1周年記念特別編『椎名VS弾!!』
界放市、バトスピ学園 ジークフリード校に通う2年の少女、芽座椎名は今日も元気よくバトルスピリッツに明け暮れていた。
いつものように学園の第3スタジアムの広大なバトル場にて、いつものようにBパッドを広げ、いつものようにコアを増やし、いつものようにスピリットを召喚し、いつものようにアタックし、いつものようにカードを力強くドローしていた………
………そんな時だ。
「行くぞ真夏!!私のターンだ!!」
「よっしゃかかって来いや!!」
対戦相手の関西弁訛りの強い少女、緑坂真夏に向かって勢いよくターン進行を宣言する椎名。
バトルは局面。このターンのドローステップで大きく勝敗を左右するであろうこのタイミングで、事件は起こった。
「……ドローステップッ!!………ん?」
椎名は右手で勢いよくデッキの上からカードを1枚ドローし、それを確認するが、そのカードは自分のデッキには一切存在しないカードだった。見た事もない不思議なカードで、なんで入っているのかなど知る由もない。
……そのカードの名前は……
「【激突王のキセキ】?……なんだこれ?……激突王ってどこの国の王様だろう?」
名前と赤いカードである事と意外はほとんどの情報がないカード。効果テキストさえも存在せず、登場の仕方も相まってあまりにも奇妙であった。
だが、間髪入れずに、別の問題はすぐさま発生する。
「えっ!?……うわぁっ!?」
突然、それはあまりにも自然で、あまりにも急な出来事だった。ドローしたその激突王のキセキが突如として光り輝き始めたのだ。椎名は咄嗟に目を閉じることしかできず…………
……光に呑まれて行った。椎名は不思議と何か、何処かへと移動しているような……そしてそれでいて何者かに誘われているような感覚を肌で味わっていた。
******
「ん、んん……こ、ここは!?」
椎名が気がつくと、そこは淡い色の光に包まれた不思議な空間だった。
息はできるが、匂いも音もなく、また、それがいったいどこまで広がっているのかもわかりはしない。そんな謎めいた場所に、椎名はただ1人佇んでいた。
「んーーー……これっていわゆる…【貸し隠し】…って奴かな?」
パニックになってもしょうがない。一旦冷静になって状況を整理する椎名。正確には【神隠し】だが、真夏がいない今は椎名のその天然ボケをツッコム者は誰もいやしない。
ただ、その神隠しに関して言えば、的を射た発想だったと言える。
「……君が芽座椎名か…」
「ん?」
誰もいなかったはずの空間。
椎名の背後から誰かの声が聞こえてくる。まるで全てを包み込んでくれるような、そんな熱のこもっていない、優しい声だ。
自分だけの存在がいたのだとわかった椎名はそこを振り向く。……そこには……
……赤髪の青年が一人いた。
「……誰?……ま、まさか神様!?」
「そんな大層なもんじゃないさ。俺は弾…【馬神 弾】だ。…ここに君を連れてきたのは俺だ」
「やってる所業が既に神様レベルなんだよなぁ」
物静かな雰囲気漂う青年の名は弾。
椎名が知らないのも無理はない。何せ、彼は別の世界の英雄。椎名達との世界とはまた別の世界にいるべき人物なのだから。
「弾?………あ、って事はもしかしてこのカード!!」
椎名は何かに気づき、慌てて懐からカードを取り出した。それは先ほどのバトルでドローした【激突王のキセキ】のカード。
馬神弾という人間が誰なのかは知らないが、椎名は直感的にこの弾という青年こそが激突王という王様なのだと感じたのだ。そして、その直感は的中し……
「あぁ、それは俺のカード、激突王は俺の事だ」
「マジか!!すっごぉ!!神様じゃなくて王様!!……どこの国の王様なの!?」
「!」
「ん?…どうかした?」
「いや、ちょっと昔の事をね……俺の事は弾でいいよ」
椎名は激突王という異名をそのままの意味で捉えている。弾を本物の王様だと認知してしまっているのだ。そんな彼女の純粋な様子に、弾は昔の仲間の事を思い出し、小さく笑っていた。
異界で出会ったあの小さくて頼もしい仲間を………
「そういえば弾は私を連れてきたって言ってたけど、なんで?」
不思議な出来事の連発だと言うのにもかかわらず全くブレない椎名。肝が座っていると言うよりかはもはやおバカと言った方が妥当である。
しかし、この様子は彼女もそれなりの修羅場を潜り抜けてきた証でもあって………
「…君とこれをしたい…って言ったら伝わるはずだ」
「っ!?…バトスピ……なるほど!!」
そんな弾は懐からカードを取り出し、椎名に見せつけた。
それはバトルスピリッツのカード。同じカードバトラーであるが故、椎名も気づく。
弾は今、自分とのバトルスピリッツを求めている…と。そしてそのためにこの場に呼び出されたのだと………
「よし!!じゃあ早速始めよう!!……Bパッドを………」
「そんなものは要らないさ……行くぞ」
「え?」
Bパッドとは、椎名達の世界では必須となるバトルアイテムだ。それを広げる事でバトル台を設置し、その場ですぐにバトルができる。
しかし、弾はそんなものを出すそぶりを全く見せず……
「ゲートオープン、界放!!」
「えぇ!?なになにぃ!?う、うわぁっ!?」
弾がそう叫ぶと、椎名と弾はまた同じような光に呑まれてまたどこかへと消え去った。
これは椎名達の世界ではなく、弾の世界でのバトル方法。椎名が知らないのも、無理はない。
******
「ん?……こ、ここは!?……って、私さっきもこんな事言ったよな?……てか、この鎧は?」
目を閉じていた椎名がその目を開眼させると、そこには楕円形の地平線が広がっており、その壁の上に自分はいた。それも赤色の鎧を着ながらだ。対角線上には黄色い鎧を着用した弾も見える。
「ここはバトルフィールド…俺達の世界のバトルだ」
「へぇ〜〜〜!!こんな広いとこでバトルできるなんて最高じゃん!!」
