バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

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第72話「その名はクリムゾンモード!!真なる深い紅!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーマゲモンの巨大な大顎によって、司の最後のライフが粉々に噛み砕かれる。司はあまりのダメージの前に力尽き、膝から崩れ落ちるように倒れてしまう。

 

 

「司……司ッ!!!」

 

 

その場にいた椎名は思わず司の方へと走り出した。観客席にいた真夏、雅治、夜宵、六月も高さ5メートル程の壁がある観客席から会場まで飛び降りる。

 

その中でも特に夜宵は心配そうな表情をしており………

 

 

「司ちゃんッ!!司ちゃんッ!!」

 

 

夜宵は司の頭を抱えて声をかける。微かだが意識がある司は、夜宵の方は見向きもせず、何もできず佇んでいた椎名の方へとゆっくり顔を向け………

 

 

「……め、めざし………俺に負けさせたんだ………必ず勝ちやがれ……じゃねぇと俺はお前を絶対許さねぇぇっ!!」

「ッ!!」

 

 

その声色は弱々しくも猛々しく、

 

司はその言葉を最後に気を失った。

 

彼にとって、どれだけ辛かっただろうか。どれだけバトラーとして恥をかいただろうか。ライバルとの劣等感に悩み、悪人に揺さぶりをかけられ、それを耐えたかと思ったら、今度はそのライバルに負けろとでも言われたかのような命令。

 

………辛かった。

 

そんな司の気持ちを僅かながらでも理解したのか、椎名は本当の意味で決心を固め………

 

 

「……じっちゃん……みんな連れて逃げてよ………私は流異君を助ける」

「ッ!?何言っとるんじゃ椎名ッ!!暗利の…Dr.Aの狙いはお前なんじゃよッ!?」

「………知ってる……銃魔から大体聞いたから……」

「ッ!?……銃魔!?あやつか!!」

 

 

六月はその椎名の言葉で、銃魔が暗利、Dr.Aと密接な関わりがあることを悟った。そして同時に、銃魔が【あの時】の少年であったことも理解してしまう。

 

 

「………じっちゃん。私さ、自分が【鬼】だとか、Dr.Aに造られたとか、………どうでもいい」

「ッ!?」

「私は私だ………まぁ、後で昔話はしてほしいかな………」

「し、椎名………」

 

 

銃魔との激しい戦いの中で、全てをしってしまった椎名。

 

普通は、どれだけ苦しいことだろうか。自分が本物の鬼の力があると知り、悪の科学者によって造られたと知り………散々なはずだ。

 

だが、六月の育て方もあったのだろうか、椎名はその点について全く苦にはしていなかった。いや、少なくとも若干はあるかもしれない。が、直感的にわかる。これまでの六月が自分に注いだ愛情は嘘ではない。それは確かだ。

 

椎名はそれを知ってるからこそ、前を向いて戦える。

 

 

「………ヌフフフフ、六月ぅ!!どちらにせよお前が邪魔をするならこのスピリットアイランドの人々は実体化したスピリットに抹殺されることになるッ!!そして逃しもしない!!……バトルはエニーズにやらせろッ!!」

「ッ!!……暗利……!!」

「もちろん君達もだ!!エニーズのバトルの邪魔はさせないッ!!」

 

 

Dr.Aが反対側の場から話しかけてくる。そう、今のこの状況は彼の言う通りにするしかない。彼が固唾を飲んで見守れと言ったらそれしかできないのだ。

 

何せ、2万人を超える人々の命がかかっているのだから………

 

 

「あなたがDr.Aか、顔の火傷が酷いね……」

「ヌフフフフ、エニーズよ、実の父に向かってそのような口を聞くかねぇ……」

「なぁにが実の父だッ!!私にお父さんもお母さんもいないよ!!いるのはじっちゃんやハウスの兄弟、シスター、あと、暖かい仲間達だッ!!」

 

 

初めてDr.Aと交わした言葉。Dr.Aは椎名に火傷の事を罵られるも、彼女と言葉を交えられた事が嬉しかったのか、怒ることはせず、寧ろ笑ってみせた。

 

椎名も椎名で巨悪を前に口角を上げながら強気にそう言い放った。

 

 

「椎名ッ!!」

「あんた、戦えるんか………!?」

「大丈夫だよ、今の私!!結構無敵だから!!」

 

 

心配する仲間たちを前に、椎名は大きく笑ってみせた。いつものように。今まではこの顔だけで安心できた。今までの椎名だったら………

 

しかし、彼女の素性を知った今では、もはやそれは気丈に振る舞っているようにしか見えない。

 

そして椎名は司の代わりにバトル場へと立ち、Dr.Aの言いなりに洗脳されてしまった流異と対峙する。

 

 

「やぁ!!流異君ッ!!よかったね!!私とバトルできるじゃん!!」

「………」

 

 

流異という少年は、椎名と同じカッコいいカードバトラーになるのが夢だった。そんな彼が椎名とバトルできるとなれば、普通は諸手を上げて大いに喜ぶはずだ。

 

しかし、Dr.Aに洗脳され、本当の意識のない今、そんな感情が沸いてで来るわけもなく………

 

 

「あらあら、これは酷い教育を受けたみたいだね………でも大丈夫!!私が必ず元に戻すッ!!」

「……芽座椎名………赤羽司同様、排除する」

 

 

2人は勢いよくBパッドを展開、バトルの準備を行う。

 

……そして、真夏達や六月が固唾を飲んで見届ける中、スピリットアイランド編ラストとなるバトルが今、幕を開ける。

 

 

「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

バトルが始まる。

 

先行は椎名。

 

 

[ターン1]椎名

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップッ!!ネクサスカード、ディアークを配置して、ターンエンドッ!!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨1

トラッシュ0⇨3

【ディアーク】LV1

 

バースト【無】

 

 

椎名が初手で行ったことはネクサスの配置。腰に手のひらサイズの機械を装着し、そのターンをエンドとした。次は洗脳されている流異のターン。

 

 

[ターン02]流異

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップッ!!クラモンを2体召喚!!」

手札5⇨3

リザーブ5⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

流異が召喚したのはクラゲのような幼年期スピリット、クラモン。その効果はデジタルスピリットだけでなく、バトルスピリッツというゲームにおいても異端な効果を有しており……

