バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

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第34話「渾身の討撃、エスグリーマ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー『私と…………結婚してください!!』

ー『え!?何ですか?急に……………まぁいいですけど!』

ー『必ず………幸せにしますっ!』

 

 

ある40歳程度の男性が、1人の優しい顔をしている歳が30前くらいの女性に対して顔を赤くし、照れながらも告げた。

 

これは今から20年も前の話だ。【紫治城門】と【紫治亜槌】の甘酸っぱい記憶。その時間はとても幸せで、とても幸福であった………

 

亜槌は当時プロとして活躍していた城門のマネージャーとして仕事していた。その彼女の優しさと上品な振る舞いが、城門の心に風穴を開け、恋に落とした。

 

それから2人は結婚し、子宝にも恵まれ、2人の女の子、明日香と夜宵を授かった。

 

それはそれは暖かい家族の話。

 

となるはずだった。

 

そう、はずだったのだ。

 

幸せはそう長くはなかった。

 

亜槌は不幸な交通事故でその命を落とした。

 

そこからだ、家族と城門の中の歯車が狂い始めたのは………

 

 

ー『おかあさまぁぁぁぁあ!!!……う、うわぁぁぁぁあん!!!』

 

 

そう病室で大きな涙を流し、泣いていたのは、当時の夜宵。その側では姉の明日香も仄かに涙を流している。

 

そんな中、城門だけは涙を流さずにただ考えていた。

 

どうしたら亜槌を取り戻せるか、どうしたらまた一緒に居られるかを、

 

それだけを、悲しさよりも、寂しさよりも真っ先にその事だけを直向きに考えていた。

 

そしてそこから約数年後、彼は【Dr.A】たる人物と出会い、城門は彼の研究を手伝う事を条件に、【亜槌】を生き返らせることを約束した。

 

 

 

ーそして、現在に至る。

 

 

ホウオウモンの金色の炎が、城門の操るヴェノムヴァンデモンを一瞬にして灰にした。

 

再び彼の場にスピリットは一体といなくなった。

 

椎名達の勝ちだ。誰がどう見てもそうだと言える状況にまで追い込んだ。

 

 

「……………やった……」

 

 

そう呟いた椎名。それもそのはず、後は唯一アタックできるホウオウモンが動くだけでこの勝負は終わるからだ。

 

城門を倒し、彼の持つ水晶を破壊すれば、夜宵は戻るはず。

 

もう終わるのだ。長かった苦しい戦いが、

 

 

「…………あ、あ、亜槌………わ、私は…………」

 

 

1人項垂れ、それだけを呟く城門。戦意を失っているようにも見て取れる。

 

これを見て、司は勝利を確信した。

 

 

「終わりだな………ホウオウモンで………」

 

 

………「アタック」

 

………そう言おうとした。

 

だが、それよりも先に、

 

 

「………そ、そうだ………私は………負けないっ!!」

「!?……まだやる気なのか!?」

 

 

城門が再び息を吹き返した。その執念と胆力で、

 

そして、ここで、このヴェノムヴァンデモンが破壊されたタイミングで、1枚のカードを発動させる。

 

それは彼にとって、起死回生の、念を押して最後まで取って居た秘策であった。

 

 

「……あ、あぁぁぁぁああ!!!!!………破壊によりバースト発動!天冥銃アーミラリー・スフィア!!」

「なにっ!?それは………」

「銃ブレイブ…………そんなものまで………」

 

 

司と雅治がそう言いながら驚いた。

 

銃ブレイブとはデジタルスピリット同様、珍しいカードであったものだ。近年の発達により、少しは流通数が増えたが、その数は少なく、未だにデジタルスピリットや仮面スピリットよりも希少である。

 

ーそして、そんなレアカードの効果が今、発揮される。

 

 

「この効果で!!貴様らのスピリット1体のコア2つをリザーブに置く!サブマリモンとホウオウモンだ!」

 

「ぐっ!」

ホウオウモン(3⇨1)LV2⇨1

 

「……………サブマリモンっ!」

サブマリモン(1⇨0)消滅

 

 

反転するカードから放たれる紫の衝撃波。それは瞬く間に全体へと広がり、サブマリモンとホウオウモンのコアを抜き取った。

 

ホウオウモンは辛うじて生き残るも、サブマリモンはそれには耐えることができずに、その肉体を消滅させてしまった。

 

