界放市……そこは日本におけるバトスピ学園の最高峰が合計6つも並び立っている日本バトスピ界の重鎮とも呼べる大都市。
だが、そんな大都市は危機に瀕していた。
轟音、破壊音、衝撃音。
飛び交う悲鳴や泣き声。逃げ惑う街の人々。その様はまさしく地獄絵図、阿鼻叫喚と言ったところ………平和だった大都市はデ・リーパーの軍団によって壊滅的な状態にあった。
デ・リーパー軍団はとにかく恐ろしかった。何も言わなければ破壊行動を起こし、この世界らしくバトルを仕掛ければいっときはおとなしくなるも、圧倒的な強さですぐさま倒し、また破壊行動を起こしていた。
しかも恐ろしいことはそれだけではない。
「ADR-02でアタック」
「ら、ライフで……う、うわぁぁァァァア!!」
無表情どころか顔がなく、どこから発しているかも知れない機械のような無機質な声色で羽の生えた最も小さいADR-02に指示を送るデ・リーパーの分身体。対戦していた勇敢な若い男性は最後の最後まで抵抗するも、デジタルスピリットの特効とも呼べるそのスピリット達の前に敗れ去ってしまう。それに最後のライフをあっさりと体当たりで砕かれた。
……そして……
「う、うわぁぁ!?!…な、なんだァァ!?なんだよぉ!!うわぁぁ!?!」
デ・リーパーの分身体に敗れ去った直後、若い男性はデジタル粒子に変換され、虚しい断末魔をあげながら地上から姿を消してしまった。
その粒子は今現在、街を覆っていこうとしている上空の青黒い壁に吸収された。それはどんどん人をデータ化し、拡大していく。大層不気味極まりなかった。
だが、界放市の人口が凄まじい勢いで減少していく中、この男はただ1人立ち向かい、勝ち続けていた。界放市立、ジークフリード校 教師 空野晴太だ。もはや車も通ることはない高層ビルの間の道路で多くのデ・リーパーの分身体を蹴散らしていた。
「いけぇ!!ビレフト!!バゼル!!ノヴァ!!」
晴太が3体の強力な馬型スピリット、エグゼシード達にそれぞれのデ・リーパーにアタックの指示を送る。すると、3体は一斉に駆け出し、その鋭利な一角でライフを全て貫いてみせた。
これにより、晴太の勝利だ。敗北したデ・リーパーの分身体達は敗北によってなのかは定かではないが、デジタル粒子となってこの場から消滅していった。
「ふぅ〜〜……ここら辺はこんなもんか……ったく!!なんなんだ急にぞろぞろと!!しかもよりにもよってこんな……全ての理事長や市長が集まる定例会議の時に限って!!」
そう愚痴を零す晴太。
彼の言う通り、今、最も頼りになるはずの学園の理事長や市長はいない。年に一度の定例会議に出向いているからだ。この定例会議は年に一度、春休みの時期に日本のバトスピ学園のそれぞれの心境報告を行うものだ。
一木聖子率いる警察も今は住民の避難に手がいっぱいだし、兎姫にも力を借りるわけにはいかないため、晴太はこうやってずっと孤軍奮闘していたのだ。
しかし、致し方ないが、あまりにも襲ってくるタイミングと、理事長達がいないタイミングがマッチしすぎている。晴太はこの偶然に妙な予感を感じ取っていた。
そんな時だ。彼の背後から聞き慣れた声色が自分を呼ぶ。
「おお〜〜い!!」
「っ!!」
ふと、晴太が振り返ると、そこにはこの界放市において、最も信頼できる存在。最も崇拝すべき存在が目の前にいて………
「…市長!!」
「やぁ!!無事で何より…!!」
そう緊張感のない腑抜けた声色の正体は、この界放市の市長、木戸相落。椎名の育て親、六月の幼馴染にして親友。Dr.Aこと、徳川暗利とも同じ関係であった。
「ど、どうしたんすか!?定例会議は!?」
「はっはっは!!そんなもの竜ノ字達に任せたよ!!街の一大事だからね!!」
歳はもう70は超えていると言うのに、その声はとても若々しく、張りがある。そんな印象もあって、これ程までに頼りになる存在はいないと、晴太は考えていた。
だが、次の彼が放った一言が、晴太の心の底を凍てつかせる。
「良かった、これなら百人力だ!!……じゃぁ一緒に…………」
「ヌフフフフ……それに君ともバトルしてみたかったしね〜〜空野君!!」
「………………は?」
思わず呆気に囚われた晴太。
今、市長の声色は明らかにおかしかった。優しそうな声から一変、不気味な声に転身した。それはとても耳に触り、震え上がらせるような汚い声だった。
だが、それ以上に気になったのは「ヌフフフ」と言う独特な笑い声………
この声にも笑い方にも、晴太は聞き覚え、見覚えがあって………
「ヌフフフ、何ですか空野君?…何か怖いものでも見ているような顔だよ……!!」
「………お、お前は……」
「……おや?覚えていないとでも言うのかい?……もう8年前にもなるのかな?君の友達のデッキを拝借してバトルしたじゃないか!!」
「……お前は……!!」
体中から冷や汗が止まらない。鳥肌が立ってしょうがない。間違いない。この人物はあの男だ。この世の怪事件の全ての元とまで言われている代表的なマッドサイエンティストが………
「ヌフフフ!!お気付きのようですが……私は…Dr.A!!この新たな世界を作る神だぁぁぁあ!!」
「っ!?!」
自分の顔を剥ぐ木戸相落。変装用のマスクが脱ぎ捨てられ、新たに出て来た顔は……若い顔の男性だった。Dr.Aのような焼け跡は残っているものの、彼の年齢からは到底想像もつかない顔であって……
「ど、Dr.A!?……だとしたら若過ぎる!!」
「あ〜〜これはちょっとした諸事情でこうなったんですよ〜〜」
話の次元が違う。若返ったとでも言うのか。確かに前のスピリットアイランドでの事件の報告書通り、顔には大きな火傷の跡があるが、それだけでは判別はできない。
「お前……市長にいつからなりすましていた?」
「ん?あぁ、そのことかい?…ざっと18年前さ……ヌフフフ」
「じゅ、18年!?」
例えば、18年前、あの研究所の大火事で死んだのが、徳川暗利ではなく、木戸相落だったら……それで暗利がずっと木戸相落になりすましていたとしたら……
……全ての事柄に辻褄が合う。
界放市の市長ならば、界放市に関するありとあらゆる報告が飛び交う。その情報の中で、椎名を監視していたのだ。だから修学旅行やスピリットアイランドに行った時もピンポイントで彼女らの前に立ち塞がる事が出来た。
