今回からオリジナルの日常パートを数話投稿します。
『調理実習ぅ?』
「はい、ハンターたるもの、ただただグリムを狩り、依頼をこなせば良いというわけでもありません。衣食住を全て充実させ、高潔なハンターとして恥ずかしくない生活を送る事も、良いハンターとなる秘訣です。
そんな衣食住の中で、ある程度自主性が求められるのはそう、『食』です。よって、あなた方には最低限の食事を自分で賄えるようになって頂きます」
入学から数週間が経ち、アカデミーでの生活にも慣れてきた1年生は、そのグリンダの言葉に、生徒のほとんどがあまり乗り気になれなかった。ほとんどの生徒が「食事なんてどっかで買えば良いじゃん」と心の中で思ってしまっているのだ。そんな生徒達の心を見透かしたように、グリンダは続ける。
「確かに、自分で食事を用意しなくても、栄えている街ならば飲食店やスーパーなどがあり、困る事はないでしょう。しかし、もしも、貴方達が任務中、人里離れた辺境の地にいる時、食事は出てきますか?いいえ。
そして、今、『1日2日ぐらいなら食べなくても大丈夫』と思った人は今すぐ認識を改めなさい。腹が減っては戦は出来ぬ、です。更に、飲食店やスーパーに並んでいる料理は栄養バランスが必ずしも考えられてるとは限りません。
あなた方がハンターとして最高のパフォーマンスをするためには、食事が最も大事な要素だと知りなさい」
グリンダの厳格な口調に何も言えなくなった生徒達は、明日、グリンダ指導の元で調理実習を行うこととなったのである。
その夜、いつものように食堂で夕食を摂っていたラグナ達9人。
「うーん…
私料理とかやったことないなぁ。お菓子なら少しだけあるけど」
「私もですわ。料理はシェフが作るものだと思っていました」
「いや、ワイス、それはあんただけだと思うよ」
「でも、みんなで料理をするのって少しワクワクする」
「そうね。みんなで戦い以外の何かをするって初めてかも」
「レンの料理は期待して良いよ〜。ビーコンに入る前はいつも作ってもらってたし!」
「それは君に任せると食材が消滅するからですよ、ノーラ」
「料理は姉さん達に扱かれたからね、俺も得意だよ。真っ先に俺の料理を食べさせてあげるね、ワイス」
「結構ですわ」
いつもと同じような風景に、イベントといういつもとは違う風が吹くと、こんなにも会話に花を咲かせる。流石、華の十代。そんな事を思いながら、保護者のような瞳で見つめるラグナ。
「まぁ、どうにかなんだろ」
「そんなこと言ってるラグナも料理するイメージ全くないんだけど…」
「1人で旅をしてた頃は自分で料理する事もあったぜ」
「へぇ、ラグナはどんな料理作るの?」
「丸焼き」
『…………』
予想のど真ん中をホームランした回答に、ラグナの周りの8人はジト目でラグナを見た。
「…んだよ?」
「いや…やっぱりラグナだなって」
「なんだそりゃ。
楽だぞ?手間なんて殆どねえし」
ラグナを可哀想な目で見つめる8人だが、皆は知らない。ラグナが持つなんだかんだ言って、ある程度はそつなくこなしてしまうよくわからない器用さをーーー
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「さて、準備は出来ましたね。今回は初回という事で、自身の好きなものを各自1食、作って頂こうと思います。それを友人同士のメンバーで交換して今日の昼食としてください。
食材は集められるだけ、食堂のスタッフから貰ってきました。余った分は返却する手筈となっているので、食べ物を粗末にしないように。では、始め」
翌日、生徒達は家庭科室に集められ、グリンダの合図で一斉に料理に取り掛かり始めた。そんな中、ラグナはとりあえず動かず、何を作るかをしっかりと考えてから動く事にした。昨日、「普段どんな料理をするか」問われ、「丸焼き」と答えたラグナだったが、それは丸焼きが得意料理で、手間もかからないので良く作っていた物を答えただけに過ぎない。それ以外にも、普通に料理をする事もあったのだ。オズピン邸では帰りが遅くなりがちなオズピンと自分の料理を自分で作っていたのだから当然である。
それはさておき、今回何を作るかだが、ここで作った物を他の人に食べさせるだけあって、いきなり丸焼きは流石に…と思える程にはラグナは常識人だ。そうなると人間は自分の好物を作りたくなるものである。ラグナの好物は「天玉うどん」。しかしながら、うどんは茹でたてを食べる事が出来ない今回には、向かなそうだと思い留まった。ならば、うどんではなく、普通の白米にしたら良いのではないかという考えに至ったラグナは「天玉丼」を作る事を決めた。天ぷらは食べる直前にさっと2度揚げすれば、暖かいまま食べれると考えたのである。
作るメニューが定まったラグナは食材を吟味するため、実習室の後方に並べられた食材に向かうのだった。
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一方その頃、他のメンバーはというと、各々の思い思いに調理を進めていた。では、各自の調理風景を覗いてみよう。
《ルビーの場合》
「う〜ん…」
ルビーは唸る。この15歳の少女は料理をする機会にはあまり巡り合うことはなかったため、少ない経験の中から必死に頭を捻っていた。
(あ〜、私料理なんてした事無いのに急にお昼ご飯を作れだなんて、難し過ぎるよ。そもそも料理って何すれば良いんだろ?
