
トラッシュ8⇨0
【サイバードラモン+幻魔神】(疲労⇨回復)
「メインステップ!!スピリットのLVをアップ!!ジャスティモンに幻魔神を右合体させて、マジック、秘剣燕返し!!合体しているズバモンを破壊して、その効果発揮後にコスト4のグラウモンも破壊します!!」
手札1⇨0
リザーブ9⇨3
【サイバードラモン+幻魔神】(1⇨3)LV1⇨2
【ジャスティモン+幻魔神】(1⇨4)LV1⇨3
「!!」
英次のスピリットたちが強化されていく中、青い斬撃がズバモンと合体しているグラウモンを襲う。鎧共々斬り裂かれ、爆発四散した。
「アタックステップ!!サイバードラモンッッ!!」
サイバードラモンが今一度椎名に牙と爪を向け、残り2つのライフを砕くべく走り出した。後方にはまだジャスティモンも控えている。
英次は勝利を確信したが………
「フラッシュマジック、デルタバリア!!」
手札3⇨2
リザーブ7⇨4
トラッシュ2s⇨5s
「!?」
「この効果により、このターン、私のライフはコスト4以上のスピリットのアタックではゼロにならない。そのアタックはライフで受ける!」
ライフ2⇨1
サイバードラモンが椎名のライフを砕く直前。椎名が引き抜いたカードにより、前方に三角形のバリアが現れ、サイバードラモンの攻撃から椎名のライフを守る。
「どうした英次、私の壁はまだまだ厚くて、高いぞ……」
「そ、そんな……まだそんなカードを残してたなんて…………ターンエンドです」
【サイバードラモン+幻魔神】LV2(3)BP15000(疲労⇨回復)
【ジャスティモン+幻魔神】LV3(4)BP19000(回復)
【永遠なる水道橋】LV1
【最後の優勝旗】LV1
【最後の優勝旗】LV1
【要塞都市ナウマンシティー】LV1
バースト【無】
致し方なくそのターンをエンドとする英次。その瞬間にサイバードラモンが自動で回復する。
次は椎名のターンだが、何とか首の皮一枚繋がった状態であるのは確かな事。勝利までは絶望的な道のりだ。
だが、英次は不思議とこの時点で椎名が何か奇跡を超える事をするのではないかと直感で悟っていて………
「英次……このターンで最後だ!!」
「!!」
今、ラストターンの宣言と共に椎名のターンが幕を開ける。
[ターン08]椎名
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ5⇨6
《ドローステップ》手札2⇨3
《リフレッシュステップ》
リザーブ6⇨11
トラッシュ5⇨0
【グラニ】(疲労⇨回復)
「メインステップ!!ギルモンを召喚!!ディーアークの効果でドローし、グラニと合体!!」
リザーブ11⇨6
トラッシュ0⇨2
【ギルモン+グラニ】LV3(4)BP12000
真紅の魔竜成長期の姿、ギルモンが召喚される。ギルモンは飛翔するグラニの背にまたがり、合体スピリットとなる。
「アタックステップ!!ギルモンでアタックだ!!」
「っ!!」
破棄カード↓
【グリードサンダー】
グラニがギルモンを乗せて飛翔する。その瞬間にグラニの効果で英次のデッキからカードが破棄される。
さらに椎名は手札を引き抜く。この場にデュークモンを超える奇跡のスピリットを呼び出すために………
「フラッシュチェンジ!!デュークモン クリムゾンモード!!」
リザーブ6⇨2
トラッシュ2⇨6
「!!」
「この効果によりシンボル3つまでスピリットを破壊する!!……赤の装甲が無いジャスティモンを破壊する!!」
椎名の背後から真紅の炎で身体が構成された龍が尾を引いて現れる。それは英次の場へと突き進み、ジャスティモン飲み込み、焼き尽くした。
「さらに!!この効果発揮後、赤一色のコスト7以上のスピリットと回復状態で入れ替える!!対象はグラニと合体しているギルモン!!」
その炎の龍は最後にグラニに乗っかっているギルモンにそれごと衝突。ギルモンは突然変異を遂げ、グラウモン、メガログラウモン、デュークモンへとその炎の龍の中で進化を繰り返していく。
「燃え上がれ聖騎士!!真なる深い紅を纏い、邪悪なる者皆、照らし破れッ!!」
デュークモンの右手の槍、左手の盾が消滅し、さらにその白い鎧が熱により深い紅に染まる。そこからさらに深紅のアーマーが各部に取り付けられていき、そして紅いマントも同様に消滅、背中には新たに純白の翼が10枚生える。
そのスピリットは周りの炎を全て振り払い、姿を見せる。
「……デュークモン クリムゾンモードッ!!」
【デュークモン クリムゾンモード+グラニ】LV3(4)BP27000
それは椎名の持つ最強のスピリット。伝説のデジタルスピリット、ロイヤルナイツであるデュークモンが究極体という概念を超え、さらに進化した姿。
その真なる深い紅の力と聖なる光の力の前には何人たりとも勝つことはできない。
