バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

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第25話「鳳凰舞う……!!」

 

 

 

 

界放リーグ、その2回戦最後の第三試合、赤羽司と五護鉄火のバトルは続く。フィールドは以下の通り。

 

 

《司》ライフ3

 

朱に染まる薔薇園LV1

 

バースト有

 

 

《五護》ライフ5

大機巧武者コンゴウLV2(3s)BP14000(回復)

機巧将シグレLV1(1)BP4000(回復)

巨腕の機巧武者ラカンLV3(4)BP16000(回復)

 

バースト無

 

 

そして今は五護のターン。メインステップが終わり、アタックステップに入る頃だ。

 

司はこれまで何度も五護のライフを5から減らそうと試みたが、序盤は減らしても直ぐに元に戻り、一定のターン数になってくると1つも減らすことができなくなっていた。

 

また、また彼が、五護鉄火が、五の守護神がライフ5のまま完全勝利を収めようとしていた。

 

 

(あぁ、………やっぱりだ、やはりあいつでなければ、冬真でなければ、俺の心は満たされない)

 

 

五護はそんなことを考えていた。彼はここ2年間、ずっとヘラクレス、緑坂冬真と優勝争いをしていたが、ずっと負けていた。ライフをゼロにされて、毎回だ。毎回のように彼とのバトルでは最後のターンで全てのライフを消し飛ばされてしまう。

 

だが、五護はそんなバトラーとの出会いを待っていた。自分のライフを吹き飛ばしてくれるような、強いバトラーが、より相手の攻撃が強ければ強いほど、燃えてくるのだ。

 

五護は日々自分を磨く鍛錬を重ねていた。ヘラクレスの有名な【キングスロード】を防ぐために。

 

今年こそがラストチャンス。彼は打倒ヘラクレスを胸に、今ここで立っている。そんな自分がただの才能だけで目の前にいる朱雀こと、赤羽司に負けるわけがないとも考えていた。

 

 

「終わりだ朱雀、やはりお前ではダメだ、俺の心が満たされることはない」

「あぁ?…………終わり?そりゃこっちのセリフだ、宣言してやろうか?お前は次の俺のターンで……………負ける」

「!!!!」

 

 

司の思わぬ発言に、その目を思わず見開いた五護。当然だ。この3体のスピリットをどかさなければ彼には勝機がないというのに。まさかこの強力なスピリットたちを全てどかすとでも言ってるのだろうか。そもそも5つあるライフを次で全て破壊などできるのか。

 

たしかにそれはにわかに信じがたいことだろう。

 

 

「そしてな、ヘラクレスを倒すのはお前じゃない、………………めざしでもない、…………この俺、赤羽司だ」

「諦めの悪い奴だ!今に息の根を止めてやるっ!………アタックステップ!シグレでアタック!」

 

 

もう何も聞くことはない、そう言うかのように五護はシグレにアタックの命令を下す。司の場にスピリットは存在しない。このターンで巨腕の機巧武者ラカンの効果で手札へと返されてしまったからだ。

 

司は当然このアタックを、

 

 

「ライフで受ける」

ライフ3⇨2

 

 

シグレの刀の一閃が、司の残り3つのライフのうち1つを破壊した。

 

だが、司はこれを待っていた。勝利への道筋が揃う、この瞬間を、………彼のバーストが勢いよく音を立てながら反転する。

 

ーそしてここから始まる。司の大逆転劇が、

 

 

「…………ライフ減少により、バースト発動!イマジナリーゲート!!」

「!?」

 

「この効果で手札にある黄色のスピリットカード、…………シルフィーモンを召喚する!LV3だ!」

リザーブ9⇨5

シルフィーモンLV3(4s)BP12000

 

 

黄色のバーストマジック、イマジナリーゲート、それは黄色のスピリットをノーコスト召喚できるカードだ。司はこの効果で赤と黄色のスピリットであるシルフィーモンを召喚したのだ。ただしその効果により、召喚時の効果は発揮されないが、

 

眩い光を放つゲートを飛び出してくるのは聖なる獣人型スピリット、シルフィーモン。もうすっかり彼のエースとして活躍している。

 

ーだが、

 

 

「今更完全体だと!?笑わせるなぁ!どう足掻いても貴様の負けなんだよ!……………次はラカンでアタックだ!」

 

 

走り出すラカン。狙うは当然司の残り2つのライフ。ラカンはダブルシンボルなので、一度のアタックで同時に2つのライフを減らすことができる。

 

