晴太が海皇に勝利したことは瞬く間に学園中の話題となった。その大きなニュースには学園の誰もが驚愕したという。
それもそのはず、何せ晴太が勝利した相手はあの界放リーグで2位を勝ち取った海皇静怒なのだから………
それに勝てる者など昨年度1位の【九白一族】の者だけだろう。と、周りの者達の考えが固まるのも致し方ない。
「おい、あれが空野晴太だってよ」
「え!?あの海皇に勝ったって奴!?」
時刻は早朝。晴太と兎姫は学園へと登校している途中、あらゆる場所から晴太の噂話が聞こえてくる。
「え!!顔もちょっとカッコいい!!話しかけて来る?」
「やめとけって、横に彼女いるよ?」
その中には黄色い声も多数。兎姫は耳に入ったこの会話に「彼女じゃないわよ」と、照れながら小声でツッコミをいれる。
晴太はそれとは逆に嬉しそうにしていた。このちやほやされる状況を楽しんでいた。
とても清々しかった。エグゼシードのカード達を得てから僅か1日2日でここまで人気者になるなど思っても見なかったことだろう。
「ふふふ、………はっはっは!!!」
本当にこの時の晴太は完全に調子に乗っていた。
「………うるさい」
「いや〜〜人気者は辛いな、兎姫ちゃん……めっちゃ慕われるし、女の子も選び放題だぜ!!」
「っ!!……悪かったわね!!」
「何が!?ぶぉ!?」
晴太の無神経な発言に、また兎姫は腹を立てて、今度はグーで晴太の頬を全力で殴りつけた。
兎姫自身、自覚はないが、「自分がいながら」などと思っていた。
******
時間は少しだけ経ち、朝のホームルーム前、晴太と兎姫は席についていた。一番後ろの窓側だ。晴太の方が窓側に近い。
「なぁ、兎姫ちゃん〜〜機嫌直せって……なんか俺悪い事言った?」
「……フンッ、勝手にしなさい!!」
「え、え〜〜?」
意味がわからない。まるで怒られた意味がわからない。兎姫とは小さい頃からずっと一緒にいるが、昔から怒る理由がわからない。さっぱりだった。いつも理不尽に殴られる。
晴太がなんとか兎姫の機嫌を直そうとその脳内をフル回転し始めた時だ。担任の先生が教室に入ってくる。若い男の教師である。
そんな彼が言った言葉は、学校に行くなら、不確定ではあるが、あり得る出来事。
「……おはようみんな!!今日は急だが、転校生を紹介する!!」
「?転校生?」
担任による唐突の宣言に、戸惑う生徒たち。そしてそれと同時に興奮する者も何名かいる。兎姫は戸惑う側だが、晴太はそれに対し一切興味なさそうに、頭の中は兎姫のご機嫌とりの事でいっぱいだった。
「ん、じゃあ、呼ぶぞ………」
そして担任が、その生徒を呼ぶ………
「おーーい、いいぞ!」
「オーーッス!!」
その声色から、女子である事が分かる。しかし、その口調は穏やかではない。女子とは思えない程に荒々しい。凄まじく姉御感がある。
そして、その人物は教室のドアを堂々と開け、入室してくる。それを見た途端、晴太を除く男子生徒は皆「おお!!」と喜びの声を上げた。
その容姿はとても端麗。背も高く、まるでモデルのようだ。だが、それ以上に目を引くのはボリュームのある長くて赤い髪と、首にぶら下げた大きめのゴーグル。
しかし、もっとも驚かされたのはその名前………
彼女は黒板に自分の名前をでかでかと書いていく。
「私の名前は【赤羽茜(あかばねあかね)】!!!一応赤羽一族ってのに属してる!!これからよろしくなッ!!」
「赤羽って…あの赤属性最強一族の?」
【赤羽一族】
界放市外れにある街に住んでいる一族であり、日本における一族の中では赤属性最強と謳われている。
茜はその末裔………
その大胆で元気な自己紹介は、クラスメイトの殆どが拍手を送った。ただ1人、兎姫のご機嫌とりの事を未だに考えていた晴太を除いては………
「よし、早速授業だな!!……それじゃ赤羽の席は………」
「私の席は…………」
担任が茜の席を指定する直前、茜は一直線に走り出した。そこは他でもない。晴太の席だ。
「こいつ!!……こいつの後ろが良いです!」
「なっ!?」
「んーー兎姫ちゃんの機嫌を直す方法………」
晴太の目の前まで行って指を指した。こいつの、晴太の後ろの席が良いと。この時点でクラス中が茜は晴太に好意的という印象が残る。
兎姫はなぜか嫌な予感がした。そう、なぜかだ。理由は自分ではわからない。まぁ、本当はただの嫉妬なのだが…………晴太は未だにブツクサと呟きながら兎姫のご機嫌とりの事を考えていた。
結果的に、晴太のさらに後ろの席に茜が来ることになる。
******
また少し時が経ち、午前の授業が始まった時だ。担任が喋る。他の生徒は集中する。晴太はやはり兎姫のご機嫌とりの事を考えていた。
そんな時だ…………
(……んーーどうするか……好きな食べ物あげる?…いや、兎姫ちゃんの好物、値段が高そう……てか好きなもの知らないし………なんかそれっぽいの買ってあげる?…いや、それも高そう………んーーーーーーん?肩を叩かれてる?)
