EP1「聖騎士を呼ぶ咆哮」
今は使われていない、かつて王族が住んでいたとされる巨大な城。今となっては殺風景となってしまったこの場所に、青年、芽座葉月はいた。
大昔の王者が腰を下ろしていたであろう玉座にその身を置いている。
「葉月………芽座葉月」
誰かが彼を呼ぶ。彼の脳内に直接語り掛けてくる。
これは今に始まった事ではない。彼が物心付いた時からずっと、絶え間なく聞こえ続けている。
「13枚ある全てのロイヤルナイツを揃えるんだ。さすれば君は最強のカードバトラーになれる」
「…………」
「僕は信じてるよ。君ならロイヤルナイツを揃え、最強になって、いつか僕を迎えに来てくれると」
「………黙れ。何度同じ事を呟けば気が済む」
葉月がそう告げると、語り掛けてきた声は途端に聞こえなくなった。これも、いつもの事である。
「………言われなくともそのつもりだ。オレは全てのロイヤルナイツを得て無敵のカードバトラーとなる」
そして、葉月の言葉に呼応するように、影から深く白いフードを被った3人の女性が姿を見せる。見た目や立ち振る舞いからして、おそらくはまだ16、17歳程度の年齢だろう。
そんな彼女らは葉月に忠誠心があるのか、現れるなり葉月の目の前で片膝を突く。
その後、葉月が彼女らの前に1枚の写真を投げた。その中にはオレンジの長い髪に、触角のような1本の長いアホ毛が特徴的な少女が写っている。
「芽座椎名。知っての通り、今ではDr.A、鬼王ノヴァを倒し、二度世界を救った英雄として語られている…………『三聖騎シスターズ』ども、奴の持つ2枚のロイヤルナイツ『デュークモン』と『マグナモン』を回収して来い。手段は問わん」
全ては葉月様のために………!!
葉月から『三聖騎シスターズ』と呼ばれる3人の少女達。彼女らは親愛なる彼からの命を受けると、まるで忍者のように影へと姿を眩ました。
これは、芽座椎名の最後の物語…………
******
鬼王ノヴァによる脅威が去ってから3年が経過した。
世界を二度救った英雄となった芽座椎名は今、界放市を離れ、1人楽しく世界各地を放浪していた。
「シーズグローリー………結構強いな、コレ」
「お嬢さんお目が高いね。そいつはここら辺では一点物のレアカードでさぁ」
「お嬢さんはよしてくれよ。私こう見えて21なんだ」
今現在はヨーロッパの辺境にいる。よく言えば趣がある、悪く言えば信じられない程田舎臭い、そんな場所だ。
その中でもここはカード市場らしく、多種多様なカード達が売買されていた。そこで椎名が目をつけたのは、腹巻をしたヨーロッパと言う場所には似つかわしくない姿をした男性が売買していた「シーズグローリー」と言うマジックカード。
「バカ言え〜〜ワシから見れば21なんてまだまだ立派なお嬢さんよ、ガハハハ!!!」
「………はは」
取り敢えず苦笑いしておく。
「こんなべっぴんさんに会えるたぁ、今日は吉日だな。よし、そのカードは記念に持って来な」
「マジ、くれるの!?……サンキューおじさん!!」
「おう、コレも何かの縁ってな!!」
カード市場の男性からカードを貰い受ける椎名。顔が良いのは得するもんだなぁと思うと、そのカードを腰にあるデッキケースへとしまった。
こんな感じで世界各国を渡り歩き、人々、カードバトラーと交流していく事が、今の椎名の楽しみの1つであった。
しかしそんな時だ。
「あ………あぁァァァー!!!」
「ッ……この喧しい声………まさか」
右方向から女の子の声が聞こえて来た。そのうるさく喧しい声は椎名に界放市にいた頃の記憶を強く甦らせるモノであって…………
「椎名先輩!!……ようやく見つけたっスよ!!!」
「こ、五町……なんでアンタこんな所にいんのよ!?」
「そりゃまぁ椎名先輩いる所に私有り!!……スからね!!……ジークフリード校を卒業してから早1年、ずっとずっと追いかけ続けたんスから!!」
小柄で、黒く長い髪をシュシュで束ねているこの少女の名は岬五町。椎名の2つ下の後輩であり、彼女を誰よりも崇拝している存在である。
芽座椎名がバトスピ学園ジークフリード校を卒業してから3年、2人はこうして再び巡り合った。当の椎名は面倒臭そうな表情を見せているが…………
