バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

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第54話「サバイバルバトル開始!!椎名VS俊足コンボ!!」

 

 

 

 

 

 

「おおっ!!ここが城の中!!広ぉっ!!」

 

 

椎名は毒島とオーズ神官の1人、マーズによって、王国の中心部にある王宮へと招かれていた。椎名はその広さに驚愕の声を漏らす。その声が王宮の煉瓦に響いて木霊した。

 

 

「おいうるせぇぞ芽座椎名」

「可愛いなぁ!!見てるだけで癒されるわ〜〜!」

 

 

一応職場だからか、注意の形でツッコミをいれる毒島。そしてその横でさらにボケるオーズ神官の1人、赤髪の少年マーズ。とても女好きな彼は椎名の天然を見て、ただ1人和んでいた。

 

毒島だけではとてもではないがツッコミが追いつけない。

 

 

「あっっ!!!しぃいなぁ!!」

 

 

そんな時だ。誰かが椎名以上のうるさい声でこちら側に向かって急接近してくる。

 

ー真夏だ。その表情は怒りに満ち溢れている。

 

 

「あっ!真夏!久しぶり〜〜」

「久しぶり〜〜ちゃうわっ!!ボケェ!!あんたまたさらっと迷子なりおって!!」

 

 

迷子になっていた椎名に怒りを見せる真夏だが、椎名はまるで反省していないのか、それを軽く受け流す。これも自分の方向音痴に自覚がない故だ。

 

真夏達他の4人は椎名が行方知らずになった時、王宮が既に目の前にあったので、一先ずそこに入った。

 

そして王宮の人達に捜索を依頼するが、その前に先ず神官の1人、マーズが行方不明になっており、王宮はそれどころではなかった。

 

ーしかし、毒島のマーズ発見。そしてついでに椎名も居合わせた事によって、意外にも手早く、このややこしくなっていた緊急事態が収まったのだった。

 

 

「そう言えば………なんで毒島がおんねん」

「あぁ?文句あんのか?関西女」

 

 

真夏が毒島の存在に気づく。捻くれてる毒島は粗相な態度でそれに接する。そんな毒島を見かねて、椎名が真夏に説明した。「毒島先輩はこの王宮で働いている」と。

 

理解した真夏だが、大して興味もなかったためか、「あっそ」と軽く流した。これは毒島があまり好感度が高くないのが原因である。

 

 

「わぁっ!!またなんと眩しいお嬢さん!!今日は観客に可愛い女の子は要らないなぁ!!」

 

 

マーズが真夏を見てそう言った。目がハートだ。これが王子で神官の1人でなければ誰が見てもただの変態である。真夏がマーズに指を指して、椎名に「これ誰や?」と聞く。椎名はそれに対し、「王子様」とだけ答えた。

 

ーその後、真夏は椎名を自分達が集められた部屋へと連れて行き………

 

 

******

 

 

「もうっ!椎名ちゃん!みんな心配してたんだよ!?」

「まぁ、無事で良かったよ」

「いや〜〜ごめんね〜〜!!」

 

 

ここはまた王宮の別の場所。ここに修学旅行メンバー5人と、何故か毒島が集められていた。夜宵と雅治がそんなことを椎名に言うと、椎名は片手を頭の後ろに回して能天気に答えた。

 

はたして本当に反省しているのか。

 

 

「そんなことより、俺はなんで毒島がここにいるのかが気になるんだが」

 

 

そんな中、司が口を開け、言った。そこだ。そこはみんな気にしていた。これから始まるのはこの修学旅行メンバーと神官達によるサバイバルバトルというもの。毒島は必要ない。

 

毒島も本当に何も聞かされていないため、司の質問に対しては「俺も知らん」とだけ強く言った。

 

ーそんな時だ。6人のBパッドから同時に着信が鳴り響く。6人は不思議に思ったが、それをほぼ同時に出る。

 

ーその着信の相手とは………

 

 

〈やぁ、諸君!!すまないね、随分待たせてしまった………では、始めよう!!今年の【サバイバルバトル】!!〉

 

 

Bパッド前面に映し出されたのは紫の髪、そしてなんか嘴の長い生き物が描かれた面を被った人物。毒島はもう嫌という程その人物を知っている。修学旅行メンバーも椎名以外はさっき会った。

 

 

「あなた誰?」

「バカ!!この国の国王!!【プルート】様だよ!!」

「えぇ!?国王!?王様ってことぉ!?」

 

 

失礼な椎名に毒島が注意するように言葉を入れ、説明した。

 