晴太の肩を後ろから叩いてくる人物がいた。それは当然、さっき転校してきた茜だ。晴太はそれに気づき、振り返る。
「なんだ?」
「悪りぃ、私転校したばっかで教科書なくてさ〜〜お前の教科書ちょっと貸せよ!!ちょろっと書き写して返すからさ!!」
「ん?あぁ、なら別に………ほい」
「サンキュー!!」
どうせ読みもしない教科書だ。晴太は茜にその教科書を貸した。そしてまた兎姫のご機嫌とりの事を考える。
しかし、貸した間、10秒もないくらいで………
「ほらよ!!返す!!」
「ん?早くない?」
もう教科書が帰ってきた。全く授業を聞いていない晴太だが、こんな短い時間で書き写すことができないのは分かる。
そして、茜は晴太に言葉を付け足すように………
「……138ページ見ろよ!!」
「ん?」
言われた通りに晴太はそのページを広げる。そしてそこにはある言葉が書かれていた。
それは………
ー『お前、一木花火の弟子だろ?』
っと……書かれていた。晴太はこの言葉に驚き………
「なっ!?お前なんでその事を………」
「フッ、それが知りたければ今日の放課後、屋上に来るんだな………!!」
一木花火の弟子。
晴太はこの事をずっと伏せていた。嫌だったからだ。そんな肩書きの印象を持たれるのが、持たれるならやはり今日の海皇を倒した噂のようなものの方がよっぽど良い。
故に、故にだ。晴太は今まで一度たりともこの事を口外してはいない。知っているのはこの学園では兎姫くらいなものだろう。
何故この女子はこの事を知っていたのだ?
晴太にはどうしても疑問が残る。しかし、それを聞き出すためには屋上に行くしかない。今は言う通りにするしかないだろう。
そのやり取りを横で見ていた兎姫は嫉妬の炎が燃え上がっていた。
******
また時は経ち、今日の放課後、晴太は屋上に来ていた。待っていた。赤羽茜を………
しかし、また晴太は気になることがあり…………
「……で、なんで兎姫ちゃんがいるの?」
「だめ?」
「いや、別に嫌ってわけじゃないけどさ………はは」
またまた兎姫が付いてきていた。
理由は言わずもがな、しかし晴太はやはりその理由にはたどり着いてはおらず………
「あんたあの子に何言われたの?」
「え?………あぁ、俺が花兄の弟子って言われた……」
「はぁ!?そんだけ?そんだけで屋上に来たわけ!!?」
「えぇ!?そうだけど……なんで知ってるか知りたいじゃん……なんでまた怒ってんだよ」
兎姫にとって、晴太が花火との師弟関係を隠していることなど、正直どうでも良い。まぁ、晴太が隠すと言っていたから、自分も当然口外などしていないが……
そもそも師弟関係というよりかは彼らの関係は兄弟に近い。晴太は昔から花火と遊んでいただけであり、結果的に花火が晴太にバトルを教える側になっていただけだ。まぁ、それでも彼らが師弟関係というならばそうなのだろうが…………
しかし、それにしてもこだわり過ぎな気もする。無名だったあの頃と違い、今や、エグゼシードのカードだけで有名になってしまったのだから………
そして、そんな雑談を交わしてる途中、屋上の扉から茜が現れ…………
「おぉ、悪りぃ悪りぃ!!理事長の話って長いのな!!転校の手続きとかがどうのこうのってうるさくって敵わねぇよ!!」
「赤羽茜、来てやったぞ!!教えろよ、なんで俺と花兄の事知ってるか………」
晴太は単刀直入に気になっていた疑問を茜に聞いた。
しかし、それはなんともまぁ、単純明快な理由であって…………
「あぁ、私さ〜〜一木花火さまのファンなんだよ!!」
「え?あ、あぁ、そうなの?」
花火さま……なんか急に乙女みたいな言い方になったな。
晴太はそんな感想が頭によぎるが、一旦それは頭の奥底に沈めた。
言われてみればそうだ。一木花火のファンは皆、彼と同じようなゴーグルを首から下げる。それは茜も同様。花火のファンだと検討はつく。
しかし、それだけでは理由にならない。茜はカバンから1つの冊子を取り出し、パラパラっとページをめくっていく。その冊子はプロバトラーの事や、情報が乗るバトスピ関連本だ。
「えぇ〜〜と、あったあった!!ほら、ここ!!これってお前の事だろ?」
「んんー??…………」
晴太と兎姫はそのページを覗き込む。そこには一木花火のプロインタビューが掲載されており………
しかもそのタイトルは………【一木花火の愛弟子!!?】………と、でかでかと記載されており、その文面には晴太の名前や、通っている学校。しかも婚約者の弟とまで書かれていた。
そりゃバレるわけだ。ここまで晴太の個人情報が筒抜けだったのだから………
「…………マジっすか………花兄………」
「花火さんらしいわね………」
花火も特に悪気があったと言うわけではなく…ただ晴太は彼にとってそれほどまでに自慢の弟子であったことが伺えて………
だからこそ、茜はその晴太のことが気になり、ここに来たのだ。
「よしっ!!じゃあ!!早速バトルするよ!!」
「え?」
茜はまた唐突に晴太にバトルを要求してきた。
理由はもちろん。腕を確かめたいのであれば、バトルをするのが一番手っ取り早いからである。それを晴太も知っているからこそ………
「まぁいっか、わかったよ………」
面倒くさいとは思っているが、特に断ることもなく、そのバトルを受け持った。
