「ルージュ………私たち三聖騎シスターズが葉月様に与えられた役目は何?」
「め、芽座椎名からロイヤルナイツのデュークモンとマグナモンを奪う事です」
「そう。知っての通り、芽座椎名はこの世界を二度も救って来た英雄。一筋縄では行かない事はもちろんわかっていたわよね??」
「で、でもエグザモンが手に入ればあんな奴やっつけられる…………って思って………」
「………」
廃墟と化している城の中、三聖騎シスターズの1人である赤髪のルージュは、単独で勝手な行動を取ったからか、彼女らのリーダー格である金髪のスイートに説教をされていた。
スイートはその表情こそ無そのモノであるが、背中からなじみ出ているオーラがルージュに恐怖を与えている。それを側から見ている青髪のティアもまた恐怖で震え上がっていた。
「で、でもこう見えてめちゃくちゃ頑張ったんだぜ………だ、だからその、スイート……どうか穏便に………」
「ルゥゥゥジュゥゥゥ………!!」
「は、はいィィィー!!!」
「仮にも葉月様に仕える者の1人ならば、少しは考えてから行動しなさい!!!………貴女は罰として、ピーマン地獄の刑よ!!……このピーマンの山を朝までに平らげなさい!!」
「ひ、ひぇェェェ!!!」
ブチ切れたスイートが、山のように積み上げられたピーマンを指差しながらそう告げた。余りの刑の重さにルージュも、それを見ているだけのティアも涙が止まらない。
「………本当は人参の山も平らげて貰う予定だったけど、ロイヤルナイツの一柱『エグザモン』を見つけてくれたから、今回は見逃してあげるわ」
どうやら彼女なりの温情もあるようで、一応これでも刑は軽くなっているようである。
「うぐっ……うぅ、苦い」
「だ、大丈夫ですかルージュ?」
「ティア、ルージュを甘やかさないで」
ピーマン地獄の刑にもがき苦しむルージュ。年齢が同じで仲良しのティアが心配するが、それもスイートは一蹴して黙らせる。
「ところでティア、話してた芽座椎名キラーのデッキは完成したの?」
「あ、はいスイート。ルージュのBパッドにある戦闘データを元にさっき作成して来ました」
「ふむ。よし、じゃあ早速だけど単独で彼女の元に向かってくれる?」
「え、単独でですか?」
「えぇ、私はこのバカがピーマン地獄の刑をちゃんとやるか見てなきゃ行けないし……貴女は真面目だから問題ないでしょう」
「お、おぉ………りょ、了解です!!……必ずや成果を上げて見せます!!」
ティアは少しだけズレたメガネを定位置に戻し、敬礼。その後はルージュに「頑張って」と耳打ちし、何故かスキップをしながら任務へと向かって行った…………
うぉぉお!!
芽座椎名に会えるゥゥゥ!!
凄く楽しみ〜〜!!
三聖騎シスターズの1人『ティア』…………
彼女は芽座椎名のファンであった。
******
「あぁ、だから花火さんの『オメガモン』も、葉月とその三人娘に狙われる可能性が高い。気をつけて」
椎名は今、中国にいる。
中国と言っても都市化の進んでいる地帯ではなく、人影すら一切存在しない暗い森の中だ。通話の相手は彼女の兄貴分に当たる存在、プロカードバトラーの一木花火。彼もまたロイヤルナイツを持つ者の1人。
「………よし、行くか」
Bパッドの通話モードを切り、椎名はただ1人、森の奥深くへと真っ直ぐ突き進んで行った。
ー…………
「…………」
森の奥深く、暗がりの夜を焚き火で照らし、その火を腰掛けに腰を下ろして眺めている青年がいた。その直ぐそばにおそらく彼の住まいであろう木造の家が目に映る。
「………界放市にはいないと聞いていたけど、まさか中国のこんな辺境に家を建てて過ごしてるなんて、考えもしなかったよ」
「ッ………来たか椎名」
「あぁ、久し振りだな……バーク」
そこに芽座椎名が現れ、彼の名を口にした。
その名は『バーク・アゼム』…………
あの芽座一族と共に鬼を倒したとされる最強カードバトラーの女性『エニー・アゼム』の子孫にしてライダースピリット『鎧武』の使い手である。椎名とは一度敵対していた仲ではあるが、事件後は打ち解けている。
「赤羽司は元気にしているか?」
「私はそばにはいないけど、ニュースとかを見てる限り、プロとしてはまぁ活躍してるみたいだな」
「………オマエはプロにならなくてよかったのか?」
「私はそんな大層立派な職業に就く気はないね。風の向くまま、気の向くまま、自由に生きていくつもりさ………それが私なりのかっこいいって奴だよ」
「ふ………そうか」
バークが口にしたのは自身と激闘を繰り広げ、且つ、芽座椎名の好敵手に位置する青年『赤羽司』…………
今ではプロとなり、世界で活躍しているのだ。
「で、要件はロイヤルナイツについてだったな」
「あぁ、葉月が遂に動き出したんだ」
本題に入る。どうやら椎名は、バークにロイヤルナイツについて聞きたいことがあったようだ。
「芽座葉月。オマエの義理の兄に当たる存在か、ロイヤルナイツへの執念は強く、そのためにあのDr.Aについていた事もあると聞く…………そんな奴が、遂にオマエのロイヤルナイツに白羽の矢を立てたと言う事か」
