バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

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第67話「孤高の魔王と金色の鳳凰」

 

 

 

 

 

 

 

 

「行けっ!!デュークモン!!………聖盾の一撃!!…ファイナル・エリシオン!!!」

 

 

アイランドリーグもついに2回戦が幕を開けていた。椎名は第一試合をバトルしており、今まさにトドメの瞬間であった。

 

白い鎧に赤いマントを靡かせるロイヤルナイツの1体、デュークモンの左手にある盾にエネルギーが充填、そして射出される

 

それは瞬く間に対戦相手であるバトラーの最後のライフを貫いた。

 

 

《勝者!!芽座椎名っ!!完勝!!完勝ですっ!!見事に今年のアイランドリーグ、決勝への片道切符を手に入れたぁ!!!》

 

「よっしゃっ!!」

 

 

若き実況者の声から連なるように沸き上がる歓声の轟音。椎名は右腕を天に掲げるようにサムズアップした。

 

実況者も言うように、肩書きは二回戦ではあるものの、事実上の準決勝である。椎名はこの第6回アイランドリーグ、決勝へ進む権利を勝ち取ったのだ。

 

 

「うぉぉお!!椎名ぁ!!!」

「ちょっ!!うっさいわおっちゃん!!」

 

 

他の観客よりも声の音量が際立って大きかったのは、他でもない。芽座六月だ。70はゆうに超えている年齢だと言うのに、一体どこからこれほどの声量があるのか………

 

椎名が名誉あるこのアイランドリーグにて、決勝へ進出した。まぁ、六月にとってこれほど嬉しいことはないだろう。

 

 

******

 

 

《さぁ!!続きまして第二試合!!……対戦するのは………赤羽司選手とベレンヘーナ仮選手だぁ!!》

 

 

椎名が勝利して約10分程度は経っただろうか、ついにもう1人の決勝進出者を決めるバトルが幕を開けようとする。

 

バトル場へ現れたのは【朱雀】こと、赤羽司と、何故かここにいる銃魔だ。2人は具利度王国の一件以降、約4ヶ月ぶりに顔を合わせる。当然ながら、そのムードは最悪だ。

 

 

「………お前………何しに来た?……まためざしを攫おうってか?」

 

 

話を切り出したのは司。その目つきや表情、声色から、銃魔に対し、憤怒しているのが伺える。

 

そんな司を前に、銃魔はいつものようにズレた眼鏡を指先で元の定位置に戻しながら…………

 

 

「………いや、今回の目的は芽座椎名ではない。………俺は貴様と話すために来た……【朱雀】……赤羽司……!!」

「………あぁ!?」

 

 

憤怒と理解ができない感情が混ざり合ったように声を漏らす司。当然だ。具利度王国ではあれほどまでに芽座椎名に執着し、欲していたと言うのに、何故今回はそれを差し置いて自分なのだ………と。

 

銃魔はさらに立て続けに………

 

 

「………単刀直入に言おう、赤羽司………貴様では芽座椎名には勝てない………」

「………っ!!………んだとぉ!?俺があいつより下だと言いたいのか!!」

 

 

銃魔の発言に、とうとう痺れを切らした司。

 

【話す】と言って、いきなり何を口にするかと思えば………

 

彼にとって………それは何よりもプライドを傷つけられる言葉である。

 

どんどん強くなる芽座椎名。どんどん実力差が縮まっていくのを感じ、焦る司………その多大なる劣等感を銃魔は知っているからこそ、窯をかけたのだ。

 

結果は案の定………

 

 

「……俺はあんな奴より強いっ!!ずっとなぁ!!……そしてお前よりも!!」

「………じゃあ、俺に見せてみろ……その強さとやらを……」

「上等!!」

 

 

勢いのままBパッドを展開する司。それに合わせ、また銃魔も自身のBパッドを展開。バトルの準備が整った。

 

………そして始まる準決勝……その第二試合。椎名と決勝を争う者を決める戦いが………

 

 

「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

******

 

 

「なんや言い争っとるなぁ、知り合いやったんか?」

「………司ちゃん」

 

 

銃魔と司の言い争いを見て、思わずそう思った観客席にいる椎名の仲間たち。そこからでは何を話しているのかまではわからないものの、喧騒な雰囲気を醸し出しているのは確かなことであって………

 

そんな中、夜宵は一抹の不安を感じていた。

 

………近い未来……司がどこかへ行ってしまうような……

 

……そんな心苦しい不吉な予感……

 

 

******

 

 

バトルが始まる。

 

先行は………銃魔だ。

 

 

[ターン01]銃魔

 

 

「スタートステップ、ドローステップ………メインステップ、俺は【インプモン】を召喚!!効果で3枚オープンし、その中の対象となるスピリットカードを手札に加える……」

手札4⇨5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

オープンカード↓

【ベルゼブモン】◯

【シキツル】×

【シキツル】×

 

 

銃魔が初手で召喚したのは小悪魔のように小さな成長期のデジタルスピリット、インプモン。そしてその召喚時効果も成功、銃魔は早速自身のエーススピリット、ベルゼブモンのカードを手札へと新たに加えた。

 

 

「俺はこのベルゼブモンを加え、ターンを終了する」

手札4⇨5

【インプモン】LV1(1)BP1000(1)

