バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

79 / 129
第78話「認められた存在」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭から離れない極上のラッパのメロディが流れると同時に、観客の人々の歓声と言う名の轟音が鳴り響く。

 

第3回界放リーグ。

 

今年もいよいよ大詰め。ファイナリストは初参加のジークフリード校の2年生。上級生を下して勝ち上がってきたのは彼らが初である。もっとも、海皇を始めとする今の三年生達は皆学園に最初に通う事になった一期生であるため、必然的に初となるのは仕方のないことではあるが………

 

だが、そんな彼らの実力を疑うものなど誰もこの会場にはいやしない。これはバトルの祭典。観客にとってあり得ないような出来事など大好物である他ないのだから。

 

そんな中、中央スタジアムの大きなバトル場にて、顔を見合わせていたるのは、今年のファイナリスト、空野晴太と赤羽茜。

 

………今まさに、この両名の決戦の火蓋が切って落とされようとしていた。

 

 

「やぁやぁ、お弟子くん。まさかお前が最後に私の前に立ち上がるとは思ってもなかったよ、でも随分とシケタ面構えしてんじゃん!……頭でも痛いのかな?」

「ちげぇよ、今まさに俺の脳細胞がトップギアなのさ………お前を倒そうって必死こいてんだよ」

「……アッハハ!!減らず口だね」

「お互いな」

 

 

この時点、この時、この瞬間。

 

2人はお互いの実力を理解しつつあった。特に茜の方はそうだろう。まさかあの晴太が界放市一位になると言う目標を掲げていた自分の最後の相手になるとは思ってもいなかっただろう。

 

晴太は当然ながら、この戦いを勝ち上がってくれば、絶対に茜と出くわすと思っていた。だから参加したし、今日、この日のために対策も溢れんばかりに考えて来た。

 

 

「……茜、もうそんな会話はしなくいいはずだぜ?…ここは界放市で行われる界放リーグ。もっとも栄誉あるバトラーを決めるバトルだ。転校生のお前とて、知らないわけないよな?」

「……全く、相変わらずだね、君は。……退屈だけはさせないでおくれよ」

 

 

そう。ここは界放市の中央スタジアム。普段は物静かなこの大きなスタジアムは、毎年1回しか行われない界放リーグのためだけに使用される。

 

界放市のバトラーならば誰もが夢見るこの場に、本来、言葉など不要。ただやらねばやらないことは一つ。バトルスピリッツのみ。

 

晴太と茜はそう言い、自分の懐から取り出したBパッドを勢いよく展開。バトルの準備を瞬時に行った。

 

………そしてついに。

 

 

「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

第3回、界放リーグの決勝戦がコールと共に幕を開ける。

 

先行は晴太。

 

 

[ターン01]晴太

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ!!俺はネクサスカード、情熱サーキットを配置!!…ターンエンド」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨4

 

【情熱サーキット】LV1

 

バースト【無】

 

 

バトル場を囲うようにサーキットが出現する。このネクサスカードは晴太のデッキにとって大きな役目を担う可能性があるもの。初手でこれを配置できたのは大きいと言える。

 

次は茜のターン。

 

 

[ターン02]茜

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、私もネクサス、勇気の紋章をLV2で配置し、ターンエンド」

手札5⇨4

リザーブ5⇨0

トラッシュ0⇨4

 

【勇気の紋章】LV2(1)

 

バースト【無】

 

 

茜の背後に現れたのは太陽を模した紋章。それは彼女の使用するアグモンやグレイモンを象徴とするマークと言っても過言ではない代物。

 

 

「んだよ、動かねえのか?」

「そっちこそ……花火さまもインタビューで言ってたぞ、コアの増えない赤属性のデッキ、特にビートダウン系はネクサスの配置が大事だってな」

「俺はガキの頃からしょっちゅう聞いてたよ」

 

 

お互いにネクサスカードの配置だけで終了した初手のターン。だが、これは所謂嵐の前の静けさ、ここから急速にバトルが進展するのは目で見るより明らかな事であって………

 

