※ほとんど特別回みたいなものです。本編では椎名が主役として活躍します。
「……と、言うわけで、私の夏休みの宿題を手伝ってください」
「はぁ?」
蒸し暑い夏の終盤に、椎名はとある私立探偵事務所を訪れていた。その名も【天楼探偵事務所(てんろうたんていじむしょ)】。界放市で根をはるこの探偵事務所は、そこそこ有名な場所であった。この探偵事務所には2人の探偵がいる。その1人が今、椎名と話している青年【左近時 切札(さこんじ きりふだ)】。
切札は困っていた。なぜならこの少女、芽座椎名の依頼がなんとも意味不明な内容だからだ。
「だから言ったじゃないですか!……私この宿題終わらないと【界放リーグ】に出られないんですよ!お願いします!」
椎名は学園に来るまでは宿題などやったことがなかった。じっちゃんこと芽座六月の管理する児童施設にいたからだ。
【界放リーグ】が楽しみすぎてそのことをすっかり忘れていた。成績に難がある生徒は出場できないと言う情報を聞いて、これはヤバイと考えた椎名は、なんとかするためにこの探偵事務所に訪れたのだ。
「いやいや、お嬢さん、宿題ってぇのは自分でやるもんだぜ?……そしてこの探偵事務所は極めてハードボイルドな……」
「興味深い!……あの界放市一のイベント、【界放リーグ】に出場するほどのバトラーのデッキを見ることができる良いチャンスだよ!切札!これは引き受けるべきだ!」
その横で切札の言葉を遮るように、興奮しながら喋る少年は、この探偵事務所のもう1人の探偵【シモン】。端正な顔立ちに、緑色の髪色が特徴的だ。性格としては、とにかく知識欲が旺盛。
「あぁ?おいおいシモン!なんでそんな理由で妙ちくりんな依頼受けないといけねぇんだよ!今日はあいつも出かけていないのに、なんでこの事務所はうるさい女がしょっちゅうまとわりつくんだ!?」
「今言っただろう?あのTV中継もされる【界放リーグ】に出るかもしれないスピリットカードをこの目で見れるチャンスなんだ!」
「俺とお前も学生じゃねぇだろうが!!そんなの見てどうなるんだよ!」
「引き受けてくれるんですか!!」
「引き受けねぇよ!」
なかなか引き受けてくれない切札に、椎名は差し入れを差し出す。それは有名なドーナツ屋のチェーン店。ドーナツの穴場の美味しいドーナツだ。
「あっ!これ!先入れです!どうぞ!」
「そんなもんくれたって、依頼なんか受けねぇぞ」
「………いや、待てよ、これは…………そうか!そう言うことだったのか!検索を再開しよう!」
「?」
ドーナツを見て、何かひらめいたのか、そう言うと、シモンは事務所の別部屋に向かい、引きこもる。約10分後くらいに1冊の本を手に持ち、出て来る。不思議そうな顔を見せる椎名。だが、切札は少しだけ笑いながら「何かわかったのか?」と呟く。
「あぁ!あの事件の犯人がようやくわかった!場所を伝える、そこへ行きたまえよ切札」
その後はその場所だけを伝えられて、切札はお気に入りのソフト帽を被り、外へ飛び出した。シモンは椎名の宿題を手伝う。手伝ったらデッキを見せてくれるのを条件に。
「おぉ!これが宿題!簡単な問題ばかりだねぇ」
「うっそ!?そんな簡単なの?私は全然わからないや……」
******
切札は界放市の街を走っていた。切札達は椎名が来る前からある依頼を受けていた。街の宝石を盗む泥棒を捕まえて欲しいと言う依頼だったが、その犯人がようやく判明したのだ。
切札は走りに走って、広めの路地裏へと到着した。そしてそこには別の男が1人いた。その男が犯人だ。その男は驚愕していた。ここなら誰も来ないと確信していたからだ。そもそも自分が犯人だといつバレたのかもわからなかった。だが、もう言い逃れはできない。手に持っている宝石の山が動かぬ証拠だ。
「よぉ、宝石泥棒さん?」
「な、何故俺が隠れている場所がわかった!?」
「こっちには優秀な相棒が付いているんでね………さぁ、ここなら逃げ場はない。バトルと行こうぜ」
