6つの区域から成り立っている界放市の中央にある大きなスタジアム。普段ならば立ち入りさえも禁じられるこの場所。しかし今日に限って観客席は界放市の人々や中継カメラでいっぱいいっぱいになっており、まるで祭りでもやっているかのように外壁は装束で色とりどりに飾られていた。
無理もない。何せ、今日は界放市の一年に一度の祭典、【界放リーグ】なのだから。界放市だけではなく、日本中の誰もが注目する行事なのだ。
そこで上位に食い込めばプロ入りもほぼ確実。界放市の各6つの学園から2枚ずつ選出された生徒達は殆どがそのためにこの場で凌ぎを削る。
そんな栄誉ある場に、一木花火の一番弟子、空野晴太はジークフリード校の代表としてバトルしており………
「いけぇ!ビレフト!!」
地を駆けるエグゼシード・ビレフト。狙うはデスペラード校の生徒のライフ。その数は既に1。もはやなす術なく………
「……ライフで受ける…………くっ!!」
ライフ1⇨0
ビレフトの一角がその男子生徒の最後のライフを貫いた。ガラス細工が割れたような音がこだまする時、観客席から観客達が晴太に向かって轟音のような大きな声援を送る。
「っしゃぁ!!」
腕をL字に曲げ、ガッツポーズを掲げる晴太。相手は昨年も3位という有終の美を飾った1人だというのにもかかわらず完勝してしまった。新進気鋭の学生バトラーの登場に、観客達やジークフリード校の理事長、龍皇竜ノ字は興奮しないわけがなかった。
既に第3回界放リーグも2回戦に突入しており、今のバトルがその最後の試合だったのだ。晴太はこのままシードとして決勝への進出が決定した。
次は準決勝。その対戦する両者とは………
《準決勝……ジークフリード校2年…赤羽茜》
《同じく準決勝……オーディーン校3年…九白草壁》
この2人だ。茜も当然晴太のようにこの界放リーグを難なく勝ち上がっていた。
このアナウンスが聞こえてくるや否や、晴太はバトル場を降り、既にスタンバッていた茜の方へと赴く。
「へっ!!どうだ茜!!決勝に行ってやったぜ!!」
「あぁそ、運が良かっただけじゃない?」
「うるせぇ!!実力だっての!!」
啀み合う2人。だが、これがいつもの2人の会話。茜は定かではないが、晴太は少なくとも茜の実力を認めているからこそ、悪態をつくような話し方ができる。
その後、晴太は茜の準決勝を見届けるべく、バトル場の端まで離れる。逆に茜はバトルするために栄誉あるその場へと向かい………
その相手と対峙する。
「へぇ〜〜お前があの赤羽一族……少数派だが赤属性最強と謳われる一族」
「………赤羽茜だ!!よろしくな!!」
既に小物臭漂うこの黒髪の男子生徒。開口一番で話した内容はバトスピ一族に関する事。茜が一族であることは認知しているようだ。
彼はオーディーン校3年の九白草壁。大人数存在する九白一族の今年度の最高傑作と呼ばれる存在。去年、一昨年と、ジークフリード校の海皇静怒を破り優勝している。
その実力だけは折り紙つきであり、天賦の才能を持っている。ただ、この通り人間性は他の九白一族達に溺れずクズだ。
茜はそんな相手だと漂う雰囲気だけで理解しているにもかかわらず、いつものように元気良く笑顔で挨拶をした。
「んじゃ、早速始めるか!!」
「くっくっく…身の程知らずめ……九白随一の天才であるこの俺とのバトルを望むなんてね…先に行っておこう、赤では白には勝てん!!」
2人はそう言いながらBパッドを懐から取り出し、展開。
そして始まる。第3回界放リーグの栄誉ある準決勝が………
「「ゲートオープン、界放!!」」
コールと共にバトルが始まる。先行は茜だ。
[ターン01]茜
《スタートステップ》
《ドローステップ》手札4⇨5
「メインステップ!!先ずはネクサスカード、勇気の紋章を配置!!ターンエンドだ!!」
手札5⇨4
リザーブ4⇨0
トラッシュ0⇨4
【勇気の紋章】LV1
バースト【無】
茜が颯爽と呼び出したのは赤のネクサスカード、勇気の紋章。彼女の背後に太陽を模した紋章が太陽に成り代わるように浮かび上がって来た。
茜がいかに過激で攻撃的なカードバトラーと言えど、先行の第1ターン目はできることは限られている。茜はそのターンをエンドとし、草壁へと渡した。
「全く、暑苦しいネクサスだな、低俗な赤属性らしい」
ターンを始める前、草壁は茜の配置したネクサスに向かってそう差別的なセリフを言い放つ。
九白一族にとって、白属性が全て。6つある色属性の中でも白こそが至高にして最高であると幼少期から教授されている。それが故に、ほとんどの者は他の5色を見下す傾向にある。
