バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

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第15話「赤羽一族訪問!伝説を獲得せよ!」

 

 

 

 

 

 

 

赤羽司と長峰雅治は今、電車に乗っている。目的地は赤羽司の実家だ。2人は同じ町で育った。雅治は彼の家族とも仲が良く、ほぼ家族と言われるほどだ。

 

だが、そんななか、司は違和感と不安感を感じていた。何せ、今、自分が座っている座席の横には雅治がいるのだが、さらにその隣には、

 

 

「おい、めざし、なんでお前がいる」

「やっと気づいたなぁ、いや、どうしても赤羽家の伝説のスピリットをみたくってさぁ!」

 

 

そこに居たのは芽座椎名。椎名はいつものように笑顔を振舞いながら話す。直射日光を避けるための大きめの麦わら帽子が妙に馴染んでいて、似合っている。彼女に好意を抱く雅治はその姿を見て、またひとつ心を奪われている。

 

椎名がなぜここにいるのかは大体の見当がついた。おそらく雅治が呼んだのだろう。というか、帰省することは雅治にしか告げていない。うっかり口を滑らせて、それに椎名が便乗した。司はそう推理した。それは100%的中していた。

 

司は面倒臭いと思いつつも、ここまで来てはもうしょうがないか、どうでも良くなり、電車に乗っている間は、その口をずっと閉じていた。

 

ーそして電車は目的地に到着し、3人は赤羽家の家まで歩き出す。古びた家が多く。良く言えばのんびりとした趣のある場所、悪く言えば活気のない寂れた場所だった。

 

良く知っている司と雅治は早足で向かう。椎名はその後ろを歩き、周りをキョロキョロ見回しながらついて行く。

 

徒歩20分くらいで、そこに到着する。赤羽家の家は大きな神社と言ったところか、だいぶ年季が入っており、鳳凰のような石像が玄関前に飾られていた。

 

 

「おぉ、これが司ん家か」

「………鍵が閉まってやがる、…たくっ、開けとけって言っただろうが………」

 

 

ーすると、"カシャン"と鍵が開く音と、"ガラララ"と扉が開くと音がする。椎名は前を見るがそこには誰もいない。と思ったらいた。下に。それはとても小さくて可愛らしいお人形さんのような女の子だった。その子は司の妹だった。その子は真ん前にいた司と椎名を見つめ…………

 

 

「おとさーーん!!おかさーーーん!!!にぃがおよめさんつれてきたぁぁぁぁあ!!!」

「「なにぃぃぃぃぃい!!!!!」」

 

 

と叫ぶと、後ろから司の父親と母親が颯爽と走りこんでくる。年齢は2人とも40代前半と言ったところ。

 

 

「あの司が女の子を家に連れてくるなんて!!」

「おぉ!なかなかのべっぴんさんじゃねぇか!!!ところでお嬢さん、スリーサイズは?」

「うるせぇぇぇ!!!それが半年ぶりに実家に戻ってきた息子にとる態度か!?」

「なんか面白い家族だね!」

「まぁこうなることは予想してたけどね」

 

 

盛り上がる赤羽家の面々。一応帰る連絡は入ってはいたが、まさかこんな可愛らしい女の子を連れてくるのは彼らとして予想外だった。

 

 

「ハッハッハ!!申し遅れたな、俺は司の親父、赤羽一族の現頭領、【赤羽 紅蓮(あかばね ぐれん)】と、嫁の【緋色(ひいろ)】、司の妹の【可憐(かれん)】だ」

「こんにちは!!同級生の芽座椎名です!」

 

 

軽く挨拶を交わすと、紅蓮は、司に目を向ける。それはさっきまでとは違い、真剣な表情だった。

 

 

「……司、お前ここに帰ってきたってことは、……あれを引き継ぎに来たのか?」

「あぁ、あのカードをもらいに来た」

 

 

紅蓮は少し黙り込むと、また口を開く。

 

 

「だったら、明日だ、……お前とて、今日がなんの日かわかるだろ?」

「あぁ、わかってて今日帰ってきた」

「?今日何かあるの?」

「うん、今日は司のお姉さんの命日なんだ」

 

