バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

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第79話「着けられない決着」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空野晴太が第3回界放リーグで赤羽茜を下し、優勝を果たしてから約一年の歳月が流れた。街は再び界放リーグのシーズンとなっており、昨年度優勝した晴太と、準優勝者の茜の話題でもちきりだった。

 

今年は彼らも3年。これが最後の界放リーグとなる。そんな彼らの再戦を望まない者などこの街には誰一人としていないのであって………

 

 

「よお茜!!」

「?」

 

 

そんな第4回界放リーグが幕を開ける少し前の日、茜は学園の廊下で晴太と兎姫とバッタリ出会った。

 

 

「今年もお互い代表だな!!これで一年越しの決着を着けられるな!!」

「ほお?なんかいやに自信満々じゃないか、まぁいつものことか……あれから私も散々特訓したからな、負ける気はないよ」

 

 

圧倒的な強者達のオーラが廊下を覆っていく。生半可なカードバトラーでは到底近寄ることなどできやしない。兎姫でも精一杯だ。

 

こんな者達がバトルし合うのだから、界放リーグは嘸かしレベルが違うのだと理解できる。

 

 

「んじゃな…首を洗ってまってな」

「へっ、そっちこそ!!」

 

 

茜はそう言って、2人の元から去って行った。そんな茜の後ろ姿を見て、兎姫は何か思い至ることがあったのか、

 

 

「ねぇ、晴君、なんか茜さんなんか最近変じゃない?」

「変?」

「うん。授業もあまり出なくなったし、体育の授業に至っては参加したところなんて見た事ないの……疲れてるのかしら?」

 

 

ここ最近、兎姫が感じていた明らかにおかしな茜の違和感。去年の界放リーグが終了してからというもの、あまり授業に出席しなくなっていた。

 

 

「あぁ?あの茜だぞ?もともと頭悪いし、何かの見間違いだろ?」

「……だといいんだけど……」

 

 

晴太も兎姫に言われて少しだけ考えてみる。確かにここ最近そんな様子がなくもないが、あの赤羽茜に疲れたという言葉は辞書に存在するわけがない。何かの間違いだろう。

 

………と、この時思っていた。

 

 

******

 

 

そして、第4回界放リーグ前日の夜。赤羽一族の屋敷にて、茜は中庭で密かにバトルの鍛錬をつけてもらっていた。その相手は、彼女の父、【赤羽紅蓮】。

 

 

「ハァッ……ハァッ」

「おいおい、茜ちゃん!もうやめとけっての!…パパも眠たいしさ!」

 

 

バトルのやりすぎか、疲労困憊な状態に陥っていた茜。ノリは信じられないくらい軽いが、紅蓮は茜の身を案じ、休むよう声を送る。

 

 

「…ダメだ、親父……私はアイツに勝たないといけない!!約束したんだ!!界放リーグで決着を……」

 

 

既に満身創痍の状態。到底バトルなどできる状態ではない。紅蓮とて、そんな事はとうに見越している。

 

あの同年代ではついてこれる者がいないとまで言われた天才の茜がここまで本気にバトルの鍛錬を重ねるとは、紅蓮も思ってはいなかったに違いない。

 

 

「……ダメだ。休め…………死ぬぞ」

「!」

 

 

だが、父としてそれをやらせるわけにはいかない。おちゃらけてた態度を一変させ、高圧的な物言いで茜に言葉をぶつけてくる。茜は背筋が凍った。やはり、自分の父親には計り知れない力がある。特訓してもらうならこの人しか自分にはいない。

 

そう思うと恐怖など、死など恐るるにたりない。

 

 

「親父ぃ、私しゃ……もう長くない。自分が一番わかる」

「…………」

「だから最後はせめてラストバトルはあの界放リーグの舞台で……アイツに勝ちたい!!頼む!!」

 

 

本気の目で紅蓮に訴えかける茜。長くはないのは本当の事。茜は不治の病に侵されている。昔から。もうじき寿命が尽きる。

 

父親としては止めなくてはならない。少しでも長く生きてもらわねばならない。だが、そこまで言われては逆に後で後悔することになるのは自分だろう。

 

紅蓮はそう思うと、再びBパッドを展開せざるを得なかった。

 

 

「……仕方ない、後一回だけだ」

「サンキュー親父!!」

 

 

こうして、茜と紅蓮の深夜の特訓は続いたのだった。

 

しかし、紅蓮は茜の身を案じると同時に、別の事も気にしていた。あの茜をここまで変えるほどの人物の事を………

 

 

******

 

 