 

「この効果で消滅した時、カードをドローし、その後これを召喚する」

手札1⇨2

リザーブ17⇨14

天冥銃アーミラリー・スフィアLV1(3)BP3000

 

 

彼の場に銃が、アーミラリー・スフィアが魔法陣のようなものから飛び出してきた。

 

そして、当然これだけではない。

 

城門はここからさらに展開する。自身の持つ、史上最悪のデジタルスピリットを…………

 

 

「煌臨発揮!対象はアーミラリー・スフィア!!」

リザーブ14s⇨13

トラッシュ11⇨12s

 

「え!?ブレイブを煌臨対象に!?」

「銃ブレイブはスピリット状態であっても煌臨対象にすることができるんだ…………」

 

 

そう疑問を持った椎名にすぐさま回答する雅治。

 

銃ブレイブには皆、煌臨対象になることができる【装鎮】の効果を持っている。これによりスピリット状態であっても煌臨が可能なのだ。

 

そして現れる。

 

紫治城門の操るヴァンデモン。その最高位であるデジタルスピリットが、

 

 

「闇を統べよ!そして我が願いを叶える糧を与えよっ!!煌臨っ!!」

手札2⇨1

 

 

闇のゲートが開かれる。そしてその中から白いアーマーに加えて、仮面を被った新生ヴァンデモンが現れる。その名も……………

 

 

「ベリアルヴァンデモン!!!」

ベリアルヴァンデモンLV2(3)BP12000

 

 

それは紫の羽を広げ、現れた。まるでその存在自体が絶望の塊だ。

 

 

「…………そ、そんな……」

「ここまで来て、また、究極体……だと!?」

 

 

雅治と司はそう言葉にした。このベリアルヴァンデモンに今までにないものを感じた。

 

わかってしまったのだ。体格はヴェノムヴァンデモンに劣るものの、それ以上にこれが強いことが………

 

紛れもなく、それは「恐怖」と言う2文字の言葉であった。

 

 

「銃ブレイブの【装鎮】は成功した後、その煌臨スピリットに合体できるっ!……合体せよ!」

ベリアルヴァンデモン+天冥銃アーミラリー・スフィア

 

 

ベリアルヴァンデモンは地に落ちているアーミラリー・スフィアを拾い上げ、合体する。そのBPとシンボルを増強させた。

 

そしてまだだ。まだこれが全てではない。

 

今度は煌臨時効果だ。

 

 

「煌臨時効果っ!貴様らのスピリット1体のコアを6つをリザーブに送るっ!………消え失せろぉぉお!!ホウオウモンっ!……滅却の………パンデモニウムフレイム!!」

 

「……………ぐっ!?!!……………ホウオウモンっ!」

ホウオウモン(1⇨0)消滅

 

 

ベリアルヴァンデモンの両肩にある寄生虫のような者たちが、口内を開き、そこからホウオウモンに向けて、超高熱線を発射させる。

 

ホウオウモンはそれをまともに浴びてしまい、力尽き、地面へと落下。その衝撃で、この場から消滅してしまった。

 

 

「…………そんな……ホウオウモンが……」

 

 

雅治はそう呟いた。まるでもうこのバトルが自分達の敗北で終わりだと言わんばかりに。

 

司もこれでターンを終わらざるを得なくなってしまった。

 

 

「………………ターンエンドだ」

バースト無

 

 

先ほどの状態から一転。焦土と化す3人の盤面。再び全てを逆転されてしまった。

 

ここからさらに逆転するなど、正直厳しいものがある。

 

3人の場に残ったスピリットは、BPで城門のベリアルヴァンデモンに圧倒的に劣る椎名のマグナモンのみ。

 

そして次のターン。城門は3人をさらなる崖っぷちへと立たせる。

 

 

[ターン13]城門

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ13⇨14

《ドローステップ》手札1⇨2

《リフレッシュステップ》

リザーブ14⇨26

トラッシュ12⇨0

 

 

「メインステップ、私はシキツルを2体召喚するっ!その効果でカードを2枚ドローっ!!」

手札2⇨0⇨2

リザーブ26⇨18

トラッシュ0⇨2

 

 

城門が召喚したのは今なおも愛される折り紙の鶴のようなスピリット、シキツル。その効果は至ってシンプル。召喚時にカードを1枚ドローするだけだ。

 