 

今日という夏の日、それは赤羽家にとっては忘れられない日にち。それもそのはず、今日は、司の7つ上の姉、赤羽茜の命日なのだから、

 

この日は毎年、とある人物に彼女の仏壇の前で、天国で何事も起きぬよう、供養をしてもらう日なのだ。

 

椎名達は家に上がり、その時を待つ。

 

 

「しーないいにおいするーー!」

「うっそー嬉しいなぁ!次はなにしよっか?」

「もう打ち解けてやがる」

 

 

椎名は司より10歳年下の妹、可憐と知らないうちに仲よしになり、一緒に遊んでいた。

 

 

「おい、司、お前あんな可愛い子どこで見つけたんだよ!羨ましすぎるぞ!」

「うるせぇぞ、クソ親父」

「あの子、雅治と司、どっちが好きなのかしら?」

「いや、おばさん、そういう話は………」

 

 

椎名と可憐が遊んでいる側で色々話す赤羽家と雅治。これだけ見ると、彼らは至って普通の家族だ。

 

そしてそんな時は終わり、仏壇の前に、お祓いや、供養をするためにある人物が現れた。それは【紫治 城門(しち じょうもん)】。

 

 

「おっ!来たな!城門の旦那!今年も頼むぜ」

「あぁ、任せてくれ…………おや?紅蓮、今日は見たことないお客を連れて来ているようだね?…」

「ん?あぁ、椎名ちゃんって言うんだ、可愛いだろ?あんたのとこの夜宵ちゃんといいとこいくんじゃねぇか?」

「人の子を自分の娘のように言うでない……………そうか、あの子が芽座椎名か……」

 

 

そう言って彼は装飾服を行きずりながら椎名の方へ向かった。

 

 

「君が芽座椎名ちゃんだね?」

「ん?そうですけどーーー、何か?」

「君のことは夜宵から聞いているよ、とてもセンスの良いバトラーだとね」

「?夜宵ちゃん?」

 

 

訳がわからない椎名のために、雅治は「あの人は夜宵ちゃんのお父さんなんだよ」と相づちを挟んだ。それを聞いた椎名は思わず飛び上がった。

 

 

「や、夜宵ちゃんのお父さん!?」

「はっは、驚いたかね、いやはや、あいつも有名になってしまったものだ………君は【界放リーグ】の本戦にも出場するそうだね、私もデスペラード校の理事長として見物させてもらうよ、君のバトル、楽しみにしている」

「へ、へぇ、夜宵ちゃんのお父さんが理事長なんだ…………ありがとうございます!精一杯頑張りますよ!」

 

 

その後、すぐに供養が始まった。お経を唱えたり、踊ったりと、様々な方法でそれを行った。1時間以上、そんなことをしていたものだから、椎名は眠気が差して来たが、なんとか一睡もせずにそれを乗り切ってみせた。

 

そしてこれは供養が終わり、城門も帰って墨色の夜を迎えた頃。椎名は赤羽家と雅治と共に鍋を食べていた。その鍋はとても絶品の一言だった。椎名もその味に震え上がった。

 

 

「ところで椎名ちゃんのご両親は何をなさってるの?」

 

 

司の母、緋色の質問だ。

 

 

「ん?私ですか?んーーー、私捨て子だから親はいないんですけど、じっちゃんが、育ての親はなんか神父的なことをしてますよ」

 

 

椎名がそのことを話した途端。赤羽家はおろか、雅治、司までもが目を見開いた。椎名は自分の出生が謎なことを真夏以外に話したことがなかった。あと知っているのは担任の晴太くらいか、

 

 

「うっ!!そうか!!良い人だな!じっちゃん!よしよし!俺が君を幸せにしてやろう!!」

「しーなをくどくなーー!!」

「もっといっぱい食べなさい!スイカいる?」

「ん?あっはい、ありがとうございます………」

 

 

司の両親は涙目になりながらそう面白げに喋った。椎名は不思議に思った。何せ、そんなことを話した自覚がないからだ。ただひとつ感じたことは、本当の家族という暖かさ。自分が今まで一緒に過ごして来た血の繋がってない兄弟達や、六月が、家族と思っていないわけではない。だが、両親がいるとこんな感じなのだと、肌で感じていたのだ。

