全てが終わりに向けて、始まる。
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全てにおいてバトルスピリッツが中心となる大都市『界放市』から遠く離れた、どこかの離島。木々が茂り、威風堂々と巨大な山が聳え立つこの島は、芽座椎名、芽座葉月の生まれ育った土地、故郷である。
葉月は、10年ぶりに、そんな故郷の大地に足をつけた。そのすぐそばには、彼を慕う三聖騎シスターズの3人と、弟子である獅堂レオンも確認できる。
「へ〜〜……ここが葉月様の故郷っすか」
「言葉を慎みなさいルージュ。葉月様は今から大いなる力を手にするのですよ………気が散ってしまわれたらどうするつもりですか?」
「うっせぇなスイートは、そんなんでアタシ様らの葉月様が取り乱すわけないでしょ、ね?」
口数の減らない赤髪のルージュに、金髪のリーダー格であるスイートが制止させようとする。だが、ルージュは能天気な性格故黙らず、寧ろ、より多くの言葉を口にし出す。
「ルージュ、いい加減黙らないと、またスイートにお仕置きされますよ?……今度はピーマンだけにあらず、にんじんまで生で口に入れられるかも………」
「げっ……それは勘弁だぜ」
メガネで青髪のティアがそう言うと、物理的に苦い思いをした記憶を思い出し、流石のルージュもしっかりと口にチャックをする。
「いよいよですね師匠!!……もうすぐ師匠はこの世界で誰にも負けない、無敵のカードバトラーになるんだ!!」
「………」
「くぅ〜〜〜カッケェぜ、オレもいつか追いついて見せます」
10歳程度の少年、レオンが師匠である葉月にそう話しかけるが、とうの葉月は集中しているのか、視線どころか耳すらも彼に傾けてはくれない。
だがそんな彼でも、レオンは迷わずにどこまでもついていく。鋼の強さを持つ、彼に憧れているからだ。
「レオン〜〜……オメェじゃ葉月様には勝てねぇよ。何てったって、このアタシ様が一生勝てないんだからな」
「んだとルージュ!!……んなもんやってみねぇとわからねぇじゃんか!!」
「はいはい2人とも、ムキになりませんよ」
ティアがレオンとルージュの口喧嘩を強引に終了させる。
こうしてる内に、一向は山の麓に辿り着く。麓には気が遠くなるような長い長い石の階段があり、その先に、葉月の実家とも言える場所『ハウス』が存在する。
そして、そこにはあの「ロイヤルナイツ」達が収められていた『芽座一族の祠』も…………
「………オマエらはここで見張っていろ」
「え?」
「ここから先は、オレ1人で十分だ………」
葉月のその言葉にいち早く反応を示したのは、他でもない、三聖騎シスターズ達の中で最も彼に忠誠心があるスイートだった。
「ちょっとどう言う事だよ師匠!!……貴方が最強になった瞬間を、このオレにも見せてくださいよ!!」
「………許せ、レオン。もう、後戻りできないところまで来てしまったんだ」
「??…………どう言う事ですか?」
葉月の言葉の意味がわからず、レオンは首を傾ける。その反面、絶対そうだとは言い切れないものの、スイートは彼の言葉の意味をある程度理解し…………
「………わかりました。ここは私たちにお任せください」
「はぁ!?……スイートまでなんだよ!?」
「葉月様は邪魔者が来ないか、見張って欲しいんですよ。わかってください、坊っちゃま」
「誰が坊っちゃまだ!!」
スイートは暴れるレオンの頭に手を置き、制止させながら、彼にそう告げる。レオンまだ子供すぎるが故に、葉月やスイートの言葉から、何も察する事ができないようで…………
「ねぇルージュ、葉月様、ひょっとして………」
「あぁ、多分そう言う事なんだろうな」
スイートの対応を目にし、遅れてティアとルージュも、葉月の言葉の意味を理解し察し始める。
「すまんな三聖騎シスターズども。後の事は、頼むぞ」
「「「はい、葉月様の仰せのままに」」」
葉月は最後にそう告げると、1人、石階段を駆け登り始めた。目指す先はおそらく『芽座一族の祠』であろう。
「ちぇ、結局留守番かよ」
「そう拗ねないの坊ちゃん。テトリスやる?」
「何で持ってんだよ!!……後、坊ちゃんって言うな!!」
「やるの、やらないの?……テトリス」
「やるよ!!」
ティアとレオンが早速テトリスで遊び始める。それを見たルージュも「まぜろ」と言って駆け出す。
