バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

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第112話「フォーゼVSゾディアーツ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれ、オレンジアームズ!!」

 

「くっ……ライフだ!!」

ライフ1⇨0

 

 

苛烈を極める第10回界放リーグ。その2回戦第三試合。『バーク・アゼム』と『岸田空牙』のバトル。バークの操る侍のような姿をした鎧武が手に持つ二本の刀で空牙の最後のライフを容赦なく切り捨てる。

 

これにより、勝者はバークだ。あのエニー・アゼムの末裔の勝利に、観客の歓声が一斉に沸き上がった。

 

 

「くっソォォォォォォオォ!!負けちまったぁぁあ!!俺の青春が今、終わったぁぁぁあ!!……すまん、我がライバル赤羽司ぁぁあ!!」

「………」

 

 

どこまでも暑苦しい男、空牙は敗北しても尚、テンションが下がらず暑苦しい言葉の羅列を並べた。

 

 

「ふんっ……お前では我は足りん」

 

 

そう言ってスタジアムのバトル場を後にするバーク。

 

彼は今、猛烈に腹を立てている。

 

理由は『司の開会式での唐突な優勝宣言』『司のロード・バロン』だ。平たく言えば『赤羽司という人間そのもの』に腹を立てている事になる。バークは早く司を潰したくてしょうがなかった。

 

 

ー…

 

 

「いよいよっスね!!」

 

 

第三試合が終わり、次はラストとなる第四試合。その対戦カードは『岬五町』と『ノヴァ・アゼム』

 

五町はバトル場へと立つべく、スタジアム裏を堂々と胸を張って歩いていた。そのそぶりや仕草からは緊張の文字はなくて………

 

そんな時だ。

 

 

「よっ!!五町!!」

「姐さん!!」

 

 

広大なバトル場の入り口にて彼女を待ち構えていたのは、彼女が『姐さん』慕う存在、『芽座椎名』

 

最早癖になっているのか、五町は椎名を目に移すなりその瞳を輝かせる。強くて可愛くてかっこいい。そんな椎名のようなバトラーを彼女は目指しているからでもあるが………

 

 

「姐さん!!あたしの応援、近いところでしてくれるんスか!?」

「あぁ、まあね」

「おぉ、感激っス!!あたし、絶対勝つんで見ててください!!」

 

 

あの尊敬する『芽座椎名』が間近で自分のバトルを見てくれる。そんな嬉しい事は五町にとってはない。歓喜の声を上げながらバトル場へと走っていくが………

 

 

「気をつけろよ、五町………」

 

 

走り行く五町の背中を見つめながらそう呟いた椎名。

 

内心、心配していた。相手はあのエニー・アゼム。あの身体には進化の力がふんだんに詰まっている。危険な香りしかしない。

 

椎名は五町に何かあった時、いつでも護ってあげれるように今、ここに居座っていたのだ………

 

 

******

 

 

一方で広大な中央スタジアムのバトル場。第四試合を行う『岬五町』と『エニー(ノヴァ)・アゼム』はお互いの顔を見合いながら対峙しており………

 

 

「あんたがノヴァ・アゼム!!くぅ〜〜っ!!なんかもう強そうな感じあるっスね!!……あたしは岬五町!!よろしくっス!!」

「人間とじゃれ合う気は無い。妾と対戦できる事を光栄に思うが良い小娘」

「超上から!!」

 

 

ノヴァ・アゼムの予想以上の上から目線に一瞬戸惑う五町。

 

五町はノヴァ・アゼム。いや、エニー・アゼムの本性を知らないのだ。椎名が彼女を巻き込まないために一切話していないからだ。

 

つまり、五町は危険なバトルを知らずして楽しもうとしていて………

 

 

「さぁ行くぞ小娘。妾の進化の力を溜めるための生贄となるが良い」

「怖っ!!」

 

 

Bパッドを展開しながらそう言ったエニー・アゼム。五町はこの言葉を単なるジョークと思っていて、その言葉を間に真に受けてはいない。

 

 

「へへっ!!でも、相手はあのエニー・アゼムの末裔さん!!不足無しっスね!!」

 

 

やる気十分な五町。自身もBパッドを展開する。

 

そしていよいよ始まる第10回界放リーグ。その2回戦最後の試合が…………

 

 

「岬五町、タイマン張らせてもらうぜッ!!」

「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

コールと共にバトルスピリッツが幕を開ける。

 

先行は五町だ。笑顔を絶やさぬままそのターンを進行していく。

 

 

[ターン01]五町

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、行くぞ相棒!!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

五町は「相棒」と呼称するカードをBパッドに置いた。

 

………すると……

 

 

 

スリー!!

