元全世界の敵のなんだかんだ奮闘記   作:天然黒酢

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読みやすさを重視し、大体5000字ぐらいを目処に書いています。



長期休暇は不穏な気配を連れて

「では皆さん、これより2週間の長期休暇に入ります。わかっているとは思いますが、あまり羽目を外しすぎる事は無いように」

 

 グリンダはハキハキと厳格に、生徒達に語りかける。しかしながら、その厳かな言葉をもってしても、生徒達の高揚を鎮め切る事はできなかった。話が終わる事を待ち侘びた生徒達は皆、ソワソワと落ち着きのない様子を隠し切れずにいた。

 

「同時に、本日はヴァキュオから交換留学生が到着します。ヴァイタル・フェスティバルが行われる数ヶ月の間、共に学び、切磋琢磨し合える仲間となることでしょう。

皆さんが鍛錬を怠らず、日々精進の心を忘れぬ事を願います。

では、良い休暇を」

 

 グリンダがそう締めくくり、生徒達が待ちに待った2週間の長期休暇が開始された。生徒達が笑顔を見せながら、講堂から帰って行くのに対し、ラグナに講堂から出る素振りを見せなかった。

 

「ラグナ、帰らないの?」

「ああ、ちょっと用があってよ」

「そっか、じゃあまたね」

 

 いつものように一緒に行動していたルビー達は別れを告げると、講堂から去って行く。そんな中、ラグナが動かなかったのは自身のスクロールに届いたメールの内容によるものだった。講堂での集会が始まる前、オズピンから話がある旨のメールが届いたのだ。

 

「ラグナ、すまないね」

「おう、話ってのはなんだ?」

「実は、君に頼みたい事があってね。

ローマン・トーチウィックやホワイトファングによるダスト強盗被害を調べていたんだが、どうやらあちら側にも優秀な斥候がいるようだ。シュニーダストカンパニーを始めとして、ダストの交易の現場に必ずと言っていいほど現れる」

「……そんじゃあ、大量のダストが取引される現場に張り付いてりゃ、いずれ奴等も現れるんじゃねぇか?」

「話が早いな、そういう事だ。次の月曜日、ヴァイタル・フェスティバルの為に、シュニーダストカンパニーの貨物船で大量のダストが届く。そのダストの護衛を頼みたい。シュニーダストカンパニーからダストを受け取り、ビーコンに送り届けられるまでの護衛だ」

「奴らが来る可能性はどんぐらいだ?」

「そうだね…

今回ほどの量のダストの取引は珍しい。情報が漏れているのであれば、狙われる可能性は高い。あちらがどれ程の量のダストを必要としているかは分からないが、これまでの頻度を見るに、今回でパッタリと収まる事は無いと踏んでいる」

「わかった。なら先に港に行っといたほうが良いな。先にヴェイル市内に奴らの仲間が潜入してるかもしれねぇし、それに爆破やらの罠が張られてる可能性もなくはねえ。

取引の詳しい時間と場所はスクロールに送っておいてくれ。うまくいきゃあ、奴らの足取りも掴めるかも知れねえしな」

「すまないね。本来なら生徒に頼むような仕事じゃないんだが、今は交換留学生の受け入れ準備やヴァイタル・フェスティバル関連の仕事が多くて人手不足でね。内密に回せる人員がいないんだ」

「気にすんな。元々、協力するって話だっただろ。それに、ここの生徒にしてくれたのはあんたなんだからよ。じゃあ、行ってくっから」

「ああ、頼んだよ」

 

 ラグナはオズピンと別れ、アラマサを背に背負うと港へと向かうため、バイクに跨った。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 ラグナが港近くに着いてすぐに、警察の黄色いテープで隔離されたダストショップが目に入った。窓は割られ、店内は粗雑に荒らされている。

 

「なんかあったのか?」

 

 早速の手掛かり発見というようにバイクを止め、問いかけるラグナ。それに対し、警察の男は眉を顰めて返す。

 

「ああ、またダスト強盗さ。これで今週も2度目、まるで無法地帯だよ。ちなみに、そうやって聞いて来た若い子も君で2組目だよ」

 