残ったスイートは1人、葉月の影も見えなくなった山に向かって、願いを込めるように手を握り…………
「葉月様、どうかご無事で…………」
この時点で、三聖騎シスターズの3人は何となく理解していた。
葉月がこれから得ようとしている力は禁忌の力。それを得たら、どうなるかわからない。だからこそ、自分達をここで切ったのだと言う事を…………
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川のせせらぎが心地よい、喉かな原っぱ。
そこでは、ある小さな男の子と女の子がテーブルを広げ、バトルスピリッツを行っていた。
「………もう諦めろよ椎名。オマエじゃオレには一度たりとも勝てん」
「い〜〜や〜〜だぁ〜〜!!……かつまでやるの!!!」
「ったく………」
それは、幼き日の椎名と葉月。それぞれ4歳と9歳の頃。
この時はまだ、葉月がマグナモンに選ばれるための修行はしておらず、この通り、仲が良かった。もっとも、そんな事を思っているのは、椎名だけかもしれないが…………
「言っとくけど、オレはバトスピでは絶対手を抜かねぇからな」
「とうぜん!!……こんどこそかちゅ!!」
「まぁでも今日はダメだな」
「ズコーーー!!……なんでなんで!?」
「………いや、もう陽が沈むし、オマエを夜遅くまで遊ばせるとジジイがおっかねぇからな」
「ちぇ」
「そう拗ねんなって、バトスピなんか、いつでもできるだろ??」
「…………そだね!!」
幼さの割にあった純真な笑顔を葉月に向ける椎名。この時の葉月も笑っていたのを思い出す。あの時の笑顔は、多分もう、絶対に見られない。
………『バトスピなんか、いつでもできるだろ?』
昔の葉月の言葉が、頭の中で反響する。
「葉月の………嘘つき」
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「ッ………!!」
夢という名の幻が消え、目が覚める。知らない天井、知らない窓、そして、知らない女の子……………
「あ………」
「お、えぇっと………お、お邪魔してます……」
少女の年齢は大体10歳程度であろうか。桃色の長い髪とふっくらした頬っぺたが可愛らしい。椎名は、取り敢えず歯切れの悪い挨拶で誤魔化す。
すると、少女は大慌ての様子で…………
「お父さんお父さん!!……お姉さん起きた、お姉さんホントに起きたよ!?!」
「………」
別室にいるであろう父親を呼びに行った。
その様子はとても面白おかしく、且つ愛らしかった。おそらく少しだけ、昔の自分に似ていたからだろう。何にせよ、少女の反応や挙動は、肉体精神共に傷んでしまった今の椎名にとって、良い感傷剤になってくれた。
「早く早く、お父さん!!」
「あぁわかってるよ、引っ張らない引っ張らない」
桃色の髪の女の子が連れて来たのは、メガネを掛けた細身の40代くらいの男性。あんまり髭は剃ってないのか、顔から加齢臭みたいなのを感じる。
「あぁすまないね。驚かせてしまって………ここには私とこの子しかいない、ゆっくり寛いで行きなさい」
「ありがとうございます……でも私、急がないと」
そう言うと、男性の温かみのある言葉を蔑ろにするかのように、椎名は勢いよく立ちあがろうとするが…………
「ッ……!!」
「無理しない方が良い。見たところ、おそらく全治1ヶ月は掛かる怪我だ。今だと満足に歩けもしないだろう」
「………」
本当だったら、今すぐにでも葉月の所に行かないといけない。どこに向かっているのかは健闘がついている。あのバトル最後、自分に向けたあの悲しい表情。アレがどうにも忘れられないんだ…………
そう自分を奮い立たせようとするが、身体は言う事を聞かず。
「ここは?」
苦渋の思いで一度ベットの上に戻ると、この場所がどこなのかを質問する。
「界放市の外れにある、知り合いの別荘だよ。私は「春神イナズマ」………こっちは娘の「ライ」だ。2人で住む場所を転々としていてね。今はここと言うわけさ………もっとも、丁度出ようとした時に、空港での道筋で君を拾って、結局戻って来たんだけどね」
「あっはは………なんか、すみません」
「いやはは、そう言うつもりじゃないんだ許しておくれ………ライ、お姉さんに温かいスープを持って来てやりなさい」