 

バースト【無】

 

 

「………早速加えやがったな……」

 

 

司は知っている。

 

今銃魔の手札に加わったベルゼブモンがどれほど厄介で強力なのかを………

 

頭の中は憤怒でいっぱいいっぱいではあるものの、ここは冷静にあのベルゼブモンをいかにして出させないか、という戦法を取るべきだ。

 

それを理解した上で司は自分のターンを進行させる。

 

 

[ターン02]司

 

 

「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ………メインステップ………俺はネクサスカード、朱に染まる薔薇園を配置し、ターンエンド……!!」

手札4⇨5⇨4

リザーブ4⇨5⇨0

トラッシュ0⇨5

【朱に染まる薔薇園】LV1

 

バースト【無】

 

 

司の背後に鮮やかな朱色の薔薇園が咲き誇る。これは後攻を取った時の司のデッキにおいて最も強いプレイング。これがあるのとないとでは天と地ほどの差がある。最初のターンを空振りにしてでも配置したいネクサスカードなのだ。

 

次は今一度銃魔のターン。

 

 

[ターン03]銃魔

 

 

「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ………」

手札5⇨6

リザーブ0⇨1⇨4

トラッシュ3⇨0

 

 

ターンシークエンスを進めて行く銃魔。次はメインステップ………呼び出すのは、

 

 

「メインステップ、俺は魂鬼を召喚し、ネクサスカード、旅団の摩天楼を2枚配置し、2枚ドロー」

手札6⇨5⇨4⇨3⇨4⇨5

リザーブ4⇨3⇨2⇨1

トラッシュ0⇨1⇨2

 

 

霊魂のみの姿となった鬼、魂鬼がインプモンの横に現れるのと同時に、銃魔の背後に細長い摩天楼が聳え立つ。【紫速攻】と呼ばれるデッキにおいてはよく見かける光景であろう。

 

もちろん、銃魔のデッキはただの速攻ではないのだが………

 

 

「バーストを伏せ、アタックステップ!!……魂鬼!!インプモン!!」

手札5⇨4

 

「……っ!!ライフで受けるっ!!………?……ダメージがない?」

ライフ5⇨4⇨3

 

 

今回初めてのアタックステップ。銃魔の場にいるスピリット、インプモンと魂鬼が司のライフを一気に1つずつ破壊。

 

だが、具利度王国で感じた凄まじい程のバトルダメージの発生は起こらなかった。司はそのことに関して違和感を覚える。

 

 

「………お前、なんのつもりだ?」

「事を大きくはできないからな」

 

 

特にそんなダメージを受けたいわけではないが、銃魔にそう問い詰める司。

 

銃魔は………

 

あの力をコントロールできる。好きな時に大きなダメージを与えられるし、もちろん普通に痛みのないバトルもすることができる。司がこんな人目の多いところで痛がってしまうことがあれば、色々と面倒なのだろう。

 

 

「………舐めプ野郎が………!!」

 

「好きに言うが良い………ターンエンドだ」

【インプモン】LV1(1)BP1000(疲労)

【魂鬼】LV1(1s)BP1000(疲労)

 

バースト【有】

 

 

そうだとわかっていても、自分を舐めてかかってきているとどうしても感じてしまう司。その怒りの感情はもはやとどまる事を知らない。どれだけ自分の事を見下せばいいのだ………

 

そう思いながらも勢いのままターンを進めて行く。

 

 

[ターン04]司

 

 

「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ………」

手札4⇨5

リザーブ2⇨3⇨8

トラッシュ5⇨0

 

 

2度のアタックをライフで受け、司には今、2度目のターンにしては多めの総コア数を有している。赤と黄色のシンボルを持つネクサスカードもあることながら、やれる事は多い。

 

 

「メインステップ!!俺はイーズナ、ホークモンを召喚!!……ホークモンをの召喚時!!」

手札5⇨4⇨3

リザーブ8⇨7⇨5

トラッシュ0⇨1

オープンカード↓

【朱に染まる薔薇園】×

【テイルモン】◯

【シャイニングバースト】×

 

 

赤と黄色のハイブリッドスピリット、鼬のような姿をしているスピリット、イーズナと、赤き羽を持つ鳥型の成長期スピリット、ホークモン。いずれも司のデッキには欠かせない存在である。

 

そしてそのホークモンの召喚時効果も成功、成熟期スピリットであるテイルモンのカードが新たに加えられた。

 

 

「さらに2コスト払い、テイルモンをLV3で追加召喚!!」

手札3⇨4⇨3

リザーブ5⇨0

トラッシュ1⇨3

 

 

ホークモンの効果だ。黄色の成熟期スピリット、猫のような見た目だが、本当はネズミ型のデジタルスピリット、テイルモンが司の場に追加で召喚された。

 

 

「バーストを伏せ、アタックステップ!!……イーズナ!!」

手札3⇨2

 

「ライフで受ける」

ライフ5⇨4

 

 

唐突に入った司のアタックステップ。手始めと言わんばかりにイーズナが突撃し、銃魔のライフを破壊した。

 

今現在、銃魔のスピリットは全て疲労状態。当然ながらブロックは出来ず、能動的に破壊する事は出来ない。

 

それ故に、このターンはベルゼブモンが召喚できないのだ。

 

 