「フッ、先行は俺が行く……スタートステップッ!!」
目を輝かせる椎名。それに対し弾は小さく笑みを浮かべ、早々に自分のターン開始を宣言する。
今まさに、2人の主人公のバトルの火蓋が切って落とされた。
[ターン01]弾
《スタートステップ》
《ドローステップ》手札4⇨5
「メインステップッ!!…創界神ネクサス…光導創神アポローンを配置!!」
手札5⇨4
リザーブ4⇨2
トラッシュ0⇨2
「創界神ネクサス!?」
弾のメインステップ、弾が颯爽と配置したのはただのネクサスカードではない。彼の背後に現れたのは、まるでスピリット。弓を手に持つ人型の神のような人物。
このカードは椎名の世界には存在しない特別なネクサスカードだ。
「神託の効果で自分のデッキの上から3枚をトラッシュへ、対象のカード1枚につき、アポローンにコアを置く」
神託カード↓
【シャーマント・ヒヒ】◯
【モルゲザウルスX】◯
【絶甲氷盾】×
条件を満たすたびにコアを追加できる創界神ネクサス。その最初の配置時は、こうしてコアを貯める事ができる。今回は2枚が対象内のカードであるため、2つのコアを増やすことが可能。
「2つ追加し、ターンエンド………さぁ、今度は君の世界のバトルを見せてもらおうか…」
【光導創神アポローン】(0⇨2)LV1
バースト【無】
弾はそう言いながら、不気味とも取れる角度で口角を上げ、椎名にターンを渡した。その笑い方は一見冷たいとも取れる。だが、彼がバトルを楽しんでいることは明白な事であって……
今から椎名がいったいどんなスピリットを展開し、どんなバトルを見せてくれるのか、本当は体中が沸騰する程に楽しみであるのだ。
極端に喜び、温かく笑う椎名とは対極とも言える喜び方ではあるが、その心は2人とも同じ。椎名もまた、全く知らないカード繰り出してきた弾とのバトルに楽しみを大きく見出しており………
「臨むところだよ弾!!今度は私のバトルスピリッツを見せる番だ!!」
椎名はそう勢い良く宣言をしながらターンを進行していく。
[ターン02]椎名
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ4⇨5
《ドローステップ》手札4⇨5
「メインステップッ!!…デジタルスピリット…ブイモンをLV1で召喚!!」
手札5⇨4
リザーブ5⇨1
トラッシュ0⇨3
椎名の場に出現した青のシンボルが砕け散る。そこから飛び出してきたのは青い竜、成長期スピリットのブイモン。椎名が長年愛用するスピリットだ。
そのスピリットに、弾はまた不適に笑う。
「…デジタルスピリット……見たことのないスピリットだ……」
「?…私のことは知ってたのにブイモンの事は知らないの?……ま、いいや!!召喚時効果!!デッキの上からカードを2枚オープンし、その中の対象となるデジタルスピリット1枚を手札に加える!!」
オープンカード↓
【デジヴァイス】×
【フレイドラモン】◯
効果は成功。椎名はその中の対象内スピリット、フレイドラモンのカードを加えた。
……そして、出し惜しみは無しと考えたのか、そのカードをすぐさま弾に見せつけるかのようにかざし………
「早速お出ましだ!!フレイドラモンの【アーマー進化】発揮!!対象はブイモン!!」
手札4⇨5
リザーブ1⇨0
トラッシュ3⇨4
「!」
ブイモンの頭上に投下される赤いデジメンタルと呼ばれる卵上の物体。ブイモンはそれた衝突し、混ざり合い、光の中で新たなデジタルスピリットへと進化を遂げる。
「燃え上がる勇気……フレイドラモンをLV1で召喚!!」
【フレイドラモン】LV1(1)BP6000
新たに椎名の場に現れたのは炎を操るスマートな竜人型のアーマー体スピリット、フレイドラモン。物語が始まってからずっと存在し続ける椎名のエーススピリットだ。
彼女自身も様々なカードを手にし、デッキが大きく変わったが、それでもこのカードが一番だと思っている。それ程までに大事なエーススピリットなのだ。
「2ターン目でコスト6のスピリット…これがデジタルスピリットの力か…!」
「まだまだこんなものじゃないよ!!アタックステップ!!フレイドラモン…いけぇ!」
早速アタックへと乗り出した椎名。フレイドラモンもその指示に従い地を駆ける。
弾の場にブロッカーはいない。ならば選択肢はただ1つ。
「来たな…ライフで受ける!!……っ」
ライフ5⇨4
衝撃に備え、右手を手摺に添える弾。
フレイドラモンの炎を纏った拳の一撃が弾を襲う。すると、彼の前方にバリアが出現し、攻撃の直撃を妨げる。そしてそのバリアが割れると同時に、弾のライフが1つ砕かれた。その鎧に映っていた光が1つ消滅する。
「……良い攻撃だ…次はどう出る?」
また不敵に口角を上げる弾。椎名の力の鱗片を見れた事を嬉しく思っているのだ。
「いや〜〜何もできないんだなこれが……ターンエンドだよ!!」
【フレイドラモン】LV1(1)BP6000(疲労)
バースト【無】
だがしかし、椎名とて後攻の第1ターン目では動ける範囲は限られてくる。流石にここはターンエンドとし、弾にターンを渡した。
[ターン03]弾
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ3⇨4
《ドローステップ》手札4⇨5
《リフレッシュステップ》
リザーブ4⇨6
トラッシュ2⇨0
「メインステップッ!!…ブレイドラX、並びにモルゲザウルスXをLV1と2で召喚!!」
手札5⇨3
リザーブ6⇨2
トラッシュ0⇨3
【ブレイドラX】LV1(1)BP1000
【モルゲザウルスX】LV2(3)BP4000
弾の場で赤いシンボルが砕け、剣で出来た翼を持つ小さなドラゴンと、騎士のような鉄仮面を被り、強靭な尾を持つ恐竜が飛び出して来た。
「対象となるスピリットの召喚により、アポローンにコアを1つ追加」