 

[ターン03]晴太

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨5

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップ!!エグゼシード・ビレフトを召喚!!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨3

 

 

晴太の背後から何かが走る足音が聞こえてくる。やがてそれは晴太の頭上を飛び越え、場へと現れる。

 

そのスピリットはエグゼシード・ビレフト。晴太のデッキの序盤アタッカーとも呼べる存在である。

 

普通のバトルなら、晴太はここで一気呵成に攻め始めるはずだが………

 

 

「ターンエンド」

【エグゼシード・ビレフト】LV1(1)BP3000(回復)

 

【情熱サーキット】LV1

 

バースト【無】

 

 

「ま、だろうな」

 

 

晴太はアタックをせず、そのターンをエンドとしてしまう。

 

アタックする事に得があるビレフトを召喚しながらアタックをしない事には理由がある。それは茜の配置したネクサス、勇気の紋章。勇気の紋章にはライフが減った時、BP5000以下のスピリットを破壊する効果がある。ビレフトのBPは3000。アタックしてしまえばみすみすビレフトを破壊してしまう事になる。

 

晴太はこの事態を避けるべく、召喚だけにとどまったのだ。

 

 

[ターン04]茜

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

 

 

「ドローステップ時、勇気の紋章LV2効果でその枚数を1枚増やし、その後1枚手札を破棄する」

手札4⇨6⇨5

破棄カード↓

【ダイナパワー】

 

 

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨5

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップ、アグモン[2]をLV2で召喚」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨1

 

 

茜の場にデフォルメされた肉食恐竜のような成長期スピリット、アグモンが召喚される。ただ、それはサーチ効果のあるアグモンではなく、全く別の効果を所有する2番目のアグモン。

 

 

「さぁってと、一発カマかけてみるか!…アタックステップ、アグモンでアタック!!」

「っ!!…進化しないのか!?」

 

 

アタックステップへと移行する茜。だが、アグモンの【進化】の効果は発揮させず、直にアタックの指示を送る。この様子から少なくとも今の茜の手札には成熟期スピリットがいない事が理解できる。

 

先ずは様子見のアタックといったところか……しかしながらビレフトよりかはBPが高い。晴太はこのアタックを…

 

 

「ライフだ!!」

ライフ5⇨4

 

 

アグモンの鋭い爪の攻撃が晴太のライフを引き裂いた。だがこの瞬間、晴太が事前に配置していた情熱サーキットの効果が発揮される。

 

 

「情熱サーキットの効果!!デッキの上からカードを1枚オープンし、十冠、神皇スピリットならノーコスト召喚できる」

 

 

情熱サーキットを火の玉が勢いよく駆ける。それはやがてサーキット内を飛び出し、晴太のデッキへと直撃、オープンする権利を与える。

 

 

「……カード、オープン!!」

オープンカード↓

【庚獣竜ドラリオン】◯

 

「!!」

 

「っしゃぁっ!!当たりだぜ!!…情熱サーキットの効果でドラリオンをLV1で召喚!!」

リザーブ2⇨1

【庚獣竜ドラリオン】LV1(1)BP5000

 

 

晴太の場に颯爽と現れたのは頭部は竜だが、胴体が猛獣のスピリット、ドラリオン。このスピリットもまた、ビレフト同様アタッカーとして効果を発揮できる。

 

 

「召喚時、BP5000以下のスピリット2体を破壊!!…アグモンを破壊する!!」

「!」

 

 

ドラリオンの口内から放たれる渦状の炎がアグモンを包み込んで行く。小さなアグモンがそれに耐えられるわけもなく、あっさりと焼却されてしまった。

 

 

「さらに!!この効果で破壊に成功した時、手札にあるブレイヴを召喚できる!!…異魔神ブレイヴ、炎魔神を召喚!!」

手札4⇨3

 

 