「まさか3年越しにまたアンタの顔と声を拝まないと行けなくなるとは…………」
「ガーーーン!!!……ひどいっスよ、なんスかその言い方!!………って、アレ??……そう言えば今は一木花火さんと一緒に旅してるんじゃなかったんスか?」
五町が椎名に聞いた。一木花火とは世界的にも有名なプロのカードバトラーであり、今の椎名の兄貴分みたいな存在である。椎名は卒業後、彼と2人旅をしていたのだ。
「あぁ、花火さんはプロリーグに参加中だからね。だからこうして今は1人旅……………アンタこれ一般常識じゃない?」
「え??……いや〜〜ここ1年、椎名先輩を探す事だけを考えて来ましたからね」
「そうか」
その後五町は「そんな事より!!」と強引に話を切り替えて…………
「私、さっき町外れで面白いモノ見つけたんスよ!!……椎名先輩にも是非見て欲しいっス!!」
「え、あ、おい!!……パーカーの袖引っ張んな!!」
相変わらずの嵐のような竜巻のような強引振りを発揮する五町。憧れの椎名を引っ張り、町外れで見つけたある場所へと案内するのであった…………
******
「ここ、ここっすよ!!」
「………なんだよここ………洞窟?」
椎名が五町に連れて来られたのは、トンネルよりも大きな入り口をした、大きな大きな洞窟。
「どうスか?……なんだか冒険の匂いがプンプンしないスか!?」
「うるさいぞ五町。Bパッドで地図を調べた感じだと、この場所にあるのは洞窟じゃなくてただの草原っぽいな」
「えぇ!!……それって地図にも載ってない無敵のダンジョンじゃないスか!!」
「………無敵要素、どこ?」
突如出現したかもしれない洞窟に興奮する五町。そんな好奇心旺盛な彼女とは裏腹に、椎名はこの洞窟の最奥部からなにやら嫌な予感を感じ取っていて…………
「兎に角入ってみましょうよ!!」
「…………そうだな。念のため、調べてみるか」
「よし決まり!!……それじゃあ早速、レッツゴーッスよ!!」
不穏な何かを感じずにはいられないこの洞窟。何かが始まってからでは遅いと考えた椎名は、五町と共にこの洞窟へと足を踏み入れる事にした。
******
歩き始めてから約30分と言った所か、ようやく洞窟の最奥部に到着する。
コレまでの道中、コウモリなどの洞窟にいそうな生物も全く見つからず、ただの岩の塊を歩き続けただけだった。最奥部も、言うなればただの大きな空間の行き止まりと言った感じで、変わった所と言えば、天井がなく、陽の光が差し込んで来ていた事くらいだ。
「…………何もないスね」
「あぁ、何もないな」
本当に殆ど何も存在しない。嫌な予感がして警戒していた椎名だったが、この拍子抜けの最奥部を見て「考え過ぎか」と気を改める。
しかし…………
異変が起きるのは洞窟の内部からではなく、椎名のデッキからであり…………
「ッ………なんだ、デッキが光って」
椎名の腰にあるデッキケースが光る。するとそこから光源であろう2枚のカードが飛び出して来た。
そのカードは彼女のデッキの代表格でもあるロイヤルナイツ『デュークモン』と『マグナモン』…………
「デュークモンにマグナモン………ロイヤルナイツの2枚」
「五町離れろ、やっぱり嫌な予感は的中していた。デュークモンとマグナモンの力に呼応して、何かが来るぞ………!」
椎名はデュークモンとマグナモンの異変に反応するように何かがこちらに向かっている事を察知した。
いや、どちらかと言えば共鳴し合っているとでも言うべきか。ロイヤルナイツの2枚と共鳴すると言う事は、そのカードもまた…………
「………!!」
「なんスかァァァー!?!……じ、地面からカードが飛び出たァァァー!?!」
椎名は気づいていた。この地に眠っていたのはロイヤルナイツのカードである事を。デュークモン、マグナモンとの共鳴によりそれが永き眠りからそれが解き放たれたのだと…………
そして、その復活したロイヤルナイツの名前は…………
「エグザモン………デュークモン達と同じ、世界に13種、1枚ずつしか存在しない、伝説のデジタルスピリット。エニー・アゼムと芽座一族を繋ぐピース」