【光導創神アポローン】(2⇨3)
モルゲザウルスXの召喚により、光導創神アポローンにコアが追加される。これで合計3つだ。
「さらにマジック!…シャーマニックドローを使用!!…デッキから2枚ドローし、その後3枚オープン、その中の系統:界渡、化身を持つスピリット1枚を手札に加える」
手札3⇨2⇨4
リザーブ2⇨0
トラッシュ1⇨3
オープンカード↓
【シャーマント・ヒヒ】◯
【太陽龍ジーク・アポロドラゴンX】◯
【ブレイブドロー〈R〉】×
赤のドローマジック、シャーマニックドロー。通常の2枚ドローの後にデジタルスピリットの成長期さながらな効果を発揮する。
弾はその中の対象スピリット、【太陽龍ジーク・アポロドラゴンX】のカードを新たに加えた。
「……また知らないカードだ」
そう言葉を零す椎名。
だが、本当はそんな余裕など見せられる状況ではない。弾がアタックステップに入り、果敢に攻め立ててくる。
「アタックステップッ!…モルゲザウルスX…いけぇ!……アタック時効果、BPプラス5000」
【モルゲザウルスX】BP4000⇨9000
二本の後脚で走り出すモルゲザウルスX。その効果でBPが大幅にアップする。
そしてこれだけではない。弾はさらに効果を発揮させる。
「フラッシュタイミング!!…光導創神アポローンの【神技:3】の効果!!」
「【神技】?」
椎名の耳には聞きなれないそのキーワード効果。しかし、それは創神神にとってはごくごく当たり前に存在する効果。
「BP8000以下のスピリット1体を破壊する!!…BP6000のフレイドラモンを破壊!!」
【光導創神アポローン】(3⇨0)
「なにっ!?」
弾の背後にいるアポローンが力強く弓矢を射る。その先は椎名の場に存在するフレイドラモン。あまりに一瞬の出来事に、フレイドラモンは逃げられず、胸部を射抜かれる。
そして力尽きて大爆発を起こした。
「くっ、フレイドラモン……」
「カードを1枚ドロー」
手札5⇨6
光導創神アポローン。フラッシュタイミングで自身に置かれているコア3つをボイドに送る事で、BP8000以下のスピリット1体を破壊、そしてカードを1枚ドローすることができる。
「バトルは続いているぞ……」
「っ!?……ライフで受ける!!………ぐっ!!」
ライフ5⇨4
モルゲザウルスXの尻尾に付いている鉄球の一撃が椎名を襲う。同じく赤いバリアが前方に出現し、直撃を妨げるように椎名を守る。
そして砕かれ、強い衝撃が椎名を襲う。
「……く〜〜結構痛いな〜〜」
「続けていくぞ!…ブレイドラX!!」
「!!」
間髪入れずにブレイドラXで追撃を仕掛ける弾。ブレイドラが小さな二本の後脚で地を駆けていく。
「ライフで受ける!!……っ!!」
ライフ4⇨3
ブレイドラの口内から放たれる炎が椎名を襲い、またバリアが砕け散る。先制点を与えたはずが、たったの1ターンで戦況をまるごとひっくり返されてしまった。
「…ターンエンド」
【ブレイドラX】LV1(1)BP1000(疲労)
【モルゲザウルスX】LV2(2)BP4000(疲労)
【光導創神アポローン】LV1
バースト【無】
椎名はこの時点で弾の中にある底知れない強さを身をもって感じていた。バトルする前はあんなに物静かだったのに、
とても自分では到達しきれないような洗練された力だ。ただ、そんな相手だからこそバトラー魂がより燃え上がってくるのもまた同時に感じており………
「へへっ!!そうこなくっちゃ!!面白くないよね!!……私のターン!!」
[ターン04]椎名
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ3⇨4
《ドローステップ》手札5⇨6
《リフレッシュステップ》
リザーブ4⇨8
トラッシュ4⇨0
「メインステップッ!!…ネクサスカードにはネクサスカードだ!!…ディーアークをLV2で配置!!」
手札6⇨5
リザーブ8⇨3
トラッシュ0⇨3
椎名は腰に手のひらサイズの機械を腰に装着する。これはデジタルスピリットを強力にサポートする1枚だ。
「自分につけるタイプのネクサスか…変わってるな、デジタルスピリットのデッキは……」
「はは、弾に言われたくはないかな……ディーアークのLV2効果、【カードスラッシュ】を発揮!!」
「!」
「手札にあるデジタルスピリットを破棄し、そのLV1BP以下のスピリット1体を破壊する!!……先ずはブイモンを破棄し、BP2000以下のスピリット、ブレイドラXを破壊!!」
手札5⇨4
破棄カード↓
【ブイモン】
ブイモンのカードをディーアークにスラッシュする椎名。すると、場にブイモンが現れ、弾のブレイドラXに向かって走り出す。
そして、ブイモンはブレイドラXに頭突きをかまし、ブレイドラXを地面に叩きつけた。ブレイドラXはそのまま小さく爆発を起こし、破壊された。
役目を終えたブイモンは残像だったかのようにゆっくりとその場から消え去って行った。
「次だ!!もう一度【カードスラッシュ】の効果を使用!!デジタルスピリット、パイルドラモンを破棄し、BP7000以下のスピリット、モルゲザウルスXを破壊!!」
手札4⇨3
破棄カード↓
【パイルドラモン】
今度は竜と甲虫、2つの力が混ざった完全体のスピリット、パイルドラモンが椎名の場に出現。パイルドラモンはその腰に備え付けられた機関銃をこれでもかと連射し、弾の場のモルゲザウルスXを撃ち抜き、破壊した。
役目を終えたパイルドラモンは、先のブイモン同様に姿をゆっくりと消して行った。
「…やるな」
「まだまだ!!こんなモンじゃないよ!!」
椎名の反撃に対し、関心するように呟く弾。だが、当然これだけで終わる椎名ではない。一気に逆転すべく、さらにスピリットを展開する。
「真紅の魔竜、その成長期の姿…ギルモンをLV1で召喚!!」
手札3⇨2.
