バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

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第48話「椎名のスランプ!? ブイorギル!」

 

 

 

 

 

 

 

 

この物語が始まってからと言うもの、芽座椎名は実に多くのカードを得てきた。

 

最初から所持していたアーマー体、【フレイドラモン】と【ライドラモン】成熟期の【エクスブイモン】と【スティングモン】

 

界放リーグの予選前で手に入れたアーマー体、伝説のロイヤルナイツの一柱【マグナモン】

 

紫治一族との戦いの最中、オーバーエヴォリューションで新たに獲得したジョグレス体、【パイルドラモン】

 

そして、赤のロイヤルナイツ、【デュークモン】と【ギルモンを含む真紅の魔竜達】

 

これらのカードは椎名のデッキに強く、そして大きく影響を与えた。

 

ーだが、強すぎる力同士は時に反発し、噛み合わないこともあって………

 

 

******

 

 

 

今の時期は7月、界放リーグの学生らは1学期の期末試験中であった。

 

期末試験の内容は主に2つ。普通の科目を含めた筆記試験。

そして、バトルの実力を測る実技試験だ。

 

ー今はその実技試験の最中。生徒らがそれぞれ自由に3回までバトルをする。基本的に友達同士でやるのが生徒内の暗黙の了解なのだが、八百長や不正等を行わぬよう、教師らがそれぞれのバトル場を監視している。

 

椎名はそんな中、1戦目で真夏とバトルしており………

 

 

「これで終わりやな……いけぇ!リリモンッ!!」

「…………っぅ!ライフで……受ける」

 

 

真夏の操る緑のスピリット、ピンクの妖精リリモンが、掌から緑の波動を放つ。椎名はもはや打つ手がなかったか、手札をじっくり見てもやり返すことはできず、そのままそれを受け、最後のライフを散らした。

 

よってこの椎名と真夏のバトルは真夏の勝利となる。

 

 

******

 

 

2回目、椎名は今度は夜宵とバトルしていた。そして絶賛大ピンチ。今にも夜宵の紫のスピリット、レディーデビモンが襲いかかろうとしている。

 

 

「これで終わりだね!椎名ちゃん!レディーデビモンでアタックッ!!」

 

 

夜宵が勢いよく悪魔型の女性であるレディーデビモンに指示を送る。レディーデビモンが椎名のライフを奪おうと飛び立つ。椎名の場には赤の魔竜、グラウモンが疲労状態で1体のみ、

 

だが、ここから椎名の反撃が………

 

 

「甘いよ、夜宵ちゃん!!フラッシュマジック!!ブルーカード!!」

「っ!?!」

「このカードはデッキから4枚のカードをオープンして、その中にある進化系スピリットを、自分の場のスピリットと色が一致するように進化召喚できるっ!」

 

 

一発逆転が可能な必殺マジック、ブルーカード。この場合だと椎名の場にグラウモンがいるため、赤一色のスピリットが対象だ。椎名が4枚のカードをオープンする。

 

ーが、

 

 

「………カード、オープンッ!!」

オープンカード↓

【ブイモン】×

【パイルドラモン】×

【ディーアーク】×

【グラニ】×

 

 

ーはずれた。全部。何もかもが圧倒的にはずれた。

 

 

「…………あ、あれぇ!?!」

 

 

驚く椎名の目の前には既に夜宵のレディーデビモンが存在していた。椎名の驚いた顔に呆れながらも、そのライフを蹴り飛ばし、夜宵を勝利に導いた。

 

 

******

 

 

ラストとなる3回目、椎名は雅治とバトルしていた。

 

現在、雅治の場には、彼のエース、ハニワのような見た目に、天使のような翼をもつ黄色のスピリット、シャッコウモンがいる。

 

対し、椎名の場には何もなく、このターンであのシャッコウモンをどうにかしなければ敗北は必至であると言う状況に追い込まれていた。

 

椎名は結構ある手札と睨めっこしながら、これからの作戦を模索していた。

 

 

(ふっふっふ!!どうしようか……やっぱ先ずはこれを召喚してシャッコウモンを倒そう……………いや待てよ、そうなったら次のターンの守りがなくなるぞ…………じゃあこっちを召喚??………いや、そうなるとシャッコウモンが残るからどっちにしろ負ける…………じゃあこれから??……でもそれだとこっちの方が良くない?じゃあこれ?一回効果でカード引いてみる?でもシャッコウモンに勝てんじゃん、そしてコアなくなるじゃん……ネクサスは?…いやだからコアなくなるし、シャッコウモンに勝てないじゃん………ん?そもそも私何すればいいんだっけ?今何してるんだ?……………?!?☆)

 

 

"ボカーーーン"

 

 

そんな爆発音が椎名の頭から鳴り響いた。

 

 

「し、椎名ぁぁぁあ!?!」

 

 

ーと椎名が考えすぎた結果、その頭がショートし、爆発した。これには対戦相手の雅治もびっくり。結局試合は続行不可となり、それまで優勢だった雅治の勝ちとなった。

 

 

ー芽座椎名…………2年次1学期末試験……三連敗!!!