2人は一定の距離を置き、自身のBパッドを展開。そしてそこにデッキをセットして、準備万端。
「よし、行くぜ」
「花火さまの弟子とのバトル!!楽しみだなぁ!!」
「「ゲートオープン、界放!!」」
兎姫が見守る中、晴太と茜のバトルが始まる。
先行は茜だ。
[ターン01]茜
《スタートステップ》
《ドローステップ》手札4⇨5
メインステップ手前までターンシークエンスを進行させる茜、晴太も兎姫も茜がどんなスピリットを召喚するか気になるところであった、当然だ。彼女は何故ならあの赤羽一族の1人なのだから………
しかし、茜が召喚したスピリットは意外な……いや、ある意味では妥当とも言えるスピリット。
………それは
「メインステップ!!早速行くか!!…アグモンを召喚!!」
手札5⇨4
リザーブ4⇨0
トラッシュ0⇨3
「なにっ!?アグモンだって!?」
「……花火さんと同じ……」
茜が呼び出した最初のスピリットは、黄色い体に肉食恐竜をこれでもかとデフォルメしたような見た目の成長期、アグモンだ。
アグモンは晴太の師である、花火の持つスピリット。今や一般販売もされているデジタルスピリットの一種だが………やはりそれでもレア中のレアであることには変わりがなく………デッキを組むのは困難とされている。
「いや〜〜このデッキ組むの苦労したんだよな〜〜!!…アグモンの召喚時!!カードをオープン!!」
オープンカード↓
【勇気の紋章】×
【メタルグレイモン】◯
茜の言葉から、よほど苦労して花火と同等のデッキを構築したことが伺える。
そしてアグモンの召喚時効果も成功、手札にメタルグレイモンのカードを新たに加えた。
「よしっ!!ターンエンドだ!!」
手札4⇨5
【アグモン】LV1(1)BP3000(回復)
バースト【無】
茜は勢いのまま、そのターンをエンドとした。次は花火と同型のデッキに、未だに驚きを隠せない晴太のターン。
「……まさか、花兄と同じなんてな………っ、俺のターン!!」
師である花火と同型のデッキならば、晴太に負けは許されない。かたや茜も同じ赤デッキの晴太には負けられないだろう。何せ彼女は赤属性最強の一族、赤羽一族の1人なのだから………
[ターン02]晴太
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ4⇨5
《ドローステップ》手札4⇨5
「メインステップ!!グレイモンデッキなら出し惜しみは無しだ!!行くぜ!!エグゼシード・ビレフトを召喚!!」
手札5⇨4
リザーブ5⇨0
晴太の背後から何かが走る足音が聞こえて来る。それはどんどん近づいてくると、晴太の頭上を飛び越え、場に現れる。
その名はエグゼシード・ビレフト。エグゼシードの本来の力が失われた姿だ。しかし、それでも今尚も強力。
「おぉ!!そいつは見たことがないなぁ!!」
「当然だ!!こいつは俺だけのスピリットだからな!!」
十二神皇スピリットのエグゼシード。それはレアカードといえど、誰もが知る一般的なスピリット。だが晴太の持つエグゼシードは特別。4種類のどれもがオリジナルとは異なっている。
「アタックステップだ!!ビレフトでアタック!!効果でドロー!!」
手札4⇨5
颯爽とビレフトにアタックの指示を送る晴太。目指すは当然茜のライフ。
ビレフトとアグモンのBPは同じだが、茜とて、大事な成長期スピリットを破壊させるわけにはいかない。
よって………
「ライフだ!!持ってきな!!」
ライフ5⇨4
ビレフトの頭部の角が茜のライフを1つ貫いた。
「ターンエンド!!」
【エグゼシード・ビレフト】LV1(1)BP3000(疲労)
バースト【無】
先制点を与え、幸先良いスタートを切った晴太。
次はアグモンを意図的に場に残した茜のターン。
[ターン03]茜
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ1⇨2
《ドローステップ》手札5⇨6
《リフレッシュステップ》
リザーブ2⇨5
トラッシュ3⇨0
「メインステップ、アグモンのLVをアップ!!」
リザーブ5⇨2
【アグモン】(1⇨4)LV1⇨3
アグモンのLVが上昇する。これにより、アグモンはさらなる効果を発揮できる。
晴太達も当然それを熟知している。この状況ならやることはただ1つ、進化だけ………
「アタックステップ!!アグモンの【進化:赤】を発揮!!成熟期のグレイモンへ進化!!」
【グレイモン】LV3(4)BP7000
アグモンが0と1のデジタルコードに包み込まれ、その中で姿形を大きく変えていく。やがてそれは弾け飛び、中から新たに現れたのは、3本の立派な頭角を持つ恐竜型の成熟期スピリット、グレイモン。
「やっぱ持ってるよな………」
「アタックステップは継続!!グレイモンでアタック!!その効果でBP5000以下のスピリット1体を破壊、私はビレフトを破壊する!!」
「っ!!」
「…メガフレイム!!」
グレイモンは口内に極限まで炎を溜め、それを晴太の場のビレフトに向けて放つ。ビレフトはそれに直撃し、焼き尽くされてしまう。
「くっ…ビレフト……」
「さらにカードをドロー………まだまだいくぞ!!」