「は〜い!」
春神イナズマと春神ライ。どう言う事かは知らないが、この2人もどうやら色々と訳ありらしい。
色々と察し、椎名は彼らに甘える事にした。
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再び場所は戻り、山の頂上、芽座一族の祠。その最奥部には以前、マグナモンが収まっていた巨大な石碑がある。
そして、そこには円を描くように、それと同じ物が丁度12個、合計で13ある。これ即ち、ルーチェモン封印の棺…………
それを確信している葉月は徐に、13枚のロイヤルナイツのカード達を取り出した。
「長かった………長い道のりだった」
「あぁ、これで君は最強になれる………本当に優秀な逸材だったよ君は、本当にね………」
これまでの道のりの干渉に浸る葉月の脳内で、またルーチェモンが語りかける。その声の節々に「早く復活させろ」と言う旨を感じる。
そして葉月は13枚のロイヤルナイツのカード達を束ね、天に掲げる…………
「さぁロイヤルナイツどもよ!!………大天使を縛りつけた、忌々しい封印から解き放って見せよ!!」
すると、13枚のカード達は、淡く優しい光を放ちながら、それぞれの石碑へと収まっていく…………
だが、その光は徐々に徐々にと邪悪さを増していき、やがて黒一色に染まり、石碑は砕け散っていく…………
そして、その中心より、白く、純白な12枚の翼を束ねし大天使が今、何千年の時を経て、復活を果たした。
「おぉ、遂に、遂に」
「………幼き日から聞こえて来たオマエの声、まさかこうして対面する日が来る事になるとはな………」
「フフ………そうさせてくれたのは君だよ葉月。さぁ、1つになろう………最強になるために………」
ルーチェモンはそう告げると、天使とは思えないような不気味で、邪悪な黒のオーラを纏った触手を生やすと、それを葉月の方へと伸ばしていった…………
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その日の夜、春神イナズマとライの別荘。
喋り疲れたライがよだれを垂らしながら転がり、気持ち良さそうに眠っている。今日一日、椎名はライと話していたが、昔の自分と話しているみたいで、とても落ち着いたし、とても楽しかった。
椎名はそんなライに掛け布団を掛けてあげると、Bパッドを腕にハメ、デッキを整え…………
「………もう出るのかい?」
「イナズマさん、起きてたのか」
こっそりと家を出て行こうとする椎名に声をかけたのは、他でもないイナズマだ。
「すみません。信じられないかもだけど、ひょっとしたら世界全体の危機かもしれないんだ、行かせてください」
「全治1ヶ月は掛かると伝えたはずだが………」
「あぁ、それなら大丈夫。私は普通の人間じゃないから………」
腕を軽く回し、元気になった事をアピールする椎名。だが本当はもう少し痛い。
だが、椎名が普通の人間ではないと言うのも本当の話である。何故なら彼女は…………
「エニーズ」
「ッ!?!」
「そうなんだろ?」
イナズマから発せられた意外な言葉に、椎名は驚かされる。
そう、自分は『エニーズ』…………
悪魔が造った、進化した世界のための生命体。
「なんで、アンタがその事を………」
「やはり、そうなんだね。Dr.Aに造られた人工生命体………まさか君とこうして向かう日が来るとは思ってもなかったよ」
「アンタ、まさか………」
世界を二度救った英雄として、数多くの人々に認知されている椎名だが、彼女の正体を知る者は少ない。それを知るのは、自分や、既に死亡しているDr.Aや六月、他はA事変に関わった同窓生くらいなものである。
他にそれを知る可能性があるとすれば…………
「そう。私は………科学者だ。かつて、Dr.Aもとい、徳川暗利の元で助手を務めていた」
「ッ………!!」
そう、春神イナズマは、あのDr.Aの助手だった男。共に人工生命体エニーズを生産、研究していた存在。
こんな穏やかそうな男が、あの「世界全てを進化の力で満たした進世界」を目指した、狂気の科学者の元にいたと言う事実は、俄には信じ難いモノだが…………
「最も、今から20年以上前の事だけどね。彼の狂気を知ってからは…………彼から逃げるように研究所を去ったよ。そして紆余曲折あり、今は娘のライと共に旅をしている」