そう、この人物は具利度王国現国王【プルート】6人いるオーズ神官の1人でもある。

 

ーそしてその実力も神官達の中でもトップなんだとか…………

 

 

〈ハッハッハ!!まぁ、こんなおじさんなんか王には見えないよな!!〉

 

 

そんな大きな声で椎名の失礼な態度を水に流す器の大きな王。その声色から40くらいの男性なのが理解できる。

 

ーそして王は………

 

 

〈まぁ、と、言うわけだから早速始めようか…………3………2…………〉

 

 

と、切り替えるように何かのカウントダウンを徐に始める国王、プルート。意味深な行動に、修学旅行メンバーはおろか、毒島も頭にハテナの文字を浮かべる。

 

そもそも6人はまだプルートとマーズ以外の神官と顔を合わせていない。いったいこのカウントダウンが終わると何が起こるのだろうか。

 

 

〈…………1………0!!〉

 

 

カウントダウンが終わった…………

 

そして次の瞬間!!

 

 

「え?」

 

 

椎名は驚いた。いや、椎名だけではない。この場にいた6人全員が驚きを隠せなかった。

 

ーそれもそのはず、カウントダウンが終わった途端、煉瓦で組み立てられていたはずの部屋が一変、0と1のコードが組み替えられていくように部屋が変換され、生い茂るジャングルのような場所に変わったのだ。

 

その場所はとても広い。見渡す限りでも約10㎢はありそうだ。

 

 

「こ、これは………!?」

〈ハッハッハ!!驚いてくれたかな?学生諸君!!………ここがサバイバルバトルを行う場所だよ!!〉

 

 

全員のBパッドからまたプルートの声がした。やはりこの奇々怪界な現象は、状況的に彼がしたとしか言えない。プルートは順を追って説明していく。

 

 

〈君らがさっきまで入っていたのはデジタル分子の部屋だったんだよ、いや、正確には今も入ってることになるね!それを組み替えて、こんな広い部屋にしたんだ〉

 

 

ーここは地下だ。元々相当広い敷地を有する部屋である。それをデジタルの力により、煉瓦の小さい部屋に見せかけていた。と言うのがこのカラクリの正体である。

 

 

〈………ここで軽くルールを説明をしよう!!君達は今からここで我ら神官達とどちらかが全滅するまでバトルをしてもらう!負けたらそこの電子檻に強制的に送還されてしまうから、気をつけてね〜〜〉

 

 

6人はすぐ後ろを見る。するとそこには明らかな檻があった。なんかゴリラでも入ってそうなごく普通の形をした檻である。

 

 

「てか、【プルート】様!!なんで俺まで!?」

 

 

間ができたとこで毒島がプルートに問うた。何故自分もこの場に召集されたのかと………

 

が、それはなんとも単純な理由。

 

 

〈え?そりゃだって、富雄、数合わせだよ、こっちは6人だからねぇ〉

「はぁ!?」

 

 

そうだ。毒島は単なる頭数を合わせるためだけに呼ばれたのだ。

 

しかし、毒島を除く5人は思った。

 

ー「毒島で戦力になるのか?」とー

 

 

〈さぁ、君達は我ら神官達の前に何人生き残れるかな?…………ハッハッハ!!〉

 

 

ーとだけ言い残すと、プルートからの通信はプツっと切れた。6人はなんとなく理解した。ここでサバイバルバトルが始まると言うことに。そして始まったと言うことに。

 

 

「なんかパッとしねぇ始まり方だな………本当に始まったのか?」

 

 

司がそう言った。確かにあまり締まりのない始まり方である。

 

ーだが、この時点でも、既に1人はすっかり気持ちを切り替えてサバイバルに臨もうとしており………

 

 

「よっし!!始まったぁ!!早速バトルしてくるぞぉ!!」

「あっおい!!椎名っ!!」

 

 

真夏が止める間も無く、椎名はすぐさまそこから飛び出し、1人、ジャングルの中へと入っていった。夏休み前の計画からずっとこの瞬間を待ち望んでいたのだ。ある意味仕方ないか、

 

落ち着きがないといえばそれまでだが、

 

 

「椎名の奴、もう見えんくなりよった………」

「作戦どうしよっか?」

 

 

真夏と夜宵が言った。確かに、このサバイバルバトルにおいて、作戦決めはかなり重要なものである。

 

 

「まぁ、でも椎名に合わせればいいんじゃない?」

 

 

雅治が言った。椎名に合わせる。それはつまり何も考えないでバトルすると言うことだ。

 

 

