バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

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第44話「椎名帰郷、真紅の魔竜との出会い!」

 

 

 

 

 

 

「やぁ!僕の声は聞こえる?」

「…………っ??」

 

 

ガラガラだが、まるで無邪気な子供のような声が聞こえてくる。

 

目を閉じていた椎名はようやくその声に気づき、意識を取り戻した。

 

椎名が目を開けると、そこには無限の闇が果てしなく広がっていた。大地もなく、空もなく、もちろん建造物だってどこにもありはしないそんな塵ひとつない真っ暗な世界に椎名はいた。

 

ただ、目の前だけには眩しくないくらいの紅くて淡い光が浮いていた。まるで真夜中の蛍のように………自分を起こしてくれた声もそこから聞こえてくる。

 

 

「もうすぐ会えるね!!」

「…………誰?」

 

 

椎名は紅い光に聞いた。

 

 

「僕の正体は後でわかるよ!また君に会えるのを楽しみにしてるよ!!」

「【また】?」

 

 

紅い光はまるで椎名を知っているかのような言い草で話してくる。

 

椎名はもちろんそんな摩訶不思議な光のことなど知らない。

 

が、どうでも良かった。

 

負けたのだ。

 

葉月に、芽座葉月に、

 

自分の全身全霊をかけ、挑み、無様に散っていった。

 

もうどうでも良い。

 

早く島に帰りたい。

 

それだけで頭がいっぱいになっていた。

 

ーどうしても心と体が無気力になっていた。

 

 

「じゃあ!今度ねーー!!」

 

 

そんな椎名とは裏腹に、紅い光はそう明るく振舞いながらもゆっくりと点滅し、やがて消えていった。

 

 

******

 

 

 

「ん?………ん、んん??!」

 

 

椎名は気づくと何処かのベッドで寝ていた。思わずバっと上半身を上げた。周りの壁が全体的に白い、椎名はここが学校の保健室であることを理解した。

 

そうだ。自分は葉月とのバトルに負け、ストレスや疲れで倒れたんだと、思い出した。その結果が今自分がここにいる事である。

 

 

「椎名ぁ!!!!」

「椎名ちゃん!!」

「ぐへっ!!」

 

 

起きた途端。喜びからか、椎名は真夏と夜宵に叫ばれながら抱きしめられた。と言うかそれぞれ右と左の腕で首を絞められた。息ができない。

 

 

「ぐっ、くるしぃぃい!!!」

「あ、すまんすまん」

「ついつい………だって椎名ちゃん倒れてから4時間以上寝てるものですからーーー…………」

 

 

椎名の苦しさに気づいた2人は椎名を解放した。

 

その2人の後ろには雅治と英次もいる。4人とも椎名が心配で観に来たのだ。ただ、そこには司だけがいなかった。

 

 

「ほい、あんたのデッキ………せやけど……」

「分かってる、マグナモンだけなくなったんでしょ………良いよ別に」

 

 

真夏が椎名に置き去りになっていたデッキとBパッドを手渡した。が、椎名も察している通り、その中には【ロイヤルナイツ】のマグナモンだけが欠けていた。

 

バトルに負けた直後、葉月に奪われた。いや、マグナモンが葉月に選ばれ直されたと言うべきか。そのため、今椎名のデッキにはマグナモンがいない。

 

 

「芽座先生がジークフリードを離れるまで後1週間ある。それまでになんとかしないとね……」

「そうだね!先ずは他の先生に相談とかしないと………」

「人のカードを奪うなんて許せません!!」

 

 

雅治がそう葉月に対抗策を練ろうと考えると、夜宵と英次もそれに賛同するように声を上げる。

 

葉月の研修期間は後1週間。マグナモンを取り返すのなら、それまでになんとかして手を打たないといけない。

 

だが、一番肝心な人物は…………

 

 

「………いい……もういいよ皆、葉月とマグナモンの事は忘れよう………」

「…………え?」

 

 

その場にいる誰もが驚いた。何せあの椎名が、暗がりな声で諦めたような言葉を使ったからだ。

 

俄かには信じられないだろう。あの芽座椎名が弱音を吐いたのだ。

 

 

「な、何言っとんのや!いつものあんたなら「次こそはぁ!!」言うて、また挑みに行くとこやろがい!」

「そうだよ!椎名らしくもない!みんなであのロイヤルナイツのデッキをどうにか対策できるよう頑張れば…………」

 

 

真夏がそう言った。立て続けに雅治も口を出してきた。だが、今の椎名には何を言われようが響いてこない。本当にどうでもよくなったのだ。バトルの事が、バトルスピリッツの事が、

 

 

「………ごめん……しばらくほっといててよ………」

 

 

そして椎名はその寂しげな言葉だけをみんなに残し、保健室を出た。仲間達はただただその無気力な細い背中を見ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

職員室で晴太に無事だった事の報告を終えると、椎名はただ1人、学園の校舎の屋上にいた。時刻は夕方になる前と言ったところだ。

 

ーそして黄昏ながらも、思い出したくはなかったが、フラッシュバックであのバトルの最後が頭をよぎった。あの【ロイヤルナイツ】アルファモンにトドメを刺される瞬間が。そしてその時に葉月が放った言葉が。

 

 

ー『失せろ、弱者……お前は島に帰って子守でもやってろ……っ!!』

 

 

この言葉だけが椎名の頭を何度もよぎる。いくら忘れようとしてもどうやっても繰り返し頭の中で連呼される。

 

ーそんな時、誰かが屋上に来た。

 

ー赤羽司だ。

 

司は何も言わず、椎名の横に来た。

 

 

「おい………雅治の野郎から聞いたぞ……お前、本当にもう何もしないのか?」

 

 

司が椎名に聞いた。思っていた事を単刀直入に、

 

 

「……うん。もう疲れた……」

 

 

