とある科学の能力強化《AIMブースター》 作:夜鳴
「他の能力者の子とも会ってみたいです」
研究員さんが部屋から出てきたらすぐにそう言ってみた。
まあ許可が出る確率は案外低いかもしれない。
ぼくの能力の影響が出た場合の損失はある意味大きいのだから。
「あら、別に良いわよ。というか一人会ってもらってやってほしいことがあるの。あなたにしかできないことがあってね」
なんですかそれ。もはやぼくの能力使う気満々じゃないすか。
別に良いけど。
というかできたじゃん、過去の自分よ、なぜ言わなかったんだ。そこまでして交流を持ちたくなかったのか。
「ぼくの能力を使って暴走でも止めるんですか?」
「ええ、その通りよ。毎回のように暴走しちゃって施設の修繕費がとてつもないことにならないうちにね」
それは怖い。
研究所はある程度能力の使用に耐えられるように通常とは異なる素材で作られているはずだ。
それをぶっ壊すことができるとなるとかなりの能力の持ち主であることに違いない。
「今からですか?」
「いいえ、今日は単なる検査よ。先程も言ったでしょ? それは明日よ」
「ああ、すみません忘れてました」
「しっかりしなさいよー」
そう言われながら検査を始めるために部屋に入った。
***
検査が終わってとりあえずぼくの部屋に戻る。研究所の中にある一室なのだが、他の子たちの部屋とはある程度離れているようだ。なぜかは知らないけど。
そのままベッドの上で寝転がっていると美少女の顔が天井から現れた。
白くふわりと揺れる髪、大きな瞳は優しげで、それでいて誰かをからかうよう。それらに加え、小ぶりの鼻、そして薄い桜色の唇が完璧な配置で並んでいる。
…………
「はぁ‼︎⁇」
その顔は徐々に降りてきて首、上半身、下半身と出てきた。
その服は研究所に所属している能力者の女子のもの。
光学系の能力者か、それとも精神干渉系の能力者がやっているのか?
なんで今になって……
驚いた声に反応してその白髪の美少女は不思議そうな顔をする。
つまり、ぼくの反応を見ているということだ。
つまりは精神干渉系の能力者か。
「君は誰?」
そう聞くと美少女は驚いた顔をして、徐々に喜ぶような笑顔になった。
「君は、わたしはが見えるの⁈」
「いや見えるよ。君が見せているんでしょ?」
どこか予想外の反応だな。
そう思いながら質問すると、美少女はふざけた答えを返した。
「わたしは……幽霊さんだよ?」
ふざけるな、と言いたい。
もしかしたらこの街に魔術師が隠れていてそれで降霊したのかもしれない。けれどもその服を着ている以上この子は研究所に所属している子だ。この研究所は極秘扱いされているから少なくとも魔術師が入り込む余地はない。
「いや、それは嘘でしょ? 本当のことを教えて」
「いやほんとだってば。わたしはもう死んでるのよ」
埒があかない。
とりあえず、名前を聞いてみる。
「君の名前は?」
「んー、わたしの名前は
「ぼくの名前は風狩翼。レベル3の
「んー、ほんとなんだけどなぁ。わたしは昨日までこの研究所で能力を伸ばしてたの」
つまりぼくと同じ境遇だ。
「わたしの能力はレベル4の
「ならなんでこんなところにいるの?」
「昨日、研究中に事故が起こったの。限界を超えて運動をしている時に施設の一部が崩壊して消し飛ばされた。わたしの体もそれで消し飛ばされたの」
「その事故の原因は?」
「とある能力者の暴走よ」
おい。それもしかしたら巻き込まれてたかもしれないやつじゃないか。
というか研究員さんの言っていたのって多分そいつでしょ。
「その能力者の能力は?」
「なんだっけ? ……《
「その情報はどこで手に入れたのさ」
「わたしが幽霊になっている時に聞いたの。わたしは能力使用中だったけど再生しきれずに崩壊したみたい。けど能力の影響からか、わたしの意識は幽霊みたいに残っているのよ。今まで他の研究員や能力者の子に会ったけど誰にも気づいてくれなかったのに、君は気づいてくれた」
なぜ他の人には気づかれなかったのか。なぜぼくには気づけたのか。
ぼくが特別だから? ……それなら能力しかない気がする。
「うーん。君はたまたま能力そのもののおかげで意識だけが残ったんじゃないかな。君の能力のAIM拡散力場に意識が宿ったんだと思う。気づかれなかったのはAIM拡散力場はそもそも精密機械で測ろうとしないと調べられないから。そしてぼくが君を見れるのも同じ理由。ぼくの能力がAIM拡散力場を見て触ることができるからだ」
そしてAIM拡散力場を強くしたり弱くしたりする事でそれに付随して能力の出力が上がったり下がったりさせる能力なんだけど。
今は関係ない。
そして、彼女の幽霊という表現もあながち間違いではないようだ。
「え、じゃあ君になら触れるの?」
「たぶんね」
そう答えると優花はぼくの手に触れてきた。きちんと手の感触がする。
「……っ!」
声にならないほど感激しているのか、もう片方の手で口を押さえて目を細めている。
「……良かった」
何が良かったのか。ぼくには想像するしかない。
もう孤独に過ごすしかないと思っていたからか。
まだ意識があって、ある意味生きていることか。
他にもあげられるけど、想像でしかないし聞くのも野暮でしかないと思う。
他のことを考えよう。
彼女の能力について。
彼女は本当に肉体再生の能力者なのだろうか。
高位の肉体再生ならばすぐに欠損を治せるのだろう。
けれど、肉体再生があるからといって幽体になって生きられるのだろうか。
ぼくは二つ思いついた。
一つ目は、はじめから別の能力だった。《
二つ目は崩壊している最中に能力が変質した。その時に
まあ真実はわからないけど。
「あー、その、感激しているところ悪いけどさ。これからどうするの?」
「……あ。ど、どうしよう」
「とりあえずここにいたら? 話し相手もいないんでしょ? きっと退屈すると思う」
「う、うん。そうさせてもらおうかな」
「あとそれから明日はここにいてね。ちょっと仕事があるから」
「え、じゃあ明日一人でお留守番……⁉︎」
「いやかな?」
「なんかちょっと嫌だなぁ」
あ、なんか怒っているのかプルプルしてる。
というか若干体が光ってませんか……?
そして優花はそのまま床ドンした。
床が軽く凹み、衝撃と振動で若干ぼくの体が浮き上がる。何してくれてんの⁉︎
「あ……」
「あ、じゃないよ! 危ないな!」
そう言っているうちに優花の体が軽く薄くなり、端から崩れ始めた。
やばい、と思うとすぐに優花の腕を握って能力を発動。優花のAIM拡散力場を強化する。
するとまた若干優花の体が光り始めて崩壊が止まり、崩れた部分が元に戻った。
これ、優花の寿命短くないか……? おそらく自身のAIM拡散力場を消費して能力が行使されたんだ。強化したら放っておいても優花に限っては力場はそのままのようだけど、案外やばい。
「わかった。明日ついてきていいからもうやめて」
そう言いながらベッドの中に潜り込んで寝た。
視界の端にいた優花は僅かにガッツポーズしていたような気がした。
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