バークの言葉に対して、椎名は黙って頷く。
「………だがオマエからしたら、ただ自分の大事なカード達を守るだけの事だろう。何故今更ロイヤルナイツの事を聞く。聞いてどうする?」
「私にはどうも葉月がロイヤルナイツにこだわる理由が気になるんだ。強さを求めるって言うなら、この世界には既にロイヤルナイツ以上に伝説のカード、強力なカードが潜んでいるはずなのに………なんで葉月はロイヤルナイツだけを執拗に集めようとしているのか」
「それはただ単に芽座一族が元々ロイヤルナイツの所有者だったからじゃないのか」
「………でもなんか、嫌な感じがするんだ。ロイヤルナイツが集まって行くと…………」
椎名は葉月がロイヤルナイツを全て集めようとする理由を知りたがっていた。ひょっとしたら全て集めた先に何かあるのではないか、と。
そう感じていた。だからこそ遥々中国までバークの元へと足を運んだのだ。
「………残念だが、オレのロイヤルナイツに関する知識はオマエらと同等程度だ」
「!」
「しかし、オマエの育ての親である『芽座六月』ならば何か知っているのではないか?……落ちぶれたオレなどより、よっぽどそちらの方が…………」
………『芽座六月』
芽座椎名の育ての親に当たる存在であり、彼女は祖父同然のように慕っている。血の繋がった家族ではないが、椎名は六月が大好きだ。
そんな彼の名前が出てくるなり、椎名は悟ってくれと言わんばかりにバークに軽く微笑む。その笑顔に彼は察して…………
「そうか、すまなかったな」
「………私は知りたい。13枚のロイヤルナイツが全て集まった時何が起こるのかを、葉月の本当の狙いはなんなのかを、そして、もし大変な事になってしまうのなら、私はそれを阻止しないといけない!!………頼むバーク、私に協力してくれ」
その瞳は焚き火の光で輝き、真っ直ぐとバークを見つめる。その一点の曇りもない視線からは、バークは決して逃げる事はできない。
いや、元々逃げるなどと言う選択肢はない。何せ、彼女は自分を救ってくれた恩人の1人なのだから…………
「言われなくともそのつもりだ。オマエ達には大きな貸しがあるからな………微力ながら、オレも協力させてもらおう」
「ありがとう。よろしく頼む」
2人が同意し、互いに握手を交わしたその直後だった。
「宛ら、戦場で合間見えていく内に芽生えた美しい友情、と言った所でしょうか?」
「ッ……貴様は」
「三聖騎シスターズの……ティア!!」
葉月に仕える三聖騎シスターズの1人、ティアがそこにはいた。トレードのマークのメガネを定位置に戻している。
「そう。私はルージュと同じく三聖騎シスターズのティア………芽座椎名、貴女のロイヤルナイツを頂戴しに来ました」
「…………」
「奴が椎名の言っていた三聖騎シスターズ………まだ子供じゃないか」
ティアは表面こそいつものクールさを取り繕っているが、内心では「一回しか名乗ってないのに名前を覚えられてた」と、凄まじく大喜びしている。
「………コイツの相手は私がする。バーク、アンタはここを離れて早くロイヤルナイツの事を調べて来てくれ」
「椎名」
「私なら大丈夫だ。負けはしない」
バークに一刻も早くロイヤルナイツの事を調べてほしい椎名は、彼にそう催促する。最初こそ不安そうな声色で彼女の名前を呼んだバークであったが、その次に放った自信しかない一言に首を縦に振り…………
「わかった。くれぐれも無茶はするなよ」
「あぁ、頼んだ」
最後にバークはそう告げ、ロイヤルナイツのため、椎名のため、この場を後にする。
残った椎名とティアは、互いにBパッドを展開し、左腕にはめ、そこに己のデッキをセットすると、視線を合わせる。その目はどちらとも戦士の目だ。
「戦う前に1つ聞かせてくれ………なんでアンタ達は葉月に従う?」
目の前の勇ましくも麗若き少女に、椎名がそう聞いた。
「………私とルージュは元々孤児でした。頼れる身寄りもなく、辛く、虚しく、険しい日々ばかりを過ごして来ました」
「…………」
「誰も助けてくれませんでした。汚いからと言う理由だけで………でもそんな私達を、葉月様は見逃さず、手を差し伸べてくれた…………あの人は私達の家族になってくれたのです」
「葉月がそんな事を………まるで」
………「まるでじっちゃんみたいだ」
椎名はそう思い、何よりも驚いた。無理もない、芽座葉月の祖父に当たる芽座六月もまた、身寄りのない子供達を招いては家族にしていたからだ。
「家族の願いを叶えるために、行動しない理由がいったいどこにありますでしょうか??………私は勝ちますよ、このバトル。例えその相手が世界を救った英雄だとしても」
「………凄まじい覚悟を持ってるんだな。でも、私もデュークモン達をそう簡単に渡すわけにはいかない………悪いけどこのバトル、全力で行かせてもらう」
こうしてBパッドを構える2人。直後に夜風が吹き、焚き火が消えて暗がりになると、そのコールは突然発せられる…………
…………ゲートオープン、界放!!
