パーパルディア皇国 皇都エストシラント 皇城
この日、パーパルディア皇国皇帝ルディアスが出席する最高会議が行われようとしていた。
「これより、御前会議を始めます」
議長が開始の挨拶をし、その後皇帝ルディアスが話し始める。
「状況はどうなっている」
皇帝ルディアスの問いに、軍の最高司令官アルデが説明する。
「はい、現在海軍第6艦隊361隻をアルタラス王国王都ル・ブリアスへ向かわせており、海軍第4艦隊328隻をフェン王国西の街ニシノミヤコへ向かわせる予定です。最近何かと蛮族共が生意気なので、皇国本軍の力を思い知らせてやります。第4艦隊は現在皇国最新鋭戦列艦である超F級戦列艦の調整が完了次第向かわせます」
「して、我が国に泥をつけた大日本帝国とやらはどうする?」
「フェン王国を滅ぼし次第、そこを中継地点にしてから第3艦隊400隻と陸軍40万を持って殲滅します」
アルデの説明を聞いて、ルディアスは満足そうにうなずいた。
「よろしい…ではまず手始めに、皇帝ルディアスの名において、アルタラス王国並びにフェン王国に対する戦争を許可する!!」
皇帝ルディアスの宣言により、パーパルディア皇国本軍は行動を開始したのだった。
アルタラス王国
フィルアデス大陸の西側に位置する文明圏から少し外れた王国、アルタラス。人口1500万人を抱え、文明圏外の国としては、国力も人口も大国である。
温暖な気候であり、王都にある建設物は円を基調としており、建物が全般的に丸い。
魔石鉱山のあるこの国は、資源輸出国であり、国は富み、人口50万人を抱える王都ル・ブリアスは人々の活気にあふれている。
その為、他の文明圏外国家に誘われた大東亜共栄圏への加盟を見送ってしまった。
日本はロデニウス大陸やフィルアデス大陸、フェン王国等の周辺国との共栄を優先してしまったゆえに、アルタラス王国との接触が遅れてしまっていた。
要はついていないのである。
国王ターラ14世は、海岸線より5kmの地点に立てた陣地で、娘である王女ルミエスのことを考えていた。
妻の遺した大切な娘。パーパルディア皇国との戦争に敗れれば、間違いなくこの世の地獄を味わうこととなるだろう。だから、信頼のできる家臣にルミエスを逃がしてもらった。少なくとも、これでルミエスが地獄を見ることは、限りなく低くなった。
運が良ければ、今ごろはロデニウス大陸に到着しているだろう。
考え事をやめて陣地の外を見ると、遠目にパーパルディア皇国の艦隊が見える。既に海軍は全滅してしまったようだ。
そこに、1人の王国騎士が血相を変えて入ってきた。
「報告します!パーパルディア皇国本軍が、北の海岸線に上陸を開始しました!!」
「来たか…全軍に突撃命令!奴等の伸びきった鼻をへし折ってやれ!!」
「「「ウォォォォーー!!!」」」
(ルミエス…すまない)
その後、アルタラス王国軍はパーパルディア皇国軍の猛攻を前に全滅した。国王ターラ14世は戦死、わずか3日で、アルタラス王国はパーパルディア皇国の属領となるのだった。
そして、次の戦場はフェン王国へと移る。
フェン王国 首都アマノキ
「何故なのですか!?」
フェン王国水軍第1艦隊司令官のククリは、大日本帝国フェン王国派遣隊指揮官の水谷に詰め寄っていた。
「我々は既に!パーパルディア皇国よりも強力な軍艦が8隻もいるのですよ!?おねがいします、行かせてください!!」
「駄目です!!敵は帆船とはいえ、約300隻もの艦隊です。たった8隻…それも殆どが駆逐艦では焼け石に水、包囲殲滅されるだけです!現在こちらに、本国から増援が送られることが決定しています!!今はただ…耐えてください!」
