バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

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第61話「VSベルゼブモン! オーズの力を解き放て!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

王宮の地下、ジャングルの木々が生い茂るこの中で、対峙する椎名と銃魔。この2人のバトルが今、幕を開ける。

 

………だが、その前に……

 

 

「俺の名は銃魔………初めまして………ではないはずだぞ、芽座椎名………」

「?……銃魔?………いやっ!!そんな奴知らん!!」

「………まぁ、覚えてるわけないか………」

 

 

バトル前に軽く言葉を交わす両者。銃魔はまるで椎名と一度出会っていたかのような口ぶりである。

 

だが、当然椎名は知らなかった。単に忘れているだけなのか…………それとも……

 

 

「てかっ!!さっきの奴どこ行ったんだよっ!!バトルの途中だったのにさっ!!決着つけたいんだけど!!……ん?そう言えばなんで私ってば、寝てたんだ?」

 

 

そう叫ぶ椎名。彼女は剣総の事を言っている。この言葉を聞いて、司はある違和感を感じた。

 

 

「…………めざし………」

「ん?」

「お前………覚えてないのか?」

「え?何を?」

 

 

そう、椎名は忘れていた。【自分が鬼になったこと】【2度目のオーバーエヴォリューションをしたこと】【自分が剣総を倒したこと】全てを………

 

あの【鬼化】と呼ばれる副作用なのかは定かではないが、少なくとも、今の椎名はマーズが倒された後の記憶が全て飛んでいた。

 

それは司にとっては【結果的に良かったのかもしれない】椎名が自分があんな化け物だと知ったら間違いなく自己嫌悪になり、心に深い傷を負ってしまうからだ。

 

 

「………戯言はそれまでだ………俺と戦うのだろう?むざむざとそこの恥晒しのようになろうというのか………」

 

 

銃魔が話を切り替えてきた。【恥晒し】と言うのは、地面に這いつくばるように気を失っている【毒島富雄】の事だ。

 

勝手に出てきて勝手にやられて、【犬死】した…………それが銃魔としての毒島の認識。

 

それは残酷も、冷徹に………

 

 

「…………恥晒し?………違うよ……毒島先輩は今日………誰よりかっこよく戦い抜いた!!私はそんな先輩を心から尊敬する!!」

「………お前も愚かだな」

 

 

この言葉と共に、2人は勢いよくBパッドを展開、バトルの準備を進め、

 

始まる。オーズ編最後となる一戦が…………

 

 

「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

コールと共にバトルが開始される。

 

先行は椎名だ。

 

 

 

 

[ターン01]椎名

 

 

「私のターン、スタートステップ、ドローステップ!!……メインステップッ!!来い!!【ブイモン】を召喚っ!!」

手札4⇨5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

ターンが始まって早々に、

 

椎名が呼び出したのは始まりの青き竜。その幼くも勇ましい姿は、強力なスピリットへの進化を既に兆してるかのよう、

 

 

「…………ターンエンドだ」

【ブイモン】LV1(1)BP2000(回復)

 

バースト【無】

 

 

先行の第1ターン目はできることが極端に限られる。椎名はそれだけでこのターンをエンドとした。

 

次は銃魔のターン。

 

 

[ターン02]銃魔

 

 

「俺のターン……スタートステップ、コアステップ、ドローステップ………」

手札4⇨5

リザーブ4⇨5

 

 

椎名の場に存在するブイモンを見て何を思うのか、銃魔はブイモンに目を向けながらも、黙々とターンを進めて行く、

 

 

「メインステップ………俺は【インプモン】をLV1で召喚!!……召喚時」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨3

オープンカード↓

【旅団の摩天楼】×

【式鬼神オブザデッド】×

【式鬼神オブザデッド】×

 

「っ!?なんだあれ!?ばい菌?」

 

 

銃魔が呼び出したのは、椎名がばい菌と連想できなくもない程の小悪魔のようなスピリット、インプモン、銃魔のデッキを支えるキーパーソンだ。

 

しかし、その召喚時効果は失敗に終わる。1枚も加えられずにトラッシュへと破棄された。

 

 

「……ターンエンドだ」

【インプモン】LV1(1)BP2000(回復)

 

バースト【無】

 

 

それ以外は特に何もすることはなく、銃魔はそのターンをエンドとした。

 

次は椎名のターン。ここから一気に進展して行く………

 

 

 

[ターン03]椎名

 

 

「私のターンッ!!スタートステップ、コアステップッ!!ドローステップッ!!リフレッシュステップッ!!………」

手札4⇨5

リザーブ0⇨1⇨4

トラッシュ3⇨0

 

 

