バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ   作:バナナ 

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【三期】第1章「椎名と仲間達編PART3」
第95話「襲来!新たな敵は赤羽茜!?」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようやく……ようやくこの時が来たのですね……」

「……あぁ、2000年だ……2000年という年月、妾はこの時を待っていた…………妾から【進化の力】を奪った愚かな人間共に復讐できる……この時を……!!」

 

 

荒れ果てた荒廃。

 

これでもかと倒壊した瓦礫の山。本来ならば人1人の気配すら感じ得ないこの場所に、そのフードを被った女性はいた。そしてその側には手下なのか、彼女を崇め、敬うように膝をつく黒髪の男性が1人………

 

2人のその声色からは憎悪を感じる。それはとても深く、悍ましいものである。

 

そんな彼らのその怒りの矛先は人間という種族。

 

今、芽座椎名の最後の物語が幕を開けようとしていた。

 

 

******

 

 

Dr.A、本名徳川暗利が起こしたA事変から約2カ月。デ・リーパーの分身体達によって壊された界放市の街並みも、今は殆どが修復されていた。界放市市長の損失の穴も学園の理事長全員で率先して穴埋めを行なっている。

 

そして、時期も春が訪れた事もあって、界放市の学園生だけでなく、界放市全ての者達が新たな生活のスタートラインに立っていた。だが、変わったと言えばそれだけで、他の点について言えば対して変わることはない。

 

だが、たった1つ、たった1つだけ変わり果ててしまった人物が1人…………

 

 

 

「おぉ〜〜い、椎名ぁ!」

「!」

 

 

界放市立バトスピ学園 ジークフリード校。

 

今は放課後の時間。

 

校舎内の廊下にて、関西訛りの強い少女、緑坂真夏が、オレンジの髪とツノのようなアホ毛、首から下げたゴーグルが特徴的な少女、芽座椎名に話しかけてきた。

 

 

「なぁ椎名、これからカラオケでも行かへん?…3年なって、勉強勉強言われてストレスやろ?ここらでぱあっと発散しとこうや!!」

 

 

上機嫌で尚且つ乗り気な感じで真夏が椎名をそう誘った。

 

しかし、椎名は霞んだように小さく笑うと………

 

 

「いや、今日は遠慮しとくよ……また今度ね」

「……そ、そうか……暇あったらいつでも言いや!!」

「あぁ、あったらね」

 

 

こんな感じで断られてから、いったい何度目になるだろうか。

 

椎名は素っ気なくて、それでいてやや冷たい態度のまま、静かにまた歩みを進めた。おそらく校舎を出るつもりなのか、靴箱の方がある道を辿っていった。

 

そんな椎名の寂しそうな背中を、真夏はただただ同じように寂しく見つめることしかできなかった。

 

 

「変わったね、椎名」

「…長嶺……」

 

 

真夏に話しかけてきたのは茶髪の少年長嶺雅治。彼とて、椎名の目まぐるしい変化に気づかないわけがなく……

 

 

「何というか、大人になったって言うのかな?」

「………もうあたしらの知っとる椎名とちゃうんかな……」

 

 

2人は椎名の存在が遠く感じていた。ほんの少し前まではあんなに近くで寄り添っていたと言うのに………

 

原因は、やはりあのA事変だろう。

 

もうあんな事気にしなくても言いと言うのに………

 

 

 

そしてそんな生徒達のやりとりを裏でこっそり聞いていた人物が1人………

 

……彼らの担任の教師、空野晴太だ。何やら椎名の態度に真夏達同様不満な表情を浮かべており………

 

 

******

 

 

「……3枚目のインペリアル……」

 

 

夕方だが、未だに空が橙色にも染まらない時間帯。椎名は河川敷の草原で寝転がり、黄昏ながらある1枚のカードを見ていた。それはあの時、 Dr.Aと戦う前に手渡されたインペリアルドラモンのカード達、その1枚

 

インペリアルドラモン パラディンモード

 

このカードだけは他2枚とは違い最初から名前しかなく、他のテキストは一切存在しなかった。当然バトルでは使えない。

 

