第53話「オーズ一族……!!」
【具利度王国(ぐりど王国)】
単に王国と言っても、実際はただの市のようなものであり、日本内に存在する。王族はいるが、政権はなく、飽くまで形だけの王国であり、観光名所としての名が高い。
ーただ、国を治めているのは、とあるバトスピ一族。遥か昔から存在する仮面スピリットを扱う、王を含めた6人の神官バトラーが存在していた。
******
「…………はぁ」
芽座椎名は非常に困っていた。大きなため息をつくほどに。それもそのはず、何せ、この修学旅行でいつもの5人(椎名、真夏、雅治、司、夜宵)で有名な観光地、具利度王国に来たのは良いものの、観光途中で他の4人とはぐれてしまったのだ。
忘れてはならない。椎名は極度の方向音痴。全員が目を離した隙に、まるで椎名は子犬のようにふらっと何処かへ消えてしまったのだ。決して他の4人が悪いというわけじゃない。
「くっそ〜〜!!道がわかんないよーー!!!折角【オーズ神官】とバトルできるのに!!」
もはや何が何だかわからなくなり、頭の中が困惑する椎名。両手で頭をわしゃわしゃと掻いてもその小さい脳みそでは何も出てこない。
ー【オーズ神官】この国を治める王を含めた6人のカードバトラー達のことである。実際はバトスピ一族の1つであり、【オーズ一族】と呼ばれることもある。
修学旅行。もちろん学修のための旅行だ。だが、このバトスピ学園において、バトルをすることこそが勉強の一環。椎名たち5人はそのオーズ神官達とバトルをするためにここまで来たのだ。
ー椎名は何よりもそれを楽しみにしていたが、現在はこの通り、絶賛迷子中である。何度も周りの人に聞いてみるが、それでもなかなかたどり着けないでいた。
ーそんな時………
「………おい」
そもそも、なんで自分だけ全く違う道を歩いていたのか。そこから椎名は考え始める。なぜ、4人とも自分を置いて勝手に迷子になっているのか………
まぁ、全てはこの無自覚な方向音痴のせいなのだが……
「おい!!無視すんじゃねぇ!!俺を間に入れろ!!」
後ろからやけに図太くて聞き覚えのある声がした。椎名はようやくそれに気づき、後ろを振り返った。
ーそこには………
「あ………屑島先輩!!」
「人をゴミみたいに言うんじゃねぇ!!」
「鍋島先輩?」
「お肉も焼かん!!」
椎名も本当はその人物の名を知っている。ちょっとからかっているだけだ。それはほんの半年くらい前はよく起こっていたことであって…………
「いい加減名前くらいしっかり覚えやがれぇ!!この毒島富雄様をお!!」
「あっはは!!お久しぶりです〜」
怒り狂う毒島に、椎名は笑いながらも挨拶を交わした。
毒島富雄。一期においては何度か椎名にリベンジしようとバトルを挑んでいた。今年で19の元ジークフリード校の学生。いわゆるOBだ。
ーだが、疑問に思うとこもある。いったいなぜ毒島がこんな日本内の観光地、具利度王国にいるのかと言う点だ。
まぁ、それは簡単な話。バトスピ学園卒業後、彼はこの場所、具利度王国で働いているのだ。そしてその勤務中、椎名を見つけ、声をかけた。と言う流れであった。
「まっさかあの毒島先輩がこんな凄いとこで働いてるなんて〜〜〜私はびっくりですよ!」
「ガハハハハ!!!!そうだろうそうだろう!!!……………ん?あのってなんだ!!?!」
止まらない椎名の毒島いじり。
そして次に椎名は迷子を脱すべく、毒島に道案内を頼もうと言う発想が頭の中に浮かんだ。
ーまたまたそんな時だった。毒島に道案内を頼もうとした直前、2人の前に見知らぬ人影が現れて…………
「………おい」
今度は椎名も直ぐにその声のする方へと振り返る。毒島のようなものではない。どこか軽い。というかチャラい。そんな感じの声色であった。
ーそこにいたのは………
「そこのブ男……可愛い子が嫌がってるだろ?離れてやれ………!!」
そこにいたのはツンツンした赤髪の少年と言ったらわかりやすいか、やや細身で、椎名達と同じ歳くらいに見える。