「俺を舐めプしてミスったなぁ!!続けっ!!ホークモンっ!!」

 

 

ホークモンがその赤い羽を羽ばたかせ、銃魔のライフを撃つべく空を翔ける。

 

これは………

 

前のターンでフルアタックを仕掛けてしまうと言う初歩的なミスを犯した銃魔のプレイングミス。これでは早々にベルゼブモンを召喚できない。

 

………かに思えたこのターン。銃魔は眼鏡を指先で元の定位置に戻しながら、手札にあるカード1枚を切り、

 

 

「………プレイングミス……本当にそう思ったのか?」

「……!?」

 

「フラッシュマジック!!デッドリィバランス!!」

手札4⇨3

リザーブ2⇨1

トラッシュ2⇨3

 

 

銃魔が唐突に放ったマジックカード、デッドリィバランス。その効果は………

 

 

「この効果で、互いのスピリットを1体ずつ選び、破壊する!!俺は魂鬼!!」

「……俺はイーズナだ」

 

 

銃魔の魂鬼と司のイーズナが同時に破裂するように破壊される。

 

 

「魂鬼の破壊時効果で1枚ドロー」

手札3⇨4

 

「………お前!!またわざとミスりやがったなっ!!」

 

 

司はそう銃魔に叫んだ。

 

実際、無理もなかった。デッドリィバランスを使用できるコストは軽減込みでたったの1。その程度のコストならば最初の司のアタック、つまりイーズナのアタックでも使用ができた。よって、そのタイミングではなく、次のアタックで使用するのは明らかなプレイングミスと言えた。

 

当然だ。アタックし終わったスピリットを破壊すればアタックの回数には支障が出ないのだから。

 

………だが、銃魔は手を抜くような男ではない……Dr.Aという犯罪者と行動を共にしているものの、バトラーとしてはバトスピと真摯に向き合っている。

 

 

「………そう思ったのなら、お前は俺より弱い……」

「なにぃ!?」

 

「俺の場のコスト3以下のスピリットが破壊されたことにより、手札にある【ベルゼブモン】の効果を発揮!!」

「……なっ!?」

 

「お前は固定概念に縛られすぎだ。このベルゼブモンは自壊させた場合でも召喚が可能!!」

 

 

通常………

 

この手の効果は相手による破壊を条件にするものが多い。

 

しかし、ベルゼブモンはそれを飛び越え、自分で破壊させた場合でも召喚が可能。

 

デッドリィバランスを2度目のアタックに使用したのは単純にベルゼブモンを召喚するためのコアが欲しかったから。アタックを誘うため、フルアタックをし、待ち構えていたのだ。司はそうとも知らず………

 

………自分から彼の、銃魔の作戦にまんまと乗せられてしまったのだ………

 

 

「1コストを支払い、孤高の魔王!!ベルゼブモンをLV1で召喚!!」

手札4⇨3

リザーブ2⇨0

トラッシュ3⇨4

 

 

銃魔の背後に聳え立つ旅団の摩天楼。その上から飛び降りてくる謎のデジタルスピリット、

 

それは究極体スピリットにして、孤高の魔王………名をベルゼブモン。銃魔のエーススピリットだ。

 

 

 

司は警戒しているつもりだった。

 

だが、それでもこのベルゼブモンの召喚を許してしまった。それも、あっという間に………それは今の自分と銃魔の実力差を感じてしまうには十分過ぎるものがあった。

 

………それもまた、腹立たしかった………

 

 

「召喚時効果!!コア2つをリザーブに置く!!消え失せろ!!ホークモン!!」

手札3⇨4

 

「………ぐっ!?」

【ホークモン】(1⇨0)消滅

 

 

登場するなり、ベルゼブモンは2丁のショットガンを腰から取り出し、こちらへと向かってくるホークモンに向かって連射。ホークモンを見事、撃ち落とした。

 

ホークモンが耐えられるわけもなく、地面に墜落し、爆発してしまった。

 

 

「………どうした?こんなものか?」

 

「ぐっ!!……ふざけんなぁっ!!……テイルモンでアタック!!効果発揮!!」

オープンカード↓

【シルフィーモン】◯

 

 

銃魔の軽い煽りに反発するように、

 

勢いのままテイルモンでアタックを仕掛ける司。そのアタック時効果でオープンされたカードはまさしく最高の一枚であって………

 

 

「この効果により、完全体スピリットが巻くられればライフを1回復!!朱に染まる薔薇園の効果でドロー!!さらに【超進化】の効果でテイルモンをこのスピリット、シルフィーモンに進化っ!!」

ライフ3⇨4

手札2⇨3⇨4

【シルフィーモン】LV3(5)BP12000

 

 

テイルモンにデジタルコードが巻き付けられる。テイルモンはその中で姿形を大きく変えていく。やがてそれは弾け飛び、中から新たに現れたのは、聖なる獣人型の完全体スピリット、シルフィーモン………

 

司のデッキのエーススピリットである。

 

 

「召喚時効果っ!!BP15000以下のスピリットを1体破壊するっ!!」

「………!!」

「ベルゼブモンを破壊っ!!……トップガン!!」

 

 

登場するなり、シルフィーモンは両掌を合わせ、エネルギーを凝縮させ、弾丸のように解き放つ。ベルゼブモンは2丁のショットガンでそれを撃ち返そうとするも、逆に弾丸ごと飲み込まれ失敗。