続けて現れるのは激しく轟音鳴らしながら回転する炎の歯車。その中から飛び出してきたのは、異魔神ブレイヴの1体、炎魔神だ。系統は機竜だが、その見た目はまるで巨大ロボットさながらだ。

 

 

「ドラリオンに直接合体!!」

【ドラリオン+炎魔神】LV1(1)BP10000

 

 

異魔神はルール上、合体する際、2体同時に直接合体する事はできない。1体ずつ順序よく合体しなければならない。そのため、晴太は先ず、ドラリオンに合体させる。

 

炎魔神は右手から光線を放ち、自身とドラリオンをリンクする。

 

 

「……あらあら、してやられたな……ターンエンドだ」

【勇気の紋章】LV2(1)

 

バースト【無】

 

 

偶発的ではあるものの、晴太の盤面をより強固たるものにしてしまった茜。だが、その表情にはまだまだ余裕があり、まるでそれを予知でもしていたかのよう。

 

晴太もこの程度で茜が同様しないことなど理解している。ならばここから一気に仕掛けるしかない。そう、思考を過ぎらせていた。

 

 

[ターン05]晴太

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨5

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ!!ドラリオンのLVを2に!!ビレフトをLV3に!!さらに炎魔神の左側にビレフトを合体!!」

リザーブ5⇨0

【庚獣竜ドラリオン+炎魔神】(1⇨2)LV1⇨2

【エグゼシード・ビレフト+炎魔神】(1⇨5)LV1⇨3

 

 

今度はビレフト。炎魔神は左手から光線を放ち、ビレフトと自身をリンクする。

 

 

「さらにバーストをセットして、アタックステップ!!……ドラリオンの効果で合体スピリットのBPを5000アップ!!」

手札4⇨3

【ドラリオン+炎魔神】BP13000⇨18000

【エグゼシード・ビレフト+炎魔神】BP11000⇨16000

 

 

吠えるドラリオン。それは仲間達の指揮を大きく向上させる。元は中コスト帯のスピリット達だと言うのにそのBPはもはやそんじょそこらの上級スピリットを軽く超えている。

 

 

「アタックだドラリオン!!」

 

 

地を駆けるドラリオン。目指すは当然茜のライフ。

 

茜は前のターンでスピリットを全て破壊されているため、この攻撃を防ぐことはできず……

 

 

「こんくらいは必要経費だな……ライフで受ける!持ってきな!!」

ライフ5⇨3

 

 

そのライフを差し出した。ドラリオンの竜の口がライフバリアに噛みつき、それを一気に2つ分破壊した。

 

 

「まだまだ行くぜ!!今度はビレフトでアタックッ!!効果で1枚ドロー」

手札3⇨4

 

 

今度はビレフトが地を駆ける。ビレフトもドラリオン同様、炎魔神と合体しているため、シンボル数は2。またライフ2つを破壊することができる。

 

 

「それ以上は減らさないな!!フラッシュ!!手札のブラックウォーグレイモンの効果を発揮!!」

「っ!!来たか……」

 

 

茜がこのタイミングでちらつかせたのはブラックウォーグレイモンのカード。攻防共に秀でているグレイモンデッキの優秀なスピリットだ。

 

それがここでも召喚される。

 

 

「邪悪なる鉤爪!!漆黒の炎!!戦いに終止符を討て!!ブラックウォーグレイモンをLV3で召喚!!」

手札4⇨3

リザーブ6⇨1

トラッシュ1⇨2

【ブラックウォーグレイモン】LV3(4)BP15000

 

 

漆黒の炎が地面を焦がす。その中で立ち尽くしているのは黒いウォーグレイモン、ブラックウォーグレイモン。それが腕を大きく振るいその漆黒の炎を飛ばし、晴太にその姿を見せる。

 

 

「……俺はそいつが出ると予想してBPを上げたんだ!!そのまま押し切ってやるッ!!」

 

 

今現在、晴太の場にいるスピリットはBP16000とBP18000。どれもブラックウォーグレイモンを超えている。これは晴太のブラックウォーグレイモンで酷い返り討ちに合わないための対策である。