一気にターンシークエンスを進行させて行く椎名。

 

ここからだ。ここからバトルは大きく横転して行くこととなる。

 

 

「メインステップッ!!ネクサスカード、【D-3】を配置して、【フレイドラモン】の【アーマー進化】の効果を発揮!!対象はブイモン!!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨1

トラッシュ0⇨3

 

「っ!!!」

 

 

椎名の腰に手のひらサイズの機械が装着されると共に………

 

ブイモンの頭上から独特な形をした赤い卵が投下される。ブイモンはそれと衝突し、混ざり合う。

 

新たに現れるのは椎名が最も愛用している最強のエーススピリット………

 

 

「1コスト支払い、燃え上がる勇気……フレイドラモンをLV1で召喚っ!!」

【フレイドラモン】LV1(1)BP6000

 

 

炎燃ゆるアーマー体スピリット、【フレイドラモン】がこの場へと現れた。その効果はいつでも、どんな時でも椎名を救ってきた。

 

 

「【フレイドラモン】の召喚時効果っ!!BP7000以下のスピリット……インプモンを破壊するっ!!」

「………!!」

 

「爆炎の拳っ!!……ナックルファイアァァア!!」

手札4⇨5

 

 

登場と共に放たれるフレイドラモンの火拳。その弾丸のように飛ばされる炎は瞬く間に、銃魔の場に存在しているインプモンを焼き尽くした。

 

 

「よっしゃっ!!どんなもんだいっ!!」

 

 

この初手【フレイドラモン】の戦法は、椎名にとって大きな先制点であったと言える。

 

……だが、

 

 

「いや、ダメだ………」

 

 

司が言った。

 

そう、今のさっきまで気を失っていた椎名にはわからないが………

 

あるのだ。銃魔にはこの場から、椎名が取ったアドバンテージを奪い返すには十分なカードが、状況を一転させるカードが………

 

 

「【インプモン】の破壊をトリガーに、俺は手札にある【ベルゼブモン】の効果を発揮っ!!」

「……っ!?ここでスピリット効果っ!?」

 

「効果により1コスト支払い召喚する」

手札4⇨3

リザーブ2⇨0

トラッシュ3⇨4

 

 

そう、

 

その突如として発揮されるそれは、

 

銃魔のエーススピリット………毒島を完膚なきまでに叩きのめした張本人とも言える凶悪なデジタルスピリット。

 

 

「孤高の魔王よ……今こそ百戦錬磨の力をこの世に知らしめよっ!!究極体、【ベルゼブモン】をLV1でここに呼ぶっ!!」

【ベルゼブモン】LV1(1)BP7000

 

 

【インプモン】が爆発した跡地から怨念のようなものが噴き出てくる。それは塊を形成して行き、徐々に徐々にと悍ましく、禍々しい魔王へと変貌して行く。

 

現れたのは【インプモン】の真の姿。魔王型の究極体デジタルスピリット、【ベルゼブモン】だ。

 

 

「……このスピリットさっきの………っ!?」

 

 

椎名は【ベルゼブモン】のその禍々しい姿に思わずたじろいだ。

 

そして、今回もそれは、この場を戦慄させる。

 

 

「【ベルゼブモン】の召喚時……相手スピリット1体のコア2つを除去する」

「なぁっ!?」

 

「俺は【フレイドラモン】のコアを取り除き、消滅させるっ!!」

「っ!?」

 

「………ダブルインパクトッ!!」

手札3⇨4

 

 

登場するなり、【ベルゼブモン】はショットガンを腰から取り出し、その弾丸を【フレイドラモン】へ連射。【フレイドラモン】はそれに何度も撃ち抜かれ、呆気なく消滅してしまった。

 

 

「くっ!?フレイドラモンっ!!?」

【フレイドラモン】(1⇨0)消滅

 

 

【フレイドラモン】をこの序盤に呼び出し、一気に優位に立ったのは椎名のとんだ勘違い。【ベルゼブモン】の力によりその優位性を剥がされてしまった。

 

 

「さぁ、どうする?まだターンを続けるか?」

 

 

眼鏡を指で軽く撫でるように元の定位置に戻しながら、そう言葉を並べる銃魔。その仕草でさえも圧を感じる。

 

 

「………くっ!!ターンエンド」

【D-3】LV1

 

バースト【無】

 

 

流石に致し方ないと言うべきか、椎名はこれ以上は何もすることはなく、と言うか何もできず、そのターンをエンドとしてしまった。

 

次は見事椎名の動きに合わせてカウンターを決めた銃魔のターン。

 

 

[ターン04]銃魔

 

 

「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ………」

手札4⇨5

リザーブ0⇨1⇨5

トラッシュ4⇨0

 