そんな少年が、毒島のことをブ男と称しながら、指を彼に向けて指し、椎名から距離を離そうとする。
ー赤髪の少年は完全に勘違いをしていた。確かに鼻からみたら毒島と言う厳つい男が、いたいけな少女をいじめているかのように見えるかもしれない。
ーもちろん実際は大きく異なっている。寧ろ毒島が椎名にいじめられていたと言った方がまだ的確である。
ーそんな少年の粗相な態度に、毒島は椎名の時以上に怒りを大きく表し………
「んだとぉ!?……誰がブ男だコラァ!!!」
目くじらを大きく立て、鋭い眼光のまま、脅すように少年を睨みつける。だが、少年はそんな毒島には興味がなく。
「おお!!!愛しのマイ姫!!……ご無事でしたでしょうか?」
「は、はぁ………」
毒島そっちのけで膝を地面につきつつ、椎名の手を取り、そんなチャラついた言葉を並べた。いわゆるナンパだ。椎名も言ってる意味がわからないと言わんばかりの反応をする。
ーそんな少年の様子に、毒島はまた大きく怒りを示し、
「俺を無視すんじゃねぇ!!!!!」
「もうーーーうっさいなーーーー俺はお前みたいなキモ男に興味はないっての」
「誰がキモ男だぁ!!」
少年は毒島をこれでもかと言わんばかりに毛嫌いする。
「取り敢えずこの子を連れて行きたいし、お前にはどっか言ってもらおう」
そう言って少年は徐に懐から自身のBパッドを取り出し、展開させた。バトルだ。バトルで毒島をこの場で追い出す気だ。それはこの世界ではごく当たり前のことであって…………
そんな様子を見た毒島は………
「上等だこのガキ!!!!!相手してやんよぉ!!」
短気な彼は当然これを自分に対する煽りだと認識し、その勝負に乗っかる。自身のBパッドも展開させた。
「おっ!!バトル?私もしたーーーい!!」
兎に角バトル好きな椎名はその様子を見て自分も混ざりたそうな顔をする。そんな椎名にチャラ男の少年は「後でね!」と優しく囁いた。
ーそして始まる。何が何だかよくわからないまま。この短気な不良毒島と謎の赤髪の少年のバトルが。
「「ゲートオープン、界放!!」」
バトルが始まった。先行は毒島だ。
[ターン01]毒島
《スタートステップ》
《ドローステップ》手札4⇨5
「メインステップっ!!この俺様を怒らせたことを後悔させてやるっ!!ネクサスカード、旅団の摩天楼を配置!!効果でカードを1枚ドロー!!さらにバーストを伏せ、ターンエンドだ!!」
手札5⇨4⇨5⇨4
リザーブ4⇨1
トラッシュ0⇨3
旅団の摩天楼LV1
バースト【有】
毒島は早速紫の汎用ネクサスカード、旅団の摩天楼を背後に配置。細長い摩天楼が形成される。そして最後にはバーストカードをセット。万全なる先行の第1ターン目であると言える。
ー次は赤髪の少年のターンだ。彼はいったいどんなバトルを見せるのだろうか。
「さて、さっさとぶっ飛ばしてこの子とデートに行くか……………」
そう言って赤髪の少年は毒島の方ではなく、椎名の方へ目線を向け、徐にウィンクをしてみせる。
が、意味の分からない椎名はその首を斜めに傾けた。
[ターン02]赤髪の少年
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ4⇨5
《ドローステップ》手札4⇨5
「メインステップ!!俺はチョーター2体とサケビバードを召喚!!」
手札5⇨2
リザーブ5⇨1
トラッシュ0⇨1
赤髪の少年が呼び出したスピリットはダチョウのような見た目に柄がチーターのような斑点のあるチョーター。それが2体と、丸っこい見た目の鳥、だが、その鳴き声はとてもうるさい、サケビバード。
この2体はいずれも青のスピリットで、低コストのスピリットだ。毒島と椎名はそれを見て、彼が青属性の速攻デッキであることを理解した。
「さらに俺はメインアクセル!!巨人王子ラクシュマナを発揮!!デッキから2枚ドローし、2枚破棄!!」
手札2⇨1⇨3⇨1
破棄カード↓