しかも、それが白属性とは特色が相反する存在であるといえる赤属性だったら尚のことであり………
「アッハハ!!カッコいいだろ?…無駄口叩いてないでさっさとターンを進めなよ!!」
「フンッ、減らず口を…!」
だが、茜はそんな九白草壁の言葉を前にしても全く意に介さず、己が道を貫き通すかのような発言をしてみせる。
草壁はそんな茜の高笑いを黙らせるべく、自分のターンを、バトルを進めていく。
[ターン02]草壁
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ4⇨5
《ドローステップ》手札4⇨5
「メインステップ!!俺もネクサスカード、ラインの黄金をLV2で配置し、エンドだ!!」
手札5⇨4
リザーブ5⇨0
トラッシュ0⇨3
【ラインの黄金】LV2(2)
バースト【無】
草壁が背後に配置したのは巨大な黄金の塊。このカードの効果によって、お互い、武装スピリット以外の召喚時効果は使用できなくなる。茜の持つアグモンなどの成長期スピリットのサーチ効果が妨げられる事になる。当然それ以外も止められるため、残しておくとかなり厄介な存在であると言える。
[ターン03]茜
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
《ドローステップ》手札4⇨5
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨5
トラッシュ4⇨0
「メインステップ……んーーーそうだなぁ、もう1枚、ネクサス、竜の尻尾奇岩を配置!!」
手札5⇨4
リザーブ5⇨3
トラッシュ0⇨2
「……!!」
茜は背後に2枚目のネクサスカードを配置する。うねうねと聳え立つのは竜の尾のように見える奇妙な岩。これは茜のデッキにおいての白対策とも言えるカードであって………
「竜の尻尾奇岩の効果で私の地竜スピリットは相手の効果で手札、デッキに戻されない」
「……知ってますとも」
茜の持つアグモンやグレイモン系のスピリットは皆系統に地竜を含んでいる。竜の尻尾奇岩の効果でバウンス効果をシャットダウンできるのだ。
お互いにお互いのメタカードを配置していくこの最序盤。様子見としては余りにも長すぎると言えるが、これはお互いに実力やデッキのパワーが高い事を同時に表しており………
「…さらに、勇気の紋章をLVアップし、マジック、フェイタルドロー!!カードを2枚引いて、エンドだ」
手札4⇨5
リザーブ3⇨0
トラッシュ2⇨4
【勇気の紋章】LV1⇨2(0⇨1)
バースト【無】
茜はさらに赤属性らしくドローマジックで手札を軽く潤し、そのターンをエンドとした。
次は草壁のターンだが、その前に発揮される効果があって…………
「ラインの黄金LV2効果、このターン、俺のライフが減っていないため、ドローかコアブーストを選択し、発揮させる…コアブーストを選択!!」
リザーブ0⇨1
ラインの黄金に若干の亀裂が生じ、その破片がコアとなって草壁のBパッド上に落ちる。茜がバトル中草壁のライフを減らさなければ、どんどんラインの黄金は無くなっていく事だろう。しかし、全てなくなるにはかなりのターンが有されると思われるため、一バトルないで終わるわけがないが………
「白はドローが苦手だろ?コアなんか増やしていいのか?」
「構わない、既にこの手にお前を倒す手は出揃っているのだからな!!」
「あぁ、そ」
茜の言う通り、白属性は比較的ドローが苦手。受動的ではあるが、ラインの黄金のドロー効果は貴重であると言える。
だが、草壁はあえてドローはせず、コアを増やした。より早く大きなスピリットを召喚したいがためであろう。
……これが今後どう響いてくるのか…
[ターン04]草壁
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ1⇨2
《ドローステップ》手札4⇨5
《リフレッシュステップ》
リザーブ2⇨5
トラッシュ3⇨0
「メインステップ!!俺もさらにネクサスカード、No.24トリプルヘビーをLV2で配置して、ターンエンドだ!!」
手札5⇨4
リザーブ5⇨1
トラッシュ0⇨2
【ラインの黄金】LV2(2)
【No.24トリプルヘビー】LV2(2s)
バースト【無】