後で六月に聞くと、他の2枚は昔、このカードに力を与えられた自分のオーバーエヴォリューションで手に入れたのだと言う。このパラディンモード自体は芽座一族の祭壇のような遺跡に最初からあったそうなのだ。

 

このカードが何なのかはわからない。当然ロイヤルナイツでもない。本当に謎めいたカードなのだ。

 

だが、椎名はこのカードを手にしてから妙な予兆を感じるようになっていた。

 

それはまるで【これからまたこの街に何かが起ころうとしている】………そんな嫌な予感だ。

 

 

「……椎名っ!!」

「っ………先生」

 

 

そんな時だった。考える椎名に話しかけてきたのは他でもない、担任の空野晴太。

 

 

「おいおい、今日は暇だったのか?それなら別に真夏と一緒にカラオケ行ったって良かったんじゃねぇか?」

「聞いてたのか……別にいいだろ?…行きたくなかったんだから」

 

 

椎名を問い詰めようとする晴太。しかし、椎名はそれに対しても素っ気ない冷たい態度で言い返す。

 

 

「お前……界放市の英雄になってから変だぞ……余りにも変わりすぎだ、いったい何があったんだ」

 

 

晴太とて、椎名があの時どれだけの重荷を背負ってDr.Aと戦ったのか理解できる。辛かったに違いない。こんなに若いのに世界の命運を懸けて戦ったのだから………

 

が、先ずは相談して欲しかった。

 

自分は教師だから。担任だから。

 

 

「別にどうってことはないさ、私は私………今も、そしてこれからも………」

 

 

椎名はまたもや晴太に対して素っ気ない態度で返事をする。そして、立ち上がり、カバンを背負って帰宅しようとした……………その時だった。

 

 

「っ!!…誰だ!!」

「?」

「どこにいる……姿を現したらどうだ!!」

 

 

椎名はこの一瞬のうちにただならぬ気配を感じた。

 

その気配は一言で言うならば【悪意の塊】……悍ましい何かを感じた。普通の人である晴太にはそれを感じる事は出来ず、ただただ不思議そうに首を傾けた。

 

……そしてその悪意の塊は姿を、正体を見せる。

 

 

「ほぉ?…妾の気配に気付くとはやるな、芽座椎名」

「………私もただの人間じゃないからね。あんたみたいな悪意の塊みてぇな奴の気配は直ぐにわかるよ」

「悪意の塊とは心外じゃの」

 

 

黒い靄が唐突に2人の前に姿を現したかと思うと、それが晴れると共にフードを深く被った1人の女性が現れた。それこそ、椎名が感じた悪意の塊の正体。

 

 

「パラディンモードのカードは其方が待っておるな?」

「なに?」

「それは妾のカードだ……返してもらうぞ」

 

 

その女性は椎名のパラディンモードが狙いなのか、突如それを要求してくる。そもそもこのカードの存在を知っているのは椎名と六月を含めたごくわずかな人間だけだと言うのに。

 

 

(……なんだ……こいつの声は……やけに聞き覚えがある)

 

 

そんな彼女らのやり取りの最中、晴太はそんな事を考えていた。この突然現れた女性の声色。確かに晴太には聞き覚えがあった。

 

だがその謎も直ぐに解き明かされる事となる。

 

 

「このカードは私がもらったんだ……あんたみたいな奴には絶対に渡さない……!!」

「小娘が粋がりおって……いいだろう、なら力づくで奪うまでじゃ!!」

「「!!」」

 

 

女性がフードを脱ぎ捨て、その素顔を露わにすると同時に、懐から取り出したBパッドを展開、バトルの準備を瞬時に行った。

 

晴太は驚愕した……その容姿。紛う事なきあいつだった。自分の生涯のライバルであったあいつだ。

 

 

「あ、茜?」

「っ……先生?」

「お前は赤羽茜なのか!?」

 

 

その女性に対してそう言い放つ晴太。

 

そうだ。その女性は赤羽茜その人だった。見間違えるはずがない。炎などよりももっと滾っている赤い髪。その顔。

 

 

「赤羽茜?……赤羽………!!……そうか赤羽茜、司の姉ちゃんだ」

 

 

椎名もようやくその顔を思い出す。以前、赤羽一族の家で見た司の姉、赤羽茜の写真。今目の前の女性は紛う事なきその人物だった。

 

