界放市の中央部に位置する大きなバトルスタジアム、中央スタジアム。界放リーグという栄誉ある大会でしか使用されないこのスタジアムの広大な地下にて、人知れず世界の命運を分ける戦いが幕を開けていた。
Dr.A、本名徳川暗利、そしてその元親友であった芽座六月。この2人のバトルが切って落とされた。
「「ゲートオープン、界放!!」」
コールと共にバトルスピリッツが開始される。
先行は六月。Dr.Aに対する歳不相応に満ちた怒りを頭に心頭させ、ターンを進めていく。
[ターン01]六月
《スタートステップ》
《ドローステップ》手札4⇨5
「メインステップ、わしはネクサスカード、海底に眠りし古代都市を配置!!………エンドじゃ」
手札5⇨4
リザーブ4⇨0
トラッシュ0⇨4
【海底に眠りし古代都市】LV1
バースト【無】
六月が早々に配置したのはあまりの強さにバトルスピリッツのルールにおいてはデッキに1枚しか入れられない究極カードに認定されている海底に眠りし古代都市。彼の背後に海底に沈む薄暗い都市が浮かんで来た。
「ほお、古代都市ですか……六月、君の本気度が伺えますね〜〜〜」
「黙っておれこの年齢不詳男め!!…さっさと己のターンを進めんか!!」
「ヌッフフ、はいはい、お爺さん」
今のDr.Aはオーバーエヴォリューション、即ち進化の力によって、椎名達と同じかそれ以上に若い姿になっている。
実際は実年齢70越えの老人なのだ。六月が年齢不詳男と言うのもうなづける。
そんな彼を嘲笑いながら、Dr.Aは楽しげな表情でターンを進めていく。
[ターン02]Dr.A
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ4⇨5
《ドローステップ》手札4⇨5
「メインステップ………ふむふむ、なら私もネクサスカード、賢者の樹の実を配置してエンドとしましょう」
手札5⇨4
リザーブ5⇨1
トラッシュ0⇨4
【賢者の樹の実】LV1
バースト【無】
Dr.Aは軽く指で顎を撫でながら考え、ネクサスカード、賢者の樹の実を配置する。彼の背後から神秘的な樹が一瞬にして立ち上がった。
[ターン03]六月
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
《ドローステップ》手札4⇨5
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨5
トラッシュ4⇨0
「メインステップ!!ビヤーキーをLV1で召喚!!」
手札5⇨4
リザーブ5⇨2
トラッシュ0⇨2
【ビヤーキー】LV1(1)BP3000
このバトルにおいて六月が初めて呼び出したスピリットはなんとも異形な姿をしたスピリット。真っ黒の体に加え、背には虫のような4枚の羽を広げている。
その名はビヤーキー。見た目とは裏腹に、強力な効果を持つスピリットだ。
「異合スピリットの召喚により、海底に眠りし古代都市の効果でコアブースト」
リザーブ2⇨3
六月の配置していたネクサスカード、海底に眠りし古代都市が青く輝き、六月のBパッドにコアの恵みを与えた。
「さらにわしはカニコングをLV2で召喚!!」
手札4⇨3
リザーブ3⇨0
トラッシュ2⇨3
【カニコング】LV2(2)BP4000
六月が次に呼び出したスピリットもまたなんとも妙なスピリット。腕がカニで体がゴリラという可笑しな見た目のスピリット、カニコングだ。
しかしながらカニコングは低コストスピリットで尚且つ青でありながら緑としても扱える優秀なスピリットだ。
「異合スピリットの召喚により、海底に眠りし古代都市とビヤーキーの【連鎖:緑】がそれぞれ発揮!!コアを2つ追加!!」
リザーブ0⇨2
ビヤーキーは緑のシンボルがあれば、海底に眠りし古代都市同様に異合スピリットを召喚するだけでコアが増えていく。カニコングの緑シンボルが今回の発揮を満たしている。
ただの低コストスピリットを召喚するだけで、六月のコアは一気に2つ増加した。
「アタックステップ……カニコングでアタック!!」
アタックステップに入り、六月は様子見と言わんばかりにカニコングでアタックさせる。カニコングは当然横ではなく前向きに走っていき………
「ライフで受けようか………っ」
ライフ5⇨4