 

そしてそれはベルゼブモンの腹部を貫く。流石にベルゼブモンも耐えられなかったか、その場で力尽き、大爆発を起こした。

 

 

「………どうだクソメガネ!!」

「なるほど、悪運は強いらしい……だが、それだけでは俺には勝てん!!」

「………!!」

 

 

偶然決まったコンボではあったものの、見事に銃魔の持つ強力なエーススピリット、ベルゼブモンを倒して見せた司。

 

だが、銃魔はその有様を見ても顔色1つ変えず、落ち着いている。その余裕のある雰囲気がまた司を腹立たしくさせる。

 

 

「スピリットの破壊により、バースト発動!!【妖刀ムラサメ】!!」

「……なにっ!?」

 

「このバースト効果により、シルフィーモンのコア3つをリザーブへ送り、召喚!!」

【妖刀ムラサメ】LV1(1)BP5000

 

「くっ!!……」

【シルフィーモン】(5⇨2)LV3⇨1

 

 

まるで司が反撃してくるとわかっていたかのように発動されたバースト。裏側のカードが反転すると共に解き放たれた闇はシルフィーモンを捕らえてその中にあるコアを弾き出した。

 

シルフィーモンは辛うじて生き残るも、LVを大幅にダウンさせられてしまう。

 

その後地の底から禍々しい闇の正体である妖刀が姿を現した。剣先が地面に刺さっているその様は、まるで自分を扱える主人を心待ちにしているかのよう………

 

 

「ぐっ!!だが、まだシルフィーモンの方がBPは上っ!!アタックステップは継続っ!!ぶっ飛ばせ!!シルフィーモン!!」

 

「………ライフで受ける」

ライフ4⇨3

 

 

司の命令を受け、これでもかと言わんばかりにトップガンを銃魔のライフへと投げつけるシルフィーモン。

 

銃魔の場にはインプモンと合体先のいない妖刀ムラサメのみ。流石に心許ないか、それでブロックはせず、そのアタックはライフで受けた。無数のトップガンが叩きつけるように銃魔のライフ1つを粉々に粉砕した。

 

 

「……ターンエンド」

【シルフィーモン】LV1(2)BP7000(疲労)

 

【朱に染まる薔薇園】LV1

 

バースト【有】

 

 

様々な横転がありながらも、なんとか盤面の優位性を取り戻すことができた司。

 

しかし、精神面で言ってみれば圧倒的に銃魔が押していると言える。彼に心を揺さぶられながら、このままこれを維持する事はできるのか………

 

 

[ターン05]銃魔

 

 

「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ…………」

手札4⇨5

リザーブ1⇨2⇨6

トラッシュ4⇨0

【インプモン】(疲労⇨回復)

 

 

リフレッシュステップに伴い、疲労していたインプモンが回復する。その小さき力だけでは明らかにシルフィーモンを場に呼んでいる司に太刀打ちはできないが………

 

 

「メインステップ……俺はメインマジック、式鬼神オブザデッドを使用!!」

手札5⇨4

リザーブ6⇨5

 

「……!!」

 

「この効果により呪鬼スピリット、ベルゼブモンをLV1で再召喚!!不足コストはインプモンから確保!!」

リザーブ5⇨0

【インプモン】(1⇨0)消滅

トラッシュ1⇨5

【ベルゼブモン】LV1(2)BP7000

 

 

コアの損失によりインプモンはその場で消滅してしまうものの、突如として現れた紫の靄の中から再び孤高の魔王、ベルゼブモンがこの地へと降り立った。

 

 

「召喚時、及びアタック時!!スピリットのコアを2つリザーブへ!!消え失せろっ!!シルフィーモン!!」

手札4⇨5

 

「………っ!!」

【シルフィーモン】(2⇨0)消滅

 

 

ベルゼブモンの2丁のショットガンによる乱射が司のシルフィーモンを襲う。その弾丸のほとんどはシルフィーモンの胸部へと命中。残ったコアが全て抜き取られ、シルフィーモンはその場で力尽き、消滅してしまう。

 

 

「さらに!!俺は妖刀ムラサメをベルゼブモンに合体!!LV2へアップ!!」

【ベルゼブモン+妖刀ムラサメ】LV2(3)BP16000

 

 

シルフィーモンを倒した後、ベルゼブモンは剣先から地面に刺さっている妖刀ムラサメを引き抜く。妖刀ムラサメもそれを主人と認めたのか、邪悪な闇の力がベルゼブモンに流れ込んで行った。

 

 

「さぁ、痛感するがいい、赤羽司………アタックステップ!!ヤレェッ!!ベルゼブモン!!」

 

 

アタックステップへと移行する銃魔。ベルゼブモンが戦闘態勢に入る。

 

そして、このタイミングで、銃魔はある1枚のカードを切った。それは自分のデッキの切り札。司を追い詰めるべく、今、再び解き放つ。

 

 

「フラッシュ【チェンジ】!!俺は【ベルゼブモン ブラストモード】を発揮!!対象はベルゼブモン!!」

「………っ!!」

「この効果で貴様のリザーブからコストを支払う!!」

 