「お、お前はその間ずっと一人二役を演じて来たとでも言うのか……!?」
「ヌフフフフフ、あぁ、界放市の市長は身を隠すにも便利な立場だったよ……本当にね」
晴太は信じられなかった。今までずっと見てきた市長が偽物だと言うことを……その衝撃的な事実を受け入れられなかった。
だが、目の前のものが全て現実なのだ。どう自分が解釈し、捉えようとも、決して覆ることのない真実。
なら、自分のすべき事はただ一つ………
「……勝負だ、市長……いやDr.A!!どうせあの化け物共もお前の産物だろ!!…俺が勝ったらあいつらを連れてここから去れ!!」
晴太は見た目が若くなったDr.Aに向けてデッキを構えながら、そう強く宣言した。Dr.Aとしては、どちらにせよ晴太とバトルする予定だったのだ。
寧ろこれは好都合と捉えたか、またいつものように不気味な笑い声を上げながら………
「ヌフフフフ、いいでしょう空野君!!今回は本気でお相手しますよ!!」
「行くぞ!!」
Dr.AもデッキとBパッドを取り出した。
2人はそのBパッドを展開と共にそこへデッキをセット。そして始まる。この界放市最強のカードバトラー、市長、木戸相落……もといDr.Aと、ただの担任教師、空野晴太のバトルスピリッツが………
「「ゲートオープン、界放!!」」
バトルが開始される。
先行は晴太だ。
[ターン01]晴太
《スタートステップ》
《ドローステップ》手札4⇨5
「メインステップ!!マジック、エンペラードローを使用!!カードを2枚引き、ソウルコアの支払いにより2枚オープン!!」
手札5⇨4⇨6
リザーブ4⇨0
トラッシュ0⇨4
オープンカード↓
【コレオン】◯
【ビーバン】◯
晴太が全てのコアをトラッシュへと送り、颯爽と使ったのはマジックカード。この効果により、オープンカードに皇獣スピリットは全て手札へと加えられる。今回はコレオンとビーバン。2体とも対象内のスピリットだ。
「この2枚を加えて、エンドだ!!……お前は昔兎姫ちゃんを…そして今は俺の大事な生徒達にも手を出している!!そんなお前を許すわけにはいかない!!…ここで俺がぶっ潰す!!」
手札6⇨8
バースト【無】
「ヌフフフフ、威勢が良いね〜〜……」
椎名達がこの男にどれだけ苦しめられたのかは晴太には痛いほどよく知っていた。スピリットアイランドでの事件。あれ以降Dr.Aの顔は世界中に知れ渡る事になったからだ。しかし、それだけでもない。紫治一族の時も、そしてオーズ一族の時も椎名達を、大事な生徒達を自分の目の見えないところでたくさん傷つけていたことがわかったのだ。晴太の溢れる怒りの感情の大きさは計り知れない。
どちらにせよ、8年前、兎姫を傷付けたまま何処かへと消え去ったあの時から許す気など毛頭ない。今度こそ徹底的に叩き潰す。
そんな気持ちもあってか、晴太は柄にもなく、それでいてらしくもなく、表情が強張っていた。
「さぁ、私のターンだ……ヌフフフ」
そんな晴太の掛けてくる圧など意に介す事なく、Dr.Aは自分のターンを進めていく。
そして、突如として彼のデッキから黒くて淡い色の光が湯気のように広がっていく。
「っ!?なんだその気持ち悪いのは!?」
「驚いたかい?……私はもうあの時のDr.Aではない!!…このオーバーエヴォリューションを繰り返せるこのデッキを手にしているのだからな!!」
Dr.Aは若い体になってからというもの、椎名によく似たデ・リーパーを作り、そして、さらにそれを元に自分のデッキを組んでいた。
それは普通のカードの束ではない。進化の力を何倍にも高めることができる特別仕様。Dr.Aが得た力と合わせて、理論上は何度もオーバーエヴォリューションを使用することが可能だ。この黒い光はその影響だ。
「……オーバーエヴォリューションを繰り返すだと………化け物が……!!」
「ヌフフフ!!……世界を変革させるには十分な力さ!!」
不敵な笑みを絶えず浮かべるDr.A。そして、いよいよ彼の、人智を超えたデッキとバトラーのターンが幕を開ける。
[ターン02]Dr.A
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ4⇨5
《ドローステップ》手札4⇨5
このドローステップ時、Dr.Aはその禍々しいデッキの上から1枚のカードを抜き取った。そのカードは当然ながら全ての人類どころか、Dr.A自身も知らない、全てを超越したスピリットカード。
このデッキにはそう言ったカード達の集まりと言っても過言ではないだろう。
「メインステップ!!……先ずは下準備と行きましょうかね〜〜!!…マジック、ストロングドローを使用!!」
手札5⇨4
リザーブ5⇨2
トラッシュ0⇨3
Dr.Aが使用したのは青属性の最も一般的なマジックと言える存在、ストロングドロー。その効果は至ってシンプル。故に強力。
「この効果により、デッキから3枚のカードを引き、その後2枚捨てる!!……ヌフフフ、これらを破棄!!」
手札4⇨7⇨5
破棄カード↓
【ゴジラ(2004)】
【仮面ライダーマッドローグ】
常にその禍々しい光を放つデッキ。Dr.Aはまたそこからカードを引く。進化を繰り返す、そのデッキから………
それも当然ながら信じられないほどに強力なカードばかりであって………
「ヌフフフ、良いですね〜〜よく回っていますよ〜〜…さらに私はバーストをセットし、ターンエンド!!」
手札5⇨4
バースト【有】
追加でバーストをセットし、そのターンを終えたDr.A。ここだけ見れば至って普通のターンだが、最初のターンでは流石にこの程度といったところか、
だが、デッキが完成しつつあるのは確かな事であって………
次は一周回って晴太のターン。最強のデッキを前にどう立ち回るか………
[ターン03]晴太
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
《ドローステップ》手札8⇨9
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨5
トラッシュ4⇨0
(何度もオーバーエヴォリューションを繰り返せるデッキ………なら長期戦は不利だ、バーストが気になるが、ここは……速攻だ!!)