 

 

「椎名気をつけぇ!!そいつはデッキに何枚でも入るやばい奴や!!」

「!!」

 

 

真夏が椎名にアドバイスするようにそう強く言った。椎名が流異の使用するクラモンやアーマゲモンの効果を知らない。銃魔からは彼らが破壊されると流異にダメージが入ることしか知らされていないからだ。

 

椎名は真夏の助言を耳に受け、バトルに改めて臨む。

 

 

「アタックステップッ!!クラモン1体でアタックッ!!」

 

「ライフで受けるッ!!……ぐうっ!!」

ライフ5⇨4

 

 

クラモン1体が宙をふよふよと飛び交い、椎名のライフへと体当たりする。意外にも力はあったのか、椎名のライフはそれだけで1つ破壊されてしまう。

 

 

「……ターンエンド」

【クラモン】LV1(1)BP1000(回復)

【クラモン】LV1(1)BP1000(疲労)

 

バースト【無】

 

 

クラモンの効果を考慮してか、1体をブロッカーに残し、ターンを終えた流異。

 

次は椎名のターンだ。

 

 

[ターン03]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨6

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップッ!!バーストをセット!!さらにネクサスカード、デジヴァイスを配置し、真紅の魔竜、その最初の姿!!ギルモンをLV2で召喚ッ!!召喚時効果発揮!!」

手札5⇨2

リザーブ6⇨0

トラッシュ0⇨4

オープンカード↓

【ライドラモン】×

【マグナモン】×

【ストロングドロー】×

【グラウモン】◯

【レッドカード】×

 

 

バーストを伏せると同時に、椎名は新たなサポートアイテム、デジヴァイスを腰に装着し、真紅の魔竜、その成長期の姿、ギルモンを召喚。そしてその召喚時効果も成功、椎名は新たにグラウモンのカードを手札へと加える。

 

 

「さらにディーアークの効果でドローし、アタックステップッ!!その開始時にデジヴァイスの効果で自身を疲労させ、ドロー!!さらにギルモンの【進化:赤】発揮!!来いッ!!グラウモンッ!!」

手札2⇨5

【デジヴァイス】(回復⇨疲労)

【グラウモン】LV2(2)BP6000

 

 

ギルモンが0と1のデジタルコードに巻き付けられる。ギルモンはその中で姿を大きく進化させる。そのコードはギルモンの進化に合わせ、膨らみ、やがて破裂。中から新たに真紅の魔竜、成熟期のスピリット、グラウモンが現れた。

 

 

「アタックステップ続行ッ!!行け!!グラウモンッ!!アタック時効果で回復状態のクラモンを1体破壊!!魔炎のエキゾーストフレイムッ!!」

 

 

グラウモンの口内から放たれる一直線の炎。それは一瞬にして流異のクラモンを1体焼失させた。

 

だが、ここからがクラモンの本領発揮であって………

 

 

「ぐっ!!……クラモンの破壊時、カードを1枚オープンし、それがクラモンなら召喚できる……カード、オープン!」

オープンカード↓

【クラモン】◯

 

「………!!」

 

「効果は成功、クラモンを再召喚する!!」

リザーブ1⇨0

【クラモン】LV1(1)BP1000

 

 

炎の後の爆煙からひょっこりと現れたのは破壊したばかりのクラモン。しかし、それは破壊した方ではなく、そのコピー体。

 

椎名はこの時点でクラモンがどれだけ厄介な存在か理解した。司が苦しむわけだ。デッキの大半がクラモンなら確かに厄介極まりない。

 

 

「アタックはライフで受ける」

ライフ5⇨4

 

 

グラウモンの膝にある鋭利な外骨格が流異のライフを1つ引き裂く。クラモンで受けても正解ではあったが、ここはやはりコアの増加を優先したか、

 

 

「………ターンエンド」

【グラウモン】LV2(2)BP6000(疲労)

 

【デジヴァイス】LV1(疲労)

【ディーアーク】LV1

 

バースト【有】

 

 

クラモンのその異端な効果を頭の中で整理しながらもそのターンのエンドを宣言した椎名。次は流異のターン。このターンからが勝負か………

 

 

[ターン04]流異

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨5

トラッシュ3⇨0

【クラモン】(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ、僕は追加でクラモンを2体召喚」

手札4⇨2

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨2

 

 

流異はさらにクラモンを増やす。これで計4体のクラモンがこの場に揃った。

 

 

「アタックステップッ!!クラモン1体目でアタックッ!」

 

「ッ!!……ライフだ!!……ぐわっ!!」

ライフ4⇨3

 

 

クラモンの体当たりがまた椎名のライフを1つ破壊する。このターン、このようなアタックが全て、可能な限り通って仕舞えば、椎名の負けだ。

 

……だが、

 

 

「負けて、負ケテタマルカかぁぁぁぁ!!バースト発動!!マリンエンジェモン!!」

「……!!」

 

 

その純粋な性格を表していた瞳は真紅に染まり、牙が生え、アホ毛が本物のツノと化す。椎名はまた鬼化してしまう。だが、今回は最初から理性を保っている。

 

その証拠なのか、ほとんどしっかりとしたイントネーションで言葉を話すようになっている。

 

 

「効果ニヨり召喚し、このターン、私のライフはコスト9以下のスピリットノアタックでは減らないッ!!……サラにディーアークの効果でドロー!!」

手札5⇨6

リザーブ1⇨0

【マリンエンジェモン】LV1(1)BP3000

 

 

椎名のバーストが勢い良く反転すると共に現れたのは青属性の究極体スピリット、ピンクの体色を持つマリンエンジェモン。

 

マリンエンジェモンは登場するなり、小さな口から美しい歌声を奏で、椎名のライフの周りに水のバリアを展開させる。

 

これで少なくともこのターンは椎名のライフがクラモンによって破壊されることはない。

 

 

「……ターンエンド」

【クラモン】LV1(1)BP1000(回復)

【クラモン】LV1(1)BP1000(回復)

【クラモン】LV1(1)BP1000(回復)

【クラモン】LV1(1)BP1000(疲労)

 

バースト【無】

 

 

