続くデ・リーパーの分身体達による進軍。逃げ惑う街の人々は皆ほとんど姿をくらましていた。
この時点で、人々は合計3つに分断されていた。
1つは避難所に避難した者達、
1つは避難に遅れ、襲われ、又はバトルで敗北し、街を覆う不気味な障壁の一部と化してしまった者達。
最後は今もなお、デ・リーパー達とバトルしている者だ。今となってはデ・リーパーの分身達によって殲滅してしまったが、それでも長嶺雅治はたった1人、デ・リーパーの分身達と戦い、ダメージを追いながらも勝ち続けていた。
「いけっ!!シャッコウモン!!……アラミタマ!!」
土偶のような見た目に白い翼の生えた黄色の完全体スピリット、シャッコウモン。雅治の使役するスピリットの1体だ。
そのシャッコウモンがトドメと言わんばかりに両目から赤いレーザーをデ・リーパーの分身体に向けて照射。それを最後のライフごと焼き尽くした。それに伴ってか、デ・リーパーの分身体はデジタル粒子と化して頭からゆっくりと消滅していった。
「ハァッハァッ、……ぜ、全部倒せた……」
驚異のデジタルスピリットキラーの効果を持つデ・リーパーに息を切らしながらも、なんとか勝利を収める雅治。
頭の良い彼にはなんとなくわかっている事ではあったが、この者達には必ず本物がいて、そいつが一番強い。
だが、肝心のその本体らしき者がどこにもいないことに、雅治は不気味さを感じて取っており………
「………こんな時、司がいれば………」
一緒になんとかできていたはず………そう考えていた雅治。その司は今、おそらくこの事件の首謀者であるDr.Aに連れ去られていて行方不明。
心配な事は他にもある。緑坂さんや、夜宵ちゃん、そして他のみんなはしっかりと避難できたのだろうか?……椎名は島にいるのだろうか?………と、
不安な感情を押し殺しながらも息を回復させる雅治。
そんな時だ。彼の横から、聞き慣れた声が聞こえて来た。それは本当に昔も昔、幼少の頃よりずっと耳にしていた幼馴染の声。
「……よお、お疲れのようだな?………雅治」
「っ!!……つ、司!!」
その声主は他でもない、赤羽司だった。いつものようなぶっきらぼうな表情のまま話しかけて来た。
「ぶ、無事だったのか!!良かった!!」
「………」
「!?……ど、どうしたんだよ………なんでなにも言わないんだよ!?」
この時の雅治の安堵の気持ちは計り知れなかった事だろう。何せ、自分の人生の片割れとも呼べる存在が、こうして堂々と生きていてくれたのだから………
だが、そう思うのも束の間、雅治は自然と感じ取った。司が何か変だということを………決して久し振りに会ったからと言うわけではない。
もっとこう………
……何かに穢れを与えられたかのような………自分を見下しているような………そんな感じだ。
それを感じ取った雅治は途端に今一度司の目の前で表情を固めてしまう。そんな彼の様子を見て、司は不気味な角度で口角を上げ………
「単刀直入に言おう、雅治………もうすぐ世界はDr.Aのものになる……!!」
「な、なんだって!?」
司の言葉に、思わず驚いてしまう雅治。しかし、決して、Dr.Aが世界を手にする事に全て驚いているわけではない。ここで一番の問題なのは、司が現れ堂々とそんな事を言っている事だ。
この態度、立ち振舞い、言葉使い、雰囲気…………間違いない………司は………
赤羽司は………
「俺はあいつが創る、進化した新しい世界へと向かう……!!」
「っ!?」
寝返った。
しかもあんな最低最悪のマッドサイエンティストなんかに………雅治はこの事実が受け入れられず……
「どう言う事だ司!!あんな奴のとこにはいかないって散々言ってただろう!?」
「………気が変わった……俺はあいつから力を授かり、新しい世界で、めざし……いや、エニーズに勝つ!!」
「ば、馬鹿言うな!!…そんな力で椎名に勝ったって意味がないのを知らない君じゃないだろ!?」
スピリットアイランドではあれほどDr.Aからのスカウトを断り続けていたと言うのに………なんで今になってそんな事を言い出したのか………気が変わっただけという理由では到底理解はできない。
「あぁ、馬鹿言ってるさ……だからお前はさっさと尻尾を巻いて、恥を晒しながら逃げるんだなぁ!!」
「………司……!!」
本気だ。司は本気の目をしている。本気で何かをやり遂げようとしている目だ。こうなった司は誰にも止められない事を雅治は知っている。
だが、今ここで……誰かがDr.Aを……司を止めなければならないことは明白。雅治は少し前で決断していた。もう椎名には頼らず、自分の力だけでどうにかすると………
その決意が今、試される時だった…………
「……バトルだ司………僕とバトルしろ……その目を覚まさせてやる!!」
「ほお?…俺に喧嘩を売るか雅治…お前が俺に勝てた試しはないはずだぜ?」
「今は違う!!…昔のままの僕だと思うなよ!!」
「フッ……やる気はあるようだが、デ・リーパーの分身体……あの顔の無い化け物共がうろついている間、この街はバトルで負けた者をデータ化し、あの壁に吸収させる……それでもお前は………」