つまり、このアタックをライフで受けて仕舞えば、敗北してしまうため、司は是が非でもこのアタックはブロックしなくてはならなくて、

 

 

「シルフィーモンでブロックするっ!」

 

 

両手を突き出すようにエネルギー弾を放つシルフィーモン。だが、それはラカンの武装には全く通用しない。何度もそれを放ってもその強靭な鋼の前には消滅してしまう。そしてその巨体をゆっくりと動かし、ラカンはシルフィーモンを握りつぶそうと近づいてくる。

 

五護は勝ちを確信していた。なぜなら、司のデッキにはBP13000以上のスピリットを破壊する手段がほとんどないからだ。

 

司のデッキのスピリットたちは、そのサイズが大きくても、シルフィーモンのBP12000が最大だ。赤の効果破壊の多くが10000以下までしか破壊できないのを五護自身が知っていると言うのもある。

 

ーが、司にはまだ切札があった。それは自分の実家で苦労して得た、赤羽一族に伝わる伝説のカード。彼の姉、赤羽茜が亡くなってからは誰にも使用されなくなったあのスピリットカードが、今、それを司が再び目覚めさせる。

 

 

「俺はトラッシュからこいつの煌臨を発揮!対象はシルフィーモン!」

シルフィーモン(4s)LV3⇨2

トラッシュ5⇨6s

 

「!!……トラッシュから煌臨だと!?」

 

 

五護は司の発言に驚いた。それもそうだろう。なにせ、通常、煌臨とは、手札からのみ行える効果なのだ。それを普通は使い終わった場所であるトラッシュから発揮させるのだ。無理はない。司はこのカードをホークモンの召喚時の効果で事前にトラッシュへと送っていたのだ。

 

煌臨のエフェクトか、シルフィーモンの周りに巨大な火柱が形成される。シルフィーモンはその中で姿形を大きく変えていく。

 

ーそして司がその名を宣言する。

 

 

「天空の王よ!その輝ける翼を持って地上の全てを薙ぎ払え!究極進化ぁぁ!!ホウオウモンっ!!」

ホウオウモンLV2(3)BP12000

 

 

灼熱の火柱の中で大きな翼を広げる一体の巨鳥、それが咆哮をあげると、その炎は大きく弾け飛ぶ。そして新たに現れたのは赤羽一族に伝わる最強の赤のデジタルスピリット、ホウオウモンだ。黄金の翼を翻すその姿はまさしく伝説だ。

 

 

「ほ、ホウオウモン…………!?」

 

 

いつも冷徹な表情しか見せない五護が今回ばかりは口を大きく開けて驚いて見せた。その機巧スピリットたちよりも幾分かでかいホウオウモンを見てたじろいだのか、その神秘なる姿に感動したのかは定かではないが、どちらにせよホウオウモンの存在は凄まじかった。

 

 

「す、すっごぉぉいい!!あれが赤羽一族の……………伝説のスピリット!!ホウオウモン!!」

 

 

自分の控え室でそう叫ぶ椎名。興奮が収まらなかった。早く司とバトルがしたい。その気持ちでいっぱいだった。

 

ーそしてこのホウオウモンが、五護の作り上げてきた鉄壁の牙城を崩壊させていく。

 

 

「ホウオウモンの煌臨時効果!煌臨元になった赤の完全体スピリットを手札に戻すことによって、相手のBP10000以上のスピリット1体を破壊するっ!」

手札8⇨9

 

「なに!?10000以上だと!?」

 

 

ホウオウモンの効果は限界など知らない。その神秘なる光は強者のみを破壊する。それがたとえどんなに強くてもだ。

 

BP12000までしか対処できないと考えていた五護の考えは甘かったと言えるだろう。だが、もう遅い。

 

 

「シルフィーモンを手札に戻し、BP10000以上のスピリット、……………てめぇのターンだったら効果受けるんだよなぁ!コンゴウを破壊だ!」

「……ぬぅっ!!」

「……煌翼の!スターライトエクスプロージョン!!!」

 

 

ホウオウモンはその黄金に光輝く4枚の翼から黄金色の炎を降り注がせる。対象になったコンゴウはそれに触れた瞬間に一瞬にしてその自慢のボディを全て灰にされてしまった。まるで今までの強固さが嘘のように。

 

司のターンでは鉄壁の防御を発揮できるコンゴウだが、逆に五護のターンではその強力な耐性効果は失われてしまうのだ。司はそれを知っていて、このタイミングでこれを使ったのだ。

 

 

