【界放リーグ】の1回戦も半分を終え、今は第四試合。デスペラード校、紫治夜宵と、ミカファール校の蝶花菊乃のバトルだ。そのバトルはある意味で熾烈を極めていた。
「やっとだわ、やっとあんたをトップアイドルから引きずり落とせる!」
「はは、」
アイドルバトラーの世界には、いくつかの階級というものが存在する。その1つに【20歳以下の学生】という項目が存在するのだが、紫治夜宵はアイドルっぽい活動をしているつもりはないはずなのに、なぜかこのランキングのトップだった。リポーターだったり、ラジオ番組のパーソナリティだったりと、その仕事ぶりはどちらかといえばアナウンサーに近いのに、まぁその反面、歌を歌ったりする分にはアイドルであるが、
本気でアイドルバトラーを目指していた蝶花菊乃は夜宵がどうしても目の上のたんこぶだった。今年からランキングに入ってきた夜宵のせいで1位だった座が、2位に引き落とされたのだ。これは彼女にとって屈辱のほかならなかった。かといっても、バトルの強さを競うこの大会で勝てたとしても、夜宵をトップから引き摺り下ろすなんてことは、また別の話になるので、不可能なのだが、
そんな妬ましい存在の夜宵をもうすぐ倒すことができた。それは今現在の2人の盤面を見ていればわかることであって、
【蝶花菊乃】ライフ3
剣聖姫ツル+《姫鶴一文字×3》LV3(3)BP17000(回復)
バースト無
【紫治夜宵】ライフ4
デビモンLV2(2)BP7000(疲労)
ピコデビモンLV1(1)BP1000(回復)
オーガモンLV1(1)BP8000(回復)
バースト無
そして今現在は、蝶花菊乃のターン。アタックステップに差し掛かるころだ。可愛らしい外見の少女のスピリット、剣聖姫ツルと、その周りに浮遊する3本の姫鶴一文字と呼ばれる刀。これが彼女の必勝パターンだ。
ツルが今、美しい翼を広げ、夜宵のライフを打つがために飛び出していく。
「終わりよ!…ツルは自分のコスト以下のスピリットからはブロックされない!!そして今のコストは3枚分の姫鶴一文字と合わせて17!……シンボルは4!」
ツルはそのコスト以下のスピリットからはブロックされない効果を持つ。そして本来1体しかできない合体を、ツル限定で何枚でも合体できる姫鶴一文字のコンボは有名だ。
トリプル合体のクワドラプルシンボルの攻撃が夜宵を襲う。だが、夜宵は待っていた。攻撃が集中してくるのを、
夜宵は手札から1枚のカードを引き抜いた。それはアンブロッカブル効果など意味のなくなるような効果を持つ、紫の強力なカード。
「フラッシュマジック!デスマサカー!」
「………え!?」
「この効果で疲労しているスピリット1体を破壊!………もちろん対象は、……剣聖姫ツル!」
「え、え、えーーーー!?」
紫の靄がツルをその美しい翼ごと包み込む。それは徐々にツルを蝕んでいく。ツルはその力に及ばず、あえなく爆発してしまった。
アタックしているということは、大抵のスピリットは疲労しているということになる。今回はその虚を突かれた。
合体状態のスピリットがアタック中に破壊された場合は、残ったブレイブがアタック状態となるが、複数のブレイブと合体している場合、そのうちのどちらか1体がアタックすることになる。今回はどれも同じなので特に関係はないが、
「ふふ、……姫鶴一文字はオーガモンで迎え撃ちましょうか」
落下してきた姫鶴一文字を鬼のような姿をした紫のデジタルスピリット、オーガモンが踏み潰し、破壊した。
「う、嘘…………」
蝶花菊乃は、まさかこんなに強烈なカウンターをくらうとは思ってもなかっただろう。これまでのバトルも全てこの一撃でどんな相手も華麗に倒してきた。だから相当な自信が彼女の心の中にはあった。
だが、上には上がいるというものだ。彼女は今から、自分の目の上のたんこぶに押しつぶされようとしていた。
「私のターン……………」
夜宵は着々とターンシークエンスを進め、アタックステップに入る。
ーそして
「ピコデビモン、オーガモン、デビモンでアタック!」
走り出す計3体の鬼や、悪魔のスピリット達、蝶花菊乃はもはやなすすべがなかった。3体のフルアタックをただ、受け入れるのみ、