 

ゆっくりとターンシークエンスを進行させて行く銃魔。そしてそのままメインステップへと移行し、

 

 

「メインステップ………俺はブレイブカード、【ベヒーモス】を召喚し、【ベルゼブモン】と合体する!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨4

【ベルゼブモン+ベヒーモス】LV1(1)BP13000

 

「っ!?バイクっ!?」

 

 

銃魔はバイクのようなブレイブカード、【ベヒーモス】を召喚し、【ベルゼブモン】と合体。【ベルゼブモン】は合体スピリットとなり、バイクへ、【ベヒーモス】へと搭乗する。

 

 

「さらにネクサスカード、【旅団の摩天楼】!!配置時1枚ドロー!!」

手札4⇨3⇨4

リザーブ1⇨0

トラッシュ4⇨5

 

 

立て続けに巨大な摩天楼を配置する銃魔。その効果で手札の質を高めて行くどころかシンボル数も稼ぎ、椎名とのアドバンテージ差を大きく広げた。

 

 

「アタックステップッ!!やれ、【ベルゼブモン】ッ!!」

 

 

アタックステップへ移行し、【ベルゼブモン】が【ベヒーモス】を駆り、地を走る。目指すは当然椎名のライフ。

 

【フレイドラモン】が倒され、ガラ空きになった椎名の場。このアタックは当然ライフで受ける他ない。

 

 

「ライフだっ!!………ぐぁ!?」

ライフ5⇨3

 

 

ダブルシンボルのアタック。【ベヒーモス】の突撃が椎名のライフを一気に2つ破壊した。だが、それ以上にやはりこのバトルダメージがきつい。椎名は思わず仰け反った。

 

 

「…………ターンエンドだ」

【ベルゼブモン+ベヒーモス】LV1(1)BP13000(疲労)

 

【旅団の摩天楼】LV1

 

バースト【無】

 

 

できる事を全て終え………

 

銃魔はそのターンをエンドとした。

 

次は椎名のターン。痛みに耐え、増えたコアを生かし、反撃となるか……

 

 

[ターン05]椎名

 

 

「スタートステップ、コアステップ、ドローステップッ!!…よしっ!!………リフレッシュステップ!!」

手札5⇨6

リザーブ4⇨5⇨8

トラッシュ3⇨0

 

 

ターンシークエンスを進行して行く椎名。その道中、ドローステップで引いたカードを見て、喜びの笑みをこぼす。

 

 

「メインステップッ!!ワームモンとブイモンを連続召喚っ!!」

手札6⇨5

リザーブ8⇨3

トラッシュ0⇨3

 

 

椎名がこのターン、颯爽と呼び出したのは、【フレイドラモン】の【アーマー進化】の効果によって手札へと戻っていたブイモンと、芋虫のような見た目の成長期スピリット、ワームモン。

 

 

「さらにっ!!【マグナモン】の【アーマー進化】発揮!!対象はブイモンッ!!」

リザーブ3⇨2

トラッシュ3⇨4

 

「………っ!!」

 

 

上空より投下される黄金の卵状の何か、それは真っ直ぐブイモンへと触れ、神々しい光と共に混ざり合って行く。

 

 

「…………黄金の守護竜!!【マグナモン】をLV2で召喚っ!!」

【マグナモン】LV2(2)BP8000

 

 

その神々しい光を解き放ち、新たに現れたのは、ロイヤルナイツの1体、【マグナモン】。その高い防御能力はまさしく椎名のデッキの守護神。

 

 

「召喚時っ!!相手の場にいる最もコストの低いスピリット1体を破壊するっ!!」

「っ!!

「………対象となるのは【ベルゼブモン】!!それを破壊するっ!!………黄金の波動!!エクストリーム………ジハード!!!」

 

 

登場するなり、

 

黄金の守護竜はその身に輝く黄金の輝きを放ち、一瞬にして銃魔の場にいた孤高の魔王を飲み込み、消滅させた。跡地にはベヒーモスだけが唯一取り残されている。

 

 

「よしっ!!厄介な【ベルゼブモン】は破壊したっ!!アタックステップッ!!行けっ!!【ワームモン】!!【マグナモン】!!」

 

「…………いずれもライフで受けよう」

ライフ5⇨4⇨3

 

 

勢いづいてきた椎名はそのまま【ワームモン】と【マグナモン】にアタックの指示を送る。

 

【ワームモン】の体当たり、【マグナモン】の硬い装甲を活かしたタックルが銃魔のライフを一気に2つ破壊した。

 

 

「……ターンエンドッ!!」

【ワームモン】LV1(1)BP3000(疲労)