手札6⇨7
「っ!!今度はあいつか!?」
「ご名答!!グレイモンの【超進化:赤】を発揮!!完全体のメタルグレイモンに進化させる!!」
【メタルグレイモン】LV3(4)BP11000
グレイモンがさらなる進化を遂げる。
新たに現れたのは左半身がサイボーグと化したグレイモン。名前はそのまま、メタルグレイモンだ。新たに生えたボロボロの翼が妙に目につく。
グレイモンのデッキは基本的にメタルグレイモンまでが着地点であり、メタルグレイモンを疲労状態でいち早く場に出しておくのが常套手段だ。それはエーススピリットであるウォーグレイモンの動きにも直轄するため、非常に大事な動きであって…………
ただ、茜がそのウォーグレイモンを持っているかは知れたことではない。
「メタルグレイモンでアタック!!」
「っ!!ライフだ!!」
ライフ5⇨4
メタルグレイモンの左半身のアームの重たい一撃が、晴太のライフを1つ粉々に粉砕した。ちなみにメタルグレイモンはこれで疲労状態。効果により、晴太のスピリットとブレイヴの効果を受けなくなっている。
「……順調……と言っておこうかな?………ターンエンドだ」
【メタルグレイモン】LV3(4)BP11000(疲労)
バースト【無】
自信に満ち溢れている表情を見せながら、茜はそのターンをエンドとした。
次は晴太のターン。メタルグレイモンが居座るこの盤面を崩すことはできるのか………
[ターン04]晴太
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ2⇨3
《ドローステップ》手札5⇨6
《リフレッシュステップ》
リザーブ3⇨7
トラッシュ4⇨0
「メインステップ……メタルグレイモンは疲労状態の時、スピリットの効果を受けない………だが、疲労しているから当然、ブロックはできない」
「おぉ、詳しいな、流石は花火さまの弟子だ………確かにそうだが、どうするつもりだ」
「……へっ!こうするんだよ!!行くぜ、バーストを伏せて、コレオン3体、ビーバン1体を召喚!!
手札6⇨1
リザーブ7⇨0
「………!!」
晴太がそう言いながら召喚したのはライオンをこれでもかとデフォルメしたスピリット、コレオンと、ビーバーのような見た目のビーバン。
「……成る程、考えたわね晴君……いや、ある意味考えてないか……メタルグレイモンが疲労状態で効果を受けないなら、場を整わせる前に倒す……少なくともこれで隙は作れる」
メタルグレイモンはアタック時にBP10000以下のスピリットを破壊して回復する効果がある。晴太のこの作戦は無駄にも思えるが、
この4体のスピリットのフルアタックで勝てるなら、それも意味がなく………
つまり、メタルグレイモンの穴を利用した奇襲とでも言うべきか………これは花火と長年バトルをしてきた晴太だからこその思いつきであって………
「アタックステップ!!ビーバンでアタック!!ソウルコアの力で1枚ドロー!!」
手札1⇨2
走り出すビーバン。
メタルグレイモンは効果を受けない代わりに疲労状態。茜は防ぐ手段はないのか、何も抵抗しようとする素振りは見せず………
「ライフだ、持ってきな!!」
ライフ4⇨3
それをライフで受けた。ビーバンの体当たりが彼女のライフを1つ砕いた。
この一撃で何もしなかった茜の反応を見て、晴太は勝ちを確信したか、奇襲をやめず、ここで落とすべく、さらに攻め立てる。
「よし!!いける!!コレオン3体でアタック!!」
走り出す3体のコレオン。このアタックが全て通ることがあれば、晴太の勝ちである。あの赤羽一族と赤属性バトルで勝ったのであれば、間違いなく晴太の鼻はまた一段と高くなる事だろう。
ここで最も警戒すべきはやはり強力な煌臨時効果を持つグレイモンデッキのエース、ウォーグレイモン。だが、ウォーグレイモンなどレアの中のレア。そうそう持ってるものではない。
しかし、例え持っていなくとも、その程度のアタックで沈むほど、赤羽一族はやわではない。しかもそれが赤デッキ同士のバトルなら尚更………
「………フラッシュアクセル!!輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉のアクセル効果を発揮!!」
手札7⇨6
リザーブ3⇨0
【メタルグレイモン】(4⇨3)LV3⇨2
トラッシュ0⇨4
「っ!!?」
「この効果でBP6000以下の相手スピリットを全て破壊!!」
「なにっ!?」
「焼き払えっ!!」
地上へと降り注ぐ聖なる炎。それは晴太の盤面のスピリットを、その地面ごと焼き払っていく。コレオンやビーバンがそれに耐えられるわけがない。晴太のスピリット達は全滅した。
「さらに破壊した分ドロー………」
手札6⇨10
「……手札10枚」
これはまだ晴太のターンだというのに、カードアドバンテージの差を一気に持っていく茜。
無理に奇襲しかけた晴太は逆に追い詰められてしまった。
「くっ!!ターンエンドだ」
バースト【有】
致し方ない。これで勝てるのであれば茜の赤羽の性はただの飾りであっただろう。
次はウォーグレイモンではなく、シャイニング・ソードの効果で晴太のアタックをしのいだ茜のターン。
[ターン05]茜