 

だが、茜はそれさえをも軽く飛び越えてしまう。

 

 

「フラッシュ!!【煌臨】を発揮!!対象はブラックウォーグレイモン!!」

リザーブ1s⇨0

トラッシュ2⇨3s

 

「なにっ!?…ここで煌臨…ってことは!?」

「そう……あいつだ」

 

 

ブラックウォーグレイモンの黒いボディに光の亀裂が生じていき、カラーリングが急速に変化していく。それはまさしく原点回帰とも呼べる現象。

 

 

「竜殺しの鉤爪!!勇気の炎!!戦いに旋風を巻き起こせッ!!ウォォォォォッ!!グレイモンッ!!」

手札3⇨2

【ウォーグレイモン】LV3(4)BP16000

 

 

現れたのはグレイモンデッキのエース、ウォーグレイモン。状況も状況であることもあって、その存在感はブラックよりも遥かに大きく感じる。

 

 

「煌臨時効果!!合体によるBP加算を無視してBP15000まで好きなだけスピリットを破壊するッ!!」

「っ!!」

「BP13000のドラリオンを破壊するッ!!大玉ガイアフォースッ!!」

 

 

登場するなり両掌から太陽のような巨大な火の玉を形成し、それをドラリオンに向かって全力で投げ飛ばす。あまりにも巨大すぎるため、ドラリオンは避けることができず、直撃、焼き尽くされる。

 

 

「ドラリオンの損失により、BP加算効果は消失!!ビレフトのBPも下がる!!」

 

「……くっ!!」

【エグゼシード・ビレフト+炎魔神】BP16000⇨11000

 

「ビレフトのアタックはウォーグレイモンでブロックッ!!」

 

 

ドラリオンの破壊は別の所にも響いてくる。ビレフトのBPが極端に低下してしまった。これにより、BPが互角だった両者は一変してウォーグレイモンが優勢になった。

 

突進してくるビレフトをウォーグレイモンが両手で慣性を殺しながら受け止め、完全に止めると、荒々しくそれを蹴り飛ばした。さらにそこに巨大なガイアフォースを打ち込み、ビレフトにトドメをさした。

 

 

「……くぅ、結局全滅かよ」

「まだまだ甘いな、弟子くん!!」

 

「……ターンエンドだ」

【炎魔神】BP5000

 

【情熱サーキット】LV1

 

バースト【有】

 

 

圧倒的な実力。圧倒的な直感力。圧倒的な引きの強さ。どれも晴太にはないものを茜は保有している。

 

普通に考えたらここまでの天才にこんな凡人が勝てるわけがない。だが、ずっと特訓してきたのだ。血が滲むような努力をしてきたのだ。

 

絶対に勝つ。その晴太の信念は何よりも揺らぐことはない。

 

 

[ターン06]茜

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札2⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨4

トラッシュ3⇨0

【ウォーグレイモン】(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップッ!!輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉を召喚し、ウォーグレイモンに合体!!」

手札4⇨3

リザーブ4⇨1

トラッシュ0⇨3

【ウォーグレイモン+輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉】LV3(4s)BP21000

 

 

天空から勢いよく地面に突き刺さってくるのは、赤き聖剣、シャイニング・ソード。ウォーグレイモンはドラモンキラーを消滅させ、それを握り、引き抜く。

 

すると、その装甲や外装までもが変化し、より刺々しい姿に変わった。

 

 

「アタックステップッ!!ウォーグレイモンでアタックッ!!」

 

 

晴太の残り4つのライフめがけ走り出すウォーグレイモン。さらに茜は手札にあるカードを引き抜き、ウォーグレイモンをサポートする。

 

 

「フラッシュマジック、ガイアフォース!!…不足コストはウォーグレイモンのLVを下げて確保!!」

手札3⇨2

リザーブ1⇨0

【ウォーグレイモン+輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉】(4s⇨3)LV3⇨2

トラッシュ3⇨5s

 

「……!!」

 

