バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

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※タッグルールのルールは比較的簡単なもので、小説内の説明でもわかりやすいと思いますが、一応詳しいルール説明は【オバエヴォ設定】にて、今日中に更新します。





第41話「正義の名の下に……!!」

 

 

 

 

 

 

タッグルール。この世界に存在するバトスピのルールの1つ。タッグを組んだ2人同士でのバトルであり、多対1とは違い、交互にターンを進めていくのが特徴的。

 

ライフはタッグ共通で5。初期リザーブは4人それぞれが4つずつ。5つのライフが失われれば、当然そのチームの負けとなる。

 

バーストのセットはタッグで1つまで、

 

アタック、ブロックの宣言は、それを召喚したプレイヤーしか行えない。

 

また、多対1と違い、効果が2つ分拡大することはなく、2人のうち、どちらかを1人選択して効果を発揮させることになる。(全てなどの記述がある場合は、全ての相手プレイヤーに影響を及ぼす。)

 

 

 

******

 

 

 

「よぉ、漣…………」

「……竜ノ字か……!」

「なぁにが竜ノ字か、だ。勝手に人の学園に上がり込みやがって」

「別に構わんことだろう、今日は俺とお前の学園の乱戦なのだから……!」

 

 

ここ、ジークフリード校の第3スタジアムの観客席の奥で、4人のタッグを見届けようと足を運んで居たのは、オーディーン校の理事長にして、九白一族の現頭領、九白漣。

 

 

「にしてもよーーー、お前のとこの出来損ないをうちに送りつけるのいいかげんやめてくんない?……」

「別に誰もお前のとこに行けとは言ってはいない。本人達が勝手にお前のところに行ってるだけだ」

 

 

九白一族は基本的にオーディーン校に入学することになるのだが、それはランク2以上のものだけ、それより下のものは違う学園に入学するしかない。

 

ジークフリード校に九白の落ちこぼれが集まる理由としては、オーディーン校から1番遠い場所に位置するからである。単純に見たくないのだ。思い出してしまうから、落ちこぼれだった日のことが、だから1番遠い場所で暮らし、一番遠い場所に通うのだ。

 

 

 

「英次!よかったぁ!………来てくれたんだね!」

「はい!椎名さんの足を引っ張らないよう、精一杯頑張ります!」

「あ〜〜!!来た来た、英次ぃぃいい!!久しぶり〜〜!」

「っ!?……小波義姉さん………!?」

 

 

遅れて登場して来た英次を見るなり、【九白一族】の天才、九白小波は元気よく彼に手を振った。

 

彼女は取り立て、英次を虐めたりはしていない。単純に【小さいもの】が好きなだけ、ただしその執着心は異常。ミステリアスな雰囲気もあってか、英次もそんな彼女のことは嫌いではないが少なからず苦手意識があった。

 

 

「ふふ、よぉっ!【不純物】!……わざわざ恥をかきに来たか!」

「岩壁義兄さん………僕は、いや、僕達は負けません!……」

「あぁ!?誰にもの言ってやがる……【不純物】ごときが………」

 

 

いつもより強気な英次に言われ、若干腹を立たせる岩壁。屈辱なのだろう。そのことを言われる時点で、何せ彼にとって英次はただのゴミとしか思われていないのだから。

 

今の英次は少なからず勢いがついている。昨日、司に背中を押されたのが理由。司本人はそんな気は全くないが、

 

そんな中でも、4人はBパッドを同時に展開、バトルの準備をする。

 

そしてタッグバトルが始まる。

 

 

「「「「ゲートオープン、界放!!!!」」」」

 

ー先行は岩壁。

 

 

[ターン01]岩壁

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップっ!……俺はネクサスカード、No.18グッドラックウェルを配置し、ターンエンドだ!」

手札5⇨2

リザーブ4⇨1

トラッシュ0⇨3

 

No.18グッドラックウェルLV1

 

バースト無

 

 

岩壁が早速背後に配置したのは、まるで水汲みするための井戸。謎の機械がそれを行なっている。

 

タッグバトルのルールは、多対1と違って互いに交互にターンを進行して行く。次は椎名のターンだ。

 

 

[ターン02]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ!……ブイモンを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨3

 

「……あら、小ちゃくて可愛いじゃない!!」

 

「でしょでしょ!!……そして召喚時効果!」

オープンカード↓

【ズバモン】×

【グリードサンダー】×

 

 

とにかく小さくて可愛いものが大好きな小波が椎名のブイモンに反応する。

 

椎名は召喚時効果も使用するが、今回は失敗。2枚ともトラッシュへと破棄された。

 

 

「……ターンエンド!」

ブイモンLV1(1)BP2000(回復)

 

バースト無

 

 

椎名はそのターンを終える。次は、相手側、九白小波の番だ。

 

 

[ターン03]小波

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ………………じゃあ、私はいつも通りこの子を……………テリアモンをLV2で召喚!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

小波が召喚したのは小さくて、耳の長い白のデジタルスピリット、テリアモン。そのぬいぐるみのような愛くるしさは九白でなくともそこそこ名が知れている。

 

 

「おぉ!テリアモン!そっちも可愛いねぇ!」

「あら!?わかる?……特にこの瞳が良いよね〜〜!」

「わかる〜〜!!」

 

 

テリアモンが召喚されるなり、急に何故か意気投合して喋り出す椎名と小波。常人離れしたバトルセンスを持つ2人だが、ここらへんは流石に女子と言ったところか、

 

 

「………じゃ、ターンエンドで」

テリアモンLV2(2)BP5000(回復)

 

バースト無

 

 

小波はそのまま何もせずにターンを終えた。

 

ーが、

 

 

「おいいいいい!!!待て待て待て!!」

「何?……うっさいな」

「何じゃねぇよ!てめ、テリアモンの召喚時使えよ!」

「めんどくさい」

「めんどくさい!?……そんな理由!?…というか理由になってねぇよ、馬鹿かテメェ」

 

 

口論し出す九白タッグ。テリアモンには他の成長期スピリット同様、召喚時効果で同系統のデジタルスピリットのサーチが行えるのだが、小波は気まぐれな性格ゆえか、めんどくさいと言う普通なら訳わからない理由で、それを拒んだ。

 

 

「おぉ、……なんか天然だね、あの娘」

「…………椎名さんが言います??」

 

 

そんなこんなで、次は英次のターンだ。

 

 

[ターン04]英次

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、ネクサスカード、甲竜の狩り場を配置して………ターンエンドです」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨4

 

甲竜の狩り場LV1

 

バースト無

 

 

英次が背後に配置したのは様々な建物が崩れ去った跡地。紛争でもあったのかと勘ぐってしまうほどにそれらは破壊されていた。

 

