バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

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第76話「最強のエグゼシード!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

晴太が赤羽茜とのバトルに負けた日の夜の事だ。晴太は1人、自宅の部屋で今の自分のデッキを改めて確認していた。

 

オーバーエヴォリューションによって生み出されたエグゼシード達のために作られたデッキ。完成して僅か3日と経っていないというのに、そこには数々のドラマが頭の中に浮かんでくる。

 

しかし、そんなこのデッキでも彼女には勝てなかった。手も足も出ず。

 

悔しいが、茜の言ったことは真実である。自分はまだエグゼシードを使いこなせていない。今のままでは本当に宝の持ち腐れだ。

 

 

「………そういえばあいつ……こんなこと言ってたっけ?」

 

 

晴太はふと茜の言葉を思い出してた。

 

茜が【界放リーグ】に参加するという言葉を。

 

【界放リーグ】とは、界放市にある6つのバトスピ学園から代表を2名ずつ選出し、計12人で優勝を争う、界放市一の催し。茜はそれに参加し、優勝する気満々だった。

 

来週の今頃、ちょうどこの大会の予選がある。つまり、学園の代表選抜だ。晴太はいつになく燃えていた。

 

 

このままで終わるものか、茜に自分が一木花火の弟子であると認めさせるまでは、絶対に諦めない。

 

 

「よっしゃぁ!!出てやるよ界放リーグ!!片っ端から倒して………そして茜に認めさせてやる!!」

 

 

晴太はいつになく、それでいて柄になく、その心は熱く燃え滾っていた。

 

 

******

 

 

そして、少しだけ時は流れ1週間後、晴太は界放リーグの選手選抜の予選へとエントリーし、今尚もこの第3スタジアムにて絶賛バトル中だ。

 

その様子は順調。相手プレイヤーを圧倒している。

 

 

「行け!!エグゼシード・バゼル!!……爆ぜろ!!爆炎十文字斬りぃぃぃい!!」

「う、うわぁぁぁぁぁあ!!」

 

 

エグゼシード・バゼルの口に咥えられ、炎の灯された2本の刀の一閃は、相手のライフに十字の焼け跡を負わせ、大爆発させる。

 

 

「っしゃぁ!!」

 

 

これにより、晴太の勝利だ。大きく腕を曲げ、ガッツポーズを見せる。これで実に10勝目。それでいて連勝。おそらく次のバトルに勝つことができれば、今年の、第3回 界放リーグの選手として出場を果たす事ができる。

 

そんな晴太を、兎姫は見守るように観客席で眺めていた。

 

 

「晴君、順調じゃない………何よ、先週あんなになよなよしてたくせに………」

 

 

晴太はこの1週間、自分のデッキと自分自身の弱さを見つめ直し、改めてデッキを構築した。

 

兎姫はその事をよく知っている。が故に、自分は大会には参加せず、晴太を見守ることに決めたのだ。

 

 

《予選決勝選手者…バトル場へ》

 

 

そう無機質なアナウンスの呼び声に、残った4人の生徒たちがそれぞれのバトル場へと足を踏み入れる。晴太はふと横のバトル場を見渡すと、そこには赤羽茜の姿が確認できた。茜も晴太に気づき、

 

 

「よお、茜」

「おぉ、落ちこぼれの弟子君じゃないか!!あんたも出たんだな」

「誰が落ちこぼれだ、本戦で見せてやるぜ……俺のデッキの力をな!!」

 

 

悪態をついてくる茜。

 

晴太は正直安堵していた。茜とバトルするならば本戦のバトルの方が良いと考えていたためである。

 

 

「そういう事は先ずはこの予選を勝ち上がってから言いな」

「フンッ!」

 

 

茜との会話を区切り、晴太は自分のバトル場にいる相手に目線を移し替えた直後だ。その目の前の相手は自分の知っている人物であって………

 

 

「……よぉ、」

「っ!!お前は……海皇!」

 

 

晴太の予選最後の相手は海皇静怒。晴太とのバトルに一度敗北した経緯がある青使いのカードバトラー。その実力は高く、去年の界放リーグもその実力で二位まで登りつめた。

 

三年の彼にとってはこれが最後の界放リーグ。晴太へのリベンジもそうだが、より負けられないバトルであるのは確か………

 

晴太もそれを知っている。

 

 