「この効果で炎魔神を破壊し、ウォーグレイモンを回復!!」

【ウォーグレイモン+輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉】(疲労⇨回復)

 

 

炎魔神に降り注ぐ太陽のような巨大な火の玉。避けられるわけもなく直撃し、力尽き、大爆発を起こしてしまう。

 

さらにウォーグレイモンは一瞬だけ赤い光を纏い回復状態となる。これによりこのターンは二度目のアタック権利を得たが、それ以上に目に付いたのはトラッシュにソウルコアを送った事だろう。

 

茜はウォーグレイモンを回復させつつ、追加ダメージを与える下準備も着々と進めていた。

 

だが、前のターンで痛い返り討ちにあった晴太は、これを防御する手段はなく………

 

 

「ライフで受ける!!」

ライフ4⇨2

 

 

ウォーグレイモンの手に握るシャイニング・ソードの一撃が晴太のライフを一気に2つ木っ端微塵に粉砕する。

 

さらにそれだけでは終わらず……

 

 

「ウォーグレイモンのアタック時効果!!トラッシュにあるソウルコアをウォーグレイモンに置き、1点のダメージ!!………炎剣技…トライデントガイア!!」

トラッシュ5s⇨4

【ウォーグレイモン+輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉】(3⇨4s)LV2⇨3

 

「…ぐうっ!!」

ライフ2⇨1

 

 

ウォーグレイモンの追撃。シャイニング・ソードの先からガイアフォースの力を集約させ一直線に放つ。晴太のライフは追加でさらに溶解されてしまう。

 

だがまだ負けてはいられない。条件を満たしたバーストを発動させ、一先ずその嵐のように続く攻撃を消沈させる。

 

 

「ライフ減少により、バースト発動!!絶甲氷盾!!…ライフを1つ回復させ、コストを払いアタックステップを終了させる!!」

ライフ1⇨2

リザーブ9⇨5

トラッシュ0⇨4

 

 

晴太のライフが1つ元どおりになると同時に、場に猛吹雪が発生。ウォーグレイモンは吹き飛ばされ、茜の場に強制帰還される。

 

因みに、バーストマジックのその後のメイン、フラッシュ効果等は、バーストの発動に含まれるため、シャイニング・ソードの合体時効果のライフコストは適応されないのだ。

 

 

「さらに!!情熱サーキットの効果!!……カードをオープンッ!!」

オープンカード↓

【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル】◯

 

 

今度はライフの減少に反応し、情熱サーキットの効果が適応される。火の玉がデッキへ宿り、上から1枚オープンされる。それは爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼルのカード。

 

成功だ。召喚できる。

 

 

「よしっ!!成功だ!!…覇王と爆炎が融合する!!…召喚!!エグゼシード・バゼル!!」

リザーブ5⇨0

【爆炎の覇神皇エグゼシード・バゼル】LV3(5)BP20000

 

 

晴太の場に吹き上がる一本の極太の火柱。その中からそれを口に咥えた刀で引き裂きながら現れたのは一頭の馬。燃え上がるような羽織を着用し、今こそ姿を現した。

 

 

「……ほお?…まぁ1枚くらいは持ってるよな………エンドステップ、トラッシュにあるダイナパワーを回収し、ターンエンド」

手札2⇨3

【ウォーグレイモン+輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉】LV3(4)BP21000(回復)

 

【勇気の紋章】LV2(1)

 

バースト【無】

 

 

トラッシュに落ちていたダイナパワーのカード。茜の場に地竜スピリットであるウォーグレイモンがいるため、このターンは回収する事に成功した。

 

次はバゼルの召喚を成功させつつ、茜の攻撃を凌いだ晴太のターンだ。

 

 

「やっぱお前、すごい奴だぜ……」

「ん?どうしたんだい?急に褒めちぎったって勝ちは譲らないぞ?」

「お前と始めてバトルしたあの日から、なんとなくだけど、俺ってば、変わったんだ……自分を大きく見せようと背伸びしようとしていた自分からな」

 

