パーパルディア皇国 皇都エストシラント 南方海域
海にひしめく大艦隊。現在この海域にはパーパルディア皇国海軍第1、第2、第3、第5艦隊、総勢1768隻が終結していた。
残された皇国海軍主力の全てが集まり、ここに来るであろう敵艦隊を迎え撃つべく展開していた。
「皇国本土が侵略されるとは…まさか我々は古の魔法帝国を相手にしているのか?」
第3艦隊提督アルカオンは不安そうに呟いた。
今まで連戦連勝を重ねてきた皇国の圧倒的敗北。神聖ミリシアル帝国やムー国相手でも、ここまではならないだろう…その時。
ドォォォンッ!!
アルカオンの乗船する戦列艦ディオスの近くを航行していた戦列艦が、突如水柱に包まれる。
水柱の引いた後には、戦列艦だったもののみが海に浮かんでいた。
「な…何が起きた!?」
「提督!前方より艦影!!とてつもなくデカイですッ!!!」
見張りの部下から報告が上がる。部下の指差す方角から、確かに巨大な軍艦が多数、こちらに近付いてくるのが見えた。
「なっ…なんて艦隊だ!!」
アルカオンは神聖ミリシアル帝国でも見たことの無いような艦隊に、驚愕の声をあげた。
この艦隊こそ、大東亜共栄圏連合艦隊である。
連合艦隊総旗艦であるイナサク型戦艦イナサクを始めとした戦艦4、空母2、重巡洋艦8、軽巡洋艦14、駆逐艦32と、文明圏外国家群の総力を挙げた大艦隊である。
この艦隊に、日本海軍から戦闘巡洋艦霧島を旗艦とした8隻の護衛艦隊が参加していた。
「全艦撃ち方始め!!奴等に我々の底力を見せてやれッ!!」
連合艦隊司令長官に任命された提督ミドリの命令を受け、各艦から砲撃が開始される。
未だに射程圏内に入ることのできないパーパルディア皇国連合艦隊は、一方的に撃たれるしかなかった。
上空では竜母から飛び立ったワイバーンロードと、皇国本土から飛び立ったワイバーンオーバーロードが、空母から飛び立った艦上戦闘機カイロスと激しい空戦を繰り広げる。
史実の零式艦上戦闘機32型と同等の性能を持つカイロスを相手にするには、品種改良されたワイバーンオーバーロードですら力不足であった。
「艦長、本国より入電。間もなく第8旅団が皇都を包囲するので、可能であれば皇都内にある大規模陸軍基地を攻撃してほしいとのことです」
戦闘巡洋艦霧島艦長山南修は少し考えてから、返答する。
「了解した。これより本艦は、皇都内部にある大規模基地に対し、艦砲射撃を実施する。護衛艦隊各艦は引き続き、大東亜共栄圏連合艦隊の支援に当たれ。今後の臨時指揮権は、駆逐艦晴風に一任する…全速全進!皇都内部の大規模陸軍基地を、殲滅する!!」
戦闘巡洋艦霧島が速力をあげる。その姿を敬礼で見送った駆逐艦晴風艦長岬明乃は、すぐさま目の前の戦場に意識を戻した。
「右翼の駆逐艦が敵に近すぎる。砲戦用意!主砲、攻撃始め!」
「ういっ!」
晴風の主砲12.7cm速射砲から砲弾が発射され、味方駆逐艦に砲撃を加えようとした敵戦列艦を撃沈する。
「駆逐艦ランスより発光信号。『貴艦の支援に感謝する』です!」
「よかった…引き続き他目標を攻撃する!」
その後も海戦は続く。
その頃、戦闘巡洋艦霧島は、目の前の敵のみを撃沈し、速力42ktの高速で皇都エストシラントに向かっていた。
「艦長!まもなく敵の大規模陸軍基地が主砲の有効射程圏内に入ります!」
「慌てるな。必中射程まで近付くんだ。流れ弾が基地外の民間人に当たるのは色々と不味い」
着実に皇都に近付く霧島の進路を妨害しようと多数の戦列艦が進路上に飛び出すが、戦闘巡洋艦の前には無力であった。
自慢の30.5cm砲の直撃を食らった戦列艦は、跡形もなく消し飛ばされる。
「捉えました!必中距離です!!」
「よし!主砲榴弾、撃ち方始め!!」
「撃てぇーッ!!」