「俺を前に別の奴と余談とはいい度胸だな…あの時のリベンジをさせてもらう、このあいだの俺とは一味違うぞ………」

「へ!!そうかよ!!だけど俺は少しどころじゃないぜ!!」

 

 

第3スタジアムの2つのバトル場で睨み合う計4名。

 

そして始まる、第3回界放リーグ。そのジークフリード校選抜、最後のバトルが………

 

 

「「「「ゲートオープン、界放!!!!」」」」

 

 

4人のコールがスタジアムに大きくこだまし、晴太と海皇のバトルが始まる。

 

先行は晴太

 

 

[ターン01]晴太

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ!!バーストを伏せ、ターンエンド!!」

手札5⇨4

 

バースト【有】

 

 

先行の第1ターン目というのはできることが最小限に限られてくる。晴太は手札にあるバーストカードのセットのみで先ずは様子を見ることにした。

 

次は海皇のターン。

 

 

[ターン02]海皇

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ……俺はネクサスカード、オリンスピア競技場を2枚配置し、ターンエンド」

手札5⇨3

リザーブ5⇨0

トラッシュ0⇨5

 

【オリンスピア競技場】LV1

【オリンスピア競技場】LV1

 

バースト【無】

 

 

海皇が初手で行ったのはネクサスカードの配置。彼の背後に一風古い競技場が2つ並んだ。

 

次は一周回り、また晴太のターン。様子見のターンは終わりか、その表情には攻めていくかのような気迫を感じて取れる。

 

 

[ターン03]晴太

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ!!いくぞ海皇!!」

「っ!!」

 

 

晴太の強い気迫に身を構える海皇。

 

気づいたのだ。ここで晴太の波が少しだけ強くなるのを………

 

 

「……駆けろ駿馬!!エグゼシード・ビレフトをLV1召喚!!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨0

トラッシュ0⇨4

 

 

晴太の背後から頭上を飛び越え、現れたのは駿馬、エグゼシード・ビレフト。晴太のデッキにおいては最早鉄板となった序盤のアタッカーだ。

 

 

「アタックステップ!!…ビレフトッ!!」

手札4⇨5

 

 

晴太の指示で地を駆けるビレフト。その効果で晴太はカードを1枚ドローした。

 

前のターンでネクサスカードの配置に全力を注いだ海皇にはそれを防ぐ術はなく…

 

 

「ライフだ……砕くがいい」

ライフ5⇨4

 

 

ビレフトの一角がそのまま海皇のライフを貫き、破壊した。

 

 

「っしぁっ!!エンドだ!!」

【エグゼシード・ビレフト】LV1(1)BP3000(疲労)

 

バースト【有】

 

 

 

先制点を与え、ガッツポーズをあげる晴太はそのままそのターンを終えた。

 

 

「この程度でいい気になるなよ……次は俺の高波が貴様を襲うぞ……」

 

 

次は海皇のターン。その凄まじい気迫から晴太に対する反撃に転じていこうとするのが見て取れる。

 

晴太もそれを感じたからこそ、前のターンの海皇同様、気を改めて引き締め、身構えた。

 

 

[ターン04]海皇

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨7

トラッシュ5⇨0

 

 

「メインステップ!!俺はゴマモンを召喚!!そして効果でカードをオープン!!」

手札4⇨3

リザーブ7⇨0

トラッシュ0⇨1

オープンカード↓

【イッカクモン】◯

【ストロングドロー】×

 

 

海皇が召喚したのは、以前の晴太とのバトルでも見せた青の成長期スピリット、ゴマフアザラシのような見た目のゴマモン。

 

そしてその召喚時効果も成功、海皇は成熟期スピリットのイッカクモンのカードを手札に加え、残ったカードはトラッシュへと破棄した。

 

 

「さらにアタックステップ!!ゴマモンの【進化:青】を発揮!!ゴマモンを青の成熟期スピリット、イッカクモンに進化!!」

手札3⇨4

【イッカクモン】LV3(6)BP8000

 

 

ゴマモンが0と1のデジタルコードにその身を包まれていく。ゴマモンはその中で大きく姿形を変え、進化していく。

 

やがてそれは破裂し、中から新たに白き体毛と頭部の一角が特徴的な青の成熟期スピリット、イッカクモンが召喚された。

 

 

「アタックステップを継続させ、イッカクモンでアタック!!その効果でお前のデッキを上から3枚破棄!!」

 

「っ!!来たか……」

デッキ33⇨30

 