だが、この状況では、それが彼に大きなアドバンテージを与えていた。

 

 

「…………さらに3体目のシキツルを召喚し、カードをドロー!!」

手札2⇨1⇨2

リザーブ18⇨14

トラッシュ2⇨3

 

 

まだ出てくる。3枚目のシキツルの効果で、城門はその手札の枚数を維持する。

 

これで城門の場にはシキツルが3体と、強力極まりない紫の究極体スピリット、ベリアルヴァンデモンが1体。

 

椎名達と比べるとその戦力差は圧倒的。疲労ブロックできるマグナモンを退かし、彼らのライフを破壊するには十分すぎる数だった。

 

 

「はっはっはっはぁぁぁぁあ!!!ようやくだ!ようやく………………亜槌は蘇るぅぅぅう!!!!」

 

 

大きな声で高笑いをする城門。この時点で既にほぼバトルの勝ちを確信したからだ。

 

ーそしてアタックステップ…………に入る直前だった。

 

椎名が口を開いたのは

 

 

「……………なんで」

「………!?」

「なんでそこまで人の命を踏みにいじるの!?…………なんで自分のことしか考えられないの!?」

「っ!?…………なにをっ!?」

 

 

椎名はその口を閉じずにただただ喋った。淡々と……胸を張って……それでいて……大きな声で……

 

 

「夜宵ちゃんは最後の最後まであなたを助けようと思ってたんだよ!自分の命が尽きそうなのに!!【お父様を救ってやって】って私に言ったの!!!」

「………っ!?!!」

「……………そ、そう言えばあの時、明日香さんも……」

 

 

椎名と夜宵がバトルした直後に、夜宵が椎名に遺した言葉がある。それがその言葉であって、

 

夜宵は自分の命がなくなる瞬間まで父のことを…………家族のことを思っていた。またいつか父が優しい父に戻ると信じていたからだ。

 

あの時、その想いを椎名達に託したのだ。

 

それと同時に雅治も思い出した。夜宵の姉、明日香の言葉を…………

 

彼女もほぼ夜宵と同じ事を言い遺していた。

 

2人とも最初からわかっていたのだ。【あの水晶など使っても、自分達の魂を捨てても…………母が蘇らないことを】。

 

止めたかった。どんどん狂っていく父を、

 

救ってやりたかった。たった1人の父親だから……

 

それでもいつかわかってくれると思い、ついていった。そしてわかってくれぬまま、今日という日を迎えたのだ。

 

 

「人1人がいなくなるだけで…………どれだけの人が泣くと思ってるの?どれだけの人が悲しいと思ってるの?夜宵ちゃん達の代わりなんかどこにもいない!!」

「……………っ!?」

「一度それを味わったあなたならわかるはずなのにっ!!どうしてっ!?どうしてだよぉぉお!!!」

 

 

涙を流しながら、その悲痛な想いを口にする椎名。

 

その言葉に、城門以外の誰もが同情していた。

 

城門は苦しかった。実際はこれが正論なのであろう。自分のやろうとしている行いは間違っているのだろう、と。

 

だが、もう後には引けないのだ。あの時、夜宵の悲しむ声を聞きながら、決めたのだ。【必ず亜槌を取り戻す】と。

 

 

「…………黙れ…………黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇぇえぇぇえ!!!貴様らのような若者に私の気持ちの何がわかる!!?!………………終わりだぁ!!!ベリアルヴァンデモンっっ!!!」

「………長峰、赤羽、……椎名ぁぁぁぁあ!!」

 

 

城門の指示を受け、飛翔するベリアルヴァンデモン。目指すは椎名達3人の1つのライフだ。

 

晴太が彼らを想うような大きな声をあげるが、全く意味がないことであって……

 

今現在、これをブロックできるのは椎名のマグナモンだけ、ブロックはするしかない。

 

ベリアルヴァンデモンのパンデモニウムフレイムが椎名達3人めがけ、一直線に放たれる。

 

椎名はその中で進む口を閉じなかった。

 

 

「……………わからないよ………私は夜宵ちゃんのお母さんを知らないし…………でもこれだけは言える……夜宵ちゃんのお母さんは夜宵ちゃん達を犠牲にしてまで生き返りたくないのは…………痛いほどわかった……………」

