また、前話を修正していますのでまだ修正版をお読みになっていない方はご確認頂けると幸いです。
ビーコン・クリフに戻った生徒達は、持ち帰った
「なんだ…このネヴァーモアは…
我々の知るものと形は似ているが、この大きさ、赤黒い棘、そして、通常とは異なる仮面。大変興味深い…」
「しかし、新入生に簡単に倒されてしまうようなのだから、そこまで危険視しなくても良いのでは?」
「いえ、あれはおそらく、並みのハンターでは手に負えません。それほどの威圧感を感じました」
「グッドウィッチ教授、口を慎みたまえ。それではここに写っている少年が、既にハンターを超える実力を持っていると言うのかね?」
「ですが…!」
「それはともかくとしてだ。このネヴァーモアが通常種を上回る脅威度を持つことは疑いようもない。
さて、諸君。今回の議題はひとまずこのネヴァーモアではなく、彼、ラグナ=ザ=ブラッドエッジについてだ。彼の実力が新入生の域から突出している事は明らかだ。チームが組めないからといって、この才を埋もれさせてしまうのは学園にとって不利益だ。そうは思わないか?」
「確かに…このネヴァーモアは通常のジャイアント・ネヴァーモアよりも強力であるのは紛れも無い事実だ。そして、他の生徒が通常のネヴァーモアをチーム単位で討ち倒したのに対し、あれをたった1人で討ち倒した彼の戦闘能力は言わずもがなか」
「故に、私は彼を特別遊撃部隊と称し、1人でもチームとして活動して貰おうと考えている。どうだろう?」
「うむ…そのような事は過去にも前例がないが、他に彼の処遇を上手く解決する手段はないか…」
「そうだな。彼の戦闘能力であれば、1人でも1チームレベルの働きが出来るだろう」
「よし、では、そのように」
職員会議において、オズピンの提案に異を唱える者もおらず、ラグナの処遇が決定した。それはラグナの戦闘能力を示した映像は勿論だが、これまでオズピンが築きあげてきた信頼によるところが大きい。
「オズピン教授、講堂へ新入生が全員集合しました」
「わかった。直ぐにでもチーム発表を行うとしよう」
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場所は変わって講堂、ラグナは新入生が列をなすその1番後方に並んでいた。1度ビーコン・クリフの手前まで戻ってから、
「ラッセル・スラッシュ、カーディン・ウィンチェスター、ダヴ・ブロンズウィング、スカイ・ラーク。
君達は全員黒いビショップを持ち帰った。今日から君達はチーム『
壇上でオズピンが名前を挙げ、チーム結成を発表している。話の流れを聞く限り、持ち帰った遺物の種類が同じだったペア2組をチームとして組んでいるようだ。ちなみに置かれていた遺物はチェスの駒であり、ラグナが持ち帰った駒は黒いクイーン。ラグナが取りに戻った時、ほとんどの駒が既になくなっていたので、ラグナも黒いクイーンを持ち帰ったペアとチームを組む事になるだろうと考えていた。
(俺にペアがいねえから3人のチームになっちまうな…その2人には悪りぃが、俺がその分動けば問題ねぇか)
そう考えるラグナの前に、ジョーン、ピュラ、レン、ノーラのチーム「
チームRWBYに関してはキーストーン騒動の時から知っていたが、JNPRの中から選ばれたリーダーがジョーンであった事には少々驚いた。それと同時に、戦士としてはまだまだでも指揮官としての資質が高いのかもしれないとオズピンを見つめた。
「最後にラグナ=ザ=ブラッドエッジ」
ラグナの名が呼ばれ、壇上へと登る。しかし、ラグナ以外の生徒は1人も呼ばれていなかった。疑問を浮かべるラグナに対し、オズピンはこう続けた。
「君は黒いクイーンを持ち帰った。しかしながら、君はペアを組む事が出来ず、残念な事に黒いクイーンを持ち帰ったペア、もっと言えば枠が空いているチームはない」
「は?」
「しかし、実力試験で君の実力は見せてもらった。戦闘能力だけなら、新入生の中でも上位に入るだろう。そこで、緊急の措置として、君をチーム『
「はあ?」
「とはいえ、1年生ではたった1人で任務実習をこなすのは困難だろう。よって、この1年間、君には度々、他のチームに助っ人として合流し、共に任務をこなしてもらう。教師陣がその都度、合流するチームを選定し、指示をする。その指示に従いなさい」
「はあああぁぁぁ!?」
こうして、ビーコン・アカデミーの歴史上初のメンバーたった1人のチーム「R」が誕生した。当のラグナはあまりの異例の事態に素っ頓狂な声を上げることしか出来なかった。
「ようやく全てが動き始めたな。今年は確実に…面白い年になる…」
オズピンはそんなラグナを尻目に生徒達を見回すと微笑んだ。
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「まさか、チームのメンバーがいねえとは…」