 

 

ツー!!

 

 

ワン!!

 

 

「召喚!!」

 

 

 

「…!?」

 

 

無機質な機械音の謎のカウントダウン。そして五町の召喚の合図で白い煙がスタジアム中に充満する。

 

そして煙がゆっくりと晴れていくと………

 

 

「仮面ライダーフォーゼ ベースステイツ!!」

【仮面ライダーフォーゼ ベースステイツ[2]】LV1(1)BP2000

 

「っ……仮面スピリット………」

 

 

煙が発生した中心五町の場にはスピリットがいた。

 

それもただのスピリットではない。1枚1枚がデジタルスピリット以上のレアカードである仮面スピリットだ。

 

見た目も特徴的なものが多い仮面スピリットだが、五町の持つ仮面スピリットは白い。まるで宇宙服を模しているかのよう………

 

 

「……よぉ〜しっ!!……宇宙キターーー!!!」

「小娘。其方は妾を小馬鹿にしているのか?」

「まぁまぁ、お固いことは気にしなさんなって…気合い入れっスよ〜〜」

 

 

相棒であるフォーゼの召喚にテンションが上がったか、五町は両手を天に上げ、そう力強く叫んだ。場のフォーゼも同様に五町と同じポーズを取った。

 

別にふざけているわけではない。これは彼女のお決まりのセリフであって……

 

 

「そんじゃ気を取り直して召喚時効果発揮!!カードをオープンし、その中の対象となるカードを手札に加える!」

オープンカード↓

【仮面ライダーメテオ】◯

【仮面ライダーメテオ】◯

【仮面ライダーなでしこ】◯

【仮面ライダーなでしこ】◯

 

 

その効果は成功。五町は新たに【仮面ライダーメテオ】のカードを新たに1枚加えた。

 

 

「さらにバーストを伏せ、エンドっスよ!!」

【仮面ライダーフォーゼ ベースステイツ[2]】LV1(1)BP2000(回復)

 

バースト【有】

 

 

バーストもセットされ、中々に上々なスタートを切った五町。次なるはエニー・アゼムのターン。この大会での肩書きもあって、そのバトルに多くの観客達が期待していた。

 

それは五町も一緒である。次の作戦など考えずにただただエニー・アゼムのターンを期待の眼差しで眺めていた。

 

 

[ターン02]エニー・アゼム

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「準備だ。妾は旅団の摩天楼を2枚配置する」

リザーブ5⇨0

トラッシュ0⇨5

 

 

エニー・アゼムの背後に細長く巨大な摩天楼が2つ連なり現れる。その効果でカードをドローし、その質を向上させていく。

 

 

「さらに妾も罠を伏せ、終わりとしよう」

手札5⇨4

 

【旅団の摩天楼】LV1

【旅団の摩天楼】LV1

 

バースト【有】

 

 

彼女の言う『罠』とは、ここでは『バーストカード』を指す。エニー・アゼムはそのターンをエンドとした。

 

五町にとって、まだエニー・アゼムの情報は紫のデッキという事しか認知できていない。

 

だが、五町はそんな細かな戦術や計算などはしない。バトルスピリッツを直感のみでやっている。

 

彼女のやる事は常に1つ。敵のライフを一気にぶち壊していくだけだ。

 

 

[ターン03]五町

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨4

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ!!…良いもん引いたっス!!…フォーゼのLVを上げて、チェーンソーモジュールのスイッチ、オン!!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

【仮面ライダーフォーゼ ベースステイツ[2]+チェーンソーモジュール】LV1⇨2(1⇨2)

 

 

ーチェーンソーオン♪

 

 

フォーゼの手に小さなスイッチが握られる。フォーゼはそれをベルトに差し込み、そのスイッチを入れる。すると、右足にチェーンソーのような物が装着された。

 