カニコングのカニの腕がDr.Aのライフを1つたたき壊した。
「……賢者の樹の実の効果でコアを増やそう」
リザーブ2⇨3
「ターンエンドじゃ」
【ビヤーキー】LV1(1)BP3000
【カニコング】LV2(2)BP4000
【海底に眠りし古代都市】LV1
賢者の樹の実が1つDr.AのBパッドに落下していき、彼にコアの恵みを与える。
そして六月はターンをエンドとした。本当はその気になればもっと大きくライフを破壊することはできたが、それではまだ勝てない。ここはゆっくり【射程圏内】に持ち込む戦術を取った。
[ターン04]Dr.A
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ3⇨4
「ドローステップ時、私は手札にある仮面ライダーウォズの効果を発揮、手札のこのカードを手元に置く事で、ドローステップでのドロー枚数を1枚増やす。だが、その時に手札が4枚以上なら1枚破棄しなければならない。私はこのカードを破棄」
手札4⇨3⇨5⇨4
破棄カード↓
【ゴジラ(2004)】
仮面ライダーウォズの効果を発揮させ、手札とデッキを目まぐるしく回転させるDr.A。トラッシュに強力なスピリットを配備しつつ、メインステップを迎えるが………
《リフレッシュステップ》
リザーブ4⇨8
トラッシュ4⇨0
「メインステップ……バーストをセットして……エンドだ」
手札4⇨3
【賢者の樹の実】LV1
《手元》
【仮面ライダーウォズ】
バースト【有】
そのターンは結局1枚のバーストカードを裏側で伏せるのみでエンドとなった。
「ふんっ、余程そのバーストに自信があるんじゃな?」
「ヌッフフ、そうだね〜〜強いて言うなら、このデッキは全て私のオーバーエヴォリューションで創られたカード達。全部が全部私の自信作だ〜〜」
何はともあれ、次は六月のターン。Dr.Aが何もしないのであれば自分から攻めるだけだ。
そして何より、バーストの戦法は六月には効かない。いよいよ動き出す。
******
一方で椎名は最深部を目指してただひたすらに階段を下りていた。結果的に自分の魂と一体化したデ・リーパーの感覚に不慣れなのか、やや重たそうに、疲れた表情を浮かべていた。
だが、それでも急がなければならない。早く最深部で六月の元へ行かなければ……………………
だが、そんな彼女の道を阻むかのように、ある人物が姿を見せる。それは椎名が何よりも驚愕した存在。
「よぉ……椎名…」
「っ!!……葉月!?」
「あぁ?何驚いてやがる?…赤羽司に聞かなかったか?」
椎名の目の前に現れたのは他でも無い。義理の兄、芽座葉月。
椎名は司からは葉月まであちら側とまでは聞かされていなかった。故に、よりその存在に驚嘆の声を上げる。
「葉月……何で!?」
「俺は元々こちら側の人間なんだよ……それよりお前、その目…デ・リーパーと1つになったみたいだな……なんとなくわかるぜ」
「………」
今の椎名は所謂鬼化の状態。しかし、今までのようにツノや牙は生えず、その両目にギルモン系譜と同じマークが刻まれているだけだ。
しかし、その目には確かに進化の力の全てが集結していた。葉月もそれを感じ取っていた。
「いや、まぁんなことはどうでもいいか……」
「また私のロイヤルナイツを奪おうってか?」
「あぁ、お前にしては勘が良いじゃねぇか……だが、【それはまた今度でいい】……」
「…………え?」
葉月はそう言うと、自身のBパッドからワームホールを開く。
彼のこれまでの言動から察するに、この場から立ち去るつもりだ。しかも面倒ごとを全て椎名に押し付けて………
「葉月!!」
「俺はそもそも Dr.Aの野望なんざどうでもいいんだよ、ロイヤルナイツの情報さえ手に入ればそれで良い!!」
「 Dr.Aの野望は世界を一回全部壊して、またそこから自分の世界を創る事なんだぞ!!野放しにしていいわけないだろ!!」
「知るか、勝手にやってろ………それとお前、こんなとこで油売っててもいいのか?」
「………!?」
「今、ここの最深部では Dr.Aとジジイが戦ってる……ハッキリ言うと、ジジイに勝ち目はねぇ……消えないうちに早く行くんだなぁ!!」
「葉月!!」
「……後、前にも言ったが、お前のロイヤルナイツは必ず俺が全て回収する!!…肝に命じておくんだな!!」
