バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

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第50話「じっちゃん暴走?鎮めよシャッコウモン!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏、それは緑の木々が生い茂る季節。

夏、それは旅行の季節。

夏、それは好きな女の子と急接近できるかもしれない、そんな季節。

 

 

「ふぃーーやっと着いた!」

「へぇ〜〜結構大きいんだねぇ!!」

 

 

ここはとある島の空港。その入り口で大きな荷物を手に持ち、溢れる自然の山々を見ながら1人の少年がそう言った。それは雅治だ。その横には椎名もいる。

 

夏休み。学生なら誰もが楽しみにするであろうこの時期、芽座椎名と長峰雅治はこの期間中を利用してある島に旅行しに来ていた。

 

旅行と言ってもここは椎名の生まれ故郷の島。雅治はともかく、椎名にとってはただの帰省である。

 

その後、2人はバスに乗って椎名の住んでいたハウスと呼ばれる場所の近くまで向かう。

 

今は雅治と椎名は2人っきりだ。雅治にとってこんなに嬉しいことはない。まさか好きな女の子と一緒に旅行できるなど考えもしなかったことだろう。

 

椎名はいつものメンバー全員に一緒に島に行こうと声をかけていた。夜宵は仕事で来れず、英次も来れず、真夏は行けたが、雅治の背中を押すために行かず、そして司は反吐がでると言ってそっぽを向いて話を聞かず…………結果雅治だけが行くことになったのだ。

 

 

******

 

 

「こ、これを登るの?」

「ん?そうだよーー」

 

 

バスを降り、ハウスのある山の麓まで来た2人。だが、目の前に聳え立つのはその山に対し縦一直線に伸びている長い長い石の階段。ハウスに行くためにはこれを登って頂上に行くしかない。椎名は圧倒的な体力があるため軽く涼しい顔で楽々と登れるが、体力のない雅治はそうはいかない…………

 

登る前から生き地獄の予感しかしなかった。

 

 

******

 

 

「…………はぁ、はぁっ!…………だ、だめだ、ちょっと休もう」

「えぇ!?まだ半分もないよ!?」

 

 

雅治は案の定バテていた。思わず階段の途中で足を止め、手を膝の上に置いた。椎名曰く、まだ半分も行ってないようだ。

 

この山は約2000メートル。確かにそれくらいではある。

 

この程度の距離で休んでいるようではいつまで経ってもたどり着けない。そう考えた椎名はある行動に出る。

 

 

「よしっ!じゃあこうしよう!!」

「っ!!?」

 

 

そう言って椎名は何故か雅治の手をギュッと握った。

 

椎名の意外な行動に、思わず雅治は顔を赤くした。当然だ。好きな女の子から自分の手を握ってきたのだ。そんな嬉しいシチュエーションはない。この光景だけでも側から見たら誰がどう見てもカップル同然だ。

 

ーが、椎名にそんな恋愛的な要素を求めること自体間違っている。

 

手を繋いだ理由と言うのも………

 

 

「私が雅治を引っ張って行った方が速いや!」

「…………え?」

 

 

ーと言うものだ。

 

すると、椎名はそのまま凄まじい勢いで走り出した。あまりの速さに雅治の身体や荷物までもが宙に浮く。

 

雅治はまるでジェットコースターにでも搭乗しているかのような感覚に見舞われた。身体が浮く恐怖で声が出てこない。

 

結果として椎名と手を繋げたのは良い。本当に素晴らしいと思った。

 

だが、それとは別に真っ先に思ったことがある。

 

 

(……こ、これ、普通……逆じゃないっ!?!)

 

 

雅治はそう思った。普通なら確かに男性側が女性をエスコートしていくものだ。だが、これはどう言うことだろうか。圧倒的に、そして物理的に椎名にエスコートされている。雅治は身体が浮く恐怖よりも先ずそれが心に引っかかっていた。

 

 

******

 

 

「………しぃ……遅いのぉ」

 

 

ハウスのある山の頂上。その階段の頂点で、じっちゃんこと、芽座六月は椎名の帰りを今か今かと足踏みをしながら楽しみに待っていた。その様子はここにいる大勢の子供達以上に子供である。

 

椎名と最後に会ったのは2ヶ月ほど前か………ギルモン系のカードとデュークモンを渡した時以来だ。

 

あの可愛い椎名に会えるだけで寿命が延びそうだ。若返りそうだ。………六月はそんな楽しげなことを考えていた。

 

ーだが、その楽しみはある人物によってぶち壊される。

 

 

「………おっ!!来た来たぁ!!椎名ぁ!!」

 

 

椎名が凄い勢いで走ってくるのが見える。六月はそれを視界に入れるなりすぐさま大声を出して椎名の名を呼んだ。

 

ーが、その背後には雅治がいて、………いてと言うよりかは手を繋いで引っ張られている。

 

 

「よっしゃぁ!!とうちゃあく!!」

 

 

 

椎名がゴールテープを切るかの如く山の頂上まで到着した。その横で雅治は息が荒れて軽く呼吸困難に陥っていた。

 

 