「おいおい!!そんなんで良いのかよ!?」

「ま、良いんじゃね?俺らなら作戦なんぞ決めなくても勝てるだろ」

 

 

毒島が言うが、司がそれを一蹴した。この場で自分はオーズ神官よりも強いとはっきりと断言した。

 

作戦がないことには不安が隠せない毒島だが、これは椎名達の行事、口を出し辛いこともあっただろう。それ以上は何も口を挟むことはなかった。

 

 

「…………そんじゃ、各々好きな方向に………」

 

 

ーと、司もジャングルの中へと歩んでいった。それからゆっくりと他のメンバーも自分の対戦相手を求めて歩みを進めた……………

 

ー具利度王国名物、【サバイバルバトル】が始まった。

 

 

******

 

 

一方、先駆けてジャングルへと進んで行った椎名は、

 

 

「うーーん…………勢い良く入ったのは良いけど……………私ってどっから来たっけ?」

 

 

ー道に迷っていた。最早この広いジャングルを抜け出せないでいた。

 

ーそんな時だ。

 

 

「………ここは所詮1つのただっ広い部屋だから、どっちかの方向を真っ直ぐ歩くだけで戻れるよ」

 

 

彼女の後方から誰かが籠もったような声で話しかけてくる。

 

声色からして男。それも自分たちよりも年下の印象を受ける声だ。椎名は後ろを向き、その声の主を視認する。

 

 

「やぁ、お姉さん……僕は【ヴィーナス】……オーズ一族で、神官の1人だよ!」

 

 

そこにいたのは金髪の少年、名をヴィーナス。オーズ一族で神官の1人。神官の証であるその顔のお面にはライオンのような絵が載っている。椎名はマーズ以外の神官に思わず「おおっ!」と感激の声を漏らす。

 

 

「私は………」

「芽座椎名?……でしょ?」

「っ!?私の名前知ってるの?」

 

 

自己紹介を返す形で返事をしようとした椎名。だが、ヴィーナスはその名前が椎名の口から言われる前に言い切った。

 

 

「そりゃだって、芽座椎名と言ったら超有名人じゃん!……こんな辺境に住んでてもわかるよ!」

「えっ!?私ってそんなに有名だったの!?……いや〜〜ちょっと照れるなぁ〜〜」

 

 

辺境とて、【界放リーグ】はテレビで流れる。故に、椎名の名前は割と有名なのだ。それは【朱雀】の赤羽司も同様のことであって………

 

 

「………じゃ、お互いやることは1つだね!!」

「………くっく、そうだね〜〜」

 

 

軽く挨拶だけ交わした2人は、ほぼ同時に以心伝心したかのように懐からBパッドを取り出し、それを展開させた。始まるのだ。具利度王国の今年のサバイバルバトル、第1戦が………

 

 

「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

生い生いと茂るジャングルの中、椎名とヴィーナスのバトルが幕を開ける。

 

ー先行はヴィーナスだ。

 

 

[ターン01]ヴィーナス

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ!!……早速行くよ!!僕はネクサスカード、ライドベンダーを配置!!………」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨4

 

「…………なんだあれ?自販機?」

 

 

ヴィーナスが横に配置したのは、自販機のような何か、中には何か入っており、コインが入りそうな箇所もある。

 

 

「………ターンエンドっ………さぁ!僕に見せてよ!界放市のバトラーの実力を!!」

ライドベンダーLV1

 

バースト【無】

 

 

年下だが、えらく好戦的で態度が大きいヴィーナス。彼の先行第1ターン目はこのネクサス、ライドベンダーを配置して終わりとなった。

 

ー次は椎名のターン。ワクワクと胸躍らせる彼女のターンに、ヴィーナスも期待していた。

 

 

[ターン02]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ!!私はこのブイモンを召喚して、その召喚時効果を使うよ!!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨3

オープンカード↓

【ディーアーク】×

【グラウモン】◯

 

 

椎名が手始めと言わんばかりに召喚したのは青くて小さい竜、ブイモン。その額のブイの字が特徴的。

 

そしてその召喚時も成功。椎名はグラウモンのカードを手札へと加えた。

 

 

「へぇ、可愛いね」

 

「でしょでしょ!!アタックステップ!!ブイモンっ!!」

手札4⇨5

 

 

会話をしながらもターンシークエンスを進め、攻める椎名。そしてその指示を聞いて走り出すブイモン。

 

初手でネクサスを配置したヴィーナスはこのアタックを止める手段がない。よって、

 

 

「ライフで受けるよ!」

ライフ5⇨4

 

 

ライフで受けることになる。

 