翌日、迎えた第4回界放リーグ。会場は例年を遥かに上回る盛り上げを見せていた。それもそのはず、今年もあの2人が参加するのだから、

 

空野晴太と赤羽茜………この2人のバトルを一目見ようと足を運んだ人も多くいたのだ。

 

 

「トドメだ!!ノヴァでアタック!!…超新星天撃…ノヴァ・ゲイザー!!」

 

「う、うわぁぁぁぁぁあ!!」

ライフ1⇨0

 

 

現在1回戦、晴太の操るエグゼシード・ノヴァの星をも砕く一撃が相手プレイヤーを襲い、そのライフをゼロにしてみせた。

 

これにより、晴太の勝利。難なく一回戦を突破した。三年生の最後の界放リーグも順調に駒を進めた。

 

 

「っしやぁ!!」

 

 

ガッツポーズを掲げると、周りの観客も大盛り上がり、いつかは自分もこんな街ではなく世界でできたらいいなと、この時の胸の中では思っており………

 

……そして、若干の時が流れ、次は茜の一回戦が始まった。こちらも終始ペースは茜が握ったおり、勝利するのは時間の問題だった。

 

 

「……よし、終わりだっ!!ウォーグレイモン!!」

 

「…くっ!!」

ライフ1⇨0

 

 

究極の龍戦士、ウォーグレイモンの鋭い鉤爪の一閃が相手プレイヤーの最後のライフをいとも簡単に引き裂いてしまった。これにより、勝者は赤羽茜。二回戦へと駒を進めた。

 

 

「……ハァッ、ハァッ、……勝った……」

 

 

しかし、バトル内容は完勝だったと言うのに、茜の表情はどこか疲れきっており、これは昨晩、父親と深夜まで鍛錬していたからではない。

 

アイツと、アイツとバトルするまでは負けられない。その思いだけが今の茜を突き動かしていた。

 

そして、また若干の時が経ち、二回戦の対戦リストが好評される。本来ならば、この二回戦は明日は持ち越しなのだが、今年は最初の試合だけは今日のうちに終わらせてしまうのだと言う。

 

その二回戦の対戦リストは………

 

 

赤羽茜と空野晴太だ。

 

両名は控え室の中でスタンバイした。決勝ではないのが少しばかり嫌ではあるが、願ったり叶ったりである。界放リーグで1勝1敗に決着をつけることができるのだから………

 

第4回界放リーグ、二回戦の場で、昨年のファイナリスト2名が中央のバトル場へと並び立った。2人の一年越しの対決に、観客達もこれでもかと言わんばかりの歓声を送った。

 

 

「よお茜!!やっとこの時が来たな!!」

「……あぁ、そうだな……」

 

 

………しかし、

 

 

「?……おいなんかお前顔色悪くねぇか?」

 

 

茜はとうに限界を迎えていた。晴太の言う通り、顔色は青ざめていて決していいとは言えず、去年と違い、覇気も全く感じられない。

 

流石に少々不安を覚える晴太。だが茜は………

 

 

「おいおいおい、どうした?……さっさと始めるぞ」

「い、いや、だって……」

 

 

茜はBパッドをスタンバイする。既にバトルなどする気力など残っていないと言うのに………晴太と決着をつけたいと言う執念だけがその体を突き動かしていた。

 

だが、その灯火も終わりを迎える。

 

 

「…っ!!……ゲホッ!、ゲホッ!……」

「おい!!本当に大丈夫……か?」

 

 

晴太の言葉が一瞬止まった。対角線上からでも見えてしまった。茜が普通に咳き込んだのではない。その勢いのまま、吐血していた。

 

 

「……え?」

 

 

晴太は頭の血がサァーっと流れ落ちていくのを感じた。流石にこれはやばい。と思い、茜の元へ駆けつける。

 

晴太同様にざわつく会場。大会スタッフの者達が担架や救急車に連絡を取っているのが目に映る。

 

 

「おい茜!!しっかりしろ!!」

「…おぉおぉ、まだ生きてますよ〜〜〜」

「ふざけてる場合か!!お前本当に体弱かったのかよ!!」

 

 

倒れた茜の肩を起こし、呼びかける晴太。茜はそれに対し、何故かおちゃらけた態度をとる。死にそうだと言うのに何をやっていると言うのか………

 

 

「悪りぃ晴太……決着はつけられそうにねぇわ」

「何弱気言ってんだよ!!生きろよ!!んでもってもう一度俺の前に立ち塞がりやがれぇ!!」

「……一年と半年くらい、お前と兎姫と一緒に入られたこと……誇りに思う」

「それが遺言とか言うんじゃねぇぞ!!絶対に生きろ!!」

 

