バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

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第40話「英次のサイバードラモン!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーこれはとある平日の朝のことだった。ここ、界放市のバトスピ学園の1つ、ジークフリード校の一室の教室にて、

 

 

「椎名…………龍皇理事長がお前をお呼びだぞ………」

「…………?理事長ですか?」

 

 

朝、日差しが本格的に入射して来たというのにもかかわらず、未だ鳩が飛び交っている、このホームルーム前の時間帯に、椎名にそう言ったのは、担任の空野晴太。

 

 

「呼び出して、………あんたまたなにやらかしたんやぁ!?」

「いやいや!!なんもしてないよ!バトル以外は!」

 

 

椎名の横にいた真夏がそう言った。まるで椎名が何か悪いことをしたかのような言い草である。椎名はそんなことをした覚えがないのか、わかりやすくそれを全否定した。本当に身に覚えがないのだ。

 

たしかに、一般的な生徒が理事長室まで呼び出されるというのは、いささか不安になるかもしれないし、それだけを聞くと悪いことをしたかのようにしか聞こえない。

 

ーだが、

 

 

「まぁ、行けばわかるから、行って来なさい」

「え〜〜!?」

 

 

椎名はとぼとぼとめんどくさそうに歩きながらその自分達の教室を出た。

 

 

******

 

 

「はぁ〜〜、めんどくさいなぁ〜〜…………ん?」

「………あ、椎名さん!おはようございます!」

「英次ぃ!おはよう!」

 

 

椎名がめんどくさそうに溜め息をする中、理事長室前の廊下ですれ違ったのは、椎名達の1つ下の後輩、英次。男子高校生の割にはかなり小柄な身長がある意味特徴的である。

 

 

「英次も呼ばれたの?」

「はい、そうなんです」

 

 

なにやら英次も龍皇理事長に呼び出されたらしい。

 

理由も定かではないため、2人は取り敢えず理事長室へ入ることにした。

 

ドアをノックして、返事が来てから、2人は理事長へと入室した。

 

 

「失礼しま〜〜す!!」

「……し、失礼します!」

「おぉ、よく来たな」

 

 

椎名は相変わらずうるさいくらいの元気な声で、英次は真面目さゆえか、良くも悪くも硬い声を出しながら入室した。それを嬉しそうに、この学園の理事長、龍皇竜ノ字は迎えた。

 

 

「あの〜〜理事長、私達、なんか悪いことでもしましたかね〜〜〜?」

 

 

椎名は早速、注意深く理事長に尋ねてみた。特になにも悪行などした覚えはないが、一応念のために、

 

 

「いやいや、何言ってんだ、お前ら、明日がなんの日かわかるだろ?」

「…………なんの日?」

 

 

龍皇理事長は違うと言わんばかりに言った。椎名は明日が何の日かわからないのか、首を傾ける。が、すかさず英次がその説明に入った。

 

 

「知ってます!明日は【界放リーグ】の代わり、【界放乱戦】ですよね!!!」

「【界放乱戦】?」

「2つ以上の学園で、1つの学園内で好き放題にバトルしていいんですよ!言わば、学園の交流会です!」

「そう、明日は我が校とオーディーン校が合同だ」

 

 

ー【界放乱戦】

 

理事長達が【界放リーグ】の代わりで決定した、おそらく今年のみの行事である。

 

それは、学園の卒業式の時のように、学園内ならどこでもバトルしても良いと言うシステムで、他校の学園とバトルを行うと言うもの、これを機に他校との親交、親睦を深めようと言う行事である。

 

これなら実際、【界放リーグ】以上に大勢の生徒が参加できるし、学生一人一人のスキルアップも図りやすいだろう。

 

 

「おぉ!そんな面白そうなイベントが!」

「し、知らなかったんですね………………」

 

 

椎名はなぜか知らなかった。この情報は掲示板でも、ホームルームでも話していたはずなのに。より人の話を聞いていないのが手に取るように伝わる。

 

 

「………でも、だからってなんで僕達が呼ばれないと行けないんですか?……乱戦の参加は生徒全員なはずなのに………」

 

 

たしかに、全ての生徒が参加できるこの行事において、誰かを個人個人で呼び出されることはおかしい。

 

龍皇はそれについて、説明していく。

 

 