「こ、これがデュークモンを超えた………クリムゾンモード……!!」
『芽座椎名』は基本的に『クリムゾンモード』を使わなかった。それはその前段階であるデュークモンや他のスピリットで十分勝つことができたからだ。
つまり、英次の前でそれを使ったという事は、椎名が英次相手に本気になったと刺し違えない。
「アタックは継続中だ!!」
「っ………僕はサイバードラモンでブロックします!!」
サイバードラモンは効果によってブロックせざるを得ない。咆哮を上げながらクリムゾンモードを迎え撃つ。
「神剣ブルトガングッッ!!」
椎名がそう叫ぶと、クリムゾンモードは光の粒子一粒一粒を操り、剣の形を形成する。そしてサイバードラモンの懐へと一瞬で潜り込み………
「無敵剣……インビンシブルソードッッ!!」
作り上げた神剣を振るい、サイバードラモンを瞬く間に斬り刻む。サイバードラモンは流石に耐えられず大爆発を起こしてしまう。
「さらに!!バトル終了時、相手のトラッシュにあるスピリットカード3枚につき1つ、ライフを破壊する!!」
「!!」
「神刀カムイ!!」
クリムゾンモードは光で構成された刀を左手に握る。そのままその刀と神剣の切っ先を英次のライフへと向け………
「っ……!!」
ライフ3⇨2
その先端部から光線を放ち、英次のライフを1つ貫いてみせた。さらにクリムゾンモードは神剣と神刀を改めて構え直し………
「これで終わりだ英次!!……クリムゾンモードで二度目のアタック!!」
「!!」
破棄カード↓
【ストロングドロー】×
グラニが自身の効果で英次のデッキを1枚破棄する。クリムゾンモードが高速で英次のライフへと接近、そして神剣と神刀を高々と上へ振り翳し………
「……やっぱり、椎名さんはかっこいいな……………僕はライフで受けます……ありがとうございました!!椎名さん!!」
ライフ2⇨0
振り下ろされた。その二本の刀身により英次の残った2つのライフは斬り裂かれる。2回戦第二試合は芽座椎名の勝利だ。それを祝うように観客達も轟音のような歓声を上げた。
「英次、ほんと……強くなったな!!見違えたよ……」
「椎名さん……」
バトルが終わり、椎名はBパッドを閉じ、英次に近づきながら言った。
ずっと彼女の背中を追いかけ続けていた英次にとって、その言葉は何よりも嬉しくて………
「私達はさ、もうすぐ卒業だから、これからは英次が学園を引っ張って行けよ!!」
「っ……はい!!ありがとうございます!!」
英次は椎名から差し出された手を固く握った。
「で、でも卒業する前にもう一度僕とバトルしたください!!僕、もっと強くなって椎名さんに勝ちます!!」
「あぁ、どっからでもかかって来い!!いつでも相手になるさ!」
こうして、椎名は強敵となった英次に勝利を収め、見事に2回戦を突破し、準決勝へと駒を進めたのだった。
ー…
「成る程、あれが『デュークモン クリムゾンモード』……初めてあの小娘の本気を見たな」
そう自分の控え室で呟いたのは『エニー・アゼム』
芽座椎名のバトルをこの目で見て、彼女の底に眠る力を確認していた。ロイヤルナイツであるデュークモン。それがさらに進化したクリムゾンモード………
「取るに足らんな……鬼の雑兵のカードではそんなものか………」
だが、その絶大な力を見てもなお、エニー・アゼムは余裕ある表情を見せながら、まるでその力を簡単に捻り潰せるような物言いを口ずさんだ。
〈次回予告!!〉
2回戦は続く、バークも勝ち上がっていく中、遂にエニー・アゼムが重たい腰を上げる。その対戦相手は五町。彼女が悪人だという事も何も知らない五町は………次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ「フォーゼVSゾディアーツ!!」……今、バトスピが進化を超える!!
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※次回のサブタイトルや内容などは予告なく変更の可能性があります。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!!
今回から本日のハイライトカードは無くなりました。
最近全く話に動きがありませんが、次回あたりから傾いていく予定です。
私はこの間、自分の活動報告にて、『感想欄で読者様の発言を制限しすぎました』と謝罪し、『今後は感想の内容が含まれていたら返信します』と言いましたが、『感想欄に作品とは関係の無い雑談等の目的で喋る人が嫌』と言う方々もおられる事は間違い無いので、感想を書く際はその点をしっかりと考慮した上で行なってくださるようお願いします!!
※活動報告等でのコメントでは気にしなくていいです!!