 警官の言葉に、ラグナも眉を顰め返す。犯人は現場に戻ってくるとは言うが、それは捜査がどれ程まで及んでいるかの調査の為や、自身が起こした混乱を観て楽しむ為などの理由がある。しかしながら、今回、ラグナが追う連中はダストの交易現場に際限なく現れ、強盗を働いている。いちいち前者の行動を取るのであれば、もっと犯行の段階で正体を隠すなど、ある種の偽装工作を行う筈である。ホワイトファングはシンボルとなる仮面をつけ、ローマンに至ってはシルクハットにコートという特徴的な格好で、隠す気はまるで無い。犯行の頻度から、後者を行う理由もあまり無いように思える。

思考を巡らせたラグナは期待を薄くしながら問う。

 

「俺の前はどんな奴だ?」

「可愛らしい女の子達だったよ。4人組でみんな武器を持ってたからハンター養成学校の子達かな?」

「なんかカラフルな子達だったよな。それぞれ赤とか黄色い服着てて」

 

 男と話していると、その場にいたもう1人の男が話に入り込んで来た。カラフルという情報で、ラグナは馴染み深い1つのチームを思い浮かべた。

 

「そうか、そいつらは何しに来てたんだ?」

「さぁ?ここに来た後すぐに、ヴァキュオからの船に不法乗船してたファウナスを追っていったみたいだけど…

ウチの他の奴が動いてるらしいけどまだ捕まったって話は入って来てないな」

「そうか、あんがとよ」

 

 ラグナは男に礼を述べ、スクロールを取り出した。ルビーへ「今、港の近くにいるか」というメッセージを飛ばす。しかし、すぐに連絡が帰ってくることはなく、ラグナは気を取り直し、再びアクセルを捻った。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 その夜、ヴェイルの街を一通り回ったラグナは、自室でオズピンのメールによって場所が示された地図を確認していた。その時、手に持つラグナのスクロールが着信の報せを鳴らした。発信元はルビーである。

 

「もしもし、ルビーか、どうした?」

「あ!ごめんラグナ今日はちょっと立て込んでてメールも今見てでもそれどころじゃないの」

 

 ルビーの焦燥の声がスクロールから聞こえる。なにやら喜ばしくない出来事が起こったことは、ルビーの途切れぬ早口が物語っていた。

 

「取り敢えず落ち着け。何があった?」

「そ、そうだよね、落ち着かなきゃ。私はリーダー、リーダーがダメになるとチームもダメになる、だよね」

「ああ。で、どうしたんだ?」

「私達、ラグナのメッセージの通り、今日は港に行ってたんだ。ワイスが今日、ヴァキュオから生徒が来るって聞いて、ヴァイタルフェスティバルのトーナメントに出場する生徒のリサーチの為にね。そしたらファウナスの男の子がヴァキュオの船で密航してて、その子を追ってたら、ペニーっていう女の子に会って、ちょっと変わった子だけど友達になってね。

でもそのあと、ワイスとブレイクがファウナスの話で喧嘩しちゃって、ブレイクが出て行っちゃったの」

 

 まだまだ動揺が隠しきれていないルビー、話が後半になるにつれ、話しの脈絡がズレ、少しずつ早口に戻ってしまっていたが、ラグナにも大体の話の要領は伝わった。

 

「ワイスはファウナスを嫌ってんのか?」

「うん…そうみたい…

昔からワイスの家はホワイトファングっていうファウナスのグループに狙われてたらしくって、色んな事をされたみたい。『ファウナスは嘘つきで、泥棒で、人殺しだ』って言ってた。

それで密航したファウナスの男の子にも、ワイスが悪く言ってて、そしたらブレイクが怒って喧嘩に…」

 

(同胞を悪く言われてブレイクの堪忍袋の尾が切れたって訳か…

ワイスもファウナスも人間と同じで色々いるって心の中では分かってるだろうが、犯罪を犯したファウナスを前にして、怒りが堪えられなくなった、って感じだろうな…)

 

 ラグナはキーストーン事件の一件で、ブレイクがファウナスである事を知っているが、この現時点では、ルビー達はまだブレイクの秘密を知らなかった。

 

「それでブレイクが飛び出して行っちゃったの。ワイスも怒ってもう寝ちゃったし、ブレイクも何も言わずにいなくなっちゃったから…どうしたらいいんだろう…」

「…そうか…

まずはブレイクの言い分を聞かねえ事には何も始まらねぇな。何も持たず身1つで出て行ったんなら、そう遠くへは行けねえだろうからヴェイル近郊にはいるはずだ。俺も探してみっから、お前達はワイスの説得を頼む。こればっかりはしっかりと2人が話し合うしか解決策がねぇだろ」

「……うん、そうだね。やってみるよ」

「ああ」

 