「うむ、そこなんだが、君らと是非ともバトルをしたいと言う奴がいてな、今年プロに入ったオーディーン校のOBみたいだが………」

「僕達2人と…………ですか?」

「あぁ、タッグバトルでな」

「…………タッグ……っ!」

 

 

その新人プロバトラーが誰かはわからないが、その人物は椎名と英次にタッグを組ませ、バトルさせようとしていた。もちろんタッグと言うのだから、当日はその人物も、オーディーン校から1人抜擢してタッグを組むらしい。

 

 

「…………オーディーン校の……OB」

 

 

英次はそれらの単語を聞いて、顔を暗くしていた。何か理由や心当たりでもあるのだろうか。

 

 

「………タッグ!!初めてだ!……よし!燃えて来たぞぉ〜〜!」

 

 

そんな英次とは正反対に、椎名は燃えていた。果てしなく、どこまでも真っ直ぐに。「バトスピバカ」と言われたら間違いなく当てはまることだろう。

 

 

「よっし!!英次!今日の放課後にでも2人で練習しようか!!」

「え!?……僕とですか?」

「あったりまえじゃん!!」

「はっは!……まぁ、頑張れよ〜〜」

 

 

こうして、椎名と英次の2人は明日までタッグバトルのタッグを組むことになった。

 

 

******

 

 

そして、時間は少しだけ飛び上がり、放課後。スタジアムがどこもいっぱいだったため、椎名と英次は学園を飛び出し、街のカードショップのバトル場で練習しようとしていた。

 

ちなみにここは椎名と英次が初めて出会った場所でもある。

 

 

「よっし!やるぞぉ〜〜!」

「………はぁ、どうしてそんなにやる気何ですか?椎名さん」

「何でって言われてもなぁ〜〜なんかこう、燃えて来ない?………楽しみ〜〜って言うかさぁ!」

 

 

語彙力は皆無だが、椎名はその1つのバトル場で大きくやる気を見せていた。一方で、英次は未だやる気を出さないでいる。いや、出せない、と言った方が正しいか、

 

【オーディーン校のOB】、この単語がどうも自分の頭を過っていたのだ。

 

 

「まぁとにかくさ!はやくBパッド展開しなよ!」

「…………わかりましたよ…………」

 

 

英次は椎名に言われるがままに自身のBパッドを展開した。本当は憧れの椎名とバトルできて嬉しいはずなのに、どうしてもその顔は浮かばれなかった。

 

気になるのだ。オーディーン校のOBと言うのが誰なのか。

 

そんなこんなでも、2人はバトルを始めることにした。やはり、やる前からお互いの力量をしっておかねばならないからだ。

 

 

「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

バトルが始まった。

 

ー先行は英次だ。

 

 

[ターン01]英次

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「……メインステップ………じゃあ行きますよ……モノドラモンをLV1で召喚!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

「おっ!成長期スピリットか!!」

 

 

英次が召喚したのは薄い紫色をした小竜型のスピリット、白属性と青属性のモノドラモンだ。

 

 

「…………このターンはエンドにします」

モノドラモンLV1(1)BP3000(回復)

 

バースト無

 

 

英次はそれだけを終え、そのターンを終了させた。次は椎名のターンだ。

 

 

[ターン02]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップっっ!!……ワームモンを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名が早速召喚したのは芋虫型の成長期スピリット、ワームモン。

 

 

「よし!アタックステップだぁ!ワームモン!」

 

 

ワームモンを急かすようにアタックステップへと移行した椎名。ワームモンが。身体を丸めてゴムボールのように地を跳ねる。

 

 

「来た…………っ!!…………BPが同じモノドラモンじゃブロックはできない…………なら、ライフで……受けますっ!」

ライフ5⇨4

 

 

ゴムボールのように跳ねてくるワームモンの攻撃を、英次はライフで受ける。そのライフは1つだけ消し飛んだ。

 

 

「ターンエンドっ!!」

ワームモンLV1(1)BP3000(疲労)

 

バースト無

 

 

やれることを全て終えた椎名は、そのターンを英次に渡す。

 

 

「………ぼ、僕のターンだ……」

 

 

[ターン03]英次

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨5

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップっ!……モノドラモンのLVを2に!」

リザーブ5⇨2

モノドラモン(1⇨4)LV1⇨2

 

 

