パーパルディア皇国 皇都エストシラント 皇城
「…以上のことから…第4艦隊と第6艦隊は全滅…アルタラスは独立し…フェン王国侵攻も失敗しました」
震える声でアルデが報告を終える。会議室に集まっていた皇帝や皇族、各外務局局長その他補佐官等も、今回の被害に絶句していた。
「アルデ!相手の戦力を分析し損ねるとは、何たる失態かッ!!貴様それでも指揮官かッ!!」
「も、申し訳ありませんっ!!直ぐに戦力を整え万全を期します!もう皇国が負けることはございません!!すぐに準備に入ります!!」
アルデはそう言って逃げるように退室しようとしたとき、バンッ!と会議室の扉が開かれた。
「何事か!今は会議中であるぞ!!」
「申し訳ございません!!ですが、緊急の報告があり、参りました!!!」
入ってきた職員が手に抱えていた複数資料を急ぎ足で各人の手元に配る。その資料にはこう書かれていた。
『工業都市デュロ陥落についての告書』
『各属領の反乱/独立状況』
『文明圏外国家連合による宣戦布告』
「な…なんなんだこれはぁぁぁッッ!!!」
レミールが声をあげる。他も声には出さなかったが、レミールと同じ気持ちであった。
「はっ!!工業都市デュロは、日本軍の攻撃により、陥落しました!!デュロ防衛艦隊の一部は被害を免れましたが、工業都市デュロは日本軍の手に落ち、現在皇都エストシラント、つまりここを目指して進軍中とのことです!!その勢いにのせられ、日本の支援のもと、各属領が次々に反乱を起こし、独立しています!!更に、独立した国々と、ロデニウス大陸国家を始めとした文明圏外国家が連合を組み宣戦を布告、現在皇国は北と東と南の3方向から侵攻を受けています!!!」
その報告で、会議室内は更に重苦しい空気となり、あまりの事態にアルデは泡を吹いて気を失っていた。
皇国は今、破滅の道を歩んでいた。
時は少し遡り、工業都市デュロ。
パーパルディア皇国の工業の中心であり、皇国軍の武器、兵器はその殆どがここで製造されている。皇国内に3つある大規模陸軍基地の1つや、105隻のデュロ防衛艦隊があることから、ここの重要性がわかる。
現在は42隻が北東海域で演習中のため、残った63隻全てが厳戒体制に移行し、ワイバーンオーバーロードも常に20騎が警戒任務についていた。
デュロ防衛基地司令ストリームは、沖合に展開する戦列艦を見て呟く。
「第6艦隊の司令は私の良き友であり、ライバルであった…奴はもう、死んでしまったのだな」
ストリームの呟きに、副官は声をかけることができなかった。第6艦隊司令とデュロ防衛基地司令の仲の良さは、皇国軍内部では密かに有名であった。一緒に飲みあっている姿も度々目撃されていた。
「…いかんな。こんなのでは奴に笑われてしまう」
気持ちを持ち直したストリームの姿に副官は安堵したが、それはすぐに崩れることとなった。
「警戒任務中の第5飛竜中隊より魔信!「我、謎の攻撃を受け半数が撃墜された。これより迎撃する」とのことです!!ですが、直後に魔信が途絶、撃墜されたと思われます!!」
通信担当者の報告を受けて、司令部は一気に慌ただしく動き始めた。
「デュロ防衛竜騎士団全部隊に出撃命令!敵はムー以上の敵だ…神聖ミリシアル帝国を相手にしている気でかかれ!!」
ストリームの命令で風神の涙が組み込まれた滑走路からワイバーンオーバーロードが次々に飛び立っていく。力強く羽ばたいて飛び立つワイバーンオーバーロードは上空で編隊を組むと、一途乱れずに敵がいると思われる方角へと飛んでいく。が…。
「…ッ!?報告!つい今しがた飛び立ったワイバーンオーバーロード12騎がレーダーからロスト、撃墜された模様!!」
「バカなっ!第5飛竜中隊はここからそこそこ離れてたんだぞ!?そんなに早くここまで来れるはずかない!!」
レーダーを覗き込むが、レーダーにワイバーンオーバーロードの姿は認められなかった。まだそんなに時間はたっていないし、レーダーから消えるのはまだ早すぎる。
「司令!あちらを!!」
司令部要員の1人が水平線を指差して叫んだ。ストリームもその方角を見ると、ストリームが目にしたのは、沈んでいく味方戦列艦と、そして日本の旗を掲げた艦隊だった。
63隻もいた戦列艦は、この時点で既に半数以上が撃沈されており、上空に上がった筈のワイバーンオーバーロードの姿は無く、代わりに神聖ミリシアル帝国の天の浮舟に酷似した飛行機械が飛び回り、離陸しようとしたワイバーンオーバーロードを撃ち落としていく。
その直後、敵の巨大戦艦が火を吹き、港で巨大な爆炎があがった。
「港守備隊全滅!!敵が上陸してきます!!」
「総力戦だ!デュロ防衛隊のみならず近隣の全守備隊を非常呼集!皇国本土に敵が上陸してくるぞ!急げ!!」
過去例のない非常呼集に司令部要員は一瞬たじろぐも、すぐに各方面に向けて魔信を発信した。
だが少し遅かった。その時既に日本軍はパーパルディア皇国本土に上陸をしていた。
「前方から敵騎馬兵多数接近!!」
「第3小隊迎撃するぞ!」
「まもなくこちらに戦車が来ます!」
「田辺がやられた!衛生兵!衛生兵!!」
港では揚陸作業が進められ、港を奪還すべく迫り来る皇国軍を、第8旅団所属の普通科部隊と、揚陸された車両が迎撃する。
装備の質では日本側が圧倒しているが、皇国軍は地の利を活かしたゲリラ戦術で日本軍の侵攻を食い止める。一進一退の攻防かと思われた時、海側から風を叩く音…ヘリコプターのローター音に混じって、音楽が聞こえてきた。
その音楽を聴いた第8旅団長はズッコケ、揚陸作業中の隊員たちは憐れむように戦場と化した市街地を見つめた。
空母から飛び立った10式対戦車攻撃ヘリと89式汎用ヘリの編隊は、大音量でワルキューレの騎行を流しながら、デュロ上空へと侵入していた。
「この音楽意味あるんですかね?」
「さぁな。副旅団長にでも聞いてくれ」
その後、参戦した各種ヘリコプターの支援を受けた日本陸軍は市街地のゲリラ…皇国軍を排除、増援としてやって来た各地の守備隊は、揚陸作業が完了した特科部隊と戦車部隊の砲撃を受け壊滅、基地司令部は無力化され、この日工業都市デュロは日本軍によって占領されたのだった。