後半になります。ゆる〜く読んだってください。
ブレイク、サンがローマンとの戦闘を行なっているのと同じ頃よりも、時は少し遡る。突如現れた刺客と対峙したラグナは敵の想定以上の能力に攻めあぐねていた。少女の体躯を考えるに身体の力の差では、圧倒的にラグナが優勢である事は疑いようもない。その上で、ラグナの剣を軽々を受け止めるという事は、何らかのセンブランスによるものの可能性が高い。しかし、以前の仮面の男のような、吸収・放出系などの力の可能性もある。そうすると、一撃で戦況を変えてしまわれるような事態にもなり兼ねない。この世界において、その個人固有のセンブランスは大きな武器であり、それは相手が知り得ない、情報面でのアドバンテージともなり得る。以前までのラグナであれば、獣兵衛から習った術式の知識に加え、自身だけが持つ「
しかしながら、今回の戦いにおいて、センブランスへの知識がまだまだ乏しいラグナは相手の手の内が分からないうちは無闇矢鱈と攻め入るべきではないと警戒していた。仮に蒼の魔導書を本格的に起動したとして、万一、その力を無効化、または軽減出来る能力があった場合、ラグナは一方的に情報を与え、不利な状況に陥る事になる。
(つっても、早いとこケリをつけねえとなんねぇ。さっきの爆発も、あいつらがローマンと戦ってるんだろう。
取り敢えず、相手が攻め込んでこない以上、こっちが動かねえと仕方ねえ。集中しろ、相手の動きを観て、その場で防御、回避、素早く判断しろ)
ラグナはもう一度アラマサを手に接近、幸い、ラグナのセンブランスは強化系、故に、能力が簡単に露呈する事はない。ラグナはニオポリタンの目の前まで接近し、上段からアラマサを振り下ろす。それはニオポリタンに右にステップする事で回避され、ラグナは後を追うように右に逆袈裟斬りを放つが、それを更に外へ逃げられ回避を許した。少し大振りに剣を振ったラグナに、ニオポリタンの後ろ回し蹴りが襲う。ラグナは右足の膝を上げることで脇腹に襲い来る蹴りを受け止めた。ニオポリタンは笑みを崩さぬまま、ラグナの持つ大剣を振らせぬように間合いを詰め、1撃目とは逆の回転で勢いをつけた回し蹴りを2度3度と連続して放つ。2撃目の蹴りを剣を持たない左手で受け止め、3撃目に合わせ、相手の右脚を左手で掴み、ニオポリタンを捕まえたラグナは、そのまま力任せに投げる。ニオポリタンは空中で軽やかに身体を回転させ、ふわりと優雅に着地した。
(傘を使った
空中での体勢の立て直し方も、さっきの身のこなしも自分の身体の使い方も理解してる感じだ。あと踊ってるみてぇにクルクル回ったり、余裕を見せつけるかのような動きも鬱陶しい…)
ニオポリタンは傘を開き、クルクルと優雅に散歩でもしているかのように、ラグナの動きを待つ。あくまでも、ラグナの足止めに徹しているようだ。そう悟ったラグナは再びニオポリタンへと接近、右手で大剣を横に薙ぐ。それに対し、ニオポリタンは後ろに宙返りして避け、手に持つ傘でラグナの脳天を目掛け、突きを放つ。ラグナは強化された眼でしっかりとそれを見極め、首を傾ける事で回避、左手で
ニオポリタンの顔から笑みが消え、この距離だからだろうか、目が微かに見開かれたのが見えた。ラグナは不意を付けた事を確認し、ニオポリタンと対照的なニヤリとした笑みと共に、右手の大剣を逆手に持ち替え、逆風を繰り出す。
しかし…
「!?」
ゾクリと背筋に悪寒が襲い、それと同時に大きく振り抜いた剣からは手応えが感じられなかった。その瞬間、眼前で1本の煌めきが走る。
「くっ…らぁ!!」