 

 

 

******

 

 

椎名は教室の自分の席で呆けていた。力が抜けたように、そして燃え尽きたように身体が真っ白になっていた。

 

それもそうだろう。新たなカード、ギルモンを含む真紅の魔竜や、デュークモンといった面々を取り入れ、ようやく葉月に勝つことができたのはいいものの、それから1ヶ月以上経っても椎名はあれ以降の勝利を収めれていないのだ。

 

 

「し、椎名ちゃん……大丈夫かな?」

「あかんな、あれは完全に落ち込んどるよ」

 

 

少し離れたところで夜宵と真夏が言った。その場には雅治と司もおり、

 

 

「無理もないよね、あれ以降全然バトルに勝ってないみたいだし…………」

「まぁ、当然の結果だな………」

 

 

雅治が言ったことに重なるように司が言った。

 

司はその後、そのことについて具体的に説明する。

 

 

「当然って……なんでや?」

「デッキだよデッキ………あいつのデッキに、あの赤のカード、ギルモン系とか言ったか?…あれは元々あったあいつのデッキとは性質そのものが噛み合っていない……逆に弱くなって当然だ」

 

 

通常、バトルスピリッツはデッキを組む際、基本的に色の数は絞らなければならない。色が増えれば増えるほどに扱いにくくなるからだ。

 

色はあって2色。3色以上のデッキなど稀に見るケースと言える。

 

エースのフレイドラモンは無視して考えると、椎名は今まで基本的に青と緑のカードを駆使してバトルしてきた。

 

そこにさらに複数枚の赤のカードを加えるとなるとかなり重たくなるのは必至である。当然だ、軽減がしづらくなるのだから……

 

司はそれが理由で椎名がスランプなのではないかと睨んでいた。そしてその推理は的中している。椎名は今までのデッキに無理にギルモン系のカードを投入したために、デッキが回らなくなり、勝てなくなっていたのだ。

 

 

「……………椎名………」

 

 

そんな呆けている椎名に近づいてきたのは担任の教師、空野晴太。

 

今から彼が椎名に言うことはかなり重要なこと……ひょっとしたらこれから椎名の人生に関わってくることであって………

 

 

「………何ですか?私今それどころじゃないんですけど………」

 

 

椎名がシュンとした声でそう晴太に呟くが………

 

 

「ばっかやろぉ!!!それどころもこれどころもあるかぁぁあ!!!」

「え、えぇええ!?!」

 

 

突然怒り出す晴太に、椎名は思わず背中を真っ直ぐにし、姿勢正しく椅子に座った。

 

 

「………お前、今回の期末の筆記試験……どうだった?」

 

 

晴太が椎名の筆記試験について聞いてきた。

 

 

「え?……あっはは!!そんなのいつも通りダメダメに決まってるじゃないですか〜〜〜!!」

 

 

椎名はそんな感じで明るく、まるで自信がないとも取れる発言をした。椎名は筆記試験が苦手であった。勉強しないから……

 

 

「………そ、そうか………じゃあお前…………」

「?」

 

 

これから晴太が言う一言は椎名が何よりも恐怖する言葉。いや、学生だったら椎名でなくとも誰もが怯えるような言葉だ。

 

それを聞くだけで頭の血の気が下がる程に………

 

 

 

「退学だぞ…………」

「え?」

 

 

教室中の生徒達が晴太のその言葉を聞いて、シーンとする。誰も彼もが黙った。

 

 

「才覚?」

「違う……退学だ」

「開学?」

「違う……退学だ」

「奏楽?」

「違う……退学だ」

「………ふーーーーん………たいがく……タイガク………退がく?………退学っ!?」

 

 

椎名と晴太の果てしない言い回しの中で、ようやく気づいた。そうだ、退学だ。学園を去る意味のある言葉だ。

 

それを理解した椎名は頭の血がなくなっていくのを感じていく。もう夏だと言うのに身体中から悪寒を感じる。

 

 

「ヤバイじゃん!!私!!」

「だからヤバイんだよ!!」

「てかなんで退学!?」

「お前が筆記頑張らないからだよ!後、実技負けるから!!」

 

 

今まで椎名は筆記試験が全くできない代わりに、それを実技試験で補ってきた。

 

だが、今回は違う、思いっきり三連敗してしまった。勝ち星はゼロだ。実技の試合内容もほぼ一方的に殴られるケースが多かったため、点数はゼロに近い。

 

もちろん筆記試験もいつも通りダメダメ。

 

つまり筆記と実技、2つを合わせても凄まじいほどに低い点数なのだ。

 

ーその結果……この1学期中に退学となる……

 

 

「い、嫌だよ退学なんてぇ!!せ、先生!!どうにかならないんですかぁ!?!」

 

 

椎名が晴太に泣きつくように、救いの手を差し伸べて欲しいかのようにそう言った。

 

普通の学校ならばそんな処置はされない。

 

ーが、ここはバトスピ学園。なんでもバトルスピリッツで解決できる夢の学園であって………

 

 

「1つだけある………」

「本当っ!?!」

 

 

その一瞬、椎名の顔に明るさが灯される。

 

だが、それはかなり難しい難易度のものであって……

 

 

「学園に残るには……俺とバトルして自分の実力を証明するしかない…………」

「?」

 

 

このバトスピ学園にはルールがある。

 

それは、点数的に、又は成績的に退学にしなければならない生徒がいた場合、そのクラス担任とバトルさせ、実力が認められれば退学を免れると言うものだ。

 

ー「実力を証明する」つまり、晴太に勝てば問題はない。

 

 

「おっ!!マジっすか!!先生とバトルできるのぉ!?」

 

 

急にわっとなって盛り上がる椎名。

 

