バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

35 / 129
第35話「門出を祝え!さらばヘラクレス!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

季節は2月末。もうすぐ春だと言わんばかりに積もった雪からその顔を覗かせるふきのとうや、今にも輝こうとする桜並木の蕾達。

 

そして今日は全ての学生達にとって特別な日だ。

 

 

【卒業式】

 

それは学生ならば、必ず通らなくてはならないもの。

 

だが、青春を謳歌していたもの達にとっては「通りたいが、通りたくはない」

 

そんな気持ちの矛盾が生じてしまう行事でもある。

 

この界放市にもその季節が訪れた。今日に限ってはどこに行っても卒業式である。

 

そして、このジークフリード校でも………

 

 

「………ふわぁぁあ〜〜……」

 

 

赤毛の少女、芽座椎名は大きな欠伸をかいた。今は全校生徒、いや、学園に携わった者達全員体育館で卒業式を行なっていると言うのに。

 

今は卒業証書が、卒業生一人一人に配布されている。

 

界放市のバトスピ学園の一学年の生徒は平均して約100人程。それに加えて、理事長の不在により崩壊した元デスペラード校の生徒達の数も足し合わせるとそれなりの人数がいることになる。

 

ジークフリード校理事長、龍皇竜ノ字は、卒業生に1人ずつフルネームでその名前を読み上げて、卒業証書を渡していた。流石にきついか、喉はもうカスカスである。偶にでてくる裏声が、生徒達の笑いの的になっていた。

 

そんな中でも椎名は欠伸を何度かかいたと思ったらすっかり夢の世界へと誘われており、

 

 

「…………ほな、椎名、………起きなあかんよ〜〜」

 

 

丁度椎名の横にいた真夏が、ひそひそと小声で呟きながらも肘で椎名を突き出す。

 

それにより、椎名はゆっくりと目を開けた。目覚めが悪かったか、その目は完全には開かず垂れ下がり、何故か彼女の特徴的なアホ毛までもしおれるように垂れ下がっていた。

 

 

「………ねぇ真夏…………卒業式ってバトルしないの?」

「………アホ……するわけないやろ」

 

 

小声で呟きあいながら会話する2人。

 

椎名は暇だった。バトスピ 学園なのだからどうせならバトルを取り入れなければ意味ないだろう。と呆れた考えを持つほどに。

 

いや、本当はこれくらい腑抜けた考えができるくらいが丁度いいのかもしれない。

 

約4ヶ月前までは、本当に大変だった。「文化祭の途中で呼び出され、何事かと思って界放市外れの無法地帯、【ジャンクゾーン】に行って見たが、そこには一族の野望が待ち構えていましたー。」など、普通はあまり起こりえない。

 

結果的にはほとんど丸く収まってくれたが、

 

一方で、あれ以降の紫治一族はと言うと、

 

夜宵は再びラジオやテレビで活躍することになった。これは椎名としても単純に嬉しいが、時折、それのせいで学校に来ない時もある。それは少し残念か、今日もそれがあって、夜宵は学校に来ていない。

 

夜宵の姉、明日香は、あの事件以降、全く姿を見せてはいない。夜宵が言うには、学校には新たに入らず、父が行なっていた故人の供養などをしているようだ。まぁ、稼ぎ手が夜宵以外はほぼない今では仕方のないことだったのだろう。あるいは、父が帰ってきたときのためか………

 

そして、全ての元凶でもあった【Dr.A】と呼ばれる人物だが、事件中も結局椎名達と邂逅する事もなく、ただただひっそりと息を潜めた。

 

警察である一木聖子が、彼の後を捜索するが、結局はなんの音沙汰もなく、現在に至る。本当に最初から最後まで謎に満ちた人物であった。

 

何はともあれ、それは解決したのだ。もう気にする事もない。椎名達はただ残った2年間の学生生活を謳歌するだけである。

 

 

******

 