晴太は考えた。カード及びデッキの進化、オーバーエヴォリューションを繰り返すことのできるデッキ。そんな人智を超えたデッキを相手に長期戦は不利。ならば最速で且つ、最短ルートで倒すしかない……と。
「メインステップッ!!俺はコレオンを1体、ハクビシンドローンを2体、ビーバンを1体召喚!!さらにネクサスカード、十二神皇の社を配置!!」
手札9⇨4
リザーブ5⇨0
トラッシュ0⇨1
【コレオン】LV1(1)BP1000
【ハクビシンドローン】LV1(1)BP2000
【ハクビシンドローン】LV1(1)BP2000
【ビーバン】LV1(1s)BP2000
【十二神皇の社】LV1
手札の半分以上を切り、大量にカードを場に呼び出す晴太。
最早彼のデッキではお馴染みのデフォルメされた小さなライオン、コレオン1体、ドローンを駆り飛行するハクビシン、ハクビシンドローンが2体。そしてビーバーのようなスピリット、ビーバンだ。さらには背後に神社のようなものが出現。付近には馬のような彫刻も確認できる。
「ほお?…そんなに低コストのスピリットを抱えていたなんてね〜〜」
「…さらにバーストをセットし、アタックステップ!!…ビーバンでアタック!!ソウルコアが置かれているため、カードを1枚ドロー!!」
手札4⇨3⇨4
晴太の場にバーストが伏せられると共に颯爽と走ったのはビーバンだ。狙うは当然Dr.Aのライフ。
「ライフで受けよう!!貰うが良い!!」
ライフ5⇨4
コアも少ないためか、Dr.Aはあっさりとそれを承諾する。ビーバンの体当たりが彼のライフを1つ粉々に砕いた。そしてそのバーストは開かなかった。普通のデッキならば単なる事故かと思えてしまうが、このデッキは別だ。逆に怪しすぎる。
だが、今の晴太に考える余地はない。知りもしないカードを知ろうとしてどうする?…時間の無駄だ。そう言わんばかりに………
「続け!!コレオン!!」
コレオンにアタックの指示を送った。コレオンがDr.Aのライフめがけ走り出す。
「それもライフ!!」
ライフ4⇨3
コレオンのパンチがDr.Aのライフを1つ木っ端微塵に砕き切る。
「このまま一気に殴り続ける!!お前のライフは1だ!!」
「まぁまぁそう慌てることはない……バトルはまだ始まったばかりなのだから……!!」
2度目のアタックを受けた後、まるでこのタイミングを待ち望んでいたかのように口角を上げるDr.A。オーバーエヴォリューションの力で新たに生み出し、そして事前にトラッシュへと送っていたカードが………人智を超えたスピリットカードの1枚が今、動き出す。
「私はトラッシュに眠るゴジラ(2004)の効果を発揮!!」
「…!!」
「トラッシュにあるこのスピリットは自分のライフが減る時、2コストを支払い召喚できる!!」
「なにっ!?」
ゴジラ。その名を持つスピリットは非常に珍しい。古より存在する太古のスピリットの事である。時代、又はこの世界とは異なる時間軸、歴史によってはデジタルスピリットや仮面スピリットのようなタイプ分類があったのかもしれない。
だが、そのスペックはデジタルスピリットや仮面スピリットにも負けず劣らず高いのは確かな事だ。Dr.Aはそれがさらに強力になったスピリットを呼び出す。
「太古の神よ!!原子の力その身に宿し!!現れ出でよ!!ゴジラ(2004)!!LV1で召喚!!」
リザーブ4⇨1
トラッシュ3⇨5
【ゴジラ(2004)】LV1(1)BP10000
蠢く地の底より、咆哮を張り上げながら現れたのは黒い体に大きな尾を持つシンプルな怪獣と言った見た目のスピリット、ゴジラ。
だが、そこから感じられる迫力やオーラは美しくも凄まじく、神にも匹敵すると言って過言ではない。晴太は今まさしく、Dr.Aが所有するデッキの持つ大いなる力の一端を見ていて……
「………こ、これが……ゴジラ……!!」
「ヌフフフ、素晴らしい!!そしてなんと美しいのだろう!!これが私の求めていた力だ!!」
ゴジラの圧倒的な迫力に思わずたじろぐ晴太。使い手であるDr.Aは逆にその凄みに見惚れていた。それは力という名の凄みだ。どんな敵でも敵う事のない、圧倒的な………
だがしかし、晴太とて、この程度でモチベーションを完全に削がれるわけにはいかない。気を取られたのは一瞬だけで、直ぐに我に帰り………
「……アタックステップは続行する!!ハクビシンドローンでアタック!!」
ライフを1つでも多く破壊しようと言う魂胆か、晴太は残った2体のハクビシンドローンでもアタックを仕掛けるつもりである。エグゼシードデッキは一気にライフ2つを破壊できる特徴を持つため、戦術的には間違ってはいないが…………
ハクビシンドローン1体が、ドローンを器用に扱い、Dr.Aのライフめがけて飛翔した。
「ほぉ、臆せず攻めるか……だが甘い!!アタック後のバースト発動!!」
「っ!?ここでバースト!?」
Dr.Aは晴太のハクビシンドローンのアタックに合わせて、今まで微動だにとさせなかったバーストカードを勢いよく反転させる。
それもまた、オーバーエヴォリューションによって得た人智を超えたスピリットカードであり………
「究極体、ケルビモン(悪)!!効果によりこれを召喚する!!」
「っ!?…今度はデジタルスピリットだと!?」
「悪に染まりし大天使よ!!神と共に並び立つが良い!!ケルビモン(悪)!!LV1で召喚!!」
リザーブ1⇨0
【ケルビモン(悪)】LV1(1)
