大日本帝国召喚   作:ゼロ総統

2 / 28
異世界転移
第1話─接触─


─中央暦1639年1月24日午前8時─

 クワ・トイネ公国軍 第6飛竜隊

 

 

 その日は快晴な青空が広がっていた。クワ・トイネ公国軍の竜騎士マールパティマはワイバーンと呼ばれる飛竜を操り公国北東方面の警戒任務についていた。

 公国の東側に国などなく海が広がるばかりであり、特に興味を引くものはないはずだった。

 しかしここ最近ロウリア王国と緊張状態が続いており、軍船による奇襲を警戒するために、彼は相棒を北東方面へと飛ばしていた。

 

「ん?…!な、なんだ!?」

 

 彼は自分以外にいるはずのない空で何かを見つけた。始めは友軍騎かと思ったが、この時間帯に近くを飛行する友軍騎はいないことを思いだす。

 ロウリア王国のワイバーンでは航続距離が圧倒的に不足している。三大文明圏には竜母と呼ばれる飛竜母艦があるらしいが、文明圏外のこの地にいるはずがない。

 やがてそれが近付くにつれそれの正体がはっきりと見えるようになった。

 それは羽ばたくことなく、真っ直ぐこちらに迫っていた。

 

「我、未確認騎を発見。これより要撃し確認を行う。現在地は…」

 

 直ぐに通信用魔法具、通称魔力通信と呼ばれる通信方法を用いて司令部に報告する。

 幸いにも高度差は殆どない。彼は未確認騎と一度すれ違ってから距離を詰めるつもりでいた。

 すれ違い際に見えたその物体は羽ばたくことなく空を飛び、白色の胴体に赤丸が描かれていた。

 

「大きいな…」

 

 彼は反転してワイバーンの出せる最高速度である時速235kmの速度で未確認騎を追撃する。しかし、全く追い付けない。生物の中ではほぼ最強の速度を誇る空の覇者がである(文明圏や列強では品種改良を加えた上位種がいるらしいが)。

 

「くそっ!…司令部!司令部!!我、未確認騎を確認しようとするも速度が違いすぎる、追い付けない!未確認騎は本土マイハーク方面へ進行、繰り返す。マイハーク方面へ進行した!」

 

 その報告を受けた司令部では蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。未確認騎が経済の中枢都市であるマイハークに向かって飛んでくると言う。報告の通りだと既に本土領空に進入しているはずだ。

 

「待機している第6飛竜隊を全騎あげろ!万が一攻撃を受けたら、軍の威信にかかわるぞ!!」

 

 司令部の命令により直ぐ様陸上待機中の第6飛竜隊12騎が透き通るような青い空目掛けて羽ばたいていった。

 

 

 

 

 

 飛び立った第6飛竜隊は運良く未確認騎の正面に正対した。報告にあった通りかなりの速さでこちらに向かってきているのか、小さく見えた未確認騎はみるみるうちに大きくなる。

 

「あれは一体何だ!?」

 

「馬鹿みたいに速いぞ!」

 

 隊員たちは各々の感想を呟く。呆気にとられていた第6飛竜隊長は我に戻ると、魔信で各隊員に指示を飛ばす。

 恐らく攻撃のチャンスは一度きりだ。飛竜隊12騎が横一直線に並び、火炎弾を発射するため口を開ける。

 だが次の瞬間彼らの表情は驚愕の色に染まった。未確認騎が更に上昇を始めたのだ。既にワイバーンの最高高度4000mを飛んでいた彼らにとって想定外の事態であった。

 未確認騎はぐんぐん上昇していき、第6飛竜隊は射程に捉えることなく引き離されてしまった。

 

「我、未確認騎を発見、攻撃態勢に入るも未確認騎は更に高度を上げ、超高々度でマイハーク方面へ進行中、繰り返す…」

 

 

 

 

 