「おおっ!!しぃ!!帰ったか!!」

「じっちゃん!!久しぶり!!」

 

 

椎名の帰りを喜ぶ六月。だが、その背後にいた雅治に気づいた。未だに椎名と手を繋いでいたその茶髪の少年に…………

 

 

「し、椎名……そろそろ手を離しても良いんじゃ………」

「あっ!!そだねーーごめんごめん〜〜〜!」

 

 

やっと息を整えるが、この状況を知り、頰を赤らめる雅治。椎名は全く彼の好意に気付いていないのか、能天気な声を上げながら手を離してあげた。

 

 

「……………」

 

 

その光景を見て、六月は焦りと怒りを覚えた。

 

誰だ?いったいこの椎名と仲良く話しているこの男は誰なのだと思考が交差していく。

 

 

「………と、ところで椎名よ………横の少年は誰じゃ?」

 

 

六月が聞いた。

 

 

「……あっ!こんにちは!お爺さん!!僕は長峰雅治というものです!椎名さんとは同級生なんです!いつもお世話になっています!

 

 

ーと、すかさず雅治が丁寧に挨拶をした。

 

 

「なんだよじっちゃん!!友達も誘うって言ったじゃん!」

「おっ!?……ほほ、そうじゃったかの………」

 

 

確かに椎名は友達も誘うと言った。だが、六月は女の子が友達を誘うのならば、普通は同じ女の子が来るものだと勝手に勘違いしていた。

 

どうしても六月は雅治に良い印象がなかった。この男が仮に椎名に気があるのなら…………止めなくてはならない。

 

 

******

 

 

「おかえり、椎名!!……あら〜〜いらっしゃい!!お友達?」

「はい!長峰雅治と言います!!椎名さんにはいつもお世話になっています!!」

 

 

ここはハウスの中、2人はその中にいた大勢の子供達とシスターマリアに会っていた。雅治は六月同様、また丁寧な口調で挨拶を交わした。

 

だが、その横で六月は不機嫌そうな顔をしている。明らかに雅治を疑っているかのような目だ。

 

その後、雅治と椎名は大勢の子供達と遊んだ。果てしなく広い広場で、それはバトルしたり、遊具で遊んだりと、楽しい時間を過ごしていった。子供達と言っても年齢はバラバラ。5歳から14歳までの総勢20名の子供達がこの場所にはいた。

 

 

「おじさま?安心して良いと思いますわよ〜〜」

「………何がじゃ?」

 

 

そんな様子を影からこっそりと見ていた六月に、シスターマリアが話してきた。シスターマリアにはお見通しだ。六月が何を考えているのか、そしてそれがおおよそ見当違いであるということも…………

 

 

「あの椎名が恋愛なんてすると思います?」

「…………椎名になくともあの小僧にあるかもしれんじゃろ?」

 

 

シスターマリアだけではない。六月とて知っている。椎名には恋愛のれの字も入っていないことが………

 

だが、椎名にはなくとも雅治側にそれがあるのなら、その不安分子を取り除いておきたい。というのが六月の望みであって………

 

 

「んーー……確かにあの子椎名に気があるみたいだけど…………」

「むぅっ!?やっぱりあるのか!?そうなのかぁ!?おのれぇ!あの小僧、許さん!!」

 

 

シスターマリアには何もかもがお見通しだった。雅治の椎名に対する気持ちなど。六月はシスターマリアからそれを聞いた途端に更なる怒りを燃え上がらせる。

 

 

「でもまぁ、紳士的な子だし、心配することないんじゃないですか?」

「紳士的とかそんな問題じゃないんじゃああ!!ワシは椎名が誰かのものになるのが嫌なだけじゃぁ!!」

 

 

六月は椎名と付き合う相手がどうとかじゃない。椎名が嫁入りすること自体イメージしたくないのだ。

 

 

「…………それは重症ですね、おじさま……………はぁ、お願いですからヤケになるのはやめてくださいね、もう70回ってるんですから……」

 

 

シスターマリアは最後に六月に辛辣な言葉を浴びせて、この話は一旦終わった。

 

 

 

******

 

 

そして時刻は経ち、今は夜。椎名と雅治はシスターマリアの作る晩御飯が出来上がるのを待ちながら、木製の机の上で夏休みの宿題をしていた。六月はその向かい側に座っており、その直ぐ横では子供達がテレビを見ている。

 

 

「むむっ!!………どうするんだろう?これ………」

 

 

椎名がわからない問題に手が止まってしまう。

 

 

「………ねぇ、雅治〜〜これどうやって解くの?」

 

 

すぐ横にいた雅治に聞いた。宿題ごと寄せて詰め寄る。雅治はやけに距離が近いと感じつつも、その問題に対して冷静に答えた。

 

 

「あぁ、ここは先ずね…………」

 

 

問題の解き方を教えていく。ちなみに雅治は椎名達のメンバーの中でも、少なくとも筆記の成績が一番高い。

 

彼は椎名や司のように生まれ持ったバトラーセンスがないため、それに追いつくために幼い時からずっと戦略や構築術などを学んでいるほどの努力家なのだ。そのため、カードの知識も人一倍多い。

