オリジナルの日常パートは構成するのが難しい…
ベッドが4つ並ぶ部屋に、ラグナは1人ベッドに座っていた。シャワーを浴びたばかりであり、上半身には何も身につけていない。それによって、「蒼の魔導書」である右腕が露わになっていた。左手もココノエによって作られた義手なのだが、精巧に作られているため、普通の腕と言われても違和感がないほどだ。
それはさておき、ラグナの右腕はいつも黒い布を着用する事で隠されているが、こういった入浴などの際には、それを脱いでいる。もちろん、それは他の誰も、自分の周りにいない時に限るが…
コンコン
ドアの叩く音が聞こえる。ラグナは慌てて右腕の専用の布に袖を通し、ノックの主を迎えた。
「ハロー、ラグナ。今時間ある?」
「あ、あぁ…
特になにをしてたってわけでもねぇが…」
その主はヤンだった。なにやらラグナに話があるようで、ラグナは右腕を気にしながらヤンを部屋へ招き入れた。急いでシャツに袖を通し、椅子に座ったヤンの元へと寄る。
「急にごめん、シャワー中だったみたいね」
「丁度上がったところだから気にすんな。
どうしたんだ?」
「ほら、私達9人って、実力試験以来アカデミーでは結構一緒にいるじゃない?
そしたらルビーが『もっと親睦を深める為に日曜日の明日、アカデミーの外に遊びに行こう!』って言い出して、ラグナを誘いに来たの。他の3人はJNPRのみんなを誘いに行ってる。
それでさ、明日って空いてる?」
「ああ、休日は特に用事はねぇよ」
「良かった、あ、JNPRのみんなもOKだったみたい。今からこっちに来るって」
ルビーからのメールを確認したヤンは、ずっと気になっていた事をラグナに向けた。
「ねぇ、ずっと気になってたんだけど、あんたの右腕って何かあるの?」
「え!?
あ、いや、どうしてだ?」
「さっき私が部屋に来た時、右腕だけ肩から手まですっぽり覆う布を着けてたじゃない。シャワーから上がって最初に着るのがそれなの?」
ギクリとしたラグナはなんとか誤魔化そうと言葉を考える。
「み、右腕にでっけえ傷痕があってよ。人に見せるのも忍びなくて、隠してんだ。大した事じゃねぇよ」
「そっか」
コンコン
「ラグナ〜、お姉ちゃ〜ん、来たよ」
ドアがノックされ、ルビーの声が聞こえる。ラグナはこれ以上詮索されないうちに、ドアを開け、みんなを迎え入れた。
「そういえば、ラグナの部屋に入るのは初めてかも」
「結構綺麗にしていますのね、もっと粗雑な部屋だと思ってましたわ」
「やっぱり4人部屋を1人で使っているからか、部屋が広く感じますね」
「っていうより、物が無さすぎじゃない?部屋にいる時、何して過ごしてるの?」
部屋に入った面々は口々に言葉を連ねる。
「趣味っつー趣味があんまり無いもんでな。部屋にいる時は特に何をするでもなく、ダラダラしてるよ」
「うわぁ、寂しい生活してるね」
「うるせぇ、そんならお前達はなにしてんだよ?」
「私は武器の雑誌を読んだり、クレセントローズの手入れをしたりしてるかな」
ラグナの趣味は料理なのだが、食事が食堂で三食摂れてしまうビーコン・アカデミーでは、料理をしてもあまり恩恵がないのだ。ラグナの返しの問いかけに、ルビーを皮切りにして自身の趣味を紹介していく。
「私は勉強や音楽を聴いて過ごしてます」
「読書」
「私はバイクでツーリングかな」
「私とレンは街で食べ歩きしたりとか」
「そうですね」
「俺はゲームをやってるよ」
「私はお菓子作ったりしてる。気分転換にもなるしね」
「へ〜、それぞれ違うもんだな」
一通り休日の過ごし方を聞いた後、ルビーがピコーンと頭の上に電球をつけた。
「そうだ!じゃあ、日曜日はラグナの趣味を見つける日にしようよ!
8人もいるから、みんなで街を回って、自分の好きな物とかを紹介し合うの。みんなの事も知れるし、一石二鳥!」
「あ、それ良いかも!実力試験の時のお礼もまだちゃんと出来てないし」
「だから、礼なんていらねぇっつってんのに」
「遠慮しないでください。ラグナへの感謝の気持ちはみんな同じなんですから」
「じゃあ、明日の朝9時にここに集合ね!持ち時間は1人1時間ぐらいで自分の好きな事をみんなと一緒にするの!各自で計画を立てておくように!」
ルビーの号令で日曜日はラグナの趣味を見つけるため、各々の趣味を実際に紹介する為に街へ出る事となった。
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翌朝9時、全員が時間通りに集まった。といっても、朝食から一緒だったので当たり前なのだが。
「じゃあ、まずはみんなの順番を決めようか!何番がいいとか希望ある?」
「私はオススメのお店でご飯っていう計画だからお昼が良いな」
「オッケー、ノーラはじゃあお昼からね」
「僕は夜になってからの方が良いですかね。みんなに着替えの準備をしていただきましたし」
「じゃあ、レンは1番最後にしよっか。他のみんなは特に希望はない?」
ルビーの言葉に対して上がる声はない。ルビーはもう一度全員を見回すとドアを開け、拳を掲げた。
「それじゃあ、出発!」
9人は街へと赴き、まず今回の幹事のような役割をしているルビーの時間となった。喫茶店に入り、ルビーが立ち上がる。
「この時間は私の好きな物!みんなの武器について話をしよう!