草壁の背後にあるラインの黄金を囲むかのように3つ重なったサーキットが出現。誰もそこを走ってはいないが、その存在はこのバトル中、かなり大きいものであって……
次は茜のターン。お互い速度の遅いバトルを送っているが、ここでようやく均衡が破られることとなる。
[ターン05]茜
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
「ドローステップ時、勇気の紋章、LV2効果でドロー枚数を1枚増やし、その後1枚捨てる」
手札5⇨7⇨6
破棄カード↓
【ダイナパワー】
勇気の紋章LV2効果。それは赤属性らしいドローステップ時での枚数を増やす効果。茜の場にグレイモンスピリットがいればカードを破棄する必要はなかったが、今回はそのうちの1枚を破棄した。
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨5
トラッシュ4⇨0
「メインステップ!!…どうやらそろそろ私のデッキが我慢の限界らしい………いくぞ九白一族」
「……!!」
茜から殺気が漂う。
草壁は唐突にここからが本当のバトルであることを察した。だが、それを目の当たりにしてもなお余裕の表情を浮かべている。余程自分に自信があることが伺える。
「メインステップ!!グレイモンをLV2で召喚!!」
手札6⇨5
リザーブ5⇨0
トラッシュ0⇨2
茜の背後からのっそのっそと姿を現わすのは立派な3本の頭角を携えた赤の成熟期スピリット、グレイモン。
「グレイモン……なんとも品のないスピリットだ」
「スピリットは見た目じゃないさ!!アタックステップ!!グレイモンでアタック!!」
茜は速攻でグレイモンにアタックの指示を送る。そしてこの時、グレイモンには発揮できる効果があり………
「グレイモンのアタック時効果、【超進化:赤】を発揮!!赤の完全体スピリット、メタルグレイモンに進化!!」
【メタルグレイモン】LV2(3)BP9000
グレイモンが0と1のデジタルコードに身を包まれていく。その中で大きく姿形を変え、やがてそれは破裂。中から新たに現れたのはグレイモンの完全体になった姿、メタルグレイモン。その左半身は機械化されており、ボロボロの翼が新たに生えている。
「アタックステップは継続!!メタルグレイモンでアタック!!」
「……ライフで受ける」
ライフ5⇨4
進化してもなお、アタックステップを止める事はなく、メタルグレイモンでそのままアタックを継続させる茜。防御手段を持ち合わせてはいないか、草壁をこれをライフでうける。
メタルグレイモンの機械化したアームが草壁のライフを1つ切り裂いた。
「………エンドステップ、トラッシュにあるダイナパワーの効果!!場に地竜スピリットがいる時、トラッシュから手札に戻る!!………これでターンエンドだ」
手札5⇨6
【メタルグレイモン】LV2(3)BP9000(疲労)
【勇気の紋章】LV2(1)
【竜の尻尾奇岩】LV1
バースト【無】
事前に勇気の紋章の効果で事前にトラッシュへと送っていたダイナパワーのカードを効果によって回収し、そのターンをエンドとした茜。
ようやくバトルが本格的に動き出してきた。次は草壁のターン。ここらで動かねば流石に差が大きく着いてしまうところだが………
[ターン06]草壁
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ2⇨3
《ドローステップ》手札4⇨5
《リフレッシュステップ》
リザーブ3⇨5
トラッシュ2⇨0
「メインステップ………見せてやろう赤羽一族!!これが美しき白のデジタルスピリットだ!!」
「……!!」
草壁の言葉に身構える茜。何かが来るのを雰囲気で直感的に感じたのだ。しかし、その表情は未だに余裕であり……
草壁同様余裕に満ち溢れているのが伺える。
「……トリプルヘビーの効果!!シンボルを3つにし、召喚の軽減に使う!!……召喚、ラピッドモン(テイマーズ)!!LVは2!!」
手札5⇨4
リザーブ5⇨0
【No.24トリプルヘビー】(2s⇨0)LV2⇨1
トラッシュ0⇨4
ジェット音を鳴らしながら草壁の場に降り立つのは緑の装甲を持つスマートな白の完全体スピリット、ラピッドモン。九白一族の中でも特に優秀な者しか持つことができないデジタルスピリットの一種だ。これを持つ者に負けは決して許されない。
「バーストをセットし、アタックステップ!!アタックしろラピッドモン!!」
手札4⇨3