椎名がボソッと無気力な声でそう言い返した。

 

 

「……っざっけんな!!ふざけんなよ!!てめぇに勝てんのは俺だけだ!!あんな奴に負けたままでいるんじゃねぇ!!」

 

 

司が珍しく、いや久しぶりと言うべきか、本気で誰かに怒りをぶつけた。椎名の胸元を首に下がっているゴーグルごと掴み上げる。

 

 

「たった1回負けただけでそれかぁ!?お前はそんな玉じゃないだろ!?…………俺は一度お前に負け、そこから這い上がり、強くなった!!」

「だから何?………疲れたんだ……もう休ませてよ」

 

 

そう言って椎名は司の手を体ごと無理矢理引き離し、屋上を降りて行く。

 

 

「………ちぃ!!」

 

 

司はその屋上を去りゆく椎名の弱々しい背中を見ながら、舌打ちをし、苛立ちを見せた。

 

この問題は大変複雑である。バトルの勝敗の結果以上に、家族のこと、伝説のカードのこと、それの強奪等が絡みに絡みまくっている。

 

少なくとも今の椎名に必要な治療は時間を費やすことであった。

 

 

******

 

 

後日、椎名は自分の故郷である離島に来ていた。今日が学校のある平日であるにもかかわらず、

 

1人でなんとか飛行機のチケットを購入し、荷物をまとめ、無事、帰郷して来れた。

 

懐かしい風、匂い、風景。それらが全て、椎名の感覚を刺してくる。

 

次はバスに乗って、自分達の住んでいた山の麓に向かった。バスの窓から覗かせる殆ど緑しかない街並みもまた懐かしかった。

 

そして10分もしないうちに到着した。ここが自分達の住んでいた山。この上にハウスが建っている。

 

ただ、そこには登らなければならない階段がある。その段数はまるでカンフー映画さながらに多く、そして長い。殆ど登山となんら変わりはない。椎名は慣れていたからか、楽々と足を上げ、だんだん上へと登っていく。

 

ーそして、

 

 

「…………着いた………戻って来たんだ……ハウスに……」

 

 

やっと到着した。椎名が約15年間大勢の家族と共に時間を共有してきた場所に、ここを出てから1年とちょっと経ったが、全く変わらず、そこには広い遊び場と大きな木の家が建っていた。

 

 

「…………し、椎名??……椎名なの?」

「…………シスター……」

 

 

広場で小さい子供達と遊んでいたのは【シスターマリア】10年前に六月が雇った若いシスターである。その服装はシスターらしく黒い服だ。

 

シスターとその小さい子供達は椎名の姿を懐かしんで近寄ってくる。1年間程度しか離れてなかったが、それでも話したい事は山程あるのだ。

 

 

「見たわよ椎名!!【界放リーグ】!!頑張ったのね!!」

「………うん、ちょっとね」

 

 

椎名は少し照れくさそうに答えた。他の小さい子供達も椎名に色々と質問したり、「遊んで欲しい」と甘えて、手や服を引っ張ったりしていた。

 

ーそしてここにはあの人物もいる。椎名が赤ん坊の頃から知っているあの老人が、

 

 

「しぃぃなぁぁ!!」

 

 

少し間の抜けた顔や声、だが、誰よりも椎名に再会できて嬉しい人物。芽座六月がハウスから飛び出して、椎名の目の前に現れた。

 

 

「あら、おじ様……やけに気づくのが早いですね?」

 

シスターが六月に言った。

 

 

「ほっほ!わしは椎名の匂いなら半径1キロ以内ならわかるからのぉ!」

「ふふ、気持ち悪いですわ、おじ様」

「ぬぉ!?マリアちゃん!そりゃないわい!?!」

 

 

シスターは少し毒舌。いや、本人自体は分かってはいないか、知らないうちに失礼な事を言うのが彼女の癖だ。

 

 

「はは、相変わらずだね、シスターもじっちゃんも、………みんなも……」

 

 

椎名がそう苦笑いしながら言った。

 

そしたら六月が椎名のことをわかっているような感じで、

 

 

「…………葉月に会ったんじゃろ?」

「え?知ってたの?」

 

 

六月は何故か椎名が葉月と密かに再会していたことを知っていた。そしてそれだけではなかった。

 

 

「そしてあいつにわしと仲直りさせようと思い、マグナモンを賭け、バトルに臨み、逆に返り討ちにあって、それを取られ、何が何だか分からなくなって帰って来た。というところじゃろ……」

「……なんでそんなに詳しく……」

「ほおっほ!わしに知らん事はない〜〜〜!」

 

 

実際は界放市の市長、【木戸相落】から聞いていたのだ。葉月が教育実習生としてこの街に、界放市に来るということが、

 

六月には葉月の狙いがわかっていた。椎名からロイヤルナイツを、マグナモンを奪いに来るということが、

 

ーそして六月は珍しく椎名に真面目で真剣な顔をして、

 

 

「…………お前にも話す時が来たようじゃの………着いて来なさい……」

「………!?!」

 

 

そう言いながら六月は椎名に背中を向け、ハウスの横の洞穴へと足を進める。不思議に思ったものの、椎名はその後を追った。シスターマリアはそれを見て「いってらっしゃい」とでも言っているかのように手を振った。

 

 

******

 

 

椎名は六月の後ろについて行く。あまり入ったことのない洞穴を歩くことは、それはそれは新鮮なものであった。

 

 

「…………着いた……」

「っ!?………ひ、広い……っ!?」

 

 

六月が椎名に案内した場所は洞穴の最奥部。だだっ広い空間だ。そこにはいくつもの石碑が置かれている。

 

 

「……椎名はわしらが【バトスピ一族】の者であるのは知っておるな?」

「………ん?まぁね」

 

 