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
《ドローステップ》手札10⇨11
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨5
トラッシュ4⇨0
【メタルグレイモン】(疲労⇨回復)
疲労状態より、メタルグレイモンが起き上がる。
「メインステップ……輝きの聖剣シャイニング・ソードを手元からメタルグレイモンに直接合体!!」
リザーブ5⇨0
トラッシュ0⇨4
【メタルグレイモン+輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉】LV3(4)BP16000
上空から一筋の光が降り注ぐ。それは剣の形となって茜の場の地面に突き刺さる。
それは赤き聖剣、シャイニング・ソード。メタルグレイモンは機械化していない右手でそれを抜き取り、合体する。
「アタックステップ!!メタルグレイモンでアタック!!シャイニング・ソードの効果であんたはマジック、アクセルを使う時ライフを1つ破壊しないといけない!!」
「っ!!」
走り出すメタルグレイモン。その手にはシャイニング・ソードが握られており、その効果で晴太にマジックとアクセルの使用時にライフの負荷がかかる。
前のターン、シャイニング・ソードのアクセル効果でスピリットが全滅させられた花火はこれをライフで受ける他なく………
「ライフだ!!」
ライフ4⇨2
メタルグレイモンはシャイニング・ソードの一閃で晴太のライフを一気に2つ砕く。
「ライフ減少のバースト、絶甲氷盾!!ライフを回復」
ライフ2⇨3
晴太のバーストが勢いよく反転し、それと同時にライフが1つ回復する。
「………ターンエンドだ」
【メタルグレイモン+輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉】LV3(4)BP16000(疲労)
バースト【無】
メタルグレイモンの単調なアタックだけでそのターンを終える茜。しかし、今のこの状況は圧倒的に彼女が有利だ。
既に晴太との実力の差が明確になってきている。
そんな晴太に茜は疑問を覚え………
「なぁお前………」
「ん?」
「本当に花火さまの弟子か?」
「………あぁ?」
質問を投げかけた。
正直、
正直のところだ。
噂では去年の界放リーグの準優勝者にも勝利したと聞いて期待していたのだが………蓋を開けてみればこの程度の実力だ。この日本屈指の界放市のレベルもこの程度なのかと考えるとがっかりの一言であった。
晴太は花火のことを何よりも、誰よりも尊敬している。が故に、この茜の言葉には腹立たしく思い………
「やる事はただただ殴るだけ……防御も手薄、手札は簡単に投げ出す………これがあの完璧なバトルをする花火さまに教わった事?……アホらし」
「っ!!んだとぉ!?」
「ちょ!!晴君なに切れてんの!!」
茜の挑発的な態度に、怒りのボルテージが上がる晴太。兎姫はそれを抑えようと声をかけるが、晴太は全く聞き耳を持たない。
バトルにおいていちばん消してはならないものは、手札でもコアでもなく、冷静さ。晴太は今まさにその冷静を欠いていた。
「上等だ!!女だからってもう手加減はしねぇ!!俺はあの一木花火からバトスピを教わった天才、空野晴太だ!!今からその天才のバトルを見せてやるっ!!」
「………ふぅ〜ん…天才か……」
晴太の反撃が幕を開ける。
[ターン06]晴太
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ9⇨10
「ドローステップ!!………よしっ!!」
手札2⇨3
このターンのドローステップ。晴太がドローしたのは彼を勝利へと導く最高のカード。
次のメインステップで、晴太は一気に勝負を決めるべく、下準備を行なっていく………
「メインステップっ!!バーストをセットして、2体目のビレフトをLV3で召喚!!」
手札3⇨1
リザーブ10⇨2
トラッシュ0⇨4
晴太は今一度エグゼシード・ビレフトを場へと呼び出した。晴太のデッキにとって、ビレフトは起点。ここからより大きなスピリットを呼び出すことができるよう、デッキを調整している。
「アタックステップ!!ビレフトでアタック!!効果でドロー!!」
手札1⇨2
ビレフトにアタックの指示を送る晴太。その効果で僅かながらに手札を潤す。が、ビレフトの効果はそれだけでは終わらない。
「さらに【輝石封印】を発揮!!ビレフトのソウルコアを俺のライフに!!そして、ビレフトのコストは6になる!!」
ライフ3⇨4s
【エグゼシード・ビレフト】(4s⇨3)LV3⇨2(4⇨6)
Bパッド上のビレフトのカードの上のソウルコアがライフへと移動する。
これにより、ビレフトはこのターン、より多くのスピリットの煌臨元になることが可能。そして、このタイミングで煌臨できるスピリットは1体………
今、超新星が光輝く………
「フラッシュ!!【煌臨】を発揮!!対象はビレフト!!」
ライフ4s⇨3
トラッシュ4⇨5s
「っ!!」
宙を舞うように走り出すビレフト。その身は赤き光に包まれていき………
新たなる星が爆誕する。