飛び立つラピッドモン。狙いは当然茜のライフ。だが、茜はこれを迎え撃つべく、手札のカードを1枚引き抜き………
「待ってたぞ!!フラッシュ!!【煌臨】を発揮!!対象はメタルグレイモン!!」
【メタルグレイモン】(3s⇨2)LV2⇨1
トラッシュ2⇨3s
「……!!」
メタルグレイモンが赤く発光し、その姿形を大きく変えていく。そのエフェクトは紛うことなき究極進化。デジタルスピリットの中でも最高にして頂点に輝く存在が今、この場に煌臨する。
「竜殺しの鉤爪!!勇気の炎!!バトルに旋風を巻き起こせ!!…究極進化ッ!!」
手札6⇨5
赤き光を弾け飛ばし、現れたのは………
「…ウォーッ!!グレイモンッ!!」
【ウォーグレイモン】LV1(2)BP9000
グレイモンスピリットの中でも頂点に立つエーススピリット、ウォーグレイモンがこの場へと姿を見せた。因みに、ウォーグレイモンやメタルグレイモンは赤属性ではあるが、カード的には半分白属性でもある。
「……半分だけ白属性ってのが一番腹立たしんだよな………不純物が、いい気になるなよ」
九白である草壁はなによりもその点を軽蔑していた。バトルにおいて本当にしっかりと見ないといけないものなどありふれているというのに。
九白の長年で凝り固まった思想が当然影響している。
「さっきから色がどうだとかうるっせぇななんでもいいだろ?……ウォーグレイモンの煌臨時効果!!」
「……!!」
「BP15000まで好きなだけスピリットを破壊する!!今はラピッドモンしかいないな!!…焼き尽くせ!!大玉ガイアフォースッ!!」
発揮されるウォーグレイモンの煌臨時効果。
掌の感覚を広げながら巨大な炎の球を形成していくウォーグレイモン。そしてそのままそれを向かってくるラピッドモンへと投げつける。
太陽のようにあまりにも巨大すぎる炎の球。ラピッドモンは逃げ場なくそれと衝突し、焼き尽くされる。
………かと思えたが….
「……あり?」
爆発による爆煙と爆風。それが晴れる時、茜が目にしたものは、まさかのラピッドモン。ラピッドモンはウォーグレイモンのガイアフォースを直で受けたというにもかかわらず、その装甲には傷1つ付いてなく、ピンピンしていた。
これは単純な茜の勉強不足。
「馬鹿め!!ラピッドモンは【超装甲:赤/緑/白】を持つ!!その程度の炎で破壊できるものか!!」
「あらあら、」
ラピッドモンには白特有の装甲効果を持っており、赤の効果は受け付けない。
だが、茜はそれを知った後でもたいして同様はせず、変わらずのおちゃらけた態度でバトルと向き合っている。それがまた草壁にとっては腹立たしくて………
「お前本当に一族か?…落ちこぼれじゃないだろうな!!」
「え?…あぁ、まぁ、私よりかどっちかというと弟の方が優秀ではあるかな」
軽く罵倒しようとしても、茜はそれを全く意に介さず平然といつも通りに返答する。ここまで来ると最早マイペースと言ってもいいかもしれないが、草壁の言うことを気にしていないのも周知の事実。
それに本当の事だ。本当に自分なんかより弟の方がよっぽど優秀で、優れている。茜は別に嘘などついていない。
「ちっ、アタックは継続中だ」
「おっ、だったな…ライフで受けるか」
ライフ5⇨4
ラピッドモンの腕部から放たれるミサイルが茜のライフへと直撃し、それを1つ木っ端微塵に砕く。これでお互いにライフ4となる。
「……鈍い奴だ……ターンエンド」
【ラピッドモン(テイマーズ)】LV2(3)BP8000
【ラインの黄金】LV2(2)
【No.24トリプルヘビー】LV1
バースト【有】
茜の変わらぬ態度に若干の苛立ちを覚え、草壁はそのターンのエンドとした。
次はウォーグレイモンが場に残った茜のターン。ここからが本番だ。
[ターン07]茜
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ1⇨2
《ドローステップ》手札5⇨7
ドローステップ時、茜の配置しているネクサス、勇気の紋章の効果が発揮され、ドロー枚数が増える。今回は場にウォーグレイモンが存在していたため、捨てる事なく純粋に2枚のカードを引いた。
《リフレッシュステップ》
リザーブ2⇨5
トラッシュ5⇨0
【ウォーグレイモン】(疲労⇨回復)
「メインステップ!!輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉を召喚し、ウォーグレイモンと合体!!LVも3にアップ!!だ!!