「き、きゃぁぁぁぁぉあ!!!!!」
ライフ3⇨0
ピコデビモンの注射器のダーツ、オーガモンの棍棒の一撃、デビモンの鋭い鉤爪の攻撃が彼女の3つのライフを1つ残らず消しとばした。
これにより1回戦第四試合は紫治一族の次女、紫治夜宵が勝利する。彼女のファンを含めた大勢の観客が轟音のような歓声を上げる。
蝶花菊乃の敗北により、ミカファール校の代表は全滅したことになる。
「おいおい、お前さんのとこ全滅だってよ、舞空さんよ〜〜!!」
「別にいいわよ、私はこんな余興、楽しむ必要ないし」
ジークフリード校の理事長、龍皇竜ノ字がからかうようのは、ミカファール校の理事長、【大天使 舞空(だいてんし まいから)】。本歳60になる女性だ。龍皇の冷やかしにも微動だにせず茶を沸かし、飲んでいた。
ミカファール校はアイドルバトラーも育てることが多い学園だ。そのようなこともあって、本当にどうでもよかったのだろう。
そして鳴り止まぬ轟音のような歓声の中、次なる第五試合が行われようとしていた。その争う2人は、タイタス校の【光乃 国貞】と、去年、一昨年とヘラクレスにつぎ2位を独占しているオーディーン校の強者、五の守護神こと、【五護 鉄火】。
両雄、巨大なスタジアムの真ん中で睨み合う。
「わっはっはっは!君があの有名な五の守護神か!私はタイタス校の3年!光乃 国貞だ!よろしくぅ!」
「…………五護鉄火だ」
テンション高めの口調で語りかけてくる光乃に対し、全くと言っていいほどに顔の表情を変えない五護。その冷徹な目つきは、まるで光乃を全く眼中に入れていないようにも感じさせる。
温度差に雲泥の差がある2人。そんな2人がいよいよ自身のBパッドを展開して、1回戦第五試合に挑む。
「「ゲートオープン、界放!、」」
ーバトルが始まる。先行は光乃だ。
[ターン01]光乃
《スタートステップ》
《ドローステップ》手札4⇨5
「メインステップ!……私は!先ず!ネクサスカード!光の国を配置!」
手札5⇨4
リザーブ4⇨0
トラッシュ0⇨4
高校生とは思えないほどにマッシブな男、光乃が先ず呼び出したのは、ネクサスカード、光の国、彼の背後に美しいエメラルドグリーンの色をした王国が誕生した。
「よし!ターンエンドだ!……さぁ!君の番だぞ!」
光の国LV1
バースト無
先行の第1ターン目など、やれることは限られてくる。光乃はそのネクサスを配置しただけでターンを終える。初手でこれを配置することが、彼のデッキにとって、とても強い動きになるということは、五護もまだ理解しきってはいなかった。
[ターン02]五護
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ4⇨5
《ドローステップ》手札4⇨5
「メインステップ、俺もネクサスカード、機巧城をLV2で配置」
手札5⇨4
リザーブ5⇨0
トラッシュ0⇨4
五護の背後にもまた、ネクサスカード、白銀の城が築き上げられた。
「………バーストをセットして、ターンを終幕する」
手札4⇨3
機巧城LV2(1)
バースト有
それ以外はバーストをセットするだけで、特に何もしないでそのターンを終える五護。次は光乃のターンだ。
[ターン03]光乃
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
《ドローステップ》手札4⇨5
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨5
トラッシュ4⇨0
「メインステップ!」
光乃とて、五護が配置したあのネクサスの効果は知り尽くしている。五護は何度も界放リーグに出場しているため、デッキの主力はある程度知られやすくなる。
機巧城、その効果は相手のエンドステップ時に、自分のライフが減っていなければ、ドロー。そして、スピリット展開の補助も狙える強力な効果、だったら光乃がやることは1つ。
「ライフ削るだけだ!私はネクサス!光の国の効果!名前に「ウルトラマン」と入っているスピリットを召喚する際!これを疲労させることで!軽減を全て満たしたものとして扱う!」