ドス黒い球体がDr.Aの場に静かに降り立つと、それは飛び散っていき、中から巨大な大天使の究極体デジタルスピリット、ケルビモンが現れた。その見た目はまるで肥えた道化師と言ったところで、大天使と呼ぶには似つかわしくないが、それでも究極体故に強力な力を保有している。
ただし、この姿は悪。本来は善の姿も存在するはずだが、Dr.Aのオーバーエヴォリューションの力による影響か、その身は悪に染まりきっていた。
「召喚時及びアタック時効果!!相手スピリット1体をBPマイナス10000!!……ヌフフ、これによりアタック中のハクビシンドローンを破壊しますよ〜〜!!……雷槍…ライトニングスピア!!」
「っ!?アタック中の方だと!?」
【ハクビシンドローン】BP2000⇨0(破壊)
ケルビモンは登場するなり空中から雷迸る槍を形成、謎の力でそれを空中にいるハクビシンドローンへと向けて放つ。あまりの速さに避けることは叶わず、ハクビシンドローンは貫かれ、撃墜されてしまうが………
(な、なんでだ!?…狙うならアタックしていないハクビシンドローンだっただろ!?……何か狙いがあるのか!?…)
そう思考を過ぎらせる晴太。ケルビモンの効果を使うのであれば、通常この場合、アタックしていない方のハクビシンドローンを破壊するのが正解だ。その方がより多くのスピリットを破壊できるからだ。
だが、Dr.Aはそれを行わず、アタック中のハクビシンドローンを破壊した。
何故か?……その理由は次のターンで明かされることになるだろう。ただし、そんな事、今の晴太には知るよしもなく………
「ヌフフフ!!さぁどうします?…もう1体でアタックしても良いのですよ?」
「っ!!……するわけないだろ……エンドだ……!!」
【コレオン】LV1(1)BP1000(疲労)
【ビーバン】LV1(1s)BP2000(疲労)
【ハクビシンドローン】LV1(1)BP2000(回復)
【十二神皇の社】LV1
バースト【有】
今アタックをすれば、本当にスピリットを無駄死にさせるようなものだ。当然行うわけがなく、結果としてハクビシンドローンがブロッカーに残ったまま、このターンを晴太は終えた。
次はとうとうデッキの力を使い始めてきたDr.A。だが、この程度、まだまだ序の口に過ぎない。それが今から証明される。
[ターン04]Dr.A
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
《ドローステップ》手札4⇨5
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨6
トラッシュ5⇨0
「メインステップッ!!ゴジラとケルビモンをそれぞれLV2へアップ!!」
リザーブ6⇨0
【ゴジラ(2004)】(1⇨5)LV1⇨2
【ケルビモン(悪)】(1⇨3)LV1⇨2
コアの追加により、LVが上がるゴジラとケルビモン。それを主張するかのように大きな咆哮を張り上げ、共鳴させた。
「アタックステップッ!!ゴジラでアタック……!!」
Dr.Aはメインステップをそれだけで終わらせ、すぐさまアタックステップへと移行し、ゴジラにアタックの指示を送った。
鳴動するゴジラ。狙うは当然………
「ハクビシンドローン!!」
「……!?」
「このゴジラはいくつもアタック時効果を有している!!相手スピリット1体を指定アタックする事で、コアを増やし、回復する!!」
【ゴジラ(2004)】(5⇨6)LV2⇨3(疲労⇨回復)
「なにっ!?」
ゴジラが狙ったのは晴太のライフではなく、場にいるハクビシンドローン。しかもその際コアがボイドから追加で置かれ、さらにはおまけのように回復状態にまでなる。
まさに破壊の化身。これでは晴太の場は全てゴジラに破壊し尽くされる事だろう。
一方で盤面内でのバトルでは、ゴジラが宙に存在するハクビシンドローンを地面に向かって勢いよく叩きつける。あっという間に撃墜されたハクビシンドローンは呆気なく爆発を起こした。
そして次にゴジラが目をつけたのは………
「ヌフフフ、続いてビーバンに指定アタック……コアを置き、回復!!」
【ゴジラ(2004)】(6⇨7)(疲労⇨回復)
「……くっ!!」
ゴジラは次に目に入ったビーバンをあっさりと踏み潰した。ビーバンがその重量に耐えられるわけがなく、ハクビシンドローンと同様破壊された。
「そしてコレオン……コアを置き、回復」
【ゴジラ(2004)】(7⇨8)(疲労⇨回復)
ゴジラは最後に目の前で困ったようにあたふたしているコレオンを薙ぎ払った。これにより、晴太の場のスピリットは壊滅。残るはネクサスとバーストのみ。
これでも十分に強力過ぎるゴジラの効果。だが、まだある。これだけでは終わらない。
「ゴジラのもう1つの効果!!相手のスピリットが場から離れるたび、赤のシンボルを1つ追加する!!」
「…!!……なんだと!?」
「ヌフフフ、このターン、ゴジラはスピリット3体破壊した!!よってシンボルは3つ追加され……合計シンボル数4!!……さぁ、行きなさい!!」
ゴジラの青白い尾びれが真っ赤に染まっていく。それは原始の力が最大限に溜まった状態。そこから放たれるゴジラの高威力の熱線は全てを焼き尽くす。
「……赤色熱線!!」
口内から莫大な核エネルギーを一直線に晴太のライフへと放つゴジラ。もはや守る術のない晴太はそれを受けることしかできず………
「ぐ、ぐぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
ライフ5⇨1
もろに受けてしまう。そのライフが一瞬にして風前の灯となってしまった。それ相応に比例し、莫大なバトルダメージが晴太を襲い、彼に膝を突かせた。