 マイハーク防衛騎士団団長イーネは、第6飛竜隊からの報告を受け、部下に指示を出す。彼女はマイハーク城の片隅にある棟の上から未確認騎が来るであろう方角を睨んだ。

 飛竜でも追い付けないものとは、一体何なのだろうか?その疑問はすぐに変わることとなる。

 

「来たぞー!!」

 

 東方向を監視していた騎士団員が大声で叫ぶ。

 粒のように見えていたそれは、白い騎体で大きく、そして羽ばたくことなく凄まじい速度と高度でマイハーク上空へとやって来た。翼には赤い正円が描かれている。

 

「速いな…」

 

 ワイバーンの最高速度と最高高度を既に超えている。そんな物体に対する攻撃手段は、現時点で存在しなかった。

 その後、未確認騎は何をするでもなく満足したのか北東方面へと飛び去っていった。

 

「歴史が動く…そんな気がする」

 

 そんな彼女の予想は当たることとなる。

 

 

 

 

 

 場所は変わってクワ・トイネ公国政治部会。

 

 

 国の代表が集まるこの会議で、首相のカナタは悩んでいた。只でさえロウリア王国の件で大変だと言うのに、更に先日クワ・トイネ公国軍第6飛竜隊の防衛網を掻い潜り、マイハーク上空に進入し旋回してから去っていったとの報告が上がったからだ。

 空の覇者であるワイバーンが全く追いつけない程の速度と高度で進入してきたという。

 国籍は全く不明、機体に赤い丸が書いてあったとの事であったが、赤い丸だけの国旗を持つ国など、この世界には存在しない。

 カナタは発言する。

 

「皆の者、この報告についてどう思い、どう解釈する」

 

 情報分析部が手を挙げ発言する。

 

「情報分析部によれば、同物体は三大文明圏の一つ、西方第二文明圏の大国、ムーが開発している飛行機械に酷似しているとのことです。しかし、ムーにおいて開発されている飛行機械は、最新の物でも最高速力が時速350kmとの事で、今回の飛行物体は明らかに時速600kmを超えています」

 

 政治部会の誰もが信じられないといった表情を見せる。それではその物体がムーのでなかった場合はムー以上の力を持った国家と言うことになる。

 

「しかも、ムーまでの距離でさえ我が国から2万km以上離れています。極秘に造られていたとしても今回の物体がムーのものであることは考えにくいのです」

 

 会議は振り出しに戻る、結局解らないのだ。

 

 ただでさえロウリア王国との緊張状態が続き、準有事体制のこの状態で、頭の痛いこの情報は首脳部を更に悩ませた。

 

 その時、政治部会に外交部の若手幹部が息を切らして入り込んでくる。通常は考えられない明らかに緊急時であった。

 若手幹部が報告を始める。

 要約すると、つい先程クワ・トイネ公国の北方海域に全長200mクラスの超巨大船が現れたとのこと。

 付近を航行していた第2艦隊所属の軍船ピーマ船長ミドリが臨検を行ったところ、大日本帝国という国の特使が乗っており、敵対の意思は無いことを伝えてきた。

 捜査を行ったところ、下記の事項が判明した。なお、発言は本人の申し立てである。

 

 

 …大日本帝国という国は、突如としてこの世界に転移してきた。

 

 …元の世界との全てが断絶されたため、哨戒機により付近の偵察を行っていたところ、陸地があることを発見した。偵察活動の一環として貴国上空に進入しており、その際領空を侵犯したことについては深く謝罪する。

 

 …クワトイネ公国と会談を行いたい。

 

 突拍子もない話に政治部会の誰もが信じられない思いでいた。

 しかし、先日マイハーク上空にあっさり進入されたのは事実であり、200mクラスという考えられないほどの大きさの船も報告に上がってきている。

 国ごと転移などは神話には登場することはあるが、現実にはありえない。しかし、大日本帝国という国は礼節を弁えており、謝罪や会談の申し入れは筋が通っている。

 まずはその外交官とやらを官邸に招致することを決定した。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。