葉月は地下最深部の情報を隈なく椎名に教えると、自分だけそのワームホールを潜り抜けて違う場所へと去っていった。はなからそうするつもりだったのだ。情報を得るだけ得て、使えないと見たらそこから去る。
実に葉月らしい考え方だ。
「葉月………くっ!!」
椎名とて、なんとか葉月を元の優しい彼に戻したかった。しかし、その腐れ果てた様子は前よりも寧ろ酷くなっているのを感じた。
だが、今はそんな事考えたって仕方がない。地下最深部で六月が、じっちゃんがバトルしているのを知った今、そっちを優先しなければならない。
椎名はまた覚束ない足取りで階段を下りていくのだった。
******
場面は戻り、六月と Dr.Aのバトル。次は六月の第5ターン目だ。いよいよ彼が本気で動き出す。
[ターン05]六月
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ2⇨3
《ドローステップ》手札3⇨4
《リフレッシュステップ》
リザーブ3⇨6
トラッシュ3⇨0
【カニコング】(疲労⇨回復)
「メインステップ………条件は揃った……青か緑のスピリット2体の存在により、アルティメット・リーフ・シードラをLV2で召喚!!」
手札4⇨3
リザーブ6⇨0
【カニコング】(2⇨1)LV2⇨1
トラッシュ0⇨5
【アルティメット・リーフ・シードラ】LV4(2)BP24000
六月の前方に植物やシダが目に見える速度で伸びていく。そこに巨大な水の球体が投下されたかと思うと、それらは混ざり合い、巨大で尚且つ異形な姿をした龍型のアルティメット。リーフ・シードラが姿を現した。
「ヌフフフフ、アルティメット・リーフ・シードラ………そういえば使ってましたね〜」
「黙れ暗利!!お前との昔話に花咲かせるつもりはない!!このターンで終わりじゃぁっ!!」
スピリットよりも格段に強いアルティメットを従える六月を前にしてもDr.Aは嘲笑し、余裕の表情を浮かべる。
「アタックステップっ!!……行けぇ!!リーフ・シードラ!!アルティメットトリガーの効果!!」
「!!」
ロックオンカード↓
【双光気弾】ヒット
アルティメット・リーフ・シードラから放たれる衝撃波がDr.Aのデッキをトラッシュへと破棄させる。そのカードがアルティメット・リーフ・シードラのコスト、8より低ければヒットとなる。今回はコスト3。ヒットだ。その後の効果を発揮できる。
「ヒットじゃ!!この効果によりバーストカードを破棄し、ライフ1つを破壊する!!」
「っ!!」
バースト破棄カード↓
【ケルビモン(悪)】
ライフ4⇨3
周りにできた水溜りを弾き飛ばす程の咆哮をあげるアルティメット・リーフ・シードラ。その咆哮に怯えるようにDr.Aのバーストカードが消滅していき、振動だけでライフまでもが砕け散った。
「アタック後のバーストか、残念じゃったな……」
「……………」
「リーフ・シードラはダブルシンボル!!ライフ2つを破壊するぞ!!」
上空すれすれを滑走するように走り出すアルティメット・リーフ・シードラ。目指すは当然Dr.Aのライフ。
Dr.Aが抵抗できなければこのターンの六月のフルアタックで全てが終わる。
しかし、あのDr.Aがこの程度の動きで終わるわけがなく………寧ろここからが本領の発揮と言える。いよいよDr.Aが反撃に転ずる。
「私のライフが減った事で、トラッシュにあるゴジラ(2004)の効果を発揮!!2コスト支払い召喚する!!」
リザーブ9⇨7
トラッシュ0⇨2
「!?」
「太古の神よ、原子の力その身に宿し、現れ出でよ!!ゴジラ(2004)!!」
リザーブ7⇨5
【ゴジラ(2004)】LV2(2)BP15000
空間が張り裂ける程の咆哮を上げ、黒きシンプルな怪獣の姿をしたスピリット、ゴジラがその場に姿を現した。
「じゃがまだリーフ・シードラのアタックを止められたわけではない!!その程度のスピリットでは勝てん!!」
「ヌッフフ、わかってるさ六月、だからこそもう1枚、私のエーススピリットをご紹介致しましょう!!」
「っ…エーススピリット……!!」
六月の言う通り、確かにゴジラではアルティメット・リーフ・シードラは倒せない。が、Dr.Aはまだ動く。
次なるはあの空野晴太をも葬り去った彼の、彼自身のエーススピリットだ。