2人のバトルスピリッツの幕が切って落とされる。
先行は椎名だ。そのターンを進めていく。
[ターン01]芽座椎名
「メインステップ………ネクサス、ディーアークを配置」
ー【ディーアーク】LV1
椎名の腰に手のひらサイズの機械が装着される。これはデジタルスピリットに関する効果を持つネクサス、特性の全く異なるデジタルスピリット達のデッキを扱う彼女のデッキにおいては、特に有力なサポートカードの1枚だ。
「ターンエンド」
手札:4
場:【ディーアーク】LV1
バースト:【無】
エンド宣言し、ティアにターンが渡る。
[ターン02]ティア
「………ディーアーク………自分がデジタルスピリットを召喚、もしくは煌臨した時にデッキから1枚ドローする効果を持つネクサスカード。貴女のデッキではよく使用されるカードですね」
「やけに詳しいな」
「そりゃそうです。だって私は貴女のファ………じゃなかった、貴女のデッキを研究し尽くしているのだから。このバトル、万に1つ、いや億に1つ、貴女に勝ち目はありませんよ」
そう告げながら、内心では彼女とバトルできる事に喜びを感じているティア。
だが負けられのも本当だ。親愛なる葉月のため、姉妹達のため、彼女はメインステップへと移行し、手札にある1枚のカードを切った…………
「メインステップ!!……アクセル、七大英雄獣ヘクトルの効果を発揮」
「!」
「効果でトラッシュにコアを1つ追加………その後ヘクトルのカードは手元へ置かれます」
スピリットでありながらマジックカード宛らの効果を発揮できるアクセルは、使用後、手元へ移動すると言う特徴がある。
本来であればそこから召喚し、更なる展開へと繋げるのが鉄板の動きなのだが、このティアが使用したアクセル効果を持つ緑のスピリットカード『七大英雄獣ヘクトル』は違った。
「このヘクトルが私の手元にある間、お互いに赤/紫/黄/青のスピリット、ネクサス効果によってドローを行えない」
「!!」
「気がつきましたね。そうです、この効果があれば、ディーアークの効果で貴女は手札を増やせない」
手元にある間、強力な効果を発揮し続けるヘクトル。しかも手元のカードは基本的に破棄される事はないため、強固な効果でもある。
お互いに及ぶとは言え、手札の増加に大半をネクサスカードで補っている椎名のデッキにとって、このカードはまさに天敵と言えよう。
「私はこれで、ターンエンドです!!」
手札:4
手元:【七大英雄獣ヘクトル】
バースト:【無】
ドローを行えなくすると言う強力なメタ効果を張り、ティアはそのターンをエンドとする。
[ターン03]芽座椎名
「メインステップ………ドローを封じる効果、確かに私のデッキとは相性最悪の効果だな。でも、それだけじゃ私と、私のデッキは止められない……!!」
「!!」
「ブイモンを召喚!!」
ー【ブイモン】LV1(1)BP2000
椎名の場に、青い身体の小竜型の成長期デジタルスピリット、ブイモンが召喚される。
「ディーアークのドロー効果はヘクトルによって無効だが………召喚時効果、デッキからカードを2枚オープンし、その中にある対象のカード1枚を手札に加える……」
ブイモンの効果でデッキのカードが2枚オープン、その中にいた1枚は「フレイドラモン」のカード……………
「フレイドラモンのカードを手札に加え、残りは破棄する。ドローを封じる事はできても、オープンカードを加える成長期のデジタルスピリットの効果までは掻き消せないだろう?」
「カッ………」
………カッケェ………
ロイヤルナイツを賭けた大事な対戦中でありながら、ティアは敵である椎名の力強い仕草、言葉に感動を覚えていた。
何でブイモンを召喚しただけでここまでカッコいいのか、そう思っただけで軽く感涙さえしてしまう。
「………え、なんかちょっと泣いてる!?………ご、ごめん。なんかした?」
「い、いえ!!……泣いてなどいませんとも!!……お気になさらずターンを進めてください」
「そ、そうか。わかった」
しかも敵である自分にさえ気を使う優しさまで兼ね備えている。
あぁ、芽座椎名。めっちゃ良い…………