 

ターンを始める前。晴太は胸の内にあった言葉をさらけ出していく。茜は興味なさそうになんとなく聞いている。

 

 

「エグゼシードを手に入れてから、色んなことがあった。まさかこの俺がこんな大舞台でお前のような天才とバトルしてるなんてよ」

「んーーどっちかっつーと私の弟の方が天才なんだがな?…司って言うんだけど」

 

 

この正念場を迎えた大一番の状況で、2人は改めてこの会場がどれほどのスケールであり、どれほど栄誉ある事なのかを再確認していた。茜にとってはそんな事は対して気にはならなかった事だろう。

 

だが晴太は違った。天才などではなく、凡人であると理解したあの初めての茜とのバトルの日からずうっと努力して、勝ち上がってきたのだ。感慨深いものが胸の奥には確かにあったのだろう。何せ、生まれて初めての努力だったのだから。

 

そんな晴太の事をまたなんとなく察したのか、茜は彼に向かって………

 

 

「弟子くん……」

「?」

「私は今、バトルに飢えている。強い相手を求めている。ここに来た本当の目的はそれなんだよ……男だったら口じゃなくて、自分のバトルで語るんだな」

 

 

茜は口角を上げ、ニヤリと笑いながらそう晴太に告げた。

 

 

「……あぁ!!望むところだ!!」

 

 

[ターン07]晴太

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨5

トラッシュ4⇨0

 

 

「メインステップッ!!行くぞ茜ッ!!」

「!」

 

 

メインステップの開口一番。晴太は手札の1枚に颯爽と手をかける。それは自分の持つ最強のエグゼシード。

 

 

「【煌臨】発揮!!対象はエグゼシード・バゼルッ!!」

リザーブ5s⇨4

トラッシュ0⇨1s

 

 

バゼルを囲むように火柱がさらに立ち昇る。バゼルはその中でさらに大きく姿形を変えていく。その炎の鬣はより大きく燃え上がり、羽織は消滅し、新たな武装が施されていく。

 

 

「龍の力宿るその時、全てを超越する神と化す!!……龍神皇ジーク・エグゼシード!!」

手札5⇨4

【龍神皇ジーク・エグゼシード】LV3(5)BP26000

 

 

さらにその炎を振り払い、現れたのはジーク・エグゼシード。龍と神を何持つそのスピリットはまさしく最強のエグゼシードと呼ぶに相応しい。

 

 

「おぉ、予選の時に使った奴だな」

 

「お前を倒すための切り札だッ!!…バーストをセットし、アタックステップ!!ジーク・エグゼシードでアタック!!効果でトラッシュのソウルコアを回収し、ウォーグレイモンに指定アタック!!」

手札4⇨3

トラッシュ1s⇨0

【龍神皇ジーク・エグゼシード】(5⇨6s)

 

 

晴太は早速バーストをセットしながら、ジーク・エグゼシードをウォーグレイモンの元へと走らせる。ジーク・エグゼシードは高らかに前脚を上げ、地を駆ける。

 

 

「ウォーグレイモンでブロックッ!!」

 

 

シャイニング・ソードにガイアフォースの力を集約させ、一点集中でジーク・エグゼシードへと放つウォーグレイモン。だが、ジーク・エグゼシードは難なくそれを回避する。

 

そしてその間。ジーク・エグゼシードはさらなる効果を発揮させる。

 

 

「フラッシュッ!!ジーク・エグゼシードのもう1つの効果!!手札にある十冠スピリットをジーク・エグゼシードの煌臨元に追加する事で、相手のライフを2つ破壊し、回復する!!」

「っ!!」

 

「俺は手札にある2枚目のビレフトをジーク・エグゼシードの煌臨元に追加する事で、効果を発揮!!……龍神炎砲!!!」

手札3⇨2

【龍神皇ジーク・エグゼシード】(疲労⇨回復)

 

「……ぐ、ぐうっ!!」

ライフ3⇨1

 

 