「来いっ!!超新星の神皇エグゼシード・ノヴァ!!」
【超新星の神皇エグゼシード・ノヴァ】LV2(3)BP20000
赤き光を振り払い、現れたのは大きな翼を広げる天馬。超新星の名を持つ神皇スピリット、ノヴァ。
その神々しい姿は並みのバトラーでは思わず竦んでしまう事だろう。
「ふぅ〜ん……これも見た事ないな」
「これで終わりだと思うなよ!!ライフ減少により、バースト発動!!」
「?」
晴太のバーストが勢いよく反転する。
ノヴァの煌臨により、ライフのソウルコアがトラッシュへ行った。これにより、晴太のライフが減少したことにより、発動が可能となったのだ。
そのカードは………
「爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル!!効果でこいつをLV2で召喚!!」
リザーブ2⇨0
【超新星の神皇エグゼシード・ノヴァ】(3⇨2)LV2⇨1
【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル】LV2(3)BP15000
晴太の場から勢いよく吹き上がる火柱。その中にいるスピリットは、それを切り裂き現れる。
それはエグゼシード・バゼル。バーストを持ち、エグゼシード系特有の効果も持つ優秀なスピリットである。
晴太の場には強力なエグゼシードが2体並ぶ。ノヴァは上空から、バゼルは地上から、それぞれ前脚を上げ、雄叫びを上げる。その姿はまさしく圧巻の一言であって………
「どうだ茜!!これが俺のエグゼシードデッキの力だ!!……ノヴァの煌臨時効果で俺のライフを5に戻す!!」
ライフ3⇨5
ノヴァの身体が神々しく光輝き、それに合わせるように晴太のライフも光、そのライフを一気に復活させた。
「ふぅ〜ん……ただ躍起になっただけにしか見えないけどなぁ」
しかし、これを前にしても茜は未だに強気の態度を取っており………
晴太にとって、またこの態度が癪である。
「っ!!んな事言ってられるのも今のうちだけだ!!…煌臨スピリットは煌臨元となったスピリット全ての情報を引き継ぐ!!ノヴァのアタックは続行!!そのシンボルは2つ!!」
上空から凄まじいスピードで茜のライフへと突っ込んで行くノヴァ。
茜の残りライフは3。ノヴァとバゼルの合計シンボルも3。よってこのフルアタックが決まる事があれば晴太の逆転勝利である。
「………エグゼシード………宝の持ち腐れだな」
「なんだと!?」
「どんなに強いカードでもその使い手によって最強になるし、最弱にもなる。あんたのはその最低値………つまり最弱だ」
「っ!!てめぇ!!…いい加減にしやがれ!!」
また晴太を煽る茜。自分の負けが刻一刻と迫ってきているというのに………その表情はまるで勝ちを確信しているかのよう。
茜の意図的ではないものの、晴太はどんどん冷静さを欠き、余裕がなくなっていく。
そして茜は………この重要な局面であるここで………誰もが驚くべきカードを、煌臨させる。
「………カリカリすんなよ…フラッシュ………【煌臨】発揮!!対象はメタルグレイモン!!」
【メタルグレイモン+輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉】(4s⇨3)LV3⇨2
トラッシュ4⇨5s
「……煌臨!?……ここでやるって事は……ま、まさか!?」
いや、あり得ない。
あのカードは今や超がつくほどの高値のカード。そもそも流通数が少なすぎるのだ。一木花火の人気の高さもそれが値上がっている理由の1つ。
しかし、茜が今から呼び出すのは紛う事なきあのスピリット………一木花火のエースと全く同じ、あのスピリットだ。
メタルグレイモンは一旦シャイニング・ソードを地面に突き刺すと、その身が炎に包まれていく。メタルグレイモンはその中で姿形を大きく変え、最強の竜戦士へと進化していく。
「竜殺しの鉤爪、勇気の炎!!今こそバトルに旋風を巻き起こせ!!究極進化ぁぁあ!!!」
手札11⇨10
やはりそうだ。間違いない。
茜が呼び出したのは………
「ウォォォオ!!グレイモンっ!!」
【ウォーグレイモン+輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉】LV2(3)BP19000
炎を振り払い、現れたのは、竜殺しの爪、そして炎を操る究極の竜戦士、ウォーグレイモン。グレイモン系で最も強力なスピリットであり、かの有名なプロバトラー、一木花火のエーススピリット。
そのレア度はデジタルスピリットが一般化した今でもなかなか手に入らない代物。
「うぉ、ウォーグレイモンまで………」
「ここまで花火さんと同族のカードを持ってるなんて………」
「……だから言ったろ?……作るの苦労したって」
茜がいったいどうやってウォーグレイモンを入手したかは謎だが、今まさに確かに晴太の前にはウォーグレイモンがいた。師として尊敬している花火以外の初めての使い手だった。
「煌臨時効果!!BP15000以下まで好きなだけ破壊!!」
「っ!!」
「私はアタック中のノヴァを破壊!!……大玉ガイアフォースッ!!」