「手札にある【アーマー進化】の効果を発揮!!……対象はブイモン!!」
「ッ……来る」
「出でよマイフェイバリット…………燃え上がる勇気、フレイドラモンをLV1で召喚……!!」
ー【フレイドラモン】LV1(1)BP6000
ブイモンが勇気のデジメンタルと呼ばれる炎の紋様が刻まれた卵状の物体と融合。燃え上がる炎の中から、スマートな炎の竜戦士、フレイドラモンが登場する。
これは知る人ぞ知る、芽座椎名が一番好きなマイフェイバリットスピリットだ。
「これがフレイドラモン………」
「容赦はしない。アタックステップ………行け、フレイドラモン!!」
直後にアタックステップへと突入する椎名。フレイドラモンは高い跳躍力を活かし、ティアへと飛び掛かる。
だが、この時、その攻撃を読み切っていたかのように、彼女は手札からある1枚のカードを抜き取って…………
「だけどその攻撃は想定内です!!………フラッシュ【ソウル神速】を発揮します!!」
「何、ソウル神速だって!?」
【ソウル神速】…………
ソウルコア1つでコストを支払い、自身を手札から召喚できる効果。ただ、煌臨が流行っているこのご時世には余りその効果を持つカードをデッキに入れる者はいない。
だがしかし、今からティアがその効果で召喚するスピリットは…………
「青き神速剣で敵を斬れ!!………ロイヤルナイツの一柱、アルフォースブイドラモンをLV1で召喚します!!」
「ッ………ロイヤルナイツ」
ー【アルフォースブイドラモン】LV1(1)BP8000
その登場は一瞬だった。ほんの一度瞬きをした瞬間に、ロイヤルナイツ、アルフォースブイドラモンは、斬撃の音と共にティアのフィールドへと参上した。
身体は青く、両腕には光の剣が装着されている。この間のエグザモンとは違い、アルフォースブイドラモンはデュークモン同様、聖騎士を名乗るに相応しい外見をしていると言える。
「これが私の持つロイヤルナイツにしてエース、アルフォースブイドラモン。本来であれば緑のスピリットしか持たない【ソウル神速】を使う事ができる、青属性のスピリットです」
「驚いた。まさかこのタイミングでロイヤルナイツとはな」
「………それにしてはあんまり驚いているようには見えませんね。アルフォースブイドラモン、フレイドラモンを返り討ちにしなさい!!」
飛びかかって来たフレイドラモンの攻撃を装着されている剣で容易く受け止めるアルフォースブイドラモン。そのまま恥飛ばし、胸部に装備されたVの字型の高熱板へエネルギーを集中させる…………
「光の一撃………シャイニングVフォースッッ!!」
そこから掃射されるVの字型の光線は、瞬く間にフレイドラモンを包み込み、爆散へと追いやった。
「くっ………」
「まだまだこんなモンじゃありません。ここからどんどんお見せしていきますよ、このアルフォースブイドラモンの力を……!!」
「………フ、それは楽しみだ。ターンエンド」
手札:5
場:【ディーアーク】LV1
バースト:【無】
第3ターンにして早くもティアのロイヤルナイツ、アルフォースブイドラモンが登場。椎名は手痛い反撃を食らってしまうが、少なくともこのターンでは手も足も出ない。大人しくそのターンをエンドとした。
[ターン04]ティア
「メインステップ………マジック、ストロングドローを使用します」
「…………」
「ヘクトルがドロー効果を無効化できるのはスピリットとネクサスのみ、つまり、マジックのストロングドローは有効です。デッキから3枚ドローして、その後2枚を破棄します」
ヘクトルでは無効化できないマジックカードでドロー効果を発揮するティア。青特有の手札入れ替え効果で手札の質を向上させる。
「さらにアルフォースブイドラモンのLVを2へアップ!!……BPは13000!!」
ー【アルフォースブイドラモン】(1➡︎3)LV1➡︎2
アルフォースブイドラモンのBPが上昇、それを示すかのように、その身体は瞬間的に青く発光した。
「アタックステップ!!……アルフォースブイドラモンでアタックします」
「………ライフで受ける」
〈ライフ5➡︎4〉芽座椎名