「フラッシュタイミング!!このカードの効果!!相手のコスト8以下のスピリット1体を手札に戻す事で召喚できる!!……ヌッフフ、私は君のカニコングを戻しましょう!!」
「っ!?」
手札3⇨4
六月のカニコングの前方に突如としてブラックホールが出現し、それはカニコングを飲み込んでいく。カニコングはその中でデジタル粒子に分解され、六月の手札へと帰還してしまう。
しかし、そんなものは飽くまでも条件に過ぎない。本命はこの後の召喚だ。
「進化の頂点に立つ者よ!!愚かなる世界に変革をもたらすがよいィィィイ!!…仮面ライダーエボル ブラックホールフォーム!!LV2で召喚!!」
手札2⇨1
リザーブ5⇨1
トラッシュ2⇨4
【仮面ライダーエボル ブラックホールフォーム】LV2(2)BP10000
邪悪で黒々とした靄が場に出現したかと思うと、そこから足を踏み入れてきたのは、白のボディに、これでもかと刻まれたディテールが特徴的な仮面スピリット、その名はエボル。Dr.Aのエーススピリットだ。
その内には他のスピリットとは違う強力な進化の力を内包している。
「アルティメット・リーフ・シードラのアタックはこのブラックホールフォームが受け持とう!!」
「なんじゃと!?BPはリーフ・シードラの方が14000も上じゃぞ!?」
方向を変え、アルティメット・リーフ・シードラはDr.Aの場に威風堂々と佇んでいるエボルを狙う。BPは圧倒的に優っているのだが………
「ヌッフフ、ブラックホールフォームのアタック、ブロック時効果!!…相手のスピリット、アルティメットのコア2つをリザーブに置き、消滅したカードを除外する!!」
「!!」
「私が対象とするのは、当然ながら……リーフ・シードラだ……!!」
「……!!」
【アルティメット・リーフ・シードラ】(2⇨0)除外
アルティメット・リーフ・シードラは体中のエネルギーを口内へと集中させ、そこから破壊光線を放つも、エボルは左手からエネルギー状の強固な盾を形成し、それを難なく凌ぐと、右手からブラックホールを形成し、アルティメット・リーフ・シードラへと投げ飛ばす。
それに被弾したアルティメット・リーフ・シードラは、自身より小さいそれに吸い込まれていき、最終的には呻き声を上げながら消滅してしまった。
「見たかい六月?…これがエボルの力さ……!!」
「っ…………エンドじゃ」
【ビヤーキー】LV1(1)BP3000(回復)
【海底に眠りし古代都市】LV1
バースト【無】
攻め手のアタッカーを失い、そのターンをエンドとしてしまう六月。しかし、ここまでは想定内だ。勝負は次のターン…………と、心の中ではそう言い聞かせていた。
まるでここまでのバトルでDr.Aのスピリット達を見極めようとしているようだ。
[ターン06]Dr.A
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ1⇨2
《ドローステップ》手札1⇨2
《リフレッシュステップ》
リザーブ2⇨6
トラッシュ4⇨0
【仮面ライダーエボル ブラックホールフォーム】(疲労⇨回復)
「メインステップ、エボルのLVを3にアップ!!」
リザーブ6⇨2
【仮面ライダーエボル ブラックホールフォーム】(2⇨6)LV2⇨3
コアが増加され、その強さを格段に上昇させるブラックホールフォーム。
「アタックステップ!!さらにその開始時、手元にある仮面ライダーウォズの効果!!コスト6以上のスピリットが存在する場合、コストを払わずに召喚が可能!!」
「!!」
「よってこの、未来の仮面スピリット、ウォズをLV2で召喚!!」
リザーブ2⇨0
【ゴジラ(2004)】(2⇨1)LV2⇨1
【仮面ライダーウォズ】LV2(3)BP8000
謎の浮力で浮かぶ黝ずんだ一反の布が球体を作り出す。それが弾けたかと思うと、中から緑色を基準とした仮面スピリット、ウォズが姿を見せる。複眼部に「ライダー」と書かれているのが妙に目につく。
「ヌフフフフ、アタックステップは続行!!……さぁ行きなさいゴジラ!!…効果によりビヤーキーを指定アタック!!…さらにそうした時、コアを1つ追加し、回復!!」
【ゴジラ(2004)】(1⇨2)LV1⇨2
「っ!?」