もはやこの一瞬で自分の退学が肩にかかっていることを忘れている様子。

 

 

「………椎名、俺も仕事だ。このバトルは手が抜けん……だが、アドバイスはできる……」

「?アドバイス?」

「そうだ………お前今、ブイモン系とギルモン系、2つの全く異なるデッキタイプを1つのデッキに同時投入してるよな?」

 

 

晴太もこれは教師としての仕事の一環、当然椎名の退学がかかったバトルでも手が抜けない。

 

そのため、晴太は椎名に助言することにした。より良いデッキが作れるように、そして回るように……

 

 

「………言いづらいんだが……どっちかに絞った方が良いぞ」

「っ!?!」

 

 

当たり前のことだが、このままでは絶対に勝てない。ベストコンディションにするためには、ブイモン系とギルモン系、どちらか一方のデッキにする他ないだろう。

 

 

「………ブイモンか……ギルモンか………」

「バトルは明日の放課後だ……それまでにどっちかのカード達で最高のデッキを組んでこい……別に終わったらまた2種混合のデッキに戻して研究すれば良い……」

 

 

たしかに晴太の言う通りだ。この退学がかかったバトルだけどちらかに絞ってバトルすれば、その後にまた2種混合のデッキの可能性を探れば良い。

 

だが、カードとの絆や思い出を何よりも大事にする椎名にとって、それはかなり難しい問題であった。

 

 

******

 

 

「………ブイモンか……ギルモンっっかぁ!!!」

 

 

その日の夜。椎名は1人部屋にこもり、自分が今まで使ってきたカード達を並べていた。明日のデッキのことについて考えているのだ。

 

 

「…………くっそぉ!!どっちかなんて選べないよぉ!!!」

 

 

椎名は困惑していた。ブイモンとギルモンの狭間に揺れていた。

 

椎名とてわかる。どっちも入れるより、どっちかに絞った方が速いし、回ることを。

 

ーだが、本当はどっちも入れてバトルしたい。

 

 

「…………でも変だよな〜〜あの時はなんで回ったんだろ?」

 

 

椎名は思い返してみた。空港の屋上で葉月とバトルしたあの時を………

 

あの時はたしかにこのデッキは回っていた。しかもブイモン系だけのデッキよりか幾分増したパワーになって、

 

つまりデッキ構成自体に問題はないはずだ。

 

自分の扱い方が未だに未熟であるのが原因だ。

 

椎名は思い返してみた。あの時のバトル、自分はどのように考えて回してみたか………

 

ーだが、ここで1つの結論に至る。

 

 

「……………あれ?私こんなこと考えた時あったっけ?」

 

 

そんな事を考えていた時、ふと思った。バトルの時、自分は作戦などを立てたことがあっただろうかと言うことに。

 

それは殆どと言って良いほどにない。限りなく指で数えられる程度だ。しかも即席かつ直感めいたものが多い。

 

この時、椎名はもしや、と考えた。

 

ーこの1ヶ月間、自分はデッキのあれやこれ、プレイングのあれやこれを考えすぎていたのではないかと言うことに。

 

 

******

 

 

そして翌日。その放課後。この第4スタジアムにて、椎名と晴太による椎名の退学をかけたバトルが始まる。その観客席には真夏、夜宵、雅治、司と、同級生の仲間達が見守っていた。

 

 

「………どうだった?椎名……デッキは?」

「えっへへ、結局混ぜちゃいました………」

「おいっ!?あれほど言っただろう?」

 

 

椎名は結局どちらかではなく、どちらともデッキに入れて来た。それが良いのだ。何よりも椎名らしい選択であるといえば聞こえは良いが。

 

 

「自信はあるのか?」

「はいっ!!行けます!!」

 

 

椎名は自信あるような返事をした。その目を見て、晴太は何を思ったか、確信した。必ず魅せてくれると。

 

椎名があの真剣な目になった時は必ず有言実行をする時であると、経験上理解していたからだ。

 

晴太はその後、「まぁいっか」と軽く流しながらもBパッドを展開、バトルの準備をした。椎名も同様だ。

 

ーそして始まる、椎名の退学がかかったバトルが……

 

 

「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

バトルが始まった。

 

ー先行は晴太だ。

 

 

[ターン01]晴太

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ……俺は手札からアクセル!甲寅獣リボル・コレオンを使用!その効果!デッキから3枚オープンし、その中の神皇スピリット、又は十冠スピリットを1枚、異魔神ブレイブ1枚を手札に加える!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨4

オープンカード↓

【ヒノシシ】×

【救世神撃破】×

【エグゼシード・ビレフト】◯

 

 

晴太の使ったアクセルスピリット、リボル・コレオンは晴太の主なスピリットとなるスピリットやブレイブを手札に加えるだけでなく、そのサポートまでできる優秀なスピリットである。

 

そして効果も成功。晴太は手札に強力な十冠を持つスピリット、エグゼシード・ビレフトを手札に加え、そのターンを終えることになった。

 

 

「ターンエンドだ」

《手元》

甲寅獣リボル・コレオン

 

バースト【無】

 

 

「…………先生ガチやんけ……勝てるんか?」

「兎に角椎名を見守るしかないね………」

 

 

真夏が晴太の使ったカードを見て、本気のデッキであると悟ったか、不安になるが、雅治がすかさず冷静に言葉を入れた。

 

そう。見守ることしかできない。何せ、他の者のバトルに首を突っ込むなど言語両断なのだから………

 

