バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

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第83話「本気の本気、クリムゾンモードVSブラストモード!!」

 

 

 

 

 

 

 

椎名と六月はシスターマリアのBパッドで確認していた。今の界放市の有様を………

 

………街は全域を謎の青い繭のようなものに包まれていた。何かあったかはわからないが、ただ一つ言えることは……こんな芸当はDr.Aにしか、徳川暗利にしかできないということ。

 

そう思うと2人は急いで界放市に戻らなければと思考を過ぎらせた。

 

 

「……い、行かなきゃ!!」

「で、でも椎名いったいどうやっていくの!?界放市はあんな状態だから飛行機も船も出ないわよ!?」

 

 

慌ただしい様子で言葉を漏らした椎名に対し、シスターマリアが言った。その通りだ。界放市が異常を起こしているため、船も飛行機も出ることはないし、そこに止まる事もない。

 

しかし、やはりこの場で頼りになるのはこのご老人。

 

 

「なぁに!!心配するでない!!わしのボートを使えばよい!!」

「おぉ!!さすがじっちゃん!!カッコいい!!」

「おほ!!…そうじゃろそうじゃろ?……椎名、今のもう一回言ってくれんかの?…録音したいんじゃが……」

「おじさま気持ち悪いです」

 

 

まさかの自家用ボートを所持していた六月。これで界放市の港まで行くことが可能となった。

 

こんな状況でも相変わらず呑気な会話を繰り広げる3人。だが、そんな時、ある人物が目の前に現れる。それは意外で、かつ、驚異的な人物。

 

 

「……よお、楽しそうだな」

「っ!!」

「……銃魔!!」

 

 

現れたのはDr.Aの忠実なる僕、銃魔。いつものようなメガネを指先で定位置に戻しながらの登場だ。椎名達は思わずその場で身構えた。これまでも幾度となく椎名達の目の前に現れ、戦ってきた銃魔。その強さは本物であり、未だに本気でバトルしていない節もある。

 

 

「……お前さん…」

「久しぶりだな、芽座六月。まさかあんたとこうして再開できるとは思ってなかったぜ」

 

 

六月はもう知っている。銃魔は18年前に出会った少年だ。ついこの間までは徳川暗利、もといDr.Aとともに死んでしまったと思っていた。

 

あの時は本当にすまないことをしたと思っている。もう助からないとわかってからは手を指し伸ばそうとしなかったことを………だが、彼らのやろうとしていることは間違っている。それは絶対に止めなければならない。六月はそう考えている。

 

また、その真摯で険しい顔つきから、銃魔も六月の考え方をわかっている。

 

だが、今回の狙いは六月ではない。

 

 

「……俺が用があるのはお前だ……エニーズ」

「っ!!」

 

 

銃魔が目を向けた先は椎名だった。はなから六月など眼中にはない。自分がこんな島に来た理由はこれまでのようにDr.Aの命令ではない。

 

それは単純、カードバトラーならではの理由だ。

 

 

「……貴様と決着をつけたい……これから始まる本当の戦いの前に!!」

「………銃魔……」

 

 

銃魔の意志は固いとみた椎名はその場で大きく、それでいて明るく口角を上げて………

 

 

「じっちゃん、先に界放市に行っててよ!!…私は銃魔とバトルしてから行くから!!」

「っ!椎名」

 

 

Bパッドを懐から取り出して、バトルに対するやる気を露わにする椎名。完全に戦闘態勢に入っている。

 

銃魔とのバトルが危険なことなど六月もわかる。仮にもあの暗利と行動をともにしてきたのだから……だが、こうなってしまった椎名を止められないのは事実……

 

……六月は少しだけ考えると、すぐに返答した。

 

 

「……わかったわい、好きにしなさい……勝つんじゃよ」

「当然!!」

「……ほいっ!」

「っ!!」

「鍵じゃよ!!ボートは二台ある!!お前はもう一台の方に乗って来い!!」

「っ!!サンキューじっちゃん!!」

 

 

椎名を信じることにした六月。さっき約束したばかりだからだ。「一緒にDr.Aを倒そう」と。

 

椎名なら必ず自分の後を追いかけてやってくる。そう確信している。

 

 

「……じゃあ暗利によろしくのぉ、銃魔」

「……フっ」

 

 

六月は最後にそれだけを捨て台詞としておいていき、その場を去っていった。島の港に向かっていったのだ。

 

 

「……シスターはハウスに戻ってて」

「椎名………」

「ん?」

 

 

ハウスにいる子供達が心配だ。そう思っていた椎名はシスターマリアにそう告げた。

 

このまま行けばおそらく椎名はいっとき戻ってくることはないだろう。そう思ったシスターマリアは幼少の頃から見ていた椎名の大きくなった背中を見て何を思ったのか………

 

 

「……立派になったね……!!」

 

 

と言葉を漏らした。この時、椎名と過ごしていた思い出の時間が溢れ出ていたに違いない。本当は危険なところには行って欲しくはない。だが、椎名がそれを聞かないことは百も承知だ。

 

だからこそ、自分にできることはその背中を押してあげること………ただそれだけだ。

 

 

「えっへへ!!そお?…まぁ私ももうすぐ18だからね!!」

「…ふふ、…頑張ってね!!世界なんてサクッと救ってきなさい!!」

「うん!!」

 

 

そう言い残してその場を去っていくシスターマリア。椎名は親指を立てて「任せろ」と言わんばかりに強く宣言してみせた。

 

そして等々この場に取り残されたのは椎名と銃魔のみ。ようやく銃魔の望んでいたバトルが実現しようとしていた。

 

 

「茶番は済んだか?…行くぞ……!!」

「おうよ!!ぶっ飛ばしてやる!!」

 