 

そして鍋を食べ終わった頃、また砕けたような表情を戻し、真剣な顔で、紅蓮は司に告げた。

 

 

「司、明日の朝7時、表に出ろ、そこでお前が相応しいか試す、かつての茜のように」

「…………あぁ、わかった」

 

 

承諾する司。相応しいか試す。その試す方法はあれしかない。バトルスピリッツだ。そのカードは今までバトルスピリッツで示すことで受け継がれて来た。だが、それが使われ始めたのはたった10年前、理由としては、それがデジタルスピリットを使わないと全く使えないことにあった。

 

そして翌朝、司と紅蓮は家の前の広場でBパッドを展開してスタンバイしていた。椎名も雅治も緋色もその様子を見守っている。

 

 

「司、受け取れ」

 

 

そう言って紅蓮は1枚のカードを司に投げ渡す。司はそれを受け取り、見ると、それは自分が欲していた赤羽家に伝わる伝説のスピリットだった。かつては姉、茜に渡されたが、彼女が亡くなったことでまた持ち主をなくしたカードだ。

 

 

「なんの真似だ親父」

「それを入れて戦え、かつての茜も、いや、先祖代々そうして来た」

 

 

納得はできないものの、これを得るためには仕方ない。司はそれをデッキに差し込んだ。そしてそれを得るためのバトルが始まる。バトルスピリッツの始まりが宣言される。

 

 

「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

バトルが始まる。先行は司だ。

 

 

[ターン01]司

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、ホークモンを召喚」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

司が最初に召喚したのはこのデッキの潤滑油。赤き羽を持つ成長期スピリット、ホークモン。その召喚時を発揮させる。

 

 

「召喚時効果!」

オープンカード

【ハーピーガール】×

【ハーピーガール】×

【ホルスモン】○

 

 

召喚時効果は成功。アーマー体のホルスモンのカードが加えられた。

 

 

「これでターンエンドだ」

手札4⇨5

 

ホークモンLV1(1)BP3000

 

バースト無

 

 

司はそのターンを終える。先行の1ターン目としては上出来な動きと言えよう。

 

 

[ターン02]紅蓮

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

順調にターンシークエンスを行なっていく紅蓮。そしていよいよメインステップだが、ここでこの場にいる誰もが驚くスピリットを召喚する。

 

 

「メインステップ、俺は……いや、俺も!ホークモンを召喚する!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨3

 

「なに!?ホークモンだと!?」

 

 

紅蓮は司と全く同じスピリットを召喚した。司は驚いた。何せ、紅蓮はホークモンなどは使わないからだ。

 

 

「こ、これは、……ミラーマッチだ……!!」

「おぉ、あんまり見ないよね」

 

 

ミラーマッチ。その名の通り全く同じデッキ同士がバトルする時の総称だ。このデッキタイプが別れやすいご時世にはかなり珍しい現象だった。

 

ーだがこれは当然意図的なものであって、

 

 

「なんの真似だ親父……!!」

「なんだよ、俺がこれを使ったら悪いのかぁ?……ちなみにこのデッキはお前のデッキと全く同じだ」

「だったらなんで俺にあのカードを渡した!?…それだと俺が確実に勝てるじゃねぇか!」

 

 

今回の紅蓮のデッキは本当に司のデッキとほとんど同じだ。だが、唯一用意できないのが、赤羽家の伝説のスピリットカードだ。それ以外がほとんど同じカードだと、間違いなく司の方がカードパワーが上がる。

 

 

「よく考えろ司、仮にお前がそれで負けてみろ、それはお前があのカードに相応しくないという証明になる」

「!」

 

 

紅蓮にも考えがあった。確かにこの状況で司が負けることがあれば伝説のスピリットカードに相応しくないと言えるだろう。司も不機嫌な顔は崩さないものの、その意見には内心納得していた。

 

 

「さぁ、続きだ、ホークモンの召喚時で3枚オープン」

オープンカード

【イーズナ】×

【朱に染まる薔薇園】×

【ホルスモン】○

 