「……ちぃ!!」

リザーブ5⇨2

トラッシュ3⇨6

 

 

銃魔がそのカードの使用を宣言した直後、司のリザーブのコア5つのうち3つが勝手に動き出し、使用不可のトラッシュへと送られてしまう。

 

 

「そして、回復状態でベルゼブモンと入れ替えるっ!!来いっ!!ベルゼブモン ブラストモード!!」

【ベルゼブモン ブラストモード+妖刀ムラサメ】LV2(3)BP21000

 

 

ベルゼブモンの背中に漆黒の翼が新たに生えてくる。そして右手には神をも穿つ砲手が取り付けられ………

 

デジタルスピリットで有りながら、仮面スピリットと同様の【チェンジ】の効果を持つベルゼブモン ブラストモードが銃魔の場へと顕現した。

 

 

「もちろんアタックは継続中だっ!!ブラストモードの効果!!紫のシンボルを1つ追加するっ!!」

「……!!」

 

 

今現在、ブラストモードは妖刀ムラサメを左手に持ち、合体している。そのため、アタック中の合計シンボルは3つ。一撃で相手のライフを3つ破壊できる状態なのだ。

 

 

「さぁ!!受けるがいい!!」

 

「ぐっ!!ライフだ………ぐぅっ!!」

ライフ4⇨1

 

 

ブラストモードの右手の砲手から電子砲が一直線に放たれる。それは一瞬にして司のライフを粉々に粉砕し、立て続けに本体が妖刀ムラサメで一閃。今一度司のライフを引き裂いた。

 

これで司のライフは残り1つ。危険なレッドゾーンへと到達してしまう。おまけにブラストモードは【チェンジ】の効果で回復状態。ブロッカーもいないため、これで終わりか……………

 

 

「なわけねぇだろぉぉっ!!バースト発動!!【絶甲氷盾】!!効果でライフを1つ回復し、コストを払い、このターンを終了させるっ!!」

ライフ1⇨2

リザーブ5⇨1

トラッシュ6⇨10

 

「………!!」

 

 

司のバーストカードが反転すると共に、そのライフが1つ増える。さらに銃魔の場に猛吹雪が発生。ブラストモードでさえもその中に立ち入ることは出来ない。銃魔はこのターンのエンドを迫られた。

 

 

「………ターンエンド」

【ベルゼブモン ブラストモード+妖刀ムラサメ】LV2(3)BP21000(回復)

 

【旅団の摩天楼】LV1

【旅団の摩天楼】LV1

 

バースト【無】

 

 

流石に致し方無しか、銃魔はそのターンをエンドとしてしまう。ブラストモードも羽を休めるかのように地に足を着ける。

 

次はなんとかこのターンをしのいだ司のターン。ここで挽回しなければ間違いなく後はないことだろう。

 

局面的にも、精神的にも追い込まれたこの状況で………どこまでやるのか………

 

 

[ターン06]司

 

 

「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ!!………リフレッシュステップ」

手札4⇨5

リザーブ1⇨2⇨12

トラッシュ10⇨0

 

 

司はターンシークエンスを進めた。

 

奴を……銃魔を倒すために………

 

だが、そのメインステップに移行する直前、銃魔が徐に口を開き………

 

 

「………芽座椎名の【あの姿】が気になるのだろう?……あの人という概念を超越した究極の姿を!!」

「………っ!!!」

 

 

突然、そう言い放った。歓声と言う名の轟音が響き渡るこのアイランドリーグ会場で………

 

【あの姿】とは、おそらく椎名が具利度王国で見せたあの【鬼化】と呼ばれるもの………

 

 

「お前は……先を越されていると思っているのだろう?芽座椎名に」

「………」

 

 

そうだ。

 

そう、思っている。めざしが見せたあの力………

 

………オーバーエヴォリューションを繰り返す力を目の当たりにした時、無意識のうちに頭で認識した。

 

……もう奴の方が俺より強いのではないか?

 

………だが、同時に……

 

 

「同時に助けたいとも思っている!!未知の力に侵されている芽座椎名を!!」

「っ!!それは違うっ!!」

 

 

咄嗟に反論する司。

 

しかし、これもまた本当の気持ち。今まで、ただのライバルという認識しかなかった椎名の存在は、彼の中で大きくなりつつあった。

 

あの鬼化から、奴を助けたい。それも無意識のうちに渦巻いていた感情………

 

 

「まぁ、あれは奴にとって特に死に至らせるような代物では無いがな……赤羽司、お前は優しい……が故に非情になりきれていない………」

 

 

………だから、

 

そう、だから………

 

 

「俺たちと共に来いっ!!Dr.Aが創る【進化した世界】へっ!!……そこでお前はその生半可な優しさを捨て去り、さらに強くなれる!!」

「………はぁ!?」

 

 

いつになく、それでいてらしくなく昂ぶったかのような声を震え上げらせる銃魔。

 

いわゆるスカウトなのか、司をDr.Aと自分側に引き入れようとしているのだけは理解できる。

 

 

「……お前、やっぱDr.Aと繋がりがあったのか……!!」

 

 

これで、この言葉で、ようやく銃魔がDr.Aと密接な繋がりがある事を確認した司。銃魔を今一度鋭い目つきで睨みつける。

 

 