 

青の衝撃波が晴太のデッキを襲う。上から3枚のカードがトラッシュへと落っこちていく。

 

この時、マジックカードか、アクセルカードがあるならば。イッカクモンの追加効果が発揮され、コスト5以下のスピリットを破壊できるのだが、今回はどうやら1枚もないようだ。

 

しかし、当然これだけで終わるわけがない。海皇はそのイッカクモンをさらに上のランクへと昇華させるべくもう1つのアタック時効果を発揮させる。

 

 

「さらにイッカクモンの【超進化:青】を発揮!!…イッカクモンを青の完全体スピリット、ズドモンへ進化!!」

【ズドモン】LV3(6)BP14000

 

 

イッカクモンが今一度デジタルコードに身を包まれ、さらに進化する。

 

新たに現れたのは前のバトルでも晴太をこれでもかと追い詰めた青の完全体スピリット、ズドモン。その身の丈にあった大きな甲羅とハンマーが特徴的。

 

 

「………ズドモン…」

「いくぞ空野!!ズドモンでアタック!!その効果【大粉砕】でお前のデッキを上からズドモンのLV掛ける5の枚数破棄!!ズドモンのLVは3!!…よって15枚破棄!!」

 

「……っ!!」

デッキ30⇨15

 

 

青の衝撃波が再び晴太のデッキ襲う。その上から半数以上のカード達が破棄される。

 

さらにその中にはバーストカードである【ダイナバースト】のカードが確認でき………

 

 

「【大粉砕】の追加効果でお前のビレフトを破壊!!……雷神の鉄槌……ハンマースパークッ!!!」

 

 

ズドモンはその手に持つハンマーを地面に叩きつけると、その強い衝撃で場に雷が迸る。ビレフトはそれに全身を捕らえられ、感電し、爆発を起こした。

 

 

「…くっ!!ビレフト!!」

「先ずは自分の心配をしろ!!アタックは継続中だ!!」

 

 

ビレフトの破壊による爆風と爆煙。それが完全に晴れる時、晴太の目の前には海皇のズドモンが立ち尽くしており…………

 

 

「っ!!……ライフだ」

ライフ5⇨4

 

 

ズドモンはそのハンマーで今度は晴太のライフを打ち付け、1つを木っ端微塵に大粉砕した。

 

ここまではほぼ海皇のペースに持ち込まれたと言うべきか……だが、晴太とて負けてはいない。ライフ減少によりわ伏せられていたバーストが火を噴く。

 

 

「ライフ減少によりバースト発動!!」

「っ!!」

 

 

海皇はまた晴太の波が大きく上がるのを感じた。この状況でこれほどの大波。おそらくあのスピリットしかいないだろう。

 

晴太の場から大きな火柱が立ち昇る。その中で眼光を強く輝かせるのは爆炎を操る覇王にして、神皇。

 

 

「覇と神皇!!2つの力が今、融合する!!来い!!爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル!!」

リザーブ2⇨1

【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル】LV1(1)BP10000

 

 

その火柱を斬り裂き、晴太の場に現れたのは爆炎操るエグゼシード、バゼル。前の海皇とのバトルでも局面で召喚され、バトルに終止符を打ってみせたスピリットだ。

 

今回も流れを掴むことができるか………

 

 

「………現れたかバゼル……お前を心待ちにしていたぞ……ターンエンド」

【ズドモン】LV3(6)BP14000(疲労)

 

【オリンスピア競技場】LV1

【オリンスピア競技場】LV1

 

バースト【無】

 

 

出来ることを全て終え、海皇はそのターンをエンドとした。次は見事にバゼルの召喚を成功させてみせた晴太のターン。

 

一気に勝負を決めるべく攻め立てる。

 

 

[ターン05]晴太

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨6

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップ!!バーストをセットし、バゼルのLVを最大までアップ!!」

手札6⇨5

リザーブ6⇨3

【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル】(1⇨4)LV1⇨3

 

 

バーストがまた新たに伏せられると共に、バゼルのLVが上昇する。これにより指定アタックの力を獲得した。

 

 

「アタックステップ!!バゼルでアタック!!…その効果でズドモンに指定アタック!!」

 

 

バゼルとズドモンを取り囲むように火柱が立ち昇り、炎のロードが形成される。バゼルはそこを凄まじい速度で駆ける。

 