「…………」
「君には本当に辛い思いをさせてしまった。徳川教授は、本当なら僕らが止めるべきだったのに………この通り、謝らせてほしい」
「え、いやいいって………頭なんか下げないでよ。そりゃ辛い事もたくさんあったけどさ、今は結構楽しいんだ」
イナズマは20年以上溜まりに溜まった罪悪感から、頭を深々と下げる。20年以上、彼から逃げ続け、責任を誰かに押し付けるような自分が、許せなかったのかもしれない。
兎に角、悲しくて、悔しかった事だろう。
「………そう言ってくれて、嬉しいよ」
「アンタも辛い事たくさんあったんだろうな………」
「あぁ、僕はずっと逃げて来た」
「ふ……だったら、娘の……ライからは絶対逃げないようにしないとな」
椎名は自分の言葉に、イナズマが頷くのを見届けると「私も、逃げないようにしないとな………」と、最後に告げて、この場を後にした。
目的地はもう決まっている…………
この世でだった1人しかいない、兄の元だ。
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葉月が1人で山を登ってから、およそ1日は経過した。夜を迎えて、明けて、今度は日は上り、鳩の間抜けな鳴き声が頭に響いて来る。
それでも三聖騎シスターズの3人と、獅堂レオンは、葉月の命令通り、この道を守護していた。もう誰も来ないと言う事は、わかっていると言うのに………
「なぁ、師匠はまだか?」
「さぁ………いつになったら帰って来るのでしょうね」
レオンの質問に、ティアが指先でメガネを定位置に戻しながら答える。
「おい、スイート………もうここで待つのはいいんじゃねぇのか?」
「!!」
レオンには聞こえなよう、ルージュがスイートに囁く。
「レオンにももう誤魔化しきれねぇ。ならいっそアタシ様らも上に登って…………」
「それはなりません。葉月様の命令でここを任された以上、葉月様が帰って来るまでは、ここは離れません」
実際はルージュの言っている事は正しい。1日経過しても帰って来ないのであれば、その様子を見にいくのが普通だ。
だが、スイートは彼の命令だからとそれを拒否。彼女程の頭脳ならば、その事くらい、容易に想像はついただろうに…………
余程、葉月を信頼しているのか、それとも、彼の亡き姿をこの目に映してしまう事を恐れているのか…………
どちらにせよ、頑固である。
「………ふざけた事抜かすなよスイート………アンタならもうわかってるはずだろ………葉月様が、命を賭けてでも、世界最大の力を得ようとしている事を」
「………」
「アタシ様らは、それを見届ける責任があるんじゃねぇのかよ………!!」
「………何度言われようが、持ち場を離れる事は容認できない」
「………チッ……そうかよ」
軽く口論になる2人。それを見たレオンは「お、なんだ喧嘩か?」と、煽り、ティアに軽く頭部をチョップされる。
そして、そんな時だ。こちらに向かって来る人影が薄らと見え始めたのは………
「………アレは」
スイートは遠目ながらそれを視認すると、その特徴的な一角のようなアホ毛から、すぐに誰かを特定する………
「め、芽座椎名………!?」
「はぁ!?……葉月様がボコったんじゃないのかよ、なんで1日で回復してんだ!?」
「それより、なんでこの場所が………」
真っ直ぐ近づいて来る人影の正体は、紛れもない芽座椎名本人。その存在に、三聖騎シスターズ達は驚きを隠せない。
「なぁに、復活したなら、またボコるだけだろ………今度はこのオレが直々に」
「いや待ちなさい坊っちゃま。ここは私が………」
名乗り出ようとするレオン。それを危ないと判断したスイートは、彼を制止させ、代わりに自分が名乗りを上げる。
そして、椎名はようやく彼女らの目の前まで辿り着いて…………
「三聖騎シスターズと、葉月の弟子か。やっぱり、葉月は山の頂上にいるんだな」
「………ここは通しません。私は今、ロイヤルナイツを持ちませんが、それは貴女とて同じ事………必ず死守して見せます」
スイートはBパッドを展開し、己のデッキをセット。バトルの準備を進めるが…………
対する椎名はそんなそぶりは一切見せず…………
「どけよ」
「!?!」