手札7⇨6
リザーブ5s⇨1
トラッシュ0⇨2s
【ウォーグレイモン+輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉】LV3(4)BP21000
上空から地面に突き刺さるように降り注いでくるのは柄から赤き光を輝かせる聖剣、シャイニング・ソード。ウォーグレイモンはドラモンキラーを消滅させ、地面に刺さったそれを引き抜き、合体状態となる。
「さらに竜の尻尾奇岩もLVアップさせ、バーストをセット!!…アタックステップ!!この瞬間、竜の尻尾奇岩LV2効果でBPを3000アップさせる!!」
手札6⇨5
リザーブ1⇨0
【竜の尻尾奇岩】(0⇨1)LV1⇨2
【ウォーグレイモン+輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉】BP21000⇨24000
準備は万端だ。極限までBPが強化されたウォーグレイモンが草壁のライフを切り裂くべく剣を構える。
「ウォーグレイモンでアタックッ!!」
地を駆け、走り出すウォーグレイモン。目指すは当然草壁のライフ。
だが、草壁はまるでこのタイミングを待ち望んでいたかのように、口角を上げ、手札のカード1枚を引き抜いた。
………それは九白一族最強のカード。
「馬鹿め!!単調な攻撃法しか知らんのか!!フラッシュ!!【煌臨】発揮!!対象はラピッドモンッ!!」
【ラピッドモン(テイマーズ)】(3s⇨2)LV2⇨1
トラッシュ4⇨5s
「…!!……お前も煌臨か……」
大気が揺れ動く。その凄みにウォーグレイモンは思わずその足を止めてしまう。
すると、ラピッドモンが白き光の中に身を包まれ、新たな姿へと大きく変えていく。本当に大きく、その機械の身体はどんどん巨躯なるものへと変貌していき………
「その圧倒的たる火力を見せつけろ!!究極進化ぁぁあ!!」
手札4⇨3
光を解き放ち、新たに現れたのは………
「セントガルゴモンッ!!」
【セントガルゴモン】LV1(2)BP10000
巨大なマシーン型の究極体スピリット、セントガルゴモン。その見た目は犬のような顔立ちだが、装備されている武装は見渡す限りどれもが重火器。
圧倒的火力と言わしめる分にはそこに理由があるのだろう。
「へぇ〜〜デッケェなぁ!!」
普通のカードバトラーであったらその驚異的な存在に震え、また、怯え出す事だろう。しかし、茜にそんな感情は一切なく、ただ単に目の前の強敵とのバトルに心を踊らせていた。
「笑ってられるのも今のうちだけだ!!煌臨時効果!!相手のスピリット1体、ネクサスかバースト1枚を同時にデッキ下に戻す!!」
「……!!」
「俺はお前のネクサス、竜の尻尾奇岩を下へと戻す!!………ジャイアントミサイルッ!!」
セントガルゴモンは両肩にある砲塔からミサイルを茜の背後にある尻尾奇岩へ向け放つ。その狙いが外れるわけがなく、命中し、岩は跡形もなく消え去っていった。
この損失により、茜のスピリットたちは皆バウンス効果を受けるようになってしまった。
「ふぅ〜〜ん……まぁでもアタックは継続中だ」
「……それはライフで受ける」
ライフ4⇨2
今度は立ち止まる事なく、ウォーグレイモンは草壁のライフまで赴き、草壁のライフをシャイニング・ソードで一刀両断してみせる。草壁のライフは一気に2つ破壊された。
…そしてまだウォーグレイモンの攻撃は止まらず………
「ウォーグレイモンのアタック時効果発揮!!トラッシュにあるソウルコアをウォーグレイモンに置く事で相手のライフ1つをボイドに送る!!」
トラッシュ2s⇨1
【ウォーグレイモン+輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉】(4⇨5s)
「……!!」
「炎剣技…トライデントガイアッ!!」
「………ぐうっ!!」
ライフ2⇨1
ウォーグレイモンはシャイニング・ソードの剣先からガイアフォースの力を一点に集中させ、草壁のライフへと射出。それは彼のライフをいとも容易く貫き、溶解してみせた。