そして、腰にある二本の刀が口に咥えられるように移動し、刀身には炎が灯され………

 

 

「爆ぜろ!!爆炎十文字斬りぃぃい!!!」

 

 

その一閃はズドモンを十字に斬り裂き、大爆発を引き起こさせた…………

 

………かに思えたが……

 

 

「っ!?」

「………技名を言うにはまだ早すぎる………まぁ、言わせないがな………」

 

 

ズドモンはハンマーを身代わりにし、バゼルの攻撃を紙一重で交わしていた。そのハンマーは粉々に砕け散った。

 

………そして、

 

 

「フラッシュ…【煌臨】…発揮!!対象はズドモン!!」

【ズドモン】(6s⇨5)LV3⇨2

トラッシュ1⇨2s

 

「っ!?…ここで煌臨!?」

 

 

バゼルが形成した炎のロードを吹き飛ばす程の青き輝きを放つズドモン。バゼルも当然、強い衝撃波に身動きが取れなくなる。

 

ズドモンはその光の中でさらに大きく姿形を変えていく。

 

海皇が召喚するのは完全体のさらに上のランクのデジタルスピリット。それはこの世に何枚で回っているかもわからない程に流通数の少ないレアカード…………

 

 

「吠えろ海竜!!戦場をお前の波で呑み込め!!究極進化ぁぁぁぁあ!!」

手札4⇨3

 

 

その光の中で眼光を強く輝かせるのは海皇の持つ最強のカード。それを見たものは全てを破壊し尽くされると言うとんでもない噂もある。

 

このカードは海皇がデッキ破壊ではなく、ライフの破壊で勝利を目指す時、そして本気になった時にのみ現れる青と白の究極体スピリット。

 

……その名は…

 

 

「メタルシードラモン!!」

【メタルシードラモン】LV2(5)BP15000

 

 

青き光を弾け飛ばし、新たに現れたのは塒巻く海竜のようなスピリット、メタルシードラモン。鼻先にあるレーザー砲が特に印象に残る。

 

 

「……き、究極体………」

「お前を倒すためのエーススピリットだ……煌臨時効果!!お前のコスト8以下のスピリット1体を破壊!!……バゼルを破壊する!!」

「なにぃっ!?」

「……アルティメットストリームッ!!」

 

 

メタルシードラモンは登場するなり鼻先のレーザー砲から強力なエネルギービームを放出する。それは晴太のバゼルへと一直線に飛び向かい、貫いた。

 

流石に耐えられないか、バゼルはその場で力尽き倒れ、大爆発を起こした。

 

 

「……バゼルッ!!」

「俺のメタルシードラモンの前には誰も敵わん!!」

 

 

余程メタルシードラモンに自信があるのか、握り拳を見せながらそう強く言い放つ海皇。それは晴太へのリベンジの気持ちもあるのだが、3年最期の界放リーグという意気込みもあった。晴太もまたその自信を感じ取る。

 

だがいくら海皇の気持ちを考えたとして、勝ちだけは譲れない。勝たねばならないのだ。ここで予選を抜けて、本戦の舞台で茜に勝たねばならないのだ。

 

晴太は強敵、海皇とメタルシードラモンを前にまた改めて気持ちを引き締めた。

 

 

「…ターンエンド」

バースト【有】

 

 

バゼルを失った今、このターンは動くことはできない。晴太はそのターンをエンドとした。

 

次は見事にメタルシードラモンを召喚してみせた海皇のターン。ここで決めるべく、一気に攻め立てる。

 

 

[ターン06]海皇

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨3

トラッシュ2⇨0

【メタルシードラモン】(疲労⇨回復)

 

 

メタルシードラモンが疲労から回復し、活動状態に入る。その間に映るのは晴太のライフのみ……

 

 

「メインステップ!!俺は異魔神ブレイヴ…幻魔神を召喚し、メタルシードラモンに左合体!!」

手札4⇨3

リザーブ3⇨0

【メタルシードラモン+幻魔神】LV2(5)BP18000

 

「っ!!異魔神ブレイヴ!?」

 

 

海皇が召喚したのは白き異魔神ブレイヴ、幻魔神。その強力な効果ゆえに究極カードと認定され、デッキに1枚しか入れることができない。

 

青の軽減を持つため、海皇のデッキでは他よりも手軽に採用できる。

 