 

どんどん茜の声が弱々しくなっていく。生気が失われていく。一番近くにいる晴太は誰よりもそれを感じ取っており……

 

……死なせない。死なせてなるものか、茜は自分のライバルだ。天才だ。そんな天才を超えることこそ自分は生きがいにしてるのだ。しかし、わかっていたことではあるが、その関係はもはや親友とも呼べる間柄であった。

 

だからこそ生きて欲しい。死なないでくれ……

 

……しかし、それはもはや決して叶わぬ夢。幻想なのだ。

 

 

「晴太ッ!!」

「!?」

 

 

茜は無くなってきた力を振り絞り、両腕を晴太の首元に回し、耳元で最後にこう囁いた。

 

 

「……私の人生…どいつもこいつもみんな弱過ぎてクソみたいな人生だったけど……あんたが私のライバルでいてくれて本当に良かった………ありがとう!!………うぅ、…ありがとう…っ!!」

「っ!?」

 

 

大粒の涙をこれでもかと流し、振り絞った掠れ声は、観客の騒ついた声など全く意に返す事なく晴太の頭の中に直接流れ込んで来た。

 

この時、晴太は気づいてしまった。

 

本当の別れに。もう自分が生きているうちは二度とこの友とは会えない。バトルする事は出来ない。況してや決着など…………つける事は出来ない。

 

 

茜は気を失い、倒れた。晴太の首元に回った両腕は、だらんと彼の肩に垂れ下がる。晴太はこの時、この状況が受け入れられず、何も言い返せないまま、ただただ茜を支えていただけだった。その後、担架が用意され、救急車のサイレンが遠くから聞こえてきたが………

 

………手遅れだった。

 

その後、赤羽茜は病院に搬送されるも、家族に、弟に最後の一言のみを残してこの世を去ってしまったと言う。当然、同じクラスだった晴太や兎姫にもこの事は耳にしていた。

 

 

 

******

 

 

 

それから少しだけ時は流れ、4日後、彼女の盛大なお通夜や葬式が行われた。晴太と兎姫もそこに制服で出席していた。

 

棺桶に入っていた茜の亡骸は今にも動き出しそうで、今すぐにでもウォーグレイモンを召喚しそうで、今すぐにでも晴太と決着をつけそうだった。

 

その後、火葬に埋葬、様々な過程を終え、ようやく葬式は終わりを迎えた。その終点地は埋葬を終えるまで、即ちお墓が出方途端皆解散するのだ。

 

大雨が降ってきた。皆避難するように解散しいく。だが、晴太はその茜の墓の前で立ち尽くしていた。表情を全く変えない、無表情のままで……

 

 

「晴君…帰ろう……」

「……………」

 

 

茜が死んでからずっとこうだ。晴太は兎姫の声すらまともに反応しない。ずっと黙り込み、何を考えているのかもわからない。

 

そんな晴太のどうしょうもない気持ちの行き場の事を何よりも理解している兎姫はこの場からゆっくりと晴太を置いて去っていった。

 

晴太は雨に打たれ続けながらずっと茜の墓の前で立ち尽くしていた。制服が濡れることも気にせず、まるで茜の死を悲しむ世界が流す涙を受け止めてるかのようだった。

 

 

「………おい」

「………」

「……お前が姉さんに勝ったって言う空野晴太か?」

 

 

誰かが横から話しかけてくるのがわかった。子供の声だ。男の子の。

 

その正体は当時11歳の司。姉を亡くしてまだ一週も経っていないというにもかかわらず、その立ち振舞いからは悲しんでいる様子には到底思えない。

 

 

「俺はいずれ、お前を超える!!……首を洗って待ってるんだな!」

「…………」

 

 

やる気を失った晴太にはこの幼き日の司の言葉はほとんど響いてはおらず……ただただ意味もわからず立ち尽くしていた。

 

司はそれだけを言い残すとその後はせっせと歩いて雨の中を去っていった。

 

晴太は相変わらず雨に打たれ続けた。

 

 

「………首を洗って待ってろ………」

 

 

しかし、司の言葉も完全に響いていなかったわけではなく………晴太は以前、茜がこれも同じような言葉を使っていたのを思い出した。そしてそれをはじめに、どんどんどんどん茜の言葉がフラッシュバックして蘇ってくる。

 

それは今思えばもう二度と戻れない青春だった。

 

 

 

 

ー『私の名前は【赤羽茜(あかばねあかね)】!!!一応赤羽一族ってのに属してる!!これからよろしくなッ!!』

 