ウォーグレイモンはその両掌に炎を溜め、間隔を広げる事に大きくしていく。最大限まで溜めると、それをノヴァへと投げつける。その広大さはまるで太陽か、あまりに大き過ぎて逃げ場はなく、ノヴァはまともにそれに直撃。堪らず大爆発を起こした。
「くっ!!ノヴァ!!」
「ふぅ〜〜…ま、こんなもんか、ウォーグレイモンはシャイニング・ソードと合体する」
ウォーグレイモンは爪のある武器を消滅させ、地面に突き刺さったシャイニング・ソードを握り、抜き取る。
すると、鎧の形容が変化し、シャイニング・ソードも持ち手が増える。ウォーグレイモンは新たな姿でシャイニング・ソードを振り回し、構えた。
「………ターンエンドだ」
【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル】LV2(3)BP15000(回復)
バースト【無】
バゼルだけでは茜の残ったライフを全て破壊することはできない。晴太はこのターンをエンドとした。
次はウォーグレイモンまでもを召喚してみせた茜のターン。
[ターン07]茜
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
《ドローステップ》手札10⇨11
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨6
トラッシュ5⇨0
【ウォーグレイモン+輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉】(疲労⇨回復)
「メインステップ……ウォーグレイモンのLVを上げて、そんままアタックステップ……ウォーグレイモンでアタック!!」
リザーブ6⇨5
【ウォーグレイモン+輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉】(3⇨4)LV2⇨3
また特にスピリットは召喚せず、グレイモン系を孤軍奮闘させようとする茜。
晴太の残りライフはノヴァの煌臨時効果により5。とてもではないが、ウォーグレイモンだけでは無謀にも覚えてくる。
「……フラッシュマジック!!ガイアフォース!!」
手札11⇨10
リザーブ5s⇨3
トラッシュ0⇨2s
「……そ、そいつは………!?」
「これくらい流石にわかるだろ?…効果によってグレイモンと名のつくスピリット1体を回復!!ウォーグレイモンを回復!!」
【ウォーグレイモン+輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉】(疲労⇨回復)
赤き炎の力を浴び、ウォーグレイモンは疲労状態から回復状態となる。これでこのターンは2度目のアタック権利を得る。
グレイモンデッキ専用と言っても過言ではない必殺マジック、ガイアフォース。BP10000以下のスピリットを破壊し、グレイモンスピリット1体を回復させる効果を持つ。
「さぁ!!最初のアタックは継続中!!」
「っ!!ライフで受ける………」
ライフ5⇨3
ウォーグレイモンはシャイニング・ソードを天高く掲げ、晴太のライフへと振り下ろす。そのうちの2つが一気に衝撃で砕け散る。
そしてそれだけではない。ウォーグレイモンは必殺の効果をこのタイミングで発揮できる。
「さらにウォーグレイモンのアタック時効果!!バトルの終了時、トラッシュにあるソウルコアをウォーグレイモンに置き、相手のライフ1つをボイドに送る!!」
トラッシュ2s⇨1
【ウォーグレイモン+輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉】(4⇨5s)
「っ!!…ガイアフォースのコストにソウルコアを使っていたのか……!!」
「またまたご名答だ……炎剣技……トライデントガイア!!!」
「っ!!くっ!!」
ライフ3⇨2
ウォーグレイモンはシャイニング・ソードの剣先にガイアフォースの力を集中し、それを晴太のライフへ向け放出。一直線に集約されたガイアフォースは晴太のライフ1つを貫き、また、完全に溶かした。
「回復したウォーグレイモンはもう一度アタックができる…………再度アタックだ!!」
再びアタックへと向かうウォーグレイモン。当然目指すは晴太のライフ。
ウォーグレイモン自体、今はシャイニング・ソードとの合体でダブルシンボル。晴太の残りライフは2であるため、これを受けることは晴太にはできなくて………
「……バゼルでブロック……」
ブロックできるバゼルで守るしかない。
ウォーグレイモンに向かって駆け出すバゼル。腰に備え付けられた二本の刀を口に咥え、その刀身に炎を灯す。
そしてそのまま、ウォーグレイモンを斬りつけようとするが、ウォーグレイモンはシャイニング・ソード一本で刀を抑え込み、バゼルの動きごと止める。
睨み合う両者2体。が、BPは圧倒的にウォーグレイモンの方が上………しかも茜の手札にはまだ………
「フラッシュマジック!!ガイアフォース!!」
手札10⇨9
リザーブ3⇨2
【ウォーグレイモン+輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉】(5s⇨4)
トラッシュ1⇨3s
「なにっ!?……2枚目だとぉ!?」