水谷の説得に、フェン王国側は渋々といった形で引き下がる。それでも、泣きながら悲願する者もいた。
水谷も、彼らの気持ちがわからないでもない。彼等の中には、ニシノミヤコ出身だったり、そこの家族が住んでいたりするのだろう。
増援の到着はどんなに早くても後1日は掛かる。だが、敵艦隊はこの後直ぐにでもニシノミヤコに対して攻撃を行うだろう。
フェン王国派遣隊の輸送ヘリや車両を動員して、ニシノミヤコから住民や観光客の避難活動を支援してきたが、まだニシノミヤコには大量の避難民が取り残されている。
しかし、今となってはもう我々が支援することができない。
「水谷司令!パーパルディア皇国軍がフェン王国本土に上陸、ニシノミヤコに攻撃を開始しました!!」
部下の報告を受けて、場が凍りつく。
遂にこの時が来てしまった。
「現状はどうなっている!?」
「住民の避難は、85%が完了していました。日本人観光客も1300人程が避難しましたが…いまだに、50人ほどがニシノミヤコに取り残されています」
「そんな…っ!!」
水谷は血が滲むほど手を握りしめた。
戦力を温存させる為に、フェン王国派遣隊は首都アマノキにある駐屯地に集結している。今から向かっても、間に合わないだろう。
「クソッ!…クソッ!!」
水谷は、ニシノミヤコにいる人達の無事を祈ることしかできなかった。
その頃、観光名所として栄えていた西の街ニシノミヤコ。
ここは今、パーパルディア皇国軍の攻撃によって、瓦礫の山へと変わり果てていた。
人が持ち運び出来るほど小型化された魔導砲が火を吹き、民家や城壁を粉砕し、ワイバーンロードが上空から火炎弾を吐き出し、避難が遅れた民間人を火だるまにする。
武士団が応戦するも、パーパルディア皇国軍に配備されたマスケット銃で撃ち抜かれ、被害が増える一方だった。
その日、フェン王国ニシノミヤコは、パーパルディア皇国軍によって陥落した。
パーパルディア皇国 皇都エストシラント
「この国はイカれている!こんなのが列強だと言うのか!?」
外交官の朝田は、先程の出来事を思い返す。
外交の担当が第1外務局に移り、そして皇宮に来るよう言われたので、朝田は補佐の篠原と共に皇宮に向かった。
だがそこで行われたのは、捕虜となった日本人観光客を処刑する生中継だった。
「恐らく…いえ、これは絶対に戦争になりますよ」
「だろうな。全く…どっちが蛮族だってんだ」
朝田と補佐の篠原は、深い溜め息を吐いた。この世界ではムーのような国が特殊だったのだと思い知らされたのだ。
この事は本国へと伝えられ、日本政府は国家非常事態宣言を発令。大日本帝国はパーパルディア皇国との戦争を決断するのだった。
大日本帝国 東京都 首相官邸
「やれやれ、また戦争か…君の予言通りだったよ」
今村総理はソファーに座り、隣に座ってお菓子を頬張っている少年イズルに話しかけた。少し前までは予言したらすぐおさらばだったが、甘いお菓子を与えてみたところ、予言後に軽くお茶していくのが日課になっていた。
「犠牲者を減らすことはできたが、所詮は減らせただけ。0には出来なかった」
今村はそっとイズルの頭に手をおき、優しく撫でた。イズルは首をかしげながらも、それを気持ち良さそうに受け入れる。
イズルと視線が合う。
「ふっ…大丈夫だ。もうこれ以上犠牲者は出させない」
そう言うとイズルは微笑み、立ち上がった。
どうやら今日はここまでのようだ。
「またおいで。次はシュークリームを用意しておくよ」
イズルは再び微笑んでから、光の粒子となって消えていった。
「さて、パーパルディア皇国か…精々列強の名を汚さないよう、足掻いてくれよ」