リザーブ3⇨0
トラッシュ3⇨5
赤いシンボルが砕け、さらにそこから深い赤色のスピリットが召喚される。それは椎名のデッキにおいてのブイモンと同等の存在、ギルモン。その力は今まで彼女に良い意味でも悪い意味でも様々な影響を及ぼしてきた。
「ディーアークの効果でカードを1枚ドロー!!…さらにギルモンの召喚時効果!!カードを5枚オープンし、その中の対象となるカードを加える!!」
手札2⇨3
オープンカード↓
【ライドラモン】×
【ワームモン】×
【マグナモン】×
【グラニ】◯
【ブルーカード】×
召喚時効果もまずまずの成功と言ったところ。椎名は新たに赤のブレイヴカード、【グラニ】のカードを手札に加えた。
「!…今度は赤のブレイヴか…!」
ブレイヴカードであるグラニを見た時、弾の表情には僅かながらに笑みが浮かぶ。赤のブレイヴに反応した理由は彼が歩んで来た物語に由来する。
「バーストをセットして…アタックステップッ!!お返しだ!!…ギルモンでアタックッ!!」
手札3⇨4⇨3
瞳孔が縮み、戦闘態勢に入るギルモン。そして場にバーストが伏せられると同時に走り出す。狙うは当然弾のライフだ。
「……ライフで受ける!!……っ」
ライフ4⇨3
ギルモンの鋭い爪が弾のライフバリアをまた1つ切り裂いた。これでお互いのライフは3同士になり、いい分だ。
だが、ギルモンと、【カードスラッシュ】の効果を持つネクサスカード、ディーアーク。終いにはバーストまである椎名の場の方が圧倒的に有利なのは目で見るよりも明らかであって………
「よっし!!どんなモンだ!!ターンエンドッ!!」
【ギルモン】LV1(1)BP3000(疲労)
【ディーアーク】LV2(2)
バースト【有】
椎名が追い風に乗ってきたと言えるこのターン。弾のような強さはなくとも、異様な運の良さと勘の良さを活かして互角に渡り合っている。
ただ、盤面だけでの話ではあるが………
[ターン05]弾
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ4⇨5
《ドローステップ》手札6⇨7
《リフレッシュステップ》
リザーブ5⇨8
トラッシュ3⇨0
「メインステップ……バーストをセット、さらにブレイドラXを2体召喚!!」
手札7⇨4
リザーブ8⇨6
弾の場にバーストがセットされると共に、2、3体目のブレイドラXが囀りながら現れる。
これはいわゆる嵐の前の静けさと言ったところか、椎名は不思議とこのタイミングで何かが来るのを感じていた。とても大きい存在。まるで自分の持つフレイドラモンのような………
そしてその予感は的中し、弾は手札からさらにスピリットを召喚する。
「続けて…太陽よ、新たな炎を纏いて龍となれ!…太陽龍ジーク・アポロドラゴンX!!…LV2で召喚!!」
手札4⇨3
リザーブ6⇨0
トラッシュ0⇨3
【太陽龍ジーク・アポロドラゴンX】LV2(3)BP9000
弾の背後で太陽のように燃え上がる何か、それは紅蓮の体を持つ龍へと姿を変え、バトルフィールドの外から内側へ、一歩、また一歩と咆哮を張り上げながら歩み寄る。そして、弾の前方まで来ると、ゆっくりと立ち上がった。
それは太陽龍ジーク・アポロドラゴンX。強力なXレアのスピリットだ。
「じ、ジーク・アポロドラゴンX……か、カッコいい!!」
「神託でアポローンにコアを追加」
【光導創神アポローン】(0⇨1)
こんな事を言っている場合ではないというにもかかわらず、椎名はそのドラゴンの勇姿に目を輝かせずにはいられなかった。
「行くぞ、アタックステップッ!!…翔けろ!!ジーク・アポロドラゴンX!!」
翼を広げ、空へと飛び立つジーク・アポロドラゴンX。そしてこの時、このスピリットには発揮できる効果がいくつも存在し………
「太陽龍ジーク・アポロドラゴンX、LV2のアタック時効果!!BP9000以下のスピリット1体を破壊する!!…ギルモンを破壊!!」
「っ!?」
空中から赤き炎を口内から放つジーク・アポロドラゴンX。その座標は地上にいるギルモンに合わせられている。
焦ってあたふためいているギルモン。しかし、椎名とてここで進化の起点となる成長期スピリットを失うわけにはいかない。
「真紅のスピリットが効果の対象になる時、手札のグラニの効果を発揮!!…ギルモンを指定、このターン、ギルモンは効果で破壊されず、手札、デッキには戻らない!!…さらに1コア支払ってギルモンに直接合体するように召喚!!」
手札3⇨2
【ディーアーク】(2⇨1)LV2⇨1
【ギルモン+グラニ】LV1(1)BP9000
トラッシュ5⇨6
「!」
刹那、ギルモンを護るべく謎の飛行物体がアポロドラゴンXの炎を受け止める。それはグラニ。ギルモンやデュークモンの相棒と言っても過言ではない赤のブレイヴだ。
この効果により、このターン、ギルモンは効果破壊されない。即ち、アポロドラゴンXの効果でも破壊できないのだ。
「グラニ……スピリットを護るブレイヴか…良い効果だ」
グラニの効果に関心するそぶりを見せる弾。だが、この程度で凌げるほど自分の攻撃は甘くはない。
それを椎名に示すように見せつけていく。
「太陽龍ジーク・アポロドラゴンXの効果!!自分の赤の創界神ネクサスがある時、相手のライフ1つを破壊する!!」
「っ!?マジか!!」