コアが増え、力が増大したモノドラモンは一層わかりやすく咆哮した。これにより、モノドラモンはさらなる能力を得た。

 

それは、成長期スピリットにはそぐわないものであって、

 

英次はそれを使用するべくアタックステップに入る。

 

 

「アタックステップ!モノドラモンでアタック!………………さらにそのアタック時効果…………【超進化:白/青】!!………発揮っ!」

「っ!?【超進化】!?……成長期なのに!?」

 

 

椎名はその言葉に耳を疑った。だが、英次はたしかに【超進化】と発言した。本来なら、成長期スピリットではなく、成熟期スピリットが持っているそれを、あのモノドラモンは発揮できるのだ。

 

モノドラモンに0と1のデジタルコードが巻き付けられていく。それは卵状となり、膨らんで行き、やがて破裂。中からは新たなるデジタルスピリットが現れる。

 

 

「…………こ、これが………僕のエース……サイバードラモンを召喚!」

サイバードラモンLV2(3)BP12000

 

「………おぉっ!!…………かぁっこ良い!!」

 

 

現れたのは白と青属性のサイボーグのようなドラゴン。全体的に鋭利で、スマートだ。椎名のパイルドラモンと体格は近いかもしれない。

 

一目見ればわかる。あのスピリットは間違いなく【強い】。底が知れないくらいに。だが、あのスピリットはとんでもない暴れ馬、よろし、暴れ竜であった。

 

 

「………サイバードラモンはアタックステップ中………必ず可能な限りアタック、ブロックしなければならない………」

「……え!?必ず!?…………わわっ?……アタック宣言もしてないのに、こっちに向かってくるぅ!?!」

 

 

英次にそれを止める選択肢はない。サイバードラモンは怒かれ狂うように地を走る。目指すは椎名のライフだ。

 

 

「まぁ、どっちでもいいや!くるなら来い!ライフだ!」

ライフ5⇨4

 

 

サイバードラモンの強烈な鉤爪の一撃が、椎名のライフを1つ引き裂いた。

 

 

「よ、よし!椎名さんのライフ破壊した!」

 

 

調子づいて来たか、喜び、歓喜する英次。だが、

 

 

「………いいねいいねぇ!!?………もっと楽しもうよ!」

「……あ、あれ?……本気になってる?」

 

 

寧ろそのサイバードラモンの強烈なアタックは、元々あった椎名のやる気をさらに強く着火させてしまった。

 

椎名は目の前の強敵に対し、いつも以上に熱くその魂を燃えたぎらせていた。

 

 

「と、とにかく………アタックステップは終わりです………そしてこの時、サイバードラモンの効果で自身を回復させ、ターンエンドです」

サイバードラモンLV2(3)BP12000(疲労⇨回復)

 

バースト無

 

 

「………回復した………っ!!」

 

 

膝をつき、落ち着いたかと思われたサイバードラモン。だが、それも束の間。すぐさまそこから立ち上がって見せた。そして、まだ暴れ足りないとでも言ってるかのように大きく、それでいて気高く咆哮を上げた。

 

 

[ターン04]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨6

トラッシュ3⇨0

ワームモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!!……ブイモンを召喚!そして召喚時!」

手札5⇨4

リザーブ6⇨3

トラッシュ0⇨2

オープンカード↓

【ライドラモン】◯

【グリードサンダー】×

 

 

「っ!?……出た!ブイモン!」

 

 

椎名が新たに召喚したのはブイモン。いつものように召喚時効果を使用し、成功、椎名はこの効果でライドラモンを手札へと加えた。

 

英次はそのブイモンを見た瞬間に1年前の記憶がフラッシュバックして蘇った。あの日、椎名が自分をかっこよく助けてくれたことを………

 

 

「さらにワームモンのLVを2に上げ、アタックステップ!ワームモンの【進化:緑】を発揮!スティングモンに進化!」

手札4⇨5

リザーブ3⇨1

ワームモン(1⇨3)LV1⇨2

スティングモンLV2(3)BP8000

 

 

ワームモンは0と1のデジタルコードを巻かれ、進化する。新たに現れたのはスマートで勇猛なる昆虫戦士、スティングモンだ。

 

 

「スティングモンの召喚時効果でコアを1つ増やす!」

スティングモン(3⇨4)

 

 

スティングモンは登場するなり、コアを増やした。そしてもちろんそれだけでは終わらない。次はアタックだ。

 