苦い顔をする男。だが、その顔は直ぐに笑みへと変わる。そして1つのデッキケースを徐に切札に見せつけてきた。そのケースはDの文字の頭文字が入っており、凄まじいほどの闇の瘴気が漂っている。
「はっはっはぁ!!!この俺のデッキに勝とうってのか?笑わせるぜ!」
「はっ!笑わせるのはそっちの方だぜ、俺に、いや、俺たちに勝てると思ってんのか?………出番だぜ、シモン」
そう言って切札は不思議な形をしたベルトを腰に取り付ける。すると、事務所に残っているはずのシモンにも同じベルトが突如出現する。
******
「おや?出番のようだ………すまない椎名ちゃん、僕は少し疲れた、回復のためにしばらく睡眠をとるよ」
「え!?なんで今?」
そう言ってシモンは腰に巻きつけられたベルトにデッキケースを転送させる。その瞬間、急に意識が途絶えたかのようにバタンとソファに倒れてしまう。
「えぇ!?寝るの早!」
宿題に集中していた椎名は全くその不思議な現象には気づいていなかった。
******
(やぁ、切札、やはり僕の推理は正しかったようだね、)
「あぁ、流石だぜ相棒」
切札の右目が緑色に変わる。そして何故かシモンの声が薄っすらと聞こえるようになっている。切札は転送されたデッキケースを手に取り、Bパッドを展開した。
「返り討ちにしてやるぜ!」
男もBパッドを展開させると同時に、デッキケースのボタンを押す。
〈ダダ!〉
そんな音がデッキから発せられる。さらにデッキケースからデッキが飛び出し、男はそれをBパッドにセットした。
〈ダブル!〉
今度は切札が持っているデッキケースから音が発せられた。男同様、そこからデッキが飛び出し、Bパッドにセットした。これで互いに準備は万端だ。
「「(ゲートオープン、界放!)」」
ーバトルが始まる先行は宝石泥棒の男だ。
[ターン01]宝石泥棒
《スタートステップ》
《ドローステップ》手札4⇨5
「メインステップ!俺はこのカード!三面怪人ダダを召喚する!」
手札5⇨4
リザーブ4⇨1
トラッシュ0⇨2
男が召喚したのは白と黒の体を持つ宇宙人のようなスピリット、ダダ。
「うぉ!?気持ち悪!」
「はっはっは!俺はこのデッキを、カードを手にした時から絶好調なんだよ!もう誰も俺を止めることはできねぇ!!ターンエンドだ!」
三面怪人ダダLV1(1)BP3000
バースト無
彼が手にしていたデッキは【デッキメモリ】と呼ばれていた。それは人間に狂気な力を与える不思議な小箱だ。それは使いすぎるとその者の精神を崩壊させてしまうという。今の界放市はそれが大量に出回っており、奇々怪界な事件が多発していた。
ーそしてそれらに立ち向かうのが、切札とシモンのタッグだ。
(安心したまえよ、切札、あれは効果も何もないただのスピリットだ、僕たちの敵じゃあない)
「よし!行くぜ相棒!」
[ターン01]切札&シモン
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ4⇨5
《ドローステップ》手札4⇨5
「メインステップ、早速出番だな」
(あぁ、召喚しよう)
「おう!俺はこいつを……仮面ライダーWサイクロンジョーカーを召喚!」
手札5⇨4
リザーブ5⇨1
トラッシュ0⇨3
〈サイクロン、ジョーカー!!〉
そんな無機質な機械混じりの声が聞こえてきたかと思えば、強い風が吹き上げ、竜巻を発生させる。そしてその中心には紫の電気が迸っている。そして風が止むと同時に現れたのは右側が緑、左側が黒色の姿をした仮面スピリット、その名もW、この形態はサイクロンジョーカー。彼らのデッキの基盤となるスピリットだ。
「お、お前、お前がWだったのかぁ!?」
男は驚いた。このWはメモリ犯罪者と呼ばれる者たちの中ではわりかし有名だった。だが、切札はその言葉に訂正を入れる。
「あぁん?……そこはお前じゃなくて、お前達、だろ?………」
(行くよ切札、決め台詞は忘れてないだろうね?)