ブイモンの渾身の頭突きが、それを1つかち割った。

 

 

「よしっ!!ターンエンドっ!!」

ブイモンLV1(1)BP2000(疲労)

 

バースト【無】

 

 

できる限りの事を終え、椎名はそのターンをエンドとした。次はヴィーナスのターン。ここいらで何か動きがあってもおかしくはないが…………

 

 

[ターン03]ヴィーナス

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨6

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップっ!!じゃあ、僕も下敷きを呼ぼうかな?………召喚!!タトバコンボ!!」

手札5⇨4

リザーブ6⇨1

トラッシュ0⇨2

 

 

“タカ!!トラ!!バッタ!!”

“タ・ト・バ!!タトバタ・ト・バ!!”

 

 

マーズが召喚した時と同様だ。上三色、上から赤、黄色、緑の光が繋ぎ合わさり、人型の何かを形成した。

 

その名は仮面ライダーオーズタトバコンボ。オーズ神官の誰もが所持するオーズデッキの中核を担うスピリットだ。

 

 

「おおっ!!出た出たぁ!!オーズ!!タトバタットバ!!」

 

 

あいも変わらず、強敵の登場ではしゃぎ出す椎名。

 

そしてヴィーナスはその召喚時を使用する。

 

 

「タトバコンボの効果!!カード2枚オープンし、オーズを加える!!」

オープンカード↓

【仮面ライダーオーズ ラトラーターコンボ】◯

【セルメダル】×

 

「…………!!」

 

 

ヴィーナスのデッキがオープンされる。そして当たり。ヴィーナスはそのうちの1枚がヴィーナスの手札に加わっていくのを見た。

 

そしてそのイラストにあるスピリットの色が黄色で統一されているのも…………

 

ー間違いない。あれはオーズ神官が持つ統一コンボと呼ばれるものだ。

 

だが、ヴィーナスはそれを手に取ってもまだ動かず………

 

 

「さらに僕はメインマジック!!セルメダルを発揮!!」

手札4⇨5⇨4

 

「…………?」

 

「このカードは発揮後、場に置き、カードを1枚ドロー!!………そして、オーズからコアを1つトラッシュへと取り除く!!」

手札4⇨5

仮面ライダーオーズタトバコンボ[2](3⇨2)

トラッシュ2⇨3

 

 

ヴィーナスのBパッドの上に、銀色のメダルが1つ置かれた。それと同時に、オーズからコアが飛び出していく。

 

単純な手札の入れ替えか…………

 

この時椎名はそう思っていた。

 

が、このセルメダルこそ、オーズデッキの真の武器である。それはこのバトルが進むに連れ、理解して行くことになる………

 

 

「アタックステップ!!タトバコンボでアタック!!」

 

 

足がバッタのように変化し、その脚力だけで宙を飛ぶタトバコンボ。椎名の場にいるブイモンは疲労状態でブロックできない。

 

よってこれは、

 

 

「ライフだっ!!」

ライフ5⇨4

 

 

降りてくるタイミングを合わせ、虎のような鋭い鉤爪で椎名のライフを1つ引き裂くタトバコンボ。これで椎名とヴィーナスのライフは互角となった。

 

 

「ターンエンドだよ!!」

仮面ライダーオーズタトバコンボ[2]LV2(2)BP5000(疲労)

セルメダル1枚

 

ライドベンダーLV1

 

バースト【無】

 

 

できる事を全て終え、ヴィーナスはそのターンをエンドとする。次は椎名のターン。もうお互いにジャブの打ち合いは終わりか、ここからバトルはより本格的になって行く。

 

 

[ターン04]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨6

トラッシュ3⇨0

ブイモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップっ!!バーストをセットして、グラウモンを召喚!!」

手札6⇨5⇨4

リザーブ6⇨0

トラッシュ0⇨4

 

 

椎名は場にバーストを伏せると共に、赤属性の成熟期スピリット、グラウモンを召喚した。その汽笛のような鼻息から、やる気があるのが伺える。

 

そして椎名はここからすぐさまアタックステップへと移行し………

 

 

「アタックステップ!!グラウモンでアタック!!」

 

 

グラウモンでアタックを仕掛ける椎名。だが、その前に強力なアタック時効果がこのグラウモンにはあり………

 

 

「私はグラウモンのアタック時効果!!BP7000以下のスピリット1体を破壊するよ!!」

「………!!」

「この効果でタトバコンボを破壊!!………魔炎のエキゾーストフレイム!!!」

 

 