ー『こいつ!!……こいつの後ろが良いです!』

 

 

 

最初はとんでもねぇ女だと思った。無神経で失礼で、男勝りで、うるさくて……

 

 

 

ー『私さ〜〜一木花火さまのファンなんだよ!!』

 

 

 

でも意外と乙女みたいな事も言ってて………人間味もあって…………

 

 

 

ー『……全く、相変わらずだね、君は。……退屈だけはさせないでおくれよ』

 

ー『認めてやるよ、空野晴太!!お前は私の永遠のライバルだ!!』

 

 

 

永遠のライバルだと思っていた。俺も。お前とだったらどこまでも強くなれると思っていた。本当に花兄みたいな凄いカードバトラーに慣れると思っていた。

 

 

ー『私の人生…どいつもこいつもみんな弱過ぎてクソみたいな人生だったけど……あんたが私のライバルでいてくれて本当に良かった………ありがとう!!………うぅ、…ありがとう…っ!!』

 

 

 

 

……思っていた……

 

……思っていた……のに……

 

 

 

「なんで!?……なんでだよ茜ねぇ!!死ぬなよぉぉぉぉぉ!!」

 

 

晴太の行き場の無い溢れんばかりの気持ちがとうとうその器から零れ落ちた。

 

溜まっていた分その爆発は大きく。雨と混ざりながら大粒の涙も流していた。

 

 

「決着はどうすんだよ!?花兄に合わなくていいのかよ!?……ふざけんなぁ!!……ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

墓をその拳で殴り始めた晴太。殴るだけでなく、蹴ったり、頭突きしたり、微動だにしない墓石をこれでもかと痛みつけた。

 

しかし、いくら暴力を振るっても、どんなに墓石に訴えかけても茜から返事が来るわけがなく……ただただ晴太の体に傷が付くだけだった。

 

………そんな時………

 

 

「おいおい思春期かい?……熱いね〜〜」

「!?」

 

 

声が聞こえる晴太は我に帰り、声の方を振り向く。そこにはある中年男性がいた。それは葬式でも見た。赤羽紅蓮だ。赤羽一族現頭領にして、茜の父親。

 

彼は悲しくないのか、特に涙を流す事なく、傘を差しながら晴太を見て笑っていた。

 

 

「茜も本望だったろうよ……何せ、バトル場で死んだんだからな……ハッハッハ!!」

「……なんで笑うんだよ!?…自分の娘が死んだんだぞ!?」

 

 

実の娘が死んだと言うのになんだと言うのだその態度は、晴太は紅蓮に対し怒りを露わにする。

 

だが、

 

 

「泣けば茜は帰ってくるのか?」

「っ!?」

 

 

紅蓮は途端に凄味のある圧力で晴太を黙らせた。しかし、それは一瞬だけであり、紅蓮は晴太の方が閉じるのを見るなり、元に戻る。

 

 

「………はぁ、成る程、お前が空野晴太か……」

「………」

「お前のお陰で茜はとても楽しそうだった。もともと体が弱くて寿命も迫ってたって言うのによ、あいつは界放市に残ってお前と決着つけたいって聞かなかった………」

「………」

「親父としてはもっと長くいて欲しかったけどな………せっかく赤羽一族の伝説のスピリットも受け継いだってのに……」

「………」

 

 

それなりの想いがあって紅蓮も今を生きていることを悟る晴太。辛いわけがない。娘を失って、苦しくないわけがない。

 

 

「………空野晴太、生きろよ、あいつの分までしっかり生きろ………んでもっでジジイになってから死にな、その時に茜との決着をつけるんだな」

「…………」

「そん時は多分俺もあの世だからよ〜〜酒のツマミでも食いながら見物させてもらうわ〜〜………そんじゃあな」

 

 

そう言って、紅蓮は晴太の元を去っていった。結局、晴太は紅蓮の言葉を黙って聞くことしかできなかった。

 

だけど、その通りだ。生きなければならない。あいつの分まで。しっかりと、逞しく、それでいて勇ましく……生きないといけない。

 

 

「ジジイになってから………か……はは、そん時俺が死んだら、お前は若い姿のままなのかな?」

 

 

そうイメージし、茜のことを思うと、不思議と空が晴れて来た。一筋の光明が差し込み、あっという間に信じられないほどの快晴に生まれ変わった。

 

 

「………長い長い修行期間になりそうだな……………茜!!……首洗って待ってろ!!」

 

 

晴太は笑顔を取り戻し、墓石に拳を突き立てて誓った。死んだ茜にも、自分にも………

 