ジーク・エグゼシードの口内から放たれる業火。それはウォーグレイモンさえをも退き、地面を焼き尽くしながら茜のライフへと直撃、そのライフを一気に2つも破壊した。

 

さらに回復。ジーク・エグゼシードはこのターン、さらなる攻撃が可能となった。ここでウォーグレイモンを倒すことができればトドメの一撃をお見舞いする事ができる。

 

 

「全てをブチ抜けッ!!ジーク・エグゼシードッ!!」

 

 

ジーク・エグゼシードは改めてウォーグレイモンとのバトルにめをむけるや否や、凄まじい速度でウォーグレイモンを何度も何度も襲う。ウォーグレイモンはシャイニング・ソードでなんとか紙一重でいなし続けているが、これだけのBP差だ。破壊されるのは時間の問題であった事だろう。

 

……しかし、茜はまるでこのタイミングを待ち望んでいたかのように手札からカードを抜き取る。

 

……それは彼女を勝利へと導く切り札。

 

 

「……凄い破壊力だ………だけど、この程度じゃ、私には勝てねぇ!!フラッシュマジック、ダイナパワー!!…2枚使用する!!」

手札3⇨1

リザーブ3⇨1

トラッシュ3⇨5

 

「…なにっ!?」

 

「この効果でこのターン、ウォーグレイモンのBPを3000アップ!!それが2回分で、6000アップ!!」

【ウォーグレイモン+輝きの聖剣シャイニング・ソード〈R〉】BP21000⇨24000⇨27000

 

 

単純な赤のBP増強マジック。1枚は手札にある事は確認できていたものの、2枚目があることは晴太も知らぬ事であって………

 

完全に意表を突かれた。

 

 

赤い光を一瞬だけ纏い、ウォーグレイモンのBPが飛躍的に上昇する。そしてその眼光を輝かせると、何度も何度も突進してくるジーク・エグゼシードをシャイニング・ソードの一撃で叩き飛ばす。

 

吹き飛ばされたジーク・エグゼシードはなんとか態勢を立て直そうとするが、その間髪入れずウォーグレイモンはジーク・エグゼシードとの距離を詰め………

 

 

「私の勝ちだっ!!…破砕剣…ドラモンブレイカァァァァァア!!!」

 

 

シャイニング・ソードを上からで思いっきり振り、ジーク・エグゼシードを地面へと叩きつけた。巨体がめり込むほどの一撃に、ジーク・エグゼシードは堪らず大爆発を起こす。

 

飛び散った爆煙と爆風は、観客達に茜の勝利を確信させるにはあまりにも十分すぎた。

 

 

だがしかし………

 

 

この1人の凡人はやってのけた。

 

 

 

「……破壊後のバースト……五輪転生炎〈R〉!!」

「なにっ!?」

 

「トラッシュから破壊された皇獣スピリット1体を召喚する!!この効果により、破壊されたジーク・エグゼシードを復活させる!!……来い!!」

リザーブ10⇨5

【龍神皇ジーク・エグゼシード】LV3(5)BP26000

 

 

ここに来て初めて赤羽茜の余裕のある表情が崩れた。

 

上空に出現する炎の輪。それは黄泉の世界に繋がる輪である。そこをくぐり抜けて現れたのはウォーグレイモンに叩き潰され、破壊されたはずのジーク・エグゼシード。翼羽ばたかせ、宙から地へと降り立った。

 

決して茜はバトルにおいて隙を見せたわけではない。ただ、それ以上に晴太の戦術が上回っていたのだ。茜もそれを知っているからこそ………

 

 

「ふふ……これが一木花火の弟子の力か……」

 

 

静かに笑みを浮かべていた。自分の渇きを潤す相手が目の前にいたことに喜びを覚えていた。

 

……そして、

 

 

「……ジーク・エグゼシードでラストアタックッ!!駆けろ龍神よ!!」

 

 

最後のアタックの指示。

 

茜の残った手札にはそれを凌ぐ手段は残されてはおらず………

 

 