ゴジラがゆっくりと前進する。目指したのは六月のライフではなく、その場に存在するビヤーキー。ゴジラはビヤーキーの眼前まで現れると、体格差を活かし、片手で捕らえ、そのまま地面へと勢い良く叩き落とした。
ビヤーキーは堪らず爆発四散する。
「さらに相手のスピリットがフィールドから離れた時、ゴジラに赤のシンボルが1つ追加される!!」
「!?」
これがこの破壊神、ゴジラの脅威の効果だ。スピリットを指定し、破壊しつつコアも増やすだけでなく、シンボルまでもを増やし、ライフも狙える。
しかし………
……その後Dr.Aが取った行動は………
「ヌッフフ、ターンエンド」
【ゴジラ(2004)】LV2(2)BP15000(回復)
【仮面ライダーエボル ブラックホールフォーム】LV3(6)BP13000(回復)
【仮面ライダーウォズ】LV2(3)BP8000(回復)
【賢者の樹の実】LV1
バースト【無】
「なにっ!?」
「さぁ君のターンだ六月……どうした?進めないのかい?」
「くっ……!」
そのターンをエンドとしてしまうDr.A。あれだけ強力無比なスピリット達を所狭しと並べたというにもかかわらず、六月のライフが未だに初期の5のままだと言うのにもかかわらず…………それは彼の圧倒的な余裕を表すには十分過ぎる行為といえよう。
しかし、そんなものは最早関係ない。
六月は遂に勝利を確信し、自分のターンを進めていく。
[ターン07]六月
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ4⇨5
《ドローステップ》手札4⇨5
《リフレッシュステップ》
リザーブ5⇨10
トラッシュ5⇨0
「メインステップ、わしはカニコングをもう一度召喚!!…海底に眠りし古代都市の効果でコアを1つ増やす!!」
手札5⇨4
リザーブ10⇨8⇨9
トラッシュ0⇨1
【カニコング】LV1(1)BP2000
エボルの効果で手札に戻されていたカニコング。それが今一度姿を見せると共に、海底に眠りし古代都市の効果でコアが増える。
そして、いよいよ六月はこのバトルに終焉をもたらすため、召喚する。
自身の持つ最強のスピリットを……ロイヤルナイツにも勝るも劣らないデジタルスピリットを………
「召喚、世界を統べる皇帝竜!!!!…インペリアルドラモン ドラゴンモードッ!!」
手札3⇨2
リザーブ9⇨1
トラッシュ1⇨6
【インペリアルドラモン ドラゴンモード】LV2(3)BP13000
上空にて、空間を裂くように特大の異次元の渦が発生する。そこから出現するのは巨大なドラゴン。背には砲手、赤い翼を広げ、六月の場へと降り立つ。
その名はインペリアルドラモン。その風格はまさしく皇帝の名を冠するに相応しい。
「インペリアルドラモン……遂に本気か六月……」
「アタックステップ!!行けドラゴンモード!!」
六月の指示でその大いなる翼を広げ宙を翔けるドラゴンモード。そしてこのタイミングで、そのインペリアルドラモンは真の姿へと変化する。
「フラッシュ【煌臨】発揮!!対象はドラゴンモード!!」
リザーブ1s⇨0
トラッシュ6⇨7s
「!」
ドラゴンモードが咆哮を張り上げながら変形していく。その姿は竜ではなく、人型となり、背にあった砲手も右腕に移行する。
「来い!インペリアルドラモン ファイターモード!!」
手札3⇨2
【インペリアルドラモン ファイターモード】LV2(3)BP15000
その名はインペリアルドラモン ファイターモード。ドラゴンモードが内に秘めたる力を覚醒させ、真骨頂となった姿だ。
「ファイターモードの煌臨時効果!!相手のスピリット10体を疲労させ、このターン、相手は手札にあるコスト4、6、8のカードを使用できん!!……ポジトロンレーザー!!」
「っ!!」
【ゴジラ(2004)】(回復⇨疲労)
【仮面ライダーエボル ブラックホールフォーム】(回復⇨疲労)
【仮面ライダーウォズ】(回復⇨疲労)
ファイターモードがその右腕にある砲手をDr.Aのスピリット達に向け、そこからレーザーを放出する。その高威力のレーザーは次々とスピリット達を薙ぎ払い、吹き飛ばしていく。
「終わりじゃ暗利、ファイターモードはアタック時、相手のライフを破壊した時、さらに2つ破壊する……!!」
ファイターモードのもう1つの効果は、追加でライフを2つを破壊するというもの。つまり一撃で3つを破壊できる。Dr.Aのスピリットは今や全て疲労。そしてライフは3。