 

 

「…………おぉっ!!解けたぁ!ありがとうっ!!」

「いえいえ、どういたしまして!」

 

 

問題が解け、椎名が喜ぶ。雅治もまたそれを見て笑う。彼はなによりも椎名が笑う姿が好きであった。

 

 

「…………」

 

 

六月はそれを見てなんとも言えない顔をした。その光景を目の当たりにすると、本当に心苦しいものがある。

 

ーもう我慢の限界だ。

 

六月は机椅子から立ち上がって雅治と椎名のところまで赴く。

 

ーそして、

 

 

「…………おい小僧………」

「?小僧!?……僕ですか!?」

 

 

六月が突然放った「小僧」という単語に戸惑いつつも、雅治は直ぐにそれが自分であることを認識し、六月の方に顔を向けた。

 

 

「………ちょっと顔を貸しなさい……っ!!」

「えっ!?………あ、はい……」

 

 

六月の怒りのボルテージはこの時点で既に最高点に達していた。それも雅治は感じたか、応じざるを得ないと思い、六月に顔を貸すことになった。

 

 

「えっ!?なに?どっか行くの??なら私もいく!!」

 

 

全くなにも察していない椎名が元気よくそう言うが、

 

 

「……しぃはここで待ってなさい、すぐ終わるからのぉ………ほっほ」

 

 

六月は椎名に対しては優しく接した。というか優しく突き放したというのが適当か……

 

 

「ちぇ、早く帰ってきてよねーー」

 

 

椎名は頬を膨らませながら残念そうな顔をした。六月はそれに対して若干の罪悪感を感じながらも雅治を連れていった。

 

ーあの洞穴へ……………

 

 

******

 

 

「……ここってあれですよね、椎名から聞いたロイヤルナイツのあった洞穴………僕なんかが入っても良いんですか?」

「……いや、今から行くのは椎名にも見せとらん場所じゃ………」

 

 

かつてギルモン系や、マグナモン、デュークモンなどのカードがあったこの洞穴。だが、それはここの半分に過ぎない。

 

もう一つ、別のスペースがあるのだ。そこにあるカード達は…………

 

 

「…………着いたぞ」

「おぉ、結構広いんですね………」

 

 

別のスペースの広い空間に出た。そこには大きな大きな壁画が描かれており、複数の鬼のようなものが人々を襲っている様子が描かれていた。

 

ーそしてそれを守ろうと鬼と戦っている人達も………

 

 

「この壁画は何ですか?」

「…………」

 

 

六月は雅治の言葉を無視して壁の一部に埋め込まれていたあるカード達を手に取った。雅治は薄暗くて、そのカード達をあまり視認できなかったが、少なくとも1枚は青と緑の半分半分のスピリットでであることだけ読み取った。

 

 

「………ところで小僧」

「はい」

「椎名とはどういう関係じゃ?」

 

 

六月は単刀直入に聞いてきた。一番大事なことを………

 

 

「え?いや、どうって、だから同級せ………」

「本当にそれだけかぁ!?」

「っ!!」

 

 

怒り狂ったように叫び出す六月。その重たいプレッシャーに、雅治は一瞬腰が引けた。

 

 

「お前……本当にわしの椎名にっ!!……なにもしとらんのかぁ!!?!」

「なにもしてないですよ!?ていうか何ですかさっきからぁ!?」

 

 

どんどん頭のネジが飛んでいく六月。雅治は意味がわからないと言わんばかりに返答するが、六月の気は全く治らない。

 

 

「……もういい……お前をここで倒すことで未然に阻止してくれるっ!!」

「な、なにをっ!?」

 

 

もはや会話ができない。六月は自分のBパッドを展開し、セットした。そしてその青と緑のカードを入れたデッキも、そこに置いた。バトルの準備は万端だ。雅治にとってはバトルする意味が全くわからないのだが、

 

 

(こ、これはバトルしないといけないのか!?……でもここでバトルしとかないと…………)

「おいこるぁぁあ!!!さっさと準備せぇ!!」

 

 

「殺されそう」雅治はそう思い、命の危機を取り敢えず脱出するために、Bパッドを展開してバトルの準備を進めた。

 

そして始まる。六月の怒りのままのバトルが、そして雅治の孤独な戦いが…………

 

 

「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

ーバトルが始まった先行は……

 

 

「先行はわしじゃぁ!!」

 

 

ー六月だ。ターンシークエンスを速攻で進めていく。

 

 

[ターン01]六月

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、力集める翼風車を配置してエンドじゃ!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨4

 

力集める翼風車LV1

 

バースト【無】

 

 

六月が颯爽と配置したのは綺麗な野原の上に立つ風車達。風の力でゆっくりとそれが回転している。

 

先行の第1ターンのどできることが限られている。六月はこれだけでそのターンを終えた。

 

 

[ターン02]

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

(相手はあの椎名にバトルを教えた人だ………油断せずに展開していこう……)

 

 

そう、今回雅治が相手しているのは芽座六月。椎名だけではない、芽座葉月にもバトルを教えた程の人物であることから、かなりの達人であることが伺える。

 