 

2人はそう言い、Bパッドを展開、バトルの準備を瞬時に行う。そして始まる。3度目となる椎名と銃魔のバトルが……

 

 

「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

草木がざわつき始める中、椎名と銃魔のバトルが幕を開ける。

 

先行は銃魔だ。

 

 

[ターン01]銃魔

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ、俺はインプモンをLV1で召喚……召喚時効果により3枚オープン」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

【インプモン】LV1(1)BP2000

オープンカード↓

【クリスタニードル】×

【クリスタニードル】×

【幽騎士ナイトライダー】×

 

 

銃魔が早速呼び出したのは小悪魔のような見た目の成長期スピリット。効果によってカードをオープンするものの、対象内となるカードは1枚もなく、どれもトラッシュへと破棄された。

 

 

「……ターンエンド」

【インプモン】LV1(1)BP2000(回復)

 

バースト【無】

 

 

紫速攻のデッキパーツがふんだんに取り入れられている銃魔のデッキだが、先行の第1ターン目ではこれが限界か、早くも椎名にターンを渡した。

 

 

[ターン02]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「よしっ!!メインステップッ!!先ずはこれだ!!…ネクサスカード、ディーアークとデジヴァイスをLV1ずつで配置してターンエンド!!」

手札5⇨3

リザーブ5⇨0

トラッシュ0⇨5

【ディーアーク】LV1

【デジヴァイス】LV1

 

バースト【無】

 

 

もはやお馴染みとなった椎名のネクサスカード達。それは椎名の異端なデジタルスピリットのデッキを大きく支える事に貢献している。

 

動きとしては上々のスタートだが、このターンはそれでエンドとしてしまう。次は一周回って銃魔のターンだ。

 

 

[ターン03]銃魔

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨4

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ、魂鬼を召喚し、俺もネクサスカード、旅団の摩天楼を2枚配置!!…効果により2枚ドロー」

手札5⇨2⇨4

リザーブ4⇨1

トラッシュ0⇨2

【魂鬼】LV1(1s)BP1000

【旅団の摩天楼】LV1

【旅団の摩天楼】LV1

 

 

やはりと言うべきか、銃魔は紫速攻のデッキには欠かせないカード達を次々と並べていく。

 

人魂ならぬ鬼魂、魂鬼が場に現れると同時に、細長く、高い摩天楼が2つ彼の背後に聳え立った。

 

 

(……っ!!あの顔……)

 

 

そしてその摩天楼の効果でドローし、銃魔がそれが何かを視認した瞬間。椎名は銃魔の表情の微かな変化に気づいた。

 

それは本当に微かな変化。目の良い椎名だからこそわかったことだ。確かに銃魔はその口角を僅かに上げた。椎名は理解した。その顔はエースをドローしたと言う安心感。この時点で引いたのだと、あの孤高の魔王を………

 

 

「アタックステップッ!!魂鬼、インプモン!!…行ってこい!!」

 

 

魂鬼が浮遊し、インプモンが地を駆ける。目指すは当然椎名のライフだ。前のターンでネクサスカードの配置に全力を注いだ椎名は守るスピリットもコアもなく………

 

 

「ライフだ!!持っていけ!!………………………あれ?」

ライフ5⇨4⇨3

 

 

2体の体当たりがそれぞれ椎名のライフを粉々に砕いていく。しかし、椎名はその攻撃を受けた時、ある事に気付いた。

 

 

「……痛くない?」

 

 

そう、これっぽっちも痛みを感じなかった。これまでの銃魔とのバトルでは必ずと言っていいほどに多大なバトルダメージが発生していた。ベルゼブモンの弾丸で右肩を貫かれたのは記憶にも新しい。

 

しかし今はどう言う事なのか、普通のバトルとなんら変わらない柔らかい風が吹くだけで肉体的なダメージは一切なかった。

 

 

「今回は俺の一任でお前のところに来たからな、力を使う必要もない」

「ふ〜〜ん」

 

「ターンエンドだ」

【インプモン】LV1(1)BP2000(疲労)

【魂鬼】LV1(1s)BP1000(疲労)

 

【旅団の摩天楼】LV1

【旅団の摩天楼】LV1

 

バースト【無】

 

 

そのターンを終える銃魔。次は椎名のターンだ。

 

 

[ターン04]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札3⇨4

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨8

トラッシュ5⇨0

 

 

「メインステップッ!!さぁ、反撃開始だ!!ディーアークのLVを2に上げ、ギルモンをLV3で召喚!!…ディーアークの効果でカードをドローし、カードを5枚オープン!!」

手札4⇨3⇨4

リザーブ8⇨0

トラッシュ0⇨2

【ディーアーク】(0⇨2)LV1⇨2

【ギルモン】LV3(4)BP6000

オープンカード↓

【ブイモン】×

【ブイモン】×

【グラウモン】◯

【パイルドラモン】×

【マグナモン】×

 

 

椎名が反撃と称して召喚したのは真紅の魔竜、その成長期の姿、ギルモン。その効果で多くのカードを捲り上げ、その中の対象内となるグラウモンのカードを新たに手札へと加えさせた。

 

 

「いくぞ銃魔!!アタックステップ!!その開始時、デジヴァイスの効果で疲労させ、カードをドロー!!さらにギルモンの【進化:赤】を発揮させ、成熟期、グラウモンに進化!!」

手札4⇨5⇨6

【デジヴァイス】(回復⇨疲労)

【グラウモン】LV3(4)BP7000

 

 

ギルモンがデジタルコードに包まれていき、その中で進化する。やがてそれは破裂し、椎名の場に真紅の魔竜、その成熟期の姿、グラウモンが現れた。

 