そのたったひとつの言葉の重圧に、スイートはおろか他の3人まで大きなプレッシャーを与えられる。
それは、並大抵のカードバトラーであれば、失神してしまうのではないかと言う程に強大なモノ。
だがスイートはそれにも負けず、冷や汗を掻きながらも、ゆっくりと自分達を素通りしようとして来る椎名を迎え撃とうとして…………
「聞こえなかったか??」
「…………!?」
「命張る覚悟もないんだったら、私の前に立つな……!!」
「ッ………!!」
次の瞬間、椎名に与えられた重圧、プレッシャー、恐怖に負けたスイートは、腰が抜けたようにその場でへたれ込む。椎名はそんなスイートを通り過ぎ、先を急ごうと山の階段を登り始める。
他2人のシスターズは、彼女の身を案じるように、その場に駆け寄る一方で、レオンは椎名のカードバトラーとしての強者の圧に気圧され、腰を抜かし、かける言葉さえも発する事ができなかった。
「ま、待ってください!!」
「………」
湧き上がって来る恐怖の中、声を振り絞り、スイートは椎名に声を掛ける。
「あ、貴女なら………貴女なら葉月様を助けてくださるのですか!?……貴女なら、私たちにできない事も、やってくれるのですか!?!」
涙ながら、声を荒げる。
誰よりも葉月に忠誠心のあるスイート。だがそれ故に、彼の目指す目標と彼の身の安否、どちらを取るかで悩んでいたのだろう。
そして、もう自分達ではどうする事もできない状況にまで陥ってしまった。今は芽座椎名に希望を託すしか他ならない。
そう。もう彼女しかいないのだ。
世界を二度も救った英雄、芽座椎名しか…………
「………そのために、私がいる」
椎名はスイートだけではなく、三聖騎シスターズ全員に向けてその言葉を送ると、再び階段を登り始めた。
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芽座一族の祠を目掛けて走る椎名。薄気味悪い洞窟を抜け、遂に広々としたその空間へと突入する。
そして、そこには予想通り、葉月がたった1人いて…………
「葉月………!?」
彼に近づこうとする椎名であったが、直ぐに違和感を感じる。
それは、いつもの葉月には持ち合わせていない、途方もない邪悪な気配を感じたからであり…………
「いや、葉月じゃない………オマエは」
「フフ………ようやくここに辿り着いたか、お初にお目に掛かるね………僕の名はルーチェモン。ロイヤルナイツに力を封印されていた存在さ」
「!!」
通りで邪悪な気配を感じるわけだ。
ルーチェモンは既に復活していたのだ。しかも葉月に憑依までしている。
「葉月から離れろ!!」
「そう言われてもなぁ、これは彼自身の願いだからね」
「なに!?」
「最強になるため、彼は僕と融合する道を選んだ。まぁ最も、人間の彼の意識はとっくに死んでるけどね」
「ッ………ふ、ふざけんな!!………葉月、葉月!!……アンタはまだ死んじゃダメだ、三聖騎シスターズや弟子達のためにも帰らないといけないんだ!!………葉月!!」
「フハハハハハハハハハ!!!!……いくら呼んでも無駄だよ。芽座葉月は死んだ」
本来の力を全て取り戻しただけではなく、葉月の肉体まで得たルーチェモンの高笑いは止まる事を知らない。
きっと、何千年もの間、己がこう来て復活する事をずっと考えていたのであろう。それが全てうまく行った時の快感から、笑いが止まらないのだ。
「この世界にはもう芽座一族も、エニー・アゼムもいない。僕はこの世界の覇者だ!!………でも、そのエニー・アゼムに似せて造られた君は鬱陶しいよね、芽座椎名」
「………!!」
「そうだ。君を潰す事で、僕は真の意味で覇者となる!!……集結せよ、13枚のロイヤルナイツを達!!」
「!?!」
ルーチェモンが手を翳すと、13枚の石碑に埋め込まれていたロイヤルナイツのカード達が彼の元に集う。そしてそれを葉月のデッキに入れ、展開したBパッドへとセットした。
その狙いは当然椎名の命…………
「………いいぞ、上等だ。アンタに勝って、世界も葉月も守る!!」
「フフ、そう来なくては困ると言うモノだよ」
ルーチェモンに勝てば、葉月を取り戻せるかもしれない。椎名はそう思い至ると、自身もまたBパッドにデッキをセットした。
「行くぞルーチェモン!!」
「あぁ、来るがいい、芽座椎名!!」
………ゲートオープン、界放!!