一切の油断が許されない。雅治はそう思いながらバトルを進行していく。

 

 

「メインステップっ!!……僕はアルマジモンを召喚します!……そして召喚時効果!!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨3

オープンカード↓

【イエローリカバー】×

【パタモン】×

【パタモン】×

 

 

雅治が初手で召喚したスピリットは黄色の成長期スピリット、アルマジロのような姿をしたアルマジモンが現れた。

 

だが、その召喚時効果は失敗。誰も手札に加えられることはなく、そのまま破棄されてしまった。

 

 

「アタックステップ!!アルマジモンでアタックします!!」

 

 

仕方のない失敗などいちいち悔やんではいられないか、雅治は召喚したてのアルマジモンでアタックする。

 

 

「ネクサス、力集める翼風車の効果でこのネクサスにコアを1つ追加するぞ」

力集める翼風車(0⇨1)LV1⇨2

 

 

六月の背後にある風車が今まで以上に勢いよく回転する。自身の効果によってコアが追加され、レベルが上がったのだ。

 

力集める翼風車には相手の合体していないスピリットかアルティメットがアタックした時にコアを追加する効果がある。

 

 

「……アタックはライフで受けるかの」

ライフ5⇨4

 

 

アルマジモンの渾身の体当たりが六月のライフを1つ砕いた。

 

 

「………ターンエンドです」

アルマジモンLV1(1)BP2000(疲労)

 

バースト【無】

 

 

 

雅治はできることを全て終え、そのターンのエンドとした。次は力集める翼風車のお陰でコアが増えた六月のターンだ。

 

 

[ターン03]六月

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨6

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップ…………異海獣アビスシャークを召喚!!」

手札5⇨4

リザーブ6⇨1

トラッシュ0⇨3

 

「…………っ!!」

 

 

六月の場にスピリットが現れる。それは海の海獣、アビスシャーク。その名の通り鮫型のスピリットだ。

 

このスピリットの色は青。六月は青と緑の使い手である。そしてこのアビスシャークは彼の本気のデッキにとって一番大事なキーパーソン的な役割を担っており……

 

 

「アビスシャークの効果!!自身を疲労させることで、相手のコスト4以下のスピリット1体を破壊!!」

異海獣アビスシャーク(回復⇨疲労)

 

「……っ!!」

「アルマジモンを食らうのじゃ!!」

 

 

場を泳ぐように駆け巡るアビスシャーク。そのまま雅治の場にいるアルマジモンを捕食した。

 

アビスシャークの最も厄介な効果だ。【アーマー進化】同様のタイミングで低コストスピリットを破壊してくるのだから、

 

そして今回はそれだけに収まらず………

 

 

「さらに【連鎖:緑】の効果でコアを1つリザーブに置くぞい」

リザーブ1⇨2

 

 

この効果後に、緑のシンボルさえあればコアも増えるおまけ付きである。

 

 

「さらにバーストを伏せ、このターンはエンドじゃ」

手札4⇨3

 

異海獣アビスシャークLV2(2)BP5000(疲労)

 

力集める翼風車LV2(1)

 

バースト【有】

 

 

六月はさらにバーストカードをセットし、そのターンのエンドとした。あれだけ怒りを見せていたというのに、そのプレイングは思ってた以上に繊細で堅実なものであった。

 

雅治はそんな六月はやはり侮れないと感じつつも、次の自分のターンを進めていく。

 

 

[ターン04]雅治

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨6

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップっ!!サブマリモンを召喚!!」

手札5⇨4

リザーブ6⇨0

トラッシュ0⇨5

 

 

雅治が次に召喚したのは青属性のスピリット、潜水艦のようなサブマリモンだ。

 

 

「………青か」

「そうです!!召喚時効果!!コスト4以下のスピリットを1体破壊!!これにより僕はアビスシャークを破壊するっ!」

 

 

サブマリモンに取り付けられていた魚雷が発射する。それは一直線に六月のアビスシャークに飛び向かい、そしめ命中。それを木っ端微塵に粉砕した。

 

 

「よしっ!厄介なアビスシャークは破壊しましたよっ!!」

 

 

かなり厄介なアビスシャークの破壊に成功し、軽くガッツポーズを掲げて喜ぶ雅治。

 

だが、その程度では本気の六月の壁は超えられない。

 

前のターンに伏せられたバーストが勢いよく反転する。

 

 

「………はっはっは!!その程度、痛くも痒くもないわぁ!!……バースト発動!!」

「…………っ!!」

 

 

六月がこれから召喚するスピリット、それはバーストの効果を持ち、条件は【相手スピリットの召喚時】サブマリモンの効果がトリガーとなったのだ。

 

六月はそれを召喚する。

 

 

「効果により、このカード、ダゴモンを召喚じゃぁ!!」

リザーブ4⇨1

ダゴモンLV2(3)BP10000

 

「…………っ!!」

 

 

地面が突如水浸しになり、沼となる。そこからどんどん浮き出てくるのは青い体を持つたこのようなスピリット。

 

それは完全体のデジタルスピリット、ダゴモンだ。

 

 