【チョーター】
【アンク】
赤髪の少年の手元に青属性のカードが置かれる。その効果で手札を入れ替え、その質を向上させた。
そしてこのカードは自身の効果により、手元にある場合でも青のシンボルをある状態にしてくれるため、全く無駄にならない。
「俺もバーストセット!!」
手札1⇨0
少年もバーストを伏せ、その手札を空にする。
だが、少年はそんなことなど気にするそぶりなど見せずに、そのままアタックステップへと移行する。
「アタックステップ!!やれ!チョーター!!サケビバード!!」
飛び立つサケビバードと走り出す2体のチョーター。もちろん目指すは毒島のライフ。前のターンでネクサスの配置でコアを大きく使用した毒島にはこのアタックを防ぐことなどは出来ず…………
「はんっ!!全部ライフだ!!持ってきやがれ!!!」
ライフ5⇨4⇨3⇨2
合計3体のスピリットの体当たりが毒島のライフを大きく削った。1年次の椎名よりも明らかに速い速攻だが………
「…………ガハハハ!!!馬鹿め!!俺のバーストを食らうがいい!!」
「………!!」
毒島のその言葉に反応する少年。
その宣言通り、彼の伏せられたバーストカードが光り、勢い良く反転する。
「俺のライフの減りでバースト発動!!大甲帝デスタウロス〈R〉!!」
「………!!」
「この効果で1体疲労!!……と言っても意味ないがな、その後、相手の疲労状態のスピリット全てを破壊し、その数だけコアを増やす!!」
リザーブ4⇨7
「………へぇ」
そのバーストから放たれる紫の衝撃波。横一線に並んだ少年の3体のスピリット達を蹴散らしていく。さらにそのエネルギーはコアとなって毒島の元へとたどり着く。
この時、毒島は2回目のアタックの時点でこれを使えばライフの消費を抑えられたが、より早く少年を倒すために、そしてより多くのコアを増やしたいがために、3度目のアタックまで受けたのだ。
ーそして、これはバーストを持つスピリットカード。彼はこれを召喚していく。
「そしてこの効果発揮後、ノーコスト召喚するっ!!深淵の樹海より現れよ!!大甲帝デスタウロス!!」
リザーブ7⇨4
大甲帝デスタウロス〈R〉LV2(3)BP12000
毒島の背後が濃ゆくて深い闇に覆われる。そしてその狭間から現れる1体のスピリット。鬼と甲虫。2つの力を併せ持った強力なエックスレア、大甲帝デスタウロスがこの場に顕現した。
「おおっ!!かっっこいい!!」
巨大なスピリットの登場に興奮する椎名。自分も今すぐバトルがしたい気分になる。
毒島はまた腕を上げたと言える。あのカツアゲばかりして、まともに授業を受けていなかった頃とは大違いだ。
「…………気持ち悪いな…………まぁ良い、破壊後のバースト、双光気弾………カードを2枚ドロー」
手札0⇨2
そんな椎名とは正反対に、毒島のデスタウロスを気持ち悪いと辛辣な言葉を浴びせる少年。そしてそれと同時に伏せていたバースト。汎用性の高いドロー効果を持つ双光気弾を使用し、その何もなかった手札を若干潤した。
「………ターンエンドだ」
《手元》
巨人王子ラクシュマナ
バースト【無】
「ガハハハ!!!打つ手無しって感じだな!!」
少年は出来る限りの事をして、このターンをエンドとした。
次は見事に大甲帝デスタウロス〈R〉の召喚を成功させた毒島のターン。その一気に増加させたコアでいったい何をしようと言うのか。
[ターン03]毒島
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ4⇨5
《ドローステップ》手札4⇨5
《リフレッシュステップ》
リザーブ5⇨8
トラッシュ3⇨0
「メインステップ!!!俺様はドクグモンを3体召喚してやるゼェ!!!」
手札5⇨2
リザーブ8⇨2
トラッシュ0⇨3
毒島の召喚ラッシュ。ネクサスとダブルシンボルであるデスタウロスで多く軽減し、一気に3体の毒グモ型の成熟期デジタルスピリット、ドクグモンを召喚した。