戦闘巡洋艦霧島の連装主砲3基から放たれた6発の榴弾は、全てがパーパルディア皇国大規模陸軍基地内へ着弾し、その威力を発揮する。
ある砲弾は離陸中のワイバーンオーバーロードもろとも吹き飛ばし、またある砲弾は基地司令部を粉砕する。
流石に大規模陸軍基地に1度の斉射では被害は少なかったが(但し基地司令部は壊滅)、その後も斉射は続く。
戦列艦や湾岸砲が妨害しようとするも、副砲等の砲撃で沈黙。一時間後、大規模陸軍基地のあった場所は瓦礫の山と化し、皇国海軍連合艦隊は、大東亜共栄圏連合艦隊+護衛艦隊によって壊滅した。
─中央暦1640年5月30日─
大日本帝国 旧日本海 海上
演習に参加していた為に被害を免れたデュロ防衛艦隊42隻は、秘密裏に手に入れた地図を見ながら、日本の海軍基地がある舞鶴市を目指して航行していた。
100門級戦列艦ムーライトの艦長サクシードは船に揺られ、艦隊の前方を眺めていた。
ふと隣に立つ歴戦の猛者である副長が呟いた。
「敵は一体何なのでしょうか。デュロは占領され、海軍は壊滅。ムーが…いえ、例え神聖ミリシアル帝国相手でも、ここまでの被害はあり得ません」
数々の激戦を潜り抜けてきた副長の言葉は重く、サクシードは嫌な汗を流す。
彼の言う通りだ。これほどの被害を出す相手など一国しか思い付かない。古の魔法帝国…ラヴァーナル帝国だけであった。
(いや、考えすぎか…もしそうなら、先進11カ国会議の場で議題に上がり、我々にも説明がなされるはずだ)
サクシードは自分の悪い予想を振り払い、気を引き閉め直してから再び艦隊の前方を見た、その時だった。
彼の乗艦する戦列艦ムーライトの横を、青白い光が通りすぎていった。
「……はっ!!?」
サクシードは光が通りすぎた場所に視線を移す。そこにいた筈の戦列艦は、破片や残骸すら残さず、跡形もなく姿を消していた。
42隻の半数、つまり21隻が、一瞬のうちに消滅したのだ。
「な…な……何が起きたのだ!?」
その言葉が、サクシードの最後の言葉となった。
戦列艦ムーライト以下21隻は、瞬く間に青白い光に包み込まれ、何が起きたのかもわからず消滅した。
そこから離れた海域に、3隻の艦艇が航行していた。磯風型駆逐艦2隻に挟まれるように航行する巨大艦、それは大日本帝国海軍の誇る最新鋭戦艦である大和型戦艦…その2番艦武蔵だった。
戦艦武蔵艦長知名もえかは、目の前で起きた光景に震えていた。戦艦武蔵の誇る48cm主砲から発射された青白い光は、たった2度の砲撃で42隻の艦隊を消滅させてしまった。
「これが…武蔵の力だと言うの」
戦艦武蔵は大和型戦艦ではあるが、兵装や機関等の一部は異なっている。
まず、この世界に転移してから技術本部で開発された新型機関、核融合式特型原子炉機関。この機関は、大気中からエネルギーを汲み上げることで莫大なエネルギーを無補給で産み出すことができる、少し前まではSFと思われていた夢の無限機関だ。試験的に本艦に搭載されたが、その性能はこの戦闘で証明された。
その機関からエネルギー供給を受けて撃つことができる、技術本部が長年研究していた新型兵器、48cm3連装電磁衝撃波砲。その威力はすさまじく、小さいとはいえ、無人島を半壊させるほどの威力を発揮する。
建造途中であった戦艦武蔵に詰め込まれた新型機関、新型兵器は、技術本部の想定した以上の結果を叩き出した。
「凄まじい…これなら戦艦もまだまだ現役で活躍できますよ!」
興奮する副長の言葉に、知名は頷くだけだった。
腕を抱えて震えるその姿は、新型兵器の威力を前に恐怖を感じているようにも見える。だが…。
(この力は戦艦大和に、更には今後建造される艦艇にも受け継がれる…素晴らしい!大日本帝国海軍は、栄光の道を突き進む!!間違いないッ!!)
知名は歓喜を胸に、舞鶴基地へ撤収するよう指示を出すのだった。