※タイトル通り、最後に第53話から始まる二期第2章の予告をしております。
〜〜椎名と雅治〜〜
「お〜〜い!!雅治ぅ!!」
ジークフリード校の校舎の中で茶髪の短身の少年、長峰雅治のことを呼ぶのは赤毛に近い髪色と長い髪に前髪が虫の触覚のように跳ねている少女、芽座椎名だ。何やら手に何かを持っているようだが、
「はい!!バレンタインのチョコだよ!」
「!?!」
椎名が雅治に何の前振りもなく唐突に渡してきたのはバレンタイン用のチョコだった。赤い正四角形の箱にそれは入っている。
雅治は驚いたし、何よりも喜んだ。まさか椎名から、好きな女の子からバレンタインのチョコを貰えるなど、夢のようだ。椎名のことだから、これは決して好意あってのものではないのだろうが、
「う、嬉しいよ!!ありがとう!!」
「えっへへ!!どう致しまして!!」
何より突然のことであったため、単純な感謝の言葉しか並べられない雅治。別に椎名はそれでも良いのか、照れ臭そうに喜んだ。
「………と、ところでさ、椎名………」
「ん?」
このチョコレートを貰って、雅治は少し聞きたいことがあった。それは若干の期待である。「このチョコレートは本命ですか?」ただそれだけ聞きたかった。
ーだが、
「そのチョコは…………他にも渡す子はいるの?」
逸れた。少しだけ逸れた。少しだけ遠回りに聞いてしまった。ただでさえ椎名はこう言うことに関してはボンクラの極みだと言うのに………
ーしかし、椎名から帰ってきた言葉は雅治にとって嬉しいものであって………
「え?いないよーー」
「!?!」
ー驚いた。何よりも驚いた。椎名がまだ渡すとしたら「司」がいる。これが本当なら彼にもあげないと言うことになる。つまり、「本命」である確率が高い。
ーだが、やはり椎名は椎名であって、
「そうなんだよねーーー司はなんか夜宵ちゃんが気合入ってるから邪魔しちゃ悪いかなぁって思ってさーーー」
「あぁ、なんだ、そう言うことか…………」と、雅治は少しだけ残念そうに肩を竦めながらそう思った。そりゃそうだ。あの赤羽司にはこの界放市全ての男から人気がある紫治夜宵がいるのだ。その間に入ることはあの椎名とてできなことであろう。
「はっはは、そうだよねーーー…………この箱開けて良いかな?」
「うん!!良いよ!!」
気を取り直して、雅治は椎名がくれたチョコが入っている箱を指差して言った。椎名の答えはもちろんYES。自信があるのだ。
雅治はそれを聞くなり、ゆっくりとリボンを外し、そのふたを開ける。すると中にはアルマジモンを模したチョコレートが入っていた。
「今回は雅治に合わせてアルマジモンを模したチョコを作ってみました!!」
椎名がそう、元気よく言ったが、そのアルマジモンを模したチョコレートは…………
「う、うん…………な、なんか、思ってたより精巧だね…………」
通常、何かを模したチョコやクッキーと言ったら、顔だけとか、形だけとか二次元的なものであるはずだ。
ーだが、椎名の作り上げたアルマジモン型のチョコレートは三次元的に作られていた。しかもとんでもないくらいに精巧で正確に………
ー椎名が見た目以上に器用であることに今初めて気づいた雅治であった。
椎名は一人暮らし故に意外と家庭的な面があった…………
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〜〜司と夜宵〜〜
銀髪でトゲトゲの髪型をした少年、赤羽司はジークフリードの校舎を平然とした顔で歩いていた。他の男子共は期待や不安で胸がいっぱいでそわそわしていると言うのに…………
今日はバレンタイン。そりゃそうだ。普通の男子ならそわそわもしたくなる。だが、この赤羽司にとってはどうでも良いこと、彼にとっては自分がバトルで強くなることだけを考えていれば良いからだ。
ーしかし、そんな基本的に一匹オオカミな司にも好意がある女子が1人いる。
ー紫治夜宵だ。
「やっほ〜〜!!つっかさちゃぁん!!!」
司の前を颯爽と現れた夜宵。その手にはなかなか大きめな箱があった。間違いなくバレンタインチョコだ。司はそれを見て何か嫌な予感を察したか、無愛想な顔を少しだけ歪ませると、すぐさま目の前に現れた夜宵をシカトして、それをスルーするように避けて歩き続けた。
「あっ!!出たなぁ〜〜シカトマン!!今日は逃がさないぞ〜!!」
だが、夜宵も諦めない。何度も司の前に立ち、回り込んだ。その度に司もそれを避けるように横切った。その繰り返しである。何度も何度も、何回でも、夜宵はただひたすらに回り込んだ。司もひたすらに避けていた。