「やる!!」
朱雀である赤羽司にバトルを申し込む雅治。彼とバトルするのは何年振りになるだろうか………
今、この街はデ・リーパーによって汚染され、バトルで負けた者は皆あの青い壁に吸収される。この壁が完全に街を覆う時、この街はDr.Aの新たな拠点となり、彼は界放市以外の街、国を順に滅ぼして行くつもりなのだ。
だから先ずは界放市の人間達を順に消して行く計画なのだ。
「あいつら、デ・リーパーって言うのか……僕も今日、散々あいつらに負けて壁に吸収される瞬間を見てきたけど、分身体って事は本体がある………つまり、その本体を倒せば吸収されたみんなは元に戻るはずだ……!!」
「…………!!」
「図星………みたいだね?」
雅治のこの推理は当たっていた。確かにデ・リーパーの顔のある本体をバトルで倒して仕舞えばこの街は元に戻り、吸収された者達は皆解放される。司はDr.Aのところにいたことから、この事は認知しており………
相変わらず頭だけは良い奴………大人しく逃げていれば良いものを…………
司は雅治に対してそう思い、不機嫌な表情になりながらも、バトルに対するやる気を見せるかのようにBパッドを懐から静かに取り出した。
「……ようやくやる気になったみたいだね……今日こそは君を倒す、そして帰って来い……司ぁ!!」
「吠えるな、うるせぇ………どうしても逃げないって言うなら……今ここで俺がお前に引導を渡してやる……!!」
2人はそう言い合いながらもBパッドを勢いよく展開し、バトルの準備を行う………
……そして2人の不毛な戦いが幕を開ける。
「「ゲートオープン、界放!!」」
コールと共にバトルが開始される。
……先行は司だ。
[ターン01]司
《スタートステップ》
《ドローステップ》手札4⇨5
「メインステップ……俺はホークモンを召喚!!…効果によりカードを3枚オープン」
手札5⇨4
リザーブ4⇨0
トラッシュ0⇨3
オープンカード↓
【シンフォニックバースト】×
【絶甲氷盾】×
【アンティラモン(デーヴァ)】×
司が颯爽と呼び出したのは、小さな赤い鳥型の成長期スピリット、ホークモン。
だが、その効果は失敗に終わる。オープンされた3枚のカードは皆トラッシュへと破棄される。
「……ターンエンドだ」
【ホークモン】LV1(1)BP3000(回復)
バースト【無】
できることを全て終え、そのターンをエンドとする司。次は雅治のターンだ。司を知り尽くしている彼はどう動くのか………
[ターン02]雅治
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ4⇨5
《ドローステップ》手札4⇨5
「メインステップッ!!……僕はパタモンを召喚、効果によりカードを2枚オープン!!」
手札5⇨4
リザーブ5⇨1
トラッシュ0⇨3
【パタモン】LV1(1)BP1000
オープンカード↓
【イエローリカバー】×
【エンジェモン】◯
雅治が呼び出したのは小さな黄色の成長期スピリット、パタモン。そしてその召喚時効果も成功、雅治は新たに成熟期スピリットのエンジェモンのカードを加えた。
「……お前にしては運が良いじゃねぇか……」
「前の僕とは違うと言っただろう!!…僕はさらにペガスモンの【アーマー進化】を発揮!!対象はパタモン!!」
手札4⇨5
「……!!」
手札に加えた直後、雅治は別のカードに手を伸ばし、それを使用する。
「1コストを支払い、天翔る希望…ペガスモンをLV1で召喚!!」
リザーブ1⇨0
トラッシュ3⇨4
【ペガスモン】LV1(1)BP5000
パタモンの頭上からデジメンタルと呼ばれるアーマー体の元のようなものが投下される。パタモンはそれと衝突し、混ざり合い、進化を遂げる。新たに現れたのはペガサス型のアーマー体スピリット、ペガスモン。
「ペガスモンの召喚時及びアタック時効果!!…相手スピリット1体をBPマイナス3000!!……0になったら破壊する!!…対象はホークモンッ!!」
「…!!」
「…シルバーブレイズ!!」
「……ちぃっ!!」
【ホークモン】BP3000⇨0(破壊)
ペガスモンは登場するなり、額から銀色の光線をホークモンに向けて放ち、貫く。ホークモンはそれに耐えられず、倒れ、爆発を起こした。
「アタックステップッ!!ペガスモンッ!!」
「くっ、ライフだ………ッ」
ライフ5⇨4
ホークモンが消えたところでアタックステップへと移行する雅治。ペガスモンはその翼で飛翔し、強烈な前脚の一撃を司のライフへと叩きつけ、それを1つ砕いた。
「……ターンエンド……」
【ペガスモン】LV1(1)BP5000(疲労)
バースト【無】
司のデッキの中心となるであろう成長期スピリットであるホークモンを倒しつつ、ライフを削り、なかなか上々なターンを行った雅治。
司は出鼻を挫かれたここからどう動くか………
[ターン03]司
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ2⇨3