 

場所は変わり、ここは同じく界放市のキングタウロス校がある区だ。ここもジークフリード校同様に卒業式が行われていた。

 

いや、それ自体はもう、終わったか、校舎の体育館から卒業証書を持った生徒達がぞろぞろと飛び出してくる。その中には、友と語り、笑い合う者。涙を流し、友に慰めを受けている者など、それぞれである。

 

いずれにせよ、彼らには楽しかった学生生活があったことが理解できる。

 

ーそして、キングタウロス校と言えば、この男も卒業だ。

 

 

「キャーーー!!!ヘラクレスさーーーん!!卒業しちゃいや〜!!」

「最後に一度バトルしてくださ〜〜い!!」

「……………はは、参ったなこりゃ」

 

 

そんな感じで多くの黄色い声援が1人の男子生徒に飛び交う。その男子生徒とは、

 

ー緑坂冬真………

 

ーヘラクレス

 

もともと底知れない実力を見せていたが、今年はバトスピ学園設立初となる【界放リーグ三連覇】を成し遂げて見せた。その快挙はなによりも異例で、尚且つ凄まじく、どのプロチームにも事務所にも入団してくれと引っ張り凧だったらしい。

 

 

「俺とバトルしてくれ!」

「いや、僕と!」

 

 

界放市のバトスピ学園では、いや、どこの街の学園でも大抵はやるのだが、卒業式が終わったこの放課後の時間を使って、生徒達は校内中でバトルしまくる。このキングタウロス校も例外ではない。

 

ヘラクレスにこの通り、大半は黄色だが、いろんな声が飛び交った。「自分とバトルしてくれ」「いや私だ」と。当然だ。彼はこの学園では男女問わずに人気が高い。そうであれば誰だって彼とバトルがしたい。

 

だが、ヘラクレスは既に1人先約がいた。

 

ーその者が今、彼の目の前に現れる。

 

 

「……………師匠!!」

「…………おぉ、来たな……弟子」

 

 

ヘラクレスの前に現れたのは彼の一番弟子でもある炎林頂。少し長めの緑の髪に加え、先だけが少し赤なのが特徴的。

 

ヘラクレスは最初はほんの気分だった。女の子と喋る時にネタにできる程度の考えで弟子を取ったが、今となっては割と可愛がっている。

 

そう、最初の相手はやはり、彼では、弟子ではないと始まらない。ヘラクレスは真夏の兄は、そう考えていた。

 

そんな2人を見てか、ヘラクレスの周りに群がっていたキングタウロス校の生徒達はまるで彼らに道を譲るかのようにその場を離れ、バトルができる程度のスペースを確保した。

 

ヘラクレスと炎林は自身のBパッドを展開する。

 

 

「このバトル、俺の全てをあんたに捧げる!」

「…………楽しみにしとるでぇ」

 

 

ーそして、

 

 

「「ゲートオープン!!界放!!」」

 

 

バトルが始まった。ここだけではない。どこの学園でもあっちこっちで、

 

バトラー一人一人の操るスピリット達の声が、咆哮が、校舎全体に反響している。

 

普段であればこのような状況は近所から注意されることだろう。だが、卒業式のような行事であるのなら話は別である。

 

今日というこの日は、界放市のバトスピ学園の生徒全員が大いに、好き勝手に学園中、いや、街全体を舞台に暴れまわってバトルしても、誰もその青春に対して文句を言うものはいない。

 

それほどまでにこの街のバトスピ学園と言う存在は大きいものであって、

 

 

******

 

 

そしてまた舞台は再びジークフリード校。

 

ここでも卒業式が終わり、キングタウロス校のように在校生と卒業生、又は卒業生同士がバトルを繰り広げていた。

 

 

「ん、……んーーーーー」

 

 

椎名は校舎前の桜並木の道で、両手をながら、ゆっくりと背伸びをした。まるで体中の疲れを上へ上へと押し流しているかのように。

 

