元全世界の敵のなんだかんだ奮闘記   作:天然黒酢

12 / 53
誤字報告、感想、評価ありがとうございます。
とても助かっています。


リーダーの資質

 翌日、前日の寝心地の悪さとは対照的に心地の良い目覚めを迎えた。時刻は午前7時前、初めての授業が9時からである事を考えると、随分と余裕のある時間に目覚めたものだと、ラグナは自分自身に感心していた。まだアラームも鳴っていない。まあ、早く起きるのはオズピン邸で学長のオズピンに合わせて起きており、日課のようになっているので、当然といえば当然なのだが。

 食堂に赴き、軽い朝食をとった後、制服に着替え、余裕を持って講義室へと向かった。オズピン邸に来てからヴェイルの街を歩く事はあっても、ビーコン・アカデミー内は、まだ生徒では無かった自分が歩くのは気が引け、アカデミー内は歩いたことがなかった。良い機会だと、散歩がてらにアカデミー内を散策する事にしたのだ。食堂、戦闘訓練用のホール、図書館、航空機・飛行艦船の発着場などを見て回り、ジン()ノエル()が通っていた士官学校もこんな感じだったのかと思いを馳せた。一通りアカデミー内を一周すると丁度良い時間になったので、ラグナも講義室へと向かった。

 

 講義室で座り、授業開始を待っていると9時ギリギリのところでチームRWBYとJNPRの面々が講義室へと駆け込んで来た。8人はラグナを見つけるとその隣や前の列に並んで着席した。ラグナは隣に座ったピュラに昨日の話を混ぜながら皮肉げに声を掛ける。

 

「昨日言ってた割に、ギリギリじゃねぇか」

「はぁはぁ…朝起きてからノーラ達の荷物の整理が終わって無かったから、手伝ってたら時間を見忘れちゃって…」

「なるほど、間に合って良かったな」

「ええ…初日の朝からこんなに走るなんて思ってなかったわ」

 

 その会話の直後に、恰幅のいい壮年の男性教師が講義室へと入ってきた。何やら大きな檻を押しているが、黒い布で覆われており、中身は見えない。

 

「オホン、新入生の諸君、入学おめでとう。私はピーター・ポート、肩書きは教授だ。さて、私の授業ではグリムの怪物についての授業を行う。敵を知る事は我々ハンターにとって、生き残るために最も重要な事だと言っていい。グリムは多種多様な姿形、特徴、攻撃手段を持っている。私が知るその全てを、君達に授けよう」

 

 ポートは自身のヒゲを触りながら生徒へと語りかける。グリムの専門家というのであれば、昨日の赤黒い棘を持つグリムについて、話を聞きに行こうかとラグナは考えていた。

 それと同時にグリムについての知識はラグナ自身まだ博識とは言えないため、有意義な時間になると思っていた。

 

 授業の時間の半分が経過し、ラグナはポートの授業が自分の想像とは少しズレていた事を知る。グリムについての知識は確かに得られるが、しかし、授業の半分以上はポートの口から語られる武勇伝であり、講義内容から脱線してしまうのだ。その一部から教訓も得られるかもしれないが、ポートは話を無駄に長々と話してしまうため、多くの生徒は暇を持て余していた。現に、ラグナの前の席にいるルビーは寝息を立てて眠ってしまっている。

 今も現在進行形でその武勇伝が語られており、ポート自身が若い頃、ベオウルフを生け捕りにして村へと持ち帰った話を聞かされていた。そこから、ハンターのあるべき姿勢や心持ちを説き、それを持っている自信のある者へ挙手を促した。

 

「教授!私はあります!」

「おお、シュニー君、よろしい。では前へ出て対面しなさい。この、悪魔の使いとね」

 

 手を挙げたワイスは、この講義中、後ろから見ているラグナにもわかるほど、講義に不真面目なルビーを睨みつけていた。シュニー・ダスト・カンパニーの令嬢であるワイスは、規律を重んじ、実直に講義に臨んでいるため、不真面目なルビーが許せなかったのだろう。

 ワイスが前へ出て、自身のレイピアを構えるとポートは斧を振り上げ、檻の錠を破壊した。錠が壊れた事で、檻の中にいたモノは目の前のワイスへと突進し、ワイスは咄嗟に横に跳んで避けた。黒い檻の中身は、イノシシ型のグリム「ボーバタスク」だった。ワイスはボーバタスクとの戦いの最中も、ルビーに対しての苛立ちを露わにし、荒々しく言葉を放っていた。幾ばくかの攻防の末、魔法陣で加速したワイスはボーバタスクの腹をレイピアで貫き、ボーバタスクは煙となって消えた。ポートはワイスを讃える。

 

「素晴らしい。見事だシュニー君。

では、本日の授業はここまでだ。では諸君、また次の授業で会おう」

 