次は結局ブイモンとギルモン。それぞれ全く違う特性を持つカード達でデッキを組んだ椎名のターンだ。

 

 

[ターン02]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップっ!!先ずはこれだ!!ネクサス、ディーアークを配置!!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨2

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名が配置したのは手のひらサイズの謎の機械。それが椎名の腰に装着された。それは赤のシンボルを持ち、今後の試合展開に大いに貢献できる存在であって………

 

 

「ターンエンドだ!!」

ディーアークLV1

 

バースト【無】

 

 

椎名はたったそれだけでそのターンを終えた。椎名としては少々大人しめなターンとなった。

 

次は晴太のターンだ。

 

 

[ターン03]晴太

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨5

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップっ!!俺はコレオンとエグゼシード・ビレフトを召喚!!」

手札6⇨5⇨4

リザーブ5⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

このターン、晴太が颯爽と呼び出したのは、獅子をこれまでもかとデフォルメしたスピリット、コレオンと、武装が施されている駿馬のスピリット、エグゼシード・ビレフトだ。

 

このエグゼシード・ビレフトは、以前、椎名が晴太に挑んだ際も使用され、椎名を苦しめてきた1体だ。

 

 

「アタックステップっ!!……コレオン!ビレフト!」

手札4⇨5

 

 

走り出す晴太の2体のスピリット、エグゼシード・ビレフトにはアタック時に1枚ドローする効果があるため、晴太はおまけのようにカードを引いていた。

 

 

「…………ッ…ライフで受ける!」

ライフ5⇨4⇨3

 

 

そんな2体の突撃を、椎名は何のためらいもなくライフで受けた。そのライフは一気に2つも破壊され、早速アドバンテージに大きく差をつけられてしまう。

 

 

「…………ターンエンドだ」

コレオンLV1(1)BP1000(疲労)

エグゼシード・ビレフトLV1(1)BP3000(疲労)

 

《手元》

甲寅獣リボル・コレオン

 

バースト【無】

 

 

晴太はできることを全て終え、このターンのエンドとした。

 

次は椎名のターンだ。減ったライフのコアで反撃に回る。

 

 

[ターン04]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ5⇨8

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップっ!!反撃開始だぁ!!ブイモンを召喚!そして効果発揮!」

手札5⇨4

リザーブ8⇨4

トラッシュ0⇨3

オープンカード↓

【ギルモン】×

【スティングモン】◯

 

 

椎名がこのバトルで始めて呼び出したスピリットは、青くて小さい竜、ブイモン。そしてその召喚時も成功。椎名は緑の成熟期スピリット、スティングモンを手札に加えた。

 

しかもその存在はブイモンの追加効果の影響を受けれるものであって、

 

 

「よしっ!スティングモンを手札に加えて、さらにブイモンの追加効果っ!!これを2コスト支払って召喚する!」

手札4⇨5⇨4

リザーブ4⇨1

トラッシュ3⇨5

スティングモンLV1(1⇨2)BP5000

 

 

椎名が新たに呼び出したのはブイモンの効果で加えた緑の成熟期スピリット、勇敢なる昆虫戦士、スティングモンだ。その効果でさりげなくコアが増えていく。

 

 

「ディーアークの効果!場にアーマー体を除くデジタルスピリットが召喚された時、ターンに一度だけドローができるっ!」

手札4⇨5

 

 

椎名はディーアークの効果でカードをドローする。ディーアークは赤のシンボルを持つネクサスだが、その効果はデジタルスピリットであるならば色は問わない。故にブイモン系のスピリット達でも有効なのだ。

 

 

「リザーブとスティングモンのコアを使ってディーアークのLVを2にアップ!!」

リザーブ1⇨0

スティングモン(2⇨1)

ディーアーク(0⇨2)LV1⇨2

 

 

椎名はさらに増えていくコアを使い、そのディーアークのLVを上昇させる。

 

これで準備は整った。椎名はアタックステップに入り、一気に攻める。

 

 

「アタックステップっ!!ブイモンでアタックだぁ!!」

 

 

勢いよく走り出すブイモン。目指すはもちろん晴太のライフだ。前のターン、彼は全てのスピリットでアタックしたため、このターンのブロッカーはいない。

 

コアも少ないことから、このアタックはほぼ無条件で受けることになる。

 

 

「……ライフだ」

ライフ5⇨4

 

 

ブイモンの渾身の頭突きが、晴太のライフを粉々に砕いた。そして次はスマートな昆虫戦士、スティングモンの攻撃だ。

 

 

「次ぃ!スティングモンッ!!……効果でコアを増やすよ!!」

スティングモン(1⇨2)

 

 

走り出すスティングモン。その効果で、コアが増える。そのコアがこのターン、大きく影響を与える。

 

椎名はこのタイミングで、さらに1枚のカードを手札から引き抜く。それは昔からの自分のエーススピリット、どんなにデッキが変わろうとも外すことは絶対に許されないフェイバリットスピリットだ。

 

 

「フラッシュ!!フレイドラモンの【アーマー進化】発揮!!対象はブイモン!!」

スティングモン(2⇨1)

トラッシュ5⇨6

 

「……っ!!!」

 

 

ブイモンに赤くて独特な形をした卵が投下される。それは言わば進化の塊。ブイモンはそれと衝突し、混ざり合い、新たな姿へと進化を果たす。

 

ー現れるのは炎の竜人。

 