ーそしてまだ終わらない。毒島はこれを機にまだ展開をしていく。
「さらにぃ!!アルケニモンを召喚だぁ!!」
手札2⇨1
リザーブ2⇨0
トラッシュ3⇨4
今度は宛ら女王蜘蛛と言ったところか、上半身が不気味な女性。そして下半身が強靭な蜘蛛の肉体で構成されている完全体のデジタルスピリット、アルケニモンが召喚される。
これで毒島の場のスピリットは合計5体。少年のライフを全て破壊するには十分過ぎる数である。
毒島はアタックステップへと移行し、一気にアタックを仕掛ける。
「アタックステップ!!やれぇ!!3体のドクグモン!!」
3体のドクグモンがカサカサっと動き出す。その姿に少年は背中が痒くなる。
「気持ち悪っ!!……ライフだ!!」
ライフ5⇨4⇨3⇨2
3体のアタックが一気に通る。ドクグモン達は体当たりでその少年のライフを大きく削り取った。
ーそして残りは2つ。このダブルシンボルのアタックで終わる。
「ガハハハ!!!これで終わりだぁ!!大甲帝デスタウロス!!」
大甲帝デスタウロスはダブルシンボルのスピリット。つまり一度のアタックでライフを2つ破壊できる。
勢い良く地を駆けるデスタウロス。目指すはもちろん少年のライフ。
だが、少年もこんな簡単には終わらず…………
「ふっ……甘いな、フラッシュマジック!!リミテッドバリア!!」
手札2⇨1
リザーブ6⇨2
トラッシュ2⇨6
「……っ!?」
「アタックはライフで受ける!!…………と言っても、このターンはリミテッドバリアの効果で減らないけどねーーー」
ライフ2⇨2
少年のライフの周りに白い障壁が形成される。それは体の大きな者は通ることができない代物である。デスタウロスはそれを槍のような鋭い腕で懸命に破壊を試みるも、それは傷1つつかない。
リミテッドバリア。白の防御マジックの1つで、このターンの間、コスト4以上のスピリットのアタックでは自分のライフは減らないという効果を持つ。
毒島のスピリットはいずれもコスト4以上。つまり、このターンはどう足掻こうが少年のライフをゼロにすることはできないのだ。
「ちぃっ!!命拾いしたな………ターンエンドだ」
大甲帝デスタウロス〈R〉LV2(3)BP12000(疲労)
アルケニモンLV1(1)BP5000(回復)
ドクグモンLV1(1)BP3000(疲労)
ドクグモンLV1(1)BP3000(疲労)
ドクグモンLV1(1)BP3000(疲労)
旅団の摩天楼LV1
バースト【無】
仕方なくそのターンを終えた毒島。次は見事にリミテッドバリアで毒島の猛攻を凌いだ少年のターン。現在、毒島とは圧倒的な戦力差があるが、彼の表情はとても落ち着いていた。涼しい顔を全く崩していなかった。
ー余裕だからだ。この程度の差は直ぐに逆転できるからだ。少年はこのターンのシークエンスを進めていく。
[ターン04]赤髪の少年
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ2⇨3
《ドローステップ》手札1⇨2
《リフレッシュステップ》
リザーブ3⇨9
トラッシュ6⇨0
「メインステップ………ほんじゃ、早くデートしたいし、終わらせるか…………」
「………!?」
終わらせるか。そんな少年の言葉に反応する毒島。だが、そんなものは不可能に近い。何せ、今、毒島の手札には全てのスピリットを回復させるマジック。リブートコードがある。
これを使えば忽ちブロッカーは大量に復活。いくら残りライフ2とは言え、流石にこの第4ターン目で終わるなど俄かには信じられない。
ーだが、少年はある伝説の仮面スピリットを使い、それを可能にする。
「………俺はこいつを………仮面ライダーオーズ タトバコンボ[2]を召喚!!」
手札2⇨1
リザーブ9⇨4
トラッシュ0⇨2
「………な!?オーズ!?………お、お前は………」
“タカ・トラ・バッタ!!!”
“タ・ト・バ!!タトバタ・ト・バ!!”