「………………っ!?!」

 

 

ここまでの椎名の叫び。

 

ーそれが雅治と司に再び恐怖を振り切る勇気と希望を与えていた。

 

 

「…………うん、そうだよね、椎名………」

「………俺らの強さ、見せつけてやるぞ………」

 

 

2人は静かに椎名の横でそう呟いた。

 

ーそして、

 

 

「うるさいっ!!終わりだと言ってるだろうがぁぁぁぁあ!!」

 

 

ーそれを止める。

 

 

「フラッシュマジック!!2枚目のリアクティブバリアを使用するっ!…………………」

手札4⇨3

マグナモン(16⇨12)

トラッシュ0⇨4

 

「……………っ!?!」

「アタックはマグナモンで受け止めるっ!マグナモンっ!!!!」

 

 

パンデモニウムフレイムが3人に直撃するその瞬間。椎名達の前にマグナモンが飛び向かい、わが身を盾として、彼らを守る。

 

防御に長けたマグナモンと言えども、究極体の放ったその一撃には耐えられない。それが終わるまでは耐えるものの、終わった直後に、力尽き、その場で消滅してしまった。

 

彼は身を呈して、椎名達を守り抜いた。

 

 

「…………ありがとう、マグナモン…………リアクティブバリアの効果でこのターンのアタックステップを終了させるっ!!」

「………ぐっ!!き、貴様らぁぁぁぁぁあ!!!」

 

 

マグナモンが消えた瞬間に立ち込める猛吹雪。それは城門の場にいるシキツル達の動きを完全に封じ込めていた。

 

城門はこのターンのアタックステップを終了せざるを得ない状況に追い込まれた。

 

 

「な、なぜだ…………き、消えない………目の前の魂が、生贄が!!………なぜ消えないっ!?!」

ベリアルヴァンデモン+天冥銃アーミラリー・スフィアLV2(3)BP15000(疲労)

シキツルLV2(3)BP2000(回復)

シキツルLV2(3)BP2000(回復)

シキツルLV2(3)BP2000(回復)

 

ムゲンマウンテンLV1

ムゲンマウンテンLV1

ムゲンマウンテンLV1

 

バースト無

 

 

城門はその消えず、減ることのない3人のライフに怒りを感じながら、そのターンを終えた。

 

 

「当然だ…………今のてめぇに俺たちは一生賭たって倒せやしねぇよ」

 

 

そう呟いたのは司だった。

 

ーそして、

 

 

「めざし…………お前のターンで決めろ……」

「!?!」

「うん。おそらく、僕達のデッキのカードじゃあ、この場を突破できないかもしれない…………」

「…………お前に、お前のその馬鹿みてぇな運に、全て賭けてやる…………だから勝て!」

 

 

司は椎名に強くそう言った。雅治も同じ気持ちだ。

 

これは賭だ。今まで数々の奇跡を引き起こしてきた椎名の右腕に、彼らは全てを賭けたのだ。

 

任された椎名は、ここで断るわけがない。全身全霊で、とにかく真っ直ぐ、一気に、城門の残り1つのライフまで、突き進むだけだ。

 

 

「私のタァァァアン!!!」

 

 

椎名は勢いよくターンシークエンスをスタートさせた。

 

 

[ターン14]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ12⇨13

 

 

「…………ドローステップっ!!!……………よしっ!!」

手札3⇨4

 

 

椎名がこのターンのドローステップで召喚したのはまさしく最強のドロー。このターンにこれ以上に強いドローはないだろう。

 

その後も、椎名はターンを進め、着々とそれを召喚するまでの敷地を作っていく。

 

 

《リフレッシュステップ》

リザーブ13⇨17

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップ!!………ブイモンを召喚っ!!」

手札4⇨3

リザーブ17⇨11

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名が真っ先に呼び出したのはブイモン。このバトルでは何度も訪れた、ヴァンデモンの手札破棄効果を逃れ、椎名の展開をサポートしてきた。

 

その召喚時効果で、椎名は新たな手札確保を試みる。

 

 

「召喚時効果でカードをオープンっ!!」

オープンカード

【No.26キャピタルキャピタル】×

【エクスブイモン】○

 

 

効果は成功。椎名はこの効果で青の成熟期スピリット、エクスブイモンを手札へと加えた。

 