 

「アタックステップはもちろん継続!……スティングモンでアタック!!………さらに、その効果……【超進化:緑】を発揮!!」

スティングモン(4⇨5)LV2⇨3

 

「っ!!?………【超進化】!!………ってことは!?」

 

「そう、私はこの効果でパイルドラモンを召喚するっっ!!!!」

パイルドラモンLV3(5)BP13000

 

 

スティングモンにも0と1のデジタルコードが巻き付けられる。そしてそこから新たに現れるのは、椎名のエース。もはや絶対的に信頼する無敵のスピリット、パイルドラモンだ。

 

 

「パイルドラモンの召喚時効果!!………コスト7以下のスピリット1体を破壊する!!………対象はもちろんサイバードラモン!!」

「…………っ!?」

「………デスペラードプラスター!!!!!」

 

 

パイルドラモンは登場するなり、その腰に備え付けられた2つの機関銃を持ち上げ、サイバードラモンに向けてそれを連射。

 

爆煙の狼煙が上がる中、サイバードラモンは砕け散った。

 

ーかに思えたが、

 

 

「……………ん?……あれ?」

「…………すみません、椎名さん…………サイバードラモンは【重装甲:紫/緑/黄】を持っているので、その効果は受けません…………っ!!!」

 

 

パイルドラモンのデスペラードプラスターを食らっても尚、サイバードラモンは立ち上がっていた。というか、本当に全弾を受けていたのかと疑う程ダメージがなかった。

 

パイルドラモンは青と緑のスピリット。【装甲】系の効果は対象の色がどれか1つでも含まれていればその効果をシャットアウトできる。そのため、緑の装甲を持つサイバードラモンはパイルドラモンのデスペラードプラスターを受けても平気だったのだ。

 

 

「なるほどね〜〜今のは流石に面を食らったよ………………」

(…………よし、椎名さんは次、必ずパイルドラモンでアタックしてくるに違いない…………その時は手札のマジックでサイバードラモンのBPを上げれば…………)

 

 

ー返り討ちにできる。英次はそう考えていた。サイバードラモンとパイルドラモンのBP差は僅か1000、パイルドラモンが上回っている。たしかに軽いBPアップ系マジックでも超えることができるかもしれない。

 

だが、【芽座椎名】という、彼の前に立ちはだかる大きな大きな壁は、思っていた以上にそう易々と突破できるものではなくて、

 

 

「……………ブイモンでアタック!!」

「…………………………え?」

 

 

椎名はなぜか、ブイモンからアタックをした。目の前にはパイルドラモンしか敵わないであろう、完全体のデジタルスピリット、サイバードラモンがいるのにもかかわらず、だ。

 

だが、それは椎名の手札を理解していれば、当然わかる理由であって、

 

 

「………さぁ、サイバードラモンにはブロックしてもらうよ!………」

「っ!?………そ、そうだった………」

 

 

サイバードラモンは再び暴走する。走り行くブイモンをその鉤爪で引き裂こうと大きくその腕を振りかぶる。

 

ーが、ここで、このタイミングで、椎名は手札のカード1枚を引き抜いた。

 

 

「フラッシュ!ライドラモンの【アーマー進化】発揮!対象はブイモン!………」

リザーブ1⇨0

トラッシュ2⇨3

 

「え?………えぇ!?!…ここで【アーマー進化】ですかぁ!?」

 

 

ブイモンの頭上に黒くて独特な形をした卵が投下される。ブイモンはサイバードラモンの上から振り下ろされる鉤爪の攻撃を間一髪で避けながらも空中へ飛び上がり、それと衝突し、混ざり合う。

 

そして新たに現れるのは黒き獣型のアーマー体スピリット、ライドラモンだ。

 

 

「青き稲妻、ライドラモンを召喚!さらに召喚時効果でコアを増やす!」

パイルドラモン(5⇨3)LV3⇨2

ライドラモンLV2(3)BP7000

トラッシュ3⇨5

 

 

ライドラモンは登場するなり、気高く吠え上げると、椎名のトラッシュへと新たにコアを増やした。

 

 

「……………そ、そんな……………これじゃ、サイバードラモンはただ単に疲労しただけ…………!?」

 

 

その通り、ブロックのタイミングを選べないのが仇となった。BPアップ系マジックも、疲労していては元も子もない。

 