だが、その強力な一撃でも、今一歩勝利には届いておらず………
「フッ…終わりか?……ならばライフ減少によりバースト発動!!絶甲氷盾!!ライフを1つ回復!!」
ライフ1⇨2
草壁の場に伏せられていたバーストカードが反転し、瞬時にライフが1つ回復する。
「んーーーまぁいっか…エンドだ」
【ウォーグレイモン+輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉】LV3(5s)BP21000(疲労)
【勇気の紋章】LV2(1)
バースト【有】
そのターンをエンドとする茜。
だが、セントガルゴモンの煌臨時効果によってバウンス耐性を与える竜の尻尾奇岩を失ったことにより、草壁がウォーグレイモンをそれで除去しようとしているのは目に見えていて………
[ターン08]草壁
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ2⇨3
《ドローステップ》手札2⇨3
《リフレッシュステップ》
リザーブ3⇨8
トラッシュ5⇨0
【セントガルゴモン】(疲労⇨回復)
「メインステップッ!!セントガルゴモンのLVを3にアップッ!!」
リザーブ8⇨6
【セントガルゴモン】(2⇨4)LV1⇨3
LVが上がった事を知らしめるかのように拳を固め、サムズアップするセントガルゴモン。流石は九白一族最強のカードと言ったところか、その圧力はウォーグレイモンにも勝も劣らない。
「このままアタックステップッ!!セントガルゴモンでアタックッ!!効果によりスピリットとネクサスの効果は受けない!!」
ロケットでも飛び立ったかのような轟音を鳴らしながら、ジェット噴射で空を飛行するセントガルゴモン。狙うは当然茜のライフ。
そして、この瞬間にも、セントガルゴモンには発揮できる効果があって………
「さらにアタック時効果!!煌臨時と同じ効果を発揮させる!!お前のバーストとウォーグレイモンをデッキ下に戻すッ!!」
「……!!…アタック時でも使えたのか」
セントガルゴモンの相手のカードをデッキ下に戻す強力な効果は、煌臨時、そしてアタック時に適応できる。草壁はこの効果を最大限に発揮させるためにずっと引きつけていた。効果の効用が最大に得られるこのタイミングを………
……そしてそれが今、草壁はこのターンで決着をつけるべく攻撃を仕掛けてきたのだ。
「セントガルゴモン……フルバーストッ!!」
「……!!」
ありったけの兵器を一斉に発射するセントガルゴモン。雨のように降り注ぐその爆発は茜の場にいるウォーグレイモン、そして伏せられているバーストカードをデジタル粒子レベルで分解し、彼女のデッキ下に戻した。
目の前にはウォーグレイモンと合体していたシャイニング・ソードだけが取り残される。
「さらにフラッシュマジック!!ホワイトポーションッ!!……効果によりセントガルゴモンを回復!!」
手札3⇨2
リザーブ6⇨5
トラッシュ0⇨1
【セントガルゴモン】(疲労⇨回復)
「……!!」
白マジック、ホワイトポーション。それは単純ながらに強力な回復効果。白き光を浴び、セントガルゴモンが疲労状態から回復状態となる。これにより、このターン、二度目のアタック権利を得た。
普通のスピリットの二回攻撃ならばまだ軽いものだろう。しかし、それがセントガルゴモンならば話は変わってくる。強力なアタック時効果もそうだが、何より………
「セントガルゴモンはダブルシンボル!!一度のライフで2つのライフを破壊するッ!!」
……そう。
元から2つのシンボルを持つセントガルゴモン。その二回連続アタックで与えられるダメージは4。
そして茜の残りライフも4。全て受けて仕舞えば彼女の負けが決まる。
去年も一昨年も、彼、九白草壁はそうやって学園での代表選抜戦や界放リーグを勝ち上がってきた。この単純ながらに強力なカウンターコンボで………