「………そんなものは関係ない………来るのか?……そう俺は聞いている………戦争も紛争もない穏やかな世界へ………!!」

「……っ!!…行くわけねぇだろぉぉっ!!………メインステップっ!!」

 

 

銃魔はいったい何が言いたいのか、話の内容がいまいちよく理解できない。

 

……だが、咄嗟に司はこれだけを考えた。

 

……奴の、銃魔やDr.Aの下になるつもりはない……と。

 

どちらにせよ銃魔は野放しにはできない。そう思い、勢いよくターンシークエンスを再開する。

 

 

「イーズナを2体召喚っ!!……さらにテイルモンを再召喚!!」

手札5⇨4⇨3⇨2

リザーブ12⇨11⇨10⇨5

トラッシュ0⇨2

 

 

司の場に追加で2体のイーズナが召喚されると共に、【超進化】の効果で手札に戻っていたテイルモンも姿を見せた。

 

 

「さらに、メインマジック!!【コールオブロスト】!!トラッシュに落ちたシルフィーモンのカードを回収!!」

手札2⇨1⇨2

リザーブ5⇨3

トラッシュ2⇨4

 

「………再び【超進化】の準備を整えたか……」

 

 

司のトラッシュから、ベルゼブモンによって消滅したシルフィーモンのカードがひらひらと手札に舞い戻ってくる。

 

銃魔の言う通り、これで司はテイルモンの効果で2度目の【超進化】を行えるようになった。

 

 

「アタックステップっ!!テイルモンでアタック!!アタック時効果っ!!!

オープンカード↓

【リボルドロー】×

 

 

今一度テイルモンにアタックの指示を送る司。だが、その効果で捲られたのは完全体スピリットカードではないため、手札には加えられるものの、ライフは回復しなかった。

 

しかし、目的はそこではない………

 

 

「テイルモンの【超進化:黄】を発揮!!………再び俺の前に姿を見せろっ!!シルフィーモン!!」

手札2⇨3

【シルフィーモン】LV2(3)BP9000

 

 

テイルモンが再びデジタルコードに巻き付けられ、その中でシルフィーモンへと姿を変え、司の場に降り立った。

 

 

「………だが、所詮は完全体、ベルゼブモンの足元にも及ばん!!」

 

 

確かに、銃魔の言う通り、シルフィーモンではあのベルゼブモン ブラストモードには遠く及ばないかもしれない。

 

シルフィーモンはそこらへんの完全体よりかは高スペックと言えど、さらにその上の究極体でありながらそれを超越したベルゼブモン ブラストモードでは部が悪すぎると言える。

 

しかし、司にはどんなに相手のスピリットが強力だろうと何だろうと、必ず倒せる切り札がある。

 

 

「……いつまでもこの俺を見下してんじゃねぇ!!……フラッシュ!!【煌臨】発揮!!対象はシルフィーモン!!」

リザーブ3s⇨2

トラッシュ4⇨5s

 

「………!!」

 

 

その瞬間、シルフィーモンの足元から火柱が立ち上る。シルフィーモンはその中で姿形を大きく変えていく。

 

………その姿はまさしく古来日本より伝わりし伝説の巨鳥、鳳凰。

 

 

「………天空を統べる者よ!!今こそ地上の全てを薙ぎ払えっ!!……究極進化ぁぁあ!!」

手札3⇨2

 

 

やがて、その火柱は弾け飛び、中から新たなるスピリットが出現する。

 

 

「………ホウオウモンッ!!」

【ホウオウモン】LV2(3)BP12000

 

 

司の場に現れたその金色に輝く4枚の翼を持つスピリットは、ホウオウモン。彼の家、赤羽一族で代々受け継がれているもの。その力を使って、これまでも幾度となく司はピンチから脱してきた。

 

………そして、今回も………

 

 

「ホウオウモンの効果っ!!煌臨時効果っ!!煌臨元となった赤の完全体スピリットを回収する事で、相手のBP10000以上のスピリット1体を破壊する!!」

手札2⇨3

 

「………!!」

「……俺は赤の完全体スピリット、シルフィーモンを手札に戻し、お前のブラストモードを破壊っ!!…………金色の超炎!!!シャイニングエクスプロージョンッ!!!」

 

 

ホウオウモンは煌臨するなり、上空から金色の翼を広げ、そこから翼と同じ色の炎を放出。ベルゼブモン ブラストモードはそれを浴び、一瞬にして溶解してしまう。それと合体状態であった妖刀ムラサメはブラストモードがいた跡地に取り残されていた。

 

 

「………ほお、これが赤羽一族のホウオウモン……美しい………」

 

 

銃魔はエーススピリットであるベルゼブモンを破壊されたにもかかわらず、笑っていた。そんな状況ではないはずなのに………対戦相手である司の場を自由に飛翔するホウオウモンにただただ見惚れていた。

 

そんな余裕のある表情がまた司の気に触る。

 

 

「浸ってんじゃねえっ!!アタックステップは継続だっ!!ホウオウモンっ!!やれっ!!アタック時効果でBP10000以下のスピリット、妖刀ムラサメを破壊っ!!」

「………!!」

 

 

ホウオウモンは上空から急降下し、銃魔のライフを狙う。そしてその口内から金色の炎を弾丸のように射出。地面に突き刺さって身動きの取れない妖刀ムラサメはそのままそれに直撃、爆発した。