 

「………ふん、【不純物】にはお似合いなネクサスだなぁ!」

 

 

皮肉を込めたセリフを放つ岩壁。次は一周回って彼のターンだ。ここでようやくアタックステップも解禁される。

 

 

[ターン05]岩壁

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨5

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップっ!……俺はグッドラックウェルをLV2に上げる」

リザーブ5s⇨4

No.18グッドラックウェル(0⇨1s)LV1⇨2

 

 

グッドラックウェルはそのLVを上げる。その上に置かれたコアはソウルコアである。これは後、直ぐに使用するグッドラックウェルの効果のためであって、

 

 

「さらにバーストをセット!……この瞬間、グッドラックウェルの効果で、コアを増やす!」

手札5⇨4

No.18グッドラックウェル(1s⇨2s)

 

 

岩壁の場にバーストが伏せられると同時に、動き出すグッドラックウェルの機械。水を汲むかと思いきや、掬ってきたのは水などではなく、鉱石。それは光り出すとともに岩壁の新たなコアとなった。

 

 

「さらにそのコアを使い、白の成熟期スピリット、リボルモンをLV2で召喚!」

手札4⇨3

リザーブ4⇨0

No.18グッドラックウェル(2⇨1)

 

 

さらに岩壁はスピリットを呼び出す。現れたのはまるで西部劇に出てくるような風貌で、全てが銃のようなスピリット、リボルモン。

 

 

「さらにアタックステップだぁ!おらぁ!言ってこい、リボルモン!」

 

「よし、ここはライフだ!」

ライフ5⇨4

 

 

リボルモンの両手から放たれた発砲が、椎名と英次、2人のライフを破壊する。このバトルにおいて、2人のライフは共通。当たり前だが、このライフがゼロになれば、2人とも敗北する。

 

 

「はっはっは!他愛もねぇな、ターンエンドだ!」

リボルモンLV2(2)BP6000(疲労)

 

No.18グッドラックウェルLV2(1s)

 

バースト有

 

 

なぜかもう既に勝ったかのような雰囲気を醸し出している岩壁。当然バトルはまだまだこれからだ。次は椎名のターン。全力で相手の盤面をズタズタにして行く。

 

 

[ターン06]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨6

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ、ブイモンのLVを2にアップして、アタックステップだ!ブイモンの【進化:青】を発揮して、成熟期スピリット、エクスブイモンに進化!」

リザーブ6⇨3

ブイモンLV1⇨2(1⇨4)

エクスブイモンLV3(4)BP7000

 

 

ブイモンは0と1のデジタルコードに巻かれ、大きくて立派なドラゴンへと進化を果たす。だが、この瞬間だけに発揮できるカードが、岩壁の場には存在しており、

 

 

「甘いぜぇ!かわい子ちゃん!俺はこの瞬間、リボルモンの効果を発揮!相手がノーコスト召喚した時、このリボルモンにコアを2つ追加する!」

リボルモン(2⇨4)

 

「……っ!?……」

 

 

エクスブイモンの登場に反応するかのように白いオーラを纏ったリボルモン。そしてそのカードの上にはコアが2つ新たに追加された。

 

厄介なスピリットだ。このままではろくに進化もできない。そう考えた椎名は早めにあのスピリットを倒す戦法へと移し替える。

 

 

「エクスブイモンの召喚時!カードを2枚ドローして、1枚捨てる」

手札5⇨7⇨6

破棄カード↓

【ワームモン】

 

 

椎名はエクスブイモンの効果で、手札の質を上げる。そしてすぐさまアタックステップへと移行する。

 

 

「アタックステップっっ!!エクスブイモンでアタック!さらにその効果、【超進化:青】を発揮!」

「…………っ!?かわい子ちゃんも完全体だとぉ!?」

 

 

エクスブイモンはさらに進化する。デジタルコードに巻き付けられ、その姿形を変換して行く。新たに現れるのは至高の竜戦士。

 

 

「………パイルドラモンをLV3で召喚!!」

リザーブ3⇨2

パイルドラモンLV3(5)BP13000

 

 

赤い仮面。青と白の4枚の羽。腰に備え付けられた2丁の機関銃。そして甲虫のような強度を誇るボディ。まさに至高の竜戦士、パイルドラモンが椎名の場に現れた。

 

 

「へぇ〜〜あれが噂に聞く芽座椎名のパイルドラモン……………可愛くはないな」

 

 

可愛かったブイモンから一転して厳つい竜戦士になっからか、小波は椎名のスピリットに対して興味を失った。

 

だが、そんな小波のそんな事情は知らない。椎名はパイルドラモンで容赦なく攻め立てる。

 

 

「くっっ………リボルモンの効果でさらにコアが増える」

リボルモン(4⇨6)

 

「パイルドラモンの召喚時効果!コスト7以下の相手スピリット1体を破壊する!対象は岩壁先輩のリボルモン!!……」

「っ!?」

「撃ち抜け……デスペラードブラスター!!!」

 

 

パイルドラモンは登場するなり腰に備え付けられた2丁の機関銃を岩壁のリボルモンに向け、連射する。リボルモンはそれに手も足も銃も出せず、無残にも砕け散った。

 

そして次はアタックだ。

 

 

「いけぇ!パイルドラモン!アタック!そして効果発揮!エレメンタルチャージ!!!……パイルドラモンにコアが2つ置かれ、ターンに一度のみ、回復する!」

パイルドラモン(5⇨7)(疲労⇨回復)

 

「なにぃ!?」

 

 

パイルドラモンは自身の力でエネルギーを溜めると同時に、2度の攻撃の権利を得た。

 

 

「おい!小波、テリアモンでブロックしろ!」

 

「えぇ〜〜やだよ、テリアモンが破壊されるじゃないか………ライフで受ける」

ライフ5⇨4

 

 

パイルドラモンの拳が、2人のライフを無慈悲に1つ砕いた。

 

 

「おいいいい!!!……馬鹿かオメェ!何勝手にライフ減らしてんだぁあ!!」

 

「もう一発、頼むパイルドラモン!!」

パイルドラモン(7⇨9)

 

「……よし、ここもライフだ」

「は、はぁぁあ!?」

ライフ4⇨3

 

 

パイルドラモンの拳が、また2人のライフを消しとばした。小波はテリアモンでブロックすることもできたが、戦略のうちか、いや、様子からしてこれは明らかにテリアモンの保護に回った。

 

 

「ふざけるんじゃねぇよ!小波!そこは凌いどけよ馬鹿が!!」

「うっさいなーーーそっちこそ、【二撃目は防げた】んじゃないの?」

 

 