 少しばかり、いつもの陽気が戻った声色を確認し、通話を切る。

 

「こんな時に限って…

厄介な事になんねぇと良いが、嫌な予感しかしねぇな」

 

 ラグナはスクロールを机に置き、1人呟いた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 翌日、オズピンから送られたメールにより、ダストの取引場所へと移動したラグナ。その地形、周囲を観察し、襲撃の予測を組み立てる。

 

「船は多分こう、港に対して並行に付けるだろうから、それが障壁になる海からの襲撃は難しい。

そんで、この量を車で運ぶのは不可能、車で運べる量だけを狙うならここを襲う必要はないしな。ってなると…空からか…」

 

 ラグナは雲が少量漂う青空を見上げる。ダストの取引場所、一時保管場所となっているのは、閑散とした倉庫が立ち並ぶ貨物船専用の港であった。市街地からは少し離れた位置にあり、関係者以外はジョギングや犬の散歩をする人々が遠目に見える程度だ。

 

「奪わせずに守るだけでいいからっつっても、なんせこの量だかんなぁ…

結構な手数が来ると思っておいたほうが良いな。近くで辺り全体を見渡せる場所は…」

 

 スクロールで地図を開きながら、辺りを見渡す。すると、海岸線に隣接した倉庫が目に入り、その真ん中の倉庫の上に登るとダストを積んだコンテナが置かれる予定地を一望出来た。

 

「ここだな」

 

 ここであれば、万一の海からの襲撃も目視できるし、空からの襲来も察知しやすい。街の方までも、視力を強化すれば問題なく確認する事が出来る。そう判断したラグナは、当日、自身の待機する位置を決めた。

 残っている問題としては、ブレイクの事のみである。街で聞き込みをしても良いが、ルビー達がワイスの説得に成功していない以上、自分だけが接触してもどうにか出来るわけではない。ひとまずは街を見て回り、今回の敵の協力者などの捜索、それと同時にブレイクを見つけられれば御の字である。

 そう考えたラグナはバイクを適当な場所へ停め、市街地へと歩き出した。市街地を歩くと、ヴァイタル・フェスティバルの名が至る所で掲げられている。ラグナは特にアテもなく、港の近くを細々とした路地までも見て回る。

 

「特に怪しい所はねぇ…か…

下見はもうやり終わってるのか、それとも下見なんて必要ねぇのか…」

 

 これといった成果は得られず、路地を抜け、バイクへと戻ろうと足を向ける。その瞬間

 

(っ!?)

 

 何かの気配により、背筋がぞわりと総毛立つのを感じた。バッと振り向くが、そこに怪しい人影は無く、変わらず人々の往来があるのみ。子供連れの母親や、のんびりと黄昏に向けて歩く女性、夕暮れに急かされたような男性、別れを言い合い公園から去っていく子供達など、いつもと変わらぬであろう街の風景があった。

 

(…気のせいか…?)

 

 感じた気配は消えたものの、拭いきれない違和感を、少し神経質になっているのかもしれないと、クシャクシャと頭を掻いて搔き消そうと試みる。

 バイクに跨り、ダストが到着する予定の港をもう一度、ヘルメット越しに一瞥した。妙な違和感は消えないが、周りを見ても変わらぬ日常の風景が映るばかり。

 

「少し風に当たって帰るか」

 

 気持ちの悪い感覚を払うために、港から海沿いを周り、ビーコンへの帰路に着いた。少し走ると、心地のいい風と穏やかな空の色が心を落ち着かせたのか、妙な感覚は影を潜めていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 ダスト到着当日の月曜日。結局ラグナは敵についての有力な情報を得ることは出来なかった。更に、チームRWBYでの揉め事も解決には向かわず、ルビーとヤンの説得に対しても、ワイスは自身の正当性を信じて疑わない、毅然とした態度を続けていた。

 夕刻、不安要素を残したまま、アラマサのメンテナンスを依頼している武器屋を訪れ、来るべき時を待つのみとなった。港近くにバイクを停め、船の大きさのためか少し低く響く汽笛の音を耳に入れる。シュニー・ダスト・カンパニーの職員らしき人々が船からダストのコンテナを運び出しているのを、ラグナは以前決めた所定の位置から、その一連の作業を眺める。流石はダストシェアNo.1の会社、運び出す仕事はほぼ自立して動くロボットが担っているようだった。

感心して眺めていると、視界の端に市街地の方向から、軽やかに屋根を蹴って伝う人影を捉える。影は2つ。

 その1つが見覚えのあるフォルムである事に、ラグナは小さく息を吐き、呟いた。

 