広々とした芽座一族の祠の中、葉月を取り戻すためのバトルスピリッツが幕を開ける。
先行はルーチェモンだ。葉月の肉体を通し、己がターンを進めていく。
[ターン01]ルーチェモン
「メインステップ………フフ、いいね。先ずはこのカード、僕の分身、契約スピリット『ルーチェモン』を召喚!!」
「!?」
ー【ルーチェモン】LV1(1)BP1000
ルーチェモンの場に召喚されたのは、自身の真の姿と酷似した天使型のスピリット。『分身』と称している事と、同名である事から、おそらくは彼自身なのであると思われる。
「契約スピリット………!?」
「あまり馴染み深くはないだろうね。契約スピリット、契約カードは、僕みたいな特異なスピリットと契約したカードバトラーにのみ与えられるカードの事さ。つまり、葉月はその資格を得たと言う訳」
「ッ……無理矢理葉月の肉体を奪ったクセに……!!」
「おおっと、勘違いしないでくれたまえ。これを望んだのは葉月自身だよ………君も知っているだろう、葉月が最強を目指していた事を」
「…………」
椎名が言い返す言葉を詰まらせた所で、ルーチェモンは召喚したスピリットの効果発揮を宣言する。
「僕の効果を発揮!!……1ターンに一度、手札、トラッシュ、デッキからロイヤルナイツ1枚をゲームから除外する事で、ボイドからコア1つをトラッシュに置き、カウント+1」
「なに、ロイヤルナイツをゲームから除外!?」
「フフ……僕はデッキから『ジエスモン』を除外し、コアをトラッシュに追加。その後、デッキから除外したら、それをシャッフルする。ターンエンドだ」
手札:4
場:【ルーチェモン】LV1
バースト:【無】
カウント:【1】
契約スピリット『ルーチェモン』の効果により、彼のデッキからロイヤルナイツの1枚である『ジエスモン』がデッキから外される。ジエスモンは謎の浮力で浮かび上がり、彼の頭上で停滞する。
しかし、それ1枚でバトルの流れを大きく変える力を持つ、ロイヤルナイツのカードを使えなくしてまで、使用する効果には思えない。
椎名はこの効果の裏に、必ず何かあると睨んで…………
[ターン02]芽座椎名
「メインステップ、ブイモンを召喚!!……その召喚時効果を発揮」
ー【ブイモン】LV1(1)BP2000
椎名の場に現れるのは、いつものブイモン。
その効果でデッキ上2枚がオープンされ、椎名はその中にある「フレイドラモン」のカードを手札に加えて、すぐさまそれを呼ぶ。
「ブイモンを【アーマー進化】!!……燃え上がる勇気、フレイドラモン!!」
ー【フレイドラモン】LV1(1)BP6000
「ほう、フレイドラモン。君が幼き頃から持つ、唯一無二のフェイバリットカードだったな」
ブイモンと勇気のデジメンタルが融合し、炎の竜戦士、フレイドラモンが出現する。
ルーチェモンから常に排出される、この世のモノ全てを駆逐せんとする邪悪なプレッシャー、それに立ち向かうにしては、フレイドラモンではやや力不足感があるのは否めないが、マグナモンやデュークモンと言ったロイヤルナイツをデッキから失った今、椎名は他のスピリット達のみで戦うしかなくて…………
「フレイドラモンの召喚アタック時効果!!……BP7000以下のスピリット1体を破壊する事で1枚ドロー!!」
「………」
「もちろん、対象はオマエだ、ルーチェモン!!……爆炎の拳、ナックルファイアッ!!」