 

「其方、【この肉体の身内】か?」

「何言ってんだよ茜……俺だ!!晴太だ!!こんな口のうるさい奴、忘れたとは言わせねぇぞ!!」

 

 

目の前の信じられない光景に気が動転してしまう晴太。目の前の現実から目を背けられない。死去した自分のライバルが突然眼前に現れたのだ。無理もないが………

 

……椎名にはわかる。

 

あれは……

 

 

「先生、あいつは司の姉ちゃんじゃない、私にはわかる!!」

「っ!!……椎名……」

 

 

椎名の一言で晴太は我に帰る。

 

そうだ。茜は確かにあの日、持病で命を落とした。あの後は葬式もした。焼却もした。確実にいないのだ。もうこの世には………

 

 

「さぁかかって来い芽座椎名……妾のインペリアルを返してもらうぞ……!!」

「待てよ椎名、じゃあ【肉体】って言うのは……」

「それはわからない。でも確実に中身は全くの別人だ……さっきも言ったけど、あれはただの悪意の塊。司の姉ちゃんと思わない方がいい」

 

 

そう言うと、椎名もまた自分のBパッドを展開してバトルの準備を瞬時に行う。

 

 

「おい椎名!!まさかこのバトルを受ける気じゃないだろうな!?」

「バトルしないと何も始まらないだろ?」

「待て待て、じゃあ俺が……」

「先生は下がってろ、敵さんもどうやら私をご指名みたいだしね」

「!!」

 

 

バトルに挑もうとする椎名を止めようとする晴太。代わりにやろうともするが、椎名の途方も知らないオーラ、その口から発せられる威圧感のある声。また、赤羽茜と同じ姿をしている女性のオーラが、まるで自分を近づかせず、それを拒んだ。

 

情けない。とも教師として思ったが、おそらくバトルを拒んだ本当の理由は目の前が赤羽茜だからだろう。晴太が本気を出せるわけがない。

 

この場は椎名を、自分の生徒を信じるしか彼に道はなくて………

 

 

「準備は良いか芽座椎名?」

「あぁ、上等だ……いつでも来い」

 

 

そして、芽座椎名と赤羽茜に似た女性のバトルが、この河川敷にて幕を開ける。

 

 

「「ゲートオープン、界放!!」」

 

 

コールと共にバトルスピリッツが幕を開ける。

 

先行は赤羽茜に似た女性だ。

 

 

[ターン01]赤羽茜?

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ……来るがいい、運命の蠍座……スコーピオン・ゾディアーツ!!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

【スコーピオン・ゾディアーツ】LV1(1)BP1000

 

「……見たことないスピリットだ……」

「紫、やはり椎名の言う通り、奴は茜じゃないのか……」

 

 

場に蠍座の星座が輝いたかと思うと、黒い靄と混ざり合い、頭部が蠍のような形をしている怪物の姿へと変化を遂げる。その名はスコーピオン・ゾディアーツ。紫のスピリットだ。

 

見たこともないスピリットに椎名は改めて気を引き締める。

 

 

「召喚時、1枚引く……妾の番は終わり」

【スコーピオン・ゾディアーツ】LV1(1)BP1000(回復)

 

バースト【無】

 

 

いくら椎名や晴太も知らない未知のカードを使うと言えども、先行の第1ターン目ではこの程度か、早々に椎名のターンが回ってきた。

 

 

「未知なるカード……上等だ……どんなバトラーやスピリットが相手だろうと、私は勝つ……」

「……椎名……」

 

 

変わり果てた椎名の声色、言動。堂々としている点では同じかもしれないが、その様子はまるでバトスピを楽しんでいないかのよう、ただ精密にバトルをこなそうとしているかのようだ。

 

そんな芽座椎名のターンが幕を開ける。

 

 

[ターン02]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「メインステップ……来い、ギルモン!!」

手札5⇨4

リザーブ5⇨0

トラッシュ0⇨3

【ギルモン】LV2(2)BP4000

 

「……真紅の魔竜か……鬼の雑兵のスピリット如きが妾に逆らおうと言うのか……!!」

 

 