「ま、まぁ…あんた強いしさ、そこまで落ち込む事も無いんじゃないの?」
生徒が食堂で夕食を摂っている中、ラグナは少しばかり項垂れていた。面倒事を嫌うラグナにとって、アカデミーにおける特別扱いというのは面倒事を誘発させる要因として十分過ぎるからだ。それをヤンが慰める形になっている。
現在はチームRWBY、チームJNPRのメンバーが改めてさっき助けてもらった礼がしたいと、ラグナを食事に誘い、一緒に夕食に赴いていた。
以前までのラグナは蒼の魔導書のソウルイーターによって、無差別に生命力を吸ってしまっていた為、自身の周りに人を置く事を拒んでいたが、蒼に触れ、ソウルイーターの出力が調節出来るようになった事により、自分の周りに集まる人を拒む理由が無くなっていた。これはアーガルムの街で過ごした時間やオズピンからの教訓によるところが大きい。
「面倒事の予感しかしねぇ…」
「大丈夫だよ!何かあったら私達も協力するし!」
「まあ、今回助けていただいたのは事実ですから、何か有りましたら協力してあげてもよろしくてよ?」
「ああ、ありがとよ…」
ヤン、そしてルビーとワイスの励ましに素直に礼を言うラグナ。
「それにしても、ラグナはあの巨大なネヴァーモアを倒す程の実力者ですから、チームに助っ人として入ってくれたら心強いですね」
「そうだね〜。見かけによらずすっごく良い人だし、それにみんなが怖がってた噂も嘘ばっかりみたい」
「ノーラ!!」
「あ、ごめんなさい」
「レン、気にするな。ノーラに悪気が無いのはわかってっからよ。お前も苦労してんだな」
「いいえ、慣れてますから」
ラグナの言葉に、レンも肩を竦め、やれやれと食事に戻った。
「っていう事はさ、ラグナは1人部屋って事よね」
「みたいだな、さっき鍵を渡された部屋に行ってみたが、誰も居なかったしな」
「じゃあ何かあったらラグナの部屋に集まればいいね!」
「……まぁ、荷物も少ねえし、持て余すだけだから別にいいけどよ…」
「やった!」
ピュラからの情報を聞き、ルビーは楽しそうにはしゃぐ。こんなに大勢で食事をするなんていつ以来だろうと、ラグナは懐かしみながら小さく笑った。
その後、8人全員と連絡先を交換(ピュラの助け有り)を行い、部屋へと戻り、1人になったラグナは、オズピンから送られてきた荷物や家電を整理していた。そんな時、ラグナのスクロールが音を立てて鳴った。発信先はオズピン。
「もしもし、なんだよ、オズピン」
「いや、届け物が無事に届いたかと思ってね」
「まーた、もっともらしい理由付けやがって…
チームの事だろ?」
「なんだ、気づいてたのかい?」
「気付いたのはついさっきだけどな。俺が1人だけ残る新入生の人数、急な15歳のスカウト、あの射出台とお前の意味深な笑み。これだけあれば流石に気づくだろ」
「その通りだ。昨日も言った通り、君は私の隠し玉となり得る。今日のネヴァーモアとの戦いを見て、それは確信に変わった。君に比較的自由に動いてもらう為に、こうするのが得策だと思ったんだ。すまないね」
「まぁ、良いけどよ。それで、俺は何をしたらいいんだ?」
「早急に何かに動く必要はない。ローマン・トーチウィックとその仲間に関しては私の方でも調査を進める。君は普通の生徒として過ごしながら、情報を得られたり、気付いた事があれば私に報告して欲しい。そして、君の周りの生徒に何か危害が加わりそうなら守ってやってくれ。今の所はそれで十分だ」
そう話すオズピンに、ラグナは少し違和感を覚えた。何か焦っているような、切羽詰まっているような、そんな印象を。しかし、ラグナはその違和感については何も言わずに、快く返事をした。
「わかった」
「すまないね。迷惑をかける」
「それぐらいなら訳ねぇよ。それと、あの赤黒い棘のネヴァーモアについてはなんか分かってんのか?普通の白い棘を持っているやつは知ってるが…」
「いや、私も初めて見るグリムだった。あれについては今、アカデミーの教授陣が総出で調べている。何かわかったら伝えるよ」
「おう」
「では、またねラグナ。入学おめでとう」
そう言ってオズピンは話を区切ろうとする。しかし、ラグナはオズピンに1つだけ伝えておきたい事があった。
「オズピン」
「なんだい?」
「誰にだって秘密の1つや2つはあるだろうぜ、その中には簡単に人には話せない事もな。けどな、あんたは俺の恩人、それだけは事実だ。あんたが何者なのかは俺も知らねえし、何を懸念してるかもまだ分からねぇ…
それでも、もしあんたに助けが必要ならその時は力になる。そんで、もし道を間違えそうになってたら、全力であんたを止めてやる。
そんだけだ。じゃあまたな」
そう言い放ち、オズピンの返事を待たずして電話を切る。誰にも言えない秘密は、ラグナ自身も持つものだ。異世界からシフトしてこの世界に来たなど、普通に話しても信じることなど到底出来ないだろう。しかしながら、オズピンがアカデミーの生徒を大切に想い、懸命に守っている事は理解しているし、何より、何処の馬の骨ともわからないラグナに懇意にしてくれた事に恩義を感じ、自分を「息子」と言ってくれた親の力になりたいという思いは本心だ。