ギルモンは破壊できないと判断したか、アポロドラゴンXはその座標を椎名のライフへと移し替え、そこに向かって再び赤い炎を口内から放つ。
これは効果によるライフ破壊。スピリットでブロックはできない。
「……ぐっ!!」
ライフ3⇨2
前方に現れるライフバリアが砕け散り、また椎名のライフが破壊される。これで残り2つ。いよいよ敗北も間近に迫ってきた。
だが、こんなつまらないところで負けてしまうほど椎名は弱くはない。伏せられていたバーストが勢い良く反転する。
「……ライフ減少がバースト発動の条件だ!!……発動!!マリンエンジェモン!!」
「!!」
「この効果により召喚!!さらにこのターン、自分のライフはコスト9以下のスピリットのアタックでは減らない!!……さらにディーアークの効果でカードをドロー」
手札2⇨3
リザーブ1⇨0
【マリンエンジェモン】LV1(1)BP3000
バーストカードの反転と共に飛び出してきたのは小さな究極体スピリット、マリンエンジェモン。マリンエンジェモンは登場するなり謎のメロディの歌を歌うと、椎名の周りに水のバリアが形成される。
これは生半可なスピリットでは突破は決してできない。アポロドラゴンXでさえもこの水のバリアは破る事は出来ないだろう。
しかし、何から何までできなくなるわけではない。
「…アポロドラゴンXのもう一つのアタック時効果でマリンエンジェモンに指定アタック!!…効果で破壊する!!」
「!?…まだそんな効果を!?」
上空からマリンエンジェモンの前方へと急速に降り立ったアポロドラゴンX。マリンエンジェモンは驚くそぶりすら見せる間も無く、アポロドラゴンXの鋭い爪に引き裂かれて爆発を起こした。
太陽龍ジーク・アポロドラゴンX。もう一つのアタック時効果。回復状態のスピリットを指定アタックし、その指定したスピリットを問答無用で破壊することができる。
「……ターンエンド」
【ブレイドラX】LV1(1)BP1000(回復)
【ブレイドラX】LV1(1)BP1000(回復)
【太陽龍ジーク・アポロドラゴンX】LV2(3)BP9000(疲労)
【光導創神アポローン】LV1(1)
バースト【有】
椎名のバースト、マリンエンジェモンの効果もあって、結果的にブレイドラX2体をブロッカーとして残してのエンドとなった弾。
次は何とか弾の強烈なアタックを凌いだ椎名。ここらでまた逆転せねば間違いなくやられてしまう。しかし、センスの塊とも言える彼女の正念場での強さは弾の予想をはるかに上回るものであって………
……それが今、次の椎名のターンで証明される。
[ターン06]椎名
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ1⇨2
「ドローステップッ!!……ドローッ!!………っ!!よっしぁ!!」
手札3⇨4
ポーカーフェイスなど無いも同然。ドローステップ時でのドローを見るや否や、椎名は大きく笑みを浮かべる。しかしながら弾もまた、その表情からは分かりにくいが、椎名のドローしたカードに楽しみを覚えていた。いったいどんなカードでこの場を突破してくるのかが楽しみで仕方なかった。
《リフレッシュステップ》
リザーブ2⇨8
トラッシュ6⇨0
【ギルモン+グラニ】(疲労⇨回復)
ギルモンとグラニが疲労状態から回復状態となり、起き上がる。そしてギルモンは反撃開始と言わんばかりに咆哮を張り上げた。
「メインステップッ!!ギルモンとディーアークのLVを最大に!!」
リザーブ8⇨4
【ギルモン+グラニ】(1⇨4)LV1⇨3
【ディーアーク】(1⇨2)LV1⇨2
コアが追加され、ギルモンはそれを主張するかのようにより強い咆哮をこの場に轟かせる。
これで準備は万端。椎名は一気に勝負を決めるべく弾の場へと攻め込む。
「アタックステップッ!!ギルモンでアタック!!」
ギルモンはグラニの背に乗っかり、上空を翔ける。そしてこの瞬間、ギルモンと合体しているグラニの効果が発揮される。
「【合体時】のグラニの効果…相手のデッキを上から1枚破棄!!…同じ系統を持つスピリット1体を破壊!!」
「!」
破棄カード↓
【絶甲氷盾】×
グラニが眼光を放つと、弾のデッキの上から1枚がトラッシュへと破棄される。この時、同系統を持つスピリットを破壊できるのだが、今回は系統すらないマジックカード。破壊までには至らなかった。
だが、椎名はそんな博打じみたものに賭けてなどはいない。ここからが真打の出番だ。
「フラッシュ!!デュークモン クリムゾンモードの【チェンジ】を発揮!!この効果により、シンボル合計3つまで相手のスピリットを好きなだけ破壊する!!…当然、ブレイドラX2体とアポロドラゴンXを破壊!!」
リザーブ4⇨0
トラッシュ0⇨4
「!!」
椎名の背後から真紅の炎で身体が構成された龍が尾を引いて現れる。それは弾の場へと突き進み、2体のブレイドラXやアポロドラゴンXを次々と飲み込んで行き、焼き尽くしていく。
「さらに!!この効果発揮後、赤一色のコスト7以上のスピリットと回復状態で入れ替える!!対象はグラニと合体しているギルモン!!」
その炎の龍は最後にグラニに乗っかっているギルモンにそれごと衝突。ギルモンは突然変異を遂げ、グラウモン、メガログラウモン、デュークモンへとその炎の龍の中で進化を繰り返していく。