「わかってるぜ」
「(さぁ、お前の罪を数えろ!)」
切札は左手をスナップさせながら犯人にそう告げた。
「誰が数えるか!」
「行くぜ!サイクロンジョーカーの召喚時、ボイドからコアを1つリザーブへ!……さらにそのコアを使い、サイクロンジョーカーのLVを2へアップだ!」
リザーブ1⇨2⇨0
仮面ライダーWサイクロンジョーカー(1⇨3)LV1⇨2
効果をさらに使い、一気にレベルが上がるサイクロンジョーカー。そしてアタックステップへと移行する。
「アタックステップ!いけ!サイクロンジョーカー!」
「そいつはライフで受ける!………ぐぉ!」
ライフ5⇨4
一瞬のうちに男との距離を縮めるサイクロンジョーカー。そしてそのライフを殴りつけて破壊した。
(なかなか良い先制点だ、)
「だろ?俺達はこれでターンエンドだ」
仮面ライダーWサイクロンジョーカーLV2(3)BP4000(疲労)
バースト無
やれることを全て失い、そのターンを終える切札達、次は宝石泥棒の反撃が待っていた。
「ぐっ!……舐めやがって、今に見てやがれぇ!!」
[ターン03]宝石泥棒
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ2⇨3
《ドローステップ》手札4⇨5
《リフレッシュステップ》
リザーブ3⇨5
トラッシュ2⇨0
「メインステップ!俺はさらに2体のダダを召喚!」
手札5⇨3
リザーブ5⇨2
トラッシュ0⇨1
男はさらに2体のダダを召喚した。名前の通り、三面怪人らしくなったと言える。
「おいおい、これちょっとやばいんじゃねぇか?」
(いや、問題ない)
とは言っているが、場のスピリット数は圧倒的に不利。切札が少し不安になるのは当たり前だ。なんせ、彼はバトルスピリッツのルールというものを、このシモンと出会うまでは全く知らなかったのだから。
「最初に出たダダのレベルを2に上げ、アタックステップ!レベル1のダダ2体でアタック!」
2体のダダが切札に向かって走り出す。目指すは彼のライフを破壊することだ。
「きたぞ!シモン!どうすればいい?」
(ライフで受けろ!)
「よしきた!ライフで受けてやるぜ!……!」
ライフ5⇨3
ダダ2体の右拳のパンチが切札のライフを一気に2つ破壊した。
「くっ、結構効くじゃねぇか」
「どうだ!これでターンエンドだ!」
三面怪人ダダLV2(3)BP6000(回復)
三面怪人ダダLV1(1)BP3000(疲労)
三面怪人ダダLV1(1)BP3000(疲労)
バースト無
男はレベル2のダダだけをブロッカーとして残し、そのターンを終える。次は切札達のターンだ。
[ターン04]切札&シモン
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ2⇨3
《ドローステップ》手札4⇨5
《リフレッシュステップ》
リザーブ3⇨6
トラッシュ3⇨0
仮面ライダーWサイクロンジョーカー(疲労⇨回復)
「メインステップ、」
(メインは何もしなくていい、全力で攻勢に回れ!)
「オッケー、アタックステップだ!サイクロンジョーカーでアタック!」
走り出すサイクロンジョーカー。だが、今の男の場には回復状態で待機しているレベル2の三面怪人ダダがいる。このままでは返り討ちにあうだけだが、
「はっはっは!馬鹿め!自爆とは!」
「誰が自爆だ!お熱いの!喰らわせてやる!……フラッシュ!【チェンジ】発揮!サイクロンジョーカーを対象にヒートメタルの効果を発揮する!お前のスピリットを疲労させ、サイクロンジョーカーとこいつを回復状態で入れ替える!」
リザーブ6⇨3
トラッシュ0⇨3
サイクロンジョーカーが自身の腰に巻きつけられたベルトにある小さな小箱を2つ入れ替える。すると、
〈ヒート、メタル!〉
サイクロンジョーカーの色が変わっていく、次は右側が赤、左側が銀色に変わった。これが仮面ライダーWの別形態、ヒートメタルだ。
「ちぇ、チェンジだとぉ!?」
(何を驚いている?【チェンジ】の効果はどの仮面スピリットのデッキにもあるだろう?)
「俺達が対象に選ぶのはもちろん!レベル2のダダだ!くらえ!」
ヒートメタルは自身の武器である棍棒を振り回すと、炎が巻き上がり、レベル2のダダを吹き飛ばした。これで男のスピリットは全て疲労状態となる。
(アタックは継続中だ!)
「ら、ライフで受ける……ぐぉ!」
ライフ4⇨3
ヒートメタルの炎を纏わせた棍棒の一撃が、男のライフを1つ破壊した。さらにそれだけでは済まされない。【チェンジ】の効果は回復状態で入れ替え、そのままバトルを続行させるというもの、つまり、今、ヒートメタルは回復状態、追撃が可能だ。
(切札、追撃だ!)