光の国の力が、光乃の手札へと注がれる。
「………私は相棒であるこいつ!初代ウルトラマンをLV2で召喚!」
手札5⇨4
光の国(回復⇨疲労)
リザーブ5⇨0
トラッシュ0⇨2
突如、眩い閃光が一瞬の間、会場の人々を怯ませる。反射的に目を瞑る人々、そして、そこにいたのは赤と銀色のシンプルなボディが特徴的な戦士、初代ウルトラマンが現れていた。
「これがぁ!私のウルトラマンだ!その召喚時効果で!私はデッキの横にコアを3つ置く!」
カラータイマー〈3〉
「?」
光乃の謎の行いに、少しだけ首を傾ける五護。初代ウルトラマン。彼はコスト4ながらにしては強力なスピリットではあるものの、場にいる時間はわずか3ターン。光乃のデッキ横のコアはそのカウンターを示していた。
「行くぞ!アタックステップ!ウルトラマン!」
走り出す初代ウルトラマン。目指す先は五護のライフ。
「ライフで受ける」
ライフ5⇨4
「八つ裂き光輪!」
初代ウルトラマンは手に光の輪っかのようなものを作成し、それを投げ飛ばす。五護のライフ1つを、文字どうり一瞬にして八つ裂きにしてみせた。
だが、これは五護のバーストの発動条件でもあって、
「ライフの減少によりバースト発動………絶甲氷盾、ライフを5に戻す」
ライフ4⇨5
捲き上るバースト。五護の減少したライフが瞬時に元の形を取り戻した。
「わっはっはっは!ライフを5に戻しても減ったことにはなるぞ!」
そう、結果的にはライフが減っていなくとも、一度は減らされているため、五護のネクサスカード、機巧城の効果は発揮されないのだ。五護とて、自分のカードだ。それくらいは理解しているが、
「エンドステップ!この時!初代ウルトラマンの効果によって置かれたコアを1つ自身に置く!これが0になった時!初代は私の手札に戻る!」
カラータイマー〈3⇨2〉
初代ウルトラマン(3⇨4)
初代ウルトラマンのカラータイマーが時を進める。その命は後2ターンだ。
そして、五護のネクサス、機巧城の効果もここで発揮される。ライフが減っていない時に発揮されるのは、飽くまでLV1のドロー効果のみ、LV2から発揮されるスピリット展開の補助効果はエンドステップに何の問題もなく使用できる。
「俺もエンドステップ、機巧城の効果で1枚オープン、それが機巧スピリットならノーコスト召喚する」
オープンカード
【リアクティブバリア】×
残念ながらハズレを引いたため、そのカードは破棄された。
「ターンエンド!」
初代ウルトラマンLV2(4)BP9000(疲労)
光の国LV1(疲労)
バースト無
そしてそのターンを終える光乃。一見、地味に見えるが、この初代ウルトラマンが帰る頃には3つのコアが増えていることになる。名称「ウルトラマン」を含むスピリットは大型が多いので、この効果は実は相当強力なものである。
[ターン04]五護
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ1⇨2
《ドローステップ》手札3⇨4
《リフレッシュステップ》
リザーブ2⇨6
トラッシュ4⇨0
「メインステップ、俺は機巧武者シラヌイをLV2で召喚」
手札4⇨3
リザーブ6⇨0
トラッシュ0⇨4
地響きと共に現れたのは、まるで城のような巨躯に、青いボディを持つロボット、機巧武者シラヌイ。その存在感は光乃の初代ウルトラマンにも勝にも劣らない。
「本気を出してきたな!」
「あぁ、いけ、シラヌイ」
「ライフで受ける!」
ライフ5⇨4
シラヌイがゆっくりと歩みを進める。光乃の目前まで近づくと、右手に持った刀を振り下ろし、そのライフを1つ切り刻んだ。
この後はもう彼には何もすることはない。だが、光乃の初代ウルトラマンの効果は発揮される。
「エンドステップだな!初代ウルトラマンの効果で、デッキ横のコアを光の国へ!」
カラータイマー〈2⇨1〉
光の国(0⇨1)LV1⇨2
初代ウルトラマンの光の力の一部が、故郷、光の国へ届き、そのレベルを増加させる。
タイマーが残り1になったこの瞬間。初代ウルトラマンの胸のカラータイマーが赤く点滅する。