【マグナモン】LV2(2)BP8000(疲労)

 

【D-3】LV1

 

バースト【無】

 

 

凶悪な効果を持つ孤高の魔王、【ベルゼブモン】を倒しただけでなく、このターン、ライフをも破壊して見せた椎名。実に良いターンであったと言える。

 

………が、それはまたまたとんだ勘違い。銃魔は徐にターンを進めて行く。

 

 

[ターン06]銃魔

 

 

「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ…………リフレッシュステップ………メインステップ、【クリスタニードル】と【シキツル】を召喚、【シキツル】の効果で1枚ドロー………」

手札4⇨5⇨4⇨3⇨4

リザーブ3⇨4⇨9⇨6

トラッシュ5⇨0⇨1

 

 

このターン、銃魔は颯爽と蛇のような竜のような小さな紫スピリット、【クリスタニードル】と、文字通り折り紙の鶴のようなスピリット、【シキツル】を場に呼び寄せた。

 

銃魔のデッキタイプはいわゆる【紫速攻】。低コストのスピリットが多い。これはエースである【ベルゼブモン】の影響もある。

 

…………だが、

 

 

(私の場には疲労状態でブロックできる【マグナモン】がいる。そんくらい、守れる………)

 

 

そう、椎名の場には黄金の守護竜、【マグナモン】が存在する。【マグナモン】の強味は召喚時効果だけではない。疲労状態でのブロックもあるが、最も重要視すべきは効果を受けないと言う効果だ。

 

これを早々突破できるカードが、果たして【紫速攻】のデッキに入っているのだろうか…………

 

 

「………アタックステップ、やれ、3体のスピリットたち!!」

「えっ!?」

 

 

アタックステップへと移行され、【ベヒーモス】【シキツル】【クリスタニードル】は椎名のライフを破壊すべく走り、飛び立った。

 

そこには強固な守護神がいるとも知らずに………

 

 

「っ!?何考えてるんだよっ!?………纏めて蹴散らせっ!!【マグナモン】ッ!!エクストリームジハード!!!」

 

 

そんな単調な攻撃が通るわけもなく、3体のスピリット、及びブレイブは再び放たれた【マグナモン】のエクストリームジハードによって消し炭となってしまう。

 

 

「【クリスタニードル】の破壊時、貴様のネクサスカード【D-3】を破壊」

「っ!?うわわっ!?」

 

 

【クリスタニードル】が消滅した跡地から紫の靄が現れ、椎名に襲いかかる。それは腰に備え付けられていた【D-3】を溶かすように消滅させる。

 

 

「………っ!?それだけのために!?………」

「な訳ないだろう?……俺はこの破壊をトリガーに、【ベルゼブモン】2体分の効果を発揮!!」

「………なぁっ!?まだ持ってたの!?」

 

「俺は2コスト支払い、【ベルゼブモン】を一気に2体、LV2ずつで召喚っ!!」

手札4⇨3⇨2

リザーブ8⇨0

トラッシュ1⇨2⇨3

【ベルゼブモン】LV2(3)BP11000

【ベルゼブモン】LV2(3)BP11000

 

 

蘇るように、分身するように、深淵の闇より出でし2体の孤高の魔王。その時点で最早孤高と言えるのかは定かではないものの、確かにそこには強力なデジタルスピリット、【ベルゼブモン】が並び立っていた。

 

 

「召喚時、【ワームモン】を消して、1枚ドロー………」

手札2⇨3

 

「……っ!?」

【ワームモン】(1⇨0)消滅

 

 

片方の【ベルゼブモン】がショットガンで椎名の場にいた【ワームモン】の眉間を撃ち抜いた。貧弱な【ワームモン】がそれに耐えられるわけもなく、あっさりと消滅してしまった。

 

 

「さらにっ!!トラッシュにある【ベヒーモス】の効果っ!!」

「っ!?」

 

「【ベルゼブモン】の登場により、ノーコスト召喚するっ!!今一度姿を見せよっ!!」

【ベルゼブモン+ベヒーモス】LV2(3)BP17000

 

「っ!?また召喚された!?」

 

 

【マグナモン】により、破壊されたはずの【ベヒーモス】が何故か銃魔の背後より飛び出してくる。そしてそのまま【ベルゼブモン】の1体をまた乗せた。

 

弱小だった銃魔の場が一転、紫らしいコンボにより強力な盤面へと仕立て上がった。この間、僅か6ターン目である。

 

 

「アタックステップは継続だっ!!やれ、【ベルゼブモン】!!【ベヒーモス】を駆れ!!」

 

 