襲い掛かるアルフォースブイドラモン。その俊足で瞬く間に間合いを詰め、装備されたブレードで彼女のライフを1つ斬り裂いた。
「ターンエンド」
手札:4
場:【アルフォースブイドラモン】LV2
手元:【七大英雄獣ヘクトル】
バースト:【無】
できる事を全てやり終え、ティアはそのターンをエンド。一旦椎名へとターンを渡す。
[ターン05]芽座椎名
「メインステップ………ブイモンを再び召喚する」
ー【ブイモン】LV1(1)BP2000
前のターン、フレイドラモンの【アーマー進化】で手札に戻っていたブイモンが、今一度椎名の場へと登場する。
だが…………
「召喚時効果、デッキから2枚オープンし、その中の対象カードを加える…………」
この時、ティアはメガネを指先で定位置に戻しながら、笑みを浮かべた。
「ふふ……無駄ですよ芽座椎名。アルフォースブイドラモンの効果、お互いにカードをオープンする事はできない」
「!?」
「よって、ブイモンの召喚時効果はほぼ無効!!……これで貴女は殆どの効果で手札を増やせなくなった!!」
ブイモンをはじめとした成長期のデジタルスピリットには、召喚時に所謂サーチ効果と呼ばれる効果が存在する。デッキからカードをオープンし、その中にある対象カードを加えるのだが、このティアの持つロイヤルナイツ、アルフォースブイドラモンがいる限り、そもそもそのカードをオープンすると言う行為が不可能となる。
ヘクトルでドローを、アルフォースブイドラモンでオープンを封じられ、椎名の手札を増やす手段はその殆どが潰えてしまったのだ。
「………成る程、伊達に対策して来てないって事か」
「貴女は運の強さが異常だ。でもその機会を減らせば、勝つ確率はかなり下がるはず」
「………でもブイモンの召喚時効果は完全に死んだわけじゃない。その後2コストを支払い、緑の成熟期スピリット、スティングモンを召喚」
ー【スティングモン】LV1(1)BP5000
「召喚アタック時効果で1コア増やす」
ブイモンの効果により、呼び出されるのは緑のスマートな昆虫戦士スティングモン。その効果で椎名のコアが増える。
「手札を増やせないなら、今いるスピリット達で何とかするまでさ………アタックステップ、ブイモン、スティングモンで連続アタック!!……スティングモンの効果で再びコアブースト」
「………2体の攻撃はライフで受けます」
〈ライフ5➡︎4➡︎3〉ティア
突撃していくブイモンとスティングモン。ブイモンは頭突きで、スティングモンは拳で、それぞれ1つずつティアのライフを砕いた。
「………ターンエンド」
手札:4
場:【ブイモン】LV1
【スティングモン】LV2
【ディーアーク】LV1
バースト:【無】
ブイモンとスティングモンのコンビでライフアドバンテージでは優位に立った椎名、一度ターンを終えるが、戦況は誰がどう見てもロイヤルナイツ、アルフォースブイドラモンを従えるティアの優勢。
そんな状況が続く中、再び彼女にターンが回って来た。
[ターン06]ティア
「メインステップ………庚戌兵パーシュアー・ボルゾイをLV3で召喚します」
ー【庚戌兵パーシュアー・ボルゾイ】LV3(4)BP8000
ティアはフィールドへ2体目のスピリットを投入。背中に木でできた剛腕を生やしている狼の姿をしたスピリット、庚戌兵パーシュアー・ボルゾイだ。
「アタックステップ!!……ここからさらに追い込みます………アルフォースブイドラモンでアタック」
ここでまたアルフォースブイドラモンでアタック宣言。そして今回は、その真の力も解放される。
「アタック時効果、コスト7以下のスピリット2体を破壊します!!」
「………!」
「ブイモンとスティングモンを破壊!!……神剣の二撃………アルフォースツインセイバー!!」
アルフォースブイドラモンの俊足より放たれる剣技が、椎名のブイモンとスティングモンを襲う。2体は避ける術もなく、直撃し、堪らず爆散していった。
「まだ終わりません。この効果で破壊したスピリット1体につき1枚、相手の手札1枚を見ないで破棄します」
「ッ………手札破壊効果…………ぐっ」