「ま、また鬼に………」

「椎名………」

 

 

仲間達は椎名のこの姿にどれだけ驚き、同情した事だろうか。それを使わざるを得ない相手ではあるが、それでもやはり友が命懸けで何かをしようとしているのを濛々と見ることしかできないのが、嫌で仕方なかった。

 

……特に長嶺雅治は……

 

 

「ほお、さっきより鬼化を使いこなしている………思った以上に早いですね〜〜〜………ヌフフフフ!!」

 

 

椎名の鬼化を見て、その覚醒の時が思った以上に早いことを知り、喜びを隠せないDr.A。

 

そして次はそんな椎名のターン。鬼化の影響なのか、デッキが真紅に光輝き始める。

 

 

[ターン05]椎名〈鬼〉

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札6⇨7

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨5

トラッシュ4⇨0

【グラウモン】(疲労⇨回復)

【デジヴァイス】(疲労⇨回復)

 

 

椎名がこのターンのドローステップでドローしたカードは他でもない、あの地獄の魔竜だ。

 

しかし、まだ出すべきではないと見たか、椎名は一旦そのカードを手札へとしまい………

 

 

「メインステップ!!ディーアークのLVを2にアップさせ、効果!!【カードスラッシュ】を発揮!!手札のブイモン、ワームモン、エクスブイモン、スティングモンのカードを破棄して、4体のクラモンを破壊ッ!!」

リザーブ5⇨3

手札7⇨3

破棄カード↓

【ブイモン】

【ワームモン】

【エクスブイモン】

【スティングモン】

 

「………!!」

 

 

椎名の背後から青と緑の光弾が放たれる。それは一直線にクラモンの方へと伸びていき、それらに直撃。4体のクラモンは全て爆発し、破壊された。

 

だが、それは同時にその効果を4度使えるということでもあって………

 

 

「ぐっ、ぐぅ!!………クラモンの破壊時効果、カードを4枚オープン」

オープンカード↓

【クラモン】◯

【クラモン】◯

【クラモン】◯

【アーマゲモン】◯

 

 

効果はほとんど成功。アーマゲモンのカードのみ、手札へと新たに加わるが、引き続き3体のクラモンがこの場へと飛び出してきた。

 

 

「無駄だよ、クラモンの前ではね………」

 

「だったらデッキが切れるまで破壊してやるだけだッ!!今度はパイルドラモンのカードを破棄、もう一度クラモンを破壊ッ!!……デスペラードブラスター!!」

手札3⇨2

破棄カード↓

【パイルドラモン】

 

 

椎名はまたディーアークの【カードスラッシュ】の効果で、今度はパイルドラモンのカードを破棄。パイルドラモンが現れ、腰に備え付けられた機関銃を連射。クラモンを1体のみ撃ち抜いてみせた。

 

 

「ッ!!……クラモンの効果」

オープンカード↓

【クラモン】◯

 

 

またもや効果が発揮。流異の場には3体のクラモンが再び並んだ。

 

擬似的に死ぬことがほとんどないクラモン。

 

しかし、それを目の前にしてもまだ椎名挫けず、それでいて全く勢いを殺さず………

 

 

「ギルモンを再召喚!!カードをオープンッ!!」

手札2⇨1

リザーブ3⇨0

トラッシュ0⇨2

オープンカード↓

【メガログラウモン】◯

【ディーアーク】×

【デジヴァイス】×

【ディーアーク】×

【マリンエンジェモン】×

 

 

【進化】の効果で手札に戻っていたギルモンが今一度椎名の場へと現れる。そしてその召喚時効果も成功、椎名は新たにメガログラウモンのカードを加えた。

 

 

「さらにディーアークの効果でドロー、ディーアークのLVをダウン、グラウモンのコアを追加し、ブレイヴカード、ズバモンを召喚ッ!!グラウモンと合体!!」

手札1⇨2

【ディーアーク】(2⇨1)LV2⇨1

【グラウモン】(2⇨3)

トラッシュ2⇨3

【グラウモン+ズバモン】LV2(3)BP9000

 

 

椎名は黄金の鎧纏うデジタルブレイヴ、ズバモンを召喚。グラウモンと合体させる。グラウモンはそのズバモンと混ざり合い、その身に黄金の鎧を纏った。

 

 

「バーストをセットして、アタックステップッ!!その開始時にデジヴァイスを疲労させて1枚ドロー!!……グラウモンでアタックッ!!効果でクラモンを1体破壊!!」

手札2⇨1⇨2

【デジヴァイス】(回復⇨疲労)

 

 

アタックを仕掛ける椎名。グラウモンが動き出し、再びエキゾーストフレイムで流異の場のクラモンを1体破壊した。

 

 

「……ッ!!…クラモンの破壊時」

オープンカード↓

【クラモン】◯

 

 

しかし、クラモンの破壊時効果は成功。クラモンの数は3体でキープされる。

 

 

「まだだ!!【超進化:赤】発揮!!真紅の魔竜完全体の姿、メガログラウモンを召喚!!合体されているズバモンの効果で分離せずにそのままメガログラウモンと合体!!」

【メガログラウモン+ズバモン】LV2(3)BP12000

 

 

グラウモンが0と1のデジタルコードに巻き付けられ進化する。新たに現れるのはメガログラウモン。ズバモンとの合体により、その上半身の武装は黄金に光輝いている。

 

 

「アタックステップは継続!!メガログラウモンでアタック!!効果で2枚ドローする、そしてシンボル1つのスピリット1体を破壊!!クラモンを破壊する……原子の咆哮……アトミックブラスター!!」

手札2⇨4

 

 

肩部の武装から凝縮されたエネルギーの一閃を放つメガログラウモン。それは一瞬にして流異のクラモン1体を消し炭にした。

 

 

「………クラモンの効果」

オープンカード↓

【クラモン】◯

 

 

だが、またクラモンは復活する。これだけ破壊しても失敗したのは1回だけ、合計で3体のクラモンが流異の場で浮遊している。

 

 

「アタックは継続中!!メガログラウモンッ!!」

 

 

走り出すメガログラウモン。目指すは流異のライフだが、そこにたどり着く前に、流異は手札から2枚のカードを引き抜く。それはまさしく絶望の象徴とも取れるカードであって………