そう、あまり世間では知られてはいないが、【芽座一族】という一族は存在する。それが六月であり、その孫である葉月なのだ。ちなみに椎名は拾い子なのでそれには該当しない。

 

 

「………そして【ロイヤルナイツ】………知っておるな?」

「うん、知ってるよ、世界でただ1枚ずつしかない伝説の13枚のデジタルスピリット………だよね……」

 

 

椎名は少なからずこの時、葉月に奪われたマグナモンの事を思い出していた。実際はどれだけあれが奪われるのが嫌だった事だろうか。

 

そして、六月は衝撃の告白をする。

 

 

「………そのロイヤルナイツは……実は我ら一族の先祖で、ある人物がそれを創生したのだ………オーバーエヴォリューションでの」

「……………っ!?!」

 

 

椎名は驚愕した。アホ毛が飛び出る程に。

 

 

「そ、それってつまり、ロイヤルナイツは元々芽座一族のカードだったって言うこと??」

「うむ、随分前に世界中にバラバラに散らばったがの………1枚1枚が強力な故に、力のみを欲する葉月はそれを全て集めようとしてるのじゃよ」

 

 

葉月がロイヤルナイツを集める理由は当然力を得、頂点に立つことかと思っていた椎名だったが、それだけではなかった。一族のカードを集める為なのだと悟った。まぁ、後者など二の次なのだろうが、

 

 

「………そして、ロイヤルナイツにはそれぞれ意思がある……」

「………?」

「つまり、持ち主をロイヤルナイツのカード自身が決めるのじゃよ」

「っ!!!……じゃあ、私はマグナモンに選ばれてたってこと??」

「まぁ、そうなるの……」

 

 

ロイヤルナイツは主人を選ぶ。葉月のアルファモンもジエスモンも葉月を主人だと認めたからこそ、今、彼の元にいる。

 

椎名のマグナモンとて同じ。六月が椎名が選ばれていることに気づいて、それを椎名に託したのだ。ただ、今は葉月がその主人となってしまったのだが、

 

 

「………かつて、ここにはロイヤルナイツのマグナモンが収められて来た。そして葉月はそれに選ばれる為に努力した……………血反吐が出るような、血が滲むような修行をの…………」

「……………葉月が………」

 

 

葉月は6年前まではここで修行していた。マグナモンに選ばれ為に。その事を聞いて、椎名は少なからず同情してしまった。一瞬だが、マグナモンは葉月の元に行って良かったのではないかとも思ってしまった。

 

 

「………だが、いくらやっても選ばれなかった………それを見かねたわしは、6年前、葉月に無茶な修行をやめさせようとした。強引にな…………だが、あいつはあの時、黒いロイヤルナイツ、アルファモンに選ばれ、そして呼び寄せ、マグナモンだけではなく、他の世界中にあるロイヤルナイツをも集めると心を固めてしまった。………そして、今がある」

「……っ!!そんな事が…………そうか、それが6年前、葉月が家を出た理由………」

 

 

椎名は6年前の出来事を知った。話を聞く限り、ジエスモンはその旅の途中でゲットした物なのだろう。

 

 

「…………あの馬鹿者……どんどんエスカレートしておるな………………」

 

 

六月はどこか思い詰めたような表情をした。

 

そして、意を決したように、

 

 

「椎名、お前に頼みがある………」

「?」

「葉月を止めてくれ………わしはおそらく奴を元に戻せるのはもう椎名しかいないと思っている……っ!!」

「…………わ、私!?」

 

 

突然の六月の提案。六月は椎名なら葉月に喝をいれれるのではないかと睨んでいた。

 

 

「………で、でも私じゃ………」

 

 

椎名はただ、バトルに対する自信を、あの葉月とのバトルで失っていた。自分ではどうにもならない。椎名はただただそれを思っていた。

 

そこで、さらに六月から提案があり、

 

 

「…………ふっふっふ……なら、ここ一番の秘密兵器を椎名に託そうではないかぁ!!」

「………秘密兵器?」

 

 

六月がそう陽気に言うと、祠の壁を押す。すると、その一部だけが移動し、謎の入れ物がその壁から出てくる。

 

ーその中にはあるカード達が入っており、

 

 

「……か、カッコいい!!」

「じゃろじゃろ!?!もっと褒めてくれ椎名!!!をっほっほ!!」

 

 

椎名はそのカラクリに興奮し、目を輝かせ感動した。六月はそんな表情の椎名を可愛く思い、大きく笑って見せた。

 

だが、そんな表情も直ぐに息を潜め、六月はすぐさま中のカードを椎名に託そうとする。

 

ー葉月すら知らない秘密もついでに添えて、

 

 

「………葉月も知らぬことじゃが、ここにあるロイヤルナイツは、本当はマグナモンだけじゃない………本当は2枚あるのじゃよ………それがこれじゃ………」

 

 

六月は椎名にその入れ物の中のカードを1枚見せる。それはまさしくロイヤルナイツ。椎名も授業で散々習った。そのカードの名前は当然知っていた。

 

ーそのロイヤルナイツの名は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………【デュークモン】……っ!!」

 

 

デュークモン。赤属性のロイヤルナイツだ。

 

椎名はそれに釘付けになる。不思議だ。名前しか知られていないカードで、初めてそれを見たはずなのに。何故か初めてではない、何処かであったような感覚が椎名を襲った。

 

六月からそのデュークモンを扱うためのカードであろうか。無我夢中になって、それごと手に取り、受け取る。

 

ーそんな時だった。椎名の手がカード達に触れたその瞬間だ。

 

 

「…………え?…………っ!?!」

 

 

空間が紅く光った。そんな気がした。

 

椎名は意識が不思議なところへと飛ばされたような感覚がした。まるで急に異世界なでも引き摺り込まれたような、そんな感覚だった。

 

 

******

 

 

「…………っ!?………ここは………」

 

 