「ヌフフフ、ちょっとしくじりましたね〜〜…思った以上に強力でした、ケルビモンは逆に召喚しない方が良かったかな?」
そう余裕のある表情を浮かべるDr.A。確かに前のターンでケルビモンを召喚せず、晴太のもう一体のハクビシンドローンを場に残していれば、さらにゴジラのシンボルが増え、一撃で終わっていたかもしれないが………
これは彼も新しいカードに僅かながらにも翻弄されている証拠だが、それも余りに強力過ぎるが故の事、嬉しい誤算であると言えて…………
「ハァッハァッ………ら、ライフ減少のバースト……絶甲氷盾!!」
「……!!」
「ライフを1つ回復し、コストを払い、アタックステップを終了させる!!」
ライフ1⇨2
リザーブ8⇨4
トラッシュ1⇨5
条件を満たした晴太のバーストが勢い良く反転し、そのライフが1つ元に戻る。そしてDr.Aの場に猛吹雪が吹き荒れ、場のスピリット達の視界を掻き消した。
「ヌフフフ、流石に粘りますね〜〜それでこそ私の最大の壁!!……いいでしょう!!ターンエンドです!!」
【ゴジラ(2004)】LV3(8)BP22000(疲労)
【ケルビモン(悪)】LV2(3)BP15000(回復)
バースト【無】
そのターンを終えるDr.A。その宣言と共に猛吹雪が止み、場が再び公開される。
次はなんとか凌ぎきるも、すでに満身創痍となった晴太のターン。しかし、その目は未だに諦めてはいない。大き過ぎる力の差を思い知った今でも大逆転を目指し、着いた膝を伸ばし、そのターンを進める。
[ターン05]晴太
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ4⇨5
《ドローステップ》手札4⇨5
《リフレッシュステップ》
リザーブ5⇨10
トラッシュ5⇨0
「……ハァッハァッ……メインステップ!!俺はコレオンを2体召喚!!」
手札5⇨3
リザーブ10⇨8
【コレオン】LV1(1)BP1000
【コレオン】LV1(1)BP1000
晴太は手札に溜め込んでいた2、3体目のコレオンを続けて召喚。1体1体では力が弱く頼りないかもしれないコレオン。だが、複数集まれば強力なスピリットを呼び出すのに一役買う程度の力を発揮する。
「コレオンの効果!!神皇スピリットを召喚する時、そのコストを1減らす!!それが2体分!!さらに十二神皇の社の効果!!元々のコストが8以上のスピリットを召喚する時、そのコストを1減らす!!」
「ヌフフフ、成る程、これで合計3つ減ったか……!!」
Dr.Aは直感的に理解した。これから晴太が召喚するスピリットを……それは彼が持つ中でも最強のスピリット。
「いくぞDr.A!!…龍の力宿る時、全てを超越する神と化す!!…龍神皇ジーク・エグゼシード!!…LV3で召喚!!」
手札3⇨2
リザーブ8⇨0
トラッシュ0⇨3s
【龍神皇ジーク・エグゼシード】LV3(5)BP26000
晴太の場に立ち昇る巨大な火柱。その中で佇むのは最強の午。最強の龍皇。炎の鬣を靡かせ、赤々と燃え滾る翼を広げ、火柱を吹き飛ばし、姿を現わす。
それは龍神皇ジーク・エグゼシード。晴太の持つエグゼシードの中で最も強力な効果を持つ事実上のエーススピリットだ。
「……俺はこのスピリットでお前を打ち倒す!!…アタックステップ!!ジークでアタックッ!!」
ジークを呼び出した直後、早々に攻撃を仕掛ける晴太。ジーク・エグゼシードには召喚したターンで一気に勝負を決めることができるほどの強力なアタック時効果を内包している。
今回もそれを発揮し、目の前の敵を完膚なきまでに敵を倒す………………はずだった。
「アタック時効果!!トラッシュにあるソウルコアをジークに置き、スピリットに指定アタック!!…………!?」
ジークの最初のアタック時効果。トラッシュにあるソウルコアをジーク自身に置き、スピリットを指定してアタックできる。
強力な効果であるが、今回、何故かそれが発揮できなかった。召喚する時にはしっかりとソウルコアを払い、準備は万端だったと言うのに…………
「どう言う事だ!?…なんでトラッシュからソウルコアが移動できない!?」
驚きを隠せない晴太に、Dr.Aは口角を上げ、今、いったい何が起こっているのかを口頭で説明する。
「ケルビモン、LV2、3の効果!!…相手のアタック時効果は発揮できない!!」
「っ!?」
そう言われ、晴太はケルビモンの周りを見渡してみる。ケルビモンの周りから黒いエネルギーが絶えず漏れ出しており、それが宙へと広がり、黒い霧のように全域を薄く覆っていた。
この黒い霧の中では晴太のスピリットが如何に強力であっても、そのアタック時効果を発揮することはできない。それは当然、この後に発揮されるはずだったジークのライフを奪う効果でもだ……
「終わりだ空野君!!…君は私に敗北し、私はこの衰退した世界を進化させ、新たな神となる!!」
「うっせぇ!!……まだバトルは終わってない!!」
だが、絶望的な状況であるにもかかわらず、晴太のその表情は未だに勝ちを諦めてはおらず、それでいて尚且つ冷静であった。
これも乗り越えた修羅場の数の影響なのか………晴太はこの状況を打開すべく、残り少ない手札を1枚切り、その効果を発揮させる。
「フラッシュマジック!!エグゼフレイム!!…不足コストはジークのLVを2に下げて確保!!」
手札2⇨1
【龍神皇ジーク・エグゼシード】(5⇨3)LV3⇨2
「っ!!」
このバトルが始まって以降、ようやくDr.Aの表情が一瞬険悪になった。それもそのはず、今から晴太が使うカードはエグゼシード専用の強力な効果を持つマジック。