 

 

「フラッシュ!!【アーマゲモン】の効果を発揮!!……そしてさらにもう1枚!!」

「ッ!?何!?」

 

 

一気に発揮される2枚のアーマゲモン。アーマゲモンの効果自体を知らない椎名にとっては驚きの一言であって、

 

 

「トラッシュにあるクラモンを8枚全て手札に戻し、コストをそれぞれマイナス12!!0コストで召喚する!!……魔界の竜神よ!!今こそ世界の理を覆せ!!アーマゲモンッ!!」

リザーブ2⇨0

【アーマゲモン】LV1(1)BP13000

【アーマゲモン】LV1(1)BP13000

 

 

次から次へと増殖と分裂を繰り返していくクラモン。それらは結集し、巨大な姿へと変貌を遂げる。

 

新たに現れたのは司を倒した黒い竜神、アーマゲモン。蜘蛛のような体格、頭部が竜のような見た目も存在も異端なスピリット。それが2体だ。それらが上がる大きな咆哮はまるでこの世の終わりを告げるかのよう………

 

 

「う、嘘やろ!?」

「……一気に……2体!?……椎名……」

 

 

仲間達は心配そうにそう呟く。

 

 

「……ア、アーマゲモン……こうして間近で見ると……どこかで一度会ったような……」

 

 

椎名はそんなことを思っていた。あのアーマゲモン。昔、一度だけ会ったような、そんな感じ。

 

だが、それは椎名の物語が始まるきっかけになったエピソードであって、椎名の物語ではない。それは椎名ではなく、一木花火のエピソードだ。

 

 

「何をブツブツと……アーマゲモンの効果!!召喚時とアタック時、シンボル2つ以上のスピリット1体を破壊!!」

「ッ!?」

「メガログラウモンを破壊しろ!!……漆黒の豪雨……ブラックレイン!!」

 

 

しのごのと考えている時間はなさそうだ。

 

アーマゲモンの背部から黒い塊が上空へ放たれ、それが破裂しミサイルを次から次へと雨のように降らしていく。メガログラウモンがそれを避けられるわけもなく、ほぼ全弾直撃、爆発してしまった。

 

その爆発に乗じてズバモンがメガログラウモンから抜け出し脱出した。

 

 

「ぐっ!!……でも、召喚時のバーストはもらった!!」

「ッ!?」

「バースト発動!!【メギドラモン】!!効果により…………クラモンを3体破壊!!この時!!相手は破壊時効果を使えない!!……地獄の咆哮……ヘルハウリング!!」

 

 

椎名のバーストカードが勢いよく反転する。そしてそれと同時に地中から大きな咆哮がこだまし、流異の場のクラモン達を振動だけで破裂させた。

 

しかもこの効果により破壊時効果は使用できないため、クラモンが増えることはないのだ。

 

 

「そしてその後召喚するッ!!真紅を超えた地獄の魔竜!!閻魔の叫びと共に今翔け上がれ!!……究極体!!メギドラモンをLV2で召喚!!不足コストはズバモンのコアから全て確保!!」

【ズバモン】(3⇨0)消滅

【メギドラモン】LV2(3)BP11000

 

 

消滅してしまうズバモン。しかし、地中から地響きと共に真紅を超えた地獄の魔竜が姿を見せる。その名はメギドラモン。椎名が2度目のオーバーエヴォリューションで得た新たな切り札。

 

 

「し、椎名の奴、あんなカード持っとったか?」

「………いや、無いと思う……」

「多分デッキを進化させたんじゃ……鬼の力はオーバーエヴォリューションを繰り返せる……」

 

 

椎名が出したスピリットに違和感を感じる真夏達、それを六月が説明する。しかし、その声色に力は入っていない。メギドラモンのカードは椎名の鬼化が繰り返されてきた何よりの証拠であると言えるからだ。

 

 

「………ターンエンド」

【ギルモン】LV1(1)BP3000(回復)

【マリンエンジェモン】LV1(1)BP3000(回復)

【メギドラモン】LV2(3)BP11000(回復)

 

【ディーアーク】LV1

【デジヴァイス】LV1

 

バースト【無】

 

 

結果的にクラモンの一時的な破壊はできたものの、2体の強力なアーマゲモンを残してしまったこのターン、いくらメギドラモンと言えどもこの盤面は突破できない。

 

どちらにせよアーマゲモンを破壊すれば流異は即死しかねないダメージが入るため、破壊はできないのだが………

 

次はそんなアーマゲモンを2体召喚した流異のターン。

 

 

[ターン06]流異

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札9⇨10

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨6

トラッシュ2⇨0

 

 

「メインステップ、僕はクラモンを3体連続召喚!!」

手札10⇨7

リザーブ6⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

流異の場にクラモンが復活する。それも一気に3体。

 

 

「アタックステップ………アーマゲモン1体目でアタック!!」

 

 

蜘蛛のような脚を巧みに生かし、走り出す。目指すは当然椎名のライフ。クラモンのアタックは効果の都合上、ライフで受けるしか無い。逆に言って仕舞えばこのアーマゲモンのアタックはスピリットでブロックするしかない。

 

 

「………頼む、マリンエンジェモン」

 

 

マリンエンジェモンは果敢にアーマゲモンへと立ち向かう。しかし、敵うはずがなく、あっさりと踏み潰され、破壊されてしまう。

 

 

「次、2体目でアタック………」

「ッ!!………メギドラモンッ!!」

 

 

奇声のような轟音のような、はたまたどちらでもないような大きな咆哮を上げながら2体目のアーマゲモンが走り出した。

 

それに立ち向かうメギドラモン。口内から獄炎の炎を放ち、迎撃するが、サイズに差がありすぎるのか、全く通じない。

 

次は接近戦で挑むメギドラモン。鋭い鉤爪を立ててアーマゲモンに飛びかかるが、アーマゲモンは頭部だけでそれを弾き飛ばしてしまう。

 

そして地面に倒れたメギドラモンに向けてアーマゲモンは口内から凝縮されたエネルギー弾を放つ。メギドラモンは直撃し、破壊され、大爆発を起こした。

 

 