幻魔神の左手から放たれる光線が、メタルシードラモンとリンクし、合体状態となる。これによりメタルシードラモンは【超装甲:赤・紫・青】を得た。晴太の赤属性の効果は通用しなくなってしまう。

 

 

「さらにバーストを伏せ、オリンスピア競技場1枚をLV2へ!」

手札3⇨2

【メタルシードラモン+幻魔神】(5⇨4)

【オリンスピア競技場】(0⇨1)LV1⇨2

 

 

強固な場にさらにバーストカードが追加され、より強固たるものになる海皇の盤面。だがそれは守りだけにあらず…………今、メタルシードラモンが動き出す。

 

 

「アタックステップ!!高波に呑まれろ!!メタルシードラモンでアタック!!」

 

 

蛇が地を這うように駆けるメタルシードラモン。狙うは当然狙いは晴太のライフ。

 

そしてこの時、メタルシードラモンには発揮できる強力な効果が存在し………

 

 

「メタルシードラモンのフラッシュ効果!!俺のネクサスカードを疲労させ、回復する!!……オリンスピア競技場を疲労させる!!」

【オリンスピア競技場】(回復⇨疲労)

【メタルシードラモン+幻魔神】(疲労⇨回復)

 

「なにっ!?」

 

 

色を失うオリンスピア競技場、その1つ、だがその代わりにメタルシードラモンが疲労状態から回復状態となる。

 

これがメタルシードラモンの強力な効果だ。ネクサスを疲労させることで何度でもアタック及びブロックを繰り返すことができる。幻魔神の装甲の効果とシンボル追加も相まってその破壊力は見た目以上に絶大。

 

単純に一度回復しただけで晴太の残りライフ4を砕ける状態となっている。

 

ブロッカーのいない晴太はこの攻撃を回避する術はなく………

 

 

「……ライフだ!!……くっ!!」

ライフ4⇨2

 

 

メタルシードラモンの巨大な顎が晴太のライフを一気に2つ噛み砕いた。だが晴太とて負けられない。このアタックを一先ず抑えるべく、またバーストカードを勢いよく反転させる。

 

 

「ライフ減少によりバースト発動!!絶甲氷盾!!ライフを1つ回復し、コストを払いアタックステップを終わらせる!!」

ライフ2⇨3

リザーブ9⇨5

トラッシュ0⇨4

 

 

晴太のライフが1つ元に戻ると同時に海皇の場に猛吹雪が発生、メタルシードラモンは身動きが取れなくなる。

 

 

「………フンッ…ターンエンド」

【メタルシードラモン+幻魔神】LV2(4)BP18000(回復)

 

【オリンスピア競技場】LV1(疲労)

【オリンスピア競技場】LV2(1)

 

バースト【有】

 

 

これでは動くことができない。そのターンをエンドとした海皇。だがその顔には余裕の表情を浮かべており………

 

 

「またその場しのぎのカードか……その程度では今の俺の波は止まらん!!このバトル、俺の勝ちだ!!」

「勝手に決めんなよ!!ここからが本番だ!!」

 

 

晴太と海皇がそう言い合った直後だ。横のバトル場から歓声が沸き上がる。そこには勝ち誇った顔をしている茜がいて…………

 

 

《勝者…赤羽茜…代表決定》

 

 

そんなアナウンスが耳に入ってくる。晴太は横を見る。すると、茜がドヤ顔でこちらを見ており………

 

それを見た途端。晴太はよりやる気が向上した。

 

そうだ、こんなところで負けられない。自分は勝って本戦に進まなくてはならない。もっと強くならねばならないのだ。

 

そのために、今………目の前の敵に集中する。

 

 

晴太は一度頭を冷静にし、今のこの状況を分析する。

 

 

(俺のデッキもあんまりない、長引かせることはできない。そしてメタルシードラモンのアタックを何度も凌げない。このターンがラストだ…………)

 

 

メタルシードラモンのアタックはとても強力。前のターンは防御札でなんとか守れたが、そう都合よく何度も守ることはできない。

 

が故に、このターンがラスト。

 

……しかし

 

 

(メタルシードラモンは効果でもう一回回復できる。これで2回はブロッカーとして立つ事が可能。そしてオリンスピア競技場の効果で合体していないスピリットがアタックする時、俺はコアを払わねぇといけない………でもってライフは残り4か………)

 

 

あまりにも難易度が高すぎる。

 

ほぼ不可能だ。

 