気づくと椎名は、何故か謎の花畑に来ていた。ピンク色のコスモスの花がこれでもかと咲き誇っている。さっきまで花1つありもしない薄暗い洞穴の中にいたはずなのに。

 

いったい何故だろうか。と、椎名が考えている時だった。そんなものの答えなど出る間も無く、何者かが椎名の名を呼んだ。

 

 

「し〜〜〜な〜〜〜〜!!」

「……………え?この声………」

 

 

ガラガラだが、無邪気な子供のような明るい声。そんな声が椎名の背後から聞こえてきた。椎名はその声を知っている。

 

これはあの時、葉月に負け、保健室で眠っている時に見た夢の声と同じ。あの紅い光の声主だ。

 

そう、間違いない。こんな偶然などあるだろうか。椎名は声のする後ろを振り向いた。

 

ーが、それは想定外の人物であって、

 

 

「…………やぁ!!でしょ!また会えた会えた〜〜!!」

「……………っ!?!……な!?」

 

 

その姿に、椎名は驚きを隠せなかった。

 

それもそのはず、その声主の正体は単なる紅い光でも無く、言うなれば、【紅くて小さめの恐竜】そんな謎の生命体が椎名の目の前にいたのだ。

 

その恐竜は椎名と逢えた事を喜んでいるのか、両手を上げ、踊るように喜んでいた。

 

 

「………きよ、恐竜っ!?!………ちょっと可愛いかも……っ!!」

 

 

椎名はどんな時でもマイペースで、能天気だ。こんな状態ならパニックになるのが普通だが、驚いたのは一瞬だけで、直ぐにこの不思議な出来事に順応してしまった。

 

 

「……………僕は【ギルモン】!!………改めてよろしく〜〜!!」

 

 

紅い恐竜、いや、ギルモンは元気よくそう自分の名前を椎名に教えた。

 

 

「…………ギルモンっ!!………もしかしてギルモンはあの声の、紅い光の正体?」

「そうだよ〜〜!!ずっと椎名を待ってたんだーーー!!」

 

 

やはりそうだった。あの妙に頭に印象強く残った夢は、ギルモンの影響。不思議過ぎて椎名はもうそういうことであると勝手に自分の中で斜線を入れた。

 

ーそんなことよりも椎名はギルモンに聞きたいことがあり、

 

 

「ギルモンはスピリットなの?」

「そうだよ!!僕以外にもほら!!………」

「…………っ!?!」

 

 

ギルモンが長い鉤爪を別の方向に向ける。椎名は何かと思い、そこへと振り向くと、

 

そこには、ギルモンと同じような紅いスピリットが結構いた。

 

ー先ずはギルモンをサイズアップさせたかのようなスピリット、

 

ー次はそれより大きな体格に加え、武装を施したスピリット。

 

ー紅いマントを靡かせる白い鎧の騎士…………

 

ー極め付けは紅い飛行物体。小型ジェット機のような見た目のものが宙を自由に飛翔している。

 

 

「おおっ!!みんなカッコいい!!」

 

 

椎名はこれらのことを見ているうちに、ここが怪しいところだと疑う気持ちを完全に無くしていた。

 

ただただその目の前にいるカッコいいスピリット達の勇姿に見惚れ、感動し、高鳴るように興奮していた。

 

 

「………僕らはみんな君の力、そして友達だよ………これでやっと君といられるね〜〜!!」

「………そうか、みんな友達…………っ!!」

 

 

かつて、ここまで素晴らしい楽園があっただろうか。椎名は今、夢の世界にでもいるような気分であった。

 

ーそして、

 

 

「僕らは君を、椎名を絶対に守る!!………今日から、そしてこれからずっと………」

 

 

ギルモンが他のスピリット達の前に行き、吠えるようにそう言った。他のスピリット達も同意なのか、同じように、又はギルモンと共鳴するかのように吠え、咆哮を上げ、頷いた。椎名もそんな姿を優しい笑顔で微笑ましく見守っていた。

 

ーそして、椎名の視野が狭くなって、やがて真っ暗になった。元の場所に戻ろうとしてるのだ。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「……………っ!?!」

 

 

椎名は気づくと、元の洞穴に戻っていた。周りにはじっちゃんこと、六月がおり、その手には手渡されたカード入れを手に持っている。

 

 

「どうじゃ………」

 

 

六月が椎名に聞いた。椎名の経験した謎の世界のことではない。手に持ったカード達のことを聞いたのだ。

 

 

「ど、どうじゃじゃないよぉ!!じっちゃんんん!!すごい!!私スピリットに会っちゃった!!やっぱスピリットは本当にいるんだよ!!」

 

 

さっきまでの興奮が冷めないのか、椎名は胸が高鳴り、さっきまでのことを六月に話そうと詰め寄る。

 

六月は何のことかはさっぱりであっが、兎に角、そのカード達を気に入ってくれたことだけは完全に理解した。

 

 

「ほっほ、気に入ってくれたかな?…………やっぱり、わしは笑ってる椎名が好きじゃわい………どうじゃ?そのカード達を使って、わしとバトルしてみるかの?」

 

 

六月がまた、椎名に提案した。

 

椎名は一番大事なことを、このカード達、ギルモン達のお陰で、思い出した。

 

そうだ。バトルは楽しむものだ。ドキドキとワクワクが止まらないものだ。勝ち負けなどよりも先ず先には楽しむことが大前提であるとあるということを、

 

ーそれを葉月にも教えなければならないということも理解した。

 

 

「やるやる!!もうワクワクしかしない!!早くこのカード達でバトルしてみたいよ!!」

 

 

当然椎名の応えはイエス。バトルを承諾した。ギルモン達と出会ったことで、椎名は無気力な状態から脱していた。

 

芽座椎名はもはや完全に復活した。

 