「この効果により、BP15000以下まで相手スピリットを好きなだけ破壊!!……当然!!ケルビモンを破壊する!!……ジークッ!!」
マジックの影響により、蒼炎をその身に纏い、ケルビモンへと突進するジーク。ケルビモンは雷でできた槍をいくつも連射し、それを返り討ちにしようとするが、全く通じず、全てを焼き尽くされ、とうとうそれと衝突。大爆発を起こした。
ジークはその中でも前脚を上げ、気高く吠えていた。
「これで、アタック時効果の制限は消えた!!俺はさらにジークのアタック時効果を発揮!!フラッシュで手札にある十冠スピリット1枚をジークの煌臨元に追加する事で、相手ライフを2つ破壊し、ジークを回復させる!!」
「……っ!!」
「俺は手札のビレフトをジークの煌臨元に追加し、効果発揮!!……ぶちかませ!!龍神炎砲!!」
手札1⇨0
煌臨元追加カード↓
【エグゼシード・ビレフト】
【龍神皇ジーク・エグゼシード】(疲労⇨回復)
「ぐ、ぐぉぉぉぉぉ!!!!!!」
ライフ3⇨1
ジークの口内から放たれる莫大な大きさを誇る火炎放射。それがゴジラさえをも退き、Dr.Aのライフに直撃、一瞬にして2つが破壊される。これにより、Dr.Aのライフはレッドゾーンの1。
しかもジークは回復。追撃が可能。2体のコレオンも存在することから、ほぼ晴太の勝利は濃厚な状況だ。
「俺の…………勝ちだ!!ジークのアタックは継続中……いけぇ!」
晴太の場に帰ってきたかと思ったジーク。そして今一度Dr.Aのライフめがけて走り出す。肝心のスピリットであるゴジラは疲労状態。晴太の勝ちだ。
しかし………
……まだ終わりではなかった………
「ヌフフフフフフフ………ギ、ギッヒヒヒヒヒヒ!!」
「っ!?」
突然滑稽に笑い出したDr.A。負けそうになって気でも狂ったのか………晴太はそう思ったが、直感的にすぐわかった。これはそう言うわけではない。まだ何か奥の手があるのだと………
だがそれはいったいなんだ?……
「流石は空野晴太!!この進化した私をここまで追い詰めるとは………見事!!見事です!!」
「………」
「御礼と言ってはなんですが……お見せしましょう………私のデッキのエーススピリットを!!」
突然晴太を褒め称え始めるDr.A。
彼はDr.Aは心の中ではこう思っていた。やはり8年前、自分の力を覚醒させるためのバトルはこの晴太で良かったと………心の底から思っていた。
お陰で追い詰められ、この手札にある自分の最強のエーススピリットを召喚できるのだから………ゴジラやケルビモンなど、所詮は伏兵に過ぎない。Dr.Aの真なるエーススピリットが今、この場に堂々君臨する。
「このスピリットの効果で相手の場のコスト8以下のスピリット1体を手札に戻す!!コレオン…君だ」
「っ!?」
手札0⇨1
ブラックホールのようなものが2体のコレオンの前に現れ、その内の1体を脅威の吸引力で呑み込んだ。
これがこのスピリットを召喚するための条件。次は召喚だ。
「進化の頂点に立つ者よ!!愚かなる世界に変革をもたらすがよいィィィイ!!…仮面ライダーエボル ブラックホールフォーム!!LV3で召喚ッ!!」
手札5⇨4
リザーブ5⇨0
【ゴジラ(2004)】(8⇨5)LV3⇨2
トラッシュ0⇨2
【仮面ライダーエボル ブラックホールフォーム】LV3(6)BP13000
邪悪な黒い靄が現れたかと思うと、ゆっくりとそこから場へと足を踏み入れたのは、白いボディとこれでもかと多いディテール。仮面スピリットを名乗るにしては余りにも禍々しいスピリット………その名をエボル。仮面ライダーエボル。
Dr.Aの持つ、最強にして最凶のエーススピリットだ。
単にエーススピリットというのも彼の直感であった。これこそが切り札。最強のエースだと、不思議となぜかそのスピリットとは通ずる何かがあったのだろうか。
「……ここに来て仮面スピリットだと……っ!!」
そう驚いた言葉を漏らす晴太。無理もない。Dr.Aはこれまでゴジラやデジタルスピリット、そしてこの仮面スピリットと言う強力極まりないスピリット達を召喚し続けてきたのだから………
進化を続けるとは言っていたものの、こればかりは晴太の想像を遥かに超えていたと言える。
「くっ……だが、今更ブロッカーが1体増えたところで…………」
まだいける。晴太はそう思っていた。
が、Dr.Aの作り上げた進化を続けるデッキはこの程度でくたばるわけがなく…………
「エボルスピリットを召喚した時!!私はトラッシュにある仮面ライダーマッドローグの効果を発揮!!コストを払わずに召喚!!」
【ゴジラ(2004)】(5⇨4)
【仮面ライダーマッドローグ】LV1(1)BP5000
「っ!?」
エボルを守護するかのように前方に出現した黒い靄の中から現れたのは彼の尖兵、マッドローグ。紫のボディが特徴的だ。手札、又はトラッシュにある時、エボルが場に出たらコストを払わずに召喚できる効果を持つ。
「召喚時、2枚ドロー……そして守りなさい」
手札4⇨6
登場したばかりのマッドローグを、まるで囮のような扱い方でジーク・エグゼシードのアタックをブロックさせるDr.A。
マッドローグはジークに飛びかかるも、ジークはその大きな首を横に振り、それをあっさりと薙ぎ払う。
これもDr.Aの作戦だ。エースであるエボルを破壊されないための、そして尚且つドローするための………
「さらにフラッシュマジック!!絶甲氷盾!!不足コストはゴジラとマッドローグから使用!!よってマッドローグは消滅!!」