 

効果は成功、紅蓮は司同様、ホルスモンのカードを手札に加えた。

 

 

「よぉし、手札は整った、いくぞ司!俺はイーズナを召喚し、バーストをセット!そしてアタックステップ!ホークモンでアタック!」

手札4⇨5⇨4⇨3

リザーブ1⇨0

 

 

紅蓮は司も多用する低コストスピリット、イーズナを召喚し、一気にアタックステップまで移行する。ホークモンでのアタックは一見無謀にも見れるが、司とて、自分のホークモンを失うわけにはいかない。当然ここは、

 

 

「ライフで受けるっ!」

ライフ5⇨4

 

 

紅蓮のホークモンが司のライフを小さな羽を投げつけて破壊した。

 

 

「まだだ!イーズナ!!」

「はぁ!?BPの劣るイーズナでアタックだと!?………くっ!ホークモンでブロックだ!」

 

 

一見してみると、ただの紅蓮のプレイミスにしか見えない。だが、これは大いに意味があることであって、司だったら絶対にしないであろう戦法だ。

 

 

「この瞬間!ホルスモンの【アーマー進化】を発揮だ!ホークモンを対象に1コストを支払い、これを召喚する!そのコストはイーズナより確保!よって消滅!」

イーズナ(1⇨0)消滅

トラッシュ3⇨4

ホルスモンLV1(1)BP4000

 

 

イーズナは司のホークモンとバトルする瞬間に消滅してしまうが、紅蓮のホークモンの頭上に独特な形をした卵が投下される。ホークモンはそれと衝突し、混ざり合う。そして赤き空飛ぶ獣のスピリット、ホルスモンが召喚された。

 

 

「司の反対側にホルスモンがいるなんて、なんか新鮮だね」

「うん。それにこの戦法は司が絶対にやらないタイプだ」

 

 

アーマー体の特有効果、【アーマー進化】は、普通の進化とは違い、フラッシュタイミングでも行えるため、様々な場面で使え、幅が広い、

 

自分のアタックステップで使えば連続アタック、また逆も然り、だが、司はそんな戦法はとったことがなかった。圧倒的に危険だからだ。自分のアタックでは、フラッシュタイミングの権利は基本的に相手がなきとなるため、その最初のコンタクトで元となる成長期スピリットが破壊される恐れがあるからだ。

 

今回、紅蓮は司と同様のデッキでそれを行なった。司が驚いたのは、自分のデッキでそんなことをするはずがないという固定概念が頭から離れなかったからだろう。

 

 

「司ぁ、お前はいつも自分の考え方に頭を縛られている、いつも言ってただろうが、【あるもの全ての可能性を考え、それをフルで活かせ】と」

 

「そんなものもうとっくに理解しているっ…!!……俺のフラッシュ!ホルスモンの【アーマー進化】!ホークモンを対象に、1コストを支払い、これを召喚する!」

リザーブ1⇨0

トラッシュ3⇨4

ホルスモンLV1(1)BP4000

 

 

司のホークモンもまた、紅蓮と同じようにホルスモンへとアーマー進化を果たす。これで司の場には再びブロッカーが復活したことになる。

 

2体のホルスモンのLVは1。当然同じBPを持つ。仮にこのターンで2体がバトルを行えば相打ちになる。そうなれば、紅蓮側の場の方が圧倒的に不利になる。次は司のターンだからだ。そのため、司はアタックは仕掛けてこない。そう思ったが、

 

 

「やれ!ホルスモン!」

「なんだと!?」

 

 

風を巧みに操り、羽ばたくホルスモン。目指すは司のライフだ。

 

 

「アタックは……くっ、ライフだっ!」

ライフ4⇨3

 

 

ホルスモンの竜巻のような攻撃が、司のライフをまた1つ破壊した。司とて、ホルスモンの破壊は痛いと考えたからなのか、

 

 

「おいおい司ぁ、何驚いてんだぁ?全ての可能性を考えろって言ったよなぁ?ここでお前が驚いたってことは、今の可能性を考慮してなかったってことじゃねぇか、お前、さっき言ったよなぁ、理解しているって、」