 

これで、銃魔の場にいたブロッカーは全て排除された。そして残りライフは3。対して、司の場にはホウオウモンを含めて3体、ライフを破壊できるスピリットが健在している。つまり、このターンでフルアタックを決めれば、司の逆転勝利となるのだ。

 

 

「ぶち破れぇ!!ホウオウモン!!」

 

「………ライフで受ける」

ライフ3⇨2

 

 

ホウオウモンの右側の2枚の翼からなる翼撃が、銃魔のライフをいとも容易く粉々に粉砕した。

 

 

「このターンで終わりだっ!!イーズナでアタックっ!!」

 

 

司の場に残った2体のイーズナ。その両者のアタックでこのバトルは司の勝利………

 

………かに見えたが、また銃魔は手札にあるカードを切り………

 

 

「………お前では、俺には勝てんっ!!フラッシュマジック!!【リアクティブバリア】!!!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ5⇨9

 

「………なにっ!?」

 

「この効果により、このアタックでこのターンを終わらせる………そのアタックはライフだ」

ライフ2⇨1

 

 

イーズナのひっかく攻撃が銃魔のライフをさらに引き裂き、ついに1まで追い込むも、銃魔が咄嗟に使用したマジック、リアクティブバリアの効果により、司の場に猛吹雪が発生、全てのスピリットが行動不能に陥る。

 

 

「………クッソっ!!……エンドだ……っ!!」

【イーズナ】LV1(1)BP1000(回復)

【イーズナ】LV1(1)BP1000(疲労)

【ホウオウモン】LV2(3)BP12000(疲労)

 

【朱に染まる薔薇園】LV1

 

バースト【無】

 

 

司はその結果に苛立ちながらもそのターンをエンドとした。あと一歩だった。あと一歩のところで止められてしまったのだ。悔しがるのも無理はない。

 

……が、まだ敗北が決まったわけでもない。司はめげずに次の一手を考えていた……

 

 

[ターン07]銃魔

 

 

「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ……………【頃合い】か……」

手札4⇨5

リザーブ1⇨2⇨11

トラッシュ9⇨0

 

 

ゆっくりとそのターンを進めていく銃魔。

 

このバトルはもはやデッドヒート。ターンが切り替わるに連れ、逆転を繰り返し、観客達は大いに、それでいて熱く盛り上がっていた。

 

そんな片方を担う銃魔が次に繰り出す戦略は………

 

 

「メインステップ、俺はベルゼブモンをLV2で再召喚!!」

手札5⇨4

リザーブ11⇨3

トラッシュ0⇨5

 

 

銃魔は【チェンジ】の効果で手札に戻っていた普通のベルゼブモンを再度召喚する。

 

 

「召喚時効果で貴様の回復状態のイーズナのコアを取り除き、1枚ドロー」

手札4⇨5

 

「………くっ!!」

【イーズナ】(1⇨0)消滅

 

 

今回幾度となく多用されたベルゼブモンの召喚時効果。サイズの小さいイーズナには、もはや2丁もショットガンを使うまでもなかったか、ベルゼブモンは1丁だけで、それも1発の弾丸でイーズナを仕留めた。

 

これで現在、司の場にいるブロッカーはゼロ。そしてライフは2。銃魔があと1体、あと1体だけスピリットを召喚してしまえば………

 

……銃魔の勝ちだ………

 

………そして、

 

 

「……さらに俺は魔界竜鬼ダークヴルムをLV1で召喚!!」

手札5⇨4

リザーブ3⇨0

トラッシュ5⇨7

 

「………!!」

 

 

上空から地上へと、溢れんばかりの闇が降り注ぐ、そしてそれを弾け飛ばし、現れた竜は、ヴルムの名を関する紫のスピリット、魔界竜鬼ダークヴルム………

 

………多量の手札、当然他にスピリットカードが存在しないわけがなかった。

 

 

「……終わりだ……赤羽司……!!」

「………クソっ!!………クッソぉぉぉお!!!」

 

 

ダメだった。

 

………いくら手札を確認しても、もはやこのターンを凌ぐほどのカードはなく………

 

司は圧倒的な敗北感を味わう。

 

ここまで来て、負ける………

 

………しかし、召喚されたばかりの魔界のヴルムは目の前の司ではなく、背後にいる銃魔の方を振り向いて………

 

 

 

「魔界竜鬼ダークヴルムの召喚時効果!!………俺のライフ1つをトラッシュに置くことで、カードを2枚ドローするっ!!」

「!?」

 

「………」

ライフ1⇨0

 

 

次の瞬間、魔界のヴルムは銃魔のライフを喰らい始めた。まるで生贄を欲していたかのように………銃魔の最後のライフはひび割れ、やがて破裂するように散っていった。

 

………これにより、銃魔のライフはゼロ………

 

………勝者は赤羽司だ。

 

 

 

「…………は?」

 

 

 

会場の誰もがあっけに囚われていた。それだけではない。この中継を見ていた人物全て、意味のわからない表情を浮かべている。しかし、一番その奇行に驚愕したのは他でも無い、司自身である。

 

……いったい何が起きた?