 

「チェーンソーモジュールの効果!!コアを1つ増やすっス!!さらにフォーゼの効果でもう1つ!!」

リザーブ0⇨1⇨0

【仮面ライダーフォーゼ ベースステイツ[2]+チェーンソーモジュール】(2⇨3⇨4)

 

 

チェーンソーモジュールとフォーゼのコンボだ。五町のコア数が急激に増加していく。しかもダブルシンボルのスピリットを場に出しつつだ。

 

 

(っ……なんだ、この小娘。この仮面スピリット……この違和感………)

 

 

エニー・アゼムは五町の展開を視認しながら不思議と寒気を感じていた。

 

何か自分が恐れているものがあるような………そんな感覚があのフォーゼから発せられている気がしてならない。

 

 

「アタックステップ!!速攻で行くっスよフォーゼ!!」

 

 

アタックステップに移行する五町。フォーゼが拳を構え、戦闘態勢に入る。五町が得意としているこの戦法。攻撃を仕掛けたという事は『あのカード』も同時に手札にあることは明白であって…………

 

 

「【煌臨】発揮!!対象はフォーゼ!!」

【仮面ライダーフォーゼ ベースステイツ[2]+チェンソーモジュール】(4s⇨3)

トラッシュ3⇨4s

 

「!?」

 

 

フォーゼはチェーンソーのスイッチを一旦オフにし、消滅させると、腰にあるドライバーに、まるで自爆スイッチのような形をしたスイッチが配備される。フォーゼはそれを開き、押した…………

 

 

 

♬コーズーミ〜〜ックオン!

 

 

 

また無機質な機械音のメロディが流れたかと思うと、フォーゼに合計40ものスイッチが吸い込まれるように集結していき、様々な色の光に包まれ、僅かながらにフォルムを変えていく……さらにその右手には新たに巨大な剣が出現する。フォーゼは光を解き放ち、新たな姿を見せると同時にその剣を力強く握り締めた。

 

 

「私はバトスピを掴む!!…仮面ライダーフォーゼ コズミックステイツ、煌臨!!」

手札4⇨3

【仮面ライダーフォーゼ コズミックステイツ+チェンソーモジュール】LV2(3)BP17000

 

「………っ」

 

 

現れたのは水色に輝く究極のフォーゼ、フォーゼ コズミックステイツ。

 

バトスピを掴む。五町の最強エースでもある。

 

 

「煌臨時効果!! このバトル中、コズミックステイツはスピリットとネクサスの効果を受けない!!」

 

「ほぉ、耐性か……白らしい。だが、その程度で妾を崩せるか!」

 

 

余裕の表情を浮かべたエニー・アゼム。

 

だが、コズミックステイツの恐ろしいところはさらにもう一つの効果だ。五町はドヤ顔でその説明を行う。

 

 

「えっへへ、コズミックステイツは合体しているモジュール1つにつき白のシンボルを1つ追加するっス!!」

「なに!?」

「今、コズミックステイツにはチェンソーが合体している………これにより、合計シンボルは3!!」

 

 

コズミックステイツは胸部にある8のパネルをタッチすると、その力が充填され、合計でトリプルシンボルのパワーを得る。

 

コズミックステイツがシャトルのような形をした巨大な剣のレバーを引くと、その剣はゆっくりと二等分に割れ、中から刀身のある真なる剣が出現する。

 

その真なる剣には膨大な宇宙のエナジーが蓄積され、青く変色していき………

 

 

「ライダー超銀河フィニィィィッッシュッッ!!!」

 

「ぐ、ぐぁぁぁぁあ!!!」

ライフ5⇨2

 

 

それを横一閃に振るい、放たれた斬撃が鎧武をも蹴散らしてバークのライフに直撃する。そのライフは一気に3つも砕かれてしまい、残りたったの2つとなる。

 

 

「くっ、ライフ減少によりバースト発動!!絶甲氷盾!!」

「!!」

 

「ライフ1つを回復!!」

ライフ2⇨3

 

 

エニー・アゼムの伏せていたバーストがオープンされる。その効果で瞬時にライフ1つが回復するが、それでも3つ。コズミックステイツにとっては簡単に破壊できるラインのままだ。

