─中央暦1639年5月10日─
クワ・トイネ公国政治部会
軍務卿から要請を受けて、首相カナタの権限のもと、緊急政治部会が開かれることになった。
もちろん、対ロウリア王国の防衛戦争についてが議題である。
「日本が参戦してからは連戦連勝、特に陸軍に関しましては城塞都市エジェイで日本軍と共同戦線を張り、見事ロウリア王国軍を撃退することに成功しています」
陸軍幹部の報告を聞いて会場が色めき立つ。自国軍が活躍したことが嬉しいのだ。
首相カナタが手を挙げて会場を静まらせる。
「手元の資料を見てほしい」
議員達のもとに資料が配布される。
『ロウリア王国首都攻略作戦案』
資料にはそう書かれていた。
「日本は我々とクイラ王国との多国籍軍を結成、ロウリア王国王都ジン・ハークを強襲、ロウリア王を捕らえてこの戦争を終わらせるつもりです。多国籍軍の結成については我々の練度向上が目的であると考えられます」
会場がざわつき始める。
「我々にも華を持たせてくれると言うのか」
「思いやりの精神…なのだろうな」
「良いのではないか?こちらからしては得しかないのだし」
その後、政治部会は全会一致で日本の提案に参加することを決定した。
クワ・トイネ公国は戦車隊を中心とした機甲部隊を、クイラ王国は重迫撃砲を主装備とした砲兵機動団を派遣したのだった。
─中央暦1639年5月20日─
その日、ロウリア王国王都ジン・ハークは混乱の極みに堕ちていた。
王都の北側第1城壁から約4kmの地点の平野部に大規模な軍勢が展開していたのだ。
もちろんそれは大日本帝国、クワ・トイネ公国、クイラ王国の多国籍軍である。
「全軍、配置に着きました。いけます」
「よし…全軍、作戦開始!!」
本作戦指揮官の大内田陸将の合図で特科連隊の76式自走155mm榴弾砲と、クイラ王国軍砲兵機動団の重迫撃砲が轟音とともに射出される。
砲弾は城門に食い込むと、内部でその威力を解放した。北側の第1城門は重迫撃砲が完全に破壊し、第2城門も155mm榴弾の直撃を受けて瓦礫となる。
破壊した城門から戦車大隊所属の82式戦車とクワ・トイネ公国軍戦車隊が突撃する。
侵入者を排除しようと近づいたロウリア兵を車載7.62mm機関銃で薙ぎ払っていく。
「第1城壁内北側を制圧、現在そこを拠点に防衛線を設置し、時間を稼ぎます」
「よし!後は空挺連中の仕事だ。俺達は1秒でも多くの時間を稼ぐぞ!!」
大内田が活を入れた丁度その頃、第1空挺団と警視庁警備部警備第1課の特殊部隊SATを乗せた89式汎用ヘリコプター“黒鷹”が、ハーク城上空に侵入していた。
あらかじめ作戦で定められていた場所まで移動し、ヘリから空挺隊員とSATが速やかに降下する。
近衛隊は空からの奇襲に度肝を抜かれ、対応が遅れてしまい、次々と各個撃破されていく。
途中、側面から奇襲されたり、大型の金属盾を持った兵士が立ち塞がったが、銃を装備する空挺隊員達の前には無力だった。
精鋭精強、最大最高、それが大日本帝国陸軍の誇る第1空挺団である。
第零近衛隊長ランドは日本軍の進軍速度に驚きつつも部下に柱の裏に隠れるよう指示を出す。
「念には念を…か。おい!」
ランドは王の控え室前に待機していたメイド2人を呼びつけ、謁見の間と王の間を繋ぐ扉から5mほど離れた位置に、並んで立つよう指示した。
メイド2人が扉の前に立ったのと同時に、勢いよく扉が開かれ、空挺隊員が雪崩れ込んできた。
「やぁ皆さん、よくぞいらっしゃいました。近衛隊大隊長のランドともうします。…私と少しお話をしませんか?」
「残念ながら、あなたとゆっくりと話している時間はない。敵意がないのであればすぐさま武器を捨て、地面に伏せろ。でないと、その額に風穴が開くことになるぞ?」
第1空挺団の中野中隊長が銃を構えたまま警告する。
時間稼ぎは無理そうだと悟ったランドは、メイド2人に伏せるよう指示を出してから剣を捨て、その場に伏せた。
「柱の後ろにも人がいるな?」
「さすがに鋭いな…アルファ小隊!剣を捨て彼らの言う通りにしろ!」
柱の裏から12人ほどが出てくる。彼らは中野の命令に従い、武器を捨てて、大の字でうつ伏せになる。
「王はこの先だな?」
「そうだ。しかし、王は我々の光なのだ…行かないでほしいと頼んでも、無理なのか?」
「…残念だが、それはできない」
「では仕方がない」
ランドは手の内に隠していた煙幕用の魔法陣を発動させた。王の間を真っ白な煙が覆い尽くす。
「アルファ小隊!ベータ小隊!突撃せよ!!」
近衛隊員達は煙に紛れて、第1空挺団に襲いかかった。
ランドも立ち上がり、剣を手に取って中野に斬りかかった。
「イイいやぁぁぁーッッ!!!」
気合の籠った声とともに剣が振り下ろされる。
取った!ランドはそう思った。だが相手が悪かった。
ーーカキィン!
火花が散り、金属がぶつかる音がする。
中野は第1空挺団の中隊長としての実力を発揮する。
鞘から抜いた愛刀の軍刀でランドの剣劇の威力を斜め下方に受け流し、そのまま目にも止まらぬ早さでランドの首を討ち取った。
周りでも空挺隊員は銃ではなく軍刀で応戦していたが、精鋭精強である第1空挺団は第零近衛隊を軽々と撃退した。
「ランド。中々の腕前だった…これより王の控室に突入する!」
中野の指示により、彼らは王の控室の扉を開けた。
王の控室
そこでハーク・ロウリア34世は絶望していた。
屈辱的な条件を飲んだ末に受けた列強の支援。旧式とはいえ戦列艦も何十隻と手に入れ、ワイバーンもかなりの数を揃えた。50万もの陸上戦力を揃えるのも苦労した。
だが、それらはすべて壊滅的被害を受けた。4400隻の艦隊は先の海戦で7割以上が沈み、残りも港で日本の巨大軍船にすべて沈められた。
ワイバーン部隊も全滅した。悔やんでも、悔やんでも、悔やみきれない。
敵はもうそこまで来ている…もう…どうしようもない。
扉を蹴破る音とともに、緑色の斑模様の奇妙な軍勢と、紺色の服を基調とした兵が雪崩れ込んできた。
手には魔法の杖のようなものを持ち、変わった剣を帯剣している。
王の脳に、古の魔法帝国、魔帝軍のお伽噺が浮かぶ。
「貴様等…まさか魔帝軍か!?」
ハーク・ロウリア34世は恐怖に震えながら訪ねた。
「魔帝軍がなんなのかは存じませんが…日本国警視庁の青木といいます。あなたはクワ・トイネ公国のギムにおいて、大量虐殺を指示した罪で逮捕状が出ています」
ロウリア王の両手に手錠がかけられた。
こうして、ロウリア王国とクワ・トイネ公国、クイラ王国の戦争は終結した。
ロウリア王が逮捕され、ロウリア王の一人娘であるローラが女王となり、今後王家は象徴として存続することとなった。
ロウリア王国は日本主導のもと、民主主義へと移行していくのだった。