《ドローステップ》手札4⇨5
《リフレッシュステップ》
リザーブ3⇨6
トラッシュ3⇨0
「メインステップ……俺はネクサス、朱に染まる薔薇園をLV2で配置!!…さらにバーストを伏せ、エンド」
手札5⇨3
リザーブ6⇨0
トラッシュ0⇨5
【朱に染まる薔薇園】LV2(1)
バースト【有】
ようやく司のデッキも回り始めて来たか、いつも通りのネクサスカード、朱に染まる薔薇園を配置する。彼の背後に朱い薔薇がこれでもかと咲き誇った。
コストの大きいこのネクサスカード、配置するターンはどうしても隙が生まれる。司はそれをカバーするためか、共にバーストも伏せた。
次は再び雅治のターンだ。
[ターン04]雅治
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
《ドローステップ》手札5⇨6
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨5
トラッシュ4⇨0
【ペガスモン】(疲労⇨回復)
「メインステップッ!!僕はパタモンをLV2で再召喚し、効果を発揮!!」
手札6⇨5
リザーブ5⇨0
トラッシュ0⇨2
【パタモン】(3)BP2000
オープンカード↓
【サンクチュアリバインド】×
【アルマジモン】×
今一度召喚されるパタモン。しかし、2回目となるその効果は失敗に終わる。だが、それでも構わない。雅治はそう言わんばかりに司のライフを攻め立てて行く。
「バーストを伏せ、アタックステップッ!!その開始時にパタモンの【進化:黄】を発揮!!手札に戻し、成熟期スピリット、エンジェモンをLV2で召喚!!」
【エンジェモン】LV2(3)BP7000
パタモンがデジタルコードに巻き付けられ、その中で姿形を大きく変化させる。やがてそのコードは弾け飛び、新たに現れたのは、天使型の成熟期スピリット、エンジェモン。
「アタックステップは続行!!…いけぇ!エンジェモン!」
「……ライフだ……ッ」
ライフ4⇨3
白い翼で飛翔するエンジェモン。司は守るものがないため、そのアタックを受け入れる。飛翔するエンジェモンの光を纏わせた拳の一撃が、また彼のライフを1つ砕いた。
だが、司は防戦一方のこの状況を打破すべく、事前に伏せていたバーストを発動させる。
「ライフ減少により、バースト発動!!…イビルフレイム!!」
「!!」
「効果により、シンボル1つのスピリット2体を破壊!!…エンジェモン、ペガスモンを破壊する!!」
雅治の場に突如現れる邪悪な炎。それがエンジェモンとペガスモンにまとわりつき、やがて焼き尽くした。
「……だから言ったろ?……お前じゃ俺には勝てねぇ、何度も言わせんな……!!」
子供の時からそうだった。
いつもバトルの腕を比べ、いつも勝敗を競い合っても結局最後に勝つのはいつも司………
……だけど……
「君も何度も言わせるな…今日の僕は違う!!……破壊後のバースト!!」
「!」
今回は違う。絶対に負けない。いくら司に敗者のレッテルを貼られようとも、いくらスピリットを破壊されようとも、最後には絶対に勝ってみせる。
雅治はその意思を右手に込め、バーストを勢いよく反転させる。そのバーストカードは司を驚愕させるほどの強烈な一手。
「姫銃−雅−!!」
「!」
「この効果により、破壊されたコスト5以下のスピリット、エンジェモンを再召喚し、このカードを直接合体!!」
リザーブ4⇨0
【エンジェモン+姫銃−雅−】LV3(4)BP13000
「なにっ!?」
雅治の場に現れる光の球体、その中から銃身が蝶のような形が象られている銃、姫銃−雅−を手に、イビルフレイムの効果で破壊されたエンジェモンが飛び出し、復活を果たした。
「エンジェモンで……再度アタック!!…雅との合体により、そのシンボルは2つ!!」
エンジェモンが雅を構え、そこに自身の光の力を込め、強烈な弾丸を司に向け、放つ。
それは真っ直ぐに、最短ルートを突っ切って………
「ぐ、ぐぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
ライフ3⇨1
司のライフを2つ撃ち抜いた。彼のライフは一気に風前の灯とも呼べる状態に陥ってしまう。司は多大なバトルダメージにより、思わず膝をついてしまう。
「…どうだ……どうだ司ぁぁぁぁあ!!!」
【エンジェモン+姫銃−雅−】LV3(4)BP13000(疲労)
バースト【無】
このターンに自分は強くなったと、確かな手応えを感じつつ、雅治はこのターンをエンドとした。
司のカウンターをよみ、さらにそのカウンターを利用して追撃を仕掛け、司のライフを一気に残り1までに追い込んだ。
「……この……雅治……テメェッ!!」
「フッ、そうやって直ぐに頭に血が昇るは君の悪い癖だよ、司」
司は雅治に怒りを剥き出しにしながらも、そのついた膝を上げる。
「いいぜ、ここからは完膚なきまでにテメェを叩きのめす!!」
「やれるものならやってみろ!!」