 

「燃え上がる勇気っ!!フレイドラモンを召喚!!」

フレイドラモンLV1(1)BP6000

 

 

椎名のエース、フレイドラモンが召喚された。

 

効果的にもこの場では抜群のポテンシャルを発揮できる。

 

 

「………あいつ……」

「…………うん……そうだね」

 

 

司が観客席で何かに気づいたようにそう呟くと、雅治がすかさず同意するようにそう返した。

 

そうだ。気づいたのだ。椎名は昨晩のうちになぜかスランプを脱していることに。あの歪かつ複雑だったデッキが綺麗に回っているのだ。

 

 

「…………いったい何をしたんだろう?椎名は……」

 

 

雅治が言った。

 

 

「……いや、むしろ何もしてないな、あれは………」

「「「??!?」」」

 

 

司がそう言うと、周りにいた雅治、真夏、夜宵は少しだけ驚いた。

 

司はすかさず説明を、自分の推理を話す。

 

 

「……多分あいつは今、何も考えていない……何の作戦もないだろう……あいつは今まで、その野生的な直感だけでバトルに勝ってきた。おそらく新しいカードがたくさんデッキに入ってしまい、それが失いつつあったんだろう……」

「…………そんなまっさか!!動物みたいなことあるわけ……………いや、椎名ならあるかもな……」

「…………ありえるね」

 

 

椎名はこの物語の中、司が言うようにずっとその野生的な直感でバトルしてきた。だが、ギルモン系のカード達が大量に入ってきたことにより、頭を使うようになった。

 

それが逆に仇となり、スランプに陥っていた。と言うのが司の推理だ。

 

つまり、【椎名は頭を使わない方が強い】と言うのが結論だ。

 

そしてスポットは戻り、バトル。椎名のフレイドラモンの強力な召喚時効果が火を噴く。

 

 

「フレイドラモンの召喚時及びアタック時の効果!!BP7000以下の相手スピリット1体を破壊して、カードをドローするっ!……先ずはビレフトだっ!!…爆炎の拳っ!!ナックルファイアァァア!!」

手札5⇨6

 

「っ!!!?!」

 

 

フレイドラモンの拳から放たれる炎の弾丸。これは瞬く間にエグゼシード・ビレフトまで届き、それを焼き尽くした。

 

そして、このタイミングはスティングモンのアタック中であって、

 

 

「スティングモンッ!!」

 

「ライフだっ!!」

ライフ4⇨3

 

 

スティングモンの鋭い針が内蔵された拳が、晴太のライフをまた1つ破壊した。

 

そしてまだ残っている。【アーマー進化】によって召喚されたフレイドラモンのアタックが……

 

 

「いけぇ!フレイドラモンッ!!ナックルファイアで今度はコレオンを破壊だぁ!!」

手札6⇨7

 

「………っ!!」

 

 

再び放たれるフレイドラモンの炎の拳。それは今度はコレオンに命中。エグゼシード・ビレフトでと耐えられなかったものに、この小さなコレオンが耐えられるわけもなく、あっさりと消し灰になってしまった。

 

 

「フレイドラモンのアタックもライフで受けようか」

ライフ3⇨2

 

 

フレイドラモンの飛び蹴りが、晴太のライフをさらに1つ砕いた。このターンだけでもう3つのライフを削った。

 

速攻向きな動きが可能なブイモン系の特徴が生えたアタックステップであった。

 

 

「よっしゃぁ!!ターンエンドっ!!」

スティングモンLV1(1)BP5000(疲労)

フレイドラモンLV1(1)BP6000(疲労)

 

ディーアークLV2(2)

 

バースト【無】

 

 

椎名はできることを全て終えてそのターンをエンドとした。次は晴太のターン。

 

 

[ターン05]晴太

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ5⇨6

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ6⇨9

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ………なるほど、デッキは回せるようになったみたいだな………」

「へへっ!!」

 

 

晴太も当然椎名のデッキが回り始めていることに気づいている。

 

ーしかし、決してそれを褒めることはせず……

 

 

「…………だが、それは大前提って話だっ!」

「っ!?」

 

「俺は2体目のコレオンをLV3、そしてハクビシンドローンをLV1で召喚するっ!」

手札6⇨4

リザーブ9⇨3

 

 

晴太がそう言って呼び出したのは、2体目のコレオンと、ドローンに跨った白鼻心、ハクビシンドローン。

 

そして晴太はここからもう1体呼び出す。

 

 

「さらに俺は手元からリボル・コレオンをLV1で召喚っ!」

リザーブ3⇨0

トラッシュ0⇨2

 

「…………っ!?」

 

 

晴太は第1ターン目でアクセルとして使用し、手元に置いていたカード、甲寅獣リボル・コレオンを召喚した。その姿はまるで武装を施したコレオンとでも言うべきか、赤い機関銃をその身に装備していた。

 

その効果はアクセルだけでも便利だが、そのスピリット効果もまた強力。晴太はその効果で、さらに手札から自分のデッキの中核を担う存在を呼び出す。

 

 

「リボル・コレオンの効果っ!手札から異魔神ブレイブをノーコスト召喚するっ!」

手札4⇨3

 

「っ!!!?」

「燃え上がる異魔神ブレイブっ!!炎魔神を召喚するっ!」

 

 

逆巻く炎を纏う歯車。鈍い機械音を鳴らしながらその中から降り立つのは異魔神ブレイブ炎魔神。元は椎名が憧れる人物が所有していたカードである。

 