 

「よ〜〜し、行くか………」

 

 

椎名は1人、ジークフリード校の門を出ようとする。卒業生でもないのに。いや、それ自体に問題があるわけではないのだが、

 

椎名が向かおうとしていたのはキングタウロス校だ。

 

どうしても一度真夏の兄、ヘラクレスとバトルしてみたかった。一度流れでやったが、あの時はそんな楽しんでいられる状況でもなかったためか、椎名の中ではどこか不完全燃焼であったのだ。

 

ジークフリード校の3年生に何か未練があるわけでもない。実際仲が良い人は誰1人としていなかったのだし、

 

そう思って椎名が門をくぐろうとした直後だった。

 

 

「…………ガハハハハ!!!!……おい、どこいきやがる?芽座椎名!この俺様を置いてお出かけとはいい度胸だなぁ、おい!」

 

 

とても図太い声が椎名を呼び止めた。

 

椎名はその声の方へと振り返る。そこにはもう何ヶ月ぶりとなるか、【毒島富雄】がいた。

 

3年生で、もう卒業したと言うのに、なんとも言えない、いや、我を通していると言ったところか、その制服は相変わらずのヤンキースタイルだ。

 

 

「……………………………………………………………………あっ、毒島先輩……卒業おめでとう!」

「絶対今思い出したよなぁ!!てめぇ!!なんだ今の間は!……間は!!」

 

 

椎名は少しだけ頭をひねってようやく思い出した。

 

そう、彼は今年の頭に椎名にコテンパンにされてからずっと復讐するべく自らを鍛え上げ、その機会をうかがっていたのだ。

 

1度負けた、そして2度目も負けた。3度目はそうは行くかと言う勢いでのご登場であった。

 

 

「…………で、何の用ですか?」

「当然バトルだ!決着つけるぜ!」

「………決着って、もう私2回も勝ったじゃん!!……………まぁ、でもいっか、準備運動しなきゃね!」

「最近【蒼龍の舞姫】だのようわからん異名をもらって調子乗ってるみたいだがよぉ!この卒業生、毒島富雄様には勝てねぇってことをとことん教えてやるよぉ!!」

 

 

2人はBパッドを正門の前でBパッドを開き、

 

ーそして、

 

 

「「ゲートオープン!!界放!!」」

 

 

バトルを始めた。その開始の宣言が校舎に響いて行く。

 

毒島はまだ気づいていなかっただろう。椎名という存在のおかげで自分が卒業できるほどの実力になっていたことに。

 

 

******

 

 

そして舞台は戻り、キングタウロス校。

 

ヘラクレスと炎林のバトルに決着がつこうとしていた。

 

 

「………へっ!終わりやな!…………ヘラクルカブテリモンでアタックや!」

「くっ!?………ら、ライフで受ける!…………師匠、ありがとうございましたぁ!!!」

 

 

ヘラクレスのエーススピリット、黄金に輝く甲殻を纏った緑の究極体デジタルスピリット、ヘラクルカブテリモンはその4本のツノから雷の砲撃を一直線に放った。

 

それは凄まじい勢いで飛び行き、炎林のライフを撃ち抜いた。

 

これにより、このバトルの勝者はヘラクレスだ。

 

 

「…………ほんと、つよぉ〜なったでぇ!弟子!」

「くっ!!あなたがいてくれたからっすよ!!ありがとうございました!!」

 

 

炎林を褒めるヘラクレス。そしてそれに対して感動して涙を流す炎林。

 

負けはしたが、最後まで悔いの残らない良いバトルだったと炎林は実感した。

 

だが、ここからさらに感動のシーンになるかと思いきやだ。ヘラクレスはぶれなかった。

 

 

「あっ!じゃあ次そこの娘!……君可愛いわ〜〜〜バトルしちゃう?」

 

 