手札6⇨5
【ゴジラ(2004)】(4⇨1)
【マッドローグ】(1⇨0)消滅
トラッシュ2⇨6
「っ!?!」
ジークに叩きつけられたマッドローグが消滅したかと思うと、晴太の場に猛吹雪が発生。その視界を遮った。
これではどう足掻こうとエンド宣言を行うしか残された手はなくて………
「……くっ……エンドだ……っ!!」
【コレオン】LV1(1)BP1000(回復)
【龍神皇ジーク・エグゼシード】LV2(3)BP16000(回復)
【十二神皇の社】LV1
バースト【無】
苦渋の念を噛み締めながら、晴太はこのターンをエンドとしてしまった。その瞬間、猛吹雪はおさまるが、次はDr.Aのターン。
今一度人智を超えたスピリット達が晴太を襲う。
[ターン06]Dr.A
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
「ヌフフフ、私はこのドローステップ時!!手札にある仮面ライダーウォズの効果!!手元に置くことでその枚数をプラス1枚にする!!……その後、手札が4枚以上の時、1枚破棄」
手札5⇨4⇨6⇨5
破棄カード↓
【ストロングドロー】
また見たこともないスピリットの効果を発揮する。カードを手元に置くことでドロー枚数を稼ぐ効果があるようだが、実際はこの効果がメインなわけではない。それは後にわかることであって………
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨7
トラッシュ6⇨0
【ゴジラ(2004)】(疲労⇨回復)
疲労により硬直していたゴジラが今一度活動期限に入り、咆哮を張り上げながら復活を果たした。
「メインステップ……ゴジラのLVを2に……!!」
リザーブ7⇨6
【ゴジラ(2004)】(1⇨2)LV1⇨2
LVアップを主張するかのようにまた大きな咆哮を張り上げるゴジラ。そしてメインステップは終幕し、次なるはアタックステップ。
この瞬間にようやく事前に発揮させていたあの仮面スピリットの効果が解明される。
「アタックステップ!!その開始時、仮面ライダーウォズの効果!!コスト6のスピリットが場にいる時、コストを払わずに手元から召喚できる!!」
「っ!?」
「来なさい!!未来の仮面スピリット、その名もウォズ!!LV3で召喚!!」
リザーブ6⇨0
【仮面ライダーウォズ】LV3(6)BP12000
緑色の光が滞りなく溢れ出てくる。やがてそれは弾け飛ぶと、場には緑色を基準にした仮面スピリット……ウォズが優雅な立ち振舞いで現れていた。その仕草や様はまるでエボルを王として崇めているかのよう………
「……まだこんなスピリットを……!!」
「さぁ……フィニッシュです!!アタックステップは継続!!…行け!!その進化の力を示すが良い!!エボル ブラックホールフォーム!!アタック!!」
エボルがついに場の前戦を駆ける。目指すは当然晴太のライフだが、ここでエボルのアタック時効果が発揮される。
「アタック時効果!!相手スピリットのコア2つをリザーブに置き、さらに消滅するならばそのスピリットカードを除外する!!……コレオンをゲームから除外!!」
「なにっ!?除外だと!?…くっ!!」
【コレオン】(1⇨0)消滅
エボルは掌からブラックホールを発生させ、それをコレオンへと投げつける。コレオンはその中に吸収されたまま二度と姿を見せることはなかった。
「ヌフフ、アタックは継続中ですよ〜!!」
「っ!!ジークッ!!」
咄嗟にジークでブロック宣言を行う晴太。ジークが赤い翼を広げ、今一度前戦へとおどり出る。
ジークはエボルに狙いを定め、上空から力一杯莫大な火炎放射を放つ。だが、エボルには通じないのか、左手を翳して正六角形のビームバリアを発生させ、それで難なくその火炎放射を凌ぐ。
炎は効かないと見たジークは近接戦に持ち込もうと、エボルめがけ急降下するが………
「……フラッシュ!!仮面ライダーウォズのLV2、3の効果!!」
「……!!」
「このスピリットを疲労させる事で、ウォズを含まないコスト6以上のスピリット1体をBPプラス10000し、相手ライフ1つを破壊するッ!!」
【仮面ライダーウォズ】(回復⇨疲労)
「なにっ!?」
「対象は当然、エボル!!」
【仮面ライダーエボル ブラックホールフォーム】BP13000⇨23000
「……ぐぉぉっ!!」
ライフ2⇨1
ウォズの体内から青色の光が溢れ出る。それはエボルの体内へと吸収され、彼に新たな力を宿す。そして、ウォズは薙刀のような武器から飛ぶ斬撃を放ち、晴太のライフを1つ一刀両断した。
これにより、ジーク・エグゼシードのBP21000。対するエボルのBPは23000………エボルが完全に超えた。
バトルでは飛び込んで来たジークを右手一本で押さえ込み、そのまま頭部を掴み上げ、体格差など意に介さず振り回し、地面に叩きつける。
さらにエボルはトドメと言わんばかりに倒れたジークへと力を溜め込んだ渾身の飛び蹴りを決める。ジークは流石に耐えることはできず、その場で爆発四散してしまった。
これで晴太の場にはもはやスピリット存在せず、残すは頼りにならないネクサスとライフが1つのみ………晴太の完全なる敗北だ。
「……ヌフフフ、君とのバトルはまぁ良い余興だったよ…………どうですか?絶望を味わっている気分は?」
「……へっ!!んな事、俺のライフをゼロにしてから言うんだな……!!」
晴太は敗北寸前だと言うのにもかかわらず、その顔つきは未だに希望を捨ててはいなかった。決して見栄を張っているわけではない。本気だ。本気で諦めていないのだ。