言い争いが絶えない九白ペア。岩壁は今を持って小波などとペアを組んだことに後悔している。本当にこれで現在の九白の学生トップなのかと耳を疑ってしまうレベルだ。

 

いや、実際小波はその気になれば岩壁などよりも遥かに強いのだ。しかし、彼女はただ可愛いものを拝むためだけにバトルしている。それ故にか、本気をほとんど出さない。

 

 

「…………よし!やったぞ!逆転成功だっ!!………ターンエンド!!」

パイルドラモンLV3(9)BP13000(疲労)

 

バースト無

 

 

「椎名さん、流石です!!」

 

 

逆転には十分成功したと言えるこの椎名のターン。それも終わりを告げ、次は相手サイドの九白小波のターンだ。

 

 

[ターン07]小波

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨6

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ…………テリアモンをもう1体召喚」

手札5⇨4

リザーブ6⇨2

トラッシュ0⇨2

 

 

小波はもう1体新たにテリアモンを召喚する。数も増え、その可愛さもより一層パワーアップ。

 

 

「…………エンドかなーーー」

テリアモンLV2(2)BP5000(回復)

テリアモンLV2(2)BP5000(回復)

 

バースト無

 

 

小波はそのままそのターンを終える。

 

ーが、

 

 

「おいいいい!!!待て待て待て待て!さっきからやる気あんのかオメェはよ!!?」

「ん?あるよーーーでもめんどくさいだけ」

「それをやる気がねぇっつんだよ!!」

 

 

あまりの小波のやる気のなさに激怒する岩壁。

 

たしかに、攻め込むには今が絶好のチャンスであっただろう。なにせ、椎名と英次の場にいるスピリットは椎名のパイルドラモンだけで、しかも疲労状態であったのだから、

 

【九白小波】は強い。が、その分気まぐれである。戦略等を考えなければならないこのゲームにおいて、それを全く考えず、ただただ自分の貰えたカード、テリアモンの可愛さに浸っている。その気になれば【九白一族】随一の天才と呼ばれるくらいにはなれるはずなのに。

 

 

「まぁ、取り敢えず宣言したものはしょうがないっしょ………次は英次のターンだね!頑張ってね!」

「そこは敵じゃボケ!」

 

 

[ターン08]英次

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨7

トラッシュ4⇨0

 

 

「………メインステップ……モノドラモンをLV2で召喚しますっ!!」

手札5⇨4

リザーブ7⇨2

トラッシュ0⇨1

 

 

英次は召喚した。薄い紫色の小竜、モノドラモンを。どんなに一緒に【不純物】呼ばわりされても自分が頭領から貰い、大事に使ってきたカードだ。

 

 

「ふっ、出たな、【不純物】の象徴」

 

 

嘲笑うかのような目で英次のモノドラモンに目を向ける岩壁。【九白一族】においては、白が全て、青の混じっているその竜は彼等にとっめ蔑みの対象でしかない。

 

 

「ふ、【不純物】だって、混ざっているのが弱いものであるとは限りません!!それをこのバトルで岩壁義兄さんに証明してみせます!………………アタックステップ!モノドラモンでアタック!さらにそのアタック時効果、【超進化:白/青】を発揮!完全体のサイバードラモンに進化させます!!!」

サイバードラモンLV2(3)BP14000

 

 

モノドラモンにデジタルコードが巻き付けられる。それは次第に膨らんでいき、破裂。新たに現れたのは黒いボディのスマートなドラゴン。サイバードラモンだ。

 

 

「………はんっ!……生意気言うなよ英次、どうせ扱えないんだろ?」

 

 

サイバードラモンは基本的に英次の言うことは聞かない。効果により強制的にアタック又はブロックをしなければならない。

 

ーそして今回も、英次の命令を待たずして怒り狂うようにサイバードラモンは相手側のライフへと直行。

 

 

「……相変わらず頭の悪そうな竜だなぁ!!お望み通りライフをくれてやるよぉ!」

ライフ3⇨2

 

 

サイバードラモンはそのまま岩壁と小波のライフを鋭い鉤爪でいとも容易く切り裂いた。

 

ーだが、岩壁は待っていた。このサイバードラモンの強制アタックを、椎名のターンでは発動されなかったバーストカードが今動き出す。

 

 

「ライフ減少により、バースト発動!!………白の完全体スピリット、ヴァジラモン!!」

「「…………っ!?」」

 

「………このバースト効果により、これをノーコスト召喚する!」

リザーブ9⇨6

ヴァジラモンLV2(3)BP10000

 

 

岩壁の場に現れたのは、ケンタウロスのようなミノタウロスのような、はたまたそれらを足して2で割ったかのようなスピリット、ヴァジラモンだ。その両手には剣が1本ずつ握られている。

 

 

「さらにヴァジラモンの効果!相手スピリット1体をデッキの底に沈めるっっ!!………対象はパイルドラモンっ!!お前だっ!」

「………なにぃ!?……パイルドラモンっ!!?」

 

 

ヴァジラモンは両手にある剣を重ね合わせ、そこからビーム光線を放つ。それは一直線にパイルドラモンの方へと向かい、命中。それに貫かれたパイルドラモンはデジタルの粒子となって消滅。椎名のデッキの一番下へと流れ込んだ。

 

 

「そ、そんな、椎名さんのパイルドラモンが…………」

「はっはっはっ!!どうだ!英次!!てめぇは所詮足枷でしかないんだよぉ!!今日この場に立ったことを後悔するんだなぁ!!」

 

 

調子に乗ったように悪態つく岩壁。実際は前のターンでも発揮はできたが、ヴァジラモンを確実に場に残したかったこと、サイバードラモンの強制アタックを踏まえてのこと、そして何より、【英次は足枷であると】馬鹿にしたいがためだ。なんと惨めで意地汚いか、

 

 

「す、すみません、椎名さん………僕のせいでパイルドラモンが…………」

「へへっ!いいっていいって!!それより面白くなって来たよね!!」

「………………え?なんでそんなにポジティブなんですかぁ!?」

「だってこっちの主力が消えて、逆に相手の主力が出て来たんだよ!これ以上の逆境なんてないよっ!!く〜〜〜っやっぱバトスピは面白いよね〜〜!!」

 

 

自分のせいでパイルドラモンが消えてしまったことを悔やみ、椎名に謝罪する英次。だが、椎名は全くそんなことを気にしてはおらず、むしろこの状況を面白がっていた。

 

 

「……と、とりあえず……エンドステップ、サイバードラモンは自身の効果で回復します…………た、ターンエンドです」

サイバードラモンLV2(3)BP12000(疲労⇨回復)

 

甲竜の狩り場LV1

 