 

 

「やっしゃぁ!!どうっスかノヴァ・アゼム!!…芽座椎名の弟子、岬五町の実力は!!……ターンエンド!!」

【仮面ライダーフォーゼ コズミックステイツ+チェンソーモジュール】LV2(3)BP17000(疲労)

 

バースト【有】

 

 

「芽座椎名の弟子……だと!?」

 

 

エニー・アゼムが五町のコズミックステイツから受け取った攻撃より感じてしまったのは『恐怖』

 

何故だか知らないが五町とあのフォーゼからは果てしない恐怖を感じていた。そしてその思考の行き着いた境地は…………

 

『奴をこの世から消さねばならない』というものであって…………

 

 

「岬五町………妾は其方を消す!!」

「いや、だから言い回し怖っ!!」

 

 

エニー・アゼムが今までにない程に殺気だったオーラを放つ。それに最も近くて気づきやすいはずの五町だが、全く気づかず、寧ろその言葉をネタのように捉えている。

 

実際ふざけている場合ではない。五町は知らずしてこの世を救う英雄になろうとしていた………

 

 

[ターン04]エニー・アゼム

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨9

トラッシュ5⇨0

 

 

「メインステップ!!魂鬼を召喚し、運命の獅子座、レオ・ゾディアーツを呼ぶ!!」

手札5⇨3

リザーブ9⇨0

トラッシュ0⇨3

【魂鬼】LV1(1)BP1000

【レオ・ゾディアーツ】LV3(5)BP12000

 

 

人魂ならぬ鬼魂、魂鬼が呼び出されると共に、黒い靄が現れ、そこに獅子座が浮かび上がり、中から白き体を持つ獅子座の怪物が出現した。

 

 

「おおっ!!何スかそのスピリットッ!!」

 

 

自身の身に迫る危機を知らずでいる五町。目の前のレオ・ゾディアーツに興奮を覚えている。

 

 

「黙れただの人間!!其方に発言権はない!!……アタックステップ!!レオよ、あの仮面スピリットに指定アタック!!」

「え!?BPはコズミックステイツの方が高いのに!?」

 

 

レオがコズミックステイツを睨みつけ、ターゲットにし、そこはめがけて走り出す。コズミックステイツもそれを見兼ねて独特な形をした剣を構える。

 

しかし、丁度レオの鋭利な爪とその剣が音を立てながら激突した直後………

 

 

「レオの効果!!指定したスピリットを効果で破壊し、レオを回復する!!」

【レオ・ゾディアーツ】(疲労⇨回復)

 

「何ィィィィ!?」

 

 

コズミックステイツの剣がレオの爪の力により腐食していく。そしてレオは力任せにコズミックステイツを殴り飛ばすと、そのままその爪でコズミックステイツの胸部を突き刺した。コズミックステイツは堪らず爆発してしまう。

 

この時、五町はコズミックステイツと合体していたチェーンソーモジュールを場に残すことができたが、残したとしてもレオの効果で破壊されるのが目に見えていたので、場には残さず、コズミックステイツと共にトラッシュへと送った。

 

 

「何者かは知らぬが朽ちてもらうぞ!!魂鬼で攻撃!!」

 

「っ……ライフで受ける!!」

ライフ5⇨4

 

 

エニー・アゼムが間髪入れずに魂鬼でアタックを仕掛ける。それは五町のライフ1つを体当たりで破壊した。

 

だが、これは五町が事前に伏せていたバーストカードの発動条件でもあって………

 

 

「よっし!!反撃!!……ライフ減少によりバースト発動!!…仮面ライダーメテオ!!」

 

 

五町のバーストカードである強力な仮面スピリット、メテオが見参し、レオや魂鬼を蹴散らす………

 

かと思われたが、その動きに合わせるようにエニー・アゼムはあるカードを手札から引き抜いて………

 

 

「緩い!!妾な手札にある超星使徒スピッツァードラゴンの効果!!」

「!?」

 

「罠が発動した時、召喚する!!さらにその罠を発動前に破棄する!!」

手札3⇨2

【レオ・ゾディアーツ】(5⇨3)LV3⇨2

トラッシュ3⇨4

【超星使徒スピッツァードラゴン】LV1⇨2(1⇨3)