私のは『クレセント・ローズ』、シグナルにいた頃に自分で作ったの。今はライフル状態だけど、鎌にもなる。鎌の時でも射撃、ガンブラストが出来て、私のセンブランスと合わせて素早く動けるの」
ルビーは自分の武器を撫でながら、嬉しそうに話す。「じゃあ次はワイスね!」と促し、ワイスはやれやれといった表情で、渋々自分のレイピアを抜いた。
「私のは『ミルテンアスター』、鍔にシリンダーがありまして、そこにダストをセットする事で様々な効果を発揮します」
その後、ブレイクの「ガムボール・シュラウド」、ヤンの「エンバー・セリカ」、ジョーンの「クロケア・モルス」、ピュラの「ミロ」と「アクオ」、ノーラの「マンヒルド」、レンの「ストーム・フラワー」、ラグナの「アラマサ」を各々が紹介し、ルビーはその度に目を輝かせ、興味津々に聞いていた。
喫茶店から出るとき、ルビーはホクホクと満足げな表情をしていた事は言うまでもない。
2つ目はブレイクの案である、書店へと向かった。ラグナは以前は本を読むタイプではなかったが、オズピンに教養を教わる上で本を読む事で柔軟な考え方や新しい発想や知識、会話術など、学べる事もあるとの認識に変わっていた。それでも、積極的に本を読むというよりも、オズピンに薦められた本を読んでいた事が多かったが…
「タクソン書店へようこそ、世界中の本が見つかるよ」
「こんにちは、色々と見させてもらうわ」
店の奥から店主が沢山の本を抱えて姿を現した。店内には様々な本が並び、それぞれ店の中を見て回っていた。ブレイクがラグナへと声をかける。
「貴方はどんなのが好み?」
「あー、この頃は色々と手に取ってみてはいるが、元々、あんまり本を読む事は多くなかったからな…
そうだな…伝説とか伝承とか、この世界にまつわる話に結構興味あるかもな」
「そういうのはこっち」
ラグナは自身の経験から、その世界の成り立ちやその類の物語が決して軽視出来ないと知っている。そのため、オズピンから薦められたものの中でも選んで読むのは、そういったものが多かった。
ブレイクが自分が読んだ本や店頭に置かれている本を物色しながら、ラグナへと紹介していく。その中で、ラグナはレムナントの成り立ちなどが仄めかされた本をいくつか購入し、書店を後にした。
「毎度あり、またどうぞ」
書店の主人であるタクソンの言葉を耳に入れ、メンバーは次の発案者を募った。そこで手を挙げたのはジョーンだ。
「次は俺だ!ってなわけで、ゲームセンターに行こう!」
ジョーンに連れられ、ゲームセンターへ来た一行。クレーンゲームや音楽ゲーム、レースゲーム、対戦格闘ゲーム、シューティングゲームなどが並び、いつも不甲斐ない姿を見せているジョーンは名誉挽回のチャンスだと、ラグナへの紹介というよりもワイスへのアピールを行なっていた。クレーンゲームで可愛いぬいぐるみをゲットして、ワイスに贈ったり、勝敗の分かれるゲームで良いところを見せようと奮闘していた。
当のワイスは「騒がしい所ですわね」と大音量のゲームサウンドやシステム音に、少しウンザリした様子であった。
ジョーン以外の他のメンバーはゲームセンターにはあまり縁が無いメンバーが多く、ルビー、ヤン、ノーラ、レンが数回来たことある程度だったが、ルビーとヤンが格闘ゲームやレースゲームを、ノーラとレンが音楽ゲームやシューティングゲームをラグナに教え、ワイワイと騒ぐ。
ラグナはこの前の調理実習の時に見せた、よくわからない器用さで、数回で感覚を掴み、初めての遊びを楽しんでいた。
ゲームセンターを堪能した一行は、ジョーンが空回りして取りすぎたワイスへの贈り物を一旦寮に置きに戻り、ノーラの予約したお店へと向かった。
「はい、ここが私のイチオシのお店!なんでも美味しいよ!保証する!」
ノーラに連れられて訪れたのは、ヴェイルの街の少し入り組んだ路地の奥にある料理店だった。扉を開けると、あまり広くない店内がアットホームな雰囲気を醸し出し、木造の建物特有の香りが漂っていた。
「ノーラちゃんにレンちゃん、予約ありがとうねぇ。奥にどうぞ」
店の奥から女将が顔を出し、9人を奥へと案内する。お座敷へと通され、お手拭きと水が置かれた後、女将はニコニコとしながら話し始めた。
「2人がお友達を連れてくるって聞いてねぇ、主人も張り切って朝から仕入れに行ってたんだよ。
そのおかげで今日は良いものが色々入ったから、なんでも好きな物を言ってくださいな」
全員の注文が一通り終わると、女将はノーラとレンの事を話し始め、よく顔を出す2人のことを本当の子供のように可愛がっている事が窺えた。ノーラもレンもそれに少し顔を赤らめ、気恥ずかしそうにしていた。
料理が並ぶと、その美味しさに全員が舌鼓をうち、9人がこの店の常連になる事が予想出来た。
「はぁ〜、久々にこんな美味いもん食ったぜ。アカデミーの食堂の飯も悪くないが、やっぱり店に来ると違うな」
「でしょでしょ!?」
「またいつでも来てくださいね。皆さんならいつでも大歓迎ですよ」
「おう、ありがとよ。ご主人にもよろしく言っといてくれ」
存分に腹を膨らませた一行は、次なる人物の定める場所に向かうのだった。
思った以上に長くなったので前後編に分けました。
出来る限り早めに投稿します。
各自の趣味は本編、CHIBIなどの情報を参考に、軽く想像も交えながら書きました。
では恒例の謝辞を
今回も読んで頂き、ありがとうございます。
また次回。