大日本帝国 東京都
その日、大日本帝国政府は大混乱に陥っていた。
西方の列強レイフォルを、戦艦1隻で滅ぼした強国、グラ・バルカス帝国。
その国の艦隊が、どういう訳か我が国と会談するためにわざわざ長い月日をかけて、先日ロデニウス大陸近海でロデニウス連合艦隊と遭遇したらしい。
現在はマイハーク港で待機し、我が国の駆逐艦2隻が迎えに向かっている。
今村総理は唸る。
「まさかこの距離を航行してくるとは…これは盛大に歓迎する他ありませんね」
「いや総理そこじゃないでしょ」
高野防衛大臣の突っ込みに笑いが起こる。
「冗談だよ…しかし、なぜ遠路はるばる我が国へやって来たのだろうか」
今村の発言に、閣僚は唸る。
「我々と同盟を結びたいとか?」
「わざわざこんなところに来てまでか?」
その後も幾つか考えが挙げられたが、結局は分からず仕舞いだった。
「…仕方がない、直接彼らに聞こう」
そうして議題は別のものへと移っていった。
横須賀基地より約200km 海上
日本に向けて航行する2隻の駆逐艦、雪風と晴風。
その2隻の後方を、グラ・バルカス帝国訪問艦隊が続いていた。
日本からしてみれば旧式の艦隊であるが、この世界の国相手なら負けることはないであろう。そんな艦隊の中には、一際目立つ戦艦の姿があった。
彼女の名は、グレードアトラスター。
この世界に存在する列強の1つである、レイフォル国の艦隊と、そして首都を単艦で撃破した伝説の戦艦グレードアトラスター。
彼女に乗艦する若手の幹部が、他の幹部と共に日本の駆逐艦2隻を眺めていた。
「たかが1門の砲で、何が出来ると言うのでしょうか」
若手幹部の蔑みを含んだ言葉に、熟練幹部が首を横に振った。
「そうとも言い切れん。見たことの無い装備が複数見受けられる。おそらくは、砲以外の何かがあると見て間違いないと思うぞ」
熟練幹部の言葉に、若手幹部が息を飲んだ。
艦長のラクスタル大佐は、少女アレナの予言を思い出していた。彼女の予言が正しければ、日本はグラ・バルカス帝国を超えた大国、だが今目の前にいる日本の艦艇は、自国の艦艇に比べて劣って見える。
本当に我々を超えた国なのだろうか?
「艦長!前方より艦影多数!おそらく日本の艦隊だと思われます!」
見張員の報告を受け、前方へ視線を向ける。確かに前方から煙をあげて艦隊が向かって来るのが見えた。
やがて、向かってくる艦隊の全貌が明らかとなる。
我々を迎えに来た巡洋艦(雪風と晴風は、その大きさからグラ・バルカス側からは巡洋艦と見られていた)と同型の巡洋艦が8隻、砲が1門、口径も130mmから160mmと小口径だ。
だがその中央を航行する2隻の巨大戦艦を見て、絶句した。
「バカな!!グレードアトラスター級の戦艦だと!!?」
若手幹部が叫び、熟練幹部や艦長のラクスタルは言葉を発せずにいた。
グラ・バルカス帝国訪問艦隊を出迎えたのは、日本海軍が長門型戦艦の代艦として建造した超弩級戦艦、紀伊型戦艦である。
旧世界基準の1個艦隊規模を単艦で相手出来る程の性能を保有する紀伊型戦艦は、長門型戦艦の面影を残し、最大級の巨砲である46cm複合衝撃砲を搭載し、VLSや対空火器も充実している。
横須賀基地を母港とする1番艦紀伊と6番艦陸奥は、万が一に備えてグラ・バルカス帝国訪問艦隊の出迎えに出てきていた。
「大日本帝国…やはり侮れん国だったようだな」
艦長ラクスタルは、日本の艦艇を見て気を引き絞めるのだった。
一方、駆逐艦雪風の艦橋では、艦長の古代守が乗員にこんなことを言っていたとか。
「俺たちは日本までの案内役だが、日本の近海まで紀伊型戦艦2隻が出迎えに来るらしい。更に弟からの情報なんだが、横須賀基地では、横須賀の守護神が待機中とのことだ」
神奈川県 横須賀基地
「…なるほど、そういうことか」
ラクスタル大佐は目の前の光景に顔をひきつらせていた。
横須賀基地に入港したグラ・バルカス帝国訪問艦隊を出迎えたのは、60隻以上の巡洋艦と数隻の大型空母、そしてとある1隻の戦艦だった。
その戦艦は、先程迎えに出向いた日本の紀伊型戦艦…我が国最大最強の戦艦グレードアトラスターが、まるで重巡洋艦に思えてしまうほどに大きく、そしてそれ以上に目を引く超巨大な三連装砲塔は、46cm砲以上の破壊力を持つだろう。
「大日本帝国…予言は正しかったと言うことですか」
若手幹部が膝をついて、停泊中の戦艦…大和型戦艦1番艦大和を見つめ、熟練幹部ですら、戦艦大和から目を離せずにいた。
「そのようだな…さて、我々の仕事は帰りまでもうないな。後は彼女達に任せよう」
ラクスタルはタラップを降りていく外交官を見送り、そしてまた戦艦大和を眺めるのだった。
大日本帝国 外務省 応接室
グラ・バルカス帝国外交官のシエリアは、この後行われる会談に向け気を引き締めていた。
日本の横須賀基地という海軍基地で見たグレードアトラスター級や超グレードアトラスター級の戦艦を見ているため、彼女は予言通り、大日本帝国を自国より軍事力が高い国だと考えていた。
その他にも、神奈川県から首都東京都に来るまでに乗った新幹線や、大量のビル群が立ち並ぶ東京都の町並み、専門家ではないが、そのどれもが自国の技術を超えていると直感で感じていた。
ガチャ。
応接室の扉が開かれた。
「お待たせしました。外務省の室井と申します。遠路はるばる、ようこそおいで下さいました」
「お初にお目にかかります。外交官のシエリアと申します」
まずはお互い挨拶から始まる。
「今回は一体どのようなご用件で我が国を訪れられたのですか?」
室井は政府が知りたがっていた情報を聞き出すことから始めた。
「今回我々が訪れた理由は、日本の国力、軍事力等を確かめ、場合によっては同盟を結ぶことを目的とした、云わば1種の砲艦外交です」
あっさりと砲艦外交と認めたシエリアに、室井は目を見開く。
「簡単に認めるのですね」
「私から見ても、貴国は我々グラ・バルカス帝国以上の力を持った超大国です。今後の為にも、ここで隠し事は悪印象にしかなりませんから」
シエリアの言葉に室井は「ほぅ」と意外そうな顔を見せ、自身の中でシエリアの株を上げていった。
その後、大日本帝国とグラ・バルカス帝国は不可侵条約は勿論、修好通商条約、安全保障条約等を結び、更に日本はグラ・バルカス帝国に一部通信技術を提供、両国間の連絡を容易化し、双方の繋がりを強くしていった。
その後、グラ・バルカス帝国は大東亜共栄圏加盟国やムー国に並び、大日本帝国の友好国として、この世界で歩んでいくのだった。
しかし、第三文明圏の列強は、それを黙って見逃すことはなかった。