そしてまだだ、まだ展開する。ブイモンの召喚時効果の追加効果で、エクスブイモンの相棒を呼び出す。

 

 

「さらに!ブイモンの追加効果で、2コストを支払い、緑の成熟期スピリット、スティングモンを召喚っ!」

手札3⇨4⇨3

リザーブ11⇨9⇨4

トラッシュ3⇨5

スティングモンLV3(5)BP10000

 

 

椎名の場に飛び出してきたのはスマートな昆虫戦士、スティングモン。その効果は単純で強力なコアブースト効果だ。

 

 

「スティングモンの効果でコアを1つ増やす」

スティングモン(5⇨6)

 

 

ーそして、次はエクスブイモンの番だ。椎名の手札よりそれが呼び出される。

 

 

「そしてエクスブイモンを召喚っ!…………召喚時効果で、2枚引き、2枚捨てる」

手札3⇨2⇨4⇨2

リザーブ4⇨1

トラッシュ5⇨7

 

 

現れたのは蒼き闘竜、エクスブイモン。その腹部のエックスの文字が特徴的だ。

 

これで準備は整った。椎名は呼び出す。この戦いで得た、自分の新たなる力を……

 

 

「パイルドラモンの【ジョグレス進化】を発揮!!対象はエクスブイモンとスティングモン!!2体を融合させて、新たな命が芽吹く!!」

手札2⇨3

 

「……………こ、これはっ!?」

 

 

そして現れる。無敵の竜人が、

 

 

「蒼き闘竜と勇猛な昆虫戦士が混ざり合う時…………至高の竜戦士が姿を現わす……………ジョグレス進化ぁぁぁぁあぁ!!!」

 

 

飛び交うエクスブイモンとスティングモン。この2体は自身のデジタルコードを混じり合わせ、新たな姿へと昇華させていく。

 

そして新たに現れるのは至高の竜戦士。青と白の4枚の翼と、赤い仮面、腰にある2つの機関銃に加え、黒い昆虫の甲殻までもを身につけている。

 

その名も…………

 

 

「パイルドラモンッッ!!!」

パイルドラモンLV3(5)BP13000

 

「…………っ!?」

 

 

椎名の新たなるエーススピリット、パイルドラモンがその姿を現わした。

 

そしてこの時、召喚時の効果も発揮されるのであって、

 

 

「パイルドラモンの召喚時効果っ!!【ジョグレス進化】により召喚されていたのなら、相手のコスト7以下のスピリット全てを破壊するっ!!」

「くっ!?」

「殲滅の………デスペラードブラスター!!!」

 

 

パイルドラモンが腰に付いている機関銃を持ち上げ、そこから城門の場に向けて、何発も何発もぶっ放した。

 

コストが高いベリアルヴァンデモンには直撃しようともびくともしていなかったが、コストの低いシキツル達はそうはいかない。その身体の全てを撃ち抜かれ、次々と爆発していった。

 

 

「よし!」

「これで後はアタックすれば…………」

「私達の勝ちだぁ!!!」

 

 

そう言った3人。そしてアタックステップだ。

 

ここからが勝負である。

 

 

「アタックステップっ!!パイルドラモンでアタックっ!!………その効果でコアを2つパイルドラモンに置くことで、パイルドラモンは回復するっ!」

パイルドラモン(5⇨7)(疲労⇨回復)

 

 

パイルドラモンは走り出した。目の前の城門を倒すために、

 

それと同時に回復状態にもなった。残り1つのライフを破壊するには十分すぎる連撃であった。

 

が、城門はまだ何かあった。それは椎名を絶望させるには十分すぎる代物であって…………

 

 

「………あ、あぁ!!私は、私はぁ!!!亜槌をこの手に取り戻すまでは!!必ず負けはせんっ!!…………フラッシュマジック!!光翼之太刀!!対象はベリアルヴァンデモンっっ!!!」

手札2⇨1

リザーブ23⇨20

トラッシュ3⇨6

ベリアルヴァンデモン+天冥銃アーミラリー・スフィアBP15000⇨18000

 

「……………え?」

「説明は不要だなぁ!! ベリアルヴァンデモンでブロックだぁ!!」

 

 

そのターン中のみ、疲労ブロッカーの効果を与える白マジック、光翼之太刀。2枚目はベリアルヴァンデモンに与えられる。

 