ー終わりだ。後はパイルドラモンとライドラモンの連携でそのライフを擦り下ろされるだけ、

 

 

「パイルドラモンでアタック!さらに効果で回復!……エレメンタルチャージ!!!」

パイルドラモン(3⇨5)LV2⇨3

 

 

走り出すパイルドラモン。さらにその身体にエネルギーを蓄え、それを一瞬だけ発光させた。

 

それはコアブースト&回復した証。パイルドラモンはこれにより2度目の攻撃の権限を得た。

 

 

「…………な、何もできない…………ら、ライフで………」

「この時!ライドラモンの効果で破壊するライフを1つ上げる!」

「…………っ!?」

 

 

つまりは2つだ。今のパイルドラモンは一度のアタックで2つのライフを破壊できる。

 

ライドラモンが咆哮すると、青い稲妻が落雷し、それがパイルドラモンに落ちる。パイルドラモンはダメージを受けるどころか、それを吸収し、より一層パワーアップした。

 

 

「いけぇ!ライトニング・エスグリーマ!!!」

 

「ぐっ!!?…………うわぁぁ!!」

ライフ4⇨2

 

 

パイルドラモンの雷を纏わせた拳が、英次のライフを一気に2つ破壊した。

 

ーそしてこれが、

 

 

「ラストアタックだぁ!パイルドラモン!!もう1回!!!」

 

「…………そ、そんな、たったの4ターンで……………う、うわぁぁ!!」

ライフ2⇨0

 

 

パイルドラモンの拳が、再び英次のライフを2つ同時に消しとばした。

 

結果はまるで容赦なく、大人気なく、力を緩ませずにいつも通りの速攻で挑んだ椎名の勝利となる。

 

 

「よっし!!私の勝ちぃ!!」

 

 

すっかりこれが特訓だと言うことを忘れたのか、椎名はその場でピースサインを挙げて、ただただ勝利を噛み締め、喜んでいた。その姿に、パイルドラモンもライドラモンも呆れながらデジタル粒子と化し、ゆっくりと消滅していった。

 

 

「いやぁ楽しかった〜〜!!またやろうね!!」

「はぁ………疲れましたよ…………強すぎです椎名さん……」

「特訓なんだしぃ!もう1回やっとく?」

「えぇ!?……いや、そうですね…………」

 

 

あんまり乗り気じゃない英次。タッグバトルのための特訓だと言うことを椎名はちゃっかり忘れてはいなかったか、そのやる気とモチベーションが英次とは逆にうなぎ登りであった。

 

ーそんな時だった。誰かが椎名達のいる店内のバトル場広場に入ってくる。

 

 

「………相変わらずだなぁ?…………【不純物】………!!」

「…………え?」

 

 

その人物から突然放たれた第一声。その声はどこまでも人を貶すような、馬鹿にしているような、そんな声色。

 

英次は思わずその声のする方を振り向いた。そこには彼がよく知る人物が、いや、英次だけでない。椎名も会ったことがある人物であって、

 

 

「…………そして久しぶりだなぁ?…………かわい子ちゃん!!」

「…………………………………………………………………………………………………誰?」

「おぉい!!!?……なんだと!?なんで忘れてやがる??」

 

 

椎名はその人物を見るなり、少し考え、首を傾けた。

 

椎名は人の顔や名前を覚えるのが苦手だ。自分にとって強く、太く印象に残らないとなかなかそれを覚えようとしない。だから今回のこの人物を忘れた。【一度バトル】をしたことがあるのに。

 

英次は震える唇で、その人物の名を上げた。

 

 

「い、岩壁……義兄さん…………!?」

「ふっ!!流石にお前は覚えてたか!…………そりゃそうだよなぁ!?あんなにたっぷりと痛みつけられればなぁ!?」

 

 

【岩壁】。その名前を覚えている者はいったい何人いることだろうか。

 

 

「いわかべ?…………イワカベ?………………岩壁!!!!!!!あなたはあの時の!!」

「ふっふっふ…………そうさ、やっと思い出してくれたなぁ?かわい子ちゃん!」

「【界放リーグ】で私に負けた人だね!」

「…………ぐっ!?痛いところを……」

 

 

そう、椎名達が初めて参戦した年の【界放リーグ】で、椎名が初戦で対戦した相手。その名も【九白岩壁】

 