久し振りに新しいロイヤルナイツと遭遇した。椎名がロイヤルナイツを見て思い出す事はただ1つ、兄である芽座葉月だ。
彼の顔や告げられた様々な言葉が彼女の脳裏を横切る。
「ほえ〜〜……これがエグザモン。伝説のロイヤルナイツの1体スか。世界を駆けて見るもんすね!!……こんなお宝カードをゲットできるなんて」
「…………」
葉月の事を考えている間に、五町が宙に浮かんでいた『エグザモン』のカードを手に取った。対する『デュークモン』『マグナモン』は役目は果たしたと言わんばかりに椎名のデッキケースの中へと帰って行く。
伝説のデジタルスピリットカードが復活と言う熱い展開からやや熱りが冷めたこの瞬間、椎名が五町に告げた。
「………所で五町。ちょっと聞きたい事があるんだけど」
「ん?……何スか、何でも聞いてください」
「………オマエは誰だ?」
「!?!」
目の前にいる五町に、椎名がそう告げた。
その言葉は、今目の前にいる五町に対して偽物だと言っているのと同義。
「い、いやだなぁ椎名先輩。オマエは誰って、どこからどう見ても私は岬五町。貴女を慕う後輩スよ」
「五町の事を調べてるようだけど、甘いな。アイツは私の事を「先輩」とは呼ばない………アイツはどんな時でも私を「姐さん」って呼ぶんだ」
「!!」
「もう一度聞く、オマエは……誰だ」
そう。
実際は呼吸の仕方や歩き方などから違和感を覚えていたが、この呼び方が決めてになった。岬五町は常に芽座椎名の事を「姐さん」と呼ぶのだ。あの聞く耳のなかった彼女が急にそれ以外の呼び方をするのは考えられない。
「…………あーあ、バレてたのか、流石は世界を二度も救った英雄様。変装と演技には自信があったんだけどな」
「………狙いは今オマエが手に持つエグザモンか?」
「あぁ、あそこにエグザモンのカードがあるのはハナから知っていたぜ。ロイヤルナイツはロイヤルナイツに共鳴するからな。テメェのデュークモンとマグナモンを近づければ反応するかと思ったんだよ」
五町の偽物はその本性を表す。女性である事には変わりないようだが、本当の声は思ってたよりもかなり若い。おそらく実際の五町よりも若い子なのだろう。
そして彼女は五町の顔を模ったマスクを取り外し、その血のように赤い髪を晒す。
「しょうがねぇから名乗ってやんよ。アタシ様の名は『ルージュ』………芽座葉月様に仕える『三聖騎シスターズ』の1人だ」
「ッ………葉月に仕える……!?」
赤い短髪の少女がその正体を椎名に明かす。年齢は16程度と言った所か、どうやら彼女は椎名の兄である葉月に仕えている存在のようである。
「ルージュとか言ったな……今葉月はどうしてる、まさかまだロイヤルナイツを集めているのか?」
「当然だ。アタシらが愛する葉月様はロイヤルナイツを全て集め、最強のカードバトラーになる男…………そして、その悲願はもうすぐ達成される!!」
「…………」
葉月と最後に会ったのは4年前。Dr.Aと戦った時以来だ。彼女の口振りから察するに、おそらく今では殆どのロイヤルナイツを収集したに違いない。
「そしてつい先日、葉月様がアタシら三聖騎シスターズにある1つの命令を下した。『芽座椎名の持つ2枚のロイヤルナイツを回収して来い』ってな」
「………やっぱり、私のデュークモンとマグナモンも回収する気か」
ルージュは宣戦布告するようにそう告げると、懐から己のBパッドを取り出し、左腕に装着し、展開。さらに手に入れたばかりのエグザモンをデッキに投入し、Bパッドへとセットした。
「さぁ来いよ英雄様。このバトルにアタシ様が勝ったら、2枚のロイヤルナイツをいただくぜ」
「………どうやら、避けては通れなさそうだな」
相手はあの因縁の相手葉月の僕。逃れられない戦いであると察した椎名もまた、Bパッドを展開し、デッキをセットした。
「私が勝ったら、葉月の居場所を吐いてもらうぞ………アイツには伝えたい事があるんだ………絶対に」
「ハッ……別にいいぜ、このアタシ様に敵うってんなら、かかって来やがれぇぇぇぇえ!!!」
………ゲートオープン、界放!!