空中に飛び立つベリアルヴァンデモン。その上空から合体させられたアーミラリー・スフィアで、何度も地上のパイルドラモンに撃ち込んだ。

 

パイルドラモンはその場を旋回し、なんとかかわし続けているが、放って置けばいずれ直撃し、敗北するのは目に見えていた。

 

 

「…………そ、そんな……BP18000……パイルドラモンじゃあ……勝てない…………」

 

 

椎名はそう呟いてしまった。呟いてはいけないとわかっていても………その内に秘めた弱音を呟いてしまった。

 

……「勝てない」

 

今の自分では、パイルドラモンでは、どう足掻いても、奴には勝てない。そう思ってしまったのだ。

 

これでは、ここで負けては夜宵は無駄死にだ。勝たねばならないのに…………

 

ーだが、直ぐに気づくことになる。

 

ー自分は1人で戦っているわけではないことに。

 

ー今、ここには2人、いや、本当は何人もの人が自分の味方だと言うことに。

 

 

「おいっ!めざし!!なにへこたれてんだぁ!お前に全部賭けるっつっただろうが!!」

「…………司……!!」

「そうだよ!君は1人じゃない!僕達が付いている!」

「…………雅治……!!」

 

 

そうだ。今はこの2人が椎名のそばにいる。この2人と自分がいれば、他の誰にも負けるわけがない。

 

そんな中、このタイミングで雅治が手札のカード1枚を引き抜いた。

 

 

「フラッシュマジック!舞華ドロー!!ベリアルヴァンデモンのBPをマイナス3000!!」

手札4⇨3

リザーブ5⇨2

トラッシュ7⇨10

 

「…………っ!?」

ベリアルヴァンデモン+天冥銃アーミラリー・スフィアBP18000⇨15000

 

 

黄色いオーラを纏ったカードが、上空にいるベリアルヴァンデモンを貫く。その力を幾分か弱めた。

 

ーそして今度は司だ。

 

 

「フラッシュマジック!レッドライトニング!!ベリアルヴァンデモンに合体された天冥銃アーミラリー・スフィアを破壊!」

手札1⇨0

リザーブ4⇨0

トラッシュ8⇨12

 

「……………なっ!?」

ベリアルヴァンデモン+天冥銃アーミラリー・スフィア⇨ベリアルヴァンデモンBP15000⇨12000

 

 

司が放ったマジック。その赤い稲妻が瞬く間にベリアルヴァンデモンの手に持っていたアーミラリー・スフィアを捉え、破壊した。

 

これでベリアルヴァンデモンのBPは大きく削ぎ落とされ、BP13000のパイルドラモンを下回った。

 

 

「今だぁ!!いけぇぇ!!椎名ぁぁぁぁあぁ!!!」

「ぶちかませぇぇえぇ!!」

 

 

2人の心からの叫びは確かに、確かに椎名の心の内側まで響いてきた。

 

だったら応えるしかあるまい。

 

椎名はその2人の想いに涙ぐみながらも、それを拭い、……………勝負を決める。

 

 

「うっ、……うぉぉぉぉぉぉぉお!!!…………渾身のっ!」

 

 

アーミラリー・スフィアをなくしたベリアルヴァンデモン。

 

彼に残された武器である両肩の砲撃。これをパイルドラモンに向けて放とうとした瞬間だった。

 

 

「………討っ!!撃っ!!」

 

 

パイルドラモンが一瞬の隙をついて自身の眼前まで迫っていた。ここは上空であると言うのに…………

 

そして、パイルドラモンはその拳をベリアルヴァンデモンへと向ける。

 

 

「……エスッ!!…グリーマァァァァァァア!!!!!!!!!!!!!」

 

 

何発も何発もそのスティングモンのスパイクが埋め込まれた拳でベリアルヴァンデモンを殴りつける。全ての装甲にひびや亀裂が入るまで、何度も何度も…………

 

 

「うぉぉぉぉぉ!!!!………っらぁぁぁぁぁあ!!」

 

 

下へ向けられたトドメの一発が、ベリアルヴァンデモンのこめかみに命中する。ベリアルヴァンデモンは上空から叩き落され、ゆっくりと落下していく。

 

その落下先には、城門がいた。

 

 

「………ま、負ける!?………わ、私が……私が間違っていたと言うのか…………っ!?…………あ、亜槌……」

ライフ1⇨0

 