ヘラクレスは目の前にいた弟子、炎林を、バトルが終わるなり早々に視界から外し周りで自分達のバトルを見ていた1人の女生徒に声をかけていた。

 

その生徒ももちろんオッケーだ。憧れのヘラクレスからのご指名なのだ。流石にノーと言う返事はありえない。か、直ぐにバトルが始まる。

 

 

「ちょっと師匠〜〜そりゃねぇっすよーーー!!」

 

 

炎林の渾身の叫びは他のどのスピリット達よりも大きかった。

 

 

******

 

 

 

そして再びジークフリード校。その正門前では、椎名と毒島がバトルを繰り広げていた。

 

今の互いの場は、毒島が蜘蛛の女王のような完全体のデジタルスピリット、アルケニモンと、同じく完全体である包帯を巻いていたミイラのようなデジタルスピリット、マミーモンがいた。

 

対して椎名は昆虫の甲殻を纏う竜、パイルドラモンと、金色のブイの字を輝かせる青くて小さな竜、ブイモン。

 

そしてこのブイモンが今、進化を果たす。

 

 

「へへっ!いくよっ!フレイドラモンの【アーマー進化】発揮!対象はブイモン!」

「!?!」

 

 

毒島は確信した。「奴」が来ると、

 

ブイモンの頭上に赤くて独特な形をした卵が投下される。ブイモンはそれと衝突し、混ざり合う。

 

 

「燃え上がる勇気!フレイドラモンをLV2で召喚っ!!」

 

 

新たに現れたのは燃え盛る炎を纏うスマートな竜人、フレイドラモン。椎名のエーススピリットだ。その力で幾度となく椎名を救ってきた。

 

フレイドラモンとパイルドラモン。2体は共鳴し合うかのように強く咆哮した。

 

 

「へへっ!行くよっ!毒島先輩!!」

「おうよ!どっからでもかかってこいってんだぁ!」

 

 

界放市のバトスピ学園の生徒達は、それはそれは楽しい時間を過ごした。なによりもかけがえのない大切な時間を、大切な人達と一緒に、一秒一秒刻みながら。

 

「春」とは、出会いと別れの季節。

 

そう、別れがあれば、出会いもまた必然的に訪れるものである。だが、それらはまた次回からのお楽しみ。

 

 

******

 

 

全ての楽しい時間が終わった後の夜。緑坂冬真と緑坂真夏は界放市中心にあるターミナル。駅へと赴いていた。

 

もうすぐ電車が来るのだ。ヘラクレスを界放市と言う名の虫籠から抜け出すための。真夏はそれを一応送迎しにきたのだ。

 

ー電車の走行音が徐々に徐々に2人に近づいてき、その場所で停車した。車体の扉が開かれ、そこから続々と人が出入りする。

 

 

「ほな、もうお別れやな…………」

「元気でな、兄さん…………しっかりしいや」

 

 

別れ際にどこか2人の顔は寂しげな雰囲気を感じさせていた、

 

だが、そのうちの1人がこのムードをぶち壊した。

 

 

「あっら〜〜!!?まっさか真夏ちゃん心配してる?嬉しい!お兄ちゃん嬉しいわ〜〜」

「っ!?……うっさいわぁ!!ボケーー!!」

「ぐほっ!」

 

 

急に、そして無駄にテンションを上げてきたヘラクレスにブチ切れた真夏の強烈な右ストレートがその顔面にめり込んだ。

 

 

「……か、顔はあかんて……」

「あんたなぁ!こないだ女にちょっかいだしてコテンパンになったばっかりやないかぁ!!」

 

 

怒る真夏。ヘラクレスはめり込んだ顔を手探りで元に戻しながらそれに応答した。

 

 

「はは、……まぁだけどこんくらいで、人は変わっちゃいかへんよ………とことん貫かな!」

「?」

 

 

意味深にサムズアップをかましたヘラクレス。その言葉の奥底にある意味を、真夏はまだ理解できてはいなかった。

 