 

「っ!?」

 

 

猛々しい赤い炎と禍々しい紫の炎が渦巻いていく。その中で生まれた竜はそのエネルギーを全て吸収し、現れる。その名はスピッツァードラゴン。脅威的な効果を持つスピリットである。

 

その誕生と共に五町の伏せていたメテオのカードが粉々に砕け散った。さらにオマケと言わんばかりにさり気なくコアまで増加しており、最早やりたい放題な状態。

 

 

「召喚しつつバースト破棄!!!てか、かっこよ!!」

 

 

しかし、絶望的な状況でも五町はその笑顔を絶やさない。バトルスピリッツをどこまでも楽しんでいる証拠でもあるが、ここまで来ると鈍感が過ぎるものもある。

 

 

「……やばい……」

 

 

その様子を近くで見ていた椎名はようやく気づいた。エニー・アゼムが五町に対して本気を出していることを。思わず身体が前のめりになり、今にも飛び出さんとするように身構えていた。

 

 

「これで其方を守るものは何もない!!レオ、スピッツァー!!攻撃せよ!!」

 

 

レオとスピッツァーが五町のライフ目掛けて走り出し、飛び立つ。五町に打つ手はない。それを受ける他無くて………

 

 

「ライフで受けるっス!!………っ!?」

ライフ5⇨4⇨3

 

 

スピッツァーの赤と紫の炎をぶつける攻撃。レオの鋭い爪から繰り出される刺突が五町のライフを破壊するが……

 

五町はそこから発せられる妙な痛みを感じた。身体が中から抉られるような感覚。まだ軽いものではあるが、椎名と違い未経験な彼女にとって違和感は拭えなくて………

 

 

「っ……なんだ、これ、なんか変な感じっスね」

 

「………鈍感な小娘だ。妾の番は終えよう」

【魂鬼】LV1(1)BP1000(疲労)

【レオ・ゾディアーツ】LV2(3)BP10000(疲労)

【超星使徒スピッツァードラゴン】LV2(3)BP8000(疲労)

 

【旅団の摩天楼】LV1

【旅団の摩天楼】LV1

 

バースト【無】

 

 

「Bパッドの不調?……へへ、まあいいや。ここからが楽しいバトルだ!!私の力を見せつけてやる!!」

「………五町」

 

 

だが、五町のバトルに対してのモチベーションが下がる事はなく、寧ろその痛みは一種のスパイスのようになってしまっている。

 

椎名はその五町の逞しい背中を見ながら昔の自分と姿を重ねた。客観的に見て、自分もあんな感じだったのか、あんな怖いもの知らずで鈍感だったのか……と。

 

そう考えると、五町の気持ちを今は尊重して、このバトルを最後まで見届けたいところではあるが、椎名は『このバトルを終わらせるべく』同じバトル場で審判をしている晴太の元へと走って行った。

 

そんな中でも五町のターンが幕を開けていて………

 

 

[ターン05]五町

《スタートステップ》

《コアステップ》6⇨7

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ7⇨11

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップ!!2体目のフォーゼ ベースステイツを召喚!!」

手札4⇨3

リザーブ11⇨3

トラッシュ0⇨3

 

 

スリー!!

 

 

 

ツー!!

 

 

 

ワン!!

 

 

 

「召喚!!」

【仮面ライダーフォーゼ ベースステイツ[2]】LV2(5)BP4000

 

 

白い煙が吹き出て、そこから今回2体目となるベースステイツが姿を現した。

 

 

「気合い入れ直しだ……うぉぉお!!宇宙キターーー!!!」

 

 

再び両手を上げ、叫ぶ五町。その勢いはエニー・アゼムを知らずのうちに恐怖させている。

 

 

「ノヴァ・アゼム。改めて、タイマン張らせてもらうぜっ!!召喚時効果!!」

オープンカード↓

【仮面ライダーフォーゼ コズミックステイツ】◯

【チェーンソーモジュール】◯

【アルテミックシールド】×

【仮面ライダーなでしこ】◯

 

 

効果は成功。五町は前のターンも使用したセットである【仮面ライダーフォーゼ コズミックステイツ】と【チェーンソーモジュール】を加え、さらに【アルテミックシールド】は自身の効果で手札に加えられた。