ロイヤルナイツのカード『エグザモン』が眠っていた陽の光が差し込む洞窟。その最奥部にて、芽座椎名とルージュによるバトルスピリッツが開始される。
先行はルージュだ。エグザモン、ロイヤルナイツ使ってバトルするのが余程楽しみだったのか、狂気に満ちた笑みを浮かべながらそのターンを進めていく。
[ターン01]ルージュ
「アタシ様のメインステップ!!……赤のネクサスカード、ドラゴンズミラージュを配置!!」
ー【ドラゴンズミラージュ】LV1
たちどころに、ルージュの背後から赤いドラゴンの紋章が出現した。このカードから察するに、彼女は赤デッキの使い手である事が窺える。
「見た目通り、赤のデッキか」
「おうよ!!……アタシ様のデッキは昔々から真っ赤っかだぜ、ターンエンド」
手札:4
場:【ドラゴンズミラージュ】LV1
バースト:【無】
自分のロイヤルナイツを賭けたこのバトル、椎名としては負けるわけにはいかない。気を引き締め、己のターンを開始していく。
[ターン02]芽座椎名
「メインステップ!!……私もネクサスカード、ディーアークをLV2で配置する」
ー【ディーアーク】LV2(2S)
椎名の腰に手のひらサイズの機械が装着される。これはデジタルスピリットを大きくサポートするネクサスカードの1種だ。これを配置するしないで、彼女のデッキの回転率は大きく変わる。
「ターンエンド。さぁ、どこからでも来い!!」
手札:4
場:【ディーアーク】LV2
バースト:【無】
そのターンをエンドとする椎名。一周回り、ルージュのターンが始まる。
[ターン03]ルージュ
「アタシ様のターン、ドローステップ時にドラゴンズミラージュの効果でドロー枚数を1枚増やし、その後1枚破棄………ロケッドラのカードを捨てるぜ」
ドラゴンズミラージュの持つ効果は赤属性には多い、ドローステップ時のドロー増加。その代償として、彼女は手札から1枚をトラッシュへと破棄した。
「メインステップ………もう1枚ドラゴンズミラージュを配置だ」
ー【ドラゴンズミラージュ】LV1
ルージュが配置したのは2枚目となるドラゴンズミラージュ。これにより、彼女は次のターンのドローステップではデッキから3枚引き、その後2枚を捨てる事となる。
バトルスピッツと言うカードゲームにおいて、デッキを引き進めると言う行為がどれだけ強い動きなのかは計り知れない。それだけでこの状況、ルージュの方が椎名よりも先行していると言える。
「ターンエンドだ」
手札:4
場:【ドラゴンズミラージュ】LV1
【ドラゴンズミラージュ】LV1
バースト:【無】
緊張感漂うこのバトル、互いに1体もスピリットを召喚せぬまま、第4ターン目へと突入して行く。
[ターン04]芽座椎名
「メインステップ………意外と消極的だな。そっちから来ないなら、こっちから行くぞ……!!」
「へへ」
ルージュは椎名の強者としての気迫を受けても尚、臆さず、寧ろ鼻で笑うと言う軽い態度を見せる。
「ブイモンを召喚!!」
ー【ブイモン】LV1(1)BP2000
このバトルで初めてスピリットを呼び出したのは椎名。青き小さな竜、ブイモンがこの場に召喚される。
やる気は満々と言った所か、ブイモンはその両拳をぐっと握り締め、そのやる気を示す。
「召喚時効果、デッキから2枚オープンし、その中にある対象のカードを1枚手札に加える…………よし、私はこのカード『メガログラウモン』を手札に加えて、残りはトラッシュへ破棄。さらにディーアークの効果、同名でターンに一度、デジタルスピリットが召喚、または煌臨した時、デッキから1枚ドロー!」