左右どちらにでも合体ができる異魔神の中でも特に強力なものがある1枚であって、椎名が1年の時、晴太にバトルを挑んだ際にも使用され、決め手となったこともある。

 

そんな炎魔神が、また椎名に牙を剥く。

 

 

「リボル・コレオンに右合体!!」

 

 

炎魔神の右手から放たれる光線。それは晴太の場にいるリボル・コレオンとリンクする。リボル・コレオンは、炎魔神の右の力を授かった。

 

 

「…………バーストを伏せ、アタックステップだ」

手札3⇨2

 

 

さらに晴太はバーストカードを場に伏せ、このターンのアタックステップへと移行する。

 

 

「リボル・コレオンでアタックっ!!炎魔神の右合体時効果っ!リボル・コレオンのBP以下のスピリット1体を破壊する!………」

「………っ!!」

 

 

つまりはBP8000以下だ。今の段階ではBP8000以下が椎名の場から1体消えてしまう。フレイドラモンもスティングモンもその数値を下回っており、

 

 

「俺はフレイドラモンを破壊するっ!」

 

 

炎魔神の右の拳が回転しながらも射出される。それは真っ直ぐに椎名の場にいるフレイドラモンのところまで向かっていき、撃ち抜く。フレイドラモンも流石に堪えたか、吹き飛ばされ、大爆発を起こした。

 

そして射出された拳は炎魔神の元へと戻る。

 

 

「くっ!フレイドラモンッ!!」

「そしてこれが本命のアタックっ!!」

 

 

リボル・コレオンがその身の丈に見合わない機関銃を連射する。その弾丸の1発1発は、全て椎名のライフへと向かっている。

 

 

「ライフだっ!!」

ライフ3⇨1

 

 

椎名はそれを全て受け、ライフを2つも破壊させてしまった。いよいよ後1つだ。絶体絶命の崖っぷちまで追い詰められてしまった。

 

 

「…………これ椎名やばいんとちゃう??」

「………どうだろうな?」

 

 

真夏がこの様子にそう心配そうに呟くと、それに対し、反抗するかのように司が言った。まるで椎名がまだ耐えるかのような口ぶりだった。

 

 

「ハクビシンドローンでアタックっ!!」

 

 

晴太のハクビシンドローンが飛び立つ。目指すは椎名のライフ。これが決まれば椎名の負けだ。

 

ーだが、司の言う通り、まだ手があった。

 

 

「フラッシュ!!ネクサス、ディーアークのLV2効果っ!!【カードスラッシュ】発揮!!」

「っ!?!」

 

「【カードスラッシュ】は、手札にあるアーマー体以外のデジタルスピリットを破棄することで、そのスピリットのLV1BP以下の相手スピリット1体を破壊するっ!!……………私はブイモンをカードスラッシュするっ!」

手札7⇨6

破棄カード↓

【ブイモン】BP2000

 

 

椎名は腰につけられたディーアークを手に持ち、手札にあるブイモンのカードをスラッシュする。

 

ーそうすると、ブイモンが突如として場に出現し……

 

 

「……ブイモンヘッド!!」

 

 

椎名がその技名を叫ぶと、ブイモンはハクビシンドローンのところまでジャンプし、高く飛び上がる。そしてそのまま自慢の頑丈な頭蓋骨で、ハクビシンドローンを打ち落とした。ハクビシンドローンは撃墜され、堪らず爆発を起こした。

 

これがディーアークの第2の効果、【カードスラッシュ】手札にあるデジタルスピリットの力を借りて敵のスピリットを破壊できる力を持っている。

 

 

「………だが、まだ俺の場にはコレオンがいるぞ!いけぇ!」

 

 

今度はLV3、BP6000のコレオンが晴太の指示を受け、椎名のライフをめがけて走り出した。

 

だが、それでも椎名にはまだこれを止める手段があり、

 

 

「もう一度【カードスラッシュ】!!今度はパイルドラモンを破棄するっ!」

手札6⇨5

破棄カード↓

【パイルドラモン】BP6000

 

「………っ!?!ここでパイルドラモンッ!?」

 

 

椎名は今度はパイルドラモンのカードをスラッシュする。すると、ブイモン同様、椎名の場にパイルドラモンが出現し、

 

 

「………デスペラードブラスター!!!」

 

 

その腰につけられた機関銃の銃撃を、これでもかと言わんばかりにぶっ放した。そんなものにコレオンが耐えられるわけもなく、全弾命中し、破壊された。

 

これで晴太のこのターンの攻め手は無くなったと言える。ターンエンドせざるを得ない状況に追い込まれた。

 

 

「…………ターンエンドだ」

甲寅獣リボル・コレオン+炎魔神LV1(1)BP8000(疲労)

 

バースト【有】

 

 

晴太は静かにそのターンを終えた。

 

ー次は椎名のターン。

 

 

[ターン06]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨10

トラッシュ6⇨0

スティングモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ……スティングモンをLV2に上げ………グラウモンを召喚!……さらにディーアークの効果でドロー!!」

手札6⇨5⇨6

リザーブ10⇨0

スティングモン(1⇨3)LV1⇨2

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名の場の地中が蠢く。その中から勢いよく現れたのは真紅の魔竜が成熟期になった姿、グラウモンだ。

 

準備は整った。これより椎名は勝負を決めるべくアタックステップへと移行する。

 