お父さんってどんなの作ってたっけ?
あ、卵焼きなら出来るかな?)
そう思い至ったルビーは、卵とバター、そしておびただしい量の
《ワイスの場合》
「私の記憶が正しければ…そう…このぐらいでしたわ。あとは茶色い食材と緑の野菜、あとは薄い黄色の物が挟まっていた筈…
うん、そう、こんな色でした。なんだ、料理って意外と簡単ですわ」
「色」、色なのである。料理というよりも、家事全般が不慣れなワイスは、自身の記憶を頼りにし、食材を重ねている。その判断基準が色であり、高い自尊心を持つワイスは、味見という確認の行程をすっ飛ばしていた。
《ブレイクの場合》
ブレイクは慣れ親しんだ刃物捌きで、スパスパと綺麗に野菜などの食材を切っていた。更に、自身の好物であるツナを使い、それを炊き上がった米と炒めている。本を好んで読むブレイクは、様々な本を読むうちに料理についての知識も得ることが出来ていた様だった。それに加え、ブレイクはビーコン入学前から街の飲食店などに頼らず、自分で料理を行なっていた為、特に問題は無さそうだった。
《ヤンの場合》
「おりゃ!」
ズバン!と音を立てて野菜達が切れていく。9人の中で唯一武器が自分の拳を補助するものであり、何か道具を使う事に慣れていなそうなヤン。しかしながら、ヤンはルビーの姉であり、父の料理の手伝いをした経験が何度かあることが幸いし、包丁の扱いはぎこちなくとも、肉や野菜に火を通し始めた。シンプルに塩胡椒で味付け行い、野菜を切る工程以外は恙無く調理が進んでいるようだった。
《ジョーンの場合》
(よし、やってやるぞ!今日こそは!)
ジョーンは張り切っていた。元々、7人の女兄弟がいる事から女系家庭で育ったジョーンは、姉達に命令され、度々自宅でも料理を行なっていた。その為、腕には自信があり、是非とも自身の思い人であるワイスに自分の料理を食べてもらい、自分の事を見直してもらう想像を膨らませ、顔を緩ませていた。
《ノーラの場合》
じゅるり…
《ピュラの場合》
問題児ばかりと言われる新入生の中で、随一と言っていいほど他の信頼を集めるのはこのピュラ・ニコスだろう。そう言われて反対意見が出ない事が当たり前に思える事からも、彼女がどれだけ良識ある人物かは火を見るよりも明らかだ。そんな彼女は髪と同じ色をしたエプロンを首から掛け、鍋をゆっくりと回しながら、食材を煮込む。その姿は周りにいる男子達を魅了していた。
そのせいで何人かの調理場から独特な匂いが放たれ、そのメンバー達は結果的に炭を食べる事になるのだが……
《レンの場合》
レンは黙々と挽肉と数種の野菜を混ぜたタネを生地に包む作業を行なっていた。ビーコン・アカデミーに入学する以前からレンは昨日の話の通り、ノーラと共に暮らしており、食いしん坊なノーラの為に料理を行なっていた。そのため、自然に身についた料理スキルを存分に発揮し、芸術性の高い料理を繰り出していた。
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「はい、では時間になりましたので調理はこれまでとします。お昼の時間が終わるまで、この部屋を使う事が出来ますので、各自作った昼食をメンバーで食べるように。では、私は戻ります」
授業の時間が終わり、午前と午後の間の1時間の昼食休みとなった。各々が作った料理が盛られた器を持って、9人が集まる。
「よーし、じゃあ、9人でお昼ご飯交換だ!」
『イェーイ!』
ヤンの号令により、全員が自分の持つ皿を1度机に置いた。
「じゃあ、お皿ごとに番号を振ってくじ引きで決めようよ!」
「面白いかも」
「そう思って作ってあるのだぁ!」
ルビーの提案にブレイクが賛同し、待ってましたと言わんばかりに、ノーラが割り箸で作ったくじ引きを自慢げに取り出した。
「ワイスの手料理…ワイスの手料理…」
「じゃあ行くよ〜、せーのっ!」
呪詛のように怪しく呟くジョーンを尻目に、全員が一斉にくじを引き、番号に対応した皿がそれぞれの前に置かれる。
「じゃあルビーの手元にある料理が何で誰が作ったものなのか発表して貰いましょうか」
ピュラの言葉でルビーの前にある皿に視線が集まり、ルビーは皿にかけられたアルミホイルを取り去った。
「わぁ、何これ!」
「お、俺のだな」