空気を吸い込みながら炎を口内に溜め、ヴィーナスの場にいるタトバコンボめがけてそれを一気に放出させるグラウモン。

 

タトバコンボはそれに貫かれ、爆発。爆煙と砂埃が舞い上がる中、タトバコンボは破壊された。

 

ーかのように思えたが………

 

 

「ん?……あれ?」

 

 

椎名は驚いた。無理もない。破壊したはずのタトバコンボがこの場にまだ止まっていたのだから。

 

その理由は、当然タトバコンボ自身の効果であり………

 

 

「タトバコンボは、破壊時、手札を1枚破棄する事で、場に残る………残念だったねぇ」

手札5⇨4

破棄カード↓

【ライドベンダー】

 

「………!!」

 

 

仮面ライダーオーズタトバコンボ[2]にはLV2の時、手札1枚を破棄することで場に残る効果がある。ヴィーナスはそれを使用し、椎名のグラウモンのエキゾーストフレイムから身を守ったのだ。

 

 

「………そして、僕のフラッシュだね………」

「………!!」

 

 

しまった。と椎名は思ったが、遅い。ヴィーナスはタトバコンボの召喚時効果で手札に加えた自分の持つ統一コンボを呼び出すつもりだ。

 

迂闊だったか、椎名はグラウモンの効果でタトバコンボを破壊する予定だったため、ここで大きく作戦を狂わせられたと言えるだろう。

 

ーそして、

 

 

「フラッシュ【チェンジ】!!対象はタトバコンボ!!」

リザーブ1⇨0

仮面ライダーオーズタトバコンボ[2](2⇨1)

トラッシュ3⇨5

 

「…………っ!?」

 

「先行の如く駆け上がれ!!ラトラーターコンボ!!」

仮面ライダーオーズラトラーターコンボLV1(1)BP5000

 

 

“ライオン!!トラ!!チーター!!”

“ラタ・ラタ・ラトラァータァー!!”

 

 

タトバコンボがメダルを入れ替え、スキャン。コンボを変え、その姿形を変えて行く。

 

新たに現れたのは黄色のコンボ、ラトラーターコンボ。その俊足と閃光の力で、椎名を徐々に徐々にと追い詰めて行く事だろう。

 

 

「おおっ!カッコイイ!!」

「喜んでる場合じゃないと思うけどね!!ラトラーターコンボの【チェンジ】効果!!………コスト4以下のスピリット2体を破壊するっ!!」

「………っ!?」

「ちょうど2体いるね!それを破壊するっ!!」

 

 

ラトラーターコンボは登場するなり、頭部のを中心に、光熱を放つ。その様子は宛らマグナモンのエクストリームジハードに近い。

 

アタック中のグラウモンだけでなく、待機していたブイモンまでもがその光に呑まれ、爆発し、そのまま亡骸ごと消え失せた。

 

 

「く、すごっ!!」

 

 

椎名は思わずそんな声を上げた。オーズの圧倒的な力を感じていたのだ。

 

と、同時に、やはりここに、この具利度王国を修学旅行の場所に決めて正解だったとも思った。

 

ー何せこんなに面白いバトルができるのだ。来て駄目だったと言えるわけがない。椎名はとにかくこのピンチな状況にワクワクしていた。

 

 

「………ターンエンドっ!!」

バースト【有】

 

 

バーストはあるが、場のスピリットを一気に壊滅させられた椎名。気合いはあるが、ここから逆転はできるのか。

 

そして次はヴィーナスのターン。がら空きとなった椎名の場に大きく攻め立てる。

 

 

[ターン05]ヴィーナス

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨6

トラッシュ5⇨0

 

 

「メインステップ!!ラトラーターのLVを2に上げ、再びタトバコンボを召喚!!」

手札5⇨4

リザーブ6⇨1

トラッシュ0⇨2

仮面ライダーオーズ ラトラーターコンボ(1⇨2)LV1⇨2

 

 

ラトラーターコンボのLVが上がると同時に、また妙な音楽と共にタトバコンボがヴィーナスの場に現れた。

 

ーそしてまたその召喚時効果も発揮され………

 

 

「召喚時効果!!カードをオープン!!」

オープンカード↓

【ストロングドロー】×

【仮面ライダーオーズ ラトラーターコンボ】◯

 

「………っ!!…またコンボが……」

 

 

再び発揮されたタトバコンボの効果でヴィーナスは2枚目のラトラーターコンボを手札へと加えた。これでまたいつ発揮してくるかわからない【チェンジ】がヴィーナスの手に握られることとなる。

 