「…来な!!ライフで受けるっ!!!」

ライフ1⇨0

 

 

ジーク・エグゼシードの炎を纏った突進が、赤羽茜の最後のライフを思いっきり砕いた。

 

そのガラス細工が割れたかのような音は会場中に響き渡り、すぐさま轟音のような歓声に変わった。それは空野晴太と言う何にでもない凡人の勝利を湛えていたのだ。

 

場に残ったジーク・エグゼシードとウォーグレイモンは睨み合いながらゆっくりとこの場から消滅した。そして、バトルしあった2人は互いに中央まで歩み寄り……

 

 

「俺の勝ちだぜ……茜!」

「ふふ……あっはは!!!!!」

「っ!?な、なんだよ!?」

 

 

唐突大きく笑い出した茜に、晴太は戸惑いを見せる。だが、茜は決して気が狂ったわけではなく……

 

 

「……認めてやる」

「?」

「認めてやるよ、空野晴太!!お前は私の永遠のライバルだ!!」

 

 

茜はそう言いながら晴太に握手を求めるかのように手を差し出す。

 

そして晴太もまた、口角をゆっくりと上げながら同じ手を差し出し………

 

握手が交わされた。その瞬間にまた大きな歓声がこだまする。この年の界放リーグの決勝は、やがて伝説となり、優勝を収めた晴太の所有するエグゼシードデッキは【エグゼシード・フォース】と改めて呼ばれるようになって一躍有名となった。

 

 

「見てろよ【晴太】!!来年、同じ界放リーグの舞台でお前を叩きのめしてやるぜ!!」

「おうよ茜!!俺とお前は一勝一敗だからな!!来年また決着をつけようぜ!!」

 

 

来年の第4回界放リーグに向けてそう言い放つ茜。と、同時にこの時初めて晴太を下の名前だけで呼んだ。これは彼を認めたと言う証拠でもあり………晴太もそれに対して負けじと言い返す。

 

………だが……

 

 

「……ゲホ、ゲホ」

「?」

 

 

その途端軽く口を手で押さえ、咳き込む茜。

 

晴太はこの時、ただただ単純に決勝でのバトルに疲弊したものだと思っていた。

 

………そう、この時は………

 

 

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉


晴太「本日のハイライトカードは【龍神皇ジーク・エグゼシード】!!」

晴太「茜を倒すことができる俺の最強切り札!!今後ともよろしくな!!」


******


〈次回予告!!〉


あらから1年、いよいよ第4回界放リーグが幕を開ける。再び代表に選ばれた晴太と茜。やる気を十分に募らせる晴太。だが、茜の様子はどこか辛そうで………次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ【外伝】エグゼシード伝説…「着けられない決着」……今、伝説が進化する!!


******


最後までお読みくださり、ありがとうございました!!

外伝も後1話か2話で終わりを迎えます。こうしてみると意外と早かったですね。


さて、今月、19日はなんと、このバトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズの1周年です!!

ここまで私などの作品をお読みになってくださった方々には、本当に感謝しています。送られてくる感想等にどれだけ執筆のモチベーションを上げてもらったことか!!多分こんなに感想が来なかったら続けてなかったと思います!!

それでは改めて、読んでくださる読者の皆様、これからもバトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズと私、バナナの木を何卒宜しくお願いします!!

そして、せっかくの1周年記念という事で、何か特別な話を作ろうと考えました。

その予告が↓です。





1周年記念特別編予告!!


いつも通り、平和にバトルをしていた芽座椎名。しかし、ふとドローしたカードを見ると、それは「激突王のキセキ」と名が記されたカード。当然、椎名も知らないカードであり………椎名はそのカードの導きによって、ある伝説のカードバトラーと対面する!!

バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ 1周年記念特別編!!…「椎名VS弾!!」……バトスピが今、大きく進化を超える!!




※本編とは全く関係のないエピソードです。



******





どうでしたでしょうか。今月の19日を是非ともお楽しみにしていただけましたら幸いです!!



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。