 

「………真紅の魔竜……」

「グラウモンは相手の効果によってコアを取り除かれない!!」

 

 

銃魔はこの真紅の魔竜達を見て、あの時の、自分が幼少の頃の記憶を思い出していた。真紅の魔竜が、ギルモンが、グラウモンが、メガログラウモンがDr.Aの研究所で縦横無尽に暴れまわったあの時を………

 

インペリアルドラモンとの死闘を繰り広げていたあの時の事を記憶の片端から引っ張りだしていた………

 

別にそれに対して恨みを持っているわけではない。寧ろあの時の事件があったおかげで今の自分がいる。感謝したいくらいだ。ただ、Dr.Aとの関連を考えると、どうしても因縁というものが晴れないのも確かな事。

 

 

「ボーッとすんなよ!!アタックステップは継続!!グラウモンでアタック!!その効果でBP7000以下のスピリット、魂鬼を破壊!!」

「……!!」

「魔炎のエキゾーストフレイム!!」

 

 

思い出に浸っていた銃魔など気にかけることもなく、一喝するようにグラウモンでアタックを仕掛ける椎名。

 

グラウモンの口内から勢いよく放たれた一直線の炎が瞬く間に魂鬼を焼き尽くした。

 

 

「魂鬼の破壊時によりカードをドロー」

手札4⇨5

 

「グラウモンのさらなるアタック時効果!!【超進化:赤】を発揮!!完全体、メガログラウモンに進化!!」

【メガログラウモン】LV2(4)BP9000

 

 

魂鬼の破壊時効果など気にする事なく、椎名はグラウモンをさらに進化させる。グラウモンは今一度デジタルコードに包まれ、姿形を変え、再び飛び出す。

 

それはメガログラウモン。グラウモンよりもさらに巨大な体躯に加え、上部にはさらなる武装が施されているのが印象的。

 

 

「メガログラウモンは滅龍スピリット全てにコアシュート耐性を与える!!」

「………」

 

 

銃魔は魂鬼が破壊された時点でエースであるベルゼブモン を召喚する事は可能だった。が、強力なアタック時効果でベルゼブモンでさえも破壊できるメガログラウモンの存在を考えるとそれは不可能であって……

 

結果は案の定だ。召喚していたら間違いなく破壊されていた。

 

グラウモン系列のコアシュート態勢もかなり大きい。この状況ではベルゼブモンもただの召喚だ。効果が通じないのはかなりの痛手である。

 

そんな銃魔の盤面的にやり辛い状況を知るやしもなく、椎名はさらにメガログラウモンで攻める。

 

 

「メガログラウモンでアタックッ!!効果で2枚ドローし、シンボル1つ以下のスピリット、インプモンを破壊!!」

手札6⇨8

 

「……っ!!」

「原子の咆哮…アトミックブラスタァァァァア!!」

 

 

肩部の武装にエネルギーを溜め、一直線に放出するメガログラウモン。それはインプモンをとらえ、直撃させ、一瞬にして跡形もなく消し去った。

 

 

「アタックは継続中!!」

 

「………ライフで受ける」

ライフ5⇨4

 

 

銃魔を守るスピリットはどこにもいない。メガログラウモンのアタックをライフで受ける。

 

メガログラウモンの鋭利な腕部の武器の一撃が、銃魔のライフを1つ切り裂いた。

 

 

「よおっし!!良い調子っ!!ターンエンドッ!!」

【メガログラウモン】LV2(4)BP9000(疲労)

 

【ディーアーク】LV2(2)

【デジヴァイス】LV1

 

バースト【無】

 

 

怒涛の攻めを繰り出しつつ、異常な程にカードアドバンテージを稼いだこの椎名のターン。紫メタとも呼べるメガログラウモンを立ててのエンドは銃魔に対して少なくはないプレッシャーを与えたいて……

 

だが、乗り越えた修羅場の数が違うか、銃魔はその状況を理解していても平然とした涼しい表情を浮かべており………

 

 

[ターン05]銃魔

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ5⇨7

トラッシュ2⇨0

 

 

「メインステップ………俺はシキツルを2体召喚、2枚ドロー」

手札6⇨4⇨6

リザーブ7⇨3

トラッシュ0⇨2

【シキツル】LV1(1)BP1000

【シキツル】LV1(1)BP1000

 

 

折り紙の鶴のようなスピリットを合計2体召喚する銃魔。その効果でカードを1枚ずつドローする。

 

 

「アタックステップ……1体目のシキツルでアタック…!」

 

 

残りライフ3の椎名へシキツルでアタックさせる銃魔。メガログラウモンが疲労している今、1つでも多くのライフを減らしたいと考えたのか、

 

椎名は自分の手札を見て、ここは防がなければと瞬時に思い至り、手札のカードでそれを対処する。

 

 

「フラッシュマジック、リアクティブバリア!!」

手札8⇨7

 

「……!!」

 

「このアタックの終了時、アタックステップを終了させる!!…不足コストはメガログラウモンとディーアークのLVを1にして確保!!」

【メガログラウモン】(4⇨2)LV2⇨1

【ディーアーク】(2⇨0)LV2⇨1

トラッシュ2⇨6

 

 

銃魔がフルアタックを仕掛けたとしても、このターンでライフがゼロにならない椎名だが、ここでアタックステップ終了系のマジックカードを切った。

 

それには手札に理由があるのだが、今の銃魔には知れたことではない。

 

 

「アタックはライフで受ける!!」

ライフ3⇨2

 

 

上空から飛んで来るシキツルの体当たりが椎名のライフを勢いよく破壊した。

 