「あぁ、……ヒートメタル!………ヒートメタルはアタック時にコアを1つこいつに置く!」
仮面ライダーWヒートメタル(3⇨4)
「く、くそ!ライフだ!………ぬぅ!」
ライフ3⇨2
再びヒートメタルが男のライフを破壊した。これで一気にライフ差を逆転させた。
「よっし!ターンエンドだ!」
仮面ライダーWヒートメタルLV2(4)BP5000(疲労)
バースト無
そのターンを終える切札達、次は男のターン。ガラ空きの場に、今まで以上に攻め立てようとしていた。
[ターン05]宝石泥棒
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ2⇨3
《ドローステップ》手札3⇨4
《リフレッシュステップ》
リザーブ3⇨4
トラッシュ1⇨0
三面怪人ダダ(疲労⇨回復)
三面怪人ダダ(疲労⇨回復)
三面怪人ダダ(疲労⇨回復)
「メインステップ!俺はソウルホースを召喚し、ダダ2体をレベル2と3にアップ!」
手札4⇨3
リザーブ4⇨0
三面怪人ダダ(1⇨3)LV1⇨2
三面怪人ダダ(3⇨4)LV2⇨3
男は脚に炎を纏わせた紫の馬、ソウルホースを召喚し、さらにダダ2体のレベルを上昇させる。
「アタックステップ!攻勢に回りすぎたなぁ!お前を守るスピリットはもうどこにもいないぜぇ!……ソウルホース!」
走り出すソウルホース。このターン。男のこの4体のスピリットのアタックのうち、3つがヒットすれば、切札達の負けとなる。
「うっ!そうだった!やばいじゃねぇか!」
(何を言っている切札、【チェンジ】の効果は相手のターンにも使用できる)
「……!!…そうだった!」
【チェンジ】の効果がフラッシュタイミング全域で発揮できることを思い出し、切札は手札1枚を引き抜く。
「いくぜ!フラッシュタイミング!【チェンジ】発揮!対象はヒートメタル!今度はルナトリガーだ!お前のスピリット1体を疲労させ、ボイドからコア1つをトラッシュに置き、ヒートメタルとこいつを回復状態で入れ替える!」
リザーブ3⇨0
トラッシュ3⇨6⇨7
「なにぃ!?」
〈ルナ、トリガー!〉
Wは再び自身のメモリをチェンジする。次は右側が黄色で左側が青色だ。今度は手に銃を所持した、ルナトリガーが現れた。
ルナトリガーは現れるなり、その銃でレベル3のダダを狙い撃ちにする。その弾は曲がりながらもダダを撃ち抜いた。ダダは吹き飛ばされ、疲労した。
「ぐっ!」
三面怪人ダダ(回復⇨疲労)
(そのソウルホースのアタックはルナトリガーがブロックする!)
「いけぇ!」
迫り来るソウルホースに銃の連射をおみまいするルナトリガー。ソウルホースは耐えられなくなり、走りながらもその場で爆発を起こした。これで男のスピリット達のフルアタックでは彼らのライフをゼロにはできなくなった。
「な、なぁ!?……ぐ、ターンエンドっ!」
三面怪人ダダLV3(4)BP8000(疲労)
三面怪人ダダLV2(3)BP6000(回復)
三面怪人ダダLV1(1)BP3000(回復)
バースト無
無理にライフを破壊するよりかはブロッカーに回りした方がいいと考えた男は、そのままそのターンを終えた。これがラストターンだったということも知らずに。
[ターン06]切札&シモン
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
《ドローステップ》手札5⇨6
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨8
トラッシュ7⇨0
仮面ライダーWルナトリガー(疲労⇨回復)
(さぁ、フィニッシュだ、切札)
「あぁ、これで決めるぜ!」
単純に戦力差では勝てない。だが、それ以上にこのWは強い。切札はスピリットの数を増やすことなく、このターンのアタックステップに入る。
「アタックステップ!ルナトリガーでアタック!その効果でレベル2のダダを疲労させる!」
「ぐぅ!」
三面怪人ダダ(回復⇨疲労)
ルナトリガーの連射を受けて、もう1体のダダが疲労状態になる。これだけでは差は全く縮まってはいないが、
「行くぜ!【チェンジ】!今度はサイクロンジョーカー!ルナトリガーと入れ替えるぜ!」
リザーブ8⇨6
トラッシュ0⇨2
〈サイクロン、ジョーカー!〉
再びWは基本形態のサイクロンジョーカーに姿を変える。
(サイクロンジョーカーの【チェンジ】の効果は、このバトル中のアタックしている自分のスピリットをBPプラス2000にする、よって今のサイクロンジョーカーのBPは………)
「6000だ!」
仮面ライダーWサイクロンジョーカーBP4000⇨6000
「BPが上がっても無駄だぁ!スピリット数に変わりはなぁい!!」
(それはどうかな?)