椎名は20枚程度ある新たなカード達を、マグナモンのいない39枚のデッキにそのまま重ね、投入した。物は試しだ。先ずはどんなカードか見てみたいのだろう。

 

 

「………よし、行くかの」

 

 

六月は椎名と距離を取り、Bパッドを展開した。

 

そして椎名もそれを、Bパッドを展開した。

 

互いにデッキをセットし、始まる。

 

 

「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

バトルが洞穴の中で始まった。

 

ー先行は、六月だ。

 

 

[ターン01]六月

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「ほっほ、メインステップじゃの…バーストを伏せ、シキツルを召喚、効果でカードをドロー……エンドじゃ」

手札5⇨4⇨5

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

 

シキツルLV1(1)BP1000(回復)

 

バースト【有】

 

 

「………っ!?!」

 

 

六月は流れるようにターンを進め、そして終えた。

 

場には折紙鶴のようなスピリットが召喚される。その効果は単純ながらとても有用である。

 

が、椎名は六月がその紫のスピリットを召喚したことに対して違和感しか感じられなくて、

 

 

「じっちゃん、紫のスピリットなんて入れてたっけ?」

 

 

椎名が六月に言った。

 

芽座六月と言えば、青と緑である。昔、椎名もそれを真似て今の色になっている。

 

だが、今六月が呼び出したスピリットは紫。たしかに椎名としては何事かと言わんばかりの出来事であって、

 

 

「ほっほ、椎名も試すなら、わしも新しいデッキを試したくなってのぉ、」

 

 

六月が用意したのは暇を持て余した時に構築したデッキであった。もはや何が入っているかは六月本人でさえも覚えてはいない。

 

椎名もデッキを、新たなカードを試すためのバトルであるため、六月はこのデッキがうってつけであると判断し、使用したのだ。

 

そして次は椎名の初ターン。いったいどんなバトル展開となるのだろうか。

 

 

[ターン02]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップっ!!」

 

 

椎名は勢いよくメインステップへと移行する。

 

そして、早速呼び出される。新たなる力が。

 

 

「……真紅の魔竜は今こそ永き眠りから覚める!!………赤き成長期スピリット、ギルモンをLV2で召喚!!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨0

トラッシュ0⇨3

 

「…………!!」

 

 

椎名の目の前に現れたのは紅き魔竜。まだ成長期ではあるが、成長すれば強力なスピリットになると悟れる程の可能性を感じさせられるものがある。

 

 

「一緒に頑張ろうね!!ギルモン!!」

 

 

椎名の言葉に反応するかのように吠えるギルモン。夢の世界では人語を話していたが、ここでは話すことができないのか、

 

 

「……召喚時効果!カードを5枚オープン!!」

オープンカード↓

【ブイモン】×

【ワームモン】×

【エクスブイモン】×

【ライドラモン】×

【グラウモン】◯

 

 

葉月のハックモンと同等の枚数をオープンできるギルモンの効果。この中の対象のデジタルスピリットが手札に加えられる。

 

ーそしてそれがあった。

 

 

「私はグラウモンを手札に加える!!」

手札4⇨5

 

 

椎名はその中のグラウモンというカードを加えた。

 

それはギルモンの順当な進化形態であり、

 

椎名はそれを呼び出すべく、メインステップを終え、アタックステップへと入る。

 

 

「アタックステップっ!!その開始時!!ギルモンの【進化:赤】を発揮!!赤の成熟期スピリット、グラウモンを召喚!!」

グラウモンLV2(2)BP6000

 

 

ギルモンにデジタルコードが巻き付けられる。ギルモンはその中でより巨大に進化を遂げる。

 

新たに現れたのはグラウモン。ギルモンが………真紅の魔竜が一段階進化した姿である。

 

 

「ほぉー!!立派な竜じゃのぉ〜〜」

 

 

六月がそんな気楽な声をそれに向けて放つ。

 

 

「アタックステップは継続っ!!グラウモンでアタック!!そのアタック時効果でBP7000以下のスピリット1体を破壊!!」

「………っ!?」

 

 

グラウモンのアタック時効果だ。それは赤属性らしくBP以下の破壊だ。

 

六月の場には該当するシキツルが存在する。今回はそれが破壊されることになる。

 

 

「いけぇ!!グラウモンっ!!……魔炎の………エキゾーストフレイム!!!」

「………っ!!」

 

 

グラウモンの口内より放たれた熱く煮えたぎる豪炎。それが六月のシキツルをあっという間に燃えかすにした。

 

これはアタック時の効果。当然本命のアタックが残っており、

 

 

「グラウモンの本命アタック!!」

 

「………ライフで受けようかの」

ライフ5⇨4

 

 

グラウモンの両肘に備え付けられた刃が、六月のライフを1つだけ引き裂いた。

 

ーだが、それは六月のバースト発動条件であって、

 

 

「ライフの減少でバーストじゃ!!緑のネクサス、手裏剣大地!効果でコアを追加し、ノーコスト配置じゃ!!」

リザーブ2⇨3

手裏剣大地LV1

 

「………っ!!……緑のカード……」

 

 

かつて、真夏の実兄、緑坂冬真も使ったこのネクサス。手裏剣の形をした大地が六月の背後で宙を舞い、現れた。

 

 

「………ターンエンド」

グラウモンLV2(2)BP6000(疲労)

 

バースト【無】

 

 

できることを全て終え、椎名はそのターンをエンドした。

 

次は六月のターンだ。

 

 

[ターン03]六月

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨7

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ、バーストを再び伏せ、タマムッシュをLV2で召喚じゃ……っ!!」

手札5⇨4⇨3

リザーブ7⇨1

トラッシュ0⇨2

 

「………緑のスピリットか〜〜」

 

 

前のターン、紫のスピリットを召喚した六月は、このターン打って変わって緑の玉虫のようなスピリットを召喚する。それは大変優秀なスピリットであって、

 