そしてこの瞬間、発揮させていたリアクティブバリアの効果が適応される。

 

 

「リアクティブバリアの効果でアタックステップを終了!!」

 

 

銃魔の場に吹き荒れる猛吹雪。シキツル達の身動きが取れなくなる。それは銃魔がこのターンのエンド宣言をしない限りは止む事はなく………

 

 

「………ターンエンドだ」

【シキツル】LV1(1)BP1000(疲労)

【シキツル】LV1(1)BP1000(回復)

 

【旅団の摩天楼】LV1

【旅団の摩天楼】LV1

 

バースト【無】

 

 

致し方なく、このターンはエンドとする銃魔。その宣言と共に、椎名の使用したリアクティブバリアの効果によって発生していた猛吹雪が腫れ上がった。

 

 

[ターン06]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札7⇨8

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨8

トラッシュ6⇨0

【メガログラウモン】(疲労⇨回復)

 

 

メガログラウモンが咆哮を張り上げながら、疲労状態から回復状態となる。次はメインステップ。もう既にバトルも6ターン目なのだ。ここからの展開で大きく結果が変わってくることにだろう。

 

 

「メインステップ!!メガログラウモン、ディーアークのLVをもっかい2に上げて、グラウモンを再召喚!!ディーアークの効果でドロー!!」

手札8⇨7⇨8

リザーブ8⇨0

【メガログラウモン】(2⇨3)LV1⇨2

【ディーアーク】(0⇨2)LV1⇨2

【グラウモン】LV2(3)BP6000

トラッシュ0⇨2

 

 

場のカード達のLVを全体的に向上させると共に、【超進化】の効果で手札へと戻っていたグラウモンを再召喚する椎名。2体の魔竜が並び、それらは共鳴するように、より強い咆哮を張り上げた。

 

 

「さらにバーストをセットして……アタックステップ!!」

手札8⇨7

 

 

バーストをセットする椎名。だが、そのバーストカードはさっきの行動により、銃魔にはバレバレである。そして、彼の頭の中では既にこの場を切り崩す方法さえも存在しており………

 

 

(奴はここで必ずメガログラウモンからアタックする。カードを引きつつ、俺の場のスピリットを破壊してくる筈だ……そうなればそれに反応し、ベルゼブモンをLV2で召喚…返り討ちだ……)

 

 

メガログラウモンのアタック時の破壊効果を利用し、ベルゼブモンを召喚。返り討ちにする予定だった。メガログラウモンとグラウモン。単純にアドバンテージが獲得できるのはメガログラウモンだからだ。

 

今までの椎名だったら銃魔の予想通り、間違いなくそうしていたに違いない。

 

だが今は………

 

 

「………グラウモンでアタックッ!!」

「っ!?…なにっ!?」

 

 

あの表情をほとんど微動だにとしない銃魔がここに来て大きく動揺するように揺るがした。

 

メガロではなく、通常のグラウモンでアタックを仕掛ける椎名。これは銃魔にとっては大きな誤算。このままではある事態に陥ってしまう。

 

 

「アタック時効果でシキツルを1体破壊!!…エキゾーストフレイム!!」

「!!」

 

 

グラウモンの口内から放たれる熱き熱線。この強烈な一撃にシキツルが耐えられるわけもなく、あっさりと焼却されてしまった。

 

 

(くつ……ベルゼブモンを召喚したとして、メガログラウモンのアタック時効果で破壊されるだけ………)

 

 

そうだ。メガログラウモンがアタックして、スピリットを破壊しなければベルゼブモンを召喚できない。メガログラウモンもまたアタック時にベルゼブモンを破壊できる効果を所有しているためである。

 

メガログラウモンの持つコアシュート耐性も相まって、ベルゼブモンは手札にあっても召喚できない状況に陥っていた。

 

 

「さらにディーアークの【カードスラッシュ】の効果でギルモンのカードを破棄し、そのLV1BP、3000以下のスピリット1体を破壊!!」

手札7⇨6

破棄カード↓

【ギルモン】

 

「!!」

「もう1体のシキツルだっ!!…いけっ!!ロックブレイカァァア!!」

 

 

ディーアークの力によりギルモンを呼び出す椎名。それは走り出すと、シキツルに飛びつき、鋭い爪の一閃で引き裂いてみせた。その後、ギルモンは役目を終えたかのようにその姿を消滅させた。

 

これにより銃魔の場はガラ空き。できることと言えばそのアタックを食らうのみ……

 

 

「グラウモンのアタックは継続中!!」

 

「っ!!…ライフだ!!」

ライフ4⇨3

 

 

グラウモンの肘にある鋭利な外骨格が銃魔のライフ1つを一刀両断した。

 

 

「へへ……ターンエンドだ」

【メガログラウモン】LV2(3)BP9000(回復)

【グラウモン】LV2(3)BP6000(疲労)

 

【ディーアーク】LV2(2)

【デジヴァイス】LV1

 

バースト【有】

 

 

メガログラウモンをブロッカーに立てて残し、そのターンをエンドとした椎名。銃魔にベルゼブモンの召喚を許さない、実に考えられた素晴らしいターンと言える。このままいけば完封勝利までもが目に見えてくる。

 

だが、この男、銃魔のバトルはその程度では打ち勝てない。それは次のターンでわかることだ。それと同時に次のターンは勝負を決める正念場とも言えて………

 

 

(………エニーズ…あの覚醒が奴を変えたか?……フッ、いいだろう……俺の力、見せてやる……!!)