銃魔は合体スピリットとなっている方の【ベルゼブモン】でアタックを仕掛ける。

 

 

「そしてこの時、【ベヒーモス】の効果で、お前は自分のスピリットを破壊しなければブロックができない………」

「なにっ!?」

 

 

【ベヒーモス】の合体時効果だ。椎名は自分のスピリットを犠牲にしなければその身を守ることすらできないのだ。

 

ちなみに、この手の効果は【マグナモン】では防げない。スピリットではなく、プレイヤー自身に課せられているからだ。

 

そしてなにより、今現在、椎名の場のスピリットは【マグナモン】1体のみ、この状態では破壊してもブロックできるスピリットが残っていないため、実質、ブロックは不可なのだ。

 

 

「さあっ!!ダブルシンボルのアタックを受けて見よっ!!」

 

「………くっ!!……ライフで受けるっ!!…………うわぁぁぁぁあっ!!!」

ライフ3⇨1

 

「………めざしっ!!」

 

 

【ベルゼブモン】の搭乗した【ベヒーモス】の体当たりが、椎名のライフをまた一気に2つ破壊する。頭が割れるような痛みが、バトルダメージが、また椎名を襲う。

 

肉体的にも精神的にも………最早限界。Bパッドに肘をつかなければ立ってもいられない状態だ。

 

だが、このバトルは、このバトルだけは負けられない。負けていったみんなのためにも………

 

椎名はそう言った必死な想いと気力だけで立ち上がっていた。

 

 

「…………しぶといな………【ベルゼブモン】!!」

「っ!?……頼むっ!!【マグナモン】!!!」

 

 

合体していない方の【ベルゼブモン】で椎名のライフを狙う銃魔。だが、こればかりは【マグナモン】によって遮られる。

 

しかし、BPは圧倒的に【ベルゼブモン】の方が上であり…………

 

これでもかと言わんばかりに【ベルゼブモン】は2丁のショットガンから弾丸を連射。【マグナモン】の黄金の鎧を砕き、そのまま破壊した。【マグナモン】は流石に力尽き、その場で倒れ、大爆発を起こした。

 

 

「ロイヤルナイツとはこの程度なのか………他愛もない……」

「くっ!!……ごめん【マグナモン】………」

 

「………ターンエンド………守りの要は消えた……次で最後だ、芽座椎名…………」

【ベルゼブモン】LV2(3)BP11000(疲労)

【ベルゼブモン+ベヒーモス】LV2(3)BP17000(疲労)

 

【旅団の摩天楼】LV1

 

バースト【無】

 

 

椎名の守りなどいとも容易く語らせて見せた銃魔。その圧倒的な強さ………実力の差を椎名に思い知らせる。

 

………勝てない………今の芽座椎名だけでは到底追いつけないレベルに、銃魔は達しているのだ。

 

 

「もう諦めろ………お前の負けだ……」

「っ!?」

 

 

銃魔が椎名に投げかけた言葉は、慈悲とも取れる発言。

 

確かに、椎名は体力的にも精神的にも………終わりだ。ここからの巻き返しなど、逆転できるなどという可能性は微塵も感じられない。

 

………だが椎名は………

 

 

「…………嫌だ………」

 

 

………と呟いた………

 

………それも少し頬を緩め、笑顔を見せながら………

 

 

「………へへ、負けていったみんなにはちょおっと悪いけど…………私、このバトルすっごい楽しいっ!!」

「っ!?」

 

 

椎名の口から放たれた言葉は、銃魔が驚愕するには十分すぎるものだった。

 

【このバトルが楽しい?】

 

この文字通りライフをすり減らすようなバトルが楽しいとこの少女は言うのか…………

 

 

「だってさぁっ!!熱いよねっ!!この状況!!絶体絶命っ!!ここからどう逆転するか考えただけでワクワクして来るよっ!!」

「………めざし、お前………まじもんのバカだな」

 

 

椎名の突飛な発言に、司も思わず苦笑いした。

 

…………椎名にとって………

 

逆境という状況は何よりも好物だ。特にバトルスピリッツというゲームにおいては…………いつだって、どんな時だって………そんな芽座椎名だからこそ、そこから何度も大逆転をしてきた。

 

………椎名は強く思った事だろう。【これが文字通りライフをすり減らすバトル】でなければ…………と、

 

 

「……………芽座六月………奴の影響か………」

 

 

銃魔は椎名と司に聞こえないような小さな声で、そう、ボソッと呟いた。【芽座六月】。椎名の育て親だが、彼もこの銃魔達と何か関連があるというのか…………

 

 

「よっしゃぁぁぁぁあ!!行くぞっ!!私のタァァァアン!!!」

 