「燃え上がれ聖騎士!!真なる深い紅を纏い、邪悪なる者皆、照らし破れッ!!」
デュークモンの右手の槍、左手の盾が消滅し、さらにその白い鎧が熱により深い紅に染まる。そこからさらに深紅のアーマーが各部に取り付けられていき、そして紅いマントも同様に消滅、背中には新たに純白の翼が10枚生えてくる。
そのスピリットは周りの炎を全て振り払い、姿を見せる。
「……デュークモン クリムゾンモードッ!!」
【デュークモン クリムゾンモード+グラニ】LV3(4)BP27000
それは椎名の持つ最強のスピリット。伝説のデジタルスピリット、ロイヤルナイツであるデュークモンが究極体という概念を超え、さらに進化した姿。
その真なる深い紅の力と聖なる光の力の前には何人たりとも勝つことはできない。
「それが君の最強のスピリットか……!」
「あぁ、そうだ!!…これが私の最強スピリット、デュークモン クリムゾンモードだッ!!」
弾は椎名の呼び出した真っ赤に燃え上がる紅蓮の聖騎士を視認するや否や、それを最強のスピリットだと感じた。椎名も椎名で隠す気はなく、逆に主張する。
「さらに【チェンジ】の効果でバトルは続行!!」
「…だが先ずはこれから発動させてもらう!!…自分のスピリットの破壊によりバースト発動ッ!!」
「!」
「双光気弾!!カードを2枚ドロー、さらにコストを払い合体スピリットのブレイヴ1つを破壊するッ!!」
手札3⇨5
リザーブ5⇨2
トラッシュ3⇨6
「ッ!!…グラニっ!?」
【デュークモン クリムゾンモード】LV3(4)BP21000
椎名が追撃を仕掛ける直後、弾が事前にセットしていたバーストカードが反転する。その力により、弾は新たに2枚のカードを手にし、さらにそこから放たれた2つの火の玉がクリムゾンモードが自力で空を飛べるようになったため背中に搭乗させる必要がなくなり、クリムゾンモードの頭上をただただ旋回していたグラニに直撃、グラニは撃退され、爆発を起こした。
「だけど関係ない!!行くぞ弾!!……神剣 ブルトガング!!」
椎名はそれでもなお高いモチベーションを保ち、そう叫ぶと、クリムゾンモードは左手に光のエネルギーを凝縮、具現化させ、剣を象った武器を創生する。
弾は自分のスピリットを一掃しながら目の前に現れた強敵、クリムゾンモードを見て、静かにそのカードバトラーとしての魂を燃やしている。
やはり、【帰る前】、バトルする相手は彼女で正解だった。こんなにも刺激的なバトルができるなどとは思ってもいなかった。
「さっきも言ったけど【チェンジ】の効果でアタックは継続中!!…この一撃で決める!!」
クリムゾンモードにはアタック時、追加でさらに相手のライフを破壊する効果がある。この効果が決まれば椎名の逆転勝ちが確定する。
しかも弾は手札のカードでカウンターを使用するそぶりさえも一切見せず……
「そのアタックはライフで受ける!!」
ライフ3⇨2
そのままそれをライフで受けた。
クリムゾンモードの神剣の一閃が、弾のライフをまた一つ切り裂いた。これでライフ差は再び椎名と並ばれてしまう。
……そして、これで終わりだ。
「これで終わらせる!!…クリムゾンモードの効果!!アタックしたバトル終了時、相手のトラッシュにあるスピリットカード3枚につき1つ、相手のライフを破壊する!!」
「!!」
「神槍 グングニルッ!!」
椎名がそう言うと、クリムゾンモードは今度は右手に光のエネルギーを凝縮させ、前後ろの尖った槍の形へと具現化させる。
そして拳を突き出し、その槍を真横に構えて………
「今、弾のトラッシュには8枚のスピリットカードがある!!よってライフを2つ破壊!!……神槍の一撃…クォ・ヴァディスッ!!」
槍を手に持ち、突き出した拳から一筋の赤い光を放つクリムゾンモード。その光は全てを無に帰す究極の光。
しかし、弾はその赤い光が迫ってもなお無表情を貫き、それとの直撃を避けるべく、手札のカードを1枚使用する。
「リアクティブバリアの効果!!自分のライフが相手の効果で減少する時、これを破棄してダメージを1にするッ!!」
ライフ2⇨1
手札5⇨4
「なにっ!?今度は白のマジック!?」
クォ・ヴァディスが直撃する直前、弾の前方にライフバリアとは別の結晶のバリアが出現する。
それはクリムゾンモードの放ったクォ・ヴァディスに砕かれながらも、完全に通す事なく、弾のライフをスレスレで守り抜いた。
さらにそれだけに終わらず……
「その後、フラッシュ効果を発揮させ、アタックステップを終了させる!!」
リザーブ4⇨0
トラッシュ6⇨10
「!!」
弾のギリギリのコア捌き、まるでその全てが綺麗に計算されて導き出されたかのような美しい流れだ。椎名の場に猛吹雪が発生、それはクリムゾンモードさえもを弾き飛ばし、アタックステップの終了を強行させる。
「……くっ、クリムゾンモードでも倒せないなんて……ターンエンドだ」
【デュークモン クリムゾンモード】LV3(4)BP21000(回復)
【ディーアーク】LV2(2)
バースト【無】
ターンを終えた椎名。その直後、立ち込めていた猛吹雪は収まり、次は再び弾のターン。あれほどに強力なスピリットのアタックを平然とした態度で耐え抜いてしまうのは、やはり椎名とは乗り越えた修羅場の数の違いによるものなのか………