 

 

クールな表情には似合わず、心の中ではカードバトラーとしての闘争本能を熱々と燃え滾らせている銃魔。そんな様子を見た椎名は何を思ったか、徐に口を動かしていく。

 

 

「あっはは!!…なんか銃魔、楽しそうだね!!」

「!?……楽しい……?」

 

 

椎名はそんな銃魔を見て笑った。そんな様子見て、その言葉を聞いて、銃魔は嘸かし不思議に思った事だろう。

 

敵である自分を前に高々と大きく笑うだけでもおかしな話だと言うのに、バトルを楽しく思っている?……このDr.Aという狂った科学者に忠誠を誓った男が?……信じられるものか………

 

 

「だってさぁ〜〜今考えてるでしょ?…私の場をどう崩すのかを……その顔、すっごく楽しそうだったよ!!」

「フッ、そんなバカな……それはバトルだったら当たり前の………」

「ほらほら!!その顔!!楽しそうだよ!!」

「っ!!?」

 

 

椎名に言われ、ようやく自分の感じていたものに少しだけ気がついた銃魔。しかもこの後、椎名はさらに銃魔が驚くような事を言いだしてくる。

 

 

「私が思うにさ……私と銃魔は仲良くなれると思うよ!!」

「はぁ?」

「最初あった時もなんかバトルしてるのが楽しそうだなぁって思ってたし!!……うん!!きっと仲良くなれるよ!!敵とか、味方とか、世界を壊すとか護るとか関係なしにさ!!」

 

 

目の前の少女は………

 

……今、自分に向けて何を言っているのだろうか。

 

あれだけの事をした自分を友達とでも思っているのだろうか?……仲良くなるなどあり得ない。このDr.Aと芽座六月の関係性がある限り。Dr.Aとの関係を自ら断ち切る事は出来ない。それは絶対だ。

 

 

「……お前のつまらん戯言に付き合う気は毛頭ない……バトルを続けるぞ…俺のターンからだ」

「……はは、まぁいっか!」

 

 

そんな事はありえない。そう思考を過ぎらせながら銃魔は再びバトルを進めていく。

 

 

[ターン07]銃魔

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ6⇨7

《ドローステップ》手札6⇨7

《リフレッシュステップ》

リザーブ7⇨9

トラッシュ2⇨0

 

 

「メインステップ!!俺はインプモンを召喚!!効果のよりカードをオープン」

手札7⇨6

リザーブ9⇨6

トラッシュ0⇨2

【インプモン】LV1(1)BP2000

オープンカード↓

【クリスタニードル】×

【幽騎士ナイトライダー】×

【旅団の摩天楼】×

 

 

重要極まりないこのターン。銃魔が初手で召喚したのは今回2体目とな?インプモン。だがその効果は失敗。全てトラッシュへと破棄されてしまった。

 

しかし、召喚時効果の当たりハズレなどもはや関係のない事……

 

……銃魔は今からこの椎名が作り上げたコアシュート対策の盤面を突破する。

 

 

「俺はさらにマジック、デッドリィバランスを使用!!」

手札6⇨5

リザーブ6⇨5

トラッシュ2⇨3

 

「!!……それは!!」

 

 

紫のマジック、デッドリィバランス。基本的な扱い方は器用なタイミングで狙った相手のスピリットのみを破壊したり、能動的に自分の破壊時効果を持つスピリットの効果を発揮させたりするのが一般的だが、銃魔のデッキだとその基本的が一風変わってくる。

 

 

「効果により、俺はこのインプモンを破壊!!」

「………私はグラウモンだ……ごめん」

 

 

インプモンとグラウモンが紫の靄に包まれていき、破裂するように散って行ってしまう。グラウモンは普通に破壊されただけだが、

 

銃魔の手札ではこの瞬間に発揮可能な効果を持つスピリットが手札にはあって………椎名もそれを理解している。

 

 

「この瞬間、俺は手札のベルゼブモンの効果!!1コストを支払い召喚する!!」

リザーブ6⇨5

トラッシュ3⇨4

 

「!!…やっぱり……!!」

 

 

銃魔は自らのメインステップでエースであるベルゼブモンを効果により召喚する。

 

 

「孤高の魔王よ、百戦錬磨の力をこの世に知らしめよ!!……ベルゼブモン、LV2で召喚!!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨2

【ベルゼブモン】LV2(3)BP11000

 

 

上空から地上へと降り立って来る何か………それが放つ禍々しいオーラは他のデジタルスピリットとは一線を画している。

 

そのスピリットの名はベルゼブモン。紫の究極体スピリットで、尚且つ、銃魔が最も信頼を置く、揺るぎないエーススピリットだ。

 

ただ、召喚時効果やアタック時効果で強力なコアシュート効果を発揮できるが、椎名のメガログラウモンによりそれが全てシャットダウンされているのは痛かったか………

 

 

「……へへ、出たねベルゼブモン!!」

「何を嬉しそうにしている」

「目の前にこんなすっごォォいスピリットが敵として立ち塞がっているんだ!!私にとってこれ程楽しい事はないよ!!」

「………そうか」

 

 

このまま椎名と会話をしていると自分の何かが壊れそうだ。銃魔は咄嗟にそう思い、椎名から目を逸らし、自分のターンをさらに前へと進めていく。

 

 

「アタックステップッ!!…行け、ベルゼブモン!!」

 

 

アタックステップへと移行し、エース、ベルゼブモンでアタックを仕掛ける銃魔。何度も言っているのだろうか通り、メガログラウモンにベルゼブモンの効果は効かない。

 

だが、銃魔のデッキはコアシュート効果が通らない程度で詰むようなデッキではない。銃魔はこのバトルの勝負を、何度もバトルしてきた椎名との決着をつけるべく、このベルゼブモンをさらに飛躍させる。

 

 