さらにヴィーナスは一気に椎名のライフをもぎ取るべく、最初に配置していたライドベンダーの効果を発揮させる。

 

 

「ネクサス、ライドベンダーの効果!!場にあるセルメダルを1枚破棄することで、相手の場のバースト1枚を見ることができる!!」

セルメダル1⇨0枚

 

「え?バーストを!?」

 

 

ヴィーナスはBパッドの上にあるセルメダルというメダルを手に取り、配置していたライドベンダーの中に自販機で飲み物を買うような手順で中に入れた。

 

すると、ライドベンダーから飲み物ではないが、何か変な小さいロボットが飛び出してくる。まるでクラゲのような見た目の。

 

 

「おぉ、……ちょっと可愛いかも………」

 

 

そんな呑気な事言ってる場合ではない。上から椎名のバーストに照射線を当てるクラゲの小型ロボット。それは椎名の裏側でセットされたバーストを見事に透かして見せた。

 

 

「へぇ、マリンエンジェモンか…………コストは8……」

「あっちゃぁぁ、やっぱバレるよね〜〜」

 

 

椎名がセットしていたバーストカードはマリンエンジェモン。ライフの減少で発動できる。

 

裏側でセットされていたら相手の効果を受けない効果を備えているが、「見る」効果に限っては、互いに確認しなければならないルールもあって、意味がない。

 

ー一見、椎名のバーストを見るだけでは何の意味もないかもしれない。

 

ーが、これこそがヴィーナスの狙い。

 

ーヴィーナスが知りたかったのは椎名のバーストが何かではない。椎名のバーストの【コスト】がいくつかであるという事だ。その理由は直ぐに分かる事であって………

 

 

「アタックステップ!!ラトラーターでアタック!!そのアタック時効果発揮!!」

「………!!」

「コストを1つ指定………僕は8を指定する……そしてこのターン、相手は指定されたコストのバースト効果を発揮できない!!」

「っ!?効果を!?」

 

 

ラトラーターの効果だ。このターン、指定されたコストのバースト効果が発揮されない。

 

椎名のマリンエンジェモンはバーストとしてセットされてる時、相手の効果を受けない。が、ラトラーターの効果はそのバーストの効果自体を発揮させない。

 

ーつまり、裏側では無敵のマリンエンジェモンだが、効果を発揮する時は表になるため、ラトラーターの効果で、そこを無効にされてしまうのだ。

 

ライドベンダーの効果はこのためだった。椎名の防御札はこのコンボでほぼ完璧に押さえ込まれてしまった。

 

 

「さぁっ!ラトラーターのアタックは続行!!」

 

「ぐっ!……ライフだ!」

ライフ4⇨3

 

 

目にも留まらぬ速さで場を駆け巡るラトラーター。そのまま椎名のライフをその虎の鉤爪で1つ引き裂いた。

 

ーそして、まだヴィーナスの場にはタトバも存在しており………

 

 

「続け!タトバコンボ!!」

 

「………それもライフだ………うわっ!!」

ライフ3⇨2

 

 

タトバコンボの虎の鉤爪でも椎名のライフはまた1つ引き裂かれた。

 

 

「ふっふ!!ターンエンドだよ!さぁ次はお姉さんの番だ!!」

仮面ライダーオーズ タトバコンボ[2]LV2(2)BP5000(疲労)

仮面ライダーオーズ ラトラーターコンボLV2(2)BP7000(疲労)

 

ライドベンダーLV1

 

バースト【無】

 

 

だんだん調子付いて来たか、ヴィーナスはお面越しでもわかるくらい得意げな表情のまま、そのターンのエンドとした。勝ちが後一歩のところまで近づいて来たのだ。無理もない。

 

ーだが、相手はあの芽座椎名。そう易々と勝ちを狙える相手ではないという事を、まだヴィーナスは知らない。

 

 

「面白くなって来たっ!!私のターンだ!!」

 

 

とんでもないコンボで追い込まれた椎名は、より一層このバトルでのモチベーションを向上させる。

 

ーそしてこのターンより、逆襲が始まる。

 

 

[ターン06]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ5⇨6

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ6⇨10

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップっ!!ギルモンを召喚!!」

手札5⇨4

リザーブ10⇨3

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名が呼び出したのは真紅の魔竜の最初の形態、ギルモン。その小さな体にはとてつもないエネルギーを宿している。

 

 

「そして召喚時効果!!カードを5枚オープン!!」

オープンカード↓

【ディーアーク】×

【フレイドラモン】×

【レッドカード】×

【ライドラモン】×

【グラニ】◯

 