椎名が初手で呼び出したのは、真紅の魔竜、その成長期の姿、ギルモン。成長期宛らに小柄だが、力強さと才覚は確かにその内に秘めている。

 

 

「アタックステップ………ギルモン、いけぇ!」

 

 

颯爽とギルモンで敵陣へと殴りかかる椎名。ギルモンが二本の脚で勢いよく走り出した。目指すは当然敵のライフ。

 

 

「妾で受けよう……っ」

ライフ5⇨4

 

 

そのアタックをライフで受ける女性。ギルモンがその鋭い大きな爪でライフを1つ切り裂いてみせた。

 

 

「……ターンエンド」

【ギルモン】LV2(2)BP4000(疲労)

 

バースト【無】

 

 

できることを全て終え、そのターンをエンドとする椎名。次は再び女性のターンだ。

 

 

[ターン03]赤羽茜?

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ1⇨2

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ2⇨5

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ……来るがいい、運命の天秤座、リブラ・ゾディアーツ!!」

手札6⇨5

リザーブ5⇨0

トラッシュ0⇨2

【リブラ・ゾディアーツ】LV2(3)BP5000

 

「っ……今度は天秤座……」

 

 

天秤座の星座が浮かぶと、今一度黒い靄と共に、今度は長い触覚と杖をついている怪物へと変化を遂げる。

 

 

「召喚時効果、3枚見、その中の対象札1枚を加える」

オープンカード↓

【スコーピオン・ゾディアーツ】◯

【旅団の摩天楼】×

【レオ・ゾディアーツ】◯

 

 

リブラがその杖を地面につくと、女性のデッキから3枚のカードがめくれ上がる。彼女はその中の対象となるカード、【レオ・ゾディアーツ】のカードを新たに手札へと加え、残りはトラッシュへと破棄した。

 

 

「さて、妾も攻めるとしようか、アタックステップ………スコーピオン、リブラ……あの小娘に力の差を見せつけてやれ!!」

手札5⇨6

 

 

女性の指示1つで走り出す2体のゾディアーツ。目指すは当然椎名のライフ。前のターンでアタックを仕掛けたことから、それを守るものは存在せず…………

 

 

「ライフで受ける………っ」

ライフ5⇨4⇨3

 

 

スコーピオンが腕にある蠍の尾のような爪で、リブラが杖の先端部による刺突で、それぞれ椎名のライフを1つずつ破壊した。

 

 

「妾の番は終わり」

【スコーピオン・ゾディアーツ】LV1(1)BP1000(疲労)

【リブラ・ゾディアーツ】LV2(3)BP5000(疲労)

 

バースト【無】

 

 

そのターンをエンドとする女性。次は今一度椎名のターンが幕を開ける。

 

 

[ターン04]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札4⇨5

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨6

トラッシュ3⇨0

【ギルモン】(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ、ブイモンを召喚!!」

手札5⇨4

リザーブ6⇨2

トラッシュ0⇨3

【ブイモン】LV1(1)BP2000

 

 

椎名が新たに召喚したのは青い小竜型の成長期スピリット、ブイモン。

 

 

「まだいくぞ……マジック、ブルーカード!!」

手札4⇨3

リザーブ2⇨0

トラッシュ3⇨5

 

「!」

 

「このカードの効果により、自分のデッキの上から4枚オープン、その中の進化系スピリットを色が一致するスピリットに進化させる!!……カードをオープン!!」

オープンカード↓

【ディーアーク】×

【インペリアルドラモン ファイターモード】×

【ワームモン】×

【デュークモン】◯

 

 

なんの迷いもなく手札のカードを次々と切っていく椎名。そしてブルーカードの効果も成功。見事にギルモンの赤と一致する色を持つデュークモンを引き当てた。

 

 

「よし……来い、デュークモンッ!!」

【ギルモン】(2⇨1)LV2⇨1

トラッシュ5⇨6

【デュークモン】LV1(1)BP9000

 

 

ギルモンの足元から青色のカードが潜り抜ける。ギルモンはその中で姿形を大きく変え、槍と盾、白い鎧と赤いマントを携える聖騎士型のデジタルスピリット、デュークモンへと進化を遂げた。

 

 