「う、うるさい!ターンを続けやがれ!」

 

「はぁ、反抗期の子持ちの親父は大変だな、…………ターンエンドだ」

ホルスモンLV1(1)BP4000(疲労)

 

バースト有

 

 

少々呆れながらも、そのターンを終える紅蓮。ちなみに紅蓮は仮にも赤羽家の現頭領。本来の自分のデッキを使えば、司はおそらくもっとこっぴどくやられていたことだろう。

 

 

[ターン03]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨6

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップ、……………」

 

 

司は思考を張り巡らせていた。先ず警戒すべきは相手のバーストだ。自分と同じデッキならば考えられるのは破壊後か、ライフ減少。

 

相打ちを恐れずにアタックしたと言うことは、

 

 

(あのバーストは破壊後だ)

 

 

そう考える司。そしてあのバーストが確実にそれだと認識しながらバトルを続ける。

 

 

「いくぞ!クソ親父!俺はイーズナ2体、ハーピーガール1体を召喚!」

手札6⇨3

リザーブ6⇨2

トラッシュ0⇨1

 

 

イタチのような姿のイーズナと、腕と足が鳥のような姿になっている女性のスピリット、ハーピーガールが召喚された。

 

 

「さらにホルスモンのLVを2に上げ、アタックステップ!やれ!ハーピーガール!」

リザーブ2⇨0

ホルスモン(1⇨3)LV1⇨2

 

(?…ホークモンを召喚しない?)

 

 

飛び立つハーピーガール。目指す先は紅蓮のライフただ一つ。ブロッカーのいない紅蓮は当然このアタックをライフで受けることになる。

 

 

「ライフで受ける」

ライフ5⇨4

 

 

ハーピーガールの強烈な翼撃が、紅蓮のライフを1つ破壊した。

 

 

「ハーピーガールの【聖命】により、俺のライフを1つ回復!」

ライフ3⇨4

 

 

ハーピーガールの【聖命】の力で、司のライフに活力が戻る。

 

ーだが、

 

 

「ライフ減少により、バースト発動!」

「!」

「救世神撃破!BP6000まで好きなだけお前のスピリットを破壊する!くたばれ雑魚ども!」

 

 

渦を巻く業火が、2体のイーズナと、ハーピーガールを襲う。3体はたちまち破壊されてしまった。

 

迂闊だった。司は今一度考え直してみる。あのホルスモンのアタックはライフを減らしやすいようにしむかれていただけだった。その結果、簡単に罠にはまり、一気に3体のスピリットを破壊されてしまった。司にしては意外な判断ミスであると言える。

 

 

「さぁ、この後どうする?」

「………ホルスモンでアタックだ」

 

「だったらそいつもライフだ」

ライフ4⇨3

 

 

司のホルスモンの竜巻のような攻撃が、今度は紅蓮のライフを破壊した。

 

 

「………ターンエンドだ」

ホルスモンLV2(3)BP6000(疲労)

 

バースト無

 

 

 

やることを失った司は、そのターンを終える。次は紅蓮のターンだ。

 

 

[ターン04]紅蓮

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨7

トラッシュ4⇨0

ホルスモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ、俺は2体目のイーズナを召喚し、さらにホークモンを召喚だ」

手札4⇨2

リザーブ7⇨4

トラッシュ0⇨1

 

 

紅蓮の場に2体目のイーズナと、【アーマー進化】により手札に戻っていたホークモンが再び場に現れた。その召喚時の効果も当然発揮させる。

 

 

「召喚時効果!」

【アクィラモン】○

【テイルモン】○

【シュリモン】○

 

 

召喚時効果は全て当たり、その場合は好きなものを1枚名札に加えられるが、

 

 

「俺はシュリモンを手札に加える………さらにリザーブの残りコアを使ってレベル調整」

手札2⇨3

リザーブ4⇨0

ホルスモン(1⇨3)LV1⇨2

ホークモン(1⇨3)LV1⇨2

 

 

ホルスモンとホークモンのLVがアップする。

 

 

「アタックステップ!ホークモン!ホルスモン!」

 

「……2体ともライフだ!」

ライフ4⇨2

 