効果はこれだけで終わらなかった。4枚ある椎名の手札の内の2枚、半分がトラッシュへと強制破棄されてしまう。
「なんてこった。ドローステップ以外でまともに手札を増やせず、残った手札も破棄されるのか」
「これが貴女のデッキに対する答え。究極の芽座椎名キラーデッキ………さぁ、アルフォースブイドラモン本体の攻撃はまだ残っていますよ?」
「………ライフで受ける」
〈ライフ4➡︎3〉芽座椎名
アルフォースブイドラモン神速の剣技が、今度は椎名を襲う。そのライフバリアをまた1つ切り刻んだ。
「続けてポルゾイでアタック!!……その効果でコア1つを追加し、バーストを発動できません。さらに【連鎖:青】によりマジックカードの使用も禁じます」
「それもライフで受ける………!!」
〈ライフ3➡︎2〉芽座椎名
ポルゾイは背中から生えている木の剛腕に握られている2丁の拳銃を掃射。椎名のライフバリアを1つ撃ち抜いた。
これで彼女のライフは残りたったの2つ。アルフォースブイドラモンの効果によってフィールドと手札も大きく削がれてしまったため、絶体絶命な状況に陥ったと言える。
「………ターンエンドです」
手札:4
場:【アルフォースブイドラモン】LV2
【庚戌兵パーシュアー・ボルゾイ】LV3
手元:【七大英雄獣ヘクトル】
バースト:【無】
「………」
「次のターンで必ず貴女を倒します」
勝てそうだ。あの芽座椎名に…………
アレだけ対策カードを積んだのだから、そりゃそうか。
ティアはこの時そう思った。このバトル、初手でヘクトルとアルフォースブイドラモンを引いていた時点で自分の勝ちだったのだと…………
正直、あの英雄、芽座椎名がこの程度だった事にがっかりした。
[ターン07]芽座椎名
「…………ドローステップ」
椎名のターン。このターンも力強くドローし、その手札の枚数は合計3枚。
「………ネクサスカード、デジヴァイスを配置」
ー【デジヴァイス】LV2(2)
椎名の腰にディーアークとは違う、もう1種の手のひらサイズの機械が装着される。これはまた、ディーアークとはやや違った方向でデジタルスピリットをサポートするネクサスカードだ。
「続けてギルモンを召喚する」
ー【ギルモン】LV2(2)BP4000
椎名の場に真紅の魔竜、その成長期の姿であるギルモンが召喚された。
このギルモンは召喚時、デッキから5枚ものカードをオープンし、同じく真紅の魔竜達を手札に加える力を備えているが…………
「折角のギルモンですが、アルフォースブイドラモンによってその効果は実質無効。さらにディーアークとデジヴァイスによるドロー効果もヘクトルで封殺………手札は増えさせません」
「………」
ここでもアルフォースブイドラモンとヘクトルのメタ効果が突き刺さる。椎名は手札を増やす事ができず、その枚数も遂に残り1枚となっていた。
「………なら、最後に私はバーストを1枚セットして、ターンエンドだ」
手札:0
場:【ギルモン】LV2
【ディーアーク】LV1
【デジヴァイス】LV2
バースト:【有】
「ッ………ここでバースト………手札を使い切ってまで伏せるなんて」
「さぁ来いよ。アンタのターンだ」
「………わかってますよ」
遂に全ての手札を使い切った椎名。堂々とした態度でそのターンを終える。次はティアのターン、彼女にとっては絶対的に優勢な状況でターンを迎える事になるが…………
[ターン08]ティア
「メインステップ…………」
手札を使い切ってまで伏せた、あのバースト…………
ひょっとしてただのブラフ??
いや、勝利は目前だ、だからこそ気を抜くな。この局面で攻撃を耐えるための1枚なら、間違いなく青の究極体デジタルスピリット『マリンエンジェモン』だ。アレはライフ減少後に発動できて、このターンの間、コスト9以下のスピリットのアタックではライフを減らせなくすると言うモノ…………
決まって仕舞えばポルゾイどころかアルフォースブイドラモンでさえもライフを破壊できなくなる。しかもこの状況、バーストセット時は耐性を得ているから、ポルゾイでも突破できない……………
でも、ライフ減少後のバーストならではの弱点はある………!!