ーそしてついに……
「やっほ〜〜!!つっかさちゃぁん!!!」
「もう良い!!!何度目だてめぇ!!!ふざけんなよ!!」
かれこれもう10回目だ。流石に疲れた司は根負けして口を開いた。その様子を見た夜宵は喜んで………
「はい!!バレンタインのチョコでーーす!!」
直径50センチはあるチョコレートの入った箱をプレゼントされた。その中全てがチョコであるのならば確実に1人でたいらげる量ではない。
ー毎年だ。毎年夜宵はとんでもないくらいに大きな愛の形として司に大きなチョコをあげる。司は貰いたくなかった。こんな大きいものを学園で貰ったら確実に悪目立ちするからだ。
それでも仮にあの界放市の超人気美女、紫治夜宵からのチョコなのだ。普通の男ならば大喜び。しかし、そんなもの司にとっては関係がない。夜宵などただ自分の周りをついてくる変な奴としか見ていないからだ。
ーそんな司の答えは一択………
「いらん」
ただそれだけ、
この2月14日において、チョコをあげにきた女の子に対し、そんな一言を放てるのはおそらくこの赤羽司くらいであろう。
「え〜〜!!貰ってよ〜〜毎年貰ってたじゃん!!」
「こんなとこで貰えるかそんなもん!!目立ってしょうがねぇんだよ!!」
夜宵もそれに対し一歩も引かない。どれだけその大きなチョコを司にあげたいのか、その執念深さが伺える。
「貰って!」
「いらん」
「貰って!」
「いらん」
「貰って!」
「いらん」
「貰って!」
「いらん」
「貰って!」
「いらん」
「貰って!」
「いらん」
「貰って!」
「いらねぇっつてんだろうがぁ!!!!」
余りにもしつこい夜宵に本当に怒った司は思わず掌で夜宵の手に持っていた。と言うよりかは押し付けてきていたチョコレートの入った箱を思いっきり叩きつけてしまった。
箱が廊下に勢いよく落ちる。「バキッ!!」と割れた音がその場で木霊した。
「………あ………」
司は思わず声をこぼした。まるで「しまった」と言わんばかりに。流石にこればかりは罪悪感を覚えたか………
司はその落ちて「グシャッ」と潰れた箱を見ると、今度は夜宵の顔の方を伺う。
「………うっ!………うぅ!!」
夜宵は今にもその瞳に涙を溜めて泣きそうな表情であった。そりゃそうだ。このチョコは今日という日のために一生懸命に作ったのだから………
夜宵はその潰れた箱を抱き上げ、司に背中を向ける。流石に司に怒りを見せたのか…………
そんな夜宵の弱々しい姿を見て、司は………
「いや、その………悪かったよ………」
そう司が言うが、夜宵はなかなか振り向かない。そっぽを向いたままだ。あの司を謝罪の言葉を使わせることができるのはおそらく現在の全人類においてこの紫治夜宵くらいであろう。
「…………食ってやるからさ………だから悪かった」
司は照れ臭そうに頬を人差し指で掻きながらそう言った。
こうなっては最後の手段だ。散々あんなに酷いことを言っておいて何事かと思うかもしれないが、彼なりのお詫びのようなものであった。
そんな司に対して、夜宵はまだそっぽを向いたまま…………………
ーかと、思われたが…………
「やったぁ!!今食べるって言ったね!!!?!」
「……………は?」
「やっぱり司ちゃんってば、やっさしい〜〜!!」
元気よく司の方を振り向いた。今までの涙や、表情や仕草などが全て演技だったのかと勘ぐってしまうほどに。
それを見た司は思わず呆気に囚われた。
「しまった」「嘘泣きだ」「嵌められた」「やはりこの女はとんでもない策士だ」「やばい女だ」「こんな奴と一緒にいたら自分のキャラがぶれる」そんなことだけを考えていた。
ー因みにそのチョコのお味は大層不味かったそうだ。司が夜宵のチョコを貰いたくなかった理由の1つはそれである。
夜宵は椎名とは違い、とんでもなく不器用であった。
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〜〜晴太と兎姫〜〜
「…………今日はやけに遅いわね、晴君………」
早朝のジークフリードの職員室。今は司と雅治の担任であり、後に椎名達の副担任となる女教師、鳥山兎姫は今か今かと空野晴太が来るのを楽しみに待っていた。理由はただ1つ。バレンタインチョコがあるからだ。
(………今年は我ながらに最高の出来よ!!……今年こそは絶対に渡してやるんだからっ!!見てなさいよ〜〜!!)