「……君の全力……良いものを見せてもらった………次は俺の番だ……!!」
「っ!!」
椎名のクリムゾンモードの強さに当てられたか、弾はまるで次の自分のターンで全てを終わらせるとでも言っているかのように静かながらも力強い眼力を見せる。しかし本気だ。本気でこの場を突破するつもりだ。
[ターン07]弾
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
「ドローステップッ!!……フッ、来たか…バローネ」
手札4⇨5
そのドローしたカードを見て、微かに口角を上げる弾。その様子を見れば椎名でもわかる。絶対に引いた。このバトルを終わらせることができる何かを………
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨11
トラッシュ10⇨0
「メインステップッ!!先ずはお前からだ!!…蒼白なる月は、赤き希望に染まる!!月紅龍ストライク・ジークヴルム・サジッタをLV3で召喚!!」
手札5⇨4
リザーブ11⇨2
トラッシュ0⇨5
弾の背後から咆哮を張り上げながら場へと飛び出してきたのは、赤き月の龍、ストライク・ジークヴルム・サジッタ。本来は白のスピリットであるストライク・ジークヴルムに、サジッタの赤の力が宿ったスピリットだ。
「赤い月の……ドラゴン」
「神託によりアポローンにコアを追加」
【光導創神アポローン】(1⇨2)
準備は整った。弾はここから最後のアタックステップへと乗り込んでいく。
「アタックステップッ!!…ストライク・ジークヴルム・サジッタでアタックッ!!」
背中のブースターで宙を翔けるストライク・ジークヴルム・サジッタ。狙うは当然椎名の残り2つのライフだが………
「クリムゾンモードでブロックッ!!」
左手に神剣、右手に神槍を持ち、クリムゾンモードもまた10枚の白き羽で飛翔する。ストライク・ジークヴルム・サジッタの眼前に瞬時に現れて神剣の一撃で撃ち落とし、撃墜させる。
「BPはクリムゾンモードの方が上!!私の勝ちだ!!」
BP差はあまりにも大きい。椎名の勝利はほぼ確実………かと思われたが、伝説のカードバトラーである弾は、さらに手札からカードを抜き取り、フラッシュの宣言と共にあのスピリットを………
………煌臨させる。
「フラッシュタイミング!!【煌臨】発揮!!」
【月紅龍ストライク・ジークヴルム・サジッタ】(4s⇨3)LV3⇨2
トラッシュ5⇨6s
「っ!?」
「天翔ける闇祓う光!超神光龍サジットヴルム・ノヴァ!!月紅龍ストライク・ジークヴルム・サジッタに煌臨!!」
手札4⇨3
【超神光龍サジットヴルム・ノヴァ】LV2(3)BP15000
弾の背後から飛び立つ何か、その何かに合わせるように同時に飛び立つストライク・ジークヴルム・サジッタ。そして一筋の光と共にその2つは重なりて、射手座の新たなスピリットが周囲の光を振り払い、弾の場へと出現する。
その名は超神光龍サジットヴルム・ノヴァ。おそらくは弾の持つデッキの中では最高にして最強のキースピリット。
「神託の効果でアポローンにコアを追加」
【光導創神アポローン】(2⇨3)
「す、すごい…こんなスピリットを持ってたなんて……」
その神々しい姿に椎名のバトラーとしての好奇心が疼く。自分の最強のエーススピリット、クリムゾンモードと、弾の最強のキースピリット、サジットヴルム・ノヴァ。どっちが強いのか、どうバトルするのか、それはどう展開されるのか、その事を考えるだけで、椎名の頭の中は幸福で満たされる。
「煌臨スピリットはその煌臨元になったスピリットのすべての情報を引き継ぐんだ!!バトルは続行!!いけぇ!クリムゾンモード!!」
「サジットヴルム・ノヴァ……いけぇ!」
2人の言葉に呼応するように動き出す両者2体。クリムゾンモードが再び瞬時に間合いを詰め、神剣を振るうが、サジットヴルム・ノヴァは巨体にはそぐわない身軽な動きで難なくそれを回避する。
サジットヴルム・ノヴァは直後、再びクリムゾンモードと距離を取り、弓を力強く引き、炎の矢を放つ。だが、クリムゾンモードは神剣でそれを容易く切り落とす。
そして、また距離を詰め、今度は神槍を横一閃に振るい、サジットヴルム・ノヴァをバトルフィールドの壁に叩きつけた。
「BPはクリムゾンモードが上っ!!…もらったぁ!!」
煌臨してもなお、椎名の優勢に変わりわない。この勝負、クリムゾンモードがサジットヴルム・ノヴァを倒し、椎名が勝利する。
しかし、弾はこの最高潮に達したクライマックスの状態で、負けじと手札にある、このタイミングで使える最後のカードを切る。
「これで終わりだと思うな………フラッシュタイミング!…マジック、タウラスチャージを使用!」
手札3⇨2
リザーブ2⇨0
トラッシュ6s⇨8s
「…っ!?」
「効果により、サジットヴルム・ノヴァのBPを10000アップ!!さらに系統:光導を持つ創界神ネクサスがあるので、回復させる!」
【超神光龍サジットヴルム・ノヴァ】BP15000⇨25000(疲労⇨回復)
「…び、BP25000!?」
トドメと言わんばかりに、今一度クォ・ヴァディスを放つクリムゾンモード。しかし、それが直撃する直前、サジットヴルム・ノヴァは息を吹き返したようにそれを回避する。