「フラッシュ!!【チェンジ】発揮!!対象はベルゼブモン!!」

「!!」

 

「この効果により、貴様のリザーブからコアを支払う!!そのコア数は3!!」

 

「……っ!!」

リザーブ3⇨0

トラッシュ2⇨5

 

 

椎名のリザーブにあるコアが紫の淡い光を纏ってトラッシュへと飛ばされていく。これも銃魔の持つ【チェンジ】を持つデジタルスピリットの力だ。

 

そして、この効果発揮後には、【チェンジ】の基本効果に則り、対象スピリットとの入れ替えだ………

 

 

「ベルゼブモン、モードチェンジ!!……ブラストモードッ!!」

【ベルゼブモン ブラストモード】LV2(3)BP16000

 

 

ベルゼブモンが進化を超える。その背には漆黒の翼が4枚、新たに生え、右手には陽電子砲が取り付き、一体化する。そのベルゼブモンに与えられた名はブラストモード。銃魔の持つ最強の切り札だ。

 

 

「……おぉ!!ブラストモード!!やっぱりカッコいいなぁ!!」

 

 

やばい状況だと言うにもかかわらず、椎名はいつものようにバトルを楽しみ、眼前に聳える強敵に武者震いしていた。

 

 

「エニーズ!!…お前が伏せたバーストは分かっている!!おそらくはライフ減少後のバースト…マリンエンジェモンあたりだろう?」

「!!」

 

 

唐突に椎名のバーストを予想し出した銃魔。だが、実際は的中していた。椎名の伏せているバーストはマリンエンジェモン。

 

前のターン、椎名がマジックでリアクティブバリアを使用した事を踏まえて考えたのだ。あの時のマジックはライフ減少後のバーストを使うためにライフを残すためのもの。そして、椎名のバーストと言えばマリンエンジェモン。簡単な推理だ。

 

 

「…図星のようだな、貴様のライフは2!!…そしてこのブラストモードはアタック時にダブルシンボルになる効果がある!!これで終わりだ!!」

 

 

ライフ減少後のバーストはライフがゼロになったら使えない。プレイヤーのライフがゼロになってしまったらバトル自体が終了するからだ。

 

それを見越して銃魔はこのターンでブラストモードを呼び出したのだ。しかも、【チェンジ】の効果で回復状態、2度のアタックが可能。これにより、椎名のメガログラウモンごと貫いてライフを破壊できる。

 

デッドリィバランスとベルゼブモンのコンボやこれまでのプレイングを含めても見事と言える。

 

だが、

 

 

「……流石銃魔だ……でも私のバトルもまだまだこれからだ!!…フラッシュマジック!!ブルーカードを使用!!不足コストはディーアークのLVを下げて確保する!!」

手札6⇨5

【ディーアーク】(2⇨1)LV2⇨1

 

「っ!?…このタイミングでブルーカード!?」

 

 

ブルーカード。それはデジタルスピリットを好きなタイミングで進化できる可能性を秘めたカード。非常に強力な効果だが、その効果発揮には運も試される。

 

デッキの上から4枚で場に存在するスピリットと同じ色を当てなければならない。今回だとメガログラウモンと同じ赤一色のスピリットが対象圏内だ。椎名はこの博打とも取れる戦法にバトルの命運を託していた。

 

 

「いくぞおおお!!…カードオープン!!」

オープンカード↓

【ワームモン】×

【スティングモン】×

【エクスブイモン】×

【デュークモン クリムゾンモード】◯

 

「っ!!」

 

 

引いた。椎名はその圧倒的なセンスでここ一番、4枚目のオープンカードで最高にして最強のカードを引き当てる。

 

 

「よっしゃぁっ!!…効果は成功、1コスト支払い、メガログラウモンをデッキの下に戻して召喚!!」

【ディーアーク】(1⇨0)

トラッシュ6⇨7

 

 

青いカードがメガログラウモンの身体を下からくぐっていく。メガログラウモンはそのカードの不思議な力により、姿形を大きく変えていく。その姿はまさしく紅い最強騎士。

 

椎名の召喚口上と共に完全に姿を見せる事になる。

 

 

「燃え上がれ聖騎士!!真なる深い赤をその身に纏い、邪悪なる者皆、照らし破れッ!!…デュークモン クリムゾンモードッ!!LV2で召喚!!」

【デュークモン クリムゾンモード】LV2(3)BP18000

 

 

そのスピリットは文字通り深い赤を見に纏う究極体の聖騎士、ロイヤルナイツであるデュークモンがさらに進化した姿、名をクリムゾンモード。椎名の持つ最強の切り札だ。

 

 

「……これがDr.Aの言っていたエニーズの最強スピリット………クリムゾンモード」

 

 

言葉でしか聞いたことのなかった銃魔はそのクリムゾンモードの姿を初めて視認した。確かに美しい。白い10枚の羽、深い赤の鎧……そのきめ細かなディテール。どれをとっても完璧だ。

 

銃魔は咄嗟に悟った。このスピリットを倒してこそ、真にエニーズに勝利した事になると………

 

 

「…ブラストモードのアタックはクリムゾンモードでブロックッ!!」

 

 

椎名のブロック宣言により、2人の最強の切り札がいよいよ衝突する。

 

先手を取ったのはブラストモード。陽電子砲の一撃を放ち、クリムゾンモードを狙うが………

 

 

「神剣 ブルトガングッ!!」

 

 

椎名がそう叫ぶと、クリムゾンモードは左手に光の力を束ねた神剣を生成、そのまま縦に振り下ろし、ブラストモードが放った一撃を断ち切ってしまう。

 

 

「BPはクリムゾンモードの方が上だッ!!いけぇ!」

 

 