「私は異魔神ブレイヴ、青魔神を召喚し、アルフォースブイドラモンに直接合体!!……そしてLV3にアップします!!」
「………!!」
ー【アルフォースブイドラモン+青魔神】LV3(6)BP23000
ティアのフィールドに呼び出されたのは青き魔神。それはスピリット2体と合体する事が可能な特殊なブレイヴ、青魔神だ。
青魔神はアルフォースブイドラモンの背後に位置すると、その手のひらから光線を放ち、それをアルフォースブイドラモンへと繋ぎ、リンクする。
「ブレイヴの召喚時効果、コスト3以下のスピリット1体を破壊します………消えてください、ギルモン!!」
「くっ……!!」
青魔神の効果により、ギルモンが何もない所で爆散する。これで椎名のフィールドは再びネクサスのみとなってしまう。
「よし、これでバーストがマリンエンジェモンでも突破できる。ライフ減少後のバーストも、ライフを一撃で0にして仕舞えば意味はない!!」
シンボルが2つある異魔神ブレイヴ、青魔神と合体した事により、アルフォースブイドラモンはトリプルシンボルとなった。
確かにこれなら椎名のバーストがマリンエンジェモンだったら意味はない。
しかし、本当にそれがマリンエンジェモンならの話ではあるが…………
「フ………相手のブレイヴの召喚時効果発揮後によりバースト発動!!」
「ッ!?!……しょ、召喚時発揮後!?」
「青のバーストマジック、キングスコマンド!!」
椎名が伏せていたバーストが、青魔神の召喚時効果に強く反応し、勢い良く反転。そう、彼女が伏せていたバーストカードは召喚時効果発揮後によるモノであった…………
「効果により、デッキから3枚ドローし、1枚を破棄する………ヘクトルの効果はマジックカードには及ばないんだったな」
「………ここに来てドローを許すなんて………」
ようやく。
ようやくだ。ようやく椎名は手札を増やす事に成功した。合計2枚しかないが、このバーストの発動はかなり大きな影響を与えたと言える…………
「その後フラッシュ効果を使用し、このターンの間、相手のコスト4以上のスピリット全てはアタックができない」
「ッ……アルフォースブイドラモンもポルゾイも、このターンはアタックができない!?!」
「そう言う事」
ドローを行い、さらに攻撃まで封じ込めた椎名。ティアは何とかコスト3以下のスピリットを2体呼び出そうと考えたが、今だと手元のヘクトルしか該当するモノがないため、それは叶わなかった。
「………そんな、私がバーストを読み違えるなんて………しかも青魔神を召喚せず、そのままアタックしてたら勝ってた」
自分のプレイングミスに、落胆するティア。それもそのはずだ。それさえなければあの英雄、芽座椎名にバトルスピリッツで勝利を収めていたのだから…………
「アンタは私のデッキをかなり調べて来たようだったから、ひょっとしたらバーストをマリンエンジェモンだと警戒してくれるんじゃないかって思ったんだよね」
「ッ………偶然じゃない!?」
「いやまぁ、正直賭けだったよ」
今この瞬間、ティアは芽座椎名の強さの理由の1つを知ることとなった。それは引きの強さでも、カードの強さでもない、バトルの流れを掴む才能である。
ひょっとしたら負けていたかもしれないこの局面、あそこまで堂々としていた事に戦慄さえ覚える。
「………ターンエンド………です」
手札:4
場:【アルフォースブイドラモン+青魔神】LV3
【庚戌兵パーシュアー・ボルゾイ】LV3
歯を噛み締め、悔しさを表しながらもそのターンをエンドとするティア。余程悔しかったに違いない。
そして次は椎名のターンだ。このバトルの流れを掴んだ彼女は、ここから一気に大逆転を起こすため、巡って来た己のターンを進めていった…………
[ターン09]芽座椎名
「メインステップ………至高の竜戦士、パイルドラモンをLV2で召喚」
ー【パイルドラモン】LV2(3)BP10000
反撃の狼煙が上がる。椎名のフィールドには竜の強靭な肉体と甲虫の強固な甲殻を併せ持つ至高の竜戦士、パイルドラモン。
「召喚時効果でポルゾイを破壊………デスペラードブラスター!!」
「!!」
パイルドラモンは召喚されるなり腰に備え付けられた機関銃を掃射。ポルゾイを撃ち抜き粉砕する。
「そしてアタックステップ!!……行くぞパイルドラモン、アタックだ!!」
椎名の指示を受け、パイルドラモンはその眼光を輝かせ、走る姿勢を取る。
「アタック時効果でコア2つを増やし、ターンに一度回復する」
パイルドラモンは効果によりコアが増え、回復状態となる。
「くっ………ですが一度回復しただけでは3つのライフは破壊できませんよ」
「まだだ、私の進化コンボは終わらない!!……フラッシュ【煌臨】を発揮、対象はアタック中のパイルドラモン!!」
「!?」
このタイミングで【煌臨】の宣言。パイルドラモンの足元から大竜巻が発生し、その中で大きな進化を遂げていく…………
「現れよ、皇帝竜………インペリアルドラモン・ファイターモード!!」