左手に握った傘で鼻先三寸まで迫っていた煌めきを弾こうと試みる。すると逆に、鷲掴んでいた傘がラグナの手から弾かれ宙を舞い、ニオポリタンの手がそれに伸びていた。ラグナは体制を立て直す為に一度距離を取り、ニオポリタンを見据える。その手には傘の柄に刃を携えた剣が握られており、それを傘の胴体の部分に納めた。
「ちっ、仕込み刀か…」
傘を掴んだ段階で、相手に一撃を見舞うか、敵の武器を奪うか、どちらかの戦果を得られると思っていたラグナは、その認識が甘かった事を思い知らされる。ニオポリタンは再び傘を広げ、ラグナへ向け挑発的な笑みを見せた。
(武器を奪って無力化出来るかと思ったが甘かったな。仕込み刀ってのが分かっただけでも良しとするか…
しかし、今、あいつ、俺が咄嗟に振った傘を
これでまた一つ、ラグナは敵の情報を得たという事になる。同時に、退ける事がより困難である事が示されてしまった。その中で、ラグナは1つの違和感を覚える。ラグナの初撃を片手で受け止めたにしては、ラグナの攻撃を
「ラグナ!!」
自分の名を呼ぶ声が響き、ニオポリタンの後方に見慣れた赤と黒を纏った少女が見て取れた。
「ルビー!?なんでこんな所に!?」
「ブレイクを探してたら、こっちで爆発音と煙があったから、まさかブレイクが事件に巻き込まれてるのかもと思って…」
ルビーの後ろには桃色の髪の少女の姿もある。特徴から察するに、あれがペニーというルビーが友達になった少女だろうとラグナは予測する。ニオポリタンは予定外の援軍に笑みを潜め、ルビー達を見つめる。そして再度、ラグナを一瞥すると、ニオポリタンの姿が影のように夜の闇に消えた。
「えっ!?消えた!?」
「消えたな…」
(数的不利を感じて潔く引いたか、それとも十分に時間を稼がれちまったか…
挙句に得られた情報は見た目の特徴と仕込み刀の傘ってのだけ。名前もわからねえが、あんだけ見た目に特徴があるなら調べたら何かしら情報も出てくるかもしんねぇ。オズピンに聞いて見るか…)
「ラグナ?」
考え込むラグナの顔を覗き込み、ルビーが不安げに名を呼ぶ。それによって思考の海から浮上した。
「っと、そうだった。考えるのは後だ。ルビー、お前の予想通り、ブレイクがあっちでローマン・トーチウィックと戦ってる」
「トーチウィックと!?じゃあ、早く助けに行かなきゃ!」
「ああ」
ドゴオォォォン!!
その時、宙に吊るされていたコンテナの1つが、爆発を伴って落下した。ラグナはルビー、ペニーと共に、倉庫の屋根を伝い、コンテナの落ちた位置へと向かう。そこにはローマン・トーチウィックがサンへ自身の杖の銃口を向けている姿があった。
「待て!!」
ルビーが叫ぶ。その叫びでその場にいた全員がこちらへと振り向き、ローマンはニオポリタンから報告を受けた赤いコートの男の姿に舌を打つ。
「…ニオめ、しくじったのか…」
その言葉を聴力の強化でしかと聞き届けたラグナは、あの少女の呼称が「ニオ」であると知る。そして、苛立ちの表情をいつもの笑みに塗り替えたローマンは、ルビーへと目を向け、言葉を放った。
「やあ、赤ずきん!良い子はもう寝る時間じゃないか?」
「ルビー、彼は?」
「ペニー、危ないから下がってて」
ルビーがペニーに顔を向け、退がるように指示する。ルビーが見せた隙に、ローマンは口角を上げ、自身の杖から炎弾を発射した。
「きゃっ!?」
迫る炎弾にルビーは目を瞑り、悲鳴がコンテナに木霊する。ドガァンという爆発音が響いても、自身に衝撃が及ばない事にルビーは不思議そうに目を開く。
「?」
「ルビー、不用意に敵から目を離すんじゃねぇ」
ルビーの前にはアラマサを盾にし、炎弾を防いだラグナの背中があった。
「う、うん、ありがとうラグナ」
「ふーむ…