「煌臨スピリットは煌臨元となったスピリットの全ての情報を引き継ぐ……………ホウオウモンはラカンとバトルする!」

「だが!ホウオウモンのBPはシルフィーモンと変わらず12000!16000のラカンには遠く及ばん!」

 

 

赤属性の究極体スピリット、ホウオウモンはたしかに強力な効果を持っているが、そのBPはやや控えめ、完全体であるシルフィーモンと全く変わらないマックスBPしか持たない。

 

だが、司に抜かりはない。鼻で笑いながらこのタイミングでさらにカードを引き抜いた。それも2枚だ。

 

 

「ふっ!……フラッシュマジック!ソウルオーラ!……2枚だ!………」

手札9⇨8⇨7

リザーブリザーブ5⇨4⇨3

トラッシュトラッシュ6s⇨7s⇨8s

 

「な!?」

 

「この効果でホウオウモンのBPを6000アップさせるっ!」

ホウオウモンBP12000⇨15000⇨18000

 

 

ソウルオーラ。BPを上げるだけのマジックカードだが、今回はその地味な効果が活躍した。ホウオウモンのBPが大幅に上昇する。一気にラカンのBPを超える。

 

ラカンの肩を強靭な脚で鷲掴みにし、天空へとラカンを連れて飛び回るホウオウモン。そのまま音速を超えるスピードで地上にラカンを叩きつけた。ラカンは流石に耐えることはできず、爆発してしまった。

 

 

「……………なん、だと!?」

 

 

五護は驚きを隠せなかった。あの自分のスピリットたちが、強靭なる機巧スピリットたちがこうも容易く破壊されてしまったのだから。

 

司は初めからこれを狙っていたのか。または偶然そうなってしまったのかはわからない。だが、目の前で自分の牙城の門が豪快に開けられたのはたしかなことであって、

 

 

「…………ターンを…終幕する」

機巧将シグレLV1(1)BP4000(疲労)

 

バースト無

 

 

やれることを全て失い、そのターンを終える。手札はゼロ枚。もはや反撃もなにもできないだろう。やはりあの機巧武者2体が破壊されたのが大きい。

 

次は司のターンだ。おそらくこれがラストとなるだろう。

 

 

[ターン11]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札7⇨8

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨12

トラッシュ8⇨0

ホウオウモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!……ホークモン、テイルモンを召喚!」

手札8⇨6

リザーブ12⇨6

トラッシュ0⇨4

 

 

司は手札に戻っていた2体のスピリットを召喚した。鳥型の成長期スピリット、ホークモンと、ネズミ型の成熟期スピリット、テイルモンだ。

 

司はここからアタックステップに入る。

 

 

「アタックステップ!ホウオウモンでアタック!そのアタック時効果でBP10000以下のスピリット、シグレを破壊するっ!」

「……………ぐぅ!」

 

 

ホウオウモンの黄金の4枚の翼から放たれる聖なる炎は、瞬く間に五護の場に残ったシグレを焼き尽くした。

 

これで五護の場のスピリットもゼロとなる。

 

 

「さぁ!このアタックはどうする?」

 

 

そしてようやくだ、ようやく崩壊する。今まで幾度となく数々の学生が彼のライフを5から減らそうとした。だが、いくらやろうと直ぐに元に戻ったり、維持されたりしてしまった。ただ1人、ヘラクレスを除いてそれを成し遂げたものはいない。

 

そんな中、1人の一年生が、その鉄壁の牙城を真正面からぶち抜いた。

 

 

「……………ライフで受ける…………」

ライフ5⇨4

 

 

ホウオウモンの黄金の翼による翼撃が、五護のライフを1つ破壊した。今まで学生ではヘラクレス以外の者には破られることのなかった五護の鉄壁の守りが、1人の一年生により、瓦解させられた。

 

湧き上がる歓声、拍手を送る者もいる。誰もその瞬間は興奮が収まらなかったことだろう。

 

そしてまだだ。まだ司は攻める。このターンで決めるのだ。

 

 

「テイルモンでアタック!」

オープンカード

【シュリモン】×

 

 

走り出すテイルモン。効果により、そのオープンカードを司は手札に加える。

 

五護はもうなにもできない。場がゼロ、手札もゼロだからだ。

 

 

「ライフで受ける」

ライフ4⇨3

 

 

テイルモンのネコパンチが、五護のライフを1つ粉々に破壊した。

 

 

「ホークモン!」

 

 

司は今度はホークモンにアタックを命ずる。その小さき赤の翼を広げ、飛び立つホークモン。そして、このタイミングで司は進化させる。それは同じく手札に戻っていた、あのスピリットだ。