バースト無

 

 

何もすることができなくなった英次はそのままそのターンを終えた。次はヴァジラモンを場に残すことに成功した岩壁だ。

 

 

「ふっ!……ここで一気に差をつけてやるよ!!」

 

 

[ターン09]岩壁

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ6⇨7

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ7⇨10

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップっ!……さぁこい!パジラモン、ナノモン!……LV2ずつで召喚してやるっ!」

手札4⇨2

リザーブ10⇨0

No.18グッドラックウェル(1⇨0)LV2⇨1

 

 

岩壁はさらに2体の白の完全体スピリットを呼び出す。

 

羊のような外見のパジラモンと、椎名戦でも使用した自身のエース、豆電球のような形をした小さな完全体スピリット、ナノモンだ。

 

 

「そ、そんな、さらに2体の完全体が…………」

「ナノモンの召喚時!!サイバードラモンを手札に戻すっ!……喰らいやがれぇ!!」

 

「…………っ!?」

手札5⇨6

 

 

勝ち筋を失いかけた英次に、追い討ちをかけるように、岩壁のナノモンは小型爆弾をサイバードラモンに放り込んでいく。小型といえど、やはり威力は強烈か、サイバードラモンはそれを喰らい、デジタルの粒子と化して、英次の手札へと帰還して行った。

 

これで椎名と英次の場にはスピリットが消え、丸裸となる。

 

 

「………さぁ、たっぷりと痛みつけてやるぜぇ!!覚悟しなぁ!!アタックステエェェップッ!!パジラモンでアタック!!」

 

 

4本の足で地をかけるパジラモン。目指すは椎名と英次のライフ。

 

だが、ここで椎名が手札の1枚のカードを引き抜く。

 

 

「なんのぉ!!フラッシュマジック!!リアクティブバリア!!このバトルでアタックステップを終わらせる!……………このアタックはライフで受けるよ!」

手札6⇨5

リザーブ11⇨7

トラッシュ0⇨4

ライフ4⇨3

 

「………っ!?白のマジックっ!?」

 

 

パジラモンがその手に握られたボウガンを、椎名と英次のライフに向け射出。放たれた矢は一直線に椎名と英次のライフを貫いた。

 

ーが、直前に発揮させていた、椎名のリアクティブバリアの効果で、猛吹雪が発生。岩壁の場のスピリットたちはこのターン、身動きが取れなくなった。

 

 

「ちぃっ!次に持ち越しか………エンドステップ!No.18グッドラックウェルの効果で疲労したスピリット全てを回復させ、ターンエンドだ」

ナノモンLV2(2)BP7000(回復)

パジラモンLV2(3)BP7000(疲労⇨回復)

ヴァジラモンLV2(3)BP10000(回復)

 

No.18グッドラックウェルLV1

 

バースト無

 

 

出来ることを全て終え、そのターンを終えた岩壁。次は見事に岩壁のアタックステップを停止させた椎名のターンだ。

 

 

[ターン10]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ8⇨9

 

 

「……ドローステップっ!!…………へへっ!よぉぉぉぉし!」

手札5⇨6

 

 

椎名はそのドローしたカードを見て、思わず口角が上がり、ニヤついてしまった。どうしても取れない椎名のわかりやすい癖であるが、同時にそれはデッキから引き抜かれた希望でもある。

 

 

《リフレッシュステップ》

リザーブ9⇨13

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップっ!!ブイモンを召喚っ!……………さらにそのブイモンを対象に、マグナモンの【アーマー進化】を発揮!!1コストを支払い、黄金の守護竜、マグナモンをLV3で召喚するっ!」

手札6⇨5

リザーブ13⇨5

トラッシュ0⇨3⇨4

マグナモンLV3(4)BP10000

 

 

椎名は颯爽と【進化】の効果により手札に戻っていたブイモンを召喚。そして直ぐに【アーマー進化】させる。

 

ゆっくりと降ってくる黄金の鎧を着ているような卵。ブイモンは受け入れるようにそれと衝突し、混ざり合う。そして新たに現れるのは伝説のレアカード、ロイヤルナイツの1体。

 

 

「…………出たな、マグナモン………」

 

 

岩壁は思い出していた。あの時の、【界放リーグ】の時の記憶を、その時もこいつにやられた。あの忌々しい黄金の守護竜に………

 

 

「へぇ〜〜あれがロイヤルナイツね〜〜ほんとにあるんだ……別に可愛くないから興味はないけど」

 

 

小波も流石にそれに目を向けるが、可愛くないと言う理由だけですぐさま目を背けてしまった。

 

 

「マグナモンの召喚時っ!!………相手の場にいる最もコストの低いスピリット1体を破壊する!」

 

 

マグナモンの強力な召喚時効果。今回は岩壁と小波。どちらかの場を選択して発揮させることになる。

 

椎名が選ぶのは………

 

 

「もちろん、岩壁先輩の場にいる最もコストの低いスピリット、パジラモンを破壊っ!!………黄金の波動!……エクストリーム・ジハード!!!」

「…………っ!?」

 

 

マグナモンの放つ黄金の波動。それはこの場全体を包み込んで行く勢いで膨らんでいき、その中にいた岩壁のパジラモンだけを散り散り吹き飛ばした。

 

 

「よしっ!さらにバーストをセットして………………ターンエンドかな?」

手札5⇨4

 

マグナモンLV3(4)BP10000(回復)

 

バースト有

 

 

椎名と英次の場にバーストが1枚伏せられた。

 

それと同時にターンも終了。芽座椎名ともあろう者がどう言うことか、アタックもせずにターンを終えた。

 

 

「はっはっはっ!!どうした!?かわい子ちゃん!!!怖気付いたか!?」

「……………いや、なんかさ、今思ったんだけど、今回ばかりは私がとどめを刺したらダメな気がするんだよね〜〜………英次!任せたよ!!このバトル、もう私はアタックしないから!!」

「…………………………え?……えぇぇぇえ!?!…………どういうことですかぁ!?」

 

 

椎名の突然の宣言に驚愕する英次。それもそのはずだ、椎名がアタックしなければ、勝つためには必然的に英次が攻めないといけない。それも岩壁の強力な完全体スピリット達を退かしつつだ。

 

 

「防御は私がなんとかするからさぁ〜〜だから次のターンあたりでサクッと倒しちゃったよ!」

「そ、そんなことできませんよ〜〜」

「ぶわっはっはっはっ!?!こりゃ傑作だなぁ!?勝負を諦めたか!?」

 

 

いや、椎名は勝負を捨ててはいない。本気だ。本気で防御だけに専念するつもりだ。そして最終的には英次のスピリットで勝つ気でいる。

 