 

城門は儚くも、その落下してきたベリアルヴァンデモンの重みで、最後のライフを木っ端微塵にされてしまった。

 

そのガラス細工が割れたような音は、ゆっくりと、なによりも切なく、この界放市離れの【ジャンクゾーン】へとこだました。

 

そしてその凄まじい衝撃からか、城門の懐に入っていた【Dr.A】が作り上げた水晶が飛び出し、綺麗に真っ二つに割れた……………

 

 

「…………なんて子達だよ、本当に3人だけで…………」

 

 

なによりも早く呟いたのは晴太だった。

 

そしてバトルしてた3人も……

 

 

「…………か、勝った?」

 

 

椎名はそう呟いた。その一瞬はまるで勝った気がしなかったからだ。疑っていたのだ。

 

 

「そうだよ椎名!僕らで勝ったんだよ!あの【伝説バトラー】の1人に!!!」

「そんなことより、さっきの衝撃で奴の持っていた水晶が割れたぞ」

 

 

3人と晴太、聖子は割れた水晶を確認すると共に、夜宵達の方へと目を向けた。

 

正直なところ、あれを壊しても魂が戻るのは半信半疑であったが、ここでそれが確信に変わった。

 

 

「……………ん?……ここは?」

「…………や、夜宵?あなたなぜ?」

「…………お、お姉様こそ…………」

 

 

2人が起き上がった。記憶が不安定の中、互いの存在を認知し合っている。

 

椎名はこの光景に涙が堪えきれなかった。

 

 

「う、うわぁぁぁぁぁあ!!!夜宵ちゃん!!!!」

「へ!?し、椎名ちゃん!?」

 

 

椎名は思わずその場を飛び出して、夜宵の側で土下座をするような体制で延々と泣きじゃくった。

 

「あぁ、良かった」「あぁ良かった」と。それだけ思うだけで涙が止まらなかった。

 

夜宵と明日香は周りを見渡してこれがどういう状況なのかを確認した。そして悟。これは自分達が思い描いていた最高の光景であると。

 

 

「…………そ、そっか、椎名ちゃん達が…………ありがとう」

 

 

夜宵も涙を流しながら目の前で大泣きしている椎名の頭を撫でた。

 

司も雅治も晴太も、その光景を微笑ましく思った。

 

ーそして、

 

 

「…………立てる?紫治城門…………あなたを拉致、及び、殺人未遂容疑で逮捕します」

「……………」

 

 

聖子は地面に仰向けに倒れていた城門にそう言った。

 

城門はもう逮捕される覚悟は決まっている。

 

ただ、誰でもいいからこれだけは聞きたかった。

 

 

「…………私のしていたことは……間違っていたのか………?」

 

 

それに対し、聖子はゆっくりと返事をした。

 

 

「……そうね、……人智を超えようとした罰、と言ったところでしょうね、……私も気持ちはわからなくもないわ………後は本部で考えなさい」

 

 

そう言って、聖子は城門の両手に手錠を掛け、立ち上がらせた。

 

そのまま引き連れ、2人でこの場を立ち去ろうとした。

 

それは聖子なりの気遣いのつもりであった。このまま城門を、夜宵と明日香の前から連れ去ろうと思ったのだ。

 

城門の気持ちを考えれば、当然だろう。何せ、そこにあった本当に一番大事なものを犠牲にしようとしたのだから。

 

だが、神はそれを許さなかった。気づいてしまう。夜宵と明日香が、

 

 

「「お父様!!」」

「………………」

 

 

城門は娘達2人に呼び止められ、その足を止めた。

 

あぁ、いったいなんと言うのだろうか、自分の果てしない欲を叶えるためだけに行動していた自分に対して、優しかった娘2人は、

 

やはり誹謗なことだろうか、そう言われても正直仕方ないことはした。

 

だが、そんな城門の予想とは裏腹に、夜宵と明日香が放った言葉は…………

 

 

「またいつか…………」

「戻ってきてください!!」

「!?!」

 

 

城門は驚いた。思わず後ろを振り返って2人の顔を見た。

 

笑っていた。まるで自分にも感謝しているかのように。

 

なぜだ。

 

 

「お母様はいないけど…………それでも私達は幸せでした、お父様がいたから!」

 

 

夜宵が言った。

 

 