ー【インペリアルドラモン ファイターモード】LV2(5)BP15000
大竜巻を覇気で吹き飛ばし、中より現れたのはパイルドラモンが進化した姿であるインペリアルドラモン・ファイターモード。赤く大きな翼に体格、胸部の龍の顔がティアの目にも入る。
そして思い出す、その効果を…………
「ファイターモードの煌臨時効果発揮、相手スピリット10体を疲労させる」
「!!」
「アルフォースブイドラモンを疲労だ……ポジトロンレーザー!!」
右手に装備された砲手からエネルギーの凝縮されたレーザーを放ち、アルフォースブイドラモンに直撃させる。ロイヤルナイツと言えど、流石に応えたか、アルフォースブイドラモンは片膝を突いてしまう。
「これでアンタを守るスピリットはいなくなった………!!」
「ッ………ライフです!!………ぐうっ……!!」
〈ライフ3➡︎2〉ティア
飛翔するファイターモード。その巨大が上空で通り過ぎる風圧だけでティアのライフバリア1つは砕け散って行く……………
そして。
「私のデッキを調べ尽くして来たアンタなら、ファイターモードのもう1つの効果も知ってるわよね?」
「………イ、インペリアルドラモン・ファイターモード………LV2のアタック時効果、ターンに一度、アタックによってライフを減らした時、追加で2つのライフを破壊する………!!」
「フ………御名答だ。行け、ファイターモード!!……超然の一撃……ギガデス!!」
ファイターモードは胸部にある龍の顔からもう1つ巨大な砲手を出現させ、そこから凝縮されたエネルギー弾を発射。
それは大気をも震わせる程の勢いのまま、ティアのライフバリアへと直撃し…………
「こ、これが芽座椎名の力………なんて言う規格外な……………うっ……くっ……あ、あァァァァ!?」
〈ライフ2➡︎0〉ティア
それら全てを爆散させ、彼女ごと吹き飛ばした。
これにより、このバトルの勝者は芽座椎名だ。葉月に従う三聖騎シスターズの2人目も、己のデッキとの強い絆で乗り越えて見せた。
「三聖騎シスターズのティア………スリリングで良いバトルだったよ」
「………」
バトルで傷ついた身体を震え立たせながら起き上がるティア。その内心では『芽座椎名はやっぱり、私が憧れる伝説のカードバトラーだった』と思い、感動していた。
「見事な勝利でした………その引きの強さと勝負強さ、流石は葉月様の妹様ですね」
「……血は繋がってないけどね」
「…………私は、いつか貴女も家族になってくれると、信じています」
「………!!」
ティアのこの言葉を受け、椎名はどこか胸の辺りが暖かくなるのを感じた。
前に戦った時も思ってはいたが、この子達は案外思いやりのある、優しい子達なのだろう…………
「………ありがとう。優しいんだな」
「!!」
椎名の感謝の言葉に、ティアは凄まじい勢いで顔を赤くする。憧れの人物に褒められて、驚いたのだろう。
「で、ですがロイヤルナイツの件は別です!!……今回は負けましたが、次こそは貴女に勝てるデッキを作って来ます」
「あぁ、いつでも受けて立つ。待ってるよ」
椎名は優しい笑顔を彼女に向ける。
対してティアは、これ以上同じ空間には入れないと判断し、Bパッドに備え付けられたワームホーム機能を使い、ワームホームをその場に出現させる。
「………最後に1つ、1つだけお願いしても良いでしょうか?」
「ん?……なんだ」
「…………ツー………」
「ツー??」
「わ、私と………ツーショット写真、撮ってください」
「…………」
その後、2人は写真を撮った。椎名は苦笑いだったが、ティアはクールな印象を受ける顔からかは想像もつかない程の満面の笑みを浮かべていた…………
次回、EP4「獣神の弓、天馬の矢」
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オバエヴォの続編『バトルスピリッツ 王者の鉄華(https://syosetu.org/novel/250009/)』の方も是非よろしくお願いします!!
最近では遂にアイカツスピリットが初登場!!
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【アルフォースブイドラモン】
コスト8
色:青
軽減シンボル:青3
系統:究極体、戦騎、竜人
LV1(1)BP8000
LV2(2)BP13000
LV3(6)BP17000
シンボル:青
フラッシュ【ソウル神速】『お互いのアタックステップ』
手札にあるこのスピリットカードは、リザーブのソウルコア1個で召喚コストを全て支払う事ができ、リザーブのコアを上に置く事で召喚できる。
LV1、LV2、LV3
お互いにカードをオープンする事ができない。
LV2、LV3『このスピリットのアタック時』
相手のコスト7以下のスピリット2体を破壊し、破壊した数1体につき、自分は相手の手札の内容を見ないで1枚を破棄する。