 

「いいかぁ!真夏ちゃんよ!覚えとけぇ、人間、無理に変わろうとする奴より、変わらない奴が一番強いんや!」

「は、はぁ」

 

 

あまりツッコム要素がない言葉のせいで逆に言葉が出づらくなる真夏。その答えを、本当の理由を聞こうとしたその直後だった。2人を引き離すかのように、アナウンスが流れた。

 

 

ー〈まもなく、列車が発車致します…………〉

 

 

チャイムと共に淡々と、それを述べて行く無機質な声。

 

それを聞くなり、ヘラクレスは颯爽と目の前の電車に乗った。

 

 

「ほんじゃあな!真夏ちゃん!…………楽しかったで」

「………………まぁ、私も少しはな…………」

 

 

ニッコリと笑顔を見せるヘラクレスに、真夏は少し照れ臭そうにそう呟いた。

 

そしてその言葉を最後に、電車の扉が閉まる。その機体は音を立てながら、線路上を真っ直ぐに走りだした。

 

真夏はゆっくり兄にその手を振った。彼の背中を押し出すかのように、「行ってきいや」と言わんばかりに。

 

あんなに嫌だった兄だが、なんだかんだで笑って終われた。

 

ヘラクレスはこの先間違いなく有名なカードバトラーとして名乗りをあげる事だろう。

 

 

******

 

 

時刻は同じく夜、界放市にある小さな焼肉屋で、どういうわけか、界放市のバトスピ学園の理事長が勢揃いしていた。ただしもちろん警察の牢屋にいるデスペラード校、紫治城門は抜きだ。今年で全員が61歳を迎えると言うのに、その言動や食べっぷりは信じられないくらい若々しかった。

 

 

「しっかしよ〜〜城門の奴、なにやらかしてんだかなぁーー………………来年の【界放リーグ】どうすんだよ」

 

 

肉を焼きながらそう呟いたのはジークフリード校理事長の龍皇竜ノ字。

 

 

「別に1年くらいやらなくても大丈夫だろ?…………あっ、その肉取ってくれ竜ノ字」

「てめ、……自分で取れよ」

 

 

そんな龍皇に対して応えたのが、キングタウロス校理事長の大公獅子。

 

龍皇はなんだかんだで大公の分の肉をトングで掴んで小皿に置いた。

 

そう、2人の言う通り、来年度の【界放リーグ】開催が危ない……………と言うよりかは、ほぼ来年はできないに等しかった。【界放リーグ】は6つの学園が揃って初めて行なえるからだ。

 

城門の起こした事件は警察側の意図もあって、幸いにも口外はされなかったものの、政府からの界放市への信頼は当然のようにガタ落ち、もはや今年以降の開催さえも危ないと言える。

 

政府から信頼されている新しい者が、新デスペラード校の理事長としてこの界放市に就任するのであれば、話は別だが、それだと他の5人がその存在に納得できるのか、と言う話になって来る。

 

どちらにせよその進行は厳重に厳重を重ねなければならず、少なくとも後1年はかかってしまう。だからその『繋ぎ』として何か別の行事が必要になるのだが、

 

 

「ふんっ、どうでも良い話だ、………竜ノ字、ついでにそこの肉を取れ」

「あぁ?なんだよ漣、お前【界放リーグ】無くなったら暇じゃねぇの?」

 

 

龍皇にまた肉取得を命じたのはオーディーン校理事長の九白漣。九白一族の現頭領でもある。

 

龍皇はめんどくさそうにしながらも、漣の小皿にも肉を置いた。

 

 

「もちろん、暇ではない、最強の一族を目指しているのだからな」

「………学園の話じゃねぇのかよ!!相変わらず頭ガッチガッチだなてめぇはよ!……んなもんどうだっていいだろ?」

「良くないし、ガッチガッチでもない……世界中に我ら九白一族の名を轟かすことこそ、先祖代々からの夢なのだからな」

「だからそういうところがガッチガッチだ!っつってんだ!」

 