完全に本気モードになった司のターンが幕を開ける。
[ターン05]司
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ3⇨4
《ドローステップ》手札3⇨4
《リフレッシュステップ》
リザーブ4⇨9
トラッシュ5⇨0
「メインステップッ!!…俺はイーズナ、そしてハーピーガールを3体連続召喚する!!」
手札4⇨0
リザーブ9⇨0
【イーズナ】LV1(1)BP1000
【ハーピーガール】LV1(1)BP3000
【ハーピーガール】LV2(2)BP4000
【ハーピーガール】LV2(2)BP4000
「なにっ!?3体だって!?」
司は溜まっていた全ての手札のカードを投げ、合計4体のスピリットを召喚する。イタチのような見た目のイーズナ、体が所謂鳥人間となっている少女のスピリット、ハーピーガールだ。
司とのバトルで、今まで何度も見てきたスピリットたちだが、このハーピーガールが3体並ぶ事はそうそうなく……
……この多量展開は司の逆襲を表すには十分過ぎる行動であって………
「アタックステップッ!!…4体のスピリットでアタックッ!!……消え去れぇぇえ!!」
4体の獣のスピリットたちが宙を飛び、地を駆ける。前のターンで限界までアタックした雅治はそのアタックをライフで受けるしかなく………
「ら、ライフだ!!……ッ、ぐっぅぅう!!」
ライフ5⇨4⇨3⇨2⇨1
ハーピーガール3体とイーズナが鋭い爪で、雅治のライフにこれでもかと傷跡を残す。そのライフは一気に割れていき、司同様、ギリギリの1となってしまう。
しかも、しかもだ。司は何も考えなしにアタックしていたわけではない。これについてはもはや説明するまでもないだろう。
「ハーピーガールの【聖命】!!ライフを1つ回復!…さらに朱に染まる薔薇園LV1効果で1枚ドロー……それを三度行う……!!」
ライフ1⇨2⇨3⇨4
手札0⇨1⇨2⇨3
「くっ……!!」
あれだけ苦労して砕いたライフが一気に全快近くまで回復していく、しかも無くなった手札さえ補っていく。これが朱雀、赤羽司。
圧倒的なプレイング、引きの強さを駆使し、勝利を華麗に奪い取る。
「……ターンエンド」
【イーズナ】LV1(1)BP1000(疲労)
【ハーピーガール】LV1(1)BP3000(疲労)
【ハーピーガール】LV2(2)BP4000(疲労)
【ハーピーガール】LV2(2)BP4000(疲労)
【朱に染まる薔薇園】LV2(1)
バースト【無】
司は圧倒的なライフ差を逆に広げてそのターンを終える。次はライフ1まで追い込まれた雅治のターン。
逆転されてもなお、彼は勝つ可能性を捨てずにバトルへと臨む。
[ターン06]
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ4⇨5
《ドローステップ》手札4⇨5
《リフレッシュステップ》
リザーブ5⇨7
トラッシュ2⇨0
【エンジェモン+姫銃−雅−】(疲労⇨回復)
「メインステップッ!!僕はもう一度パタモンを召喚!!効果発揮!!」
手札5⇨4
リザーブ7⇨3
トラッシュ0⇨1
【パタモン】LV2(3)BP2000
オープンカード↓
【アルマジモン】×
【パタモン】×
本日三度目のパタモン。しかし、その効果はまたもや失敗に終わる。だが雅治の手札には既にきて欲しいカードは出揃っている。
これさえあればこのバトル、必ず朱雀、赤羽司を倒せると確信を持っていた。
「アタックステップッ!!僕はエンジェモンでアタック!!アタック時効果で相手スピリット1体をBPマイナス7000し、0になったら破壊!!ハーピーガールを破壊する!!……ヘブンズナックル!!」
「ちぃ……!」
【ハーピーガール】BP4000⇨0(破壊)
このターンのアタックステップ早々、エンジェモンの拳から光の鉄拳が放たれる。それは司の場にいるハーピーガール3体のうち1体に命中。ハーピーガールは吹き飛ばされ、爆発した。
さらにこれだけではない。雅治はその手を緩めることなく司をとことん追い詰めていく。
「そしてその効果、【超進化:黄】を発揮!!…エンジェモンを手札に戻し、完全体を召喚する!!…この時、合体している雅も一緒に手札へと戻す!!」
手札4⇨5
「っ!!」
エンジェモンにデジタルコードが巻きつけられる。その中でエンジェモンは姿を変えていく。それはより大きな大天使へと成長する。
「…来い!!……ホーリーエンジェモンッ!!」
【ホーリーエンジェモン】LV3(4)BP14000
デジタルコードを解き放ち、新たに現れたのはエンジェモンをさらにグレードアップさせたかのような大天使型の完全体スピリット、ホーリーエンジェモン。
これは司と知らない雅治のスピリットだ。そのことから最近得たことが理解できる。
「……そいつは……」
「僕の新しいスピリットだ!!……アタックステップ継続!!ホーリーエンジェモンでアタック!!その効果で僕のライフ1つを回復し、スピリット1体をBPマイナス12000!!…0になったら破壊!!…2体目のハーピーガール!!」