「……デュークモン……そうか、今は芽座椎名の切札か……」

「何をぶつぶつ言ってる……私のバトルは甘くないぞ……アタックステップ!!…デュークモンでアタック!!」

「!」

 

 

まるで椎名のデュークモンの事を知っているかのような口ぶりで呟く女性。しかし、それも束の間。椎名のエースであるそのデュークモンが動き出す。

 

 

「デュークモンのアタック時効果!!…シンボル2つ以下のスピリット1体を破壊する!!」

「!」

「私が破壊するのはスコーピオン・ゾディアーツ!!……やれ、デュークモン、聖槍の一撃……ロイヤルセーバーッッ!!」

 

 

デュークモンがスコーピオンへと右腕の槍を構えると、その先端から光の力が凝縮された強力なビームを一点にそこへと放つ。

 

スコーピオンは避ける間も無くそれに腹部を貫かれ、力尽き、爆発を起こした。さらにこの際、スコーピオンには破壊時効果があったのだが、それもデュークモンの効果でねじ伏せられていた。

 

 

「アタックは続いているぞ……!!」

 

「っ……妾の身で受けよう」

ライフ4⇨3

 

 

爆発による爆煙が晴れるその時、デュークモンは既に女性の目の前に存在しており、そのままそのライフ1つを自慢の槍で貫いた。

 

 

「続けブイモン……!!」

 

「それもじゃ……っ」

ライフ3⇨2

 

 

デュークモンのアタック後、すぐさまブイモンも地を駆ける。そしてそのままそのライフを強靭な額で1つ粉々に砕いた。

 

 

「……ターンエンド」

【ブイモン】LV1(1)BP2000(疲労)

【デュークモン】LV1(1)BP9000(疲労)

 

バースト【無】

 

 

エースであるデュークモンを起点にアタックを仕掛け、そのターンをエンドとする椎名。次は女性のターン。もう手加減はしないと言わんばかりの挙動でそれを進行していく。

 

 

[ターン05]赤羽茜?

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ3⇨4

《ドローステップ》手札6⇨7

《リフレッシュステップ》

リザーブ4⇨6

トラッシュ2⇨0

【リブラ・ゾディアーツ】(疲労⇨回復)

 

 

「妾のメインステップ……其方のそのデュークモンさえ破壊して仕舞えば妾の勝ちは確実のようじゃな」

「………」

 

 

謎の女性は椎名のデュークモンをそう捉えている。バトスピというゲームの関係上、別にデュークモンを倒しても勝てるわけではないが、確かに今のデュークモンさえ倒して仕舞えばかなり有利になる事だろう。

 

 

「来るがいい、運命の獅子座……レオ・ゾディアーツ!!……強さは2、コアはリブラから用い、確保」

手札7⇨6

リザーブ6⇨0

【リブラ・ゾディアーツ】(3⇨1)LV2⇨1

トラッシュ0⇨5

【レオ・ゾディアーツ】LV2(3)BP10000

 

「!」

 

 

今度は獅子座の星座が浮かぶと、また黒い靄と混ざり合い、白い怪物が姿を見せる。その頭部は獅子座の名にそぐわない獅子の顔を連想できるものであって………

 

 

「アタックステップ……行くがいい獅子座のレオ……その剛力を見せる時じゃ!……効果により、墓地に眠るスコーピオンの効果を発揮させ、妾は札を引く」

手札6⇨7

 

 

アタックステップに入るとともに二本の足で地を駆けるレオ。目指すは当然………

 

 

「さらにその力により、疲労状態のスピリット1体を狙う…先ずはブイモンとやら……餌になるが良い」

「!」

 

 

レオが狙っていたのは椎名のライフではなく、ブイモン。レオはブイモンに高速で接近し、鋭い爪を持つ腕でそれを容易く切り裂いた。

 

さらにそれだけではなく………

 

 

「レオが狙ったスピリットは問答無用で破壊され、さらにレオは回復する」

【レオ・ゾディアーツ】(疲労⇨回復)

 

「!」

 

 

レオはその身に黒いオーラを纏う。それは自身が回復している証拠。これで二度目のアタックが可能となった。

 

 

「さぁ、次は当然、デュークモン……其方じゃ!」

手札7⇨8

 