「くっ!!メギドラモンッ!!」

「次だ……1体目のクラモンでアタック……」

「くそっ!!次はギルモンでブロックだ!!」

 

 

クラモンのアタックが始まる。椎名はこのアタックを回避すべく成長期スピリットのギルモンでブロックする。その理由は手札にあり………

 

 

「フラッシュ!!フレイドラモンの【アーマー進化】発揮!!対象はギルモン!!……1コスト支払い、召喚する!!」

リザーブ4⇨1

トラッシュ3⇨4

【フレイドラモン】LV2(3)BP9000

 

 

ギルモンとクラモンが交戦する直後、ギルモンの体がデジタルレベルに分解される。そしてそれは椎名の手札へと帰還し、椎名の手札から新たなスピリット、炎燃ゆるアーマー体スピリット、フレイドラモンが召喚された。

 

ギルモンのフラッシュ中のバトルエスケープにより、アタックしていたクラモンのアタックは強制的に終了した。これで1体分の効果発揮は阻止されたことになる。

 

 

「フレイドラモンの召喚時!!アタックしていないクラモン1体を破壊!!……爆炎の拳……ナックルファイアァァァア!!」

手札4⇨5

 

 

登場するなり、放たれるフレイドラモンの熱き炎の拳。それはアタックしていないクラモン1体を焼き尽くした。

 

 

「……クラモンの効果………」

オープンカード↓

【クラモン】◯

 

 

しかし、また破壊時で復活するクラモン。結果的に総数は変わらない。

 

 

「2体目でアタック」

 

「ぐっ、それはライフだ………うわぁっ!!」

ライフ3⇨2

 

 

2体目のクラモンの体当たりが炸裂し、また椎名のライフを砕いた。

 

 

「………ターンエンド」

【クラモン】LV1(1)BP1000(疲労)

【クラモン】LV1(1)BP1000(疲労)

【クラモン】LV1(1)BP1000(回復)

【アーマゲモン】LV1(1)BP13000(疲労)

【アーマゲモン】LV1(1)BP13000(疲労)

 

バースト【無】

 

 

ここではクラモン1体をブロッカーとして残した方が得策とみたか、洗脳されて意識のない流異はそのターンをエンドとした。

 

次は椎名のターン。すでにほぼ満身創痍となった盤面。フレイドラモンだけではどうしようもない状況。しかし、椎名は依然として諦めてはいなくて………

 

 

「ハァッ、ハァッ、……イ、今がチャンスだ、アーマゲモンが疲労した……今が……」

 

 

[ターン07]椎名〈鬼〉

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨7

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップッ!!バーストをセット!!……そして行くぞッ!!【煌臨】発揮!!対象はフレイドラモンッ!!」

手札6⇨4

リザーブ7s⇨6

トラッシュ0⇨1s

 

 

今こそ真打登場。

 

そう言わんばかりに椎名は煌臨の宣言を行う。

 

フレイドラモンが赤い光に包まれ真なる聖騎士に姿を変え行く………

 

 

「………来いッ!!デュークモンッ!!」

【デュークモン】LV2(3)BP14000

 

 

新たに現れたのは伝説のロイヤルナイツの1体、真紅の聖騎士の名を持つ究極体のデジタルスピリット、デュークモン。

 

 

「ディーアークの効果でドロー!!」

手札4⇨5

 

「……ヌフフフフ……デュークモン……久しいね〜〜〜」

 

 

デュークモンの姿を見て、Dr.Aはまた不気味に、そして不敵に笑う。過去にデュークモンのカードと何かがあったのだろうか。

 

 

「アタックステップだッ!!行くぞデュークモン!!」

 

 

アタックステップへと移行し、デュークモンでアタックを仕掛ける椎名。そしてこの瞬間にデュークモンには発揮できる効果があり………

 

 

「アタック時効果でシンボル2つ以下のスピリット1体を破壊!!回復状態のクラモンを1体破壊する!!聖槍の一撃!!ロイヤルセェェバァァァア!!」

 

 

デュークモンの槍から放たれる聖なる一撃。それは一瞬にして流異の唯一のブロッカーであったクラモン1体を貫いた。

 

そしてこれもまた破壊時の効果を遮断する力がある。そのため、クラモンが復活することはない。

 

 

「さらにもう1つの効果!!トラッシュにある【メギドラモン】を手札に戻し、ターンに1回だけ回復する!!……ネクスト・イストリア!!」

手札5⇨6

【デュークモン】(疲労⇨回復)

 

 

一瞬だけ真紅の光を発し、回復状態となるデュークモン。これでこのターン、2度目のアタック権利を得た。

 

しかし、勢いが良かったのはそこまで………

 

本来の意識がない流異はこれを止めるべく、手札からさらにカードを引き抜いた。それは誰もが驚愕する一手であって………

 

 

「フラッシュ!!3枚目のアーマゲモンの効果を発揮!!」

「何!?3枚目!?」

 

「トラッシュにある4枚のクラモンを回収してコスト0で召喚!!そのLVは2!!」

手札7⇨11

【クラモン】(1⇨0)消滅

【クラモン】(1⇨0)消滅

【アーマゲモン】LV2(3)BP16000

 

 

再び無数のクラモンが密集していく。それは大きな力へと昇華する。

 

新たに現れたのは3体目のアーマゲモン。3体目と呼応するように咆哮を上げる1、2体目のアーマゲモン。その様子はまるで今すぐに世界を滅ぼさんとしているかのよう………

 

 

「くっ!!相手の効果によって手札が増えた時、バースト発動!!グリードサンダー!!手札を全て破棄させ、新たに2枚ドローさせる!!」

 

「………」

手札11⇨0⇨2

破棄カード↓

【クラモン】

【クラモン】

【クラモン】

【クラモン】

【クラモン】

【クラモン】

【クラモン】

【クラモン】

【クラモン】

【クラモン】

【クラモン】

 

 

椎名のバーストが反転する。

 

青い光に包まれ、流異の手札は全て破棄され、その後のドローを含めてもその総数は大幅に減少した。

 

だが、その効果の流れが終わった直後だ。3体目のアーマゲモンが動き出し…………

 

 

「ッ!?」

 

 