 

「タマムッシュの召喚時効果!このスピリットのLV分、コアを追加じゃ!」

タマムッシュ(4⇨6)

 

 

つまりは2つだ。2つのコアがタマムッシュに与えられた。そして次だ。六月はさらなる展開でバトルをメイクしていく。

 

 

「そして次はブレイブ、テッポウナナフシを召喚じゃ!」

手札3⇨2

リザーブ1⇨0

タマムッシュ(6⇨4)

トラッシュ2⇨4

 

 

六月が召喚したのはナナフシの姿をしたブレイブで、お尻の方が鉄砲になっている。

 

これも緑では大変優秀な効果を備えており、

 

 

「このブレイブの召喚時、わしは手札を全て破棄し、椎名の手札の枚数分だけ、カードをドローする!」

「………私の手札は……5枚!?」

 

「…………よって5枚ドローじゃ!」

手札2⇨0⇨5

破棄カード↓

【フーリン】

【シキツル】

 

 

六月は少なかった手札を一気に潤していく。

 

 

「さらにネクサスのLVを上げ、アタックステップじゃ」

タマムッシュ(4⇨2)LV2⇨1

手裏剣大地(0⇨2)LV1⇨2

 

 

手裏剣大地のLVが上がる。そして六月はアタックステップへと移行し、

 

 

「タマムッシュとテッポウナナフシでアタックじゃ!」

 

 

2匹の虫が地をかける。目指すは椎名のライフ。

 

 

「2つともライフで受ける!!」

ライフ5⇨4⇨3

 

 

2匹の体当たりが椎名のライフを1つずつ、一気に2つを破壊した。

 

 

「エンドステップ……手裏剣大地の効果で2体を回復させて、ターンエンドじゃよ」

タマムッシュLV1(2)BP2000(疲労⇨回復)

テッポウナナフシLV1(1)BP2000(疲労⇨回復)

 

手裏剣大地LV2(2)

 

バースト【有】

 

 

六月はできることを全て終え、そのターンをエンドとする。そしてそのタイミングで、手裏剣大地の手裏剣が高速で回転する。そこから巻き起こる風が、六月の2匹のスピリット達に力を与えた。

 

 

「やっぱじっちゃん強い!!燃えてきたぁ!!」

 

 

椎名はより強くその闘志を燃やしていく。

 

 

[ターン04]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨6

トラッシュ3⇨0

グラウモン(疲労⇨回復)

 

 

「よし!!メインステップだ!ギルモンを再度LV2で召喚!!……そしてその召喚時!!」

手札6⇨5

リザーブ6⇨2

トラッシュ0⇨2

オープンカード↓

【ライドラモン】×

【マリンエンジェモン】×

【ディーアーク】×

【グラウモン】◯

【ブイモン】×

 

 

【進化】の効果で手札に戻っていたギルモンが再度呼び出される。そしてその効果も成功。椎名の手札に2枚目のグラウモンが手札へと加えられた。

 

ーだが、

 

 

「よし、2枚目のグラウモンを手札に………!」

手札5⇨6

 

「相手の効果によって手札が増えた時………バースト発動!!……グリードサンダーじゃ!!」

 

 

六月のバーストが待ってたと言わんばかりに勢いよく反転する。それは青のバースト。椎名もよく使っている1枚だ。それを見た椎名は思わず「げっ!?」と言葉を詰まらせる。

 

 

「この効果で相手の手札が5枚以上なら相手はそれを全て捨て、新たに2枚のカードをドローする」

 

「………くぅっ!!」

手札6⇨0⇨2

破棄カード↓

【グラウモン】

【リアクティブバリア】

【ブイモン】

【ライドラモン】

【ストームアタック】

【ファイナル・エリシオン】

 

 

六月の場から椎名の手札まで迸る青い稲妻。それは椎名の手札にまとわりつき、トラッシュへと強制的に叩き落とす。椎名はその代わりにカードを新たに2枚引いた。が、結果的に手札が多く減ってしまったのは言うまでもない。

 

 

「ちぇ……まぁいいや!グラウモンをLV3に上げて、アタックステップだ!」

リザーブ2⇨0

グラウモン(2⇨4)LV2⇨3

 

 

椎名は気持ちを切り替え、メインステップを続けた。

 

LVが上がり、大きく吠えるグラウモン。このアタックステップでも大きくやる気を見せる。

 

 

「アタックだグラウモン!!エキゾーストフレイムで今度はテッポウナナフシを破壊だ!!」

 

 

グラウモンの放つ熱線が、今度はテッポウナナフシを焼き尽くした。テッポウナナフシは灰となって姿を消した。

 

 

「ライフで受けるかの」

ライフ4⇨3

 

 

グラウモンの肘にある刃がまた六月のライフを切り裂いた。

 

 

「続け!!ギルモン!!」

 

「それもライフじゃ」

ライフ3⇨2

 

 

六月のライフまで走り行くギルモン。鋭い鉤爪の一撃でまた六月のライフを切り裂いた。

 

 

「………ターンエンド」

グラウモンLV3(4)BP7000(疲労)

ギルモンLV2(2)BP4000(疲労)

 

バースト【無】

 

 

攻めには転じたものの、やはりグリードサンダーで手札を大きく削られたのが痛かったか、その後はあまり展開も出来ず、アタックだけで椎名はそのターンを終えた。

 

次は六月のターンだ。

 

このターンで彼は本腰を入れてくる。

 

 

[ターン05]六月

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨8

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップ……さぁ、このデッキのエースでも召喚するとするかのぉ……ネクサス、要塞都市ナウマンシティを配置、そしてその配置時効果!!これにより、召喚、月光龍ストライク・ジークヴルム!」

手札6⇨5⇨4

リザーブ8⇨1

手裏剣大地(2⇨0)LV2⇨1

トラッシュ0⇨5

 