白き10枚の羽でブラストモードのいる空中へと飛び立つクリムゾンモード。ブラストモードはそれを撃ち落とさんと陽電子砲で迎撃を試みるが、クリムゾンモードはその全てを紙一重で避け、そのままブラストモードの元へと近づいていく。

 

このままクリムゾンモードの神剣の一撃がブラストモードを切り裂くのかと思いきや、銃魔はまだ手があるのか、負けじと手札のカードを引き抜く。

 

 

「負けん!!フラッシュマジック……カオスドロー〈R〉!!」

手札4⇨3

リザーブ2⇨0

トラッシュ4⇨6

 

「っ!!」

 

「この効果により、このターン、ブラストモードのBPを3000上昇、よって合計BP19000!!」

【ベルゼブモン ブラストモード】BP16000⇨19000

 

 

クリムゾンモードの神剣がブラストモードの喉元を捕らえようとした直後、ブラストモードの3つの眼はより力強く異彩なオーラを纏う。

 

そして、右手の陽電子砲でその神剣の一撃を止め、逆にクリムゾンモードを弾き飛ばした。クリムゾンモードはなんとか空中で姿勢を保つも、目を前に向けた直後、ブラストモードが目の前に存在しており、

 

そのままブラストモードの余った左手で殴られ、また飛ばされると、今度は陽電子砲の一撃を放たれる。クリムゾンモードはなんとかそれは躱すも、防戦一方、このままでは確実に破壊される事だろう。

 

 

「もうお前にマジックを使うほどのコアはない!!諦めろ!!」

 

 

椎名のフィールドとリザーブにあるコア数は合計3。クリムゾンモードに乗っているだけで全てだ。カウンターのマジックは到底打つことは叶わない。

 

……しかし、

 

 

「いや、まだだ!!まだまだぁぁぁあ!!!」

「……!!」

 

 

椎名は諦めることを知らない。手札からさらにカードを引き抜く。それはデジタルスピリットでもなければ況してや強いスピリットでもない。

 

ちっぽけなスピリットだが、ここでは……この局面を左右する重要なスピリットだ………

 

 

「フラッシュアクセル!!煌星竜スター・ブレイドラ!!」

手札5⇨4

 

「なにっ!?」

 

「このカードのアクセルは1コストの赤1軽減!!効果により、このターン、クリムゾンモードのBPを3000アップ!!…よって、そのBPは………」

【デュークモン クリムゾンモード】BP18000⇨21000

 

「に、21000だと!?」

 

 

トドメと言わんばかりに陽電子砲の一撃をクリムゾンモードに向けて放とうとするブラストモード。しかし、その瞬間、クリムゾンモードは力を高めるかのように、眼光を強く放ち、左手に持つ神剣を自分より上にあるブラストモードへと投擲し、陽電子砲を貫く。ブラストモードの陽電子砲は中でエネルギーが漏れ、神剣ごと爆発。ブラストモードはその爆発でほんの僅かに怯んでしまう。クリムゾンモードはその僅かな時間を逃さず、ブラストモードの懐に潜り込み、下に向かって顔面を殴りつけた。ブラストモードはそのまま下の地面へと叩き伏せられる。

 

 

「光爪 シャイニングクロー!!」

 

 

椎名がそう叫ぶと、クリムゾンモードは力を高めるかのように両手をクロスさせ、力強く解き放つと、その両手には新たに光の鉤爪の武器が取り付けられていた。その形やフォルムはウォーグレイモンのドラモンキラーに近い。

 

そしてそのままブラストモードの落ちた地へと猛スピードで急降下。これが最後の一撃だ。ブラストモードは迫ってくるクリムゾンモードを返り討ちにするために、立ち上がり、陽電子砲を失った右手に残った全エネルギーを集約。そのまま構える。

 

その熱きバトルを見ていた銃魔は我を忘れたかのように熱くなっていて………

 

 

「……俺の……俺のブラストモードは負けん!!負けんぞォォォォお!!」

「光爪の一撃!!……ラグナロクブレイカァァァァァァァァア!!!」

 

 

クリムゾンモードもそのままスピードを緩めることなくブラストモードに鉤爪を構え、突撃。そして空を切り裂くかのようには両者衝突、

 

互いの渾身の一撃が互いに炸裂した。

 

後ろを振り返らない両者。ブラストモードの最後の拳は届いていたのか、クリムゾンモードの右肩のアーマーに亀裂が生じていき、砕け散る。光の鉤爪もまた粒子のように流れ、消えていく。

 

だが、それ以上にブラストモードの腹部から胸部にかけて大きな鉤爪の傷跡が刻まれており………ブラストモードはそれに耐えられず、力尽き、倒れ、デジタルの粒子となってゆっくりとこの場から消滅していった。クリムゾンモードはその最後を一切振り返ることなく見届けた。

 

椎名のクリムゾンモードの勝利だ。

 

 

「………ターンエンド」

【旅団の摩天楼】LV1

【旅団の摩天楼】LV1

 

バースト【無】

 

 

この状況に、いったい彼は何を思っていたのか……

 

銃魔は落ち着きを取り戻すと共にその瞳を閉じ、そのターンのエンド宣言を行った。次は見事に強敵、ベルゼブモン ブラストモードを返り討ちにしてみせた椎名のターンだ。

 

おそらく、これが最後のターンとなるだろう。

 

 

[ターン08]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨8

トラッシュ7⇨0

【デュークモン クリムゾンモード】(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ……全てのカードのLVを最大に!!」

リザーブ8⇨0

【デュークモン クリムゾンモード】(3⇨7)LV2⇨3

【ディーアーク】(0⇨2)LV1⇨2

【デジヴァイス】(0⇨2)LV1⇨2

 