 

 

「よし、3枚ゲット!!」

手札3⇨6

 

「っ……またあのカードを!?」

 

 

五町の凄まじい引きの強さに驚嘆するエニー・アゼム。五町は全く同じ行動パターンで彼女を追い詰めていく………

 

 

「チェーンソーモジュールを召喚!!効果で魂鬼を手札に戻しつつコアブースト!!さらにベースステイツの効果でさらに追加!!」

手札6⇨5

リザーブ3⇨0⇨1

トラッシュ3⇨6

【仮面ライダーフォーゼ ベースステイツ[2]+チェーンソーモジュール】LV2(5⇨6)

 

「っ!?」

手札2⇨3

 

 

フォーゼがチェーンソーモジュールのスイッチを入れ、右足にチェーンソーを装備すると、それを利用して魂鬼を切り刻む。魂鬼は敢え無く切断され、粒子と化し、手札に戻ってしまう。

 

 

「アタックステップ!!フォーゼでアタック!!…そしてこれがこのバトルの締めっスよ!!【煌臨】発揮!!対象はベースステイツ!!」

【仮面ライダーフォーゼ ベースステイツ[2]+チェーンソーモジュール】(6s⇨5)

トラッシュ6⇨7s

 

 

♬コーズーミ〜〜ックオン!

 

 

 

また無機質な機械音のメロディが流れたかと思うと、フォーゼに合計40ものスイッチが吸い込まれるように集結していき、様々な色の光に包まれ、僅かながらにフォルムを変えていく……さらにその右手には新たに巨大な剣が出現する。フォーゼは光を解き放ち、新たな姿を見せると同時にその剣を力強く握り締めた。

 

 

「私はバトスピをもう一度掴む!!…仮面ライダーフォーゼ コズミックステイツ、煌臨!!」

手札5⇨4

【仮面ライダーフォーゼ コズミックステイツ+チェンソーモジュール】LV3(5)BP20000

 

「………っ」

 

 

新たに現れたのは今回2度目の登場となるコズミックステイツ。その効果によりシンボルの合計は3となっている。一撃で勝負を決めれる程のスペックがこの時点で存在していて…………

 

 

「煌臨時効果!!スピリット1体をデッキ下に!!レオっス!!」

「!!」

 

 

コズミックステイツがシャトルのような形をした剣を構え、凄まじい勢いでレオに襲いかかる。レオは咄嗟に鋭い爪を立てて守りの姿勢に入るも、既に遅し、コズミックステイツは一瞬にしてレオの身体をバラバラに引き裂いていて、レオは堪らず爆発四散した。

 

 

「そして効果によりシンボルは3つ!!……終わりだぁぁあ!!」

 

 

今度はエニー・アゼムに向けて飛び立つコズミックステイツ。エニー・アゼムの場のスピリットは疲労しているスピッツァードラゴンのみ。

 

終わりだ。

 

誰もがそう思える状況だった。

 

しかし、エニー・アゼムは血眼になって手札のカードを1枚引き抜いた。

 

 

「マジック、デルタバリア!!」

手札3⇨2

リザーブ4⇨0

トラッシュ4⇨8

 

「!?」

 

「これにより妾のライフは0にならない!!…その攻撃はこの身で受ける!!」

ライフ3⇨1

 

 

コズミックステイツの剣がライフを切り裂く寸前。突如としてエニー・アゼムの前方に三角形のバリアが出現。コズミックステイツからエニー・アゼムの最後のライフを守り抜いた。

 

 

「オッシィィ!!……この感じ、堪らないな!!ターンエンドっス!!」

【仮面ライダーフォーゼ コズミックステイツ+チェーンソーモジュール】LV3(5)BP20000(疲労)

 

バースト【無】

 

 

このターンで勝てなかったにも関わらず、バトルを楽しむ姿勢を崩さない五町。そんな五町の凄みのある様子に、エニー・アゼムは段々と余裕がなくなってきており…………

 

 

「晴太先生!!」

「?……どうした椎名!?…今日のバトルはこれで終わりだぞ!?」

「どうしたもこうしたもない!!早く今のバトルを中止させろ!!このままだと五町が死ぬ!!」

「っ……わかった。理事長達の所に行ってくる……!!」

 