椎名の直感か、感じていたのだ。このバトルを終わらせるのは紛うことなき、九白英次であると………

 

だが、その英次のターンはまだだ。その前に同じく九白である小波のターンだ。

 

 

「おい小波ぃ!!お前いい加減攻めろよぉ!!?」

「えぇ、めんどくさいなぁーーー」

「そんなの理由になるわけねぇだろ!!!さっさとしやがれぇ!!」

「……ちぇ、……わかったよ、ちょっとだけだよ」

 

 

[ターン11]小波

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨6

トラッシュ2⇨0

 

 

「もうメインはいいや、そのまアタックステップ……テリアモン2体の【進化:白】を発揮させ、白の成熟期スピリット、ガルゴモンを召喚するよーーー」

ガルゴモンLV2(2)BP6000

ガルゴモンLV2(2)BP6000

 

「「!?!」」

 

 

テリアモン2体はデジタルコードをその身に巻き付け、進化していく。新たに現れるのはテリアモンがサイズアップし、両手にガトリングを装着したような姿。白の成熟期スピリット、ガルゴモン。

 

 

「おおっ!進化したぁ!かぁっこいい!!」

「言ってる場合ですか!?!」

 

 

あいも変わらずバトルを楽しむというスタンスを変えない椎名に、英次はひとツッコミ。だが、本当に笑っていられるような状況じゃないのも確かなことであって、

 

 

「んーーー面倒だけど攻めようかな、岩壁もうるさいし、……………アタックステップを継続させ、テリアモン…………じゃなかったガルゴモンでアタック!」

 

 

その手の銃口を向けるガルゴモン。だが、その先は椎名と英次のライフではなく、

 

 

「…………ガルゴモンのアタック時効果、相手のバーストを1枚破棄する、…………って事で、怪しいからそのバーストを先ず剥がすよーーー」

「……………っ!?」

 

 

ガルゴモンは椎名がセットしたバーストに向けて、銃を乱射した。

 

ガルゴモンの効果だ。アタック時の効果だけでバーストを破棄できる。なかなか汎用性の高い効果である。

 

ーが、今回はただ一味違くて、

 

 

「………………あっれ〜〜〜??」

「ば、バーストが破棄されない??……なんで?」

 

 

ガルゴモンの放った弾はバーストカードに命中したものの、なぜかまるで通用せず、全て弾き出していた。まるで寄せ付けなかったかのように。

 

 

「へへっ!残念だったね!このバーストは私のトラッシュに成長期カードがあれば、相手の効果を受けない!!……今の私のトラッシュには成長期の【ズバモン】があったから、そのガルゴモンの効果を受けなかったんだ」

「(………効果を受けないバースト?………まぁいいや)………………ガルゴモンの効果でコアを増やすよーーー」

ガルゴモン(2⇨3)

 

 

バーストがどんなものか気になるが、小波はガルゴモンの次なるアタック時効果を発揮させ、攻め手を増やす。

 

 

「ガルゴモンの効果【超進化:白】、これにより、完全体スピリット、ラピッドモンに進化!」

ラピッドモンLV3(4)BP11000

 

「っ!?………完全体か!」

 

 

ガルゴモン1体はさらなる進化を遂げる。さらに大きなデジタルコードに身を委ね、その身体を大きく変えていく。新たに現れたのは緑の機械兵とでもいうべきか、白属性の完全体スピリット、ラピッドモンだ。さっきまでのテリアモンやガルゴモンとはまるで姿が違う。

 

 

「おっしゃぁ!!小波ぃぃ!!お前の力見せつけてやれぇ!!」

「岩壁うるさい」

 

 

だが、椎名の場にはマグナモンがいる。BPこそラピッドモンに劣れど、その差僅かに1000。ほんの少しでもマグナモンのBPがなんらかのカードで上昇することがあるのなら返り討ちにできる。

 

しかし、ようやく本気を出してきた小波は流石と言うべきか、ラピッドモンはマグナモンでも防げない効果を所持しており、

 

 

「ラピッドモンでアタック………この時、ラピッドモンは相手の【紫と黄、青】のスピリットからブロックされない」

「…………えぇ!?アンブロッカブル効果??」

 

 

基本的に相手のスピリットの効果は一切受け付けないマグナモンだが、この手の効果はマグナモンではなくプレイヤー自身に課せられる効果。

 

故にマグナモンでもブロック自体が不可能なのだ。

 

マグナモンの頭上を飛び越えるように飛行するラピッドモン。その高さではマグナモンも追いつくことができない。

 

 

「………ちぇ、仕方ないなーーー、ここはライフで受けるよ、いいよね!英次!!」

「………あ、はい!!わかりました!!」

 

「…………ライフで受ける!!」

ライフ3⇨2

 

 

ラピッドモンは三角形の形を形成し、そこからとてつもないこう威力のビームを放つ。そのビームに、椎名と英次のライフはまた1つ、木っ端微塵にされた。

 

ーだが、ここで椎名のバーストに動きが出る。

 

 

「へへ、……………ついに発動する時がきたね〜〜この日のために用意した、私の【秘密兵器】をっ!!…」

「「!?!」」

 

 

【秘密兵器】そんな椎名の言葉に思わず相手側の岩壁と小波は手が止まった。

 

そしていよいよ発動される椎名の秘密兵器が。

 

 

「ライフの減少により、バースト発動!!……これは【究極体】のデジタルスピリット!!……」

「な、なに!?き、究極体だとぉ!?」

 

 

椎名のバーストカードが勢いよく反転する。

 

そう、それは紛う事なき究極体のデジタルスピリット、この日のために椎名が用意したとんでもない強カードだ。

 

ーその名も…………

 

 

「この効果により、………マリンエンジェモンを召喚!!」

マリンエンジェモンLV3(3)BP9000

 

「っ!?!…………は、はぁ?」

「か……………可愛い〜〜〜〜!!!!」

 

 

バースト効果により現れたスピリットは、本当に究極体なのかと耳を疑うほどに小柄で、なによりもキュートである。

 

ピンク色の小さい身体、翼を持つ一応究極体のデジタルスピリット、マリンエンジェモンが椎名の場に現れた。

 

 

「ぶ、ぶわっはっはっはっ!!!なんだそのちっこいのは!?!!ほんとに究極体かよ!!!」

「いいなぁーーー私も欲しいなぁーーー」

 

 

そこまで大袈裟に言ってなにを出すかと思えばそんなチンケなスピリットかと言わんばかりに高笑いする岩壁。

 

小波はそのマリンエンジェモンの可愛いさに惚れ込む。

 

ーだが、すぐにわかる。マリンエンジェモンも立派な究極体であり、それ相応に強力な効果を持っているということを、

 