六月はずっとこのタイミングを見計らっていた。だから計算を尽くし、Dr.Aのライフを3になるように調整していた。
……終わりだ。これで六月がこのバトルに勝利し、世界は救れる。
………はずだった。
「ヌッフフ、ギ、ギッギャっハッハッハッハ!!!」
「……何がおかしい!!」
滑稽なのか、Dr.Aは六月に対して突然嘲笑うかのように笑い始めた。
それもそのはずだ。
何せ、六月はずっと自分の掌の上で転がっていただけなのだから………彼にとっては可笑しい以外の言葉が見つからない。
「いやはや〜〜君は私の手の内を全て把握したつもりだったのだろう?だが違うのだよ、私がこの数十年でインペリアルドラモンの効果を忘れたと思っていたのかね?……」
「!」
「六月……君のバトルにおいての昔からの短所はインペリアルドラモンに頼り過ぎる所だ……!!」
Dr.Aはそう言いながら手札のカードを発揮させる。
そのカードはファイターモードの制限に引っかかる事のないコスト9のカードだ。
そしてそのカードはDr.Aの切札……エボルの最終進化形態だ。
「フラッシュ【チェンジ】発揮!!対象はエボル!!」
【仮面ライダーエボル ブラックホールフォーム】(6⇨1)LV3⇨1
トラッシュ0⇨5
「チェンジだと!?」
「六月ぅ!!本当に鈍ったね!!君は未知のカードと遭遇した時の対応力が欠如している!!」
「!」
疲労し、膝を付いていたエボルが起き上がり宙を舞い、さらにそこから悍ましい邪悪な黒い力がエボルを染めていく。
余りに強大な力にその白いアーマーが耐えられず弾け飛び………Dr.Aのエーススピリット、エボルは真なる姿を現わす。
「これが私の真の切札!!…覚醒、革命の時は来た!!エボルを超えたエボルト・怪人態!!」
【エボルト(怪人態)】LV1(1)BP8000
「!!」
あまりの衝撃に地がひび割れ、空気が痺れるように震撼する。その体からは宇宙で何度も行われる超新星かの如くエネルギーを常に放ち、それが異常であることをより強調している。
その名はエボルト・怪人態。エボルがDr.Aのオーバーエヴォリューションの力を得、さらに強大に進化した姿だ。その姿は最早仮面スピリットではない。ただの怪物だ。
「仮面スピリットを相手にするのならば、しっかり【チェンジ】を意識しておくことだ。まぁ最も、最早仮面スピリットでさえないがね」
「……!!……じゃが!!その程度のスピリット、インペリアルドラモンの敵ではない!!」
「だから言っているだろう六月!!…君の短所はインペリアルドラモンに頼り過ぎる所だと、このエボルト・怪人態はチェンジ時、相手スピリットのコアを3つリザーブへと送る効果がある!!」
「なにっ!?」
「ヌッフフ、対象はもちろんファイターモードの3つだ!!…消えなさい!!」
「っ!?…ファイターモードッ!?!」
【インペリアルドラモン ファイターモード】(3⇨0)消滅
エボルト・怪人態がファイターモードに手を翳す。するとそこから途方も無く黝ずんだブラックホールが放たれる。その大きさはブラックホールフォームの時の比ではなく、巨大な体躯のファイターモードをまるごと飲み込んでいく。
ファイターモードはそのままそのブラックホールの中で消滅してしまい、行方を眩ました。
「……素晴らしい!!これ程までの力があるとは!!これこそ私が求めていた最高の力だ!!世界を進化させる力だぁぁあ!!」
「くっ……暗利!!」
「さぁ六月ぅ!!…君の負けだ!!早くターンを終えなさい!!……終えなさい!!」
「…………ターン、エンド……」
【カニコング】LV1(1)BP2000(回復)
【海底に眠りし古代都市】LV1
バースト【無】
Dr.Aとエボルトの圧倒的な力の前に、六月はそのターンをエンドにせざるを得ず……
六月は屈辱と苦渋に襲われながらそのターンをエンドとしてしまう。そして、それは彼の最後のターンだった。
Dr.Aは余りにも強くなりすぎた自分に酔いしれながら最後のターンシークエンスを着実に進めていく。
[ターン08]Dr.A
《スタートステップ》
《コアステップ》リザーブ0⇨1
《ドローステップ》手札2⇨3
《リフレッシュステップ》
リザーブ1⇨6
トラッシュ5⇨0