 

 

「フラッシュ!ネフェルティモンの【アーマー進化】発揮!対象はテイルモン!1コストを支払い、これを召喚!」

リザーブ6⇨4

トラッシュ4⇨5

ネフェルティモンLV2(2)BP6000

 

 

テイルモンの頭上に独特な形をした卵が投下される。テイルモンは飛び立ち、それと衝突、混ざり合い、新たな姿へと進化する。現れたのはメスのスフィンクスとでも言うべきか、黄色のアーマー体スピリット、ネフェルティモンだ。

 

 

「アーマー進化はあなたなる召喚扱い、………アタックが可能だ………さらにネフェルティモンの召喚時効果でトラッシュのコアから1つをライフへと置く、そして朱に染まる薔薇園の効果で1枚ドロー」

トラッシュ5⇨4

ライフ2⇨3

手札6⇨7

 

「……………」

 

 

【アーマー進化】の効果により召喚されるスピリットは当然回復状態だ。煌臨と違い、進化前の状態など気にしない。追撃が可能だ。

 

そしてこれは現在ホークモンのアタック中であって、

 

 

「………ライフで受ける……」

ライフ3⇨2

 

 

ホークモンのつつく攻撃が、五護のライフをまた1つ減らしていく。

 

 

「次だ!!ネフェルティモン!さらに!フラッシュ!今度はホルスモンの【アーマー進化】!!対象はホークモン!!1コストを支払い、これを召喚!」

リザーブ4⇨3

トラッシュ4⇨5

ホルスモンLV2(3)BP9000

 

 

謎の浮力で飛び立つネフェルティモンをよそに、ホークモンの頭上に独特な形をした卵が投下される。ホークモンはそれと衝突し、混ざり合う。そして新たに現れたのは赤き空飛ぶ獣型のアーマー体、ホルスモンだ。

 

当然ホルスモンもアタックが可能なのであって、

 

 

「………ネフェルティモンのアタックはライフだ」

ライフ2⇨1

 

 

ネフェルティモンは自分が作り出した光の空間から、碑石のようなものをいくつも発射させる。その無数にある碑石は五護のライフへと突き刺さり、それを1つ破壊した。

 

そしてこれで終わりだ、司がラストアタックの宣言をする。

 

 

「ホルスモンでアタック!」

 

 

飛び立つホルスモン。五護は何かおかしいのか、その表情は冷徹な顔から一転、暖かい笑顔に変わっていた。

 

 

「うぉぉお!!…………ぶちかませぇぇえ!!ホルスモン!……旋風のぉぉテンペストウィング!!!」

 

 

ホルスモンは自身の体を竜巻のように回転させて、一本の槍のように飛んでいく。目指すは五護のライフだ。

 

そしてこの瞬間、あの五護が、ここで初めての笑顔を見せた。それはあまり見慣れないと言うこともあってか、司から見るとややぎこちなかった。

 

 

「………前言撤回だぁ、朱雀………いや、赤羽司ぁぁぁぁ!!」

「!!」

 

「お前は最高だぁぁ!!………」

ライフ1⇨0

 

 

五護はそれだけを言い残し、ホルスモンの竜巻のような攻撃を受けた。これで五護のライフはゼロ。司の大逆転で幕を下ろした。

 

湧き上がる歓声と拍手、盛り上がる実況者。それほどまでにこの勝利は凄かった。もはやこの時点で栄誉あると言っても過言ではないだろう。

 

司はBパッドを閉じ、五護の元へと歩み寄っていく。場にいたスピリット達も役目を終えたかのように、その姿をゆっくりと消滅させていく。

 

 

「司ぁ、いい攻撃だったっ!………お前だったら間違いなくプロに行ける、先に待ってるぞ、…………また俺にいい攻撃を浴びせてくれ」

「気持ち悪いっての……マゾかよ」

「はっはっは!……違いない」

 

 

バトルが終わった後の五護は見間違えるほどに明るかった。久しぶりに興奮したのだろう。何せあのヘラクレス以外に自分を楽しませてくれる相手に巡り合ったのだから。高揚感が収まらないのだ。

 

五護は司にそれだけ行って、控え室に向かって歩き出した。

 

これでベ今年のストスリーが揃った。奇数になるので、毎年ランダムで1人がシードとなる。その発表とバトル開始が、この2回戦第三試合が終わった直後なので、椎名とヘラクレスはその場に向かっていた。

 