「!」

 

 

レオが次に狙いを定めたのはデュークモン。そしてその時、再びスコーピオンの効果がコピーされ、女性はカードを引いた。

 

今度はデュークモンが効果で破壊され、また回復するかと思われたその時、椎名の手札が光る。

 

 

「滅龍スピリットが相手の効果の対象となった時、手札にあるグラニの効果!!1コスト支払ってデュークモンに直接合体するように召喚」

手札3⇨2

リザーブ1⇨0

トラッシュ6⇨7

【デュークモン+グラニ】LV1(1)BP15000

 

「…!」

 

 

デュークモンのすぐ横に、どこからともなく赤い飛行物体、グラニが出現する。これでレオのBPは上回ったが………

 

 

「愚かな、いくら力を上げてもレオは狙ったスピリットを効果で破壊する……!!」

 

 

そうだ。さっきのブイモンもレオの効果で破壊されていた。デュークモンに対してもレオはその鋭い爪をデュークモンの鎧に突きつけて貫こうとする………

 

が………

 

 

「……ふっ、それはどうかな?」

 

 

椎名はこの光景を見るや否や、鼻で笑い、口角を小さく上げた。

 

それもそのはず、そのレオの鋭利な爪は全くデュークモンの鎧を通さないどころか、傷一つつかないのだから。

 

 

「なに!?」

「残念だったね、グラニの効果を受けたデュークモンはこのターン、相手の効果では破壊されない……!!」

「!」

「反撃だ……いけ、デュークモンッ!!」

 

 

椎名の叫びと共に、その眼光を強く放つデュークモン。その右手の槍を振るい、レオを吹き飛ばす。それでも尚果敢に迫ってくるレオに向けて、デュークモンはさらに盾に真紅の力を充填させていき………

 

 

「聖盾の一撃……ファイナル・エリシオン!!」

 

 

そこからそれをレオに向けて一点に放出。レオはなす術なくそれに包み込まれ、身体ごと掻き消され消滅してしまう。

 

 

「……くっ」

「どうした、そんなもんか?……そのチンケな天秤で殴ってもいいんだぞ」

 

「っ………妾の番は終わり」

【リブラ・ゾディアーツ】LV1(1)BP3000(回復)

 

バースト【無】

 

 

腑に落ちない表情のまま、女性はそのターンをエンドとする。次は椎名のターン。がら空きとなった場にトドメの一撃を送る。

 

 

[ターン06]椎名

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札2⇨3

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨8

トラッシュ7⇨0

【デュークモン+グラニ】(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ……デュークモンのLVを最大にして、アタックステップ……デュークモン、いけぇ!」

リザーブ8⇨3

【デュークモン+グラニ】(1⇨6)LV1⇨3

 

 

メインステップもそれだけで終わり、すぐさまデュークモンでアタックを仕掛ける椎名。デュークモンがグラニに搭乗し、超速で宙を翔ける。

 

 

「デュークモンのアタック時効果でリブラを破壊し、グラニの効果でデッキを1枚破棄!」

 

「!」

破棄カード↓

【デルタバリア】

 

 

デュークモンのロイヤルセーバーとグラニの先端から放たれるビームが女性のデッキとリブラの両方を襲う。リブラはその中で木っ端微塵に砕け散り、爆散した。

 

そして後はライフを砕くのみ、デュークモンはグラニとの合体によりダブルシンボル。つまりライフを2つ破壊できる。

 

 

「終わりだ……竜騎絶撃……ドラゴンドライバァァァァァァァァア!!!」

 

「……っ!」

ライフ2⇨0

 

 

グラニの背に搭乗したデュークモンが凄まじい勢いで女性のライフへと激突する。そのライフは容易く残った2つを砕き、破壊した。

 

これにより、勝者は芽座椎名。圧巻のバトルを見せつけた。

 

 

「どうだ、これがデュークモンの力だ!!」

「……不完全な札だけではこの程度か………次は妾の力の一端を用いて手合わせしてやろう……その時が芽座椎名、其方の最後じゃ」

「!」

 

 

椎名が勝利を宣言するようにそう強く言い放つと、女性はゾディアーツを召喚した時のような黒い靄に包み込まれ、捨て言葉を吐きながらこの場から去っていった。

 