 

ギルモンの召喚時効果は成功。その中にある赤のブレイブカード、グラニが手札に加えられた。

 

椎名はそれを見ると、小さく笑みを浮かべ、そのまま何もすることはなく、アタックステップへと移行した。

 

 

「いけっ!!ギルモンっ!!アタックだっ!!」

手札4⇨5

 

 

椎名の指示を聞き、低姿勢で走り出すギルモン。目指すはもちろんヴィーナスのライフ。

 

 

「ん?それだけ?……もしかして、これの存在忘れちゃった?フラッシュ!!2枚目のラトラーターの【チェンジ】発揮!!対象はタトバコンボ!!」

リザーブ1⇨0

トラッシュ2⇨3

 

「………!!」

 

 

そうだ。最早ギルモン程度のスピリットのアタックは通らない。何せ今のヴィーナスの手札にはあのラトラーターコンボがあるのだから………

 

また妙な音楽と共に、タトバコンボがメダルチェンジを行い、2体目のラトラーターコンボとなって場に現れた。

 

ーそしてその【チェンジ】の効果も当然使える……

 

 

「ラトラーターの効果でコスト4以下のスピリット2体を破壊!!……ここでは当然ギルモンだよね〜〜!!」

「…………!!」

 

 

2体目のラトラーターの頭部からまた光熱が照射される。ブイモンやグラウモン同様、ギルモンもこれをまともにくらって破壊…………

 

ーされるかに思えたが………

 

 

「………手札にあるグラニの効果!!」

「…………え?」

 

「滅竜スピリットが効果の対象となる時、その効果の発揮前にこのブレイブを1コスト払って召喚!!……そしてこのターン、その対象となったスピリット1体は効果破壊とバウンスから守られる!!私はグラニをギルモンに直接合体させるっ!!」

手札5⇨4

リザーブ3⇨2

トラッシュ3⇨4

 

 

ギルモンに直撃するかと思われたその光熱は、突如現れた謎の紅い飛行物体に遮られたことにより失敗に終わる。

 

その飛行物体の名はグラニ。真紅の魔竜達を守る盾だ。その後グラニはギルモンを背に乗せ、再び宙へとフライングする。

 

 

「合体しつつ、スピリットを守った!?」

「へへっ!!これがグラニの効果だよ!!ギルモンのアタックは続行!!」

 

 

ギルモンを乗せ、上空を舞うグラニは、そこから勢い良く急降下し、再びヴィーナスのライフを狙う。

 

 

「ダブルシンボルのアタックか…………でも、それだけじゃ足りない!!次のターン、その手薄になったところを2体のラトラーターが切り裂くよ!!」

 

 

そうだ。結局ギルモンを守ったところで意味はない。ヴィーナスのライフ数は4。この一撃では終わらない。

 

ーだが、椎名のフラッシュも終わらない………

 

 

「フラッシュマジック!!ストームアタック!!」

手札4⇨3

リザーブ2⇨0

ギルモン+グラニ(4⇨2)LV3⇨2

 

「…………は?」

 

 

ヴィーナスは驚愕のあまり思わずそんな呆気にとられたような声を漏らした。

 

ーなんだ、この出来すぎた展開は。あまりにも出来すぎている。そんなことがあるのか、まるで最初から最後まであのお姉さんが勝つと決まっていたかのような綺麗な流れ………

 

 

「この効果でギルモンを回復させ、ラトラーターを疲労させるっ!!」

ギルモン+グラニ(疲労⇨回復)

 

「………くっ!?」

仮面ライダーオーズ ラトラーターコンボ(回復⇨疲労)

 

 

場全体に突如として吹き上がる突風。それはギルモン、及びグラニ側には追い風、回復状態となる。そして逆にラトラーター側は向かい風、膝を付き、疲労してしまう。

 

これによりダブルシンボルの2回分のアタックが可能となった。これがどういうことを意味を表しているかは、言わずとも理解できるだろう。

 

 

「ギルモンとグラニでダブル攻撃!!………これで終わりだぁ!!」

 

 

ー最早この紅い流星を止めることはできない。全てのスピリットが疲労してしまったヴィーナスはこれをライフで受ける他ない…………

 

ーそして、

 

 

「……ぐ、ぐわぁっぁぁ!!!」

ライフ4⇨2⇨0

 

 

グラニはマッハの如くのスピードでヴィーナスのライフを貫いた。そしてそれに乗じて着地したギルモンの鋭い鋭利な鉤爪の一閃で、残ったライフを根こそぎ引き裂いた。

 