だが、晴太は一手……一手だけこの状況を突破できる作戦を思いついており…………

 

 

(……4枚目のエグゼシード……あいつをドローする事に全てかかっている)

 

 

唯一それが可能なのは4枚目のエグゼシード。それは他の3枚よりも遥かに上回る効果を持つ。

 

しかし……今まで、晴太はそのカードを一度もドローできていない。当然今の手札にもそれは存在せず……

 

だが、引くしかない。この目の前の強敵、海皇を倒すためには………本戦で茜に勝つためには………4枚目のエグゼシードをドローするしか手はないのだ。晴太は腹をくくり、そのターンを進めていく。

 

 

[ターン07]晴太

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ5⇨6

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ6⇨10

トラッシュ4⇨0

 

 

(くっ………ダメか……)

 

 

このターンのドローステップ……晴太は引けなかった。デッキが少なく厚さも薄いにもかかわらず引けなかった。自分のセンスの無さを恨む。

 

だが、恨んでもしょうがない。自分は天才ではないのだ。花火のような………茜みたいな……そして何よりチャンスが完全になくなったわけではない。

 

晴太はさらにターンを進め、動き出す。

 

 

「メインステップ!!コレオンを召喚!!」

手札6⇨5

リザーブ10⇨9

 

 

晴太が召喚したのは0コストのスピリット、コレオン。ライオンを凄まじくデフォルメした見た目が目につく。

 

 

「フッ…諦めたか、この局面でそんな雑魚を呼ぶとは…!!」

「うっせぇ!!0コストは便利だろ!!不足コストとか………」

 

 

コレオンを呼び出した理由は軽減要員。晴太はさらに手札のカードを引き抜き、効果を発揮させる。

 

 

「メインアクセル、甲寅獣リボル・コレオンの効果!!デッキから3枚のカードをオープンし、その中の異魔神ブレイヴ1枚と、十冠、神皇スピリット1枚を手札に加える!!」

手札5⇨4

リザーブ9⇨6

トラッシュ0⇨3

 

「……!!」

 

 

発揮させたのは晴太のデッキにおいては必須級の相性を誇るカード。引くべきカードなど等に決まっている。

 

晴太は自分のデッキをゆっくりとオープンしていく。

 

 

「先ずは1枚目!!オープン!!」

オープンカード↓

【炎魔神】◯

 

 

1枚目は成功、異魔神ブレイヴの炎魔神だ。

 

しかし、必要ではあったものの、これだけでは海皇には勝てない。残り2枚で4枚目のエグゼシードを狙う………

 

 

「2枚目!!」

オープンカード↓

【超新星の神皇エグゼシード・ノヴァ】◯

 

 

またまた成功。

 

だが、ノヴァを加えて、ライフを5にしたとして、次のターンでおそらくメタルシードラモンの連続アタックが再び根こそぎ破壊し尽くすだろう。

 

残りは1枚。

 

晴太は荒れた呼吸を整えデッキの上に手を当てる。

 

……そして…

 

 

「3枚目ぇえ!!オープンッ!!」

オープンカード↓

【龍神皇ジーク・エグゼシード】◯

 

「……っ!!何だあのカードは!?」

 

 

引いたカードはまさしく4枚目のエグゼシード。それは最強のエグゼシード。晴太はそれを見ると口角を上げ、炎魔神のカードとそれを手札へと新たに加える。

 

 

「海皇、見せてやるぜ!!俺の最強のエグゼシードを!!」

手札4⇨6

 

「最強のエグゼシードだと!?」

 

 

海皇は直感的に晴太の波が変わった事を悟る。ハッタリを言っているようには到底思えない。

 

しかし、いったいどうすると言うのだ。このライフの数、盤面。オマケにオリンスピア競技場で合体スピリット以外のアタックにコアを要求すると言うのに。

 

 

「いくぜ海皇!!俺は手元からリボル・コレオンを召喚!!」

リザーブ6⇨0

トラッシュ3⇨6

 

 

晴太が召喚したのは武装が施されたコレオン。ただ、その力強さは大して変わらない。

 

しかし、注目すべきはその効果……

 

 

「リボル・コレオンの召喚時効果!!手元からの召喚時、手札にある異魔神ブレイヴをノーコスト召喚する!!」

「っ!!」

 

「来いっ!!異魔神ブレイヴ、炎魔神!!…リボル・コレオンに左側で直接合体!!」

手札6⇨5

【甲寅獣リボル・コレオン+炎魔神】LV2(3)BP8000

 