今のを見る限り、お友達さんでは、無さそうですね」
「あ!ペニー、待って!行っちゃダメ!」
炎弾を撃ち込んだローマンへ向け、ルビーの後ろで目尻を険しくし、静かに呟いたペニーは、前へと歩み出る。ペニーがローマンに立ち向かおうとしている事に気付いたルビーの叫びにペニーはニコリと笑顔を見せた。
「ご心配無用です、ルビーさん。
戦闘準備、完了です!」
その言葉と共に、ペニーの背中のバックパックが開かれ、無数の剣が現れる。剣達は飛び降り、敵陣へと向かっていくペニーと共に宙を舞い、ホワイトファングのファウナス達を縦横無尽に蹴散らしていく。ラグナが視力を強化して注視すると、剣の1本1本から細いワイヤーが伸びているのが確認出来た。ワイヤーによる操作でペニーの大立ち回りが実現しているのだろう。
新たに現れた戦闘機が、ペニーへ向け銃撃を浴びせる。ペニーの剣は戦闘機の銃弾をも、円状に並べることで防御すると同時に、剣を後ろの倉庫に突き刺し、伸ばしたワイヤーを巻いて自分を引き寄せされる、「エメラルド・フォレスト」でラグナが用いたような芸当をもやって見せた。
ペニーは銃弾を撃ち込んでくる戦闘機へ向けて、剣を筒状に束ね、回転させる。何をやっているのかとラグナが怪訝に見つめていると、ペニーが突き出した拳に合わせて、剣先の中心から光線が放たれた。その光線は戦闘機を軽々と真っ二つに裂き、海へと沈める。
「うっそだろ…」
ラグナは自身の目を疑い狼狽するが、首を振り、冷静さを取り繕う。それと同時にその姿に言いようのない危うさを感じた。
ペニーは犯人を攻撃するのに、下手をすれば殺してしまう可能性のある攻撃を平然と、躊躇なく行なっている。幸い、いま墜とした戦闘機の乗組員が脱出していたのは確認出来たが、このまま犯人達を蹂躙し続ければ、死者が出かねない。少女には荷が重すぎる業だ。
ラグナはペニーへ向け、声をかける。
「ペニー!俺は
戦闘機の動きだけ封じれるか!」
その声にペニーはラグナに顔を向けて頷いた。コンテナを運び出そうと飛行を開始する戦闘機に狙いを定め、ペニーの操る剣が、戦闘機の側面に次々と突き刺さる。突き刺さった剣とそれに繋がるワイヤーが戦闘機の動きを封じた。
「ルビーさんのお友達さん!これでいいですか?」
「ああ、十分だ!」
ラグナは戦闘機の操縦席にいるファウナスを確認し、アラマサを構えると同時に脚力を強化、戦闘機へと飛び乗った。操縦席と胴体部分を真っ二つに切り砕き、操縦席にいるファウナスを捕らえる。抵抗しようとしたのか、はたまた逃げようとしたのか、咄嗟にシートベルトを外していたのが、逆にラグナにとって功を奏す結果となった。
「餓鬼共が…計画が台無しだ…」
そう呟いたローマンがいつのまにか、離れた位置に降下していた戦闘機へと乗り込み、飛び立つのが目に見えた。
「クソ…引き際は弁えてやがるな…」
ラグナは離陸した位置と自分との距離を鑑みて、追うことは不可能だと判断せざるを得なかった。チッと舌を鳴らすラグナの元へ4人が集まる。ブレイクは顔を伏せ、ルビーの前へと歩みでた。
「…ルビー…私は…」
「何はともあれ、無事で良かったよ。話してくれるんだよね?」
その問いに、ブレイクはサンと顔を一度見る。サンは頷き、ブレイクの背中を押した。ブレイクも決意を固めるように目を一度閉じ、ルビーの目を真っ直ぐに見つめて応えた。
「…ええ、もちろんよ」
ちょっと投稿忘れて次話を一生懸命書いてましたm(._.)m
感想の方は大変励みになっております。vol.6も始まりましたね。
不定期更新なので気長にお待ちを…
では、恒例の謝辞を
今回も読んで頂き、ありがとうございました。