ブイモンとディーアークの効果で手札を加速させる椎名。そしてまだまだこんなモノではない。
「手札から【アーマー進化】を発揮!!……対象はブイモン」
「!!」
「ディーアークから1コストを支払い、対象となったブイモンを手札に戻す事で現れよ!!……轟く友情、ライドラモンッッ!!」
ー【ライドラモン】LV1(1)BP5000
ブイモンの頭上に黒色の友情のデジメンタルが投下される。ブイモンはそれと衝突し、新たなる姿へと進化を果たす。
それは黒き鎧を身につけた獣型のアーマー体デジタルスピリット、ライドラモン。今青き稲妻を纏いて、椎名の場へと参上する。
「ライドラモンの召喚時効果、ボイドからコア2つを私のトラッシュに追加する」
登場するなり雄叫びを張り上げるライドラモン。その影響により、椎名のトラッシュにコアの恵みが与えられた。
「アタックステップ、駆け抜けろライドラモン!!」
「………ライフで受けるぜ」
「くらえ!!……青き稲妻、ブルーサンダー!!」
〈ライフ5➡︎4〉ルージュ
ライドラモンの一角より放たれし青い落雷はルージュのライフバリアへと直撃し、それを1つ砕く。
「ターンエンドだ」
手札:6
場:【ライドラモン】LV1
【ディーアーク】LV1
バースト:【無】
椎名は呼び出したライドラモンで先制点を与え、そのターンをエンドとする。次はルージュのターン、再びターン開始直後にドラゴンズミラージュの効果が発揮されて…………
[ターン05]ルージュ
「ドローステップ。2枚のドラゴンズミラージュの効果と合わせてデッキから3枚ドロー、その後2枚捨てる」
このバトルが始まってからと言うモノ、常にドローを加速し続けているルージュ。だがこのターン、椎名に合わせてようやくスピリットカードを召喚して行く…………
「メインステップ………アタシ様は宙征竜エスパシオンを召喚するぜ」
「!」
ー【宙征竜エスパシオン】LV2(3)BP7000
赤のシンボルが砕け散ると共に出現したのは、鋼鉄の武装を装備した赤きドラゴン、宙征竜エスパシオン。それは現れるなり、椎名を威嚇するように機械音混じりの咆哮を張り上げる。
「召喚時効果、BP7000以下のスピリット1体を焼く」
「!!」
「消えなライドラモン!!」
エスパシオンは口内から炎のブレスをライドラモンへ向けて放つ。それに飲み込まれたライドラモンはたちまち焼き尽くされて爆散した。
「さらにアタックステップ開始時。エスパシオンのLV2からの効果、トラッシュのコア5つまでを自身に追加。手札が4枚以下なら2枚ドロー………アタシ様の手札は4枚、よって2枚引きつつ、エスパシオンのLVもアップだ」
ー【宙征竜エスパシオン】(3➡︎6)LV2➡︎3
「ッ……コアの回収とドローを両立できるのか」
「ハッ!!……アンタらの生温いカードの時代はとうに終わってんのさ!!……言って来なエスパシオン、アタックだ」
厄介な効果を持つエスパシオン。今度はライドラモンではなく、椎名に向けて炎のブレスを放って来た。
スピリットのいない椎名はこれをライフで受ける他ない。
「ライフで受ける」
〈ライフ5➡︎4〉芽座椎名
エスパシオンの炎のブレスがそのまま彼女のライフバリア1つを焼き払った。互いにライフ4同士だが、エスパシオンがフィールドにいる分、ルージュの方がやや優勢に立ったと言った所か。
「ターンエンド。どうしたどうしたぁ??……エスパシオン程度に臆してんのかよ、伝説の英雄様の実力がこんなモンか??」
手札:6
場:【宙征竜エスパシオン】LV3
【ドラゴンズミラージュ】LV1
【ドラゴンズミラージュ】LV1