「っ!?!今度は白ぉ!?」

 

 

六月の背後にまた1つネクサスが配置される。それは殺風景な要塞都市。そしてその中から現れるのは月の龍。月光の兆しと共にストライク・ジークヴルムが優雅な姿を見せた。

 

 

「ほっほ、そしてまだまだ終わらんぞ!ブレイブ、コテツ・ティーガーを召喚し、ストライクと合体じゃ!」

手札4⇨3

リザーブ1⇨0

トラッシュ5⇨6

 

「………っ!?」

 

 

また緑のブレイブだ。虎のようなブレイブ、コテツ・ティーガーが刀に変形し、ストライク・ジークヴルムの口に装備される。

 

そして六月はこのままアタックステップへと移行し、

 

 

「アタックステップじゃ!行け!合体スピリット!……さらにフラッシュ!タフネスリカバリーを合体スピリットに対して使用し、BPを2000アップ、BPが10000以上なら回復じゃ!」

手札3⇨2

タマムッシュ(2⇨1)

月光龍ストライク・ジークヴルム+コテツ・ティーガーBP15000⇨17000(疲労⇨回復)

 

「…………っ!?」

 

 

ジェット噴射で飛行するストライク・ジークヴルム。タフネスリカバリーの力により、さらに2度目のアタックチャンスをも得た。

 

 

「さぁ、椎名よ、どう受ける?」

 

「っ!!……ライフで受ける!」

ライフ3⇨2

 

 

ストライク・ジークヴルムの口に咥えられたコテツ・ティーガーの刀が、椎名のライフを一刀両断した。

 

 

「ほれ、もう一撃じゃ」

 

「っ!?……」

ライフ2⇨1

 

 

六月はもう一度ストライク・ジークヴルムに指示を送り、また椎名のライフを1つ一刀両断させた。

 

いよいよ椎名のライフも残り1つ。あとがなくなった。

 

そして、六月の場には未だ回復状態で居座っているタマムッシュが存在しており、

 

 

「ほっほ、これで終いかの?タマムッシュでアタックじゃ…………」

 

 

ラストアタックであると言わんばかりにタマムッシュに攻撃の指示を送る六月。

 

これで終わる。

 

ーかと思われたが、椎名にはまだ秘策をその手に握っており、

 

 

「………使うなら………ここだぁ!!フラッシュマジック!!【ブルーカード】!!」

手札2⇨1

リザーブ2⇨0

トラッシュ2⇨4

 

「………っ!!そのカードは、フラッシュでデジタルスピリットを進化させるカード……っ!!」

 

 

そう。これはデジタルスピリットをフラッシュで、好きなタイミングで進化させる可能性があるマジック。

 

だが、飽くまでも可能性があるだけ、確定ではない。デッキから4枚オープンし、その中にある進化形カードと同じ色のスピリットが場に存在すれば成立するピーキーなカード。この場合だと赤一色のスピリットが対象内だ。

 

ーつまり、今の椎名のデッキ上の4枚次第で勝負が決まると言っても過言ではない。

 

 

「…………効果で……カードをオープン!!」

 

 

椎名がためにためてデッキの上をオープンする。

 

ー結果は………

 

 

オープンカード↓

【マリンエンジェモン】×

【パイルドラモン】×

【ディーアーク】×

【メガログラウモン】◯

 

 

「…………っ!?!!」

 

「…………よし!!赤の完全体!メガログラウモン!!1コスト支払い、グラウモンから進化だ!!」

グラウモン(4⇨3)

トラッシュ4⇨5

メガログラウモンLV2(3)BP9000

 

 

青いカードがグラウモンのサイズまで拡張され、グラウモンの頭上から足元まで降りていく。グラウモンはそのカードの中で進化していた。また1つ大きくなった赤の完全体スピリット、主に上半身が武装されたメガログラウモンがそこにはいた。

 

 

「か、かっこいい!!!これがメガログラウモン!!」

「ほぉー!!これは見事な!!」

 

 

メガログラウモンの雄姿に思わず声を上げるバトル中の2人。メガログラウモンはグラウモンとは比べ物にならない程の咆哮をこの洞穴の中で上げた。

 

ーそして、

 

 

「ブルーカードの効果は召喚!!よってメガログラウモンは回復状態!!迎え撃て!!」

 

 

椎名のライフを奪おうと飛び上がるタマムッシュ。だが、その軌道上にメガログラウモンが飛び出し、それをいとも容易く手の武装で引き裂いた。

 

 

「…………ほっほ、ターンエンドじゃよ」

月光龍ストライク・ジークヴルム+コテツティーガーLV3(4)BP15000(疲労)

 

手裏剣大地LV1

 

バースト【無】

 

 

六月はできることを全て終え、そのターンをエンドとした。その表情はどこか誇らしい。

 

場のスピリットは残り1体。防御能力の高いストライク・ジークヴルムを残してのエンドだ。

 

次はメガログラウモンを呼び出した椎名のターンだ。

 

 

[ターン06]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札1⇨2

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨6

トラッシュ5⇨0

ギルモン(疲労⇨回復)

メガログラウモン(疲労⇨回復)

 

 

リフレッシュステップにより、2体の真紅の竜が、咆哮を上げながら疲労より起き上がった。

 

 

「メインステップ!!ギルモンとメガログラウモンのLVをマックスに!!」

リザーブ6⇨2

ギルモン(2⇨4)LV2⇨3

メガログラウモン(3⇨5)LV2⇨3

 

 

より強くなり、一層強く咆哮を上げる2体の真紅の竜。

 

椎名は確信していた。

 

ーこのターンでバトルの決着が着くことを。

 

ーこのメガログラウモンなら決めることができることを。

 

 