必要になれば話してくれる事を信じ、部屋の整理を再開終わらせる事に尽力した。
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切られた電話を片手にオズピンは、もう繋がっていないスクロールに向かって呟いた。
「ああ、ありがとう。私も君が何者なのか分からないけど、いつか話してくれると信じているよ。その時は互いについて、もっと語りあうとしよう」
そう言ったオズピンの表情は柔らかく、穏やかなものだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ふぅ、荷物が少ないとは言え、ちゃんとした部屋に住むのは始めてだから要領が分からねぇな。でもま、こんなもんでいいだろ」
部屋の整理が終わり、一息を付いているとコンコンとドアにノックがあった。
「ん?誰だ?」
ドアを開けるとそこにはピュラの姿があった。
「おう、ピュラか。どうした?」
「どうしたじゃないわよ。今日からスクロールの使い方のレクチャーをするって言ったでしょ?」
「あー、そういやそうだったな」
「入っても大丈夫?」
「ああ、今片付けも終わった所だからな。適当に座ってくれ」
「ええ」
ピュラを部屋へと招き入れ、座らせる。
「それじゃあ、始めましょうか。じゃあまずはさっきみんなとやった、連絡先の登録からーーー」
そう言って、スクロールを取り出し、それを使って出来る事や、連絡先の登録の仕方などのレクチャーが始まった。スクロールに内蔵された機器で、自分のオーラを計測させて数値として視覚化する方法やアカデミーでのスケジュールの確認、更にはアラームの設定など、電話とメール以外にも様々な機能がある事をラグナは興味深そうに聞いていた。その教えている最中もピュラはとても楽しそうな笑みを浮かべていた。
「なんか、楽しそうだな、ピュラ」
「え?そ、そう?
まぁ、こんな風に友達と過ごす事なんて無かったからかな…?
一緒にご飯に行く事はあったけど、みんな私に気を遣ってるのがわかっちゃって…」
言葉が進むに連れ、しゅんと寂しそうな顔をするピュラ。普通の対等な友人関係を望むピュラにとって、その相手が作る尊敬や憧れといった悪意の無い壁は、悪意が無いからこそ、ピュラが感じる孤独を更に強く感じさせるのだろう。
「そうか…
俺で良ければ話を聞くからよ、なんかあったらここに来い。愚痴を吐き出す場所として使えよ」
「ラグナ……うん、ありがとう。誰かに愚痴を零すなんて初めてかも…」
「それに、チームRBWYやJNPRのメンバーは、お前自身を見てくれていると思うぞ。ルビーとヤンはあんな感じだし、ワイスはどちらかというとお前と似た境遇だろうしな。ブレイクの事はまだよく知らねえが、少なくとも長い物に巻かれるみたいなのを好みそうには見えねえ。
今日一緒に戦ったJNPRのメンバーは、共に死線をくぐった仲だろ?ほら、もうこんなに仲間がいる。心配ねえよ」
「…ええ…そうね」
ピュラに笑顔が戻った事を確認し、ラグナはピュラの頭に手を置いた。
「!」
「あっ」
昨日ルビーへの行動の反省を生かせず、またやってしまったと思ったラグナだったが、ピュラは逃げるわけでもなく、ラグナの顔を見ながらジッとしていた。とりあえず、嫌がられてはいないと感じたラグナは、そのまま頭をクシャクシャと撫でた。
「…不思議ね…同い年なのに、ラグナを『お兄さんみたい』って感じるの。どうしてかしら…?」
「…さあな、お前がまだまだ甘えたがりの子供って事じゃねえか?」
「そんな事…!
…いえ、そうかもしれないわね…」
そう言って、目を細めるピュラにラグナも微笑んで撫で続けた。すると、ピュラのスクロールが短く鳴り、メールが届いた事を示す。そのスクロールの画面を見て、消灯時間が迫っている事に気がついた。
「あ、もうこんな時間ね。部屋に戻らないと」
「そうだな。明日は9時から講義か、遅れんなよ」
「ラグナの方が遅刻しそうな感じするから釈然としないわね…
分かってるわ。それじゃあね、おやすみ」
「おう、おやすみ」
ピュラが去った後、ラグナはベッドへとダイブする。
「こんなベッドでゆっくり寝るなんていつ振りだ?オズピンのとこではソファーがベッドみたいなもんだったし、前の世界では基本は野宿、気を失って気付いたらベッドって事が多かったからな…」
フカフカのベッドに心躍らせるラグナは、柔らかい感触を確かめながら眠りについた。
とりあえず、2日間が空いて申し訳ない。
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