「……ターンを終幕する……………わかってると思うが、シラヌイはソウルコアが置かれている間は疲労状態でもブロックができ、ブロック時にそのBPを上げる」
機巧武者シラヌイLV2(2s)BP8000(疲労)
機巧城LV2(1)
バースト無
彼のデッキでは中核をなすシラヌイだが、その効果は攻めつつ、守りに徹することができる効果。その防御能力は椎名の持つロイヤルナイツ、マグナモンといい勝負だ。
だが、そんはシラヌイを突破できる方法でもあるのか、光乃は未だに自身に満ちた顔をしており、
[ターン05]光乃
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ1⇨2
《ドローステップ》手札4⇨5
《リフレッシュステップ》
リザーブ2⇨4
トラッシュ2⇨0
初代ウルトラマン(疲労⇨回復)
光の国(疲労⇨回復)
「メインステップ!光の国を疲労!このウルトラマンの軽減を全て満たす!」
光の国(回復⇨疲労)
再び光の国の力が光乃の手札へと注がれる。今から召喚するのは彼のデッキの中では最強のウルトラマン。その大きすぎるコストを光の国の力でサポートした。
「LV1で召喚!ウルトラマンティガァァ!!」
手札5⇨4
リザーブ4⇨0
初代ウルトラマン(4⇨3)
トラッシュ0⇨4
またまた眩い閃光が照らし出す。新たに現れたウルトラマンは青を基準とし、紫や赤も含めたカラーリング。光の戦士、ティガが現れた。初代と並ぶその姿は圧巻の一言だった。
五護も少しだけ驚く表情を見せた。そもそもウルトラマンデッキとはかなりのレアカードの集まりであり、そのカードの種類は仮面スピリットやデジタルスピリットにも劣らないと言われている。
初代もティガもかなりのレアカードとして数えられていた。
「うぉぉお!!アタックステップゥ!ティガァ!」
走り出すティガ。ティガはアタック時にそのレベルによって効果を変える珍しい効果を持つ。レベル1は………
「相手の最もコストの高いスピリットを破壊!この場だとシラヌイだ!……いけぇ!ティガァ!ゼペリオン光線!」
腕を十字に交差し、そこから莫大なエネルギー量の光線を放つティガ。それは瞬く間にシラヌイを貫き、破壊した。シラヌイは3色の【超装甲】を持つが、その中に青はない。
これで五護のブロッカーは排除された、だが、光乃の怒涛の効果はまだ続く。光の国第二の効果が発揮される。
「さらに光の国LV2の効果でティガにコアを追加ぁ!その勢いでティガのLVは2に上昇!そしてそのLV2のアタック時効果を発揮!」
ウルトラマンティガ(1⇨2)LV1⇨2
「!!」
思わずその薄い目を見開いた五護。まさかあのティガをここまで使いこなすとは思ってもいなかった。
普通、ティガの効果はそのタイミング故に、どれか1つしか使用できない。だが、光乃はネクサスカード、光の国の効果により、そのティガの力の同時発揮を実現させていた。
光の国のLV2効果は自分の効果で相手スピリットを破壊した時、自分のスピリットにコアを追加できる。この効果がここで活かされたのだ。
ティガのLV2効果は……
「青のシンボルを1つ追加!さらに!LVマックスじゃないスピリットにブロックされない!」
ブロックされない効果はこの状況では意味をなさないが、シンボルの増加は大きい、ここで初代ウルトラマンとの連続攻撃で五護のライフを大きく減らすことができれば一気に優位に立つことだろう。
だが、五の守護神の名は伊達じゃない。彼は1枚の手札でこの攻撃を封殺する。
「少しはやるようだな…………だが詰めが甘い、フラッシュマジック、リミッテッドバリア」
手札3⇨2
リザーブ2s⇨0
機巧城(1⇨0)LV2⇨1
トラッシュ4⇨7s
「!!」
「この効果で、このターン、俺のライフはコスト4以上のスピリットのアタックじゃ減らない。さらにコストの支払いにソウルコア使用した時相手のネクサス1つを手札に戻す、俺は光の国を手札へと返す」
「おぉっと」
手札4⇨5
エメラルドグリーンの色の国が、また別の輝きを放つ光によって包まれて消滅していく。