3体目のアーマゲモンは身体中から触手を伸ばし、プレイヤーである流異を捕らえる。洗脳されていて意識がない流異は何も言わずに捕まり、3体目のアーマゲモンの中に取り込まれた。

 

 

「ッ!?……流異ッ!!流異ぃぃぃい!!!」

 

 

流異の父親である宗二は流異の名を呼ぶ。アーマゲモンに返せと言わんばかりに。しかし、それだけで当然流異が出てくるわけがなく………

 

これは通常のバトル。アーマゲモンは実体化はしていない。しかし、確かにそれは流異の体を触り、自身の体内へと取り入れた。

 

いったい何が起こっているというのか………

 

 

「ヌフフフフ、進化の力がとうとう暴走し始めたぁ!!これだぁ!!これも楽しみにしてたんですよね〜〜!!」

 

 

これを見たDr.Aは急に無邪気な喜びに満ちた表情を見せる。

 

 

「暗利ぃい!!お前何か知っとるのかぁ!!」

「ヌフフフフ、アーマゲモンは流異君を取り込んで自分から進化を超えようとしている………このまま放っておけば、間違いなくアーマゲモン達は世界を破壊し尽くすでしょう!!」

「ッ!!!」

 

 

アーマゲモンは流異の進化の力を使い、世界を滅ぼそうとしている。言うなれば、【進化し過ぎた】と言えば分かりやすいか……Dr.Aはこうなることを知っていたのだろうか……そのことを説明しても未だに笑みを浮かべている。

 

………止める手段はただ1つ。ここでアーマゲモンを倒すしかない。だが、そうすれば流異の命は………

 

 

「うぉぉお!!流異君を返せぇぇえ!!!」

 

 

椎名の叫びと共に槍を構え、突進するデュークモン。スピードで翻弄しようするも、アーマゲモンの口内から放たれるエネルギー弾で簡単には近づけない。

 

しかし、それでもなんとか一瞬の隙を見て、デュークモンはアーマゲモンの眼前まで接近する。そのまま右手の槍をアーマゲモンの鼻先に突き刺す。だが、それだけでは流石に倒れないか、アーマゲモンはデュークモンごと振り回す。

 

デュークモンはその状態のまま、なんとか姿勢を保ち、盾から光のビームをアーマゲモンの開いた口内へと放つ。

 

これで決まったかと思いきや………

 

……それは暗い腹の中を僅かながらに光らせたのみにとどまり、アーマゲモン本体には全く通じず………

 

……そして仕返しと言わんばかりにアーマゲモンは口内から凝縮されたエネルギー弾を改めてデュークモンに至近距離で直撃させる。

 

デュークモンはあまりの威力に、吹き飛ばされる………

 

 

「デュークモンッ!!……うわぁっ!!!」

 

 

凄まじい爆風に、もっとも近くにいた椎名は巻き込まれる。

 

爆煙と爆風が完全に過ぎ去る時、仲間達の目の前にあったのは顔から倒れる椎名と、片足をつきながら、機能停止してしまったデュークモン。その白い鎧は亀裂が生じ、マントもボロボロである。

 

 

「………椎名ぁぁあ!!」

 

 

そう叫んだのは親友、真夏。

 

 

「椎名………くっ!!暗利!!もうやめろこんなバトル!!即刻中止にしろ!!」

「嫌だよ六月。私は今日この日を楽しみに待ち望んでいたんだ。………エニーズ、立て!!立つんだ!!今こそ覚醒しろぉ!!」

 

 

そう叫ぶDr.A。しかし、椎名はうんともすんとも言わず、立ち上がらない。

 

Dr.Aはその様子を見て、苛立ちを覚え………

 

 

「くっ!!……何故だぁ!!お前も所詮は失敗作だったとでも言うのですか!?」

「死んではならん!!椎名ぁ!!気を強く持てぇ!!」

 

 

倒れる椎名に叫ぶ仲間達。それでも椎名は立ち上がらない。

 

六月は育ての親としてどれだけ心が苦しかっただろうか。仲間達は自分の力不足さにどれだけ嫌気がさしただろうか。

 

その叫びにはその一言では表しきれない内容がふんだんに含まれており…………

 

 

 

******

 

 

「ここは………どこ?」

 

 

 

気を失った椎名は知らずのうちに不思議な空間にいた。そこは肌冷たくて、温かいものが閉ざされた世界だった。

 

ここは椎名の心の中、気を失った事で来てしまったのか………

 

 

「あ、そうか………負けるんだ……私………流異君も救えずに………何もできず、負ける………」

 

 

椎名は静かにそう呟いた。

 

負ける。デュークモンは破壊され、司との約束も守れず、流異を助けることも叶わず………敗北する。

 

もはや決定事項だ。

 

しかし、その時、椎名の目の前に何かが現れる。

 

それはとても紅くて、温かいもの………それは耳覚えのあるガラガラで無邪気な声色で椎名の名を呼ぶ。

 

 

「し〜〜な〜〜!!」

「?」

 

 

現れたのはギルモン。真紅の魔竜、成長期の姿だ。

 

……最初

 

最初に真紅の魔竜達やデュークモンと出会った時も、こうやって椎名の心の中にギルモンは現れた。それがいったいどう関係してくるのかは定かではないが、少なくとも今もこうやってギルモンは確かに椎名の目の前に存在している。

 

 

「ギルモン?」

「そうそう!!ギルモン〜〜!!久しぶり〜〜〜!!」

 

 

言葉に熱が入らない椎名。逆に熱が強く篭るギルモン。温度差が激しい会話である。

 

改めてギルモンが椎名の目の前に現れた理由はただ1つ。

 

 

「椎名!!諦めたらダメだッ!!あの子を助けなきゃ!!」

「無理だよ………鬼の力でもアーマゲモンには勝てない………」

「大丈夫!!前にも言ったでしょ!!僕達が君を守る!!君だけで戦うわけじゃない!!僕達、真紅の魔竜とデュークモンを信じて!!」

「真紅の魔竜とデュークモンを?」

「そう!!今こそ僕達の力をデュークモンに!!」

 

 

ギルモンがそう叫んだ途端。椎名の冷たい精神世界の温度が急上昇、そして空間に亀裂が生じて崩壊していく。それと同時に椎名は心の中の熱を徐々に徐々にと取り戻していき………