 

椎名がそう強く意気込み、ターンを迎えようとした直前だった。

 

剣総に敗れ去り、倒れたマーズのデッキから…………

 

1枚のカードが椎名の元へと飛び出してきた。

 

………それは本来ならば、椎名が扱えないカード、オーズ神官でしか扱えないカード………

 

だが、今回は特別………椎名の呆れる程に強いバトスピ魂に当てられ…………

 

 

「えっ!?………これって?」

「どういうことだ!?」

「…………オーズ………か」

 

 

椎名のデッキの上へと置かれるそのオーズのカード………今まさに、この時だと言わんばかりに…………

 

椎名もそれを悟ったか、一瞬驚きはしたが、それを受け入れ…………

 

 

「よしっ!!一緒に戦おうっ!!オーズっ!!」

 

 

………椎名とオーズの大反撃が始まる………

 

 

[ターン07]椎名

 

 

「スタートステップ、コアステップ…………ドローステップッ!!!!」

手札4⇨5

リザーブ6⇨7

 

 

椎名がドローしたカードは………当然、デッキに入っていったマーズのオーズ、【タジャドルコンボ】

 

そして、その瞬間………

 

そのカードは…………

 

………進化を超える………

 

 

「…………オーズは……タジャドルは………今………進化を超えるっ!!」

「っ!?」

「………………ほお?」

 

 

椎名の言葉と共に、徐々に徐々にとオーズのカードが、タジャドルのカードがみるみるうちに書き換えられて行く、全く違う性質のものに………

 

司は、その様子が、さっきの鬼化と呼ばれる現象に近いのを感じていた。椎名の顔がさっきまでの鬼ような外見になるのがフラッシュバックするようにちらつく…………

 

【カードが書き換わる】………これも立派なオーバーエヴォリューションの1つだ。

 

この時、椎名にとっては【オーズの特別な力が自分に味方した。又はカードが進化した奇跡、という認識】しかなかった事だろう。

 

だが、実際は違う。オーズが味方したという認識自体は正しいのだが……………正確には、進化させたのは【椎名自身だ】……………椎名が自分のこの、【鬼化】や【オーバーエヴォリューション】を繰り返すという不思議な力に気づくのは…………もう少し後だ。

 

 

「リフレッシュステップッ!!メインステップッ!!【グラウモン】【ズバモン】を連続召喚っ!!そしてそのまま直接合体!!」

手札5⇨4⇨3

リザーブ7⇨11⇨0

トラッシュ0⇨4⇨7

【グラウモン+ズバモン】LV3(4)BP10000

 

 

真紅の魔竜。その成熟期の姿、グラウモンが現れ、時同じくして現れた黄金の成長期ブレイブ、ズバモンと合体。

 

グラウモンはその黄金の鎧をその身に纏う。

 

 

「アタックステップッ!!グラウモンッ!!」

 

 

アタックステップへと移行し、合体スピリットとなったグラウモンにアタックの指示を送る椎名。

 

そして、グラウモンにはこの瞬間に発揮できるアタック時効果が存在する。

 

 

「グラウモンのアタック時効果っ!!ネクサスカードの旅団の摩天楼を破壊っ!!」

「っ!!」

「魔炎の…………エキゾーストフレイム!!!」

 

 

グラウモンがその巨大な口内から放つのは渦巻く魔のこもった炎。それは瞬く間に、そして刹那に、銃魔のネクサスカード、旅団の摩天楼を焼き尽くした。

 

………そしてアタック時効果は解決し、次は互いのフラッシュタイミング。

 

…………ここで、

 

…………このタイミングで………

 

 

………発揮させる。

 

 

………進化したオーズ………タジャドルを……

 

 

「フラッシュッ!!【煌臨】発揮!!対象はグラウモン!!」

【グラウモン+ズバモン】(4s⇨3)LV3⇨2

トラッシュ7⇨8

 

「………っ!?」

 

 

この瞬間。グラウモンが赤い炎に包まれて行く。だが、グラウモンはそれを危険なものと認識していないのか、逃亡するようなことはせず、寧ろそれを受け入れる。

 

その炎の中から赤いメダルの力がグラウモンへと注入されて行き、グラウモンは姿形を大きく変えて行く。それは、そのメダルはまさしくオーズの力に違いないが………

 

 

「タカ!!クジャク!!コンドル!!」

 

 

♬タ〜〜〜ジャ〜〜ドルゥ〜〜!!!