リミッテッドバリア。このターンの間、コスト4以上のスピリットのアタックの多くの意味をなくしてしまう程の強力な白マジック。
「ティガのアタックは当然ライフだ」
ライフ5⇨5
ティガがいくら殴ったり蹴ったりしてもライフは破壊されることはない。そして初代もまた、コスト4のスピリット、ライフを減らすことはできなかった。
仕方なくそのターンを終えるしかなくなった光乃。ここで初代ウルトラマンの制限時間が来る。
「エンドステップ!初代ウルトラマンの効果!コアを追加!そしてここで一旦お別れだぁ!」
カラータイマー〈1⇨0〉
手札5⇨6
初代ウルトラマンは遥か上空の宇宙へと飛び出した。この置かれたコアがなくなった時、彼は光乃の手札へと一旦帰ってしまうのだ。
そしてこのタイミングで行われるのは初代ウルトラマンの効果だけではない。五護のネクサス、機巧城の効果も発揮される。
「機巧城のLV1の効果、このターン、俺のライフの減少がなかったため、デッキから2枚ドロー」
手札2⇨4
「……ターンエンドだ!」
ウルトラマンティガLV2(2)BP12000(疲労)
バースト無
そのターンを終える光乃。この瞬間、いや、本当はリミッテッドバリアでティガの攻撃を防がれた時だったか、
なぜかこの男のライフは減らさないと錯覚している自分がいた。たったこれだけのことなのに、なぜだろうか、あの凍てつくような冷たい視線によるプレッシャーなのか、
彼がそんなことを考えている間にも五護はターンシークエンスを進める。その理由はそのターンでわかることだった。
[ターン06]五護
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
《ドローステップ》手札4⇨5
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨8
トラッシュ7⇨0
「メインステップ、俺はネクサスカード、要塞都市ナウマンシティーをLV1で配置」
手札5⇨4
リザーブ8⇨4
トラッシュ0⇨4
「なっ!?それは!……白の強力ネクサスカード!」
要塞都市ナウマンシティー。光乃の言う通り、白属性の強力なネクサスカードだ。最も恐ろしいのはその配置時効果。
「この配置時効果を使い、俺のデッキのエースを召喚する!………来い!我が牙城を完璧なものにせよ!大機巧武者コンゴウ!!」
手札4⇨3
リザーブ4⇨1
ナウマンシティーから発車してきたのは、シラヌイよりもかなりサイズが向上した機巧武者。その名はコンゴウ。その白銀のボディで五護の城を守り抜く。
コンゴウは五護のエーススピリットだった。だが、その重たいコスト故に召喚するのが遅くなりがちだった。彼はそれをネクサスカード、ナウマンシティーを使うことによって補った。これは去年一昨年は使用していない戦法であり、
「機巧城のLVを2に上げ、アタックステップ、やれぇ!コンゴウ!その効果でソウルコアが置かれていない相手スピリット、貴様のティガを手札に戻す!」
リザーブ1⇨0
機巧城(0⇨1)LV1⇨2
「ぬっ!しまった!!」
コンゴウがその手の持つ、巨大な棍棒を振り回す。それによって発生した竜巻によって、ティガは巻き込まれて消滅した。迂闊だったか、光乃のソウルコアは初代ウルトラマンに置かれていて、現在はリザーブに存在していた。
そして、コンゴウの恐ろしいところはそれだけではない。コンゴウはソウルコアが置かれていたらさらに厄介な効果を有する。
「さらに、コンゴウにソウルコアが置かれているため、ティガをそのまま手札ではなく、貴様のデッキの下へと落とす」
「な!?」
これぞコンゴウの自己完結した恐ろしいコンボだ。バトルするだけでソウルコアが置かれていないスピリットはデッキの底へと送られてしまう。
ティガのカードが光乃のデッキの下に送られていく。
「さぁ、アタックはどう受ける」
「むっ!ライフしかあるまい!」
ライフ4⇨3
コンゴウの振り回す棍棒の一撃が、光乃のライフを直撃する。ゆっくりだが、確実に彼のライフは減ってきている。
「……ターンを終幕する」