「こんなに手札があるんだ、そんくらい察しとけよ……効果によりウォーグレイモンは回復!!」
【ウォーグレイモン+輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉】(疲労⇨回復)
再び炎を浴び、ウォーグレイモンは回復する。その力もあってか、眼光を輝かせる。
拮抗していた勝負。それを崩すべく、ウォーグレイモンはシャイニング・ソードを振るい、バゼルを力任せに弾き飛ばす。バゼルは空中で姿勢を保ち、地上になんとか4本の脚をつけ、着地するが………
ウォーグレイモンはその一瞬の隙に…………
「やりな!!ウォーグレイモンッ!!破砕剣ドラモンブレイカァァァァア!!!」
目にも留まらぬ速さでバゼルとの距離を詰め、シャイニング・ソードで斬りつける。……というか、叩き込む。と言った方が妥当か、バゼルは地面に叩きつけられ、力尽き、大爆発を起こした。
「くっ!!バゼルッ!!」
晴太はバゼルの破壊による爆風を肌で感じながら、同時に思ったことがある。
自分は今まで、何度か自分の事を天才と称していた。それは決して本気ではなく、自分はあの一木花火の弟子であるという自信の表れであった。
しかし
今、目の前に聳え立つウォーグレイモンを操っている赤羽一族の少女は…………本物……誰がどう見ても本物の天才。
晴太は今………生まれて初めて何かに劣等感を感じていた。それと同時に疼いてくる失望感は気持ち悪く、早く取り除きたくてしょうがなかった。
「ウォーグレイモンの効果!!………炎剣技…トライデントガイア!!」
トラッシュ3s⇨2
【ウォーグレイモン+輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉】(4⇨5s)
「……うっ!!」
ライフ2⇨1
再び剣先にガイアフォースの力を集中させ、晴太のライフに射出するウォーグレイモン。晴太のライフはまた1つ貫かれ、溶解した。
「………ウォーグレイモンでラストアタック……」
3度目のウォーグレイモンのアタック。もはや晴太にそれを止める術はなく………
ただ敗北という二文字を噛み締めながら、そのアタックを受け入れるのみ………
それが晴太にとってどれだけ苦渋だったことか………
「…………ライフで……受ける……」
ライフ1⇨0
ウォーグレイモンは手に持つシャイニング・ソードを振り上げ、降ろし、晴太の最後のライフを粉々に粉砕した。
これにより、晴太のライフはゼロ。勝者は赤羽一族の真の天才、赤羽茜。終始いったい何もかもが彼女のペースでバトルは進み、戦略性やプレイング、その全てが晴太より上回っていた。
まさしく圧勝とも呼べる勝ち方であろう。
「………はぁ、つまんねぇ………あんたはただ粋ってるだけだ………界放リーグってのも大したレベルじゃないんだろうな〜〜一応出てやるけど………じゃあな、できの悪い弟子」
茜はBパッドをしまいながら、晴太に対しそう呟き、屋上から去ってしまう。
晴太はショックの大きさからか、もう言い返す言葉はなく、膝から崩れ落ち、茜に言われた言葉がフラッシュバックで蘇ってくる。
ー『本当に花火さまの弟子か?』
ー『エグゼシード………宝の持ち腐れだな』
思い返すだけで腹が立つ。だが、それは全て認めざるを得ない事実。
「………しょう……ちくしょうっ!!」
完敗だった。
何もかもが茜に劣っていた。
それを認めたくないがために、それがより悔しかった。
あの日、あの時、あの場所で……Dr.Aと名乗る人物とバトルした時に生み出されたエグゼシードのカード達。あのカード達を見た時、自分には本当に才能があると思った。
思っていた。
晴太の敗北に涙するように……いや、みっともない負け方をして世界が叱るかのように雨がポツポツと降り出す。晴太はその雨に濡れながら、自分の弱さ、才能の無さを改めて自覚していった。
兎姫もまた、そんな晴太を雨に濡れる事など気にせずに見つめていた。こんな時に、側にいてやれるのが友達だからと考えたからだ。
これがライバル関係にあたる、空野晴太と赤羽茜の1回目のバトルだった。
〈本日のハイライトカード!!〉
晴太「本日のハイライトカードは【メタルグレイモン】!!」
晴太「メタルグレイモンはグレイモン系の完全体スピリット、強力な破壊効果と疲労状態の時にスピリットとブレイヴの効果を受けない効果があるぞ!!」
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〈次回予告!!〉
茜のバトルに敗北を喫した晴太は、リベンジするべく第3回界放リーグの出場を決意する。が、その予選、茜以外の難関が彼の前に立ちはだかる。次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ外伝【エグゼシード伝説】、「最強のエグゼシード!!」今、伝説が進化する!!
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※次回のサブタイはより適切な方へと変更致しました。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!!