 

******

 

 

 

あれから約一週間後……

 

晴太の家にて………

 

 

「だから違う!!そこはAじゃなくてB!!何回言えばわかるの!!」

「え〜〜どっちでもいいじゃん!…Aもきっと答えに書いて欲しいと願ってらっしゃる……」

「それじゃ点数貰えないから言ってんのよぉっ!!」

 

 

晴太は兎姫に勉強を教えてもらっていた。理由としては………夢ができたから………

 

 

「はぁ、……晴君さ、なんで急に【教師になる】なんて言い出したの?」

 

 

それは唐突に言った事だった。晴太はいきなり将来の夢を「教師」と改めた。このままいけば間違いなくプロバトラーになれたと言うのに………

 

教師など、実際は勉強嫌いな晴太にとっては一番嫌な仕事なはずだ。

 

 

「え?……んーー……なんて言うかなぁ?……見届けたいんだ」

「……何をよ?」

「青春さ!!……熱いバトル、ライバル関係を持つ奴らに最後の最後まで青春を謳歌してもらいたい!!………もちろん、それ以外の後輩達にもな!!」

「…………」

 

 

なんとなく晴太の言いたい事を理解した兎姫。晴太は自分と茜のような者達を出来るだけこれ以上作らないために自分が教師になってそれを守ろうと言っているのだ。

 

その掲げた夢はやがて身を結び、すぐさま新たなライバル関係を持つ2人の時代となる。自分はその片方を担うことになるのだが…………

 

そこまではもはや言うまでもあるまい…………

 

 

「あ、そうそう、私も教師になる予定よ」

「え?兎姫ちゃんマジ!?…ラッキー!!」

「ラッキー?」

「あぁ!!俺ってば、やっぱ兎姫ちゃんの横の方が落ち着くしな!!」

「……え?…な!?それどう言うことよ!?」

「え?言葉の意味のままだけど?」

 

 

晴太の無神経な言葉で顔を真っ赤にする兎姫。いわゆるフラゲが立つのだが、毎回毎回お約束の展開が再びこの場で起こる。

 

 

「うっさいわぁ!!ボンクラァァア!!」

「なぜぶべら!?」

 

 

兎姫の渾身のビンタが晴太を襲う。晴太は吹き飛ばされ、自室の壁に思いっきり叩きつけられた。

 

 

「あ、あの〜〜……兎姫ちゃん……兎姫姉様?……なんで私めは引っ叩かれるのでしょう?」

「……フンッ!!…知らないわよ!!……次の問題は教科書の138ページだから早く開けなさい」

「……えぇ?……」

 

 

いつもいつも理不尽で引っ叩かれると思っている晴太。彼が兎姫の秘めたる想いに気づく時はやってくるのだろうか…………

 

……晴太は渋々机に戻り、教科書の138ページを開く。………そしてそこにはこんなメッセージが刻まれ、残されていた。

 

それは茜が書いたものだった。晴太もそれを思い出す。

 

 

「………あ」

 

 

ー『お前一木花火の弟子だろ?』

 

 

 

この教科書に刻まれた一文は最初、晴太と茜が出会った時に茜が書いた晴太へのメッセージ。晴太と兎姫はそれを見て、懐かしく思い………

 

 

「っしゃぁ!!…勉強頑張るか!!」

「うん!!その域よ!!」

 

 

こうして、晴太は教師になるため、勉強に明け暮れたのだった。これも誰かの青春を守るため。

 

 

 

これにて、一木花火の弟子であり、芽座椎名の恩師である空野晴太の物語は一旦終わりを迎える。だが、芽座椎名の物語で、また彼は奮起し、活躍を見せる事であろう。

 

 

 

バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ外伝

 

エグゼシード伝説〈終〉

 

 

 

 

 

******

 

 

 

茜が亡くなり、2週間が経ったある日の夜の事だ。誰もいない墓場でその奇怪な出来事は起こった。

 

茜の墓石。その目の前の地面から何かが蠢く。まるで何かが地面の中で土をかき回しているかのよう………

 

……そして……

 

地面を突き破り、一本の腕が突き出てきた。

 

 

 






最後までお読みくださり、ありがとうございました!!

バトル無し回で申し訳ございません。ですが、今回で外伝は終わりです。色々と伏線があります。一期の話と照らし合わせると色々と面白いと思います!!

色々ありまして、「椎名VS弾」のエピソードも完成したので、予定を変更して、明日にそれを投稿したいと思います!!お見逃しなくご覧になってください!!それでは!!
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