 

コレオンとリボル・コレオンの背後に現れる炎の歯車。鈍い音を立てて回転するその中から異魔神ブレイヴの1体、炎魔神が姿を見せる。

 

そして炎魔神は左手から光線を放ち、リボル・コレオンと自身をリンク。合体スピリットとなる。

 

 

「っ!!その程度の波で粋がるなよ!!そんな小物では俺のメタルシードラモンには勝てん!!」

「……そう言うなって……今からだ、今から大物にしてやんよ……」

 

 

そう言い、晴太は手札にあるカードをさらに1枚抜き取った。それはついさっき加えた最強の4枚目のエグゼシード。

 

 

「俺は【煌臨】を発揮!!対象は合体により条件をクリアしたリボル・コレオン!!」

【甲寅獣リボル・コレオン+炎魔神】(3s⇨2)LV2⇨1

トラッシュ6⇨7s

 

「っ!?メインステップで煌臨だと!?」

「あぁ!!こいつは俺のメインステップのみ煌臨が可能!!」

 

 

リボル・コレオンが赤い炎に包まれていく。その中で大きく姿形を変える。その姿はまさしく龍王。

 

 

「龍の力宿るその時!!全てを超越せし神と化す!!龍神皇ジーク・エグゼシード!!……LV1で煌臨!!」

【龍神皇ジーク・エグゼシード+炎魔神】LV1(2)BP21000

 

 

炎を振り払い、新たに現れたのはかの有名なスピリット、ジークフリードの力が宿った最強のエグゼシード、ジーク・エグゼシード。その揺れる炎の鬣は赤き装甲と相まって力強い印象を残す。

 

 

「……こ、これが最強のエグゼシード…お前の高波か……!!」

 

 

海皇は敵ながら晴太に賞賛の声を心の中で上げていた。

 

なんたる底力。なんたる活力。

 

少ないコアでここまでのスピリットを呼び出すとは……天晴れだ。

 

そして晴太は初めて呼び出したジーク・エグゼシードを中心にアタックを仕掛けていく。

 

 

「アタックステップ!!駆けろ!!ジーク・エグゼシード!!そのアタック時効果でトラッシュのソウルコアをジーク・エグゼシードに!!LVアップ!!」

トラッシュ7s⇨6

【龍神皇ジーク・エグゼシード+炎魔神】(2⇨3s)LV1⇨2

 

 

Bパッド上にあるトラッシュからソウルコアがジーク・エグゼシードのカードの上に移動する。ジーク・エグゼシードはその影響でLVアップ。と同時に新たな効果を得る。

 

 

「炎魔神の左側の効果!!相手のバーストを破棄し、このターンスピリット全てのBPを5000アップ!!」

 

「っ!?」

バースト破棄カード↓

【絶甲氷盾】

 

「………」

【コレオン】BP1000⇨6000

【龍神皇ジーク・エグゼシード+炎魔神】BP26000⇨31000

 

 

炎魔神の追撃。ロケットパンチの要領で左手を射出させ、海皇のバーストカードを吹き飛ばした。そして役目を終えたそのロケットパンチは再び炎魔神の腕へと帰還。

 

後はジーク・エグゼシードの出番だ。

 

晴太はさらにジーク・エグゼシードの第2の効果を発揮させる。

 

 

「さらに!!ジーク・エグゼシードの効果!!ターンに一度、手札にある神皇スピリットか十冠スピリットのカードを煌臨元に追加する事で相手のライフ2つを破壊する!!」

「なにっ!?」

 

「俺は手札のエグゼシード・ビレフトのカードを追加し、効果を発揮させる!!………龍神炎砲!!」

手札4⇨3

 

 

晴太が手札にあるビレフトのカードをジーク・エグゼシードの煌臨元に追加すると、ジーク・エグゼシードはその眼光を強く放ち、口内から莫大な火炎放射を発射。

 

それはメタルシードラモンをも退かし、一直線に海皇の元へと届き………

 

 

「くっ!!…ぐぅ!!」

ライフ4⇨2

 

 

そのライフを一気に2つ焼き尽くした。

 

そしてこの効果はこれだけではなく………

 

 

「さらにライフ2つの破壊に成功した時、ジーク・エグゼシードは回復する!!」

【龍神皇ジーク・エグゼシード+炎魔神】(疲労⇨回復)