 

******

 

 

「……む?」

「おぉ!ごっちーやん!お疲れ〜〜〜」

 

 

ヘラクレスは会場に向かう途中で五護にバッタリ出くわした。相変わらずの能天気だ。一方で五護はさっきの興奮が収まり、いつも通りの冷めた感じに戻っていた。

 

 

「………ふふ、……冬真よ、あいつはいずれお前を超えるかもな」

 

 

愛想笑いするかのように笑いながらそう言い残し、ヘラクレスを通り過ぎていく五護。ヘラクレスも一瞬その足を止め、一言小さく呟いた。

 

 

「………そうかもしれへんなぁ、でも、まだ超えさせへんでぇ」

 

 

******

 

 

「つ〜〜〜〜か〜〜〜〜さ〜〜〜〜!!!ホウオウモン見して!!」

「嫌だ」

「えぇ!?もういいでしょ?見せてくれたってさぁ!」

 

 

一足先についてた椎名はその場にいた司と会話していた。椎名にカードを見せるのは嫌なのか、司は頑なにカードを見せようとはしなかった。椎名はホウオウモンのカードが見たいだけだ。

 

 

「これから戦うかもしれない奴になんで見せねぇといけないんだよ」

「まぁまぁ、ええやないかぁ、レディの頼みを聞くのが、紳士ってもんやでぇ」

「「!!」」

 

 

その間に入ってきたのはヘラクレスこと、緑坂冬真。これで今年のベストスリーが揃った。そして抽選が発表される。会場のアナウンスが観客の轟音を搔き消すような大音量でそれを流す。

 

 

《抽選の結果、準決勝は………………芽座椎名さんと赤羽司君で行います。緑坂冬真君はシードです………繰り返します…………》

 

 

結果をリピートするアナウンス。だが、もういい、次の準決勝、バトルするのは椎名と司だ。近くにいた2人は睨み合う。と同時に燃えていた。やっと戦えると。

 

 

「はっは、またシードかいな、………まぁ、高みの見物といきましょか〜〜ほなお二人さん頑張りや〜〜あっ!でもめざっちに勝って欲しいわ〜〜〜」

「はは、」

 

 

ヘラクレスはそれだけ言って、スタジアムの端に移動した。今は昼過ぎだ。残りの時間でこの準決勝と、それに続く決勝を終わらせるのだ。

 

椎名と司はある程度の距離を取り、Bパッドを展開させていた。

 

 

「………やっとだね、司」

「……あぁ、………もう御託はそんなにいらないだろ…………これだけは言ってやる、……この準決勝を勝ち上がり、決勝でヘラクレスに勝利するのは……俺、赤羽司だ!」

「残念だけどそれだけは譲れないよ!勝つのは………私だからっ!!」

 

 

ここまで2人はお互いにそれぞれの激戦をくぐり抜けて来た。椎名は予選前にロイヤルナイツの一角、マグナモンを得て、毒島や九白一族のエリートである岩壁、さらには前回、前々回の界放リーグ3位の吸血堕天までもを下し、ここまで登って来た。

 

かたや司は本戦前に赤羽一族に伝わる伝説のスピリット、ホウオウモンを得て、さらに1回戦ではヘラクレスの弟子、炎林頂とのバトルで奇跡の現象であるオーバーエヴォリューションが発現。新たにジョグレス体かつ完全体であるシルフィーモンのカードを獲得した。そしてさっきの2回戦第三試合。今まで得て来たカード達をフルで使いこなし、前回、前々回と準優勝して来た五護鉄火を破り、見事この準決勝のステージへと立ってみせた。

 

正直、あのヘラクレスの緑坂冬真のバトルが観られなくて残念という観客もいるかもしれない。だが、確かに言えることは、目の前にいる2人が、これまでまぐれで上がって来たわけではないということだ。そんな2人のバトルも、もちろんこの界放市中の全員が期待していることであって、

 

 

「「ゲートオープン!!界放!!」」

 

 

ヘラクレスが付近で見守る中、芽座椎名と赤羽司の準決勝が始まった。

 

 

******

 

 

そんな時、会場に応援に来ていた司の親友、雅治は、トイレで用を足していた。そして終わり、手を洗っていた頃だった。

 

 

「………やぁ、雅治君」

「………!!……紫治……城門さんっ、」

 

 

急に横から聞き慣れた柔らかい声が聞こえた。

 

そこにいたのは紫治一族の頭領でなおかつデスペラード校の理事長である紫治城門だ。雅治に用事でもあるのか、トイレには行かず洗面所で立ち止まっていた。

 