「終わりだッ!!落ちこぼれ一族!!」
「……カウンター……ねぇ、私も引きつけておくのは好きだぞ……!!」
だが、それが通じるのは去年まで………バトルの時代や流れは急速に変化を続けていくものだ。茜は余裕な表情を浮かべたまま、手札にあるカードを1枚抜き取った。
「……フラッシュ!!…手札にあるブラックウォーグレイモンの効果を発揮!!」
「なにっ!?」
「相手のBP8000以上のスピリットがアタックしている時、フラッシュタイミングで召喚できる!!」
リザーブ5⇨4
トラッシュ1⇨2
茜の手で輝くのは1枚のデジタルスピリット。それはあの超人気プロバトラー、一木花火も愛用する1枚であって………
「邪悪なる鉤爪!!漆黒の炎!!戦いに終止符を討てッ!!召喚!!ブラックウォーグレイモンッ!!………LV3!!」
手札5⇨4
リザーブ4⇨0
【ブラックウォーグレイモン】LV3(4)BP15000
漆黒の炎が茜の場を埋め尽くす。それは地面を燃やしながら、中から新たなるスピリットを誕生させていた。
その中のスピリットはその漆黒の炎を振り払い、姿を見せる。その名はブラックウォーグレイモン。その名の通りウォーグレイモンが黒くなった姿だ。
「ぶ、ブラック……だと!?」
「お前も勉強が足りねぇんじゃねぇの?…ブラックウォーグレイモンと言ったら一木花火さまのウォーグレイモンと並ぶ双璧だろ?」
この当時、プロバトラーである一木花火はあまり公式戦でブラックウォーグレイモンを使用していなかった。が故に、未だにその認知度は高いとは言えず、寧ろ知っている方が珍しいと言える。
「さぁ!!行くかブラックッ!!あのデッケェ人形を叩き壊してこいッ!!」
「に、人形だと!?ふざけるなよ赤の一族!!」
迫ってくるセントガルゴモンに向かって勢いよく飛び立つブラックウォーグレイモン。その黒いドラモンキラーが太陽の光で輝く。
……だが…
「セントガルゴモンの方がBPは上ぇ!!返り討ちにしろ、セントガルゴモンッ!!」
BPは僅かながらにセントガルゴモンの方が上であって、ブラックウォーグレイモンの一撃は硬い装甲に阻まれ、弾き飛ばされてしまう。
しかし、茜に抜かりはない。手札にあるカードをさらに抜き取る。
「お前視野ゼロか……フラッシュマジック!!ダイナパワー!!このターン、ブラックのBPを3000上げる!!」
手札4⇨3
【勇気の紋章】(1⇨0)LV2⇨1
【ブラックウォーグレイモン】BP15000⇨18000
「……な、な、なんだと!?」
「勇気の紋章の効果で一度捨てて、効果で加えてただろ?忘れたのか?」
発揮されたのは単純なBPアップマジック。ダイナパワー。茜は事前に効果でこれを加えており、草壁はそれが影響を及ぼすとは思っても見ず、すっかり頭の中から存在が抜け落ちていた。
九白一族の殆どの者達は視野が狭い。特に草壁のような上昇志向の強いエリートは。今回はそれが特に反映されたといえよう。
「バトル続行!!もっかい行け!!ブラックッ!!」
「……!!」
ブラックウォーグレイモンは負けじと今度は両手を上に上げ、身体をドリルのように高速回転させ、セントガルゴモンへと飛び向かう。
まるで黒い旋風。セントガルゴモンはそれを止めようと爆撃の嵐を振らせるが、ブラックウォーグレイモンはその全てを貫きながらどんどん距離を縮めていく。
「……漆黒槍…ブラックトルネェェェエドッ!!」
そしてついに、直撃、セントガルゴモンの腹部はブラックウォーグレイモンに貫かれ、貫通する。
貫いた直後に、上空で元の状態に戻るブラックウォーグレイモン。背後を振り返ることなく、大爆発を起こしたセントガルゴモンの爆風をただただ背中で感じ取っていた。
「ば、バカな………俺のセントガルゴモンが………」
【ラインの黄金】LV2(2)
【No.24トリプルヘビー】LV1
バースト【無】
「よくその程度の戦術で私に喧嘩売ってきたな…こんな奴が九白のエリート?……全く、お腹が痛いや」
項垂れる草壁。