『え!?』
ルビーに充てがわれた料理はラグナ作の天玉丼だった。名乗りを上げたラグナに残りの8人が全員、ギョッとした目でラグナを見た。
「全員が全員驚きやがって、全く失礼な奴らだ…」
「だって!ラグナ昨日は丸焼きとか作るって言ってたからそれしか出来ないんだと思ってたんだもん!」
「丸焼きは得意料理なだけだ。他のもたまには作る」
「「う、裏切り者〜!!」」
料理に慣れていなかった様子のルビーとヤンがラグナへ向け恨み言を放つ。自分よりも下手だと思っていた人が、上々の品を出したのだから騙された感がする事も分からなくは無いのだが、勝手に勘違いしたのはそっちだろうとラグナはしてやったりといった顔で2人に笑い返した。
「うわぁ〜ん、美味しそうなのに、なんだろうこのスッキリしない感じ…
次いこ、次!」
「次は私のですわね」
「あ、それ私のじゃん」
「ルビーのですか…卵焼きみたいですわね」
「うん、初めてやったんだけど、父さんみたいに綺麗に出来たんだ」
ワイスの前の皿にはルビー作の卵焼きが乗っていた。白米も隣にあるため、少し淋しい気もするが、見た目上は普通の食事であった。
「じゃあ、次はブレイクですわね」
「これは…小籠包?」
「ああ、僕のですね」
ブレイクの昼食はレン作の小籠包。前日にノーラからのお墨付きをもらっていたレンの料理に、ブレイクは少し心を躍らせた。
「じゃあ、次は私だね〜
…あり?」
ヤンの前の皿のアルミホイルを取り去ると、ウサギの形をしたリンゴが1匹、ちょこんとお皿の中央で丸くなっていた。全員が1人の人物に目を向ける。
「えへへ、ごめん。美味しそうだったから…つい…」
「ノーラ!やっぱりあんたか!これでどーやって午後を乗り切れっていうのよ!」
「えーと…気合い?」
「気合いで乗り切れたら苦労しないってのー!私今日このお昼ご飯の為に朝ご飯食べてないのに!」
「ウサギって寂しいと死んじゃうんじゃなかったっけ?」
『プッ…アハハハ!!』
ギャンギャンと喚くヤンを他所に、ふと呟いたピュラの一言に、ヤンとノーラ以外が笑い声を上げた。
「じゃあ気を取り直して、次はジョーンのご飯いってみよー!」
「ちょっ!まだ、私の話は終わってないわよ!?」
「これ、サンドイッチ?」
「あ、私のですわ」
「本当に!?イエス!」
自分の料理をワイスに食べてもらうという望みは叶わなかったが、ワイスの手料理を食べるというもう1つの望みが叶った事で、ジョーンは声を上げて、拳を天高く掲げた。
ワイスのなんとも微妙な視線が突き刺さる。
「じゃあ次は私!わぁ、これキッシュってやつ?オシャレ〜」
「あ、それは俺の。よく姉さんに作らされてたんだ」
「なるほど、ジョーンはお姉さん達の尻に敷かれてたわけだね」
「ちょっとは言い方考えてよ!」
有頂天から一転して、ノーラからの弄りに抗議の声をあげるジョーン。しかし、ジョーンが姉達の尻に敷かれていたようだというのは、8人の共通見解だった。
「私のは…チャーハンみたいね」
「じゃあそれは私の。ツナを入れてみたの」
「ツナチャーハンね。いい香りもして美味しそう」
ピュラが手にしたブレイク作のツナチャーハンはツナの香りが引き立っていて、見栄えも美しい出来栄えだ。
「僕のは野菜炒めのようですね」
「…あ〜、それは私…」
レンの野菜炒めを作ったヤンは、自分の目の前の昼食の事を引きずり、突っ伏しながら力なく言った。
「じゃあ俺のは消去法でピュラのって事になるな。これは、肉じゃがか」
「そうよ、うまく出来てると良いんだけど…」
「美味そうじゃねえか」
ラグナはピュラ作の肉じゃがを引き当て、これで全員の昼食が出揃った。ルビーが立ち上がり、号令をかける。
「では皆さん、それぞれのお昼ご飯が決まった所で、冷ますのも勿体無いし頂いちゃおう!せーの」
『いただきます』
《チームRWBY & JNPR & R
調理実習記録
砂糖過剰摂取による胸焼け1名
空腹による体調不良1名
原因不明の失神1名
以上》
勢いで書いた。後悔はしていない。
ラグナの趣味が料理(得意料理は丸焼き)という設定を見て思いついた日常パート。
男子勢の方がまともとか、笑うしかねえな。HAHAHAHA!
結構想像が入ってますので、皆さんにも笑って頂けたら嬉しいです。