 

 

「そうだ!!……私はいつだって、どんな時だって………」

 

 

 

 

 

 

そして新たな姿で目覚める………

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

 

「最後の最後の最後までッ!!………諦めないのが!!私のバトルスピリッツだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!」

「「「「!!」」」」

「おぉ!!エニーズッ!!」

 

 

息を吹き返し、再び立ち上がる椎名。

 

しかし、その様子は今までとは一風変わっており、鬼の姿ではあるものの、右頬にギルモンやデュークモンに見られる独特のマークが刻まれている。

 

それはまさにDr.Aが言う【覚醒】を意味しており………

 

 

「うぉぉお!!」

 

 

椎名は力を入れる。すると、手札にあった【メギドラモン】のカードの絵柄やテキストに亀裂が生じ、剥がれ落ちていく………

 

……カードが、書き換わっていくのだ。椎名の持つ鬼の力。繰り返す【オーバーエヴォリューション】によって………

 

……それは世界をも変換させるほどの力だ。

 

そして椎名は書き換わったそれを使用する。ギルモンを信じて、デュークモンを信じて………

 

流異を救うために…………

 

 

「フラッシュ!!【チェンジ】発揮!!対象はデュークモンッ!!」

リザーブ6⇨1

トラッシュ1s⇨6s

 

 

「ッ!!椎名が【チェンジ】!?」

 

 

椎名が新たに生んだのは、この世界においては本来、仮面スピリットという特別なスピリットのみが使える【チェンジ】の効果。

 

そしてその【チェンジ】の効果なのか、椎名の背後から真紅のエネルギー体で固められた龍が出現する。それはうねるように上空を舞い、バトル中でない2体のアーマゲモンを貫き、焼き尽くしていく。

 

そしてアーマゲモンが破壊されているにもかかわらず、不思議と流異にはダメージがなく………

 

 

「ッ!!……なるほど〜〜進化の力で進化の力を瞬時に相殺させているのか、流異君にダメージが入らないわけだ」

 

 

Dr.Aは瞬時にその理由を解き明かす。やはり椎名が今使っているカードは特別なのか、進化の力を相殺など普通では考えられない。

 

そしてこの効果発揮後は【チェンジ】の効果の通り、対象スピリットとの入れ替えだ。

 

真紅の龍はアーマゲモンを焼き尽くした直後、瀕死のデュークモンへと飛び立ち、衝突する。しかし、アーマゲモンと違い、破壊されることはなく、

 

……それは機能停止に陥っていたデュークモンに新たに力を与える。デュークモンは今一度眼光を輝かせ立ち上がる。

 

 

「聖なる騎士よ!!今こそ真なる深い紅を纏い、邪悪なる者皆照らし破れッ!!」

 

 

その口上と共に、デュークモンは炎の中で姿を変えていく。槍と盾が消失するが、その身は真紅に染まり、さらにそれ以上に赤い鎧が装着されていく。そして、背には赤いマントの代わりに純白な白い10枚の羽が生えていき………

 

 

「………デュークモンッ!!モードチェンジッ!!……クリムゾンモードッ!!」

【デュークモン クリムゾンモード】LV2(3)BP18000

 

 

その炎を解き放ち、新たに現れたのは、真紅を超えた深紅。進化を超えた聖騎士、デュークモン クリムゾンモード。

 

芽座椎名の最強にして無敵のエーススピリットの爆誕である。

 

 

「……デュークモンが進化した………」

「ヌフフフフ、ギヒヒヒヒヒイッ!!!!エニーズッ!!それだ!!その力が欲しかったのだ!!!」

 

 

デュークモンが進化した。その言葉を口にしたのは真夏だった。

 

そしてDr.Aはその進化したデュークモンの姿を見て、また不敵に笑いだす。

 

そうだ。これが見たかったのだ。このスピリットの戦闘データさえ取ることができれば、世界は進化する。自分の思いのままに………

 

この時点で自分の野望は最終段階へと移行できる。そう思っただけで笑いが止まらないのだ。

 

 

「……神剣 ブルトガングッ!!」

 

 

椎名がそう言うと、クリムゾンモードは左手に聖なる光の力を宿し、剣の形へと具現化させる。それはまさしく神の剣。

 

クリムゾンモードの姿を危険視したのか、3体目の最後のアーマゲモンは口内からエネルギー弾をそれに向けて放つ。

 

が、クリムゾンモードはその左手に持つ神剣を一度払うだけで難なくそれを引き裂いてみせる。この時点でデュークモンはもはや他のデジタルスピリットさえをも超越した存在と言える。

 

 

「………無敵剣!!インビンシブルソードッ!!!」

 

 

光速でアーマゲモンに接近するデュークモン。そして神剣ブルトガングの一閃で巨大なアーマゲモンを一瞬にして一刀両断した。

 

流石にこれには耐えられないか、アーマゲモンは激しい断末魔を上げながらデジタルの粒子となり散らばる。そこに流異も存在している。

 

完全には救われてはいない。未だにライフが残っているからだ。椎名はそれを終わらせるべく、クリムゾンモードのもう一つの効果を発揮させる。

 

それは悪運立ち込める世界を照らし破る程の驚愕の効果。

 

 

「これで終わりだッ!!クリムゾンモードのアタック時効果ッ!!バトル終了時、相手のトラッシュにあるスピリットカード3枚につき1つ、相手のライフを破壊するッ!!……………神槍 グングニルッ!!」

 

 

椎名の叫びと共に、クリムゾンモードは右手に聖なる力を溜め、それを今度は槍の形に具現化する。それはまさしく神槍。

 

 

「………今!!トラッシュには16枚のスピリットカードがあるッ!!よってライフを5つ破壊するッ!!………全てを無に帰す!!悠々と流れる時の中に沈めッ!!………神槍の一撃ッ!!……クォ・ヴァディィィス!!!!!」

 

 

クリムゾンモードはその神槍を上空へと投擲する。その神槍は暗雲をも断ち切り、辺りを照らす。そしてそこから真なる深い赤の光が降り注ぐ。

 

その光はアーマゲモンの散らしたデータを一瞬にして塵一つ残さず消し去っていく。

 

 