そんな陽気な音楽が流れてくる。すると、少年の場に縦三色。上から赤、黄色、緑で構築されたその光はつなぎ合わされ、人型のスピリットを形成した。
ーそれは仮面ライダーオーズ タトバコンボ。この具利度王国を治めるオーズ一族だけが持つとされる伝説の仮面スピリットである。このタトバコンボはその基本形態。
「おおっ!!仮面スピリット!!」
あいも変わらずはしゃぎ出す椎名。だが、逆に毒島は………
「………ま、まさか、まさかだよな?……お前……ひょっとして………」
毒島はこの赤髪の少年の正体に気づきつつあった。いや、というかほぼこの時点で気づいていた。彼は間違いなくあの人物。自分が王に命令され、連れ帰るよう言われたあの人物だった。
ーそしてさらにその少年は次の一手を見せる。それは彼が王族であるという何よりの照明であって………
「ふっふ………俺はさらに手札のこのカードの【チェンジ】の効果を発揮!!対象はタトバコンボ!!」
リザーブ4⇨2
トラッシュ2⇨4
「………っ!?」
毒島は確信した。間違いない。王族の中でもより優れたエリートだけが授かることのできる【チェンジ】効果持ちのオーズを使ったからだ。それは代々受け継がれ、この国を代表する6人の神官の証でもある。
「この【チェンジ】効果でトラッシュにあるアンクを召喚!!オーズと直接合体するように召喚する」
リザーブ2⇨1
トラッシュから復帰してくるのは………とある怪物の腕。それは妙な動きで浮遊しながら少年の場のオーズの横に現れた。
ーそしてこれは【チェンジ】の効果。つまり、この後、スピリットとの入れ替えが発揮される。
「そして………このカード……仮面ライダーオーズ タジャドルコンボをタトバと入れ替える!!来い!!雄々しく、そして美しい翼を持つ伝説の仮面よ!!」
仮面ライダーオーズ タジャドルコンボ+アンクLV2(3)BP13000
“タカ!!クジャク!!コンドル!!"
“タ〜〜〜ジャ〜〜〜〜ドルゥ〜〜!!”
タトバコンボがベルトにあるメダルを差し替え、新たにスキャン。今度はそのメダルは赤に統一されている。
そしてそれに伴ってか、赤い光に包まれ、妙な音楽と共にその姿を変える。
ー現れたのは全身が赤い、仮面ライダーオーズ タジャドルコンボ。この具利度王国が誇る6人の神官バトラーが持つ特別なオーズだ。その美しい赤き翼を広げ、今、この場に降り立った。
「や、やっぱりそうなのか!?……や、やっぱお前は……」
動揺が隠せない毒島。だが、そんな彼の事など、少年にとって知ったことではない。このままアタックステップへと移行し、一気に畳み掛ける。
「アタックステップ!!タジャドル!!」
翼を広げ、空を駆けるタジャドルコンボ。ほとんどが空の飛べない毒島のスピリット達はただそれを傍観することしかできない。
「アンクの効果!!アタック時、LVを最大にする!!よってタジャドルはLV3に!!」
仮面ライダーオーズ タジャドルコンボ+アンクLV2⇨3
アンクの効果でそのLVが上昇するタジャドルコンボ。これでBP合計15000。毒島の全てのスピリットを超えた。
そしてさらにタジャドルにはまだ効果があり………
「タジャドルの効果でドクグモンを指定アタック……!!」
「………!!」
空から滑空するように急降下してくるタジャドルコンボ。狙うは3体いるドクグモンのうちの1体だ。
「そしてこの時、タジャドルは回復するっ!!」
仮面ライダーオーズ タジャドルコンボ+アンク(疲労⇨回復)
「な、なぁ!?」
咄嗟に赤い光を体中から解き放ち、回復するタジャドルコンボ。
それがタジャドルのもう1つの効果だ。最もコストの低いスピリットに指定アタックすることで、回復する。この効果の恐ろしいところはターンに一度ではないと言うこと。
ーつまり、BPで負けることがなければ何度でもアタック可能なのだ。
「タジャドル!!」
「ぐっ!!」
タジャドルは空から勢い良くドクグモンを翼で切り裂いた。それだけでない。すぐ横にいた他の2体のドクグモンを拳に纏わせた炎で一気に焼き払ってみせる。
「次だっ!!狙い撃て!!」
3体のドクグモンは破壊された。次はアルケニモンだ。
向かって来るタジャドルに負けまいと、アルケニモンはその手から闇のエネルギー弾を何発と投げつける。が、タジャドルはそれをいとも容易く回避。アルケニモンをそのままドクグモン同様翼で切り裂いた。アルケニモンは堪らず爆発四散した。
ーそして次が最後。
ー大甲帝デスタウロスだ。
「いけぇ!!タジャドル!!」
“タカクジャクコンドル!!……ギガスキャン!!”