 

「アタックステップ!!グラウモンでアタック!そして【超進化:赤】を発揮!!グラウモンを赤の完全体、メガログラウモンに進化させる!!」

メガログラウモンLV3(5)BP12000

 

 

グラウモンにデジタルコードが巻き付けられる。グラウモンはその中で姿形を変えていく。その身体はどんどん大きくなり、上半身には強力な武装が施されていく。そしてその中から新たに現れたのはメガログラウモン。真紅の魔竜が完全体になった姿だ。

 

 

「アタックステップ続行!!メガログラウモンでアタックっ!!効果で2枚ドローし、炎魔神を破壊するっ!」

手札6⇨8

 

「っ!!?」

「防人の刃、ペンデュラムブレイド!!」

 

 

メガログラウモンが両腕から飛ばす斬撃。それは炎魔神だけを綺麗に引き裂いた。炎魔神は流石に力尽き、倒れ、晴太の目の前で大爆発を起こした。

 

そして当然これだけでは終わらない。メガログラウモンはまだまだ暴れる。今度はリボル・コレオンが破壊される番だ。

 

 

「メガログラウモンのもう1つのアタック時効果!!シンボル1つの相手スピリット1体を破壊する!!………対象はもちろん唯一残ったリボル・コレオン!!」

「…………くっ!!」

「原子の咆哮……アトミックブラスター!!!」

 

 

メガログラウモンの上半部の武装に膨大なエネルギーが蓄積される。限界まで溜め込むと、メガログラウモンはそれを一直線に射出。晴太のリボル・コレオンをあっさりと消し炭にした。

 

 

「そして本命のアタックっ!!メガログラウモンッ!!」

 

 

走り出すメガログラウモン。もちろん目指すのは晴太のライフ。後2つ。後2つ破壊するだけで勝てる。

 

ーこのメガログラウモンのアタックと、場に残ったスティングモンのアタックだけで………

 

ーだが、メガログラウモンのアタックで、いや、成長した椎名のアタックと言ったところか…………晴太はそれで本気になっており…………

 

ー1年前は見せていない、自分の力の一端を披露することになる。

 

 

「……………ライフで受ける」

ライフ2⇨1

 

 

メガログラウモンの腕につけられた強靭な刃が、晴太のライフをいとも容易く1つ切り裂いた。

 

ーだが、これがトリガーだ。この瞬間、裏側だった晴太のバーストが勢いよく反転する。

 

 

「ライフ減少により、バースト発動!!」

「………っ!!!?!」

 

 

反転するそのバーストはスピリットカード。晴太が愛用するエグゼシードシリーズの1枚だ。

 

 

「爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル!!!!効果でこれを召喚するっ!!」

リザーブ8⇨4

爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼルLV3(4)BP20000

 

 

晴太の背後より燃え盛る何かがこっちに向かって走ってくる。そして晴太の頭上を飛び越え、周りの炎を振り払いながら姿を見せる。それはエグゼシードシリーズの1体、基本の馬の姿に侍のような装備が施されたスピリット、エグゼシード・バゼルだ。

 

 

「………え、エグゼシード……………バゼル……っ!?!」

 

 

驚愕していたのは椎名だけではない。観客席にいた司達も同じ。バゼルは晴太が使用するスピリットの中でもトップレベルで強力なものだ。それを生で観るのはこの中では誰もが初めてである。

 

 

「…………さぁ、どうする?」

 

 

晴太が椎名に問うた。椎名の唯一アタックできたスピリット、スティングモンでは到底あのエグゼシード・バゼルには敵わない。

 

悔しいが、エンドせざるを得ない。

 

 

「……………ッ…ターンエンド……」

スティングモンLV2(3)BP8000(回復)

メガログラウモンLV3(5)BP12000(疲労)

 

ディーアークLV2(2)

 

バースト【無】

 

 

椎名はそのターンをエンドとした。次は晴太のターン。バースト召喚されたエグゼシード・バゼルが動き出す。

 

 

[ターン07]晴太

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札2⇨3

《リフレッシュステップ》

リザーブ5⇨7

トラッシュ2⇨0

 

 

「メインは無し、アタックステップに入るっ!!いけぇ!バゼル!!効果でスティングモンに指定アタック!!」

「………っ!?」

 

 

走り出すエグゼシード・バゼル。目指すは椎名のスティングモン。そしてそのライフだ。

 

腹部に備え付けられている2本の刀が、バゼルの口の両サイドに咥えられる。そしてその刀身には爆炎の炎が灯され………

 

 

 

「……爆炎十文字斬りぃぃい!!!」

 

 

通り過ぎるようにスティングモンを一瞬にして十の字に斬りつける。その刻まれた場所からも炎が次々と溢れ出てくる。スティングモンは力尽き、倒れ、大爆発を起こした。

 

そして、バゼルはスティングモンだけには収まらず、そのまま再び走り出した。

 

ー次は椎名のライフだ。

 

 

「………そしてこのバトルの終了時!!相手のライフ2つを破壊するっ!!」

 

「………っ!?!」

ライフ1⇨0

 

 

止まることのないエグゼシード・バゼルの勢い。スティングモンを斬りつけたその2本の刀で、椎名の最後のライフをいとも簡単に引き裂いて見せた。

 

ーこれにより、勝者は空野晴太。切り札の1枚であるエグゼシード・バゼルを使っての勝利となった。

 