「………ダゴモン……」

 

 

雅治はその異端な存在を目の前にして、思わずそう呟いた。

 

六月はそんな言葉など聞く耳にも入れず、このダゴモンの召喚時を発揮させる。

 

 

「ダゴモンの召喚時効果!!召喚時効果を持つ相手のスピリット1体を破壊じゃ!!」

「………っ!?」

「サブマリモンを沈めよ!!」

 

 

ダゴモンがその長い吸盤付きの触手を伸ばす。サブマリモンはその触手に囚われてしまい、ダゴモンの足元にあるドス黒い沼に引きずり込まれてしまった。

 

このデジタルスピリットが大半を占める環境の関係上、この手の効果はかなりの確率で刺さってしまう。

 

雅治はまた場を空にされてしまった。おまけにコアもほとんどないため、次のターンはほぼノーガードなる可能性が高い。

 

 

「ぐっ!………ターンエンド……」

 

バースト【無】

 

 

結局ダゴモンのせいでアビスシャークの破壊程度しかできなかった雅治。

 

次はそんな雅治をここまでほぼ完封している六月のターンだ。

 

 

[ターン05]六月

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨5

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ……再びバーストを伏せ、2体目のアビスシャークをLV2で召喚じゃ!」

手札4⇨3⇨2

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨2

 

「………っ!!」

 

 

次なるバーストが伏せられると共に、サブマリモンが破壊したアビスシャークが今一度六月の場へと姿を現した。

 

並び立つ鮫とタコ。六月はこの2体で雅治のライフを減らしていく。

 

 

「アタックステップ、やれ、アビスシャーク、ダゴモン!!」

 

 

場を駆けるスピリット達。雅治の場にはスピリットはおろか、バーストさえ無い。そしてコアもほぼ空であるため、このアタックは無条件で受けなければならなくて……

 

 

「ライフで受けるっ!」

ライフ5⇨4⇨3

 

 

アビスシャークの鋭い牙での噛みつき、そして、ダゴモンのしなって叩きつけてくる触手が雅治のライフを一気に2つ破壊した。

 

 

「………ほっほ、なんじゃその程度か小僧……そのくらいじゃ、椎名はやれんの」

ダゴモンLV2(3)BP10000(疲労)

異海獣アビスシャークLV2(2)BP5000(疲労)

 

力集める翼風車LV2(1)

 

バースト【有】

 

 

「………つ、強い……」

 

 

雅治はこの時点で圧倒的な実力差を感じていた。彼から与えられるプレッシャーもそうだが、なによりも潜った修羅場の数の違いが鮮明にわかる。

 

芽座六月とは、椎名にバトルを教えていた人物と言うのは、もはや【伝説バトラー】にも勝も劣らない達人であると言うのだろうか。

 

ー雅治はそう思考をよぎらせていた。

 

 

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

「ふっふっふ………来るなって言われたら付いて行きたくなるよね〜〜〜」

 

 

ここは洞穴の中。その最奥部までの道中には芽座椎名がいた。

 

理由は単純。雅治と六月が何を話しているのか気になるのだ。そして来るなと言われたらちょっと付いて行きたくなる人間心理の好奇心からでもある。

 

そして椎名は歩みを進めていると、洞穴の中の枝別れした道に遭遇した。右片方はマグナモンやデュークモンが収められていた祠がある空間。もう一方の左側は現在進行形で雅治と六月がバトルしている壁画がある空間だ。

 

 

「………んーー……どっちに行ったんだろう?」

 

 

椎名は行く先に迷った。2人がこの洞窟に入ったところまでは見たものの、この2つの道どっちかに行ったかは定かではないのだ。

 

答えは2つに1つ。その答えは左なのだが、

 

 

「……よしっ!!行ったことないし、左に行ってみよう!!」

 

 

正解だ。椎名は鬼のような壁画がある空間の道を見事に選んだ。物語中度々あることではあるが、椎名の直感はよく当たる。

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

「……僕のターンだ!」

 

 

そんなことなどつゆ知らず、六月と雅治のバトルは続いている。現在は雅治の第6ターンだ。この圧倒的劣勢の状況から逆転なるか……

 

 

[ターン06]雅治

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨9

トラッシュ5⇨0

 

 

「メインステップ………」

 

 

雅治は考えた。この現状、自分が侵された状況を。

 

今、手札には2枚目のアルマジモンがある。これを召喚しても良いが、次のターンで確実にアビスシャークの効果で破壊されてしまう。

 

なによりもあのバーストだ。召喚時には特に注意してターンを進めなければならない。

 

ーならばやることは1つ。

 

 

「僕は華王の城門をLV2で配置し、ターンエンドです!」

手札5⇨4

リザーブ9⇨4

トラッシュ0⇨3

 

華王の城門LV2(2)

 

バースト【無】

 

 

雅治の背後に巨大な黄色の華やかな城門が現れる。それは黄色のデッキならばどんな構築でも活躍できる汎用性の高いネクサスカードだ。

 

だが、雅治はこれ以上何も動くとはなく、そのままターンを終えた。やはり下手には動かないのだろう。

 