 

2体の赤きスピリットが、司のライフを2つ叩き割る。

 

 

「さぁ!いけ!イーズナ!」

 

 

走り行くイーズナ。紅蓮はまたここでもフラッシュであの効果を使用する。

 

 

「フラッシュ!シュリモンの【アーマー進化】発揮!対象はホークモン!1コスト支払い、これを召喚!」

ホルスモン(3⇨2)LV2⇨1

トラッシュ1⇨2

シュリモンLV2(3)BP9000

 

 

ホークモンにこれまた独特な形をした卵が投下される。そしてまたそれと衝突し、混ざり合う。そして新たに現れたのは緑のアーマー体、忍者のような姿のシュリモン。

 

 

「シュリモンの召喚時効果!疲労状態の相手スピリットを1体手札に戻す!ホルスモンを戻す!」

 

「くっ!」

手札3⇨4

 

 

シュリモンは勢いよく背中に装備された巨大な手裏剣を司のホルスモンに向かって投げつける。それに直撃した司のホルスモンはたちまち司の手札へと強制送還されてしまった。

 

それだけではない。このイーズナのアタックと、シュリモンのアタックで司のライフがゼロになってしまう。

 

まさかほとんど同じデッキでここまで差があるとは思ってもいなかっただろう。いくら相手が歴史に名を残せるほどの実力を持つバトラーと言えど、いつも自分が扱っているデッキの力を自分以上にここまで理解してゲームメイクができるなど想像もしてなかった。

 

だが、【界放リーグ】で勝つためには、芽座椎名に勝つためには、あの力がどうしても必要なのだ。こんなところでつまずくわけにはいかない。

 

ー司は手札のカードを1枚引き抜く。

 

 

「フラッシュ!シンフォニックバースト!……このバトルで俺のライフが2以下ならば、お前のアタックステップを終了させる!」

手札4⇨3

リザーブ8⇨5

トラッシュ1⇨4

 

 

司の場に黄色いバリアが展開される。

 

 

「そのアタックはライフだ!」

ライフ2⇨1

 

 

イーズナが司のライフを勢いよく破壊するも、残りライフは1。2以下だ。黄色いバリアが弾け飛び、紅蓮のスピリット達の動きを封じ込める。

 

 

「……ほぉ、まぁいいか、このターンはエンドだ」

ホルスモンLV1(2)BP4000(疲労)

シュリモンLV2(3)BP9000(回復)

イーズナLV1(1)BP1000(疲労)

 

バースト無

 

 

やれることを全て終え、そのターンを終える紅蓮。次は司のターンだが、既にあからさまに戦力差が開いてきている。巻き返すのは難しいだろう。

 

 

[ターン05]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ6⇨7

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ7⇨11

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップ、俺も2体目のイーズナと、【アーマー進化】により手札に戻っていたホークモンを召喚」

手札4⇨2

リザーブ11⇨6

トラッシュ0⇨3

 

 

司の場にも同じスピリットが展開されるが、運命を分けるのはこの先であって、

 

 

「ホークモンの召喚時効果、…………カードをオープン!」

オープンカード

【朱に染まる薔薇園】×

【シャイニングバースト】×

【ホウオウモン】×

 

 

残念ながら全て外れだった。それらは全てトラッシュに送られた。だが司はまだ諦めない。まだスピリットを展開する。

 

 

「再びホルスモンの【アーマー進化】発揮!ホークモンを対象に1コスト支払い、LV2で召喚!」

リザーブ6⇨3

トラッシュ3⇨4

 

 

再びホークモンはホルスモンへとアーマー進化を果たすが、もはやこれだけではどうにもできない。

 

 

「さらにもう一度ホークモンを召喚する」

手札2⇨1

リザーブ3⇨1

トラッシュ4⇨5

 

 

再び召喚されるホークモン。そしてその召喚時を使用する。

 

 

「効果発揮!」

オープンカード

【ホークモン】×

【イエローリカバー】×

【ホークモン】×

 

 

効果はまた不発だ。だが、司はそれでも表情を崩さずにアタックステップへと移行する。

 

 

「いくぞ!アタックステップ!……ホークモンでアタック!」

 