 

 

「熱き炎!!情熱の翼翻し現れよっ!!仮面ライダーオーズ!!!タジャドルコンボッ!!」

手札3⇨2

【仮面ライダーオーズ タジャドルコンボ(最終回ver.)+ズバモン】LV2(3)BP16000

 

 

その炎を振り払い、新たに現れたのは【仮面ライダーオーズ タジャドルコンボ】………だが、その様子は明らかにマーズが使用していたものとは異なっている。その炎はいつも以上に燃え上がり、翼はより大きく広がっている。これも椎名の力が影響しているのか………

 

 

「………カードのテキストが書き換わり、【チェンジ】のスピリットから【煌臨】を持つスピリットになったか……………だがっ!!それ一体ではどうにもならんっ!!」

 

 

そう、これではただ単に椎名がそれを、書き換えたカードを呼びどしただけ、そのアタックが通ったとしても、銃魔のライフは1残る。

 

…………しかし、

 

 

「ふふっ!!それはどうかなぁ?……」

「っ!?」

 

 

椎名の表情から笑みがこぼれる。

 

進化したタジャドルコンボの奇跡の効果が存分に発揮されて行く。

 

 

「【タジャドル(最終回ver)】の効果っ!!デッキの上から煌臨元のカードを合計7枚になるまで追加っ!!」

「っ!?」

 

「行くぞっ!!タジャドルっ!!超ギガスキャンっ!!」

煌臨元追加カード↓

【ギルモン】

【デュークモン】

【マリンエンジェモン】

【パイルドラモン】

【メガログラウモン】

【ライドラモン】

 

 

タジャドルコンボが天に自身の腕に装着されている武器、タジャスピナーを掲げると、そこに椎名のカードが装填されて行く。

 

力を与えられたタジャスピナーは回転し、極炎の炎を燃え上がて行く。

 

 

♬ギルモン!!デュークモン!!マリンエンジェモン!!パイルドラモン!!メガログラウモン!!ライドラモン!!ギガスキャンッ!!!

 

 

「な、なんだっ!?」

「この効果で煌臨元に追加したカードのコストの合計分、相手のスピリットを破壊するっ!!」

「っ!!?」

 

「今、私が追加したカードコストの合計は40!!………よって、2体の【ベルゼブモン】を破壊するっ!!」

「くっ!?」

 

 

…………進化したタジャドルの炎は眼前の全てを焼き払う……………

 

 

 

「…………失われし極炎!!!ロストブレイズッ!!!!!」

 

 

タジャドルが放つ火拳。それは【フレイドラモン】のナックルファイアとは比にならない程に強大で膨大なもの。その炎はやがて銃魔の場全体を覆い尽くして行き、【ベルゼブモン】2体を一気に焼き尽くしてしまった。

 

 

「アタックは継続中っ!!飛び立てっ!!タジャドル!!」

 

 

椎名の指示を聞き、上空へ飛び立つタジャドルコンボ。目指すは当然、銃魔のライフだ。

 

 

「………くっ、ライフだ…………ぐうっ!!」

ライフ3⇨1

 

 

タジャドルの急降下……からの炎のパンチ。その単純ながらに強力なアタックが銃魔のライフを一気に2つ破壊した。

 

だが、それでも未だにライフは1残っており…………

 

 

「タジャドルの最後の効果っ!!煌臨元のカードを破棄して、回復するっ!!」

「………ぐっ!?」

 

「私は【ギルモン】のカードを破棄して、回復させるっ!!」

【仮面ライダーオーズ タジャドルコンボ(最終回ver)+ズバモン】(疲労⇨回復)

破棄カード↓

【ギルモン】

 

 

タジャスピナーに装填された【ギルモン】のカードが消滅する。

 

が、それはタジャドル自身の効果。一瞬赤く発光し、回復状態となり、このターン、2度目のアタックの権限を得た。

 

後はガラ空きとなった銃魔の場に今一度アタックするだけ……………

 

 

「これで終わりだぁっ!!!タジャドルッ!!」

 

 

拳を天に上げ、炎を纏わせるタジャドルコンボ。目の前の銃魔の最後のライフを破壊する下準備をしているのだ。

 

しかし、銃魔もこれだけでは終わらないか………

 

…………手札にあるカード1枚に手をかける………

 

 

「…………面白い………いいだろう、ここから本気で相手してやる…………」

 

 

そう、小さく呟いた瞬間だった。

 

刹那、彼の耳にノイズが走る。

 

それはあの方からのの指示などがある時は必ず起こる現象だ。

 

 

〈銃魔……落ち着きなさい……〉

「っ!?Dr.A!!」

 

 

その包み込むような優しい言葉で我に帰ったか、銃魔はタジャドルのその炎の拳が届く前に…………

 

 

「………今日のところは一先ずこれくらいにしてやる……………次に会う時はもっとその力を使いこなせるよう、精進するんだな………」

「っ!?」

 