 

「次の試合、芽座椎名と司君の対決だよ、急がなくていいのかい?」

「えぇ!?そうなんですか?」

「あぁ、毎年ランダムなのに、竜ノ字が今年に限っては怒り狂っていたよ、」

 

 

ジークフリード校の理事長、龍皇竜ノ字と、キングタウロス校の理事長、大公獅子は、生徒たちを使って賭け事をしている。ヘラクレスがシードになれば彼の優勝する確率が上がるため、この結果に満足できなかったのだ。

 

 

「はは、兎に角僕急ぎますね、ありがとうございます」

 

 

そう言って城門から逃げるようにトイレを後にする雅治。昔から若干城門が苦手だった。なんか話しづらいというか、仲良くなれなさそうというか、そんな感じだったのだ。

 

そんなことを思い出しつつ、雅治は自分の親友と想い人のバトルを観戦するために、観客席へと戻った。

 

城門はその雅治の背中を見ながら少しだけ口角を上げていた。まるで何かに気づいたような、そんな顔だった。

 

 

******

 

 

一方でスタジアムではバトルが、準決勝が始まった。

 

ー先行は司だ。

 

 

[ターン01]司

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、イーズナを1体、LV3で召喚!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨1

 

 

司が早々に召喚したのは赤と黄色のハイブリッドスピリットであるイタチのような姿をしたイーズナだ。

 

 

「………ターンエンド」

イーズナLV3(3)BP3000(回復)

 

バースト無

 

 

先行の第1ターン目など、やれることは限られてくる。司はそれだけでこのターンを終えた。次は椎名のターンだ。

 

 

[ターン02]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、ワームモンを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名が今回初めて召喚したスピリットは、芋虫のような外見の可愛らしいスピリット、ワームモンだ。

 

 

「ターンエンド」

ワームモンLV1(1)BP3000(回復)

 

バースト無

 

 

それ以外は特に何もすることはなく、そのターンを終えた椎名。準決勝ということでか、緊張しているのか、

 

だが、それは違う。単純にイーズナとBPが同じだったからアタックしなかっただけだ。仮にブロックされたとして、成長期スピリットを失うのと普通の弱小スピリットを失うのだと、どっちがディスアドバンテージを負っているのかは目に見えている。

 

 

[ターン03]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨2

トラッシュ1⇨0

 

 

「メインステップ、俺はネクサスカード、朱に染まる薔薇園を配置!」

手札5⇨4

リザーブ2⇨0

イーズナ(3⇨1)LV3⇨1

トラッシュ0⇨4

 

 

司の背後に赤き薔薇園が広がる。もう見慣れたものだろう。司のデッキのカードを最大限にサポートできる優秀なネクサスカードだ。

 

 

「………ターンエンド」

イーズナLV1(1)BP1000(回復)

 

朱に染まる薔薇園LV1

 

バースト無

 

 

朱に染まる薔薇園のコストで、イーズナのLVが低くなったということもあり、司はこれだけでそのターンを終えた。速攻が得意な2人のデッキだが、今回は意外にもおとなしい序盤だ。

 

 

[ターン04]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨5

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ、…………よし!ブイモンを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨2

トラッシュ0⇨2

 

 

ここで椎名が動き出す。小さくて青い体に、額にブイの字が刻まれているドラゴンのスピリット、ブイモンが召喚された。

 

 

「召喚時効果!カードをオープン!」

オープンカード

【No.26キャピタルキャピタル】×

【グリードサンダー】×

 

 

今回は残念ながらハズレ、だが、すでに椎名は持っている。お得意の【アーマー進化】の効果を持つスピリットを。

 

 

「アタックステップ!ブイモンっ!」

 

「ライフで受ける」

ライフ5⇨4

 

 

走り出すブイモン。BPの低いイーズナでブロックする必要もない、司はこれをライフで受ける。

 

ブイモンの渾身の頭突きが、司のライフを1つ破壊した。先制点は椎名が取った。

 

 

「まだまだぁ!ワームモンでアタックっ!」

 

 

自身の体をボールのように丸めて転がり出すワームモン。そしてこの瞬間。このフラッシュタイミングで、椎名は1枚のカードを引き抜いた。

 

 

「フラッシュ!ライドラモンの【アーマー進化】発揮!対象はブイモン!」

「…………来るか」

 

「1コストを支払い、青き稲妻、ライドラモンを召喚っ!」

リザーブ2⇨1

トラッシュ2⇨3

ライドラモンLV1(1)BP5000

 