信じられるものか、九白のエリートとして、オーディーン校のトップとして長らく君臨していた自分がこんな赤属性の一族などに負けようとしていたのが……
だがこれは夢ではなく現実、茜とのバトルから、今までが単純なカードパワーだけで勝っていたことが目に見えている。
これを機に、九白の最強デッキ、セントガルゴモンのデッキは同じく九白の別の誰かに移ることになるだろう。
[ターン09]茜
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
《ドローステップ》手札3⇨4
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨3
トラッシュ2⇨0
【ブラックウォーグレイモン】(疲労⇨回復)
「メインステップ……シャイニング・ソードをブラックに付け直す!!」
【ブラックウォーグレイモン+輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉】LV3(4)BP20000
合体先がいなくなり、地面に突き刺さっていたシャイニング・ソードを、今度はブラックウォーグレイモンが引っこ抜き、合体する。その様子は全くウォーグレイモンと同じであり、聖剣を握るために、鉤爪の武装は消え、その鎧はより鋭角となっていた。
「……ほんじゃ、アタックステップ……やれ、ブラック」
シャイニング・ソードを手に持ち、走り出すブラックウォーグレイモン。目指すは当然草壁の残り2つのライフ。
彼には最早打つ手立ては残されてはおらず……
ラインの黄金の効果をドローにしていれば勝てる可能性はあったか………いや、ない。最大級の規模を誇る一族である九白であるからと、尊大な態度を取り、自分たちの方が優れていると勝手に思い込んでいるような人物に、最初から本物の天才である茜に勝てるわけがなかった。
「………自分から天才っていう奴にろくな奴はいないよな………あんたじゃ、私のバトルには着いてこれない………」
「嘘だ……俺は…俺は九白の……くのエリートなんだぞぉ!!……うわぁぁぉあ!!」
ライフ2⇨0
刹那。眼前まで急速に迫って来たブラックウォーグレイモンがシャイニング・ソードの一撃でラスト2つのライフを叩き壊した。
これにより勝者は赤羽茜。全くもって余裕そうな表情である。この圧勝に、思わず沸かずにはいられない観客達。今までの界放リーグでの上位者がここまでコテンパンになされたのだから無理はない。
そんな中、茜は後ろを振り向き、それをより間近で観戦していた晴太の方を振り向く。
「お〜〜い!!弟子くん!!…退屈だけはさせんなよ〜〜」
……と、元気よく手を振りながら言ってきた。その宣戦布告と言わんばかりの様子に、晴太は思わずニヤリと笑っていて………
「臨むところだ……俺の修行の成果……見せつけてやる……!!」
第3回、界放リーグの決勝戦が今すぐに始まろうとしていた。
〈本日のハイライトカード!!〉
晴太「本日のハイライトカードは【セントガルゴモン】!!」
晴太「セントガルゴモンは白の究極体スピリット!!効果耐性、バウンス、ダブルシンボルを持っていて、フィジカル面が特に強いデジタルスピリットだ!!」
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〈次回予告!!〉
ついに始まる界放リーグの決勝戦。晴太は茜に今までの特訓の成果を見せつけることができるのか……次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ外伝【エグゼシード伝説】…「認められた存在」…今、伝説が進化する!!
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※サブタイトルは変更の可能性があります。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!!