白の名門一族、九白一族の末裔で、去年卒業し、今はプロのバトラーとなっている。

 

 

「それにしても久しぶりだなぁ!?英次!………3ヶ月ぶりくらいかぁ?」

「そ、そうですね…………」

「相変わらずまだその青の入ったゴミ使ってんのかよぉ!!!笑えるぜぇ!!【九白一族】が聞いて呆れるよなぁ!?」

「え?…………【九白】?……誰が?………」

「なんだ、知らなかったのかよ、かわい子ちゃん!!!………今お前の目の前にいるそいつは【九白】の出来損ないい!!オーディーン校にも入れず、ジークフリード校と言う名のゴミ捨て場に捨て去られた哀れな【不純物】よぉ!!!」

 

 

椎名はようやく少しだけ話の内容が理解できた気がした。英次は【九白一族】の末裔で、落ちこぼれだった。それでオーディーン校には入れず、このジークフリード校へと来たのだと言うことに。

 

実際、オーディーン校の落ちこぼれがジークフリード校に行くのはよく聞く話だ。なにせ、ジークフリード校のある区域は、オーディーン校側と全くの正反対で、かつ、一番距離が遠い。落ちこぼれ達は極力一族の者達と顔を合わせたくないがために、一番離れたジークフリード校へと赴くのだ。

 

そんなこともあってか、ジークフリード校は別名、【九白の墓場】とも呼ばれていた。

 

そこまでは理解できた。だが、まだ何か引っかかるものがある。椎名は素直にその疑問を岩壁にぶつけた。

 

 

「てか………さっきから英次に言ってる【不純物】って何さ…………!!」

「はぁん?……そんなの当たり前だろ?お前もさっきバトルしてわかっただろう?…………そいつが渡されたデジタルスピリットは【青が混じっている】からだよ!!!」

「…………?」

「いいかぁ!?!ピュアなかわい子ちゃんに教えてやるよぉ!!【九白一族】において、白属性がなによりも最高で、最強なんだよぉ!!他の色を入れるなんてデッキの枠がもったいねぇ!!!」

「…………………」

「そいつのスピリット見ただろう!?汚ったねぇ!!青なんか混じってんだぜぇ!!!」

 

 

【九白一族】の者達はそれぞれがあった成長期スピリットを先ず現頭領から託される。そしてそれらを使い、強くなっていき、力が認められればランクを上げてもらい、さらなる進化形態を獲得できるようになっているシステムだ。

 

ただし、その色は全て白。数ある白の成長期スピリットと、子供達の中、英次だけはなぜかモノドラモンという青属性の混じったものを与えられていた。

 

英次の気弱さや内向的な面。バトルの腕の未熟さ、弱さから、他の九白一族の面々から、英次のことを【不純物】と扱うものは多くいた。

 

そしてなぜだろうか、今の頭領、【九白漣】には好かれていたのか、英次は最近になって、その実力がないにもかかわらず、ランク3へと昇進し、サイバードラモンという新たなカードを得た。

 

それが気に障ったのか、他の同じ一族の者達は英次のことを余計に蔑み、馬鹿にするようになっていった。英次がジークフリード校に来た本当の理由もそこにある。

 

 

「明日の【界放乱戦】での【タッグバトル】……………楽しみにしてるぜぇ!!」

「………や、やっぱり、…………岩壁義兄さんが…………!?!」

 

 

龍皇理事長が言っていた【オーディーン校のOB】とは岩壁のことであった。それは彼が入念に仕込んだ計画であった。

 

岩壁の目的は【椎名への復讐】だった。

 

【界放リーグ】の1回戦で敗北してしまったことから、彼は中の下あたりの事務所しか入ることができなかった。岩壁はそんな椎名を逆恨みし、この計画を練った。それが一番手っ取り早かったのが、【タッグバトル】。

 

英次に椎名の足を引っ張らせ、意地汚く、椎名を大勢の人達の前で無様に敗北させる気でいた。

 

 

「じゃあな…………精々上手く足を引っ張れよ………【不純物】」

「……………」

 

 

英次は岩壁に怯えてしまって言葉も出ない。

 

ー怖い、

 

ー恐い、

 

そんな感情だけが彼の頭をよぎっていく。昔から散々彼にはいじめられていたからか、そんな記憶が蘇ってくるのだ。

 