クリムゾンモードはもう一度サジットヴルム・ノヴァを叩き伏せようと神剣、神槍を手に、急速に接近していく。だが、その間、サジットヴルム・ノヴァが放った矢が正確にクリムゾンモードの神剣、神槍を射抜き、消滅させた。
一瞬気をそっちに持っていかれてしまったクリムゾンモード。その一瞬が命取りとなった。サジットヴルム・ノヴァが弓矢を剣に変化させ、逆にクリムゾンモードに接近し、一閃。
刹那、クリムゾンモードの胸部から腹部にかけて剣の太刀筋が刻まれる。クリムゾンモードは力尽き、倒れ、大爆発を起こした。その爆発の爆煙、飛び散る火花の中、サジットヴルム・ノヴァは椎名の元にゆっくりと迫って来る。
「クリムゾンモードッ!」
勝負は決した。椎名の負けだ。
後は回復したサジットヴルム・ノヴァのアタックで終わる。だが、その前に………
「椎名……君はどこか俺に似ている」
「え?…そうかな?」
弾が徐に口を開き、椎名に語りかけてきた。それはなんというか、例えるならば、先輩として後輩に教えを口授している、と言うのが一番近いか………
これから起こる椎名の物語を知っているからこそ……その口は淡々と述べる。
「あぁ、似ているさ……だからこそ、今日の事を、バトルの楽しさを忘れるな!…覇道を歩む事になっても、怯むな!…運命に恐れずに前を向いて生きろ!!…今、俺から言える事はそれだけだ……!」
「っ?……どゆこと?……まぁでも、忘れないさ!!こんな楽しいバトル!!一生忘れない!!」
詳しい意味は理解せずとも、拳を固く握りしめ、強く返事をする椎名に対し、弾は強張っていた頬を僅かながらに緩め、このバトルのラストアタックを宣言する。
「超神光龍サジットヴルム・ノヴァでアタックッ!!……ダブルシンボルにより、ライフを2つ破壊する!!」
サジットヴルム・ノヴァが椎名の眼前で剣を上へと大きく構える。
……そして、
「来いっ!!…ライフで受ける!!」
ライフ2⇨0
その振り下ろされた剣は真っ直ぐに椎名のライフバリアを砕き、全てを破壊した。これにより、椎名のライフはゼロ。バトルは馬神弾の勝利に終わる。
ー『ありがとう椎名…君のおかげで、久し振りに充実した時を過ごすことができた』
ー『それはこっちのセリフだよ!!最近、色々あって私もバトルを楽しめなかったからさ!!……胸を借りられてよかった!!…またやろう!』
ー『……あぁ、…ありがとうございました!…良いバトルでした!』
ー『うん!次は私も負けないくらいもっともっと強くなるから!!』
謎めいた淡い色の空間の中、弾から差し出された手に対し、同じ手を差し出して彼との握手を交わす椎名。そして、そこを中心にまた眩い光が全域を包み込み…………
******
「……いな、」
「?」
「……椎名っ!!」
「ん!?…わわぁっ!?真夏!?」
椎名は気がつくと、元いた第3スタジアムに戻っていた。状況もさっきとまるで変わらない。
「あんた、なにずぅ〜っとボケっとしとんねん!」
「……あっはは、えぇ〜〜っと……」
全然時間が経っていないのか、真夏があまり心配していないところを見るに、その事は確信できる。だが、弾の事はどう説明すれば良いか悩む。
あれは夢だったのか、はたまた幻想だったのか、椎名はそんな事を考えながらもふと手にしていた1枚のカードを視認する。
……それは……
【激突王のキセキ】
「っ!!」
夢ではなかった。現実に、その証拠たるカードが自分の手の中にあった。本当に椎名は最強のカードバトラーと出会い、バトルしたのだ。不思議なバトルフィールドと呼ばれる空間で………
ありがとう弾。
私、頑張るよ!!今よりももっともっと強くなって、世界一カッコいいカードバトラーになる!!
だから弾も……頑張れ!!
椎名はそう、心の中に言葉を刻み、弾への想いを馳せた。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!!
私の夢が1つ叶いました。弾さんは当然ながら自分のキャラではないため、描写が難しく、苦労しましたが、なんとか書き終えることができました。
特に難しかったのが二人称。弾さんは人によってそれを使い分けるので、たいへん考えさせられました。椎名の事を「君」と呼ぶか、「お前」と呼ぶかで別れてしまいましたが、結局は「君」にしました。一応歳下の女の子だからという意味も含まれております。
次回からはまた本編に戻ります!!
リクエストもあって、弾さんのデッキレシピを掲載する事にしました。当時未発売のグランシャリオが入っていますが、設定上の都合上のため、ご了承ください。
特別編 馬神 弾デッキレシピ
総合枚数40枚
スピリット×19枚
ブレイドラX×3
モルゲザウルスX×3
翼竜ブレイブラスター×3
シャーマント・ヒヒ×3
太陽龍ジーク・アポロドラゴン×3
月紅龍ストライク・ジークヴルム・サジッタ×3
超神光龍サジットヴルム・ノヴァ×1
ブレイヴ×4
砲竜バル・ガンナー〈R〉×2
銀河星剣グランシャリオ×2
ネクサス×3
光導創神アポローン×3
マジック×14
シャーマニックドロー×2
双光気弾×2
ブレイヴドロー〈R〉×2
タウラスチャージ×2
絶甲氷盾×2
リアクティブバリア×2
デルタバリア×2
と、なっておりました。アニメ用っとぽく作成したため、当然ガチではありません。