「ったく、どっから嗅ぎつけてきたんだよ…」

 

 見慣れた影がラグナのいる反対側、市街地側の倉庫の上に陣取り、体を伏せた事を確認したラグナは、自分の存在を気取られないように気配を消しつつ、迂回してそこへと向かう。

 同じ屋根の上にたどり着くと、その人物は流石に音と気配を察知し、声を発した。

 

「早かったわね、サン」

「ん?誰と勘違いしてんだ?」

 

 そのラグナの返答に、目の前の少女、ブレイクは体を起こして振り返る。

 

「えっ!?ラグナ!?」

「よう、ブレイク。こんな所で何してんだ?

お前が出ていったって、ルビー達が心配してたぞ」

「…貴方には関係ないわ…」

 

 表情を曇らせ、視線を落とすブレイク。顔に落ちた影から、後悔の念が見て取れた。

 

「そういうわけにはいかねぇ、俺はこのダストの護衛でここにいんだからな」

「護衛?

まだ生徒なのにどうしてそんな仕事を?」

「個人的に頼まれてな、人手が足りねえっていうから仕方なく、アルバイトみたいなもんだ」

「…そう…」

「俺は質問に答えたぜ。今度はお前に答えてもらう番だ。ここで何してる?

ここを狙ってる奴等と関係あんのか?」

 

 「狙ってる奴等」という言葉にブレイクが落としていた視線をあげる。

 

「…貴方は、どこまで知っているの?」

「あ?

俺が知ってんのはお前とワイスがファウナス関連で仲違いをしてるってだけだ。まぁ同胞を悪く言われちゃ、お前も気分悪りぃだろうし、どっちが悪いってこともねぇだろうが、ちゃんとワイスやチームメイトと話す事だな」

「え?」

 

 ブレイクのそれは「ここを狙っている存在についての情報」を問うたものであったが、ラグナはそれを「ブレイクについてどこまで知っているか」という問いだと勘違いした。

 

「気付いてたの…?

私が…ファウナスだって…」

「……まあな」

 

 「同胞」という言葉に、戸惑いを隠せないブレイクは少し細くなった声で再度問う。それに対し、ラグナがブレイクの秘密を知ったのは様々なイレギュラーの混じった事件が原因の為、ぼかして答えた。

 

「お前が周囲に隠すのにはお前なりの理由があるだろうから何も言うことはねぇ…

が、チームメイトにまで何も言わずに済むような事でもねぇんじゃねぇか?

まぁ、言われなくても分かってんだろ?」

「………私がここに来たのは、ホワイトファングがこの事件に関わってない事を確かめる為。それが終わったらみんなにはちゃんと話すわ…」

「…そうか…

ブレイク、お前にとってはーーー

!?」

 

 自身の背後に迫る敵意を感じたラグナは、言葉を切り、振り向く。そこには、ファウナスの少年がラグナへ向け、突撃を仕掛ける姿があった。ラグナは少年の突貫をしゃがんでするりと避ける。すると少年はブレイクの前に立ち、ブレイクを後ろに守るように位置取った。

 

「誰だお前!?

さてはダスト強盗の首謀者だな!!」

「サン!?」

「あ?おい、お前、ちょっと落ち着け」

「言い逃れしようったって無駄だ!

俺たちがこの場にいた事を後悔するんだな!」

「サン…あの…彼は…」

 

 すっかりラグナを犯人扱いする少年、サン。ラグナはもとより、ブレイクの声にも全く聞き耳を持たず、再度ラグナへと接近し、右足による蹴りを放つ。ラグナはそれを左腕を立てる事で防ぐが、興奮冷めやらぬサンを相手に、ラグナも少し苛立ちを露わにする。

 

「だから話を聞けっつってんだろうが!

クソガキ!」

「話はお前を捕まえた後で聞いてやる!」

「ったく!めんどくせぇな…

伸されても文句言うんじゃねぇぞ!」

 

 話の通じないサンに、ラグナはお返しとばかりに接近した。

 




5000字を目処に…(6500字で投稿しながら)メソラシ-(¬_¬)
原作で描かれている戦闘描写をどこまで書くか思案中です。書きすぎてもテンポが悪くなるし、描かなすぎても場面が飛ぶ…
難しいところです。

感想は楽しく拝見させて頂いています
では恒例の謝辞を
今回も読んでいただきありがとうございました。
また次回。
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