 

一方で椎名はこのバトルの審判を務めていた晴太と接触。このバトルを中止させるように指示する。晴太も椎名を信用しているため、その言葉を信じ、学園の理事長達が集うVIPルームへと急いで向かった。

 

だが、そんな中、エニー・アゼムが本腰を入れる。

 

 

[ターン06]エニー・アゼム

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札2⇨3

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨11

トラッシュ8⇨0

 

 

「メインステップ…………まさかこんな小娘如きに妾が恐怖を感じるとはな…………」

「?」

「貴様だけは今すぐ『俺様』の手で殺さなければならない!!」

「!?」

「2000年の苦労を水の泡にされてなるものか!!」

 

 

五町は一瞬、エニー・アゼムの声が図太くなったのがわかった。そしてその束の間。エニー・アゼムは自身のデッキのエースとも取れるカードを呼び出す。

 

 

「運命の射手座……サジタリウス・ゾディアーツを呼ぶ!!」

手札3⇨2

リザーブ11⇨3

トラッシュ0⇨4

【サジタリウス・ゾディアーツ】LV3(4)BP10000

 

 

紫の靄。そしてそこに映し出される射手座。

 

それを吸収するように吸い込みながら現れたのは最強のゾディアーツにして頂点。サジタリウス・ゾディアーツ。その異形な姿は他のゾディアーツを逸脱している。

 

 

「っ……カッチョいいっスね!!」

 

「召喚時効果!!2枚引く!!さらにその後手札からゾディアーツを呼ぶ!!……来い、レオ!!」

手札2⇨4⇨3

リザーブ3⇨1

トラッシュ4⇨5

【レオ・ゾディアーツ】LV1(1)BP7000

 

 

サジタリウス・ゾディアーツは全てのゾディアーツを呼ぶ事ができる。今回2枚目となるレオが颯爽と場に現れた。

 

 

「アタックステップ!!…サジタリウス・ゾディアーツよ、力の差を見せつけよ!!」

 

 

エニー・アゼムの指示を受け、戦闘態勢に入るサジタリウス。しかし、五町の手札には………

 

 

「フラッシュマジック、アルテミックシールド!!」

手札4⇨3

リザーブ1⇨0

【仮面ライダーフォーゼ コズミックステイツ+チェーンソーモジュール】(5⇨4)LV3⇨2

トラッシュ7s⇨9s

 

「!!」

「この効果により、このバトルの終わりがアタックステップの終わり!!そして私の勝ちっス!!」

 

 

そうだ。五町には効果によって加えられたアルテミックシールドがある。これで辛うじてこのターンを凌ぎ、次のターンで再び逆転して勝利。この『殴り合い』とも取れるバトルを制する事ができる………

 

はずだった。エニー・アゼムがあるカードを切るまでは…………

 

 

「だから緩いと言っている!!【煌臨】発揮!!対象はサジタリウス!!」

リザーブ1s⇨0

トラッシュ5⇨6s

 

「!?」

 

 

エニー・アゼムの煌臨の効果発揮宣言と共に、サジタリウスが禍々しい光を放つ。その装備されていた鎧は弾き飛んで行き、より強大な力を身に宿すようになる。

 

 

「ゾディアーツを超えた究極の存在!!その名も『ノヴァ』!!……サジタリウス・ノヴァを煌臨!!」

手札3⇨2

【サジタリウス・ノヴァ】LV2(4)BP9000

 

「さ、サジタリウス………ノヴァ!?」

 

 

その赤黒いボディから滲み出る殺意。吐き気がするような鈍い闘気。五町は理解した。おそらくこれがノヴァ・アゼムの最強のスピリットなのだと………

 

そしてそのサジタリウス・ノヴァは容赦なく五町を襲う。

 

 

「サジタリウス・ノヴァの煌臨時効果!!スピリット1体のコアを12個リザーブへ送る!!」

「!?」

「対象は当然コズミックステイツ!!」

 

「くっ!!……コズミックステイツ!!」

【仮面ライダーフォーゼ コズミックステイツ+チェーンソーモジュール】(4⇨0)消滅

 

 

 