「罪を償ったら、また家族で食卓を囲みましょう……………」

 

 

明日香が言った。

 

 

「…………うっ、…………うぅ…………あぁ、わかった」

 

 

城門は涙を流しながら頷いた。あんなに酷いことをしたのに、なぜこんな愛という名の報いがあるのか、

 

そんなこと、理由はただ1つだった。今ならわかる。

 

それが家族だからだ。

 

城門はその後、聖子と共に【ジャンクゾーン】を出て警察本部へと向かった。

 

 

「…………ははっ!」

 

 

椎名は満面の笑みで小さく呟くように笑ってみせた。

 

確信したのだ。たった今、夜宵達は母という大事な存在は取り戻せなかったが、

 

家族というなによりも暖かいものを取り戻したのだと、

 

ー全てがこれで終わった。

 

 

******

 

 

 

これは椎名達が紫治一族の野望に巻き込まれてから2週間が経った時であった。

 

椎名と真夏はいつものようにクラスの教室で雑談していた。

 

真夏の話によれば、幸いにもヘラクレスの怪我は大したことなかったようだ。今は元気ピンピンで、ナンパしてるとかしてないとか、

 

あの場にいた真夏にも詳しく話した。あの時のことを、鮮明に……………

 

ーそして、ホームルームの時間がやってきた。教室だけではなく、学校全体がチャイムの音で響き渡る。

 

そんな椎名達の教室に、いつものように晴太が入ってくる。

 

 

「よし!全員いるなぁ!!早速、ホームルーム…………といきたいとこだが、…………」

 

 

晴太はその言葉をためた、生徒達もそれが気になるようで、前のめりに耳を傾けているものもいた。

 

 

「転校生を紹介するぞ!」

 

 

晴太が笑顔でそう言った。何やら嬉しそうだ。クラスの生徒達もそれには思わず「おお!」と呟いた。

 

 

「よし!入っていいぞ!!」

 

 

そして、晴太は中に、その転校生を入れる。

 

その正体は椎名達にとって、なによりも驚く存在であって、

 

 

「……………え?…………や、夜宵……ちゃん?」

「あっはは、来ちゃった〜」

 

 

入って来たのは夜宵だった。椎名と真夏は思わず目をあんぐりとさせる。その制服はいつものデスペラード校のものではなく、ジークフリード校の制服であるためか、皆違和感を感じていた。

 

他の生徒、特に男子は盛り上がった。それもそのはず。何せ、転校生があの話題沸騰中の紫治夜宵なのだから。

 

椎名は思わずその場から立ち上がった。

 

 

「な、なんでなんで!?」

「ほんまよ、なんでなん?先生!?」

 

 

椎名と真夏の疑問に、晴太が答える。

 

 

「あ〜〜、えっとな、デスペラード校が理事長不在で、潰れちゃったから、他の学校にその生徒達は分散したんだ」

「そういうことだよ!これからよろしくね!」

 

 

夜宵もそう言った。

 

【バトスピ学園】とは脆いもので、政治機関と繋がる役目を担う理事長がいなければ、簡単に崩壊してしまう。

 

そのために、デスペラード校の生徒達は、各学園に散り散りになったのだ。

 

いや、もう椎名はそんなこと正直どうでもよかった。とにかく嬉しかった。友達が学校に来たことに。

 

 

「こっちこそよろしく!!夜宵ちゃん!!」

 

 

ーまだまだ少年少女達の波瀾万丈な学園生活は終わらない。

 

 

 

 




〈次回予告〉

「椎名です!次回は卒業式!ヘラクレスとかぁ、白の…………一族の……私とバトルした………なんだっけ?……後ウルトラマンのごっつい人とか、いろんな人が卒業しちゃうよ!次回、『門出を祝え!さらばヘラクレス!』……今、バトスピが進化を超える!」







最後までお読みくださり、ありがとうございました!
なんとか終えました。ですが、この章も後1話残ってます。だいたい終わったんですけどね、文章量的に1話ほど浮わついちゃいました。
私の苦手なシリアス展開ともしばらくはおさらば!これからは楽しいの書くぞぉ!って思ってます。
毎度思っておりますが、読者様、毎回私などが描く【バトルスピリッツ オーバーエヴォリューション】をお読みくださり、ありがとうございます!これからも誠心誠意頑張ってみせます!
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