「アタックステップ!!!」

「おっと、椎名!その前に、【合体中】のストライクの効果が発揮じゃ、相手のアタックステップの開始時に相手スピリット1体を選んで、このターン、其奴はアタックせねばならん………わしはこの効果でメガログラウモンを対象に取る」

 

 

ストライク・ジークヴルムが気高く咆哮を上げる。その咆哮を聞き取ったメガログラウモンはそれに共鳴するかのように同じく咆哮を上げた。

 

これでメガログラウモンは是が非でもこのターン中にアタックせねばならなくなった。

 

ーが、問題はない。

 

理由は……

 

 

「最初からアタックするつもりだよ!!いけぇ!メガログラウモン!!」

 

 

戦闘態勢に入るメガログラウモン。そしてここから怒涛のアタック時効果の始まりだ。

 

 

「メガログラウモンの効果!!相手のブレイブを1つ破壊し、カードを2枚ドロー!!ここではコテツ・ティーガーを破壊!!」

手札2⇨4

 

「…………ぬっ!?!」

「防人の刃、ペンデュラムブレイド!!」

 

 

メガログラウモンはその体躯からは想像もつかない速さでストライクへと接近。そして両腕に備え付けられた刃で、見事に合体した状態であった刀、コテツ・ティーガーだけを砕いた。

 

それだけではない。2枚ドローの効果で、グリードサンダーにやられた椎名の手札までも回復させて見せた。

 

ただ、まだこれで終わりではなくて、

 

 

「さらに!!もう1つのアタック時効果で、相手のシンボル1つのスピリット1体を破壊!!……破壊対象はもちろんストライクだよ!!」

 

 

メガログラウモンはストライクから距離を取り、エネルギーを上部の武装に溜め込む。そのパワーは究極体に勝にも劣らない程だ。

 

 

「原子の咆哮、アトミックブラスター!!!」

 

 

メガログラウモンの武装された胸部から一気に解き放たれた。

 

それは一直線に飛び行き、ストライクの腹部に命中。そしてそれをそのまま貫いてみせた。流石に堪えたか、ストライクは力尽き、倒れ、大爆発を起こした。

 

ーこれで勝負は決した。後はアタックするだけ。

 

 

「そして本命のアタックだ!!メガログラウモン!!」

 

「っ!!!…ライフで受けるっ!」

ライフ2⇨1

 

 

メガログラウモンの両腕に装備されている「ペンデュラムブレイド」と呼ばれる装備が六月のライフを一瞬にして切り裂いた。

 

ーそして、

 

 

「これで終わりだ!!ギルモン!!」

 

 

椎名の指示に、ギルモンは口内で炎を溜め込む。そしてそれを勢いよく六月のライフに向けて放った。

 

 

「…………ふふ、流石は椎名じゃ………ライフで受ける………」

ライフ1⇨0

 

 

六月はその攻撃を受け入れるように受け、最後のライフを破壊された。これにより、ライフはゼロ。勝者は芽座椎名だ。

 

 

「…………いよっしゃぁ!!!じっちゃんに勝ったよ〜〜!!」

 

 

喜びのあまりその場で飛び上がる椎名。それに呼応するようにギルモンとメガログラウモンがまた咆哮を上げた。

 

 

******

 

 

バトルも終わり、椎名と六月はその場で一息ついていた。

 

 

「どうじゃった?椎名よ……」

「どうじゃった?じゃないよ!!じっちゃん!!このスピリット達すごいよ!!凄い楽しいバトルだった!!」

 

 

椎名はさっきのバトルの興奮が収まらなかった。

 

もっと新しいスピリット達を、ギルモン達を使ってバトルがしたい。その気持ちで心が満たされていた。

 

 

「ほっほ、そうかそうか、気に入ってくれたようで良かったわい!」

「よっしゃぁ!!!こうしちゃいられない!!この調子で学園に戻って葉月に勝って来るぞぉ!!」

「ぬっ!?ちょっと待つんじゃ椎名!!今は………」

 

 

六月も椎名がギルモン達を気に入ってくれた事に満足していた。

 

モチベーションがうなぎ登りになった椎名はそんな六月など放ったらかして、洞穴の中から外へと出ようとする。今すぐに戻らないといけないからだ。何せ、葉月がジークフリード校にいるのは1週間だけ、これまでの日数を考えると、後4日くらいしか彼はいないのだ。

 

ーだが、

 

椎名が外に出ようとすると、息も尽くせない程の強風が吹き荒れていた。周りの木々がしなりにしなっており、中にはもうぽっきり折れているものもある。

 

これはいったい何事か。と椎名が思ったその時に、彼女の横に六月が来て、のほほんと説明し出す。

 

 

「おい、椎名よ、しばらくは帰れんぞ……ほれ、この辺りこの時期台風ばっかじゃからのぉ………ほっほ、」

「え、………えぇ!?!!」

 

 

今、この島全体を襲っていたものは、台風。吹き荒れる強風はそれが影響だ。風が強ければ船も出ないし、ましてや飛行機など出るわけもない。椎名はこの島のこの時期の気候をすっかり忘れていた。

 

ー果たして椎名は後4日以内に界放市に帰ることができるのだろうか。

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉

夜宵「本日のカードはこれです!【ギルモン】!!」

夜宵「ギルモンは椎名ちゃんが新たに得たキーカード!赤属性の中でも特に珍しい系統の滅竜スピリットです!」


******


〈次回予告!!〉

英次「椎名さん、あれから全然学園に来てないみたいなんです。やっぱりショックですよね、………ですが、安心してください!!僕がなんとかしてマグナモンを取り返してみせます!!次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ「舞姫のいないジークフリード」……今、バトスピが進化を超えてみせます!!」


******


最後までお読みくださり、ありがとうございました!
じっちゃんの言っていることは【第42話 芽座葉月……!!】や、【第43話 ロイヤルナイツ激突!】に通じるものがあるので是非そちらの回も参考程度に、
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