 

【九白一族】の数は先祖代々から子孫繁栄を意識されているため、その総人数は学生の年齢のものでも約1000人はいる。その者達が強くなり、無敵の一族の旗を掲げることこそ、彼ら九白一族の大いなる夢なのだ。

 

 

「あいも変わらず馬鹿ばっかだねぇ、問題は【界放リーグ】の有る無しじゃないのよ…………竜ノ字、そこの肉よこしなさい」

「てめぇら俺をなんだと思ってんだ!!自分で食う分くらい自分で取れ!」

 

 

また龍皇に肉を要求する者が、彼女はミカファール校理事長の大天使舞空。龍皇は結局彼女の小皿にも肉を置いた。

 

彼女の言う通り、問題は城門が居なくなって、【界放リーグ】がなくなることではなくて、

 

 

「問題は今年度の【界放リーグ】の空いた穴に何を入れるかでしょ?」どこでもいいからさっさと何か行事入れないと……」

 

 

そうだ。【界放リーグ】が無くなる。と言うことは前に述べた通り、どこかに違う何かの行事を入れなければならないと言うことである。ここに来てようやくその発想が出てきた。

 

 

「まぁ、何か交流会的なのでもやればいいんじゃないですかね?をっほほほ、……あっ竜ノ字さん、私にもお肉とっ……………」

「とらねぇよ」

 

 

最後にそう言ったのはタイタス校理事長の英雄拳。茶髭を生やしたその暖かみのある外見から、他の理事長と比べても比較的温和な印象を受ける。

 

とうとうめんどくさくなった龍皇は肉を取るのをやめた。

 

来年の行事はいったいどうなっていくのやら。

 

 

 

 

 

 

 

 

バトルスピリッツ オーバーエヴォリューション

 

第1章ー『完』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

******

 

 

ここはどこかの場所、どこかの空間。そこには何があるのか、何が置かれているのか、誰が居たかも定かではない。唯一の情報があるとすれば、ここは界放市のどこかであると言うことだけ、

 

そこには確かに1人の男がいた。もう70はいっているだろう。その男の正体は【Dr.A】今回の紫治城門が起こした事件を裏で操っていた主犯格である。

 

 

「…………さてと、城門が終わってから、もうかれこれ4ヶ月、………『変化なし』……………っと…………ヒッヒッヒッ!」

 

 

Dr.Aは下顎に生えた長い長い白髪を回すように弄りながら、自身のノートにそう記載した。

 

それがどう言う意味なのかは、この世界中にほとんど知るものはいないであろう。

 

だが、椎名達はいずれ通らなくてはいけない。

 

この過酷な運命から逃げる事は絶対にできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー椎名達の物語は、

 

 

ーネクステージへ…………

 

 

 

 

 

 




〈次回予告〉

「椎名です!次回からいよいよ第2章突入!!私達も2年生だぁぁぁあ!!頑張るぞぉ!………あれ?…雅治、なんか身長伸びてない?私は?…………次回、『春より来たれ!黄金のパイルドラモン!』……今、バトスピが進化を超える……ッ!」











最後までお読みくださり、ありがとうございました!

なんとか第1章を終えることができました!正直こんな早いペースで終えるとは思ってはおらず、とても驚きです。

読者様の感想等が、私のモチベーションを保つきっかけとなってくれてました!本当にありがとうございました!作者としてこれほど嬉しい事はありません!

椎名と毒島のバトルの結果はご想像にお任せします。
次回からは怒涛のバトル回の予定です!

これからも何卒、私、バナナの木と、その作品をよろしくお願いいたします!


※最新話が何故か全く同じものが投稿されておりました。投稿後すぐに気づいて片方を削除しましたのでご安心ください。申し訳ございませんでした。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。