ライフ1⇨2
「……っ!!ライフを回復だと…!?」
【ハーピーガール】BP4000⇨0(破壊)
ホーリーエンジェモンの右手に装着されている剣。ホーリーエンジェモンはそれを横一閃に振り、光の斬撃を飛ばす。それは司のハーピーガール1体に届き、それをいとも容易く切り裂いた。
そして二の次と言わんばかりに、雅治のライフが閃光を浴びて回復を果たす。
「アタックは継続中っ!!」
「……ライフだ……ッ」
ライフ4⇨3
ホーリーエンジェモンは聖なる翼で司のライフめがけ飛翔し、それもまたその剣で縦一線に切り裂いた。
「パタモンでもアタック!!」
「そいつもだ……ッ」
ライフ3⇨2
パタモンの体当たりもまた司のライフに炸裂。そのライフを1つ破壊した。これにより3つの差があったライフも、お互い2のいいぶんとなる。
「……ターンエンドだ」
【ホーリーエンジェモン】LV3(4)BP14000(疲労)
【パタモン】LV2(3)BP2000(疲労)
バースト【無】
できることを全て終え、そのターンをエンドとする雅治。次は司のターン。残り2つの彼のライフを打つべくターンを進行する。
[ターン07]司
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ6⇨7
《ドローステップ》手札3⇨4
《リフレッシュステップ》
リザーブ7⇨10
トラッシュ3⇨0
【イーズナ】(疲労⇨回復)
【ハーピーガール】(疲労⇨回復)
「メインステップ……スピリットのLVを上げ、バーストをセット……」
手札4⇨3
リザーブ10⇨6
【イーズナ】(1⇨3)LV1⇨3
【ハーピーガール】(1⇨3)LV1⇨3
スピリットのLVを上げ、パワーアップさせると同時に、また新たなバーストをセットする司。不思議とそのカードはこれまでにないくらいに不気味であり………
「アタックステップッ!!……いくら強力なスピリットを召喚しようが、疲労してたら使いもんにならねぇよな!!……ハーピーガールでアタック!!アタック時の【連鎖:赤】の効果により、BP3000以下のスピリット、パタモンを破壊する!!」
「っ!!」
羽を広げ、飛翔するハーピーガール。そしてその口内から渦巻く炎を放ち、雅治の場にいるパタモンを焼き尽くした。この時、LV2、3のスピリットでブロックされない効果も発揮されているが、回復状態のスピリットがいない雅治の場にとって、そんな効果は大して関係なく………
「こいつとイーズナのアタックで終わりだ……!!」
雅治の残りライフは2。計算的には確かにフルアタックでゲームエンドとなる。だが、こうなることなど予想済み。
雅治はさらなる奥の手をその手札から引き抜く。
……それは新たなる自分のエーススピリット。
「そう来るのは読んでいた!!…フラッシュ、【煌臨】を発揮!!対象はホーリーエンジェモン!!」
リザーブ6s⇨5
トラッシュ1⇨2s
「っ!!……お前が煌臨だと!?」
司の記憶の中では、雅治のデッキに今まで煌臨を持つカードはなかった。何が出てくるのかも未知数だ。
ホーリーエンジェモンが高度かつ上質な光の中に包まれていき、その中で姿をより高貴な存在へと大きく進化させていく。
「暗黒さえをも光に変える最高峰の熾天使!!……究極進化ぁぁあ!!」
手札5⇨4
やがて、その光の中のスピリットはそれを弾け飛ばし、場へと君臨する。その存在はまさしく最高峰の熾天使。
……その名は………
「セラフィモンッ!!」
【セラフィモン】LV3(4)BP14000
青き聖鎧を纏い、光の翼を広げ、雅治の場に現れたのは、黄色の究極体スピリット、セラフィモン。熾天使型のデジタルスピリットで、天使型では右に出るものはほとんどいないだろう。
これが雅治の新たなエーススピリット、Dr.Aとの戦いに備えて、ホーリーエンジェモンと共に揃えた強カードだ。
「……お前が究極体を………!!」
「まだまだ、驚くのはまだ早い!!……セラフィモンの煌臨時効果!!煌臨元にある黄色の完全体スピリットを手札に戻す事で、相手スピリット全てのBPをマイナス10000する!!」
「なにっ!?」
「僕はホーリーエンジェモンを手札に戻し、司、君の場のスピリットを一掃する……!!」
手札4⇨5
「……っ!?」
【イーズナ】BP3000⇨0(破壊)
【ハーピーガール】BP5000⇨0(破壊)
登場するなり、セラフィモンは高貴なる光をこの場に解き放つ。その中に取り込まれたハーピーガールとイーズナは塵一つ残らないくらいに分解される。
この効果により、司の場のスピリットは全て破壊され、全滅した。更地になった場が、寂しげな雰囲気に包まれる。
「……どうだ……司……!!」
「っ!!…………エンドだ」
【朱に染まる薔薇園】LV2(1)
バースト【有】
セラフィモンの強力な煌臨時効果によって、何もできなくなった司は堪らずこのターンをエンドとしてしまう。
そして、ターンは再び流れをつかんだ雅治へと渡り………