 

「………ふんっ、わしのターンじゃ」

 

 

六月はそんな手詰まりなようすの雅治を見て、鼻で笑った。今日の六月は明らかにキャラがおかしい。やはり椎名が絡んでいるからか、

 

だが、六月は意外と余裕ではなかったことに後から気づくことになる。

 

 

[ターン07]六月

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨4

トラッシュ2⇨0

ダゴモン(疲労⇨回復)

異海獣アビスシャーク(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ……さらに3体目のアビスシャークを召喚じゃ!!」

手札4⇨3

リザーブ4⇨1

トラッシュ0⇨1

 

 

六月はさらに雅治に追い討ちをかけるように3枚目となるアビスシャークを呼び出した。このダゴモンを含めた3体のアタックが全て通れば六月の勝ちとして決着となる。

 

 

「アタックステップ!!ダゴモンよ!!」

 

 

ゆっくりと沼の侵食地を広げて雅治へと近づいていくダゴモン。雅治のライフは残り3。この辺りで何か手を打たなくては一気にやられてしまうだろう。

 

ーだが、雅治はまだまだ粘りを見せる。

 

 

「フラッシュマジック!!サンクチュアリバインド!!」

手札4⇨3

リザーブ4⇨1

トラッシュ3⇨6

 

「ぬっ!?」

 

「この効果で、このターン、相手のスピリットはアタックができなくなります!!……そして有効となるダゴモンのアタックはライフで受ける!」

ライフ3⇨2

 

 

六月の場が突如黄色いベールに包まれていく。それは彼のスピリット達の行く手を遮る壁。アビスシャーク達はそれらを飛び越えることができない。

 

だが、ダゴモンだけがそれから逃れ、雅治のライフをそのまま触手で叩きつけて1つ破壊した。

 

 

「…………しぶといの………ターンエンドじゃ」

ダゴモンLV2(3)BP10000(疲労)

異海獣アビスシャークLV2(2)BP5000(回復)

異海獣アビスシャークLV2(2)BP5000(回復)

 

力集める翼風車LV2(1)

 

バースト【有】

 

 

そうなっては流石にターンを終えざるを得ないか、六月は少々苦い顔をしながらもそのターンをエンドとした。

 

次は何とか耐えた雅治。ここあたりでどうにかしてこの盤面を覆さない限り、敗北は必至だが、

 

 

[ターン08]雅治

 

 

「スタートステップ時、華王の城門の効果で、手札のアルマジモンを手元に置き、ドロー!」

手札3⇨2⇨3

オープンカード↓

【アルマジモン】

 

 

雅治の手札に元々あったアルマジモンのカードが彼の手元に置かれると共に、ドローステップ前のドローを可能とした。

 

 

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨9

トラッシュ6⇨0

 

 

華王の城門のおかげもあって、雅治はなんとかこのバトルの鍵を握るであろうカードをドローできた。

 

少なくともこの場は切り抜けられる。雅治はそう思い、このターンを進めていく。

 

 

「メインステップ!!僕は手元に置いたアルマジモンを召喚する!」

リザーブ9⇨6

トラッシュ0⇨2

 

 

華王の城門。その効果で雅治の手元にオープンカードとして置かれていたアルマジモンが場に召喚された。そしてその召喚時効果も今一度発揮される。

 

 

「召喚時効果!!カードをオープンするっ!!」

オープンカード↓

【パタモン】×

【アンキロモン】◯

【イエローリカバー】×

 

 

効果は成功。成熟期スピリットであるアンキロモンのカードが雅治の手札へと加えられることとなる。

 

だが、まだアルマジモンの効果は終わらず、

 

 

「アルマジモンの追加効果!!さらに2コストを支払うことで黄色の成熟期スピリットを召喚できる!!僕はコストを払い、手札からエンジェモンを召喚します!!」

手札4⇨5⇨4

リザーブ6⇨3

トラッシュ2⇨4

 

 

アルマジモンが呼び寄せたのは文字通り天使型のスピリット。6枚の白い羽を有した男性のスピリット、エンジェモンだ。

 

ここまでがアルマジモンの召喚時。

 

しかし、この後直ぐにあの恐怖が蘇る。

 

 

「バースト発動!!2枚目のダゴモンじゃ!!効果によりこれを召喚する!!」

リザーブ1⇨0

ダゴモンLV1(1)BP7000

 

「………っ!!」

 

 

2枚目のバースト、2枚目のダゴモンの効果が発揮される。六月の裏向きのバーストカードが勢いよく反転したかと思えば、すぐさま2体目となるダゴモンが場へと召喚された。

 

これで六月の場はタコ、鮫が2体ずつ。その姿の異形さもあって、雅治に与えられるプレッシャーは半端なものではなかった。

 

ーそして、今度はダゴモンの召喚時効果だ。

 

 

「召喚時効果!!同じ召喚時効果を持つ相手スピリット1体を破壊じゃ!!わしは小僧のアルマジモンを破壊する!!」

「………くっ!!」

 

 

サブマリモン同様。アルマジモンは2体目のダゴモンの触手に絡み取られ、そのまま足元まで引きずりこまれ、地の底まで沈んでいった。

 