ーだが、密かに怒りを募らせていた1人の少女が、その帰る足を止めさせた。たった一言ですごんでしまうような鋭い声で………

 

 

「………………おい………待てよ…」

「っっっっっ!?!」

「好き勝手言うなよ………………2人とバトルした私にはわかるよ………英次はあなたより強い…………っ!!」

「…っ!?……ぶわっはっはっは!?!!」

 

 

椎名の言葉を聞いて、岩壁は思わず大きな声で笑い上げた。

 

 

「何言ってんだ!?お前!?………そんな【不純物】が俺より強いわけないだろぉ!?!そいつは落ちこぼれ、俺は九白のエリートだぞぉ!!!」

「見てろよっ!……明日のバトルで必ずあなたを黙らせてやるっ!!」

 

 

本気になった椎名は止まらない。大胆にも岩壁の目の前で堂々と勝利宣言をする。

 

 

「おーおー、そうかよ、楽しみにしてるぜぇ、…………それじゃあ俺はこの辺で」

 

 

そう言いつつ、大きな声で高笑いしながら、岩壁はそのカードショップを後にした。

 

 

「ふぅーーープロって言うからどんな人かと思えば、あんな人か、…………………よぉし!!英次!明日は何が何でも絶対勝つぞぉお!!特訓再開だぁぁぁあ!!!!!!………………………………って、あれ?」

 

 

椎名は英次のいる方へ振り向くが、その英次の姿はどこにもない。

 

 

「…………え?………英次?…………いや、まさかとは思うけど…………」

 

 

ー逃げた。

 

逃げ出していた。裏口の方から、勝手に、何処へと。

 

 

******

 

 

一方で、その英次はと言うと、1人河川敷で黄昏ていた。河川敷は広く。川のすぐ横でサッカーか、野球でも出来そうなスペースもある。英次はそのベンチに腰を下ろしていた。

 

 

「ど、どうしよう………本当に岩壁義兄さんだった……明日バトルしても椎名さんに恥をかかせてしまうだけだ…………」

 

 

英次はそう考えていた。椎名が大勢の人達の前で無様に敗北したくらいでは先ず恥はかかないだろうが、それでも岩壁の思惑を阻止するためには自分はバトルせずに逃げるのが最善であると判断したのだ。

 

ーそんな時だった。英次の後ろから声をかけて来た人物がいた。

 

 

「…………よぉ」

「…………え?……あなたは………司さん!?」

 

 

話しかけて来たのは赤羽司だ。椎名のお陰で、この時点で2人は割と知り合いではあった。

 

が、まさかあの仏頂面な司が英次に声をかけてくれるなど、予想もできなかった。

 

司も英次の横にあるベンチで腰を下ろした。

 

 

「……なんか浮かばない顔だな………」

「…………はい、ちょっと…………」

「ふんっ……どうせ、一族絡みだろ?」

「………えぇ!?どうしてそれを………」

「やっぱな………」

 

 

今日の椎名の話を聞いていた司は、なんとなく今回の件の真相が既に浮かんでいた。

 

先ず、オーディーン校の卒業生でそんなことできるのは九白一族の者以外にはあまり考えられない。去年のトップは【五の守護神】であるが、あまり有名すぎると忙しくて、学園のこんなイベントに足を運ばないだろう。

 

つまり、やって来るプロバトラーは大した実力もないボンクラ。

 

そしてなぜタッグで椎名と英次を指名して来たか、それも単純。椎名に何かしら恨みを持つ人。【界放リーグ】で椎名に負けたオーディーン校の生徒、【九白岩壁】という人物像が、司の頭に浮かんだのだ。

 

 

******

 

 

「なるほど、【不純物】ねーーー………【九白】にそんな奴がいるのは聞いたたが、まさかお前とはな」

「………そうなんです」

 

 

英次はこの司に全てを話た。何もかも、今日のさっきまで、何があったのかを………

 

 

「司さんは……」

「あぁん?」

「司さんはなんで赤の一族なのに、黄色を混ぜてるんですか?」

 

 

何気に今までずっと思っていた疑問であった。

 

英次はずっと司のことを尊敬していた。自分と同じ一族なのに、色が2つあるから、それでいて尚強いことに、

 

 

