とある科学の能力強化《AIMブースター》   作:夜鳴

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第2話:暴走したのは疑似的な錬金術師やんけ

 朝起きる時間になって幽霊こと優花に叩き起こされた。

 伊達にAIM拡散力場に触れてしまうからかそれなりの速さで叩かれるとやはり痛い。

 

 形を持ったAIM拡散力場の意識体だからだろうか。そんなことを考えながらベッドから出て施設のお手洗いに行き、トイレを済ませて手と顔を洗う。

 流石に優花を連れて行ってはいない。

 

 そのあと優花とともに研究員さんの元に向かう。

 

「おはようございます、美玲さん」

「あら、おはよう風狩くん。昨日言ったことは流石に忘れてないわよね?」

「あははは。忘れているわけないじゃないですか。ただ疑問に思ったんですけど、これから先ずっと付き添わなきゃダメなやつですか? それだとぼくの実験にも影響が出るんじゃ……」

「流石にそれは無いわ。今日の夕方ごろ精神のスペシャリストがくる見通しよ」

「それならぼくいらなくないですか? 一応今は暴走してないみたいですし」

「そういうわけにもいかないわよ。ずっと薬漬けにしておくのも実験に影響が出るから。可能な限り薬は最小限にしなきゃダメなのよ」

「ああなるほど確かにそうですね」

「あと少ししたら目が覚めてもおかしくないからついて来てちょうだい」

 

 促されるままついていく。

 テレビ局の中のように階段を登ったら廊下を渡り、階段を登ったら廊下を渡り、を繰り返して問題の能力者の部屋についた。

 

「その子は主に背中を打撲しているわ。もう少し暴走が続いていたら脊髄を骨折して死んでいたかもしれない」

「それは怖いですね」

「まあ、頼んだわよ」

 

 美玲さんがドアの隣についている機械にiDを入力、扉が開く。

 

 そして部屋に入ると点滴を左腕に刺した少年がベットの上で眠っていた。

 

 やべ、あの子の名前聞くの忘れてた。まあいいか。

 

 とりあえず右腕を握ってみて能力を発動。この子の能力の出力を低下させる。

 能力を発動させ続けるのは辛いけどいつ目覚めるかわからない状況ではしょうがない。

 最悪死ぬかもしれないし。

 

 あれ、これってよく考えると押し付けられたよね。

 なぜ気づかなかったぼくよ。

 普通に考えりゃ気づくだろ。

 

「……怖いなーどうしようか」

「まーわたしみたいにならないようにがんばってね」

 

 そういえば優花の存在忘れてた。

 

「そりゃ応援ありがと。出力下げてどこまで能力が抑制できるんかな……? それで全然ダメだったらやばいじゃん」

「なるようになるでしょ。諦めたらそこで試合終了だよ」

 

 確かに。なるようになるしかないか。

 

「ん……?」

 

 ベッドの上の少年が目を覚ました。

 

「——ッ⁉︎ ああああああああアアアアアアアアアァァァァァァ——‼︎」

 

 掌から衝撃が走り、衝撃音を上げながら少年の体がベッドから思いっきり跳ねる。

 とても痛い。

 それでも能力の行使はやめない。やめたらどうなるかわからない。おそらくこれも能力の暴走なんだ。出力が低下しているから崩壊現象が起きていないだけなんだ、きっと。

 それでも触れているものすべてに対してこれほどの衝撃を与えるなんて普通できない。それほど強力な能力者、ということだ。

 

 少年がベッドに着地してからとりあえずなだめる。

 

「あ、あの落ち着いて。何もないから、怖くないから」

「赤ちゃんをなだめるようなやり方してもダメだと思うけど〜?」

 

 うるせえ黙れ。今それどころじゃないから。

 

「——っ」

「大丈夫。深呼吸して? とりあえず落ち着こう?」

 

 そう言ってみると素直に従ってくれた。

 

「えーっと、ぼくは風狩翼。よかったら君の名前を教えてくれないかな?」

「……えっと、その……」

「あー、ゆっくりで大丈夫だからね?」

渡錬(とねり)(あつし)、です」

「よろしく、敦」

「あ、あの。よろしくです」

 

 よく見てみるとかなり顔立ちが整っている。

 垂れ気味で弱々しい瞳と表情。

 髪も綺麗に切られているし、その色もチャラいとはどこか思わせない、顔に似合う茶色。言いにくいけど、小さい男の子好きのお姉さんが食いついてきそうな感じの雰囲気がある。

 

 それにしてもすごいな、と思った。

 何がって《相関調整(インターフェイサー)》っていう能力そのものに。

 

 物質間にはたらく力を操る能力。それは分子間力のような物質を結合し、構成する力だけではなく、圧力すら操ることができる。

 でなければ、ベッドからノーモーションで跳ねることなんかできないし、ぼくの掌に走った衝撃も説明がつかなくなる。

 つまり、応用範囲が非常に広い能力だということだ。

 うまくいけば周りの流体を操ったり、圧力を増減させて状態変化すら引き起こせる。

 化学変化など物質を理解していれば余裕でできるだろう。

 

 さあどうするかな。

 何か話でもしてみるかな、能力の話は避けるようにして。

 

「敦、好きな食べ物って何がある?」

「あ、うーん……ハンバーグとか、かな……」

「あーハンバーグおいしいよね、チーズかけるとより美味しくなるし」

 

 そんな感じで敦のことを知るために色々と話をした。

 

 

 ***

 

 

 たくさん話したのに加え、昨日の事故の疲れからか、敦は途中からスヤスヤと眠ってしまった。

 その隙に優花のAIM拡散力場を強化したり、色々自身の能力について考察したりして時間を潰した。

 もちろん、能力の制御は少しだけは残している。

 

 そしてドアが開き、金髪の美少女が現れた。

 どこか不機嫌そうだが、まあこの子が精神のスペシャリスト、能力者だろう。

 

「あなたはどちら様ですかね?」

「あら、私のことを何も聞いていないのかしらぁ? 私は食蜂操祈。暴走力の高い能力者の鎮静のために呼ばれたわぁ」

 

 食蜂操祈、か。

 学園都市最高強度の能力者の一人であり、精神に関する能力を持っている。

 スペシャリストとは聞いていたけど、この子が来るとは思わなかった。

 

「君が、精神のスペシャリストか。なるほど、早速彼を見てくれないかな?」

 

 そう言うと、リモコンを向けられた。やべ、記憶を覗かれる。

 そう思ってももう手遅れだった。

 

「ふーん、この子ねぇ。わかったわぁ」

 

 さほど興味がなかったのか軽く覗かれておしまいのようだった。

 転生のこと見られてたらどうしよう……

 多分名前も知られているよねこれ……

 

 しばらく敦にむけたリモコンでポチポチしたらぼくたちに背を向けた。

 

「終わったわぁ。じゃあ、私これで帰るから、あとはよろしくねぇ」

「敦を治してくれてありがとう。またね、操祈さん」

「ああ、言い忘れてたけどぉ、彼、暴走したとき、よくわからない苦痛力がはたらいてたわぁ」

 

 なにそれ。

 要するに敦が暴走したのは精神系の能力による干渉があったってことか……?

 

「そりゃ、教えてくれてどうもありがとね」

 

 そうお礼を言うとどこか意味深い目線でぼくを軽く見たあと、部屋から出ていった。

 

 うわぁ、これ。少しだけど転生のことバレてるんじゃないかな……

 




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