 

「わっはっは!!!どうじゃ!!お前に椎名は絶対にやらんぞ!!!」

「……………」

 

 

雅治のこの絶体絶命の状況を見て高笑いする六月。その様子だけを見ると、あんなに【バトルは楽しむもの】であると言っていた人物とは到底思えない。

 

ーだが、

 

 

「いや、これでいいんです。」

「………ぬっ!?」

 

 

雅治の放った言葉に、六月は少々驚かされた。

 

そう、これはフェイク。囮だ。あのバーストカードが2枚目のダゴモンだった時のケアだ。だから前のターンでアルマジモンは召喚しなかった。

 

ーこのターンで一気に形成を傾かせるために。

 

 

「僕はさらにアンキロモンを召喚する!!」

手札4⇨3

リザーブ4⇨1

トラッシュ4⇨6

 

 

雅治はアルマジモンの効果で手札に加えた背中が鎧のような外骨格で覆われた恐竜のような黄色の成熟期スピリット、アンキロモンを召喚した。

 

これで条件は満たした。雅治は六月に勝てるならこれしかないと思っていた。自分のオーバーエヴォリューションで手に入れたあのカード…………それは六月も知らないカードであるからだ。

 

 

「僕は手札にあるシャッコウモンの【ジョグレス進化】の効果を発揮!!対象はエンジェモンとアンキロモン!!」

「………っ!?【ジョグレス進化】じゃと!?」

 

 

六月は驚いた。【ジョグレス進化】という特別な召喚方法は椎名のパイルドラモンから知ってはいたが、まさかこの少年までもが使ってくるなどとは思ってもいないことであっただろう。

 

雅治の場のエンジェモンとアンキロモンが宙へと飛び立つ。2体はその中でデジタル粒子となり、分解され、そして交わって新たなスピリットの形を形成していく。

 

 

「…………ジョグレス進化ぁぁあ!!……………シャッコウモン!!」

シャッコウモンLV2(2)BP10000

 

 

新たに現れたのは土偶のような見た目に天使のような白い羽を携えた黄色の完全体、かつジョグレス体のスピリット、シャッコウモンだ。

 

その存在感と異形さは六月の場のスピリット達さえをも凌駕する。

 

 

「………こ、これは………」

「シャッコウモン……僕のエースです、お祖父さん…」

 

 

そう言って雅治はこのシャッコウモンの効果を発揮させていく。それはこの状況を一転させる強力なものであって、

 

 

「シャッコウモンの召喚時効果!!【ジョグレス進化】で召喚されていたのなら、相手のスピリット全てのBPをマイナス20000するっ!!」

「………っ!?」

「裁きの天光!!アラミタマ!!!」

 

 

シャッコウモンの目の部分から照射される赤いレーザービーム。それは瞬く間に六月の場にいるスピリット達を焼き尽くしていく。マイナス20000ともなれば流石に殆どのスピリットは耐えられない。

 

六月の場のスピリットは全滅してしまった。

 

 

「………くっ!!」

 

「よし!!ターンエンドです!!」

シャッコウモンLV2(2)BP10000(回復)

 

華王の城門LV2(2)

 

バースト【無】

 

 

雅治はシャッコウモンをブロッカーに残してそのターンを終えた。それもそのはず、何せ雅治のライフは残り2。少しでも守りに徹しなければならない状況だからだ。

 

それに対し六月のライフは4。どちらにせよ攻めるなら次しかない。

 

そして、今の雅治の手札には前のターンにも使ったサンクチュアリバインドがある。次のターンまでは耐えられる。

 

ー雅治はそう考えていた。

 

 

「…………小僧………!!」

「っ!?」

 

 

追い詰められた六月が口を開いた。その声の低さは果てしない闇を感じさせる。実際はただ椎名を男に渡したくないのが原因なのだが……

 

 

「よくもやってくれたな………じゃが、次で終わりじゃ、覚悟しておれ………」

「っ!?」

 

 

ー次で終わり………たしかに六月はそう口にした。まさか確実にこのバトルを自分の勝ちで終わらせる一手が手札にあるとでも言うのか………

 

ーそれはすぐにわかることであって………

 

 

[ターン09]六月

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ8⇨9

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ9⇨11

トラッシュ2⇨0

 

 

「メインステップ…………こいつを召喚するのは17年ぶりじゃわい……なんせずっとこの洞穴に置いていたからのぉ!!…」

「…………っ!!」

 

 

そう言いながら手札の1枚に手をかける六月。それを見て雅治は思わず身構えた。

 

ー「いったい何が呼び出される」

 

ただただその考え方だけが頭をよぎらせていた。

 

ーそして…………

 

 

「召喚!!わしの最強のスピリット!!!世界を統べる皇帝竜!!!!…………その名は…………」

 

 

そのスピリットの召喚口上を述べていく六月。それは今にも召喚されようとしていた………

 

ーだが、それはある人物のある一言で止められることとなる。

 

ーそれは……

 

 

「………イン……」

「あっ!!!いたいた!!……お〜〜〜い!!雅治ぅ!!じっちゃぁぁあん!!」

 

 

ー芽座椎名だ。到着するなり眼前に入れた2人に元気よく手を振った。

 

 

「……えぇ!?椎名ぁ!?」

 

 

それを見て雅治は驚いた。

 

しかし、もっと驚いた人物が………

 

ーそれは芽座六月だ。

 

 

(ぬぉっ!?椎名ぁ!?……なぜここにぃ!?…………そして何よりもなぜ………なぜぇ!?)