進化系であるサジタリウス・ノヴァが闇の力を込めた弾丸をその手から発射する。コズミックステイツはそれに身体を撃ち抜かれ、堪らず爆発四散した。

 

 

「さらにこの時、1コスト支払う事で敵のライフを1つ破壊する!!」

【サジタリウス・ノヴァ】(4⇨3)

トラッシュ6s⇨7s

 

「なに!?………ぐっ、う、うぁぁぁぁっ!!!」

ライフ2⇨1

 

 

その闇の弾丸はコズミックステイツのみに留まらず、五町のライフまでもを貫いた。エニー・アゼムはアルテミックシールドの効果でアタックステップが終わるまでに五町のライフを破壊する気でいて………

 

それに加え、五町は多大なバトルダメージに襲われる。

 

 

「煌臨スピリットはその煌臨元となったスピリットの全ての情報を引き継ぐ………終わりだ小娘!!」

「やめろエニー・アゼム!!」

「っ………」

「ね、姐さん!?」

 

 

エニー・アゼムが五町にトドメを刺そうとした直後。最早間に合わないと見た椎名がバトルを中断させるべく、付近まで割って入って来た。

 

 

「五町!!あんたさっきからライフが破壊されるだけで本当にダメージがあるだろ?……早くBパッドを閉じろ!!」

「ど、どうしたんスか姐さん?」

 

 

いきなりの事でキョトンとする五町。状況がイマイチ飲み込めていない証拠だ。ここまで来たら五町自身が自分で負けを認めるしかない。

 

このままライフゼロに追い込まれたら命も保証もできないのだ。

 

 

「うるさいぞ芽座椎名!!……この小娘は今ここで妾が始末する!!危険だ………!!」

「危険なのあんただろ!!」

「ん?……なんの話??」

 

 

エニー・アゼムとしては何故か恐怖を抱いてしまう五町の『フォーゼ』を消したくてしょうがなかった。椎名としては当然これを止めないといけなくて…………

 

 

「もう妾は止められん!!行け、サジタリウス・ノヴァ!!」

「!!」

「五町!!」

 

 

サジタリウス・ノヴァが再び五町に目を向けて、手の平から闇の弾丸を放つ。その一撃はまともに受ければ間違いなく五町は死ぬ。この世とお別れだろう。

 

なんの事実も知らぬまま、朽ち果てるのだ。

 

だが…………

 

 

 

直撃寸前のところで、五町の前半に巨大な盾を持つ白い騎士が赤いマントを靡かせながら現れて………

 

その闇の弾丸を上空へと弾いた。その弾丸は空中爆発を起こし、五町の命は事なきを得た。

 

 

「!?」

 

 

そこに立っていたのは他でもない。椎名のエーススピリットである『デュークモン』だったのだ。ギリギリ椎名が召喚し、五町を護ったのだ。

 

 

「おい、エニー・アゼム………あんたは本気で私を怒らせたぞ……!!」

「……どいつもこいつも妬ましく、図々しくて醜い小娘共だ!!」

 

 

椎名は久し振りに誰かに対してブチ切れていた。その確かな怒号を含んだ静かな声色はエニー・アゼムの癇に障っていて………

 

 

「……??………なんか知らないっスけど、姐さんカッコイイっス!!」

 

 

しかし、この五町だけは何が起こっているのか理解しておらず、椎名とデュークモンの勇姿を見て目を輝かせていた。

 

後に発表され、岬五町の正式な敗北が認められた。これにより、このバトルでの勝者は『ノヴァ・アゼム』となり、彼女が準決勝へと駒を進めた。

 

これにて1日目が終了した。準決勝以降の戦いは翌日となる。残った4人のメンバーは『芽座椎名』『赤羽司』『バーク・アゼム』『エニー・アゼム』

 

翌日のバトルで世界の命運が決まる。

 

 

 




《次回予告!!》


第10回界放リーグもいよいよ大詰め。ベスト4が凌ぎを削る。その第一試合は『赤羽司』と『バーク・アゼム』であり………バークは与えられたさらなる力で司に襲いかかる。次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ「鎧武とバロン……そして黒幕」……今、バトスピが進化を超える!!


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※次回のサブタイトル及び内容等は変更の可能性があります。


最後までお読みくださり、ありがとうございました!!

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