 その一言で講義が終わり、生徒達が続々と講義室を出る際、ルビーに声をかけられたワイスは、ルビーの声掛けに冷たく返した。

 

「私は貴女をリーダーとは認められません。はっきり申し上げて、リーダーに相応しいのは私です。オズピン教授の見当違いですわ」

 

 そう言い放ち、スタスタと1人で歩いて行く。体に力を入れ、全身で怒りを表現するように。

 

「ワイス、どうしたんだろう?」

「さぁ?」

 

 ブレイクとヤンはワイスの行動を不可解に思っているようで、それは周りにいた他のメンバーも同じだった。ただ1人、ラグナを除いて…

 

 結局、その日は放課後まで、ルビーとワイスのなんとも言えない状況は続き、ワイスを怒らせてしまったルビーは落ち込み、放課後の廊下を意味もなくトボトボと歩いていた。

 

「大丈夫か?」

「え…?あ、ラグナ。

大丈夫って…何が?」

「ワイスとの事だ」

「あぁ、うん。あんまり大丈夫じゃない…かも…

ワイスの言う通り、私はみんなよりも年下だし、自分がリーダーって言うのも、口だけであんまり実感がないんだ。なんで、オズピン教授はワイスじゃなくて、私をリーダーに決めたんだろう…

私なんかよりワイスの方がリーダーに相応しいんじゃ無いかな…」

「少なくとも、今のお前よりはな」

「え?

……今の私よりはって、どういう…」

 

 戸惑いを見せるルビーにラグナはポツポツと語り出す。

 

「………昔な、俺の知り合いにでっけえ部隊を率いるリーダーがいたんだ。そいつは凄え奴でよ、世界の為、部下の為に必死になって自分の戦いをしてる奴だった」

「えっと…ラグナ…?」

「良いから最後まで聞け。ルビー、俺が思うにリーダーってやつは、『1番長く戦える奴』の事だ」

「1番長く?それって強いって事?」

「戦場でだけの事を言ってるんじゃねえ、戦場以外でも他の仲間の事を守る為に戦う。それこそ、仲間の誰よりも一生懸命にな。お前は『自分はリーダーに相応しくないかもしれない』っつってたが、本当にリーダーとして努力したか?

チームメイトから、ワイスから認められようと、信頼されようと頑張ったか?

今日の授業態度を見る限り、俺にはそうは見えなかった」

「…………」

「俺の知るそいつは、守るべきものの為、そして仲間の為にずっと戦ってた。戦場でも机の前でもな。

他の仲間の命運は自分が握っていると思え。その責任がリーダーって肩書きとして、お前の肩に乗ってんだ。相応しい相応しくないを考えるのは、自分に出来る限りの事をやってからにするんだな」

 

 ラグナはそれだけ言うと、ルビーに背を向けた。ラグナ自身、こう思えるようになったのはカグラが「一緒に来い」と言ってくれた、あの時からだった。その器の大きさに、それまではカグラにムキになって反抗していたラグナも、彼を認めざるを得ない心持ちに至った。彼の戦いを見て、カグラに対し素直に敬意の念を抱いたのである。今思えばそういった戦い方が出来るカグラに憧れていたとも言える。決して口には出さなかったが…

 カグラは「夢も希望も女も仲間も、全部引っくるめて俺は俺の道を進む」と言っていた。そのリーダーたる素質として1番大切なのは「どれだけ仲間を、そして大切なモノを想えるか」だと、ラグナは考えていた。そして、その素質はルビーにも十分過ぎるほどあると。

 

「お前の仕事、()っちまったか?

オズピン」

 

 ラグナはずっと物陰で聞き耳を立てていた人物に話しかける。

 

「いいや、問題ない。むしろ礼を言いたいぐらいだ。あの子を導いてくれてありがとう。

君はもしかしたら、教師に向いているのかもしれないね」

「よせよ、柄じゃねえ…」

 

 ラグナは困ったように首を横に振った。

 

 その夜、ルビーからお礼と決意表明のメールが届き、翌日、仲睦まじく教室に入ってくるルビーとワイスを見て、ラグナは口角をあげるのだった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 1年生の授業が始まって少し経った頃、グリンダ・グッドウィッチ主導で戦闘訓練が開始した。生徒達は、戦闘訓練用のホールに移動し、ロッカーの使い方の説明がされた後、ホールの観戦席に案内された。その中でジョーンがカーディンにロッカーごと、アカデミーの外へ飛ばされるというハプニングもあったが、カーディンへの厳重注意がなされ、ジョーンも少しして無事にアカデミーに返って来る事が出来た。

 戦闘訓練用のホールで模擬戦を行い、(きた)るべきヴァイタル・フェスティバルトーナメントへ向けて、各々の技量を磨く為との説明がなされた。トーナメントでは、自身のオーラを機器で計測し、数値化したデータを用いて勝敗が決する。機器から送られるデータは、同期したスクロールで見る事が出来るようになる為、それを見ながら戦う事が重要だという事も話にあった。