[ターン08]雅治
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ5⇨6
《ドローステップ》手札5⇨6
《リフレッシュステップ》
リザーブ6⇨8
トラッシュ2⇨0
【セラフィモン】(疲労⇨回復)
「メインステップ……なぁ司……」
このターン、息も尽くせぬ攻防を繰り返してきた2人のバトルもようやく終わりが見えたこのターン。
雅治はバトルの最中でゆっくりと自覚し、気づいたことを、この緊張感の中で司に投げかける。
「……君は……敵になったふりをしようとしている……!!」
「っ!?」
雅治の言葉に、驚くかのように目を丸くする司。
「図星か………相変わらず、君は意外とわかりやすいよね……」
「…………」
言葉を並べる雅治。司はこの点に関しては何もいいたくはないのか、口を噤む状態が続く。
「Dr.Aはあの時、君が椎名の鬼化を見たって言ってた、多分修学旅行、剣総って奴と戦った時だ……君はその時、剣総を倒した椎名を見て劣等感を覚えた………違うかい?」
「…………」
その通りだ。
あの日、あの時、あの瞬間、
めざしの強さに嫉妬した。進化を、オーバーエヴォリューションを繰り返す力が羨ましかった。
自分の方が上だと思っていたかった。界放リーグで奴に勝った時のように、まだ勝てると思っていた。
「そして、それを証明しようとしたスピリットアイランドのアイランドリーグの時に、Dr.Aが現れて、椎名の正体と素性を知った…………」
「…………何が言いたい?」
「つまり、君は先ず、Dr.Aを倒そうとしている!!一度彼らの味方について倒す機会を伺っている!!そしてその後で!!……君は椎名との決着を望んでいる………そうなんだろう?……それが今の君なんだろう!?」
「…………」
雅治のこの突飛な推理は……
果たして的中しているのかしていないのか、それは司がその口を閉じている限りは定かではない。
しかし、司の性格上……間違っていたら必ずと言っていい程に否定してくる。
それが無いと言うことは…………これもまた図星………なのかもしれない。
「………お前の馬鹿げた推理なんかどうでもいい……!!………さっさとターンを進めろ!!」
「…………わかったよ……」
長年、朱雀、赤羽司と行動を共にしてきた幼馴染の雅治は、この瞬間、
自分の考えを否定されたはずなのに、不思議と彼と心が通じ合えた気がした。
そんな気がした。それだけは確かなことだと胸に刻んで、自分のターンを改めて進める…………
「改めてメインステップ!!……僕は手札のブレイヴ、姫銃−雅−を召喚し、セラフィモンに合体!!」
手札6⇨5
リザーブ8⇨5
トラッシュ0⇨3
【セラフィモン+姫銃−雅−】LV3(4)BP17000
エンジェモンの【超進化】の効果でそれと共に手札へと戻っていたブレイヴカード、雅。今回はバーストとしては使わず、素で召喚し、合体させる。
セラフィモンは早くもその銃を手に持ち、重心を前かがみにおいて銃口を司のライフへと向ける。
「アタックステップッ!!セラフィモンでアタック!!……セラフィモンは雅との合体によりシンボルは2!!そして君のライフも2!!……僕の勝ちだ!!」
セラフィモンは雅に自身の光の力を注ぎ、弾丸として放とうとする。司がどんな強力なバーストをセットしていようと意味はない。この一撃で終わる。
このタイミングで意味があるのはおそらくライフ減少後のバーストではなく、アタック後のバーストカード。
司のデッキにはアタック後のバーストは無い。それを知っているからこその勝利への確信だった。
だが、
「フラッシュマジック!!……双光気弾!!……合体しているブレイヴ、雅を破壊する!!」
手札3⇨2
リザーブ12⇨10
トラッシュ0⇨2
「なにっ!!ここでブレイヴ破壊!?」
しかし、司は如何にも赤属性らしい効果でこのアタックを妨ぐ。司の背後から火の玉が2つ宙を舞うように翔け出したかと思うと、それはセラフィモンの手に持つ雅に直撃、火の玉はセラフィモンからそれを奪い取るように雅にまとわりつき、されを破壊した。
これにより、セラフィモンのシンボルは1。このアタックでは司のライフはゼロにはならない。
「………まだだ!!フラッシュマジック!!…イエローリカバー!!」
手札5⇨4
リザーブ5⇨3
トラッシュ3⇨5
「!!」
「この効果で黄色のスピリット、セラフィモンを回復!!」
【セラフィモン】(疲労⇨回復)
雅を失ったことにより、作戦を切り替えたかのように光の羽で飛翔するセラフィモン。そして、雅治の使用したマジックにより、黄色い光を一瞬纏い、疲労状態から回復状態となる。
「一撃じゃだめなら二撃で決めるだけだッ!!」
今度こそ終わり。
そう言わんばかりにセリフを吐く雅治。
しかし、あの雅を破壊した時点で………司は自分の勝利を確信していた。だが、その表情はどこか上っ面で、寂しそうで………
「………ライフで受ける」
ライフ2⇨1