 

ブイモンの頭上に、黒くて独特な形をした卵が投下される。ブイモンは飛び立ち、それと衝突、混ざり合い、新たな姿へと進化する。現れたのは黒いボディに青き稲妻を轟かす獣型のアーマー体スピリット、ライドラモンだ。

 

 

「ライドラモンの召喚時効果で、トラッシュにコアを2つ追加!」

トラッシュ3⇨5

 

 

登場するなり吠えるライドラモン。それは椎名のトラッシュへとコアの恵みを与えた。椎名と司の総コア数に一気に差がついた。

 

そしてこのタイミングはワームモンのアタック中に起こった出来事であって、

 

 

「ワームモンのアタックはライフだ」

ライフ4⇨3

 

 

ボールのように弾むワームモンの攻撃が、司のライフを1つ破壊した。

 

 

「いけぇ!ライドラモン!」

 

 

まだ終わらない。猛スピードで地を駆けるライドラモン。目指すは司のライフだ。

 

 

「そこはイーズナが相手する」

 

 

司はイーズナでブロック。だが、BP差は圧倒的、ライドラモンは道を阻んで来たイーズナを口で咥えてそのまま勢いよく地面に叩き落とした。イーズナは耐えられるわけがなく、そのまま小さく爆発してしまった。

 

 

「よっし!ターンエンド!」

ワームモンLV1(1)BP3000(疲労)

ライドラモンLV1(1)BP5000(疲労)

 

バースト無

 

 

十分な攻撃であったと言える。何せ、司のスピリット1体と、ライフを2つ破壊したのだから。

 

だが、その分司のコアも増えた。次は間違いなく司の反撃が来ることだろう。

 

 

[ターン05]司

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨8

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップ、朱に染まる薔薇園のLVを2に上げ、その効果を使用、ホークモンをフル軽減で召喚!」

リザーブ8⇨3

朱に染まる薔薇園(0⇨1)LV1⇨2

トラッシュ0⇨1

 

「…………!!」

 

 

朱に染まる薔薇園は赤のスピリットを召喚する際、黄色のスピリットとしても扱うと考えても良い効果がある。

 

それを活用し、司もここで自分のデッキの潤滑油となるスピリット、ホークモンを召喚した。そしてその召喚時の効果を使用する。

 

 

「召喚時効果、3枚オープン」

オープンカード

【朱に染まる薔薇園】×

【リボルドロー】×

【リボルドロー】×

 

 

残念ながら効果は全てハズレ、トラッシュへと送られた。だが、今はどうでもいいと言わんばかりに司は新たなるカードを引き抜いた。

 

 

「さらに俺はハーピーガールをLV2で召喚!」

手札4⇨3

リザーブ3⇨0

朱に染まる薔薇園(1⇨0)LV2⇨1

トラッシュ1⇨3

 

 

司が呼び出したのは、鳥人類とでも言うべきか、そんな女性型のスピリットが召喚された。

 

そして司はこのメンバーでアタックを仕掛ける。

 

 

「アタックステップ!………やれぇ!ハーピーガール!アタック時の【連鎖:赤】の効果でBP3000以下のスピリット、お前のワームモンを破壊!」

「!!」

 

 

ハーピーガールの強烈な翼撃が、ワームモンを襲う。ワームモンはそれに吹き飛ばされて、破壊されてしまった。

 

 

「くっ!………ライフで受けるっ!」

ライフ5⇨4

 

 

その翼が今度は椎名に狙いを定める。そして勢いよく、飛び込み、椎名のライフを1つ破壊した。

 

そしてこの瞬間。ハーピーガールのもう1つの効果が発揮される。

 

 

「ハーピーガールの【聖命】の効果でライフを1つ回復、さらに朱に染まる薔薇園の効果により、ライフが回復したため、デッキから1枚ドローする」

ライフ3⇨4

手札3⇨4

 

 

ハーピーガールの黄色専用キーワード効果【聖命】に反応するように朱に染まる薔薇園も赤く発光しだす。司はその手札とライフを同時に潤した。

 

 

「まだ行くぞ!ホークモンでアタック!」

 

「…………ライフで受ける」

ライフ4⇨3

 

 

ハーピーガールに続くホークモンは、その赤い羽根を器用に飛ばし、椎名のライフに突き刺す。そのまま彼女のライフを1つ砕いた。

 

このターン1回で逆転されてしまった。ライフの差も、手札の差も、盤面のスピリット数も、やはり司とのバトルは面白い。椎名は改めてそれを感じ、次のターンに臨む。

 