「俺は、俺達はさらにフラッシュタイミングでこのマジックを使用する、……ジョーカーエクストリーム!…このマジックはWがアタックしていたらコスト3のカードとして使用できる!」
手札6⇨5
リザーブ6⇨4
トラッシュ2⇨4
「!!」
三面怪人ダダ(回復⇨疲労)
サイクロンジョーカーが風の力で宙を舞う。そしてその風の力により、回復状態の最後のダダが疲労した。
(ジョーカーエクストリームは相手のスピリット2体を疲労させ、さらにWがいれば……)
「疲労しているスピリット2体を手札に戻す!………いけぇ!」
〈ジョーカー!マキシマムドライブ!〉
Wの半身が分かれる。先ずは左側のキックでダダ1体を蹴り上げ、すかさず右の方も左と合わさるように、もう1体のダダを蹴り抜いた。
通り過ぎるように着地するW。ダダ2体は耐えられなくなり、爆発し、男の手札に戻っていった。
「くっ!」
手札3⇨5
そして今のサイクロンジョーカーは【チェンジ】の効果により回復状態になってアタックしている。つまりは2度アタックができる。
(これで決まりだ!)
「トドメだ!」
切札とシモンは息を合わせる。そして仮面ライダーWサイクロンジョーカーは、黒いメモリを腰にあるスペースに移動させる。すると再び風の力で飛び上がり、2度目のマキシマムドライブが発動される。
〈ジョーカー!マキシマムドライブ!〉
「(ジョーカーエクストリーム!!)」
「うっ!ぐおぉ!!……………そんな馬鹿なぁ!!!!」
ライフ2⇨1⇨0
再び体が分かれるW。先ずは黒い左側が男のライフを1つ破壊すると、それと合わせるように立て続けに右側の体が蹴り抜いた。一気に2つのライフを破壊した。
これで男のライフはゼロ。探偵コンビの勝利となった。男の持っていたデッキケースが割れ、三面怪人ダダのカードからあふれ出ていた闇の瘴気も消え去った。男が盗んだという宝石も衝撃でいくつも飛び出してきた。これを売ったらいったいいくつの値段で売れるかわからない。おそらく一生遊べるくらいだろう。
切札もベルトを外し、シモンとの合体を解いた。気絶して倒れる男を見て、「後は警察の仕事だ、聖子さんに任せるか」とだけ言い残し、その路地裏を去っていった。その数分後に甲高いパトカーのサイレンが聞こえてきた。
これが人知れず続いていた。界放市の裏の事件だ。そういった事件を、彼らは解決していたのだ。これはまた椎名達の物語とは違う物語。
******
切札は事務所に帰っていた。そしたらそこには高速で椎名の宿題を終わらせたシモンと椎名がいた。2人は何故かすっかり仲よくなっていた。
「いやぁ!シモン君のおかげで間に合ったよ!ありがとう!」
「いえいえ、こちらこそ、伝説の【ロイヤルナイツ】の人柱が見れて大変喜ばしいさ」
「何やってんの、お前ら」
「おぉ、帰ったか切札、見たまえよ、これが世界にただ1枚しかないと言う13体のスピリットのカテゴリ、【ロイヤルナイツ】の1枚、マグナモンだ、君は知らないだろう?」
「あぁ、知らねぇよ、興味ねぇし」
そう言って切札は自分専用の机に腰かけた。事件解決後はいつもそこに座り、記事を打ち込んで残しておくのが、彼の趣味だ。
今回は椎名から視点をずらして、また別の人物の物語を少し語った。これが、この2人が、今人知れずに【デッキメモリ】と言うものから、この街、界放市を守るために戦う探偵だった。
ー彼らは2人で1人の探偵で、カードバトラーだ。彼らは今日もこの街を泣かせる小箱を退治していく。
〈本日のハイライトカード!!〉
「はい!椎名です!今回はこいつ!【仮面ライダーWサイクロンジョーカー】!」
「【チェンジ】を駆使して戦うWデッキの基盤となるスピリット、緑と黒の配色がかっこいいね!来週からはいよいよ【界放リーグ編】がスタートするよ!お楽しみに!」
こんばんは!先ずは最後までお読みいただき、ありがとうございました!
今回はWを登場させましたが、Wを使わせるなら絶対に翔太郎とフィリップのキャラ以外にはありえないと考え、ほとんど同じキャラを勝手に作ってしまいました。そう言うのが苦手な方には大変なご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。私はWが一番好きなライダーなのでこれ以外は考えつきませんでした。
今回は1話限りの特別出演でしたが、ウケが良かったら合間合間で本当にこの2人を主役にした話を書くのもありかなと思っております。
上の椎名も言ってましたが、来週からは話を戻して、いよいよ【界放リーグ編】が幕を開けます。お楽しみに!