 

「マリンエンジェモンのバースト効果はまだ終わらない!!!このターンの間、相手のコスト9以下のスピリット全て、アタックによって私達のライフを減らせなくなる!!!」

「は、はぁ!?なんだその効果!!?」

「いっけぇ!!マリンエンジェモン!!……オーシャンラブ!!!」

 

 

登場するなり多数に分身するマリンエンジェモン。それらは相手側の場に飛び交い、そのキュートなルックスでスピリット達を次々と魅了していく。

 

ラピッドモン、ガルゴモンだけでなく、される必要もないヴァジラモン、ナノモンまでそれに虜にされてしまう。

 

 

「あ〜〜可愛いいいいいい!!!!」

 

 

まだいた。この小波もまたそのキュートさに落ちた。目をハートにしてしまった彼らはもはやアタックしたところで狙いが定まらず、椎名達のライフに攻撃を当てることはできないだろう。

 

 

「す、すごい…………」

 

 

英次は椎名を見てただただそう思った。あんなに苦しい状況であったはずなのに、

 

本当に凄い。たった1人で2人分のアタックを抑え込み、ライフを守っている。

 

 

「(…………もう1体のガルゴモンを2枚目のラピッドモンに進化してアタックしたところで、攻撃は当たらない。…………なら終わっとこうか、めんどくさいし、これならしょうがないってことで岩壁もうるさくは言わないでしょ)……………………ターンエンド」

ラピッドモンLV3(4)BP11000(疲労)

ガルゴモンLV2(2)BP6000(回復)

 

バースト無

 

 

小波はさらに椎名達のライフを破壊するためにもう1体のラピッドモンを用意できた。が、マリンエンジェモンの影響でそれも一転。無闇に召喚するよりも進化ルートを一通り揃えることを優先し、それを出さずしてそのターンを終えた。

 

次は椎名がなによりも期待している英次のターンだ。

 

 

「よっし!!凌いだぁ!!…………さっ!英次!ここでサクッと決めちゃってよ!!」

「……い、いやだから無理ですってば!!」

 

 

あいも変わらず椎名はなぜか英次にフィニッシュを任せようとする。

 

が、英次の方もあいも変わらず自信を持てないでいる。

 

 

「い、いい加減にしてくださいよ椎名さん!!…………僕みたいな弱い奴が、あの2人の場を突破してライフまで破壊できるわけないじゃないですか!!」

 

 

そんなやや強引な椎名に反論する英次。

 

ーだが、椎名は

 

 

「……………なに言ってんの??………英次は強いよ……ただ少し遠慮してるだけ………」

「え、遠慮??」

「おいおいかわい子ちゃん!!何度も笑わせんなよ!?!そんな【不純物】になにができるって言うんだよ!!!」

 

 

その椎名の言い草はまるで英次が岩壁などよりもずっと強いかのようなものであった。

 

それに反発するように罵声を浴びせに行く岩壁。

 

 

「【不純物】ってそんなに悪いこと?不純なものが混じってるならそれごと強くなろうとするのがカードバトラーでしょ?…………一度英次とバトルした私にはわかったよ、英次がどれだけ虐められても、馬鹿にされても、頑張ってサイバードラモン達で強くなろうとしていたってことがね」

「……………し、椎名さん」

 

 

そう、どれだけ馬鹿にされようが、どんなに虐められようが、与えられたモノドラモンとサイバードラモンで強くなろうと、英次は必死に努力した。

 

英次は縮こまっているだけ、その気になれば本当は岩壁などよりもはるかに上回る潜在能力を持っている。

 

椎名のその言葉で、英次は昨日司に言われた言葉を思い出した。司は言った。【他の一族の者にはないお前だけの戦い方があるのではないか】と、

 

そうだ。英次は気づいた、いや、思い出した。憧れの2人に言われて、勇気付けられてここまで来たことに、

 

ーここで自分が変わらなければ意味がない。

 

ー【自分は変わるためにジークフリード校まで来たのだ】

 

 

「そうだ、変わるんだ…………僕は…………【不純物】でも強くなれるって証明するためにここに、椎名さんと司さんのいるこのジークフリード校に……来たんだぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!」

 

 

高揚からか、この場で、誰よりも大きく声を放った英次。

 

人生で初めて自分の本当の心の声を叫んだ。

 

その魂の叫びは、彼の最も信頼するデッキに大きく影響を及ぼした。

 

ー今、覚醒する。

 

 

「……………え?」

「な、なにぃ!?」

 

 

英次のデッキから溢れんばかりの光量が発せられる。

 

ーそれは誰もが知っている人智を超えた奇跡の現象であり、かつ、誰もが夢見る瞬間でもある。

 

椎名達も一度起こしたその奇跡の名は…………

 

 

「…………オーバーエヴォリューション…………」

 

 

英次は驚くように、だが、それでいて静かに呟いた。

 

そう、これは紛うことなき【オーバーエヴォリューション】。あったとしても人生で一度しか起きない奇跡の現象である。

 

英次のデッキに新たな命が芽吹いたのだ。

 

 

「…………ば、馬鹿なぁ!!!!お前が、【不純物】ごときが、【オーバーエヴォリューション】など………認めないぞぉお!!」

「……おぉ、これがオーバーエヴォリューション。生で見るの初めてだわーーー」

 

 

まるで信じられないような顔をする岩壁。小波は初めて見るそれにただただ新鮮な表情で見つめていた。

 

 

「…………へへっ!………ここまでとはね〜〜………やっちゃえ、英次!!」

「はいっ!!僕のタァァァアン!!」

 

 

椎名に大きな後押しを受け、英次は意気込み、自分のそのターンを進行する。

 

 

[ターン12]英次

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ8⇨9

 

 

「………ドローステップっ!!!…………………こ、これが僕のオーバーエヴォリューションで得た……新たな力!!」

手札5⇨6

 

 

英次はドローした。奇跡のカードを。それはまさしくそのデッキと合致した性能の持ち主であって、

 

 

《リフレッシュステップ》

リザーブ9⇨10

トラッシュ1⇨0

 

 

「メインステップっ!!!モノドラモンを再度LV2で召喚して、アタックステップっ!!!モノドラモンでアタックし、効果によりサイバードラモンに【超進化】!!」

手札6⇨5

リザーブ10⇨6

トラッシュ0⇨1

サイバードラモンLV2(3)BP14000

 

 

英次は手始めと言わんばかりにどんどん進めていく。モノドラモンは今一度サイバードラモンとなり英次の場へと赴く。が、その効果による暴走が抑えられるわけではなく、

 

 