 

一瞬…………

 

 

それは一瞬だった。

 

 

タジャドルの炎の拳が届く瞬間に、銃魔はBパッドから再びワームホールを形成し、そこから逃亡した。空振りに終わったタジャドルの炎の拳が地面を勢い良く熱し、爆音を唸らせ、爆煙を巻き上げた。

 

 

「…………あれ?消えた?」

 

 

正面から見ていた椎名は爆煙が晴れる共に銃魔を視認しようとするが、その姿は当然見当たらず………ただ銃魔が消えたことだけを認識し、また、理解した。

 

 

「…………」

 

 

そんな中、横で傍観していた司だけは全ての真実を知っていた。銃魔が逃亡を計ったことを………そして、まだ手の内を全て見せていなかったということを…………

 

そう、明らかに銃魔は手を抜いていた。第6ターン目の時も、ひょっとしたらあの時点で椎名を倒せていたのかもしれない。理由があるとすれば、椎名の様子を見たかったからか…………

 

それともう1つ、司は聞き逃さなかった。

 

最後の最後………銃魔の口からs級犯罪者【Dr.A】の名が出てきたということ。

 

【Dr.A】以前も彼が関連して紫治一族と戦ったことがあるが、偶然にしては………出来すぎている。司はそう勘ぐっていた。

 

 

「……お〜〜い!!司ぁっ!!あいつどこいったの?」

 

 

そんな司の気も知らず、何も知らない椎名が大きな声で彼に話しかけてくる。司としては、正直うるさい声はやめて欲しかった。骨折した骨にジンジン響く………

 

 

「多分逃げた………バトルは終わりだ、お前はさっさと怪我人を運べ!」

 

 

司はそう言い返した。まだ王宮の人間がここに駆けつけてくるのも先の話。ならば唯一動くことのできる椎名に少しでも人を運べたらと…………思ったのだが………

 

 

「そっか〜〜!!逃げたのか〜〜………せぇっかく楽しいバトルだったのになぁ〜〜……………あぁ、疲れ……………………た?」

「っ!?おいっ!!」

 

 

次の瞬間。椎名は力尽き、倒れた。剣総、銃魔との戦いで有り余る全ての力を出し切ったのが伺える。

 

椎名は静かに寝息を立てながら眠りについた。まるで電池が切れて充電でもしているかのように………

 

 

「…………おい、どうすんだこれ?」

 

 

唯一意識のある司は困っていた。骨折して動けないのがもどかしい。この後約20分後程で王宮の人間が到着し、収集自体はつくのだが…………

 

 

 

 

こうして、具利度王国、王宮内で起こった事件は幕を下ろした。

 

 

だが、これが、今から起こる大きな事件のスタート地点にすら立っていないことを…………彼らはまだ、知らない。

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉

椎名「本日のハイライトカードは【仮面ライダーオーズ タジャドルコンボ(最終回ver)】!!!」

椎名「オーズのコンボの1つ、タジャドルコンボが進化した真の姿!!その炎は敵の全てを焼き払うよっ!!」


******


〈次回予告!!〉

椎名「あ〜〜やっと全部終わったよ〜〜!!でも、どれも楽しいバトルだったね!ねぇ司っ!!……ってあれ?もーーどうしたんだよ〜〜!!………次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ「終わって、そして始まって」……今、バトスピが進化を超えるっ!!」


******


最後までお読みくださり、ありがとうございました!!

そして全国のデジモンファンの皆さん、ベルゼブモンとデュークモンの対決を描写できず、誠に申し訳ございませんでした…………

修学旅行とオーズと鬼化片鱗編は次回でラスト、おそらく話のまとめになりますのでバトル無し回です。そしてその次からはガジャルグさんが私にメッセージで送ってきてくれたエピソード、【裏のジークフリード編】を【二期3章】としてお送りしたいと思っております。話数は全部で3、4話程の予定です。(話の展開の都合上、一部設定等を変えております。ガジャルグさん、ご了承ください!!本当にすみません!!)

この章の伏線は【第53話 スーパー脳筋パンチ!!クローズマグマ!!】にありますので、そちらも参照程度に………

最近、匿名希望の方から、【椎名の声は声優さんで例えると誰ですか?】と言う質問をもらいました。私が声優さんをあまり知らないと言うこともありますが、正直、私は小説のキャラの声はあんまりイメージできません。髪型とかは都合よく作りますが、(特に椎名のアホ毛)実際、オバエヴォのキャラはどんなイメージなんですしょうかね?烏滸がましいですが、出来たらでいいのでお声をくださると幸いです。

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