大機巧武者コンゴウLV2(3s)BP14000(疲労)
機巧城LV2(1)
要塞都市ナウマンシティーLV1
バースト無
そのターンを終える五護。次は光乃のターン。
[ターン07]光乃
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ8⇨9
《ドローステップ》手札6⇨7
《リフレッシュステップ》
リザーブ9⇨13
トラッシュ4⇨0
「メインステップ!私は再び光の国を配置!」
手札7⇨6
リザーブ13⇨9
トラッシュ0⇨4
光乃は再び背後に光の国を配置する。そして反撃するべく、さらなるウルトラマンを展開する。
「光の国の効果!ウルトラマンを召喚する際!疲労させ!軽減を満たす!」
光の国(回復⇨疲労)
三度その光の国の力が光乃の手札に流れ込む。そして次に召喚されるウルトラマンは………
「召喚!ウルトラセブン!LV2!」
手札6⇨5
リザーブ9⇨4
トラッシュ4⇨7
現れたのは初代や、ティガとは全く容姿が異なるウルトラマン。多彩な技を持つ栄誉あるウルトラマン。ウルトラセブンが登場した。セブンには召喚時効果があり、
「セブンの召喚時効果!最もコストの低いスピリットを破壊!狙うはコンゴウだ!………アイスラッガー!!」
セブンは頭部にあるアイスラッガーと呼ばれる武器をコンゴウに向かって投げる。だが、
「コンゴウは貴様のターン時に、機巧スピリットに相手のスピリットとアルティメットの効果を受けなくする効果がある。その効果は受けない」
真っ向から堂々とそれを受けるコンゴウ。あんな鋭利な物、普通なら直ぐに切り刻まれるだろう。だがコンゴウはそれを受けてもその装甲にはかすり傷1つつかなかった。
光乃とてその効果は理解している。コンゴウは、五護のコンゴウはとても有名なスピリットになっているのだから。
だが、コンゴウはシラヌイとは違い、疲労ブロッカーになる効果を持っていない。光乃の狙いはそこだ。今度は手札に戻ったあの英雄を召喚する。
「さらに!私は初代ウルトラマンを再召喚!LVは1だ!」
手札5⇨4
リザーブ4⇨1
トラッシュ7⇨9
初代ウルトラマン(1s)LV1
再び現れる初代ウルトラマン。光乃のデッキ横にもまたコアが置かれる。これでウルトラ兄弟の次男と三男が並んだ。光乃はこの2体で畳み掛ける。ライフ5をキープしようとする五護のライフを1つでも削るために。
「アタックステップ!初代でアタックだ!」
走り行く初代。目指すは五護のライフ。
五護が自由に使えるコアは4つ。軽減があるにしても、使えるマジックやカウンターはある程度限られてくる。だが、五護はこのタイミングでも手札の1枚のカードを引き抜いた。
「がっかりだ、もうその程度の攻撃しかできないとは…………………フラッシュマジック!光翼之太刀!不足コストは機巧城のLVを落として確保!対象はコンゴウ!」
手札3⇨2
機巧城(1⇨0)LV2⇨1
トラッシュ4⇨5
「ぬっ!まだそんなのを!?」
「これにより、このターン、コンゴウのBPを3000上げ、疲労ブロッカーとする…………………………初代のアタックはもちろんこのコンゴウがブロックしよう!」
大機巧武者コンゴウBP14000⇨17000
眼光を輝かせるコンゴウ。再起動したその鋼の装甲で、初代を迎え撃つ。そして自身のアタック/ブロック時効果で、対象に選ぶのは当然……
「コンゴウの効果でソウルコアが置かれていない、セブンをデッキの下に戻す!」
「ぐっ!」
再び自身の棍棒を振り回し、その風圧で強力な竜巻を発生させるコンゴウ。セブンはそれに巻き込まれて消滅してしまった。
そしてこれは初代とコンゴウのバトル中であって、……そのBP差は天と地ほどの差がある。
初代ウルトラマンは腕を十字に交差し、右手部からスペシウム光線も呼ばれるエネルギーを放つ。だが、コンゴウにはかすり傷1つつかず、そのままコンゴウの棍棒の一撃をもろに受け、吹き飛ばされてしまった。
力尽きたウルトラマンは、点滅していく胸のカラータイマーの光が消え、ゆっくりとその姿を消滅していった。
ー光乃の光は消えた。