セラフィモンの光を纏わせた拳の一撃が司のライフへと決まる。そのライフがまた1つ砕けて、ハーピーガールの効果で稼いでいた分がとうとう底を尽きた。
しかし、それこそが司の狙い………
………今こそ伏せていたバーストが反転し、驚愕のスピリットカードを召喚する………
「………ライフ減少により、バースト発動………」
「……!!」
雅治はこの時、ライフ減少のカードであるならば、イビルフレイムだと思った事だろう。この時点で発揮して意味があるのはそれくらいだからだ。
だが、そのカードは殆どの人物に認識されていないであろう………あのカードだ。
「…………ジョーカー……」
「っ!?」
「効果により、俺のライフが減った分、お前のスピリットのコアをボイドに置く……!!」
「っ!?」
【セラフィモン】(4 ⇨3)LV3⇨2
墨のように黒く、水々しい黒い球体が雅治のセラフィモンを襲う。それはその青い鎧を汚し、体内のコアを1つだけ抜き取り、ボイドに送る。
司のデッキでコアシュートが飛んでくることが意外だったか、突如飛んできた効果に、雅治は驚きを隠せず………
………しかし、本当に驚くのはこれからだ。この効果が発揮された後の、召喚の効果………
「……勝利へ導くワイルドカード………ジョーカー!!…俺の元にLV2で来い!!」
リザーブ11⇨9
【ジョーカー】LV2(2)BP12000
墨のように黒い球体は、司の場で熟し、水のように弾け飛び、中からそのスピリットが姿を見せる。その全身は黒く、触覚のような二本のツノ、緑色の顔が特徴的なスピリット………ジョーカー。
仮面ならざる仮面。
「な、なんだこのスピリットは………!?」
「お前は知らねぇだろうな………」
このスピリットは以前、剣総が使用したカード。彼が消え、カードだけが残り、今はDr.Aから司に託されていた。君の力だと言われて…………
「……LV2のセラフィモンとBPが同じ………くっ、ターンエンド………」
【セラフィモン】LV2(3)BP12000(回復)
バースト【無】
セラフィモンを犠牲には出来ないか、司が新たに召喚したジョーカーと、これ以上のカウンターを警戒して、そのターンをエンドとした雅治。
次はジョーカーを召喚した司のターン。勝負を決めるべく、ターンを進行する。
[ターン09]司
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ9⇨10
《ドローステップ》手札2⇨3
《リフレッシュステップ》
リザーブ10⇨12
トラッシュ2⇨0
「メインステップ、イーズナを召喚し、ジョーカーのLVを3にアップ……!!」
手札3⇨2
リザーブ12⇨0
【イーズナ】LV1(1)BP1000
【ジョーカー】(2⇨13)LV2⇨3
2体目のイーズナが司の場に現れる。それと同時に、コアが置かれ、LVが上昇し、それを示すかのように大きな奇声を張り上げるジョーカー。そのBPは………
「に、26000……!?」
LV2の時とは桁外れに高いBPに驚愕する雅治。そして、司はこのターンでゲームエンドを狙うべく、アタックを仕掛けていく………
「アタックステップ……ジョーカー……やれ!!……さらにフラッシュマジック…イエローリカバー!!」
手札2⇨1
【朱に染まる薔薇園】(1⇨0)LV2⇨1
トラッシュ0⇨1
「っ!?」
「この効果で黄色のスピリットを回復……ジョーカーは六色のスピリット、回復させる!!」
【ジョーカー】(疲労⇨回復)
黄色い光を一瞬だけ浴び、ジョーカーは疲労状態から回復状態となる。これにより、このターン、2回目のアタック権利を得た。
「……アタックは継続中ッ!!」
「くっ、セラフィモン!!」
咄嗟に唯一のスピリットでブロッカーであるセラフィモンにブロックの指示を送る雅治。向かってくるジョーカーに向けて、セラフィモンが飛翔する。
セラフィモンは高威力の光球を合計7つを形成し、ジョーカーへと投げ飛ばす。ジョーカーもまた黒い墨のような球体を7つ形成し、セラフィモンへと投げ飛ばす。
その白と黒の球体は威力は同じなのか、互いに衝突し、爆煙を発生させながら対消滅していく。
その煙の中、ジョーカーとセラフィモンは取っ組み合うように手を繋ぎ合わせる。だが、その点で言えばジョーカーの方が圧倒的に強力か………ジョーカーはセラフィモンを押していき、終いには足でセラフィモンを蹴り飛ばす。
そしてトドメと言わんばかりに今一度黒い球体を形成、投げ飛ばし、今度こそセラフィモンに衝突させる。セラフィモンは流石に耐えられなくなり、力尽きて大爆発を起こした。
「……イーズナでアタック……」
「っ!!……ライフで受ける………ッ」
ライフ2⇨1
バトルの終わりを見るや否や、イーズナが地を駆け雅治のライフを狙う。そしてその鋭い爪で引っ掻き、残り少ないライフを1つ切り裂いた。
残りライフ1。
しかし、雅治はあのジョーカーのアタックをどうにかできるカードは手札にはなく………
「………終わりだ………消えろ……雅治」
そう雅治に言葉を投げかける司。
しかし………