 

「では、とにかく実際にやってみましょう。習うより慣れろ、百聞は一見に敷かずという言葉もありますからね。

では、まず…ラッセル・スラッシュ、ラグナ=ザ=ブラッドエッジ、戦闘準備を整えて下へ降りて来なさい」

 

 名前が呼ばれ、ラグナは露骨に嫌な顔を浮かべる。

 

「ラグナ、『面倒臭い』って顔に書いてあるよ」

「おう、良く分かったな、ルビー」

「ルビーに授業態度を説いたのは貴方でしょう?そんな態度で、良くもまあ偉そうに言えましたわね」

「ワイス、ラグナは不真面目なんじゃなくて面倒臭がりなだけ」

「あ、ブレイクが突っ込むなんて珍しい」

 

 そのラグナに口々に声をかけるチームRWBYのメンバー達。ラグナは1つ溜息をつくと、下へと降りて行った。対するラッセル・スラッシュはカーディン・ウィンチェスター率いるチームCRDLのメンバーで、対になった曲刀を扱う髪型に特徴のある男だ。チームCRDLのメンバーはチームからあぶれてしまったラグナへ向け、日頃から嘲笑を浮かべていた。ラッセルはカーディンと共にその風潮を生み出している中心人物であり、今もラグナへ向け下衆な笑みを向けている。

 

「では、試合開始」

 

 グリンダの合図で、ラッセルはラグナへと接近し、両手に持った曲刀で、連撃を繰り出した。ラグナはそれに対し、背にある大剣を抜くと逆に避けづらいと考え、剣を抜かないままラッセルの攻撃を避けた。たった1撃も当たらない事に、ラッセルに焦りが見え始める。それでも避け続けるラグナに、とうとう大振りの1太刀を放ってしまう。

 

「っと、おら!」

「ぐっ……」

 

 それを躱した隙を突いて、ラグナの後ろ回し蹴りがラッセルの横腹を捉え、ラッセルは苦悶の声を上げながら後退した。

 攻撃のラッシュが終わった事で、ようやくラグナもアラマサを抜き、構える。ラッセルは離れた位置から、曲刀の鍔に仕込まれた銃で弾丸を連射し、ラグナを攻撃に転じさせまいとしているようだ。

 ラグナはその弾丸を、横へと移動しながら、アラマサの剣脊(けんせき)を盾代わりに防いでいた。ラッセルの銃が撃ち切られ、リロードを必要とした瞬間、ラグナは地を蹴り、ラッセルへと肉薄。剣を横に薙ぐと、2本の曲刀で慌ててガードしたラッセルだったが、衝撃を防ぎきれず、ダメージが入ったようだった。

 その戦いを見ていたグリンダはラグナへと問いかける。

 

「ブラッドエッジ、何故、あの黒い力を使わないのですか?」

「あぁ?いや、あれはよっぽどの事が無い限り、人に対して使うものじゃね…ありません。危険だから」

 

 ラグナのソウルイーターの大元は魂、生命力を収集する為の能力だ。それから派生して、魂の力であるオーラを吸う事も出来るが、下手をするとやり過ぎてしまい、相手の生命力も奪いかねない。蒼に触れた事でより扱えるようになったからといって、調節が難しく、おいそれと敵でもない人間にドライブを使う事は出来なかった。

 

「…………」

 

 グリンダは険しい顔でラグナを睨む。ラグナ自身は睨まれる謂れはないと気にしていなかったのだが、ラグナの正体を疑ぐるグリンダにとって、その答えが自身が意図したものと違った事は面白くなく、更にラグナへ疑いの目を深めたのである。

 結局、ラッセル対ラグナの試合は結果的にラグナの圧勝で幕を閉じ、ラグナは去り際にグリンダへ向けて言った。

 

「出し惜しんで負けたなら分かるが、勝ってんだからグッドウィッチ教授にとやかく言われる筋合いはね……ありませんよ」

 

 その言葉は、ラグナの慣れない敬語と相まって、更にグリンダの機嫌を損ねる事になるのだが、その八つ当たり先がオズピンになる事は容易に想像出来た。

 無論、ラグナもそれは理解していたが、あの射出台の仕返しだとばかりに、わざと言ったのである。オズピンの狙いや理屈は分かっているからといって、あの瞬間、何も伝えずにただ飛んでいくラグナを面白そうに見ていたオズピンに仕返しをしないかどうかは別だと、ラグナは内心ほくそ笑んだ。

 




ラグナのカグラに対する本音ってこんな感じかなと。
あの「一緒に来い」で私は心を持ってかれました。カグラの器の大きさを表した台詞だなぁと。その後のラグナの返しも良かった。

あとラグナの敬語って違和感ありますね。

では恒例の謝辞を
今回も読んでいただきありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。