 

「………ターンエンドだ………どうした?もうおしまいか?」

ハーピーガールLV2(2)BP4000(疲労)

ホークモンLV2(3)BP5000(疲労)

 

朱に染まる薔薇園LV1

 

バースト無

 

 

「なんのなんの!これからだよ!」

 

 

やれることを全て失い、そのターンを終える司。次は椎名のターンだ。反撃なるか、

 

 

[ターン06]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ5⇨10

トラッシュ5⇨0

ライドラモン(疲労⇨回復)

 

 

「………メインステップ!一気に畳み掛ける!ガンナー・ハスキーと猪人ボアボアをLV2と1で召喚!」

手札5⇨3

リザーブ10⇨3

トラッシュ0⇨2

 

 

椎名の場に現れたのは、犬型だが、拳銃を所持するために背中に青い筋肉質な腕を生やしたスピリット、ガンナー・ハスキーと、鎖付き鉄球を振り回す獣人、ボアボアだ。

 

それぞれガンナー・ハスキーがLV2。ボアボアはLV1だ。ただし、ボアボアはコアが2つ置かれており、自身の効果により、アタックするだけでLV3まで一気に伸びる。

 

 

「さらにライドラモンのLVを3にアップ!」

リザーブ3⇨0

ライドラモン(1⇨4)LV1⇨3

 

 

ライドラモンが力が上がったことを証明するかのように強く吠える。これで擬似ダブルシンボルの効果が付与された。

 

そして椎名はアタックステップに入る。あわよくばこのターンで勝負を決める気でもいる。

 

 

「アタックステップ!ボアボアでアタックっ!アタック時の【連鎖:緑】でコアを増やし、自身の効果でLV3まで上昇!」

猪人ボアボア(2⇨3)LV1⇨2⇨3

 

 

鉄球を強く振り回すボアボア。そのBPは8000と、コスト帯にしてはかなりのサイズだ。

 

 

「………そいつはライフで受ける」

ライフ4⇨3

 

 

投げ込まれた鉄球が、司のライフを1つ粉々に砕いた。残りは3つ。ライドラモンとガンナー・ハスキーのアタックが通れば椎名の勝ちだ。

 

 

「よし!次だ!ライドラモンっ!」

 

 

再び地を駆けるライドラモン。だが、そう上手くはいかない。司は手札にある1枚のカードを引き抜いた。

 

 

「フラッシュ!シュリモンの【アーマー進化】を発揮!対象はホークモン!」

「!!」

 

「1コストを支払い、これを召喚!」

リザーブ1⇨0

トラッシュ3⇨4

シュリモンLV2(3)BP9000

 

 

ホークモンの頭上にこれまた独特な形をした卵が投下される。ホークモンはそれと衝突し、混ざり合う。そして新たに現れたのは忍者のような見た目のスピリット、シュリモンだ。その手足はインゲンの蔓のようなもので構成されている。

 

 

「シュリモンの召喚時効果!相手の疲労状態のスピリット1体を手札に戻す!もちろんここではライドラモンだっ!帰ろっ!」

 

「……………ぐっ!!」

手札3⇨4

 

 

シュリモンは背に常備してある巨大な手裏剣をライドラモンに向けて投げ飛ばす。ライドラモンはそれにクリーンヒットし、吹き飛ばされ粒子となり、椎名の手札へと戻ってしまう。

 

 

「いいかめざし!今一度言う!この準決勝を勝ち上がり、決勝でヘラクレスに勝利するのはお前じゃない、……………この俺!赤羽司だっ!」

 

 

司は親指で自分を指し、それを強く主張する。

 

轟音のような歓声の中で行われているこの準決勝。現在は司が圧倒的に有利だが、椎名もまだまだ余力はあるはずだ。どちらが勝つかはこの場にいる誰もが予想できないことであった。このバトルは次回に続く。

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉

「はい!椎名です!今回はこいつ!【ホウオウモン】!!」

「ホウオウモンは赤羽一族に伝わる伝説の赤属性、究極体スピリット!煌臨元が赤属性の完全体だったらそれを手札に戻しつつ、相手の強力なスピリットを破壊できるよ!」






最後までお読みくださり、ありがとうございました!
今回初登場だったホウオウモンの煌臨口上を考えてくださったのは【バトルスピリッツ欠落】の作者様、【蛇マグナ卿】さんです!誠にありがとうございました!
※都合により、口上は若干の変更を加えました。
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