「フフ、流石は空野晴太だ……トドメだ、行きなさいゴジラ!!破壊の限りを尽くすのだ!!」
「……!!」
晴太がふと気づくと、目の前には黒い巨体を持つゴジラが存在していて………ゴジラはそのライフバリアに今にも噛み付こうとしている。
晴太はこの時、走馬灯と言うのか、不思議と昔の事を咄嗟に思い出した。あのエグゼシードを得てから見た夢の事を……あれは8年前の出来事の夢で、もう思い出すわけがないと思っていたのに………
……今思えば、やがて訪れる災害は今まさしくこれだ。自分が選ばれた………というのは、敗北寸前の今、本当かはわからない。しかし、晴太は直感的に、ある人物の顔が浮かんで来た………それは紛う事なき、芽座椎名だ。自分の大事な教え子の1人。
「……そうか、椎名………お前も………」
選ばれたのか……そう思った晴太。椎名も自分と同様、この前代未聞で空前絶後な災害を止めるために生まれたのだと………
晴太はそう思いながらも、その最後のライフを巨大な怪獣の大顎に噛み砕かれた。
「…………」
ライフ1⇨0
椎名………
………頑張れ……
……すまない。俺はこのざまだ。だけどお前なら………俺を超え、必ず奴に勝てる……自分を信じろ……そして不甲斐ないダメ教師の俺を………許してくれ………
晴太は最後にそう椎名に想いを託しながら、気を失い、身体がデジタルの粒子となって、飛び立ち、上空に広がる壁の一部になってしまった。
これにより、バトルはDr.Aの勝利。圧倒的なスピリット達のパワーで晴太を真正面から叩き潰してみせた。そのスピリット達は役目を終えたかのようにゆっくりとその場から姿を消していった。
「ヌフフフ、ありがとう空野君……君のお陰でとても良いデッキが完成したよ……!!」
Dr.Aがデ・リーパーが作った空の壁、晴太が消えた先に向かってそう言うと、彼の背後からまた別の人物の声がする………
……その人物は………
「おい、Dr.A………空野晴太は俺の獲物だったはずだ……」
「ん?…おやおやこれは申し訳ない事をした。そうだとも知らずに…………ねぇ、司君……!!」
Dr.Aのところにいた少年は、赤羽司。彼らに捕まって以降、行方が分からずじまいだったが、今はこうして彼らの元で動いていた…………椎名達の敵として……
………そこには彼なりの理由があるのだろうか?……それともただの恐怖による支配なのか?………その意見はこの時点では別れるに違いない…………
「いやはや、すまなかったよ………だったら、君には彼を倒してきて欲しいかな?」
「………っ!!」
Dr.Aが自分のBパッドで撮った写真を司に視認させる。そこに写っていたのは他でもない。司の長年の友であり、幼馴染、【長嶺雅治】だった………
司はほんのわずかな時間だけ苦い顔をする。
「……何か問題でも?」
「………………いや、別に…ただちょっと、あんたがこんな奴を消したいと思ってるのが意外だっただけだ」
「私に敵対する勢力は一刻も早く潰したくてね〜〜〜」
「…フンッ、お前にとって今を生きる人間どもは、顔にできたニキビと同然ってか?…まぁ俺は強くなるために俺の仕事をするまでだ………任せろ……これに成功したら俺にデ・リーパーの分身共のコントロールを半分もらえるんだろう?」
「あぁ、そうだとも……」
「フッ…………」
司はそう言って、新たに得たBパッドのワームホールの機能でそれを出現させ、その中へと姿を消し、Dr.Aのいるこの場から去っていった。
荒れに荒れ狂う、界放市。消えていった人々のデジタル粒子で形成されているデ・リーパーの壁が街を覆い尽くすのも時間の問題であった。
〈本日のハイライトカード!!〉
椎名「本日のハイライトカードは【仮面ライダーエボル ブラックホールフォーム】!!」
椎名「仮面ライダーエボルは最凶の仮面スピリット!!フラッシュタイミングで、コスト8以下のスピリットを手札に戻しつつ召喚が可能で、アタック、ブロックした時にコアシュートが行えるよ!!さらにこの効果で消滅したスピリットカードはゲームから除外されるんだ!!…………そしてその名の通り、何度も進化を繰り返せる!!………かも?」
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〈次回予告!!〉
長嶺雅治は晴太とはまた別の場所でデ・リーパーの分身体と戦っていた。デジタルスピリットへの特効効果を持つデ・リーパーデッキに対し、苦戦しながらもなんとか辛くも勝利を収め続けていた雅治。そんな彼の前に、囚われの身になっていたはずの赤羽司が現れ………次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ 「帰って来い」…今、バトスピが進化を超える!!
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※次回サブタイは毎度ながら変更の可能性があります。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!!
今回のサブタイトルはエボルトでしたが、これは後々登場するであろう進化系の名称も考慮してのことです。
因みに、Dr.Aのデッキは常に心象描写の通り、永遠に続くオーバーエヴォリューションの力により、常に禍々しい黒い光を放っています。故に、【毎ターンオーバーエヴォリューションを無言で繰り返しています】
ゴジラ(2004)は今年の9月下旬に発注されるプレバンの新規です。