 

「っ!!…回復まで……」

 

 

赤い光を一瞬だけ纏い、回復状態となるジーク・エグゼシード。その猛攻は最早とどまることを知らない。

 

 

「アタックは継続中!!」

 

 

回復状態の今尚もアタック中。

 

ジーク・エグゼシードは炎魔神との合体でダブルシンボルと化している。が故に残りライフ2の海皇はこれを直接受けるわけにはいかず…………

 

 

「迎え撃て我が高波!!メタルシードラモンッ!!」

 

 

メタルシードラモンでブロックさせるしかない。

 

鼻先のレーザー砲からビームを放ち、指示通りジーク・エグゼシードを迎え撃つメタルシードラモン。しかし、それは全くジークには通用せず………

 

ジークはお返しと言わんばかりに再び口内から莫大な火炎放射をメタルシードラモンへと放つ。

 

 

「うぉぉお!!……これが俺のエグゼシードだぁぁ!!」

 

 

今度は避けることは出来ず、メタルシードラモンはそれに命中。その巨大な体躯ごと焼き尽くされてしまう。

 

海皇の最強の高波は、晴太の最強のエグゼシードによって完膚なきまでに叩きのめされた。

 

 

「……ラストアタックだ!!もっかい行け!!ジーク!!」

 

 

ラストアタックと称し、ジークに指示を出す晴太。

 

海皇は最早なす術がなく、ただそれを受け入れるのみ…………

 

 

「………良き波だ……ライフで受ける…」

ライフ2⇨0

 

 

ジーク・エグゼシードの炎を纏った強烈な突進が海皇のラスト2つのライフを木っ端微塵に粉砕した。

 

これにより勝者は空野晴太。見事、強敵海皇とメタルシードラモンを打ち砕き、勝利してみせた。

 

 

「っしゃぁ!!」

 

 

拳を固め、大きくガッツポーズを掲げる晴太。それ程までにこの勝利は晴太にとって大きかった。自分の成長をより一層感じる一戦であったのだ。

 

 

「………空野」

「海皇……」

 

 

そんな晴太の前に、海皇は歩み寄る。

 

 

「……良き波、良きバトルだった!!お前と最後の界放リーグで再び戦えた事、誇りに思う!!」

「っ!!」

 

 

握手を求め、手を差し伸べてきた。実際彼にとってこの予選での敗退はどれほど心苦しかった事だろうか。

 

しかし、それ以上に晴太とのバトルを誇らしく思ったからこそ、こうして目の前にいるのであって……

 

晴太もそれをわかっているからこそ……

 

 

「あぁ!!俺も最高だったぜ!!」

 

 

握手に応じ、同じ手を晴太も出し、その海皇の手を固く握りしめた。海皇もまた握り返す。

 

この2人。バトルを通して知らずのうちに親交が深まったようだ。これもまたバトルスピリッツの力と言えるのかもしれない。

 

 

「……ジーク・エグゼシード……へぇ〜〜あんな隠し球持ってたのかあいつ……まぁちょっとは楽しみにしておこうかな」

 

 

そう言って、そのバトルを観戦していた赤羽茜はバトル場を降り、スタジアムから去って行った。

 

これにて第3回界放リーグのジークフリード校の予選は終了。代表は赤羽茜と空野晴太だ。

 

 

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉


晴太「本日のハイライトカードは【龍神皇ジーク・エグゼシード】!!」

晴太「ジーク・エグゼシードは龍皇ジーク・フリードの力が宿った最強のエグゼシードだ!!メインステップで煌臨して高打点を叩き込むぞ!!」


******


〈次回予告!!〉


いよいよ始まる第3回界放リーグ。順調に勝利していく晴太。そんな中、赤羽茜は去年1位を獲得した九白一族の九白草壁とあたり……次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ外伝【エグゼシード伝説】…「一族の天才」…今、伝説が進化する!!

******


※サブタイは変更する可能性があります。

最後までお読みくださり、ありがとうございました!!

コレオン、不足コストにならなくてよかったね

外伝なのですごくポンポン話が進みます。違和感を覚える方もいるかもしれませんが、界放リーグまでの話に27話かかった本編とは違い、この外伝は早く終わらさないといけないので、どうしてもこうなってしまうのです。その点はご了承の程よろしくお願いします。

先生にこんな過去があったんだーー感覚でお読みになっていただければ幸いです。

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