「はっはっはっ!!!!馬鹿めぇ!!今更そんな奴なんか出してどうする気だぁ!?………暴走は止められないんだろぉ!?」

「…………そうです………サイバードラモンの暴走は止められない………ですが、【一緒に暴れる】ことはできます!!」

「…………なに!?」

「サイバードラモンでアタック!!!」

 

 

英次が言うまでもなく暴走し、走り行くサイバードラモン。そうだ。無駄にこんなもの制御する必要はない。しなくていいのだ。一緒に暴れられる正義の味方が今、英次にはいるのだから…………

 

 

「ほんとに頭悪いなぁ〜〜さすが【不純物】………この無敵のナノモンが目に入らねぇか?」

 

 

椎名戦でも活躍した岩壁のナノモン。あれは無敵だ。破壊されない。が、今の英次には関係ないことであって、

 

その手札から1枚のカードが引き抜かれた。

 

 

「…………フラッシュアクセル!!【ジャスティモン】の効果発揮!!」

手札5⇨4

リザーブ6⇨3

トラッシュ1⇨4

 

「……………は?」

 

 

英次の新たなカード、ジャスティモンが今、解き放たれる。

 

 

「その効果で先ずは岩壁義兄さんのナノモンをデッキの下へ!!!」

「………………は、はぁ!?」

「…………トリニティアーム!!!」

 

 

誰か、誰か人影がこの場に飛び交ってくる。それは瞬く間に強靭な右腕のアーマーを使用した一撃でナノモンを殴りつけた。それをもろに受けたナノモンはあっさりと、呆気なくデジタルの粒子となって岩壁のデッキの下へと送り込まれた。

 

 

「そしてこの時、自分のアタックステップ中ならその戻したスピリットのコスト分まで相手のデッキを1枚破棄する!!ナノモンのコストは6!!よって岩壁義兄さんのデッキを6枚破棄!!」

 

「…………ぐぅっ!!」

破棄カード↓

【ナノモン】

【リボルモン】

【パジラモン】

【ゴツモン】

【ハグルモン】

【ゴツモン】

 

 

放たれる青い衝撃波。それは岩壁のデッキのカードを数枚吹き飛ばした。

 

だが、そんなものは些細なこと、デッキアウトの問題はない。これから。これからだ。本当の大事な効果は………

 

 

「………その後、完全体が自分の場にいる時、このスピリットは手元には置かず、1コスト支払って召喚できるっ!!」

「……………っ!?!!」

 

 

条件はサイバードラモンで満たされている。ついにそれが召喚される。

 

 

「正義の名の下に…………僕は君を呼ぶ!!究極体……ジャスティモン!!LV2で召喚!!」

リザーブ3⇨0

トラッシュ1⇨2

ジャスティモンLV2(2)BP10000

 

 

ついにその人影がはっきりと姿を見せる。

 

ー赤いマフラーを靡かせる無敵で正義のヒーロー。

 

彼の名はジャスティモン。サイバードラモンと共に戦場を駆け上がる者の名だ。

 

 

「じゃ、ジャスティモン…………究極体で、アクセル持ちのデジタルスピリットだと!?」

 

 

驚く岩壁。まぁ、それもそうだろう。何せ、アクセル持ちのデジタルスピリットなど全く前例がないのだから。しかも条件付きで勝手に現れるときたらたまったもんじゃない。

 

そしてなにより、ジャスティモンは究極体のデジタルスピリットである。

 

 

「カッコいい!!これが英次の新たなエース!!!」

「可愛くないけど…………まぁ英次が可愛いから良しとするか………」

 

 

そう呟く女子2人。小波に至っては今、自分達がかなり危ない状況に陥っていることを理解していないようにも見える顔つきだ。彼女はいったいどれだけ気まぐれで、鈍感なのだろうか、

 

ーそしてこのタイミングはサイバードラモンのアタック中、ネクサスカード、甲竜の狩り場の効果でそのBPも2000上がっている。

 

 

「サイバードラモンのアタックは継続です!!」

 

「くっ!!……ライフだ!!持って来やがれクソ野郎!!」

ライフ2⇨1

 

 

サイバードラモンの強烈な鉤爪の一撃が、岩壁と小波のライフを紙切れのように引き裂いた。いよいよ後1つだ。後1つのライフの破壊で椎名と英次の勝利である。

 

 

「次です!お願いします!!ジャスティモン!」

「オーバーエヴォリューションのカードと言えど、BP10000!!たかが知れてる!!」

 

 

未だに英次のカードだからと岩壁はジャスティモンを強いと思っていない。が、ジャスティモンには先のアクセル以外にも有用な効果を所持しており、

 

 

「ジャスティモンはアタックする時、ターンに1回だけ……………回復する!!」

ジャスティモン(疲労⇨回復)

 

「…………っ!?」

 

 

これぞまさに正義のオーラと言ったところか、ジャスティモンは白のオーラを纏い、回復状態へとなる。これで2度目の攻撃の権利を得た。

 

ーだが、

 

 

「馬鹿め!!何度言えばわかるっ!!!所詮はBP10000!!ヴァジラモンと互角!このバトルでブロックし、それを破壊すれば問題ない!!……………迎え撃ちやがれ!!ヴァジラモンッ!!」

 

 

そうだ。いくら2度めの攻撃の権利を得たと言っても、飽くまで得ただけ、1度めの攻撃で破壊されてしまっては元も子もない。

 

岩壁のヴァジラモンはジャスティモンを迎え撃つ。しかし、その程度では英次のジャスティモンの進行は止められない。

 

 

「ジャスティモンは止まりません!!フラッシュマジック!!オーバードライブ!!」

手札4⇨3

サイバードラモン(3⇨1)LV2⇨1

 

「っ!?」

 

 

英次の使用したマジック。オーバードライブは青のマジック。だが、その効果は白青デッキである英次だからこそフルで使える代物であって、

 

 

「この効果で、このターン、ジャスティモンのBPを5000上げ、【連鎖:白】の効果により、サイバードラモンを回復させます!!」

ジャスティモンBP10000⇨15000

サイバードラモン(疲労⇨回復)

 

「…………は、はぁ!?」

 

 

ジャスティモンがオーバードライブの効果によりそのBPを上げると同時に、膝をついていたサイバードラモンが再び起き上がる。

 

岩壁はまるで夢でも見ているかのように目を見開いた。信じられないのだ。認められないのだ。

 

 

「いけぇ!ジャスティモン!!……………ジャスティキック!!!」

 

 

ジャスティモンは天高く飛び上がり、急降下するようにヴァジラモンに強烈なキックをお見舞いした。ヴァジラモンは両手の剣を盾代わりに構えたが、それごと粉々に粉砕され、力尽き、爆発した。