 

今まさに勝てていたところであったと言うのに、それを捨ててカードを引いた………あり得ない彼ほどのバトラーが………これは明らかな自滅……もちろんこうなることを知っていてのだ………

 

 

《え、え〜〜………2回戦、第二試合………しょ、勝者!!赤羽司ぁ!!》

 

 

若き実況者がそう叫んでも、観客達はそれを起爆剤に轟音を上げる事はなく、未だにどよめいていた。

 

 

「じゃあな」

「おいっ!!待てよっ!!じゃあなじゃないだろうがぁ!!」

 

 

銃魔は背を向け、バトル場から出ようとするが、当然、司がそれを許す訳なくて………

 

 

「なんで自爆しやがったぁっ!!……何度言わせやがるっ!!この俺を舐めプしてんじゃねぇぇっ!!」

「………ライフの計算をミスしただけだ……このバトルはお前の勝ちだ、赤羽司……」

 

 

納得がいかない………

 

……司は初めてだった。ここまでの屈辱を受けての敗北は………

 

……ライフの計算ミス?……そんなもの初心者だってしない、熟練者である銃魔がする訳ないだろう。

 

 

「お前は芽座椎名より自分が強いと言ったな…………だったらこの大会でそれを証明しろ………そして気が変わったらまた俺かDr.Aの元へ来い」

「っざっけんなぁ!!!俺ともう一度戦えぇっ!!」

 

 

銃魔は結局司の言葉には足を止めず、バトル場を去ってしまう。

 

 

「逃げんじゃねぇぇぇぇえっ!!!」

 

 

これまでにはない程の司の昂ぶった怒号が観客のどよめきを超えて、会場中に反響し、響き渡っていた。

 

この銃魔の行為にどんな意味があったのかは知れたものではないが、結果として、結果としてだ。

 

今年の第6回アイランドリーグ………

 

……決勝で優勝を争うのは

 

【芽座椎名】

 

【赤羽司】

 

この両名となる。

 

 

******

 

 

2回戦が終わり、司は疲れ切った顔で、控室までの道のりを歩んでいた。あんな勝ち方は初めてだった。しかもこんな大きな大会で………

 

……屈辱にも程がある。こんな勝ちなど司は絶対に認めない。事実上の敗北だ。

 

………そんな時だ。彼の目の前に現れる人物が1人。

 

 

「やっほ〜〜司ちゃぁん!!」

 

 

元気な声を上げ、現れたのは司の昔馴染みの友、夜宵だ。

 

彼女はあんな勝ち方をしてしまった司を見て、居ても立っても居られなくなり、観客席からここまで降りてきたのだ。

 

しかし、そんな夜宵を見ても、司は未だにだんまりとしており………

 

 

「いや〜〜次は椎名ちゃんとの決勝だね!!楽しみだよ〜〜!!」

「………」

 

 

夜宵の言葉など無視して、司はそれを通り過ぎ去ろうとする。だが、夜宵もそれに負けずに司に声をかける。

 

 

「………まぁ、さ!!気にすることないって!!次普通に勝てば良いじゃない!!」

「………!!」

 

 

夜宵のこの言葉で、疲れ切っていた司の表情は今一度銃魔に向けるような憤怒のものへと切り替わり………

 

 

「……お前に……お前に何がわかるっ!!?!……さっさと失せろぉ!!夜宵ぃい!!!」

「っ!?」

 

 

強く、そう言い放った。彼女を、夜宵を突き放すように………その放つプレッシャーは並大抵のバトラーでは放つことできないもの。これまで様々なバトルを経験してきた司だからこそのものだった。

 

………ただ、この司を持ってしてもあの銃魔には敵わなかったのだが………

 

 

「……司ちゃん」

 

 

その後、司は夜宵を通り過ぎ、控え室へと帰っていった。

 

夜宵は司の放ったプレッシャーに震えながらも……この時、再確認した。この赤羽司に起こった変化を………やはり、具利度王国で何かあったのだと………

 

 

******

 

 

この場所は、銃魔の控え室。銃魔は1人腰掛けに腰を下ろし、Bパッドを介してある人物と通話していた。

 

 

「……はい。彼はこちら側につく気は無いと……すみません。………はい。」

 

 

彼とは、司のことだろうか。

 

 

「えぇ、出場者としての役目は果たしました。これで決勝を争うのはあの2人です。…………はい。【地下の方】は俺に任せてください………そちらはお任せします」

 

 

この時点でわかっていることは、銃魔の話し手がs級の犯罪者、Dr.Aであること……

 

……だが、これ一切の話の内容は全くもって伝わらない。………しかし、ニュアンスでわかることは、【彼らは何かを企んでいる】……ということ……

 

そして、少なからず……

 

………椎名がいずれ迎えることとなる大いなる運命の物語は着実に近づいていた。

 

 

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉

椎名「本日のハイライトカードは【インプモン】!!」

椎名「インプモンは紫の成長期スピリット!!召喚時効果で強力な効果を持つベルゼブモンを手札に引き込めるよっ!!」


******


〈次回予告!!〉

アイランドリーグも大詰め、赤羽司と芽座椎名。両名が名誉ある決勝の舞台で激突する。その最中、司は椎名に本気の力で戦えと強く言い放ち………次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ、「宿命の対決、そして」……今、バトスピが進化を超える!!


******

最後までお読みくださり、ありがとうございました!!

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