とある科学の能力強化《AIMブースター》 作:夜鳴
話しづらい。
優花に話しかけるのが憚られる。
昨日最低なことしといて、話しかけるのはどうかと思う。それに反省は自分ではしているけど、こんなことを考えてたら結局反省していないのと同じように思える。
とは言えこのまま何も話さないわけにもいかないだろう。
本当にどうしようか。
しかしいつまでもこのことを考えているわけにもいかない。
実験があるのだから。
ということでとりあえず実験のために部屋を出て準備する。
「おはようございます、美玲さん」
「おはよう、調子はどうかしら」
「完璧ですよ。実験でヘマすることはないと思いますよ」
「なるほどね、んじゃ今日もいつもと同じように他の部屋から流れてくるAIM拡散力場を強化、弱化させて頂戴」
そんな話をしながらいつもの実験室に向かう。
「ああ、そういえば」
美玲さんは他愛もない話から突然真面目な雰囲気で声をかけてきた。
「なんですか?」
「明日から直接ほかの人に会って能力を使って頂戴」
「なぜですか?」
「いやそのね、君が少し前まで無口で同年代の人に興味もないかむしろ関わりたくないと思ってたから必要かと思って他の子とは会わせないようにしてたのだけど、その心配はついこないだからなくなったみたいだから」
つまりあれか。憑依する前のぼくが基本的に話しかけんなオーラを出していたと。
確かに誰かと必要以上に話した記憶がないがどんだけ無愛想な顔をしていたんだ、憑依する前のぼくよ。
道理で関わりがないわけだ。こんな基本的にコミュニケーションが必要そうな能力だったのに、他の能力者との記憶が一切ない理由がわかった。
「そうだったんだね〜、時々強化の能力者の実験に付き合ってって言われてたのに君が姿を見せなかったのはそういうことだったのね〜。てっきりその子が人見知りなのかなんなのかと思ってたよ〜」
緊張感の抜けた呑気で可愛らしい声が響く。優花だ。もちろん美玲さんには聞こえてないだろう。
返事がしづらいけど話しかけられたのでとりあえずいつものような感じで小声で応えた。
「と言われても、って感じだけどね。ぼくこそなんか事情があるのかーって思っていたから」
「それにしてもそんなに愛想がなかったんだね〜、今のからじゃ想像もつかないよ」
「スーパーうるさいよ、ぼくにはそんなつもりなかったからね」
未だに自分から話しかけるのは難しい。憚られる。
でもだからって優花にそのことを気取らせちゃ結局のところ変わらない。
本当に難しいな、こういうのって。
***
実験は特に面白みもなく終わった。というかAIM拡散力場に触れてそれを強化し、そこからどのような強化された能力がどれほどの出力になっているか、調べてそこからどのように能力を使用すれば良いかデータを取りながら手探りで行うものだからだ。
そこから先は勉強してまた実験をする。それがいつものサイクルだ。
昨日のような例外はほとんどなく、それを繰り返すことで能力の上達を確認していく作業。
そこに面白みがあるわけがない。
いつもの日課が終わったところで気になったことを聞いてみる。
「美玲さん、敦はどうなりましたか?」
「あー渡錬くん? 一応明後日から開発できるくらいの体調よ。一応様子見で今日と明日は休みって感じだわ」
「なるほど、ありがとうございます。そういえば、敦の能力ってどのくらいの
「レベル3よ。けど、一昨日暴走していた時に限ってはレベル5に近いレベル4って感じの出力はあったみたいね」
あれでレベル3かよ、というか暴走するとあそこまでの出力になるのか。
でも体晶なんかは使わないだろう。
いくらなんでもあれを使えばどうなるかぐらい研究者はわかっているはずだし、何より体がボロボロになるはずだ。
昨日考えた、能力者による干渉という仮説ともいえないものがぼくの頭をよぎる。
誰がいつ、何のために? そして、どうやって? それがわからないことにはなんともいえないだろう。
難しいな。
そんなことを考えながら部屋に戻った。
「ところでさ、強化お願いできないかな〜」
「あ、ごめん、忘れてた」
「……あーこのなんとも言えない心地よさ、なんか癖になりそうだよ〜」
「そりゃどうも」
さて、強化で思い出したけど、昨日ぼくが暇な時間考えていた能力強化の応用。
過去の自分は一切試さなかったみたいだけど、自身への出力を上げたらどうなるのだろうか。出力を強化してから出力をさらに強化なんてことも可能になるだろう。ただ、それが可能ならレベル3なんて枠組みにはいない。おそらく限界があるはず。
こんなこと、誰でも思いつくはずなんだけどなぁ。
さっそく試してみるか。
……そういえば、自分のAIM拡散力場について意識したことねーや。どうやって見ようか、触れようか。
悩むなぁ。
「どうしたの、考え込んで」
「……あー、自分のAIM拡散力場を察する方法について考えてた」
「自分の無意識を意識するってなかなか難しいもんね」
「他人の無意識なら意識できるんだけど、こりゃ、参ったな……」
「でも、わたしに触れたり、見たりしているのって君の能力の片鱗だよね? 意識してみたりしているの?」
「そりゃ、ある程度はまあ。いつも見えていたら視界がふさがれるからね。いや、でも優花ははじめから見えてたし、意識せずとも触ったり叩かれたりしてるかな」
「なら、体表に沿ってその力場が貼られてて、それは広がらずに留まっているんじゃない?」
なるほど、それなら無意識、というのもある程度納得がいく。……いくのか?
ぼくの体表に沿って力が出ている、までならわかる。けれど力が貼り付けられているとなるとぼくの力場は常に体表に留まってより強くなっていくはずだから多分、その仮説は半分くらい間違いだ。
無意識のうちに出ている力場を体に沿って操っている。そして出ていった力場は漂ったままで何もすることはないって感じなはず。
「ありがとう、なんとなくわかった気がする。でも優花の体表に力が貼り付けられて留まって広がらないって考えは間違っているかも」
「え、でもじゃないと触れられないでしょ?」
「その力を無意識のうちに操っているとしたら? そして広がっていった力場の制御を無意識のうちに放棄していたらきっとできると思う。じゃないとぼくの力は体表に留まって力を増していく。そうすれば何もしなくてもレベル5になれてしまうんじゃないかな。だから見て、触れて、その力を増減させることで能力の出力を上げ下げする能力じゃなく、
これは応用すればやばいことになる。
AIM拡散力場を増幅して操ってしまえば
机上の空論かもしれないけどね。
感想、批評など良ければよろしくお願いします!
翼くん、滞空回線のことを知らないので、思考したことをペチャクチャ喋るとその会話が拾われているかもですよ……?