【ゴジラ(2004)】(疲労⇨回復)
【仮面ライダーウォズ】(疲労⇨回復)
「メインステップ、エボルト・怪人態をLV3にアップ!!」
リザーブ6⇨2
【エボルト(怪人態)】(1⇨5)LV1⇨3
カードにコアが置かれ、さらにその力を上昇させるエボルト。そしてこれが最後のアタックステップだ。Dr.Aは決着をつけるべく貯めに貯めた軍団で総攻撃を仕掛ける。
「アタックステップ!!ゴジラでカニコングを指定アタック!!コアを置き、回復!!」
【ゴジラ(2004)】(2⇨3)(疲労⇨回復)
アタックステップの開始時から早々に走り出すゴジラ。目指すは六月のカニコング。カニコングは対抗しようとするも、ゴジラの尾の一撃を浴びて吹き飛ばれ、爆発してしまう。
「この時!!ゴジラにシンボル1つを追加!!……追撃せよ!!」
回復したゴジラが背びれを真っ赤に染め上げる。そしてそこに溜められたであろうエネルギーを口内へと移行させ、六月のライフへと向けて………
「赤色熱線!!」
「ぐっ、ぐぁぁぁぁぁあ!!?!」
ライフ5⇨3
赤い色の熱線を放ち、六月のライフをこれでもかと焼き尽くした。
「ヌッフフ、あ〜良いね良いね〜〜!!あの六月がゴミのようだ!!私はここまで強くなってしまったのか!!」
「違うじゃろ……そんな自分を偽った姿で勝手に強くなってる気でいるんじゃ無い……このクズが……」
「ヌッフフ、弱々しい……そんなクズに負けるのが君だよ!!……さぁ行くがいい!!エボルトォォォォオ!!」
六月の言葉など全く聞かず、耳に入れず………Dr.Aは最後のアタックと言わんばかりにエボルトでアタックを仕掛ける。エボルトはその指示を聞き、ゆっくりと六月の元へと歩みを進める。
「ウォズの効果!!疲労させることで自分のスピリット1体をBPプラス10000!!そしてライフを1つ破壊する!!…対象は当然エボルト!!」
【仮面ライダーウォズ】(回復⇨疲労)
【エボルト(怪人態)】BP15000⇨25000
「ぐぅっ!!」
ライフ3⇨2
その最中、ウォズが薙刀のような武器を取り出し、それを振り回して斬撃を放つ。それは一直線に六月の方へと飛び行き、彼のライフを切り裂いた。
「エボルトはダブルシンボル……一度のアタックでライフを2つ破壊する!!」
「………」
「正直、空野君とのバトルの方が楽しかったかな?」
まるで魔王を連想させるようなゆっくりとした歩き方で六月の元へと迫り来るエボルト。六月のライフは残り2つ。終わりだ。完全に Dr.Aの勝ちが確定する。
そしてこの時。
この時だ。
遂に、ようやくあの人物がこの場へと到着する。
「じっちゃぁぁん!!!」
「っ!!……椎名!!」
椎名が六月の事を叫びながら地下最深部へと姿を現した。
「やぁエニーズ!!やはりここに来たのはデ・リーパーではなく君だったか!!」
「ッ……あれがDr.A!?」
「だけど、これで終わりだよ……じゃあね六月、私の親友!!これで永遠にさよならだ!!」
しかし、時既に遅しか、Dr.Aは改めてエボルトにトドメの指示を下す。
「っ……椎名!!」
「じっちゃぁぁん!!!」
「ぐっ……ぐぁぁぁぁぁあ!!?!」
ライフ2⇨0
エボルトの途方も無いエネルギーを纏わせた拳の一撃が六月の残ったライフを全て粉々に砕く。
六月は余りのダメージに吹き飛ばされ、転がり込む。
「じっちゃん………じっちゃぁん!!」
力尽き、倒れる六月に思わず駆け寄る椎名。
「し、椎名………」
「じっちゃん!!」
倒れながらも、今にも消えそうな弱々しい声で椎名の名を呼ぶ六月。その身体は既にデジタル粒子となって分解されかけている。
「す、すまんのぉ……わしじゃあ奴には勝てんかった………」
「気にすんなよ!!じっちゃんは十分頑張った!!…後は……後は私に任せろ!!」
六月には………
椎名の変わり果てた目も見えていたはずだ。その進化の力が詰まった、その目を……
それを見ればここに来るまでに椎名がどう自分と向き合い、どう戦っていたのかが自ずと隅々まで理解できる。
椎名は生まれた環境、異質な存在であるせいで、ずっと子供のままでいいと思っていた。そして自分も、椎名をそうなるように育てて来た。
が、もう椎名は子供ではない。そう確信したからこそ、六月は震える手で、粒子化していく手で……最後の力を振り絞って………