バースト:【無】
「ふ……いや、ちょうど面白くなって来たなって、思っただけだ」
「何笑ってんだよ、気持ち悪い」
どんなバトルでも、バトルを楽しむ心を常に忘れない椎名。劣勢の中でも口角を上げながら、巡って来た己のターンを進めて行く。
[ターン06]芽座椎名
「メインステップ………メガログラウモンをLV2で召喚!!」
ー【メガログラウモン】LV2(3)BP9000
「ディーアークの効果で1枚ドロー」
大地を砕き、飛び出して来たのは赤き完全体デジタルスピリット、メガログラウモン。上半身に装着された強靭な武装が何よりも印象に残る見た目をしている。
「アタックステップ!!……メガログラウモンでアタック、その効果で先ずはデッキから2枚ドロー。そしてもう1つの効果で、シンボル1つのスピリット1体を破壊!!」
「!!」
「エスパシオンを破壊だ………原子の咆哮……アトミックブラスター!!」
肩部の武装にエネルギーを溜め、極太のレーザー砲を放つメガログラウモン。それはエスパシオンに直撃、跡形もなく消し飛ばして見せた。
「ッ……エスパシオンを一撃で吹き飛ばしただと!?」
「その程度で狼狽えるなら、まだまだだな」
「なに!?」
「フラッシュ【煌臨】を発揮、対象はアタック中のメガログラウモン!!」
コストとしてリザーブのソウルコアをトラッシュに置き、スピリットカードにスピリットカードを重ね合わせ、さらなる進化を遂げる効果【煌臨】………
椎名はたった今その効果発揮の宣言を行ったが、ルージュは速攻で理解した。この状況このタイミング、呼び出されるのは間違いなくあのスピリットだと言う事を…………
「来い、赤きロイヤルナイツ……デュークモンッッ!!」
ー【デュークモン】LV2(3)BP14000
メガログラウモンが0と1のコードに包み込まれ、その中で姿形を大きく変貌させて行く。やがてそれは周囲のコードを弾き飛ばし、その姿をフィールドに晒す…………
現れたのは白き鎧、槍、盾を備えた聖騎士型の究極体デジタルスピリット『デュークモン』…………
伝説のロイヤルナイツの1体でもあり、且つ芽座椎名のデッキのエースカードである。
「こ、これが………芽座椎名のデュークモン」
さっきまでの勢いはどこへ行ったのか。ルージュは芽座椎名と彼女の操るデュークモンの姿に無意識の内に怯え、あとずさる。
別にルージュが情けないわけではない。ただそれ程までに強力なカードバトラーとそれが操るエースカードの揃い踏みは、対戦相手に恐怖を与えるだけなのだ。
「さらにフラッシュ……デュークモンのアタック時効果、ターンに一度、トラッシュから滅龍スピリットカード1枚を手札に戻す事で回復する」
「!!」
「私はトラッシュにあるギルモンを手札に戻し、デュークモンを回復させる……!!」
椎名がトラッシュにあるギルモンのカードを手札に戻すと、フィールドにいるデュークモンは瞬間的に赤いオーラをその身に纏う。
これは回復状態となった証。この行動が終わった後でも、デュークモンはアタック、ブロックが可能となる。
「マジかよ回復………ギルモンなんていつトラッシュに送ったよ」
「ブイモンの召喚時効果だ。あの効果でオープンされ、その後トラッシュに行ってた」
「くっ………あの時」
「行け……デュークモン!!」
芽座椎名のデッキに死角はない。一見色も効果もバラバラのスピリット達だが、彼女はそれら全てを手足を動かすかのように容易に纏め上げる…………
だからこそ彼女は伝説のカードバトラーの肩書きを持つのに相応しい。
「ら、ライフで受ける………」
〈ライフ4➡︎3〉ルージュ