 

 

六月は思ったことがある。椎名が来たことよりも驚く事実が………

 

 

(なぜ、わしよりあの小僧の名が呼ばれるの先なのじゃぁ!!!?!?!)

 

 

六月は何よりもそこにショックを受けていた。自分よりも先に雅治の名が椎名の口から出たことに………

 

ーそしてまだまだ六月の悲劇は続く。今度は肉体的に………

 

 

 

 

ーグキ!!!!

 

 

 

そんな鈍い音が六月の背中、又は腰の方から聞こえてきた。

 

 

 

「ぬ、ぬぉぉおお!!!!」

 

 

六月はあまりの激痛に耐えられずにその場で倒れ、もがき出した。

 

ー【ギックリ腰】

 

人間、歳をとったら誰もが訪れる現象だ。六月は本年71歳。それが来る頻度はなかなかに多いことだろう。椎名の一言が与えた精神的なダメージの影響も大きいと言える。

 

ーもちろん椎名に悪気があったわけではないが………

 

 

「じ、じっちゃぁぁあん!!?」

 

 

椎名は思わずその場で倒れた六月に駆け寄った。

 

 

「し、椎名………なぜ、なぜなんじゃ…………」

 

 

六月はそれになってから小声でずっとそんなことを口にしていた。

 

六月がこんな状態ではバトルの続行は不可。

 

よって、このバトルの勝者は雅治となる。それを告げるかのように雅治の場にいたシャッコウモンがゆっくりと消滅していく。

 

 

「し、椎名、お爺さんは大丈夫!?」

 

 

もう椎名がなんでついてきたかどころではない。雅治は慌てて椎名に六月の状態を聞いた。

 

 

「あっはは……じっちゃん、ギックリ腰になったみたい……私がハウスまで連れて行っとくよ……」

 

 

六月に駆け寄って直ぐに何が起こったのかわかった椎名はそれを雅治に告げると、六月を背に乗せ、洞穴の出口まで歩いて行った。

 

雅治もその様子を見て、落ち着いたように肩をなでおろした。

 

 

******

 

 

「ね〜〜さ、じっちゃん……」

「………なんじゃ?」

 

 

椎名は六月を背に乗せ、歩きながら口を開いた。

 

言いたいことがあったからだ。

 

六月も痛みに耐えながら辛うじてそこに耳を傾けた。

 

 

「………やっぱ私じゃ葉月は元に戻らなかったよ……」

 

 

そう。そのことだ。六月は椎名に葉月を元に戻せるのはお前だけだと言及した。

 

だが、結果的に勝ちはしたものの、やはり葉月は帰ってくることはなかった。

 

ー椎名が今回また帰省したのはそれを言いたかったからである。

 

 

「………なんじゃそんなことかの…………気にするでない………いつか必ずあいつは心から救われる……別に1回だけで戻るとは言ってはおらんかったじゃろう?」

「え〜〜そうかなぁ?」

 

 

六月はそう言った。たしかに前も1回で戻るとは言ってはいなかったが、

 

ーというか、今の六月にはそんなことどうでもよかった……

 

 

「………というより椎名っ!!あの雅治とか言う小僧とどういう関係なのじゃ!?」

 

 

そう。今はそんなことよりそこが気になってしょうがなかった。

 

 

「え?だから友達だって…………」

「本当か!?」

「本当か!?って……いったい何を疑ってるの!?」

「それはあれじゃよ………ほら、なんというかの………ほっほ…………」

 

 

ーこんなやりとりがハウスにたどり着くまで続いた。

 

いや、それまでではないか、椎名達が翌日ここを出るまで、ずっと、永遠と無限に、この質問を聞いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉

椎名「今回はこれ!!【ダゴモン】!!」

椎名「ダゴモンは青のスピリット!!バーストを持っていて、召喚時に相手の召喚時効果を持つスピリットを破壊できるよ!!」


******


〈次回予告!!〉


椎名「結局、雅治とじっちゃんは何を話してたんだろう?……バトルするんだったら私も混ぜてくれればよかったのになぁ〜……まぁいっか!!残った夏休みを楽しもうっと!!……え!?私だけ補習ぅ!?……勘弁してよ〜〜!!!……次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ「ベストマッチ!! 確率のビルド!」……今、バトスピが進化を超える!!」


******



最後までお読みくださり、ありがとうございました!!
椎名の住んでいたところを「ハウス」と言うのは、大勢の子供達が住んでいて、とても大きいからです。「大きい家」というより「ハウス」と言ったほうがそれっぽく聞こえますからね、

そして次回は超絶久しぶりの仮面ライダー回!!お楽しみに!!

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