……あるカードを椎名に手渡す………
「わ、わしのカードじゃ……使え………お前なら使いこなせる……!!」
「っ!?」
そのカードとは【インペリアルドラモン】……その3枚。
六月の長年の相棒であり、最も信頼を寄せるスピリットだ。このインペリアルドラモンなら、きっと椎名を助けると思い、六月は彼女にそれを託した。
そのカードに込められた想いを感じ取った椎名は、自然と頬に涙が流れる。
「じ、じっちゃぁぁん……!!」
「泣くな椎名……わしは椎名の笑った顔が見たい……出来損ないのクソジジイですまんのぉ……後は……後は任せるぞ!!」
「………!!」
もう二度と大事な何かを失いたくないと思っていた椎名にとって、これ程までに辛い事はなかった事だろう。本当は泣いて、悲しんでいたい………
……が、六月の気持ち全てを汲んだ椎名には、そんな事は許されないと思ったのか……
……凄い勢いで涙を拭い、六月の言った通り、笑顔を作り………
「おう!!任せてくれ!!必ず………必ず私が全部元に戻して見せるから!!」
無理矢理作っな強気な態度でそう強く言い放った………
「ほっほ……やっぱ椎名はかわいいのぉ〜〜……あぁ、カメラ……持ってくれば良かったわい………」
六月は最後にそう言い残し、デジタル粒子となって上の方へと消え去った。おそらくは他の者達同様デ・リーパーの壁に向かったのだろう。
これでこの場は椎名と Dr.A。ただ2人だけの空間となる。六月を見送った椎名は Dr.Aの方を振り向き、鋭い目つきで睨みつける。そこには当然Bパッドを閉じた若い Dr.Aの姿がある。
椎名はこの時初めて若返った Dr.Aを見たが、司に聞いていたこともあったか、たいして驚くそぶりを見せないでいた。
「ヌッフフ、エニーズ!!その目はなんだい?…いや、今の、進化の力を体得した私にはわかる!!それは君とデ・リーパーが1つになった結果だ!!…素晴らしい!!なんと進化の力は偉大なのだろう!!」
「……………」
ついさっき自分で元親友である六月を殺すに近い行いをしたと言うのに、 Dr.Aは相変わらず自分の事と進化の力の事だけで頭がいっぱいのようだ。
「さぁさぁ、これで新たなる世界のアダムとイヴたる存在が集結した事になるが………どうだいエニーズ?…私と共に来る気はあるかい?」
あまり言及されてはいないが、 Dr.Aは椎名を自分の妃に迎えるつもりでいた。椎名を女に作ったのもそのため。あの18年前からずっとこの瞬間を想定してきたのだ。何せ、一度世界を滅ぼすとしたら、新たに子孫を残さなければならないのだから。
新世界のアダムとイヴとはそういう事なのだ。
「行くわけないだろ………私と今ここで決着をつけろ Dr.A!!…私の託された想いに懸けて、私は必ずあんたを倒す!!」
椎名は至って冷静な表情だが、言動からは確かな怒りが感じ取れる。勢いよくBパッドを展開し、バトルの準備を行う。
「はぁ、ここまで言ってもわかってくれないんだね〜〜まぁいいよ、今となっては君程度の存在はいつでも作る事ができる………仕方ない、出来損ないは六月同様処分しなきゃね〜…ヌッフフフ!!!」
Dr.Aもそう言いながら仕舞ったばっかりのBパッドを取り出した。
今、この界放市中央スタジアムの地下最深部にて、世界の存亡を賭けた史上最大のバトルスピリッツが行われようとしていた。
〈本日のハイライトカード!!〉
六月「本日のハイライトカードは【インペリアルドラモン】!!」
六月「インペリアルドラモンはドラゴンモード、ファイターモード、そしてもう1つと合わせて3つの形態を持つ青と緑の究極体スピリット!!椎名、後は頼んだぞ!!」
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〈次回予告!!〉
次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ「最終決戦、椎名VS Dr.A!!…今、バトスピが進化を超える!!
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※次回サブタイトルは変更の可能性があります。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!!