 

「椎名!!」

 

 

バトルの終了に伴い、晴太が椎名のところへ駆け寄る。

 

 

「司の姉ちゃんに似た女………あいつは何者だ?」

 

 

疑問が残る事だらけだった一連の出来事。

 

だが、この戦いは始まりに過ぎない。これから、椎名達はDr.Aなどよりも遥かに凶悪な化け物とバトルスピリッツで雌雄を決する事となる。

 

 

******

 

 

時はまた少しだけ遡って、椎名が謎の女性とバトルを行う約10分前の出来事。放課後になり、自分の家に1人で帰宅しようとしていたのは……

 

……【朱雀】こと、赤羽司。芽座椎名の最大のライバルだ。

 

そんな帰宅の彼を妨げるかのように、妙な人物が異様なオーラを放ちながら前方に立ち塞がっていた。

 

 

「誰だテメェは」

「我の名は【バーク・アゼム】……エニー・アゼム様の子孫にして、あの方の完全な復活を望む者だ……返してもらうぞ……貴様の…バロンを……!!」

 

 

バークと名乗る黒髪の若い男性。彼の狙いはあの戦いで司が自分のオーバーエヴォリューションで入手したバロンのカード。

 

この場でも新たな敵が堂々蠢き出していた。

 

 




〈本日のハイライトカード!!〉


椎名「本日のハイライトカードは【レオ・ゾディアーツ】」

椎名「新たな敵のキーカード。トラッシュにある同様のスピリットの効果をコピーできるよ」


******


〈次回予告!!〉


司に襲い掛かってきたのはエニー・アゼムの子孫を名乗るバークと言う男。狙いはなぜか司の持つバロンのカードだ。司は当然の如くそれを断り、バトルを行うのだが………次回、バトルスピリッツ オーバーエヴォリューションズ「鎧武、オンステージ」…今、バトスピが進化を超える!!


******


※次回サブタイトルは変更の可能性があります。

最後までお読みくださり、ありがとうございました!!今回は最初と言う事で、簡単なバトルにしました。

新章が始まりましたが、コラボカードの補給のためにしばらくの間休載の選択肢も視野にある悲しい今日この頃です。私が休載しないと選んだ時は日常の話でなんとか次のコラボまで持ちこたえる予定です。

以前のアンケートでオリカは使って良いのはわかったのですが、少なからず嫌だと思うと人もおられるので、極力避けたいんですよね。

椎名は最初からこうなる設定がありました。ざっくり言えば弾くんから弾さんになった感じです。



【芽座椎名(三期)デッキレシピ】

デッキ×40

《スピリット》×26
ブイモン×3
ワームモン×1
エクスブイモン×1
スティングモン×3
パイルドラモン×1
マリンエンジェモン×2
インペリアルドラモン ドラゴンモード×1
インペリアルドラモン ファイターモード×1
フレイドラモン×1
ライドラモン×1
マグナモン×1
ギルモン×2
グラウモン×2
メガログラウモン×2
メギドラモン×2
デュークモン×1
デュークモン クリムゾンモード×1

《ブレイヴ》×4
ズバモン×2
グラニ×2

《ネクサス》×6
デジヴァイス×3
D-3×1
ディーアーク×2

《マジック》×4
レッドカード×1
ブルーカード×1
デルタバリア×2


元々いずれ掲載する予定でもありましたが、ご要望のあった椎名デッキレシピです。二期の終わりも散々デッキがオーバーエヴォリューションなどでいじりましたが、スピリットの枚数比率はいつもこんな感じでした。デルタバリアはリバイバルでも構いません。ただこの作品ではどっちを使っても対して変わらない場合が多いため、文字数が少ないリバイバル前にしてます。

ハイランダー寄りのビートダウンって感じですね。一先ずブイモン→スティングモンの流れを決めたいところです。できるかできないかで大分展開が違います。フィニッシュは合体したパイルドラモンやデュークモン、ファイターモードと言った具合です。最近出番が減ってますが、ズバモンが割といろんな意味で鍵です。作中で椎名が魅せるコンボのように、無限の可能性が広がっているデジモンデッキです。


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