ー鳥山兎姫。空野晴太とは幼馴染である。そんな彼女は不器用すぎる性格故に、ずっと、毎年、バレンタインチョコを彼に、晴太に渡しそびれている。
ーだからこそ、「今年こそは、今年こそは」と意気込んでいた。
ーそんな時だった。
「おっは〜〜兎姫ちゃん!」
後に二年連続椎名達の担任となる教師、空野晴太が兎姫のいる机の前に気が抜けたようなのほほんとした雰囲気のまま現れた。
ー今がチャンス!!兎姫はそう思って手に持っていたチョコを渡そうとするのだが…………
「おはようございます空野先生………いい加減学園では私のことは「鳥山先生」とよんでくださいと言ってるでしょう?」
「おいおい、もういいだろ?その話はよ〜〜どんだけ固いんだよ〜〜」
ー思わず「キリッと」した顔で別の話をしてしまった。そんな引き締まった表情とは裏腹に……
(………くっ!!なんで私はこんなことしか喋れない〜〜〜〜〜〜)
心の中ではそんなことを考えている。毎年のようにこのような状況が続くものだから20を超えても未だに告白はおろかチョコ1つまともに渡せないでいた。
ーしかし、今回に限っては奇跡が起きた。
「っ!!おい兎姫ちゃん!その手に持ってるのってもしかしてバレンタインチョコか!?」
「っ!?!」
晴太が兎姫の持っているチョコに気づいた。不覚だった。毎年晴太は全然気づかなかったからこういう対策を今回に限っては怠ってしまった。
兎姫は思わず頭がショートした。真っ白になった。思考がフリーズして何をしていいかわからない。それとは裏腹に顔の方は真っ赤になってしまい、もう何が何だかわからない状態に陥ってしまった。
ーだが、本当は兎姫が期待していたようなものではなく……………
「ダメだぞ兎姫ちゃん!!生徒のチョコ没収したら!!」
「……………はぁ?」
その一言だけで、兎姫の状態は一気に回復し、正常に戻った。そしてさっきとは別の力に熱が籠っていく。そんな兎姫の様子にも気付かず、晴太はまだまだその口を動かしていく。
「今時チョコを没収だなんて考え方は古いぞ〜〜頭ガッチガチの兎姫ちゃんらしいけどね〜〜やっぱ生徒の気持ちが詰まったチョコだからさーーー返さないと……あっ、気まずいなら俺が返してこようか?」
ーもう返す必要ない。兎姫はそう思って椅子から立ち上がり………
「誰が頭ガッチガチだぁ!!?……このボンクラ野郎!!!!」
「ぐふぉっっ!!」
そう叫びながら兎姫は手に持っていたバレンタインチョコを思いっきり全力で振りかぶって晴太の顔に叩きつけた。チョコの固い部分が鼻に当たってすごく痛そうだ。
晴太はそれを受けて一撃でKO……床の上でのびてしまう。
「……ふんっ!」
兎姫は怒った表情を歪めずに、そのまま教材を持って職員室を出て、授業がある教室へと歩んで行った。
「…………俺……なんか悪いことしたかな?………てか、このチョコ結局誰のだよ……」
晴太は力尽きたような弱々しい声でそう呟いた。その目線は投げつけられた兎姫のバレンタインチョコの小箱に向いている。
ー結果的に兎姫はチョコを渡すことには成功した。
《次章予告》
ー椎名達は学園行事の修学旅行で伝説の仮面スピリットがあると言われている【倶利土王国(ぐりどおうこく)】に赴くことになった。
ーしかし、そこで待ち受けていたのは数々の難解な試練であった。
………二期第2章…………「修学旅行とオーズと鬼化片鱗(おにかへんりん)編」…………第53話からスタート!!
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最後までお読みくださり、ありがとうございました!
今日はハッピーバレンタインと言うことで、番外編として今回のお話を書かせてもらいました。
タイトルのかっこの中にある通り、この話は第34話と第35話の間に起こった出来事です。
今回、次章の予告をしましたが、書いてある通り、始まるのは第53話から、つまり第52話までは二期1章は続きますのでご了承ください。