フレイドラモンは拳から燃えたがる炎の弾丸を放出する。それはルーチェモンを純白の翼ごと焼き尽くした……………
かに見えた。
「!?」
放った爆炎が自然消滅すると、そこにはまだルーチェモンがいた。薄く青い、半透明のバリアでその身を包み込んでいる。
「ナックルファイアを耐えた………耐性持ちスピリット!?」
「いや違うね、きちんと破壊はされたよ。でも契約スピリットは特殊でね、破壊されても【魂状態】として残る………ルーチェモン、僕の分身は、まさに今その状態になったのさ」
「魂状態!?」
聞き慣れない言葉、効果が飛び交う。そもそもそれが効果なのかも怪しい。
わからない事だらけだが、それでも唯一理解している事は、ルーチェモンは未だ健在であると言う事……………
「よくわからないけど、何かされる前に、ライフを全て破壊するまでだ!!………アタックステップ、フレイドラモン!!」
「ライフで受けよう」
〈ライフ5➡︎4〉ルーチェモン
フレイドラモンが飛び掛かり、炎を纏った拳で、ルーチェモンのライフバリアを1つ叩き壊す。
その数は4つとなり、一先ずは椎名の優勢となる。
「フフ……だけど君のアタックステップ終了時、ルーチェモンはさっきと同じ効果を発揮する」
「なに!?……その状態でも効果は使えるのか!?」
「もちろんさ。僕はデッキからロイヤルナイツ『ガンクゥモン』をゲームから除外、トラッシュにコアを1つ追加」
椎名の攻撃終了に合わせ、再びルーチェモンの効果が発揮される。今度は『ガンクゥモン』と呼ばれるロイヤルナイツのカードがデッキから除外され、ジエスモンと同様に、ルーチェモンの頭上で停滞する。
「くっ……ターンエンドだ」
手札:6
場:【フレイドラモン】LV1
バースト:【無】
できる事を全てやり終えた椎名。ルーチェモンの繰り出して来た、全く知らないカードの翻弄されながらも、そのターンをエンドとする。
[ターン03]ルーチェモン
「フフ……僕のメインステップ、再びルーチェモンの効果で、今度は君にとっても馴染み深いであろうこのカード『マグナモン』をゲームから除外させてもらうよ」
「ッ………マグナモン」
3枚目に選ばれたのはマグナモンだ。デッキから除外され、ルーチェモンの頭上へと浮遊する。
「…………もうね、何となく気がついていると思うけど、僕の狙いは除外ゾーンに13枚あるロイヤルナイツを揃える事」
「!」
「そして、契約スピリット『ルーチェモン』により、それらは毎ターン最低でも1枚ずつ揃っていく。今は3枚目、つまり最高で残り10ターン………それが君に残されたタイムリミットだと言う事だよ、精々残りのターンを楽しむといい」
「………」
「フフ、フハハハハハハハハハ!!!!」
バトルが始まって以降、毎ターン余裕のある笑みを見せるルーチェモン。
椎名はそれを崩す事ができるのか、そして、葉月と世界を救う事はできるのか……………
最後のバトルスピリッツは、まだ始まったばかり。
次回、EPファイナル「激闘の果て」…………
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主人公の使用するデッキは鉄華団!!
ガンダム・バルバトスがエースとなる続編『バトルスピリッツ 王者の鉄華(https://syosetu.org/novel/250009/)』もよろしくお願いします!!