ーこれにより勝者は芽座椎名。追い詰められながらも、持ち前の勝負強さを見せつけ、見事にこのサバイバルバトルの初戦を勝ってみせた。

 

 

「いよっしゃぁ!!!私の勝ちぃ!」

 

 

ガッツポーズを掲げて喜ぶ椎名。それを見てギルモンとグラニもゆっくりと消滅しながらも激しく咆哮をあげる。

 

 

「……あっはは、負けちゃったかーー、まさかこの僕が初戦で負けるなんてねー………ま、いっか、楽しかったしね〜〜」

「うん!またやろうね!!」

 

 

椎名がそう言った時だった。

 

 

「それじゃ、僕はこれでドロンするね〜〜」

「っ!?」

 

 

ヴィーナスがそう言うと、ヴィーナスの体がデジタルの粒子に変換され、その姿を消してしまった。

 

目の前の不思議な現象に驚きを隠せない椎名だったが、そう言えば、国王プルートはこんなことを言っていたことを思い出す。

 

 

ー《負けたら強制的にそこの電子檻に送還されてしまうからね〜〜》

 

 

つまり、ヴィーナスは神官側の檻に入れられてしまったと考えるのが妥当だ。

 

にしてもあんな感じで急に来ると考えると、少しだけ恐怖を感じる。

 

そんなことを考えながらも、椎名は再び別の神官とのバトルを求めて歩みを進めた。

 

オーズ神官達とのサバイバルバトルは、まだ始まったばかり………

 

 

******

 

 

ー時は少しばかり遡って、サバイバルバトルが始まる少しだけ前………

 

具利度王国の片隅で、ある男2人が何やら怪しげな雰囲気の中、会話しており………

 

 

「ほう、このミカンみたいな頭の女の子を連れて来るだけでそんなに報酬をくれるのかよ………」

「あぁ、手段は問わん………」

 

 

そこにいたのは厳つい体格の男、

 

そしてもう1人は以前、【芽座葉月】と空港にて会話していた、眼鏡をかけた男性、銃魔。彼が何やらその厳つい体格の男にある提案を持ちかけているようだが…………

 

 

「あ、そうそう………」

「あ?別の制約をつけるならごめんだぜ……」

 

 

銃魔が眼鏡を元の位置に戻しながら、何かを思い出したように告げ口しようとする。

 

ーだが、それは制約を付け足すなどと言うことではない。ただの注意のようなもの。

 

 

「………【鬼】には気をつけろよ……」

「あぁ!?【鬼】?………ぶわっはっは!!いるかよ!!そんなもん!!」

 

 

厳つい体格の男は銃魔の真面目な顔から出てきた真面目な話の内容が、まさかそんな話だとは思ってもいなかっただろう。

 

ー今時【鬼】が出るなどと、子持ちの親じゃあるまいし………

 

 

「まぁ良いぜ!!仮にそんなもんが出たとしても、今の俺は無敵!!!!誰にも負けねぇ!」

「それはDr.Aに与えられた力だろう?………まぁ良い、今回、上手くいったらその力の譲渡も考えてやる…………」

 

 

まただ。また銃魔の口から、s級犯罪者、Dr.Aの名が出てくる。しかも彼から力を与えられたとは、いったいどういうことなのだろうか。

 

ーいずれにせよ、今年のサバイバルバトルはどうやら何か一波乱ありそうだ。

 

ー椎名達の運命やいかに………

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉

椎名「本日のハイライトカードは【仮面ライダーオーズ ラトラーターコンボ】!!」

椎名「ラトラーターはオーズの黄色いコンボ!!チェンジ効果で低コストスピリットを破壊しつつ、アタック時で、相手のバースト効果の発揮を妨げるよ!」


******

〈次回予告!!〉

椎名「これがオーズ神官のバトル……っ!!……カッコいい!!早く次の神官ともバトルしたいなぁ!!えっ!?今度は2対1!?ま、良いや!!どんと来なさいってんだ!!次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ、「コンボ×2!?重量と水中!!」今、バトスピ が進化を超えるっ!!」


******


最後までお読みくださり、ありがとうございました!

お話の展開の都合上、今後は椎名のバトルが異様に増えて行くと思いますが、何卒ご了承ください。

グラニの合体時効果は強制なので、最後のターンは本来ならデッキを破棄してます。(実際破棄されてる)描写の都合上、必要ない場合は極力省かせてもらいます。

【銃魔】に関しましては、第47話 「真紅と漆黒、デュークモンVSアルファモン」の最後らへんを参考に。


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