「あぁ?………別に俺らは最初に教え込まれるのが赤ってだけで、バトルのルールさえ理解できたら、後は何色でも使っていいからなぁ、赤抜いてもいいし、」

 

 

縛りが強い九白一族と違って、赤羽一族は何もかもが自由奔放。その者がその気ならば、別に赤属性など捨てても良かった。そのため、司もすんなりと黄色を混ぜられたのだ。

 

 

「まぁ、俺が黄色を混ぜたのは雅治の野郎の影響だな………」

「雅治さんですか…………」

「あぁ、話せば長くなるし、めんどくさいから言わないけど…………」

 

 

司がデッキに黄色を混ぜたのは雅治の影響もあった。司は話せば長くなる。と言ったが、実際はそんなに長くはない。

 

が、その話はまた別の機会に…………

 

 

「…………で、お前は明日めざしの足を引っ張んのが怖いと…………」

「…………はい」

「馬鹿野郎……めざしがんなこと気にするかよ……そもそもあいつはお前1人なんかで引っ張れる相手じゃねぇ………」

「…………っ!!」

 

 

たしかにそれもそうだ。椎名だったら強く逞しく、英次を逆に違う意味で引っ張るだろう。

 

 

「後………不純物ってやつ?………別に弱いって意味じゃないだろ?………他の同じ一族の奴らにはねぇ、お前の戦い方ってもんができんじゃねぇの?」

「……………っっ!?」

「まぁ、俺から言えることなんざ………そんなもんだ、じゃあな」

 

 

司はそれだけ言うと、ベンチから起き上がり、その河川敷を去っていく。英次はただただその逞しい背中を眺めることしかできなかった。が、同時に何かに気づいた気がした。何か、いいものをもらえたのではないかと思ってきた。

 

 

******

 

 

そして少し時は経ち、翌日となる。今日は【界放乱戦】

 

ジークフリード校の校舎内で、オーディーン校とジークフリード校の生徒があっちこっちで激しいバトルを繰り広げている。その様子は卒業式の日に近いだろう。

 

そんな中、この第5スタジアムでは、タッグバトルをしまいと、既に3人のバトラーが集まっていた。芽座椎名と、九白岩壁と、後もう1人は、

 

 

「ねぇ、岩壁……こんな面倒なことに付き合ってあげてるんだから、後で必ず何か奢ってよねーーー」

「うっせぇ!勝ったらやるっつてんだろ?」

 

 

岩壁の横にいたのは九白一族の少女、2年の【九白 小波(くしろ こなみ)】今年の九白一族では間違いなく最高傑作であると言われている人物だ。既に岩壁よりも強いと言う噂もある。去年の【界放リーグ】にも興味がなく、不参加だったため、周りからは密かに影の実力者と評されていた。

 

 

「………英次来ないな…………」

「はっは!!あの不純物、逃げ出しやがったなぁ!?」

「いや!絶対来る!英次がこんなとこで逃げるもんか!」

 

 

なぜ英次が逃げてないなど、何も保証はないのに椎名はそこまで強く言い切ることができるのか、

 

だが、今回ばかりは的中した。ここまで勢いよく走って来る音が聞こえてくる。それはどんどんどんどん近づいて来ていて、

 

 

「っっ!!!…………おまたせしましたぁぁ!!!」

 

 

英次が勢いよくスタジアムのバトル場まで走りこんで来た。

 

 

「よっし!」

「ふっふ、そのまま逃げてれば良かったのにな………わざわざ恥かきに来やがって………っ!!」

 

 

ガッツポーズを上げる椎名。逆に岩壁は不敵な笑みを浮かべ始める。そんな4人のバトルは次回だ。

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉

司「今回のカードは【サイバードラモン】」

司「サイバードラモンは白と青の完全体、効果は強力だが、その分のデメリットも大きい、バトラーの腕が試される1枚だ」

******

〈次回予告!!〉

椎名「よし来た来た!!………英次!一緒にあんな奴ぶっ飛ばしちゃおう!……なぁに!!少しくらい足引っ張っても問題ないって!私がなんとかするからさ!!……次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ、「正義の名の下に……!!」……今、バトスピが進化を超える!!」


******


九白岩壁は【第17話】で登場してます!よければ参考程度に、
最後までお読みくださり、ありがとうございました!
今年の投稿は今回で以上とします!
また来年度からもよろしくお願い致します!
それでは皆様、良いお年を!!
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