タジャドルコンボがその腕にある円形の武器にメダルを投入、スキャンし、その力を込めたエネルギー弾を毒島の場にいる大甲帝デスタウロスに向けて発射する。
その勢いは凄まじく、それを受け止めようとしたデスタウロスを丸ごと貫き、あっさりと燃やし尽くしてしまった。
ーそして当然ブロックされているので、タジャドルは今なおも回復状態であり………
「じゃあなブ男………」
タジャドルは毒島の目の前で着地し、今一度その拳を炎で纏わせ、
「……ぐ、ぐおぉぉぉぉぉぉお!!」
ライフ2⇨0
毒島をライフをその拳で粉々に殴りつけ、粉砕した。
これにより毒島のライフはゼロ。赤髪の少年の勝利に終わる。見事な速攻勝利であった。
「ふふ、じゃあなブ男……俺はこの可愛い子とデートに行くことにするよ〜〜」
そう言って椎名の方を向き、そこに向かおうとする赤髪の少年。だが、毒島はまだ何か言いたいようであり………
「お、おい待ちやがれ!!俺はテメェの親父にお前を探せって言われて来たんだよ!!」
「ああん?親父?」
「ああ、あんたの親父【プルート】に頼まれてなぁ!!赤の神官【マーズ】!!」
「……え?」
「あんたこれから【大事な仕事】ほったらかして遊びに行くんじゃねぇよ!」
その毒島の言葉を聞いて椎名は驚いた。
そう。この赤髪の少年は具利度王国の王族にして【オーズ神官】の1人、名をマーズ。しかもこのマーズは今の王の息子ときた。
まさかこの目の前の自分達と同じくらいの少年がまさかまさかのこの国の王子さまである事など誰が予想しただろうか。
基本的に【オーズ神官】はそれぞれの扱うオーズを模した面を被っている。故に毒島でも一目見ただけではその素顔は分からなかったのだが、さっきのタジャドルが何よりも王族であるとということの証拠である。言い逃れはできない。
「あ?お前ウチの家来だったの?……全く、親父の奴、こんなブ男雇うなよな〜〜」
「んだと!!このガキ!!まだ言うか!!………ていうか顔くらい覚えとけぇ!!」
未だに悪態を吐く【赤の神官】マーズに、毒島も未だに怒りを見せる。
「………ていうか知ってたし、今から戻るつもりだったんだよ、城でデートする気だったしな〜〜」
「?」
そう言ってマーズは椎名の方に顔を向けると………
「これから始まるジークフリード校の生徒達との【サバイバルバトル】に可愛い女の子の観客を置いときたくてね〜〜」
「あぁ?」
ーそう言った。なんとも言えない阿呆な理由に毒島は呆れたような声を上げる。
「いや、私もジークフリード校の生徒なんだけど…………」
「…………え?」
椎名のその言葉に、今度はマーズが驚いた。そして今更ながらに自分が色々と勘違いをしていたということに気づいた。
毎年。毎年必ず界放市のバトスピ学園の生徒はこの【具利度王国】を訪れる。そして毎年のように、【神官バトラー】達はおもてなしと言わんばかりにあるイベントを開催していた。
ーそれが【サバイバルバトル】
ーいったいこれから椎名達はどうなっていくのか………
〈本日のハイライトカード!!〉
椎名「本日のハイライトカードは【仮面ライダーオーズ タジャドルコンボ】!!」
椎名「タジャドルコンボはオーズの赤いコンボ!!チェンジ効果でアンクと名を持つカードを召喚して、指定アタックで相手のスピリットを全部蹴散らせるよ!!」
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〈次回予告!!〉
椎名「まっさかあの子がオーズ神官の1人だったなんてね〜〜!!……よっし!!サバイバルバトルで絶対にバトルしてやるっ!!次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ、「サバイバルバトル開始!!椎名VS俊足コンボ!!」今、バトスピが進化を超えるっ!」
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最後までお読みくださり、ありがとうございました!
具利度王国の見た目はドラクエでありそうな王国みたいな感じです。
ーオーズ神官に関して
オーズ神官は6人。それぞれタトバ+いずれかの統一コンボ1つを使用してきます。