 

LVがさらに上昇するクリムゾンモード。これで準備は万端だ。椎名はアタックステップへと移行する。

 

 

「アタックステップッ!!クリムゾンモード……ラストアタックだ!!」

 

 

低空飛行で地面すれすれを翔けるクリムゾンモード。目指すものは当然銃魔のライフだ。銃魔はもうそのアタックを止める術はない。

 

 

「……ライフで受ける」

ライフ3⇨2

 

 

クリムゾンモードの真紅の拳が銃魔のライフを破壊する。そしてまだだ。まだクリムゾンモードの攻撃は終わらない。さらなる効果により、でこのバトルに終止符を打つ。

 

 

「クリムゾンモードのアタック時効果!!バトルの終了時、相手のトラッシュにあるスピリット3枚につき1つ、相手のライフを破壊する!!」

「…………」

「今、銃魔のトラッシュには11枚のスピリットカードがある!!よって破壊するライフは3!!……神槍 グングニルッ!!」

 

 

椎名がそう叫ぶと、クリムゾンモードは右手から光の力で神槍を生成する。そしてそれを手に持ち、銃魔に拳を向ける。そこから真紅の光のエネルギーを凝縮させ………

 

 

「神槍の一撃……クォ・ヴァディスッ!!」

 

 

一直線に発射。その一撃は回避不可の最強の技。瞬く間に真紅の光が銃魔のライフバリアの周りを包み込んで行き………

 

 

「……そうか、俺は……」

ライフ2⇨0

 

 

……楽しいバトルがしたかった。銃魔はそう心の中で言葉を呟いた。

 

銃魔はその光の中でようやく理解した。自分がこの場に来た本当の理由。それは椎名と楽しいバトルをしたかったから。体中が沸騰するような熱いバトルをするためだった。本当の戦いが始まり、それができなくなる前にやっておきたかったのだ。

 

銃魔は不思議と心の中にあった蟠りのような何かがライフと一緒に消え去って行くのを感じた。

 

椎名の熱いバトスピ魂は敵であるこの銃魔にも確かに響き、伝わり、届いていたのだ。

 

そしてその真紅の光は銃魔のライフを全て砕き切った。これにより、勝者は芽座椎名だ。クリムゾンモードとブラストモードの死闘に打ち勝ち、見事に本気の銃魔を下した。

 

 

「……いよっしゃぁ!!」

 

 

単純にバトルで勝ち、歓喜する椎名。勢いよくその両手を固め、上に掲げる。その様子を見届け、唯一場に残ったクリムゾンモードはその姿をゆっくりと消滅させていく。

 

そして、完全に消え去った後に、銃魔は椎名のところへと歩み寄り…………

 

 

「………ありがとうエニーズ………いや、椎名」

「っ!?」

 

 

銃魔は握手を求め、礼を言いながら右手を椎名に差し出した。その人が変わったような意外な行動に、椎名は一瞬だけ戸惑う。

 

 

「俺はお前の言う通り、楽しいバトルを求めていた。この身が沸騰するような熱いバトルを……決着の勝敗など、どうでも良い事だった……」

「………へへ!!私は結構最初からそうなんじゃないかって思ってたよ!!」

 

 

椎名も笑いながら銃魔が差し出してきた手と同じ手を差し出して握りしめた。椎名は敵であった銃魔と固い握手を交わした。

 

 

「……だが、俺はDr.Aを裏切る事は出来ない。次に会う時は戦場で、敵としてお前の前に立ちはだかるだろう」

「えぇっ!?なんでぇ!?」

 

 

銃魔はDr.Aを裏切ることができないわけがある。Dr.Aがどんなに凶悪で、間違っていることをしようと知っていてもだ。どうしても椎名達の味方をするわけにはいかなかった。

 

 

「椎名……お前のバトスピに対する熱い思いは飛び火し、人間兵器とも呼べるこの俺が最後の戦いの前に人間らしさを感じることができた………本当に感謝する」

「っ!!お、おい!!何勝手に1人で満足してるんだよ!!ちょっと待ってよ!!銃魔っ!!」

 

 

銃魔は今までと比べて信じられないほどに柔和な笑顔を浮かべ、感謝の言葉を述べながら、椎名との握手を離すと、島の柔らかな風と共にワームホールで姿を消した。椎名はどこかもどかしかった。せっかく銃魔と仲良くなれたのに………せっかくDr.Aから解放できたのに………

 

……結局、

 

……結局はどこかで戦わないといけないのかと思うと、どこか胸に引っかかるものがあってしょうがなかった。だが、立ち止まってもいられないのも確かであったため、椎名は六月のくれたボートの鍵を手に持ち、虚しさと悔しさに歯を食いしばりながらも島の港へと向かうのだった。




〈本日のハイライトカード!!〉

椎名「本日のハイライトカードは【煌星竜スター・ブレイドラ】!!」

椎名「スター・ブレイドラは赤の0コストスピリット!!赤の1コスト1軽減でスピリットのBPをアップできるよ!!」

******


〈次回予告!!〉


時はまた少しだけ遡り、多くの分身デ・リーパーが蔓延る界放市。空野晴太はただ1人孤軍奮闘し、侵攻を食い止めていた。そんな時、彼の目の前に現れたのは界放市市長の木戸相落。彼は衝撃の事実を晴太に告げる……次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ 「その名はエボルト、進化の頂点に立つ者」……今、バトスピが進化を超える!!


******


最後までお読みくださり、ありがとうございました!!


次回はDr.Aがバトルするのですが、結構衝撃的で面白くて、尚且つラスボス感のあるデッキだと思います!楽しみにお待ちください!!

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