大日本帝国召喚   作:ゼロ総統

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第21話─カルトアルパス襲来①─

 神聖ミリシアル帝国 港町カルトアルパス 帝国文化館 国際会議場

 

 

 港湾都市マイカル陥落の報が届いたのは、会議開始から2日後のことだった。

 初めは殆どの国が信じようとしなかったが、ムー国にある大使館からも報告が上がり、真実であると判明するとすぐさま会議の内容が変更され、今後の対策についての会議が行われることとなった。

 

「何か敵の情報はわからないのですか?」

 

「残念ながら、現在調査中としか…」

 

 アガルタ法国の大使が説明を求めるが、ムー国の外交官も情報が無いため、答えることができなかった。

 

「シエリアさん、本当にグレードアトラスターを派遣してよかったのですか?」

 

「問題ないと思う。何せここには、グレードアトラスターをも上回る戦艦がいるのだからな」

 

 シエリアが苦笑を浮かべながら答えた。やはり彼女としても、色々と複雑なのだろう。

 

 会議が進まないことに危惧したリアージュは、静粛にと場を静めさせ、それから発言した。

 

「ムー国が依然として所属不明の敵勢力に侵略を受けているのは重大な案件です。そこで我が神聖ミリシアル帝国政府はムー国に対し、経済的、軍事的支援を行うことを決定いたしました」

 

 おおっ!と会場内がざわつき始めた。

 列強第1位、世界最強の称号を持つ国家の支援声明に、本会議に参加する文明国はムー国は救われたと考えていた。

 だが近藤やシエリア、それどころかムー国の外交官すら、神聖ミリシアル帝国の支援声明を素直に喜べなかった。

 

「近藤大使、貴殿はどう思う」

 

「確かにこの国は近代的文明を持っていますが、兵器の設計思想や概念等を考えても、正直厳しいものがあるかと思われます」

 

「…だよなぁ」

 

 近藤とシエリアが小声で話し、ムー国外交官が本国にどう報告するかで頭を悩ましていると、初日同じく、会議場の扉が開かれ、そこから汗だくになった職員が入ってきた。

 職員はリアージュの側までやって来て耳打ちをすると、それを聞いているリアージュの表情は青ざめていき、周りは不思議そうにリアージュに視線を向けていた。

 

「どうかしたのですか?」

 

「…先程我が国の偵察機がこちらに向かう国籍不明の大規模航空集団を発見、直後に魔信が途絶えたので、おそらく撃墜されたと思われます」

 

 ざわっ…ざわっ…。

 再び会場内がざわつき出す。だが今度は焦り、不安、恐怖を含んだものだ。

 リアージュが発言する。

 

「で、ですがご安心ください。幸運なことに、現在カルトアルパス近海に我が国の第7魔導艦隊が演習のため展開していました。この艦隊が、皆様をお守りいたします」

 

 この発言を聞いて会場内のざわつきは大分収まることとなったが、真実は少し違っていた。

 第零式魔導艦隊の壊滅の報を受け危機感を抱いたミリシアル政府が、急遽近くにいた第7魔導艦隊を派遣したのだ。

 

 それはさておき、発言を聞いて安心したのか、会場内ではこのような言葉がでるようになった。

 

「では、我がトルキア王国の艦隊も、共に戦おうではないか」

 

「ならば、我らニグラート竜騎士団もお力添えさせて頂きますぞ!」

 

 そのような言葉が広まっていき、会場内では所属不明の航空集団を迎え撃つ流れに染まっていた。

 

「列強相手に圧倒的勝利を納め、倒した日本とグラ・バルカスはどうなさるのですか?」

 

 パンドーラ大魔法公国の大使が近藤とシエリアに訪ねた。それによって視線が2人に集まる。

 

「一応本国に問い合わせてみますが、恐らく戦闘に参加するかと思われます」

 

「わが帝国は戦艦こそムーへ派遣してしまった故に不在だが、依然として強力な空母部隊がいる。我々も参戦しよう」

 

 おおっ!!

 2人の発言で会場内が色めき立つ。

 列強を圧倒した2つの超大国が参戦することは、文明国からすればこれ以上にない助っ人である。

 

 その後の会議では、会場一致で敵勢力を撃退することが決定し、臨時連合艦隊が結成されることとなった。

 

 

 

 

 

 神聖ミリシアル帝国 カルトアルパス港

 

 

 港湾管理者ブロンドは恐怖と期待が入り混じった感情に襲われていた。

 自国よりは劣るとはいえ、列強ムー国の港湾都市マイカルを短期間で攻め滅ぼしたのと同じ航空集団が、世界最強の神聖ミリシアル帝国に攻め混んでくるという。

 先ほどから上空を見上げると、我が国の最新鋭機エルペシオ3やジグラント2が編隊を組んで南の空へ消えていく。

 

 更にブロンドの視線の先では、各国の護衛艦隊が次々に出港していく。

 

「ムー国、機動部隊出港!!」

 

 第2文明圏の列強国、ムー国の艦隊。

 最新鋭戦艦であり旗艦ルナ・バルコ、その他戦艦2隻、空母2隻、装甲巡洋艦4隻、巡洋艦8隻の17隻が出港する。

 

「グラ・バルカス帝国、空母機動部隊出港!!」

 

「大日本帝国、派遣艦隊出港!!」

 

 その後を追うように、グラ・バルカス帝国と日本の艦隊が出港する。

 神聖ミリシアル帝国の魔導艦隊に匹敵する両国の艦隊を、ブロンドはワクワクしながら見守る。

 

 

 今回の艦隊の戦力は、要約すると下記のとおりとなる。

 

神聖ミリシアル帝国…

 魔導戦艦2、空母2、重巡4、巡洋艦8、小型艦20

+地方隊…巡洋艦8

ムー国…

 戦艦3、空母2、装甲巡洋艦4、巡洋艦8

大日本帝国…

 戦艦1、戦巡2、巡洋艦2、駆逐艦4

グラ・バルカス帝国…

 空母2、重巡2、軽巡4、駆逐艦12

トルキア王国…

 戦列艦7

アガルタ法国…

 魔法船6

マギカライヒ共同体…

 機甲戦列艦7

ニグラート連合…

 戦列艦4、竜母4

パンドーラ大魔法公国…

 魔導船8

 

 

 合計126隻の大艦隊はカルトアルパス港から出港した後に合流、空母(竜母)からは艦載機やワイバーンロードが飛び立ち、艦隊に先駆け敵のいる方角へと向かっていくのだった。

 

 

 

 

 


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