「Dr.A……あなたは私の夢には………邪魔だッ!!」

 

「…………………」

ライフ4⇨0

 

 

スピリットはデュークモン クリムゾンモード以外は何も残っていないこの場で、流異はただ1人、取り残され、気を失うように倒れた。

 

これにより、流異のライフはゼロ。勝者は芽座椎名だ。見事に大逆転勝利をしてみせた。場に唯一生き残ったクリムゾンモードは役目を終えた事を悟るようにゆっくりとその姿を消滅させた。

 

 

「流異ぃぃい!!!」

 

 

倒れた流異にすぐさま駆けつけたのは父親の宗二。バトル場に上がり、流異を抱き抱える。

 

あぁ、まだ10歳にも満たない子供に自分は………

 

………なんと情けない父親だろうか。

 

 

「ごめんなぁぁぁぁあ!!ごめんなぁ!!流異ぃい!!」

 

 

ただ今はその情けなさ、不毛さにこの島の最高責任者、功宗二は涙していた。

 

 

「………はは、良かった…流異君、無事みたいだ……本当に、良かった………っ!?」

「椎名!!」

 

 

椎名はバトルの終わりと共に力尽き、倒れた。それと同時に鬼化も解け、元の椎名に戻る。

 

無理もない。今日の椎名は散々バトルした挙句に命がけのバトルも2回も行った。流石に体力が尽きたのだろう。

 

そこに真夏、雅治、六月は駆け寄った。

 

………だが、油断してはならなかった。バトルの終わりと共に本当の巨悪は動き出しており………

 

 

「ヌフフフフ………データを回収っと」

 

 

Dr.Aは流異のBパッドに内蔵されていたチップを取り出した。それは彼があらかじめ仕込んでいた特別なもの。そこには当然椎名の進化したデータ。クリムゾンモードの戦闘データまで含まれている。

 

そして、それだけではなく………

 

 

「その子も連れて行くよぉ!!」

 

 

Dr.Aは自分のBパッドをかざし、誰かをデータに変換させ、連れ去ろうとする。

 

………その人物とは………

 

 

「…………え?」

 

 

………赤羽司だ。抱き抱えていた夜宵は驚いた。司の体が次から次へとデータと化して消えて行くのだ。そしてそれはやがてDr.AのBパッドへと取り込まれ………

 

 

「やだ、待って司ちゃん!!行かないでッ!!」

 

 

夜宵の有無を聞くわけもなく、司を完全に自分のBパッドに取り入れたDr.A。その表情はまた不敵な笑みで満たされている。

 

その様子を視認した六月達はDr.Aを睨みつけ………

 

 

「司っ!!」

「暗利っ!!お前最初からその小僧が狙いだったのか!!!」

「六月、お前は詰めが甘い。昔からね…………そう、昔から…………ヌフフフフ………」

「ッ!?」

 

 

そう言って、Dr.AはBパッドからワームホールを発生させ、ゆっくりとそこを通り抜けようとする。距離が僅かながらにあるため、追いかけることは叶わず…………

 

 

「これで私の計画は最終段階へと進行するッ!!さらばだッ!!」

 

 

そう、また笑いながらその中へと完全に消え去った。椎名の戦闘のデータと。データ化した赤羽司を持ち去って…………

 

 

「嫌だ、嫌だよ………司ちゃぁぁぁぁぁぁぁあん!!!」

 

 

その一瞬すぎる所業に誰も追いつけず、ただ司を失った夜宵の悲痛な叫びだけがこのスピリットアイランドの会場にこだました。

 

やがて、界放市の警視、一木聖子が民衆を落ち着かせ、この場に駆けつけたが………一足遅かった。

 

 

 

 

 

これにて、スピリットアイランド編全てのバトルが終了した。流異を助ける事には成功したものの、司は気を失ったまま攫われ、椎名のデータは取られた点から、

 

結果としては敗北と言える。

 

………そして、次なる物語はついにDr.Aとの最終決戦が幕を開ける。

 

 

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉


椎名「本日のハイライトカードは【デュークモン クリムゾンモード】!!」

椎名「クリムゾンモードはデュークモンが進化を超えた姿!!その力は神をも超え、悪雲立ち込める世界を照らし破る!!」


******


〈次回予告!!〉


スピリットアイランドでの激しい戦いを終え、椎名は六月に連れられ、実家のある島へと帰郷していた。そして六月は語る。Dr.Aと自分の関係。どうして椎名をDr.Aの元から連れ去ったのか…………18年前の真実が今その口から解き放たれる。……次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ、「エニーズの生まれた日、椎名の生まれた日」………今、バトスピが進化を超える!!




******


最後までお読みくださり、ありがとうございました!!

ようやく出せましたクリムゾンモード。クリムゾンモードは今作では椎名の最終最強のエーススピリットとした扱わせていただきます。

この作品においてのクリムゾンモードは光の力で様々な武器をいくらでも生成できる設定です。私の頭の中ではウォーグレイモンの腕の武器(ドラモンキラー)のような武器も作れます。後々色んなものを追加する予定です。

そして、【次回は上の予告の話ではなく、外伝をやろうと思っております。】ただの外伝ではなくて、物語上、後々大きく関わってくるものです。

⬇︎以下、【外伝予告】



これは椎名の物語が始まる6年前………

1人の英雄。そんな彼とやがて結婚することになる女性の弟の物語。

その少年の名は………【空野晴太】

椎名達の良き教師として存在する彼が何故今椎名の前にいるのか、何故教師をしているのか、何故エグゼシードデッキを所有しているのか………その全てが明かされる。

バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ外伝【エグゼシード伝説】

今、空野晴太17歳のバトルスピリッツが幕を開ける




※ここと同じページで連載します。


******


外伝の主役は17歳の晴太先生です。

今は例外を除き、基本的に日常編でしかでてこない彼ですが、実は物語に後々大きく関わって来ます。この外伝は後々にやるその物語を色濃く印象に残すために行うものです。(全部で10話もないくらいやります)

と、言うわけでして、次回からは椎名の物語ではなく、しばし、晴太先生の物語を堪能してみてください!!

ちなみに、外伝が終わってから行う二期第5章のサブタイトルは【ANYS編】です!!

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