「はっは!…ごっちーの奴!また硬くなりやがったなぁ!」
そんな一言を呟くのは、自分の控え室のモニターでそれを観戦しているヘラクレスこと、緑坂冬真。
毎年必ず彼と決勝の舞台に立つので、彼のデッキのことをある程度理解しきっているのだろう。年が増すほどにあのデッキはより硬く、強固になっている気がしていたのだ。
「もう貴様にやれることはない。俺はネクサス、機巧城の効果、カードを2枚ドローする」
手札2⇨4
機巧城が追い打ちをかけるように五護にさらなるドローの恵みを与えた。
「た、ターンエンドっ」
光の国LV1(疲労)
バースト無
ターンを終了せざるを得ないだろう。幾ら何でも圧倒的すぎる。相手は同じ3年生だと言うのに。今まで影でずっと努力していた自分とここまで差があるとは、光乃も思っていなかった。
次は五護のターン。これがラストターンとなるだろう。
[ターン08]五護
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
《ドローステップ》手札4⇨5
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨6
トラッシュ5⇨0
大機巧武者コンゴウ(疲労⇨回復)
「メインステップ、巨腕の機巧武者ラカンをLV1で召喚する」
手札5⇨4
リザーブ6⇨0
トラッシュ0⇨5
地響きとともに現れるのはコンゴウよりも巨躯の体格に加えて、巨大な手を持つ機巧武者、ラカン。ラカンは一度のアタックで相手のライフを2つ破壊できるダブルシンボルのスピリットだ。
五護はこれだけ召喚すると、直ぐにアタックステップに入った。
「アタックステップ、やれ、ラカン」
「ら、ライフで受け…………むぉぉお!」
ライフ3⇨1
ラカンの巨大な両手が光乃のライフを一気に2つ握り潰した。そしてこれがラスト。コンゴウが背のブースターを器用に使い、走り行く。
「終わりだ、コンゴウ」
「……いいバトルだったぞぉお!五の守護神んん!……ライフで受けるぅ!!」
ライフ1⇨0
最後まで礼儀正しい自分を貫く光乃国貞。コンゴウの最後の一振りが、そんな彼の最後のライフを無慈悲に破壊していった。これで勝者は五護鉄火。見事に2回戦へと進出していった。
彼が勝つバトルでは、あるジンクスがあった。それは、【五護のライフが5のままである】ということ。
通常、バトルスピリッツというゲームは、試合が進むにつれ、自ずと互いにライフが減っていくもの、だが、彼のバトルはなぜかずっと5がキープされたまま勝ってしまうのだ。そんなバトルを続けていたからか、いつしか彼は【五の守護神】と呼ばれるようになった。
「ウルトラマンデッキ、なかなかパワフルだったが、今ひとつたらなんだ……………やはりお前だけだ冬真。俺にいい攻撃を浴びせてくれるのは」
【界放の三英雄】。そう呼ばれるものたちがいた。それは【ヘラクレス】こと、緑坂冬真と、【五の守護神】こと、五護鉄火と、【エンペラー】こと、吸血堕天だ。
彼らはもはや学生が到達できるそれをはるかに超えていた。2年前からずっとこの3人が1位から3位までを独占し、争っていた。
そして今年はそんな彼らが3年に上がり、当たり前のように他校の代表になった3年生達を倒していっている。普通ではそんなに実力の差が開くことはない。本当に圧倒的だったのだ。彼らは。
ーそんな彼ら3人を倒せるほどの人物が、ダークホースが今大会で現れるのだろうか。
〈本日のハイライトカード!!〉
「はい!椎名です!今回はこいつ!【初代ウルトラマン】!!」
「初代ウルトラマンは青のコスト4のスピリット!強力なスピリットだけど3ターンで、一度エネルギー補給のために手札に戻っちゃうよ!」
最後までお読みくださり、ありがとうございました!
ウルトラマンに関してはまたどこかでちょくちょく出そうと思っています。
今まで、デジタルスピリット、仮面スピリットとコラボカード達は皆、そう呼んできましたが、系統に成長期や、仮面などの特別な系統を持たないウルトラマンや、ゴジラ達は飽くまで普通のスピリットとして登場させますので、ご了承ください。