 

これで岩壁の場のスピリットはゼロ。残った回復状態のブロッカーと言えば、小波のガルゴモンくらいか………

 

そしてライフも1。英次はサイバードラモンとジャスティモンでアタックできる。

 

ー終わりだ。

 

 

「もう一度お願いします!!ジャスティモン!!」

「お、おいぃぃ!!ブロックしろ!!小波ぃぃ!!なんのためにお前を呼んだと思ってんだぁぁ!!」

「もう、うっさいなーーー私もカウンターカード無いし、どっちにしろ負けだよーーー…………ガルゴモン、よろしくーーー」

 

 

本当にこのバトルの結果に興味がないのか、小波は全く戦意の感じられない気だるけな声で、ガルゴモンをブロックに寄越す。

 

だが、BPでは圧倒的にジャスティモンが上である。ガルゴモンのガトリングガンの連射を右手の強靭なアーマー1つで防ぐジャスティモン。そのままゆっくりとガルゴモンに近づいていき、1発それをぶん殴る。ガルゴモンはふきとばされながらも、力尽き、爆発した。

 

後は……………サイバードラモンのアタックだ。

 

 

「…………ば、馬鹿な…………あの英次が、【不純物】が……………お前は足を引っ張らせるために俺が呼んだんだぞぉ!?!ふざけるな、ふざけるなぁ!!!!」

「サイバードラモンは可能な限りアタックしなければならない………………終わりです岩壁義兄さん」

 

 

その凶悪性を剥き出しにし、地を駆けるサイバードラモン。目指すはもちろん岩壁と小波のライフ。

 

 

「……………英次ぃぃ………かっこよくなっちゃってーーーーお姉ちゃんは嬉しいよ〜〜〜〜!!」

「ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

ライフ1⇨0

 

 

小波は見違える程にかっこよく見えた英次に見ほれながら、岩壁は自身の負の感情を殺しきれないまま、最後のライフをサイバードラモンに引き裂かれた。

 

ーこれでこのバトルの勝者は椎名と英次ペアだ。見事に柵を越え、自分を信じ、勝利を収めてみせた。

 

 

「よっしゃ!!!!!」

 

 

サムズアップする椎名。英次を信じたかいがあった。

 

結果的に椎名のお陰みたいになってしまうが、英次はバトラーとして必ず大きな一歩を踏み出せたバトルであったことだろう。

 

 

「………し、椎名さん!!僕やりましたぁ!!!!」

 

 

英次も喜びのあまり大声で叫ぶ。未だに実感ができない。あの落ちこぼれだった自分が、あの九白一族のエリート相手に勝ってしまったのだから。

 

 

「そうだよ!!英次がやったんだよぉ!!おめでとう!!」

「え?………わわ!?!」

 

 

椎名は感激もあまり、英次を抱きしめた。身長差もあって、椎名の胸が英次の顔に当たる。それは妙に柔らかくていい匂いがした。英次は喜びの表情から一転。羞恥心で心が満たされ、顔を真っ赤にする。とうの椎名は全くそれを気にしていない。

 

 

「ちょ、ちょちょ!?!離れてください!!椎名さん!!!!」

「えーーーいいじゃんいいじゃん!!英次は頑張ったな〜〜〜!!!」

「…………いいなーー私も英次を抱きしめたいなーーー熱く、ぎゅーーーっと」

 

 

そんな幸せそうな2人を見ながら、バトルに敗北した小波はそう呟いた。

 

 

「………嘘だ、俺はあいつを、不純物をあの女の足を引っ張らせるためだけに呼んだんだぞ、…………あの女はほとんど守ってただけ、不純物に決められた不純物に不純物に不純物に不純物に不純物に…………」

 

 

岩壁は負けたショックからか、そんなことを小声でボソボソと呟いていた。完全にプライドもなにもかも破壊された。

 

ー生まれつきのエリートは一度転ぶと脆い。もう彼が下から這い上がることなど不可能だろう。

 

 

******

 

 

「…………岩壁はもう無理だな…………まぁ良い、面白いものも見れたし、私はこれで帰るとしよう………邪魔したな、竜ノ字よ」

 

 

バトル場の上の観客席でそう言ったのは4人のバトルを観ていたオーディーン校理事長、九白一族の頭領、九白漣。もう岩壁には見切りをつけたようだ。たしかにもう彼は使えない。

 

 

「あぁ、…………なぁ、漣、お前もしかして知っててあの落ちこぼれ君に青の混じった奴あげたのか?」

 

 

別れ際に龍皇理事長が漣に問いた。すると、漣は少しだけ鼻で笑って……

 

 

「ふっ、………どうだろうな」

「…………60のおじさんがカッコつけんなよ」

 

 

そう言って、理事長達もこの場を後にした。

 

漣は探っていた。どうしたら九白一族を一族の中で最強にできるか、そのために英次にわざと試しとして青の混じったスピリットを手渡した。

 

結果はとても大きく帰ってきたと言える。英次こそ、この一族を大きく変えることができる期待の星だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………はぁ」

 

 

ジークフリード校とオーディーン校の【界放乱戦】が終わり、放課後。橙色の夕焼けの中、椎名は1人、帰路につき、住まいのマンションへと帰宅していた。

 

流石に疲れたのか、部屋に入るなりカバンを放り投げ、制服も着替えずにベッドに転がる椎名。

 

いや、あのバトルになれば無尽蔵な体力を発揮する椎名に疲れたという言葉が似合うはずもない。だが、また少し思い出してしまったのだ。今日の【九白一族】を見て、自分の【義兄】の存在を…………

 

 

ーこれより、物語は約6年前、椎名がまだ11歳の話まで遡る…………………

 

 

 

 

 

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉

椎名「今回のカードは【ジャスティモン】!!」

椎名「ジャスティモンは白と青の究極体スピリット!!世にも珍しいアクセル持ちのデジタルスピリットだよ!効果もサイバードラモンと相性抜群!!」


******


〈次回予告!!〉


雅治「これから語られる物語は、椎名が11歳の頃、まだ育った島にいる時のお話。椎名とその育ての親のお爺さんや、そのお孫さんとのエピソード。…………次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ……「芽座葉月……!!」……今、バトスピが進化を超える!……………」


******


最後までお読みくださり、ありがとうございました!
そして、明けましておめでとうございます!
今年も宜しくお願います!

さて、今日行ったタッグルール。どうでしたでしょうか。一応詳しいルールも載せますが、あまり難しく考えないで、そういうものだと読んでいただければ幸いです。

物語は次回からどんどん進展していきます!期待してお待ちください!


※色々あって最後辺りを修正しました。


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