途中まで接戦ではあったが、最後は意外にも呆気なく終わってしまった。これは晴太と椎名の実力の差だと言える。

 

バトルの終わりに伴い、場に残ったスピリットたちが消滅して行く。椎名の場で唯一残ったメガログラウモンは悔しそうな表情を浮かべながら消えて行く。

 

 

「…………ま、負けた…………」

 

 

椎名は敗北を感じた時、顔を少し暗くした。

 

椎名が顔を暗くしたのはこの一瞬だけ、すぐさまその顔の表情は明るい笑顔に変わり………

 

 

「先生!!楽しいバトルだったよ!!またやろう!!」

 

 

晴太に向かってそう言った。

 

ーだが、それでも納得がいかない者達がいて……

 

 

「何言っとんねんバカァァァア!!!」

「っ!?!真夏ぁ!?」

 

 

観客席から真夏が大きく声を上げた。

 

 

「あんたこのバトルに負けたら退学ちゃうんか??」

「………たいがく?タイガク??…………退がく…………あっ!!退学!?」

 

 

思い出した。そうだった。そう言えばそうだった。このバトルには自分の退学が肩にかかっていたことに。バトルを楽しむことを優先しすぎていてすっかり忘れていた。普通に楽しんでいた。

 

椎名の顔から血の気がなくなって行く。「あぁ、やってしまった。退学だ」とばかり考えていた。

 

ーが、

 

 

「おいおい、椎名も真夏も何を勘違いしてんだぁ?」

「え?」

 

 

晴太が言った。

 

 

「何をって、負けたら退学じゃあ………」

「誰が負けたら退学って言ったよ?…………俺言ったよな?実力を証明しなければならないって……」

「…………え?……っ!!」

 

 

椎名は1日前のことを思い返してみた。晴太はあの時、たしかに負けたら退学など一言も言ってはいない。「実力を証明しなければならない」としか言ってなかった。勝手に勘違いしてたのは自分達だ。

 

 

「じゃ、じゃあ待って先生!!………私は!?」

「………まぁ、そうだな。俺にバゼルまで切らせたんだ…………合格でいいだろ」

 

 

1年時、椎名が晴太にバトルを挑んだ際は、ビレフトと炎魔神止まりで、次なるバゼルは出す由もなかった。だが、今回、椎名は晴太にバゼルを切らせるに至った。それはつまり、椎名が前よりも確実に成長しているという証でもあった。合格にするには申し分ないと言える。

 

 

「ま、マジっすかぁ!?!………っいやったぁ!!!」

 

 

喜びから大きく身体を広げて高く飛び上がる椎名。その高さは常人では到底到達し得ないものだ。

 

椎名は果てしない幸福感と共に感じていた。自分のデッキ、カード達の事を。

 

このデッキには無限の可能性があると、これでいつか一番強くてかっこいいバトラーになれるのではないかと思えるほどに。

 

ーいや、確信できるほどに。

 

 




《本日のハイライトカード!!》

椎名「今回のカードは【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル】!!」

椎名「エグゼシード・バゼルは晴太先生の愛用するエーススピリット、バースト召喚された直後に指定アタックされるのはめっちゃ脅威!!おまけにライフまで奪われるんならかなったもんじゃないよ〜〜〜……でも、次やる時は絶対に倒す!!」


******


〈次回予告!!〉


真夏「椎名の奴、ほんま野生的っちゅうかなんっちゅうか、あんなデッキを感覚的に使いこなすなんて普通はできへんで、あんな奴を天才言うんやろな、そんなこんなで、次はそんな感じの天才同士がぶつかり合うでぇ……1人は私の兄、ヘラクレス、もう1人は……………次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ、「一木花火のウォーグレイモン!」……今、バトスピが進化を超えよるよ!!……」


******


〈芽座椎名デッキレシピ〉

《スピリット》×23
ブイモン×3
ワームモン×2
ギルモン×3
エクスブイモン×2
スティングモン×2
グラウモン×2
フレイドラモン×1
ライドラモン×1
マグナモン×1
パイルドラモン×1
メガログラウモン×2
マリンエンジェモン×2
デュークモン×1

《ブレイブ》×5
ズバモン×2
グラニ×2
双牙皇オルト・ロード×1

《ネクサス》×5
デジヴァイス×2
D-3×1
ディーアーク×2

《マジック》×7
ファイナル・エリシオン×2
ブルーカード×2
レッドカード×2
スクランブルブースター×1


手札、盤面、トラッシュを満遍なく見ていくことがすごい大事。もちろんガチデッキではないが、エーススピリット達の元々のパワーが高い分、ある程度環境でもいける(作者は行けた)序盤は状況にもよりますが、できるだけギルモンよりもブイモンを優先して召喚しましょう。

双牙皇オルト・ロードはフレイドラモンやメガログラウモン用。作中ではフレイドラモンばっかり合体してるが、メガログラウモンと相性はめっちゃ良い。

椎名のような運命力があれば兎に角強いデッキだと思ってます。


******


最後までお読みくださり、ありがとうございました!

晴太先生の本気デッキのバトルは【第8話 英雄を継ぐ者VS英雄の弟子!炎と炎!】でやってます!ちなみに、本気じゃない方は【第28話 文化祭と過去の出来事】でやってます!

次回はなんと、私の作品の前作主人公が久し振りに登場します!お見逃しなく!詳しくは【バトルスピリッツ オメガワールド】を参考に。

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