「本当?………僕には消えろ、なんて思ってる顔には見えないな…………」
「…………」
司の表情は今までとは信じられないほどに、暗く寂しく、辛そうであって………
その雰囲気や佇まいから、司が根っからの悪に染まった訳ではないと証拠でもあった。
「……別に怒らないよ……でもさ、これだけは絶対に約束しろ………」
「…………」
これだけ、
絶対にどんなことがあってもこれだけは約束を守って欲しかった。
いくら己が道を貫いても構わない。どんなに辛く厳しい修羅の道を歩んでも構わない。それが君が選んだ道だと言うのであれば、僕はそれを受け入れよう。
だけど、絶対にこれだけは約束しろ………
「………必ず帰って来い………僕達のところに……」
それだけがただただ願いだった。
平和な学生生活。その中では、やはり自分の横には必ず司がいてくれないといけない。そう思い、考えているからこその発言だった………
………司はそんな雅治の必死な物言いに対し………
「……………………あぁ」
とだけ、ゆっくりと首を縦に振り、承諾した。
「………ジョーカーで…………ジョーカーでアタック………」
今一度走り出すジョーカー。その間に映るのは雅治の最後のライフのみ………
………そして、
「…………ライフで受ける」
ライフ1⇨0
そのライフを差し出す雅治。
ジョーカーはその鋭い爪でいとも簡単にそのライフを切り裂いた。雅治はその瞬間、体をデジタル粒子に変換され、地を離れていき、デ・リーパーの作る不気味な壁へと吸収されていった。
これにより、バトルの勝者は赤羽司。最後には異端なスピリットであるジョーカーだけがこの場に残って…………
「…………馬鹿野郎………」
司は何を思うか………
………その足元には雨が降っていないにもかかわらず、水が滴っていた………
………なんで逃げなかった………今はただその事だけで頭がいっぱいいっぱいだった。
******
ここはある場所にあるDr.A達の本拠地。そこは界放市のどこかにある事しか情報がない。
だが、その言葉の響き方とは裏腹に、とても広い敷地内であのか、六月の孫、芽座葉月と銃魔はだだっ広いそこで主人であるDr.Aの帰りを待っていた。
いや、待っていたと言うにはいささか不明な点があるか、少なくとも葉月はそんな事は微塵も思ってはおらず、ただただこの退屈な時が過ぎるのを待っていた。
「……なぁ銃魔……」
「………なんだ」
そんな時、銃魔に囁くように葉月が言葉を投げかけた。銃魔はいつも通り、その冷静沈着な表情を崩さず、メガネを指先で定位置に戻しながらその言葉に対して受け応えをする。
「お前……Dr.Aと新しい進化した世界を創ってどうしたい?」
「?」
葉月の自分を小馬鹿にでもしてくるような態度での質問は、意外と内容はしっかりとしており、答えづらかった。
自分は今まで争いや紛争のない世界とだけ聞かされていた。だが、聞かされたのはそれだけ、後はせいぜい神になると言っていたくらいで、特にはなかった。
正直、目指しているものは素晴らしいとは思うが、やってる事は正しいとは思ってはいない。言ってしまえば世界のリセット、今を生きる人々の絶滅なのだ。自分が今日の今までDr.Aの後ろをついていったのは彼に対する恩義からである。
「…………特にない。俺はDr.Aと共に暮らしたいだけだ……」
「あぁ?…んだよそれ、つまんねぇな」
銃魔のキャラとは全く合わない言葉に、葉月は拍子抜けしたような声を上げる。だが、銃魔にとって、理由はそれだけで良い。Dr.Aが自分のところにいてくれれば、家族として…………
だが………
「ヌフフフフ、本当につまらないですね〜〜〜…見損ないましたよ…銃魔……!!」
「「!!」」
2人が声のする方へと視線を移すと、そこには紛れもない若返ったDr.A。最大の障壁であろう空野晴太を倒し、帰ってきたのだ。
「……もうそろそろ貴方は処分ですかね………銃魔………!!」
「…………」
銃魔に向けて信じられない言葉を並べるDr.A。しかし、銃魔はまるでそう言われることをわかっていたかのような表情をしており……
………銃魔の運命やいかに…………
〈本日のハイライトカード!!〉
椎名「本日のハイライトカードは【セラフィモン】!!」
椎名「黄色の究極体にして最も高貴な熾天使、セラフィモン、煌臨時に相手のスピリット全体の弱体化が可能だよ!!」
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〈次回予告!!〉
次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ…「漆黒の聖騎士と孤高の魔王」…今、バトスピが進化を超える!!
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※次回サブタイトルは変更の可能性があります。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!!