 

果敢にアタックしに行くホークモン。紅蓮の場にはシュリモンが存在するが、

 

 

「ふっ、ブロックだ、シュリモン、相手してやれ、」

 

 

なんのためらいもなくシュリモンにブロックさせる紅蓮。司は手札にある自分の【アーマー進化】発揮させる。

 

 

「フラッシュ!シュリモンの【アーマー進化】発揮!対象はホークモン!1コストを支払い、これを召喚する!」

リザーブ1⇨0

トラッシュ5⇨6

 

「ほぉ、もともと持ってやがったなぁ」

「あの司が自分のアタックステップで【アーマー進化】を………!!?」

 

 

司のホークモンも、紅蓮のホークモン同様、シュリモンへとアーマー進化を遂げる。そしてまた召喚時の効果だ。

 

 

「召喚時効果!俺が対象に選ぶのは…………イーズナ!貴様だ!」

 

「!」

手札3⇨4

 

 

シュリモンの巨大な手裏剣が、今度は紅蓮のイーズナを吹き飛ばす。イーズナは紅蓮の元へと強制送還された。

 

司が何故強力なアーマー体ではなく、弱小で再召喚を狙いやすいイーズナを手札に戻したのかは理由があった。

 

 

(やるじゃねぇか、これで俺のイエローリカバーは使い物にならない)

 

 

紅蓮のデッキには黄色のスピリットを回復させるイエローリカバーがあった。そのままアタックさせていれば間違いなくどこかでかイーズナを回復されていたことだろう。

 

これでスピリットのフルアタックで、紅蓮のライフをぴったりゼロにできる。

 

 

「よし!俺はこの3体でアタックを仕掛ける!いけぇ!」

 

 

司のスピリット、イーズナ、ホルスモン、シュリモンの3体がアタックして行く。

 

 

(ほぉ、見せ場があるのにもかかわらずそれを使わない……か、ほんっとにプライドが高い奴だなお前は、……まぁいい、どうやら俺の気持ちは伝わってるみたいだしな)

 

 

迫り来るスピリット達を前に余裕そうな顔で考え事をする紅蓮。

 

紅蓮は知っていた。司は既に赤羽家の伝説のスピリットを引いていたことを。だが、司はそれを使おうとはしなかった。使えばもっと楽に勝てていたはずなのに、彼なりのプライドだろう。紅蓮は自分の役目はここまでと考えて、ゆっくりとその瞳を閉じて行く。

 

 

「ライフで受けてやるよ」

ライフ3⇨2⇨1⇨0

 

 

3体のスピリットによる連続攻撃が紅蓮のライフを一気に0にした。これで司の勝利となる。最後は意外と呆気ない幕引きだった。

 

 

「はぁっ、はぁっ、……どうだクソ親父!俺の勝ちだ!こいつはもらってくぜ、」

「あぁ、好きにしろ、」

 

 

息を切らしながら、そう言ったかと思えば、なぜか司は駅の方面まで歩いて行く。

 

 

「ちょっちょっと!司!?どこ行くの?」

「あぁ?目的は果たした。俺は帰る」

「えぇ!?」

「まぁそんなことだと思ってたけどね、……僕達も準備しようか」

 

 

そう言って、素早く支度した椎名達は赤羽家の者達に別れを言って駅まで歩いて行った。

 

 

「あなた、良かったの?アレを渡して、」

「ん?いや、いいだろ、別に一族が云々とか、まだ早いとか、どうでもいいのよ、俺は、」

 

 

そう言って家に帰る紅蓮。緋色は「本当に親バカね」と呟いて、後を追うように家に帰った。

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉

「はい!椎名です!今回はこいつ!【ホークモン】!」

「ホークモンは赤の成長期スピリット、召喚時の効果で成熟期スピリットか、アーマー体スピリットを手札に加えられる効果があるよ!……そう言えば結局伝説のスピリットってなんだったんだろう?気になるなぁ」







最後までお読みいただき、ありがとうございました!
今回のバトル。よく読んでみると、途中から司が相手の裏をかく力が上がっているのがわかるはずです。
次回もお楽しみに!

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