接近するデュークモン。ルージュのライフバリアを右腕の聖槍で刺突、難なく貫き、破壊した。
「………ターンエンド」
手札:8
場:【デュークモン】LV2
【ディーアーク】LV1
バースト:【無】
回復したデュークモンで再度アタックは無し。ブロッカーとして次のターンを乗り切る選択肢を取った椎名。
ターンが終わり、次のルージュへとターンが回って来るが…………
「………デュークモン、そしてそれを扱う芽座椎名か」
「?」
アレだけ声を張り上げて続けていた少女、ルージュ。何故か急に静かになり、小言を呟く。
だが椎名は見逃さない、その声に隠れた不敵な笑みを。
「………ア、アッハハハ!!!……こりゃあいい、ぶっ壊し甲斐がありそうだぜ!!」
「!!」
急に静かになったかと思えばまた大声を出して喧しくなる。
どうやら、まだまだ椎名に勝利を明け渡してくれる気にはなっていないみたいだ。ルージュは跳ね上がったテンションに身を任せ、巡って来たターンシークエンスを進めて行く。目の前の強敵を倒すために…………
[ターン07]ルージュ
「ドローステップ時、ドラゴンズミラージュ!!」
またもやネクサス、ドラゴンズミラージュの効果が2枚分適用。ルージュはデッキから3枚ドローし、その後2枚をトラッシュに破棄した。
そして、どうやらそのドローで良いカードを引き込めたのか、彼女はまた不適に笑う。
「メインステップ!!……先ずは3枚目のドラゴンズミラージュを配置」
ー【ドラゴンズミラージュ】LV1
3枚目のドラゴンズミラージュがルージュの背後に出現する。そして直後に彼女はまた別のカードを手札から1枚引き抜き…………
「遂に来たぜ来たぜ!!……アタシ様がロイヤルナイツを使う時が!!」
「ッ………まさか」
椎名は察した。ルージュがこのターン、何をドローしたのかを、そして今から何を召喚するのかを…………
「そのまさかだ!!………来い、全てのドラゴンの頂点に立つ、竜帝よ!!……目の前の奴ら全てを焼き払え!!……召喚、ロイヤルナイツ……エグザモン!!」
「!!」
ー【エグザモン】LV2(3)BP25000
ルージュの背後にある3つのドラゴンズミラージュが途端に破裂していく。それに合わせ、彼女のフィールドからマグマが吹き荒れ、そこから飛び出して来る巨大な竜の影が1つ…………
その名はエグザモン。ロイヤルナイツの1体であり、その体格は同じロイヤルナイツであるデュークモンを遥かに凌ぐ。
良くも悪くもロイヤルナイツに似つかわしくないその竜帝たる姿は、椎名を驚愕させるには余りにも十分すぎる素材であった。
「このスピリットは自分の場にある赤一色且つコスト4以上のスピリット、ネクサスを3つまで破壊する事で、破壊した数1つにつきその召喚コストを4下げる。アタシ様は3枚のドラゴンズミラージュを破壊する事で、この12コストもあるエグザモンをノーコストで呼び出したってわけだ」
「…………」
「さぁここからが本番だぜ英雄様ぁ………このエグザモンで、全て燃えカスにしてやんよォォォォォォ!!!!」
竜帝は兎に角吠える、吠える、吠える。
ルージュもまた、吠える、吠える、吠える。
2体のロイヤルナイツが揃い、戦いはさらに苛烈して行く事だろう…………
オバエヴォ完結から2年と半年。大変長らくお待たせ致しました。
本気の完結編、始動です。(全7話か8話の予定です)
エグザモンはオリカです。詳細は次回。
目標としては、続編である『バトルスピッツ 